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人工呼吸器管理中の児に対するMechanically Assisted Coughingの効果

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Academic year: 2021

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(1)

-59-

K e y W o r d s :機械的咳介助 呼吸障害 人工 呼吸器

【要旨】

 当院では入院、通院中の重症心身障害児に対 して医師の指示の下、呼吸理学療法を実施して いる。児に対する呼吸理学療法として、主に排 痰を促し、呼吸状態の維持、改善を目的に実施 している。呼吸理学療法の中には、機械的咳介 助(Mechanically Assisted Coughing;MAC)と いう方法があり、機械的に気道に陽圧を加えた 後、瞬時に陰圧にシフトすることで、効率的に 排痰を促すことが出来、有効な呼吸ケアの手段 として注目されている。今回、人工呼吸器管理 中の重症心身障害児 7 症例に対し、MAC の実 施前後で、呼吸状態の変化と呼吸機能への効果 を検討した。酸素飽和度(SpO

2

)、心拍数(HR)

の変化はなく、児への負担少なく使用可能で あった。また、分時換気量(Minute Volume;

MV)の増大が観察され、排痰効果のみでなく、

肺のコンプライアンス向上、胸郭の拡張、肺 炎・無気肺などの呼吸器症状増悪の予防効果が 期待される。また、より効果的に実施するため に、理学療法時のみの実施だけでなく、看護師 や家族と協力し、病棟や在宅でも排痰時には積 極的に MAC を実施することが重要である。

【諸言】

 重症心身障害児の合併症の中では肺炎などの 呼吸器系合併症が多くみられ、死亡原因の半数

以上が呼吸器疾患によるとされている。そのた め、重症心身障害児の医療的ケアにおいて、呼 吸管理や呼吸器系合併症への対応は極めて重要 な課題である

1 )

。当院でも、入院、通院中の重 症心身障害児に対して、呼吸状態の維持、改善 目的で小児科医師より呼吸理学療法の依頼を 受けることがある。呼吸理学療法には様々な 種類があり、当院では 2012 年より機械的排痰 補助装置(Mechanically Insufflation Exsufflator;

MI-E)と呼吸介助を併用して行う機械的咳介 助(Mechanically Assisted Coughing;MAC)を 導入開始した。MAC は神経筋疾患児に対する 理学療法として有効とされており

2 )

、近年は重 症心身障害児にも適応が進められている。しか し、重症心身障害児に対する実施効果・適応を 示す報告は少ない。今回、人工呼吸器管理中の 重症心身障害児 7 例に対し、MAC を実施し効 果を検討する機会を得たので報告する。

【呼吸理学療法】

 呼吸理学療法の目的は、肺の換気とガス交換 を改善させ、気道クリアランスの改善、気道閉 塞の改善、呼吸困難感と運動耐用能の改善を させることである

3 )

。その方法として、リラク セーション(呼吸筋のマッサージおよびスト レッチング)、排痰法(体位排ドレナージ、呼 吸介助、スクイージング、M A C)、呼吸訓練

(腹式呼吸、口すぼめ呼吸)、呼吸筋訓練、胸郭 可動域訓練、運動療法などがあげられる

4 )

。当 院において、児に対しては様々な方法で主に排 姫路赤十字病院誌 Vol. 40 2016

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人工呼吸器管理中の児に対するMechanically Assisted Coughingの効果

リハビリテーション技術課 行山 頌人、藤本 智久、西村 暁子、皮居 達彦

      井上 貴博、六山  梓、岡田 祥弥、森本 洋史

      中島 正博、西野 陽子、井上 紗希、大島 良太

      堀川 晃義、浜根 弥恵、大道 克己、岡  智子

      中野 朋子、橋本しおり、田中 正道

(2)

-60-

痰を促し、呼吸状態の維持、改善を目的に実施 している。

【M A C】

 MACとは MI-Eと呼吸介助を併用して実施す る、呼吸理学療法の排痰手技のひとつである

3,4)

。  MI-E とはフェイスマスクまたは気管切開カ ニューレに接続し、機械的に気道へ陽圧を加え た後、瞬時に陰圧へシフトすることで、肺から 高い呼気流速を生じ自然の咳を補強するか、ま たは人工的に咳を作りだし、気管支・肺に貯留 した分泌物等の除去を補助する装置で、排痰を 促すために使用される

3 )

(図 1 )。

 当院では医師の指示の下、主に入院中に循環 動態が落ち着いており、排痰が必要な児を対象 に導入している。

 導入方法としては、人工呼吸器の最大吸気 圧から試行し、児の顔色・動脈血酸素飽和度

(SpO

2

)・脈拍数(HR)が安定していることを 確認しながら、± 5 ㎝ H2O 程度までの範囲で 設定を行っている。

 リスクについては、圧損傷や循環動態への影 響があるといわれており、bullaや気胸、気縦 隔の既往のある患者、不整脈や心不全患者では 注意が必要である

5 )

  実 施 方 法 は、 排 痰 が 必 要 な 児 に 対 し て、

MI-E と呼吸介助を施行し、分泌物が吸引可能 な部分(主気管支、気管、咽頭喉頭レベル)ま で排泄されたら、吸引を実施し、その後呼吸状 態・循環動態が落ち着いている事を確認して理 学療法終了としている。(図 2 , 3 )

【対象と方法】

 当院小児科病棟入院中、または通院中の、呼 吸理学療法対象児で、人工呼吸器を使用してい る児 7 人(男児 4 例、女児 3 例)を対象とした。

疾患内訳は低酸素性脳症 4 例、ミオパチー 1 例、

染色体異常 1 例、急性脳症 1 例であった。実施 時平均年齢は3.2±1.7歳であった。なお、症例 報告を含む医学論文及び学会研究会発表におけ る患者プライバシー保護に関する指針に基づき 説明し、患者家族に同意を得た。

 測定項目は、 SpO

2

、 HR、分時換気量(Minute Volume;MV)とし、人工呼吸器のモニターよ り調査した。また、それぞれの項目をMAC 施 行前、施行後に計測し、それぞれ比較した。

 今回使用した機器は、MI-E としてフィリッ プスレスピロニクス合同会社製カフアシスト E70(図 4 )、人工呼吸器としてフィリップス レスピロニクス合同会社製トリロジーを使用し ている。

図1 M A C 原理

図2 M A C 実施風景

図3 M A C 実施風景

(3)

-61-

 なお、統計学的検定は、統計解析ソフト Stat Mate Ⅲを使用し、対応のあるt 検定を用 いて、有意水準 5 % 未満とした。

【結果】

 S p O

2

は 実 施 前 が99.1±1.2(%)、 実 施 後 が 99.1±1.4(%) となった。H R は実施前が96.9

±21.5 (bpm)で実施後が98.0±21.0 (bpm)と なった。MV は実施前が2.01±0.7 (L/min)で 実施後が2.33±0.8(L/min)となった(表 1 )。

SpO

2

、HRに関しては、実施前と実施後で、統 計学的有意差は認められなかった。M V に関 しては、実施前と実施後で、有意に増大した

(p<0.05)。

表1 カフアシスト実施前後での呼吸機能の平均値

実施前 実施後

t検定

SpO

2(%) 99.1±1.2 99.1±1.4

n.s HR(bpm) 96.9±21.5

98.0±21.0

n.s MV

(L/min) 2.01±0.7 2.33±0.8

*p<0.05

【考察】

  今 回 の 結 果 に よ り、M A C 実 施 前 後 で の SpO

2

、HRに有意な変化は観察されなかった。

これは松田

6 )

や山崎ら

7 )

と同様に M A C の使 用は、児への負担少なく使用可能であったとい える。MV に関しては、MAC 実施前後で有意 な増大が観察された。松田ら

6 )

は MAC 実施前 後で気道内圧の有意な減少が観察された、また

山崎ら

7 )

は MAC 実施前後で肺活量に関して統 計学的有意差はないが増大傾向であったと報告 している。MV は肺活量や気道内圧と影響して いるため、先行研究と同様の結果となったと考 えられる。

 M V が 増 大 し た 要 因 に つ い て 考 察 す る。

M A C 実施前は気道や肺に分泌物が貯留して

おりそれにより気道・気管支が閉塞し、肺胞 への空気流入量が減少している状態であった。

MAC 実施後は分泌物の除去により、気道・気 管支の閉塞が解消・軽減し、肺胞への空気流入 量が増大することで、MV の増大に繋がったと 考えられる。

 今回の結果により、MAC 実施により排痰が 行われ、気道・気管支の狭窄が改善し MV が増 大した事が示唆された。気道・気管支の狭窄が 改善することで、肺胞への空気流入量・低換気 部位の換気量が増大する。その結果、虚脱肺胞 にも空気が流入しやすくなり、換気血流比不均 等の改善に繋がると考えられる。また、換気量 増大により、肺のコンプライアンス増大、胸郭 の拡張効果も得られると考えられる。これらの ことより、MAC 実施は、排痰目的のみでなく、

肺炎・無気肺などの呼吸器症状増悪予防や再発 予防効果が得られると考えられる。

 また MAC は、気道分泌物の排泄を促す安全 な手段で、一度で多量に排痰が出来るため、吸 引時間・回数が軽減し、児や介護者の負担軽減 となる

8 )

、いったん手技を習得すると、医療従 事者以外でも確実に排痰が出来る手段である

9 )

、 また MAC 実施により入院回数・在院日数軽減

に繋がる

10,11)

と報告がある。加えて、 1 日の

うちに時間をおいて多く( 5 - 7 回/ 日)行う と排痰回数が増え肺炎の改善が得やすくなる

12)

という報告もあり、非医療従事者でも使用可能

であり、使用回数が増えることで負担軽減、医

療費削減、合併症発生減少効果が得られると期

待できる。そのため、今後は理学療法時のみの

実施だけでなく、家族への指導を進め、看護師

や家族と協力し、病棟や在宅でも排痰時には積

図4 カフアシスト E70

(4)

-62-

極的に MACを実施していくことが重要である。

【結語】

 今回、MAC 実施前後での MV 増大すること が呈された。MAC を実施することで、排痰が 促され、気道・気管支の狭窄が改善し、肺への 空気流入量が増大し、肺胞虚脱防止となり、換 気血流不均等の改善に繋がる可能性がある。ま た換気量の増大により、肺のコンプライアンス 増大、胸郭拡張効果も考えられる。更なる効 果の増大を期待して、看護師や家族と協力し、

理学療法時以外で、病棟・在宅でも積極的に MAC を実施していくことが重要である。

【参考文献】

1 )大森啓充,吉田幸生,村上澄恵ほか.重 症心身障害児の呼吸障害における血清 KL-6の有用性の検討.日小児呼吸器会誌.

2006;17:128-36

2 )三浦俊彦.神経筋疾患の呼吸理学療法.呼 吸ケア.2005;3;976-84

3 )千住秀明,眞渕敏,宮川哲夫.呼吸理学療 法標準手技.医学書院;2008.p.4-5,70- 71.

4 )黒川幸雄,高橋正明,鶴見隆正.理学療 法 MOOK 呼吸理学療法.三輪書店;1999.

p1-14.

5 )三浦利彦,石川悠加.特集-小児呼吸器疾 患をあなどるな!機械による咳介助(MI- E) :神経筋疾患の呼吸器ケア;小児科診療;

2015; 7 号(115);967-973

6 )松田瞳,野口春光,酢水悠輝ほか.重症心 身障害児・者におけるカフアシストの効果 の検討;みんなの理学療法第26巻;2014.

47-9

7 )山崎忍,小金澤敦,猪瀬久美子ほか.当院 の神経筋疾患入院患者に対する機械的排痰 補助装置を用いた排痰ケアについて.理学 療法研究・長野;2013;第42号36-9

8 )Bach JR: Mechanical insufflation-exsufflation.

Comparison of peak expiratory flows with manually assisted and unassisted coughing techniques. Chest 1993;104;1553-62

9 )石川悠加,三浦利彦.機械的咳介助-カフ アシスト(カフマシーン)の正しい使い方.

難病と在宅ケア;2006;12(2);49-52 10)西村暁子,藤本智久ほか.呼吸障害を有す

る児に対する MAC 導入の効果;日本理学 療法学術大会;2015,P2-C-0629

11)藤本智久,西村暁子ほか.在宅における人 工呼吸管理を必要とする児に対する MAC 導入の効果;日本理学療法学術大会;2014,

演題番号78

12)金子断行,村山恵子.神経筋疾患患児にお ける在宅呼吸リハビリテーション-肺内 パーカッションベンチレーターとカフア シストの比較-.難病と在宅ケア;2006;

Vol.11,No.10,7-9

参照

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