1 章 初動期災害対策と復興への課題
は じめ に
高橋 和雄 岡林 隆敏
1991
年 ( 平成
3)5月中旬か らの雲仙普賢岳の火山災害の発生当初には,悼 報伝達体制や住民の避難体制 は十分でな く,島原市の災害対策 に混乱が生 じ た。現地では当初,広報車 とチラシが住民に対する唯一の情報伝達体制で,悼 報機器,監視装置, 自主防災組織などは整備 されていなか った。また,長崎県 地域防災計画書において も,火山の章があるにもかかわ らず,具体的な形で記 載 されていなか った。 さらに,島原市 において も眉山の崩壊が危倶 されなが ら,避難路,避難所および自主防災組織 も未整備であった。 これ らの教訓を も とに火砕流 ・土石流に対す る情報伝達および避難対策がどのように整備された かを報告す る。最後 に
,1993年 ( 平成
5)10月時点の復興の現状 と課題を報告 す る。
1
節 初動期における情報の混乱
島原市では,噴火直後に火山対策の連絡会などを通 じて普賢岳の活動の様子 を知 り,眉山崩壊を対象 と した,主 と して ソフ ト面の防災計画を策定 して い た。水無川の土石流,火砕流は想定 していなか った。土石流に対 して具体的な 予警報装置が完成す る前に災害が発生 した。 また,発生 した土石流や火砕流の 規模 も大 きく,島原市の これまでの経験を越える事態とな った。島原市は人口
45,000人の小規模な市なので,島原市の防災関係者 は地域の様子を十分把握 し
‑ 207‑
てお り,災害に対応で きる自信を もっていたと思われ る。 また,住民の自主防 災組織 も一部を除いて未結成であ った。土石流発生の危険がある眉山ふ もとの 新山地区と千本木地区に土石流予警報装置があ ったのみである。眉山崩壊や土 石流発生の危険性を行政 も市民 も認識 していなか ら,防災にはあまり投資がな されていなか った。島原市では災害発生時 には,広報車や消防車で市民に避難 を呼びかけるか,あるいはチラシを作成 して全地域に配布 していた。 このチラ
シを全町内に配布す るには
2‑ 3時間かか るとい う。
災害が始 まった当初,情報混乱,情報の伝達が スムーズに行なわれない状態 が見受 け られた。 たとえば,災害対策本部の電話の内容を記録 していな いた め,いっ, どの情報を受 け取 ったかという記録が残 っていない。 このため,過 難完了時間などは災害対策本部の黒板 に書 いてあ ったに もかかわ らず記録 とし て残 っていない。電話の通話を録音す るなどの情報機器の導入を災害対策本部 の設置 と同時 に考えるべ きであ った。 また,情報の流れ も,
NHKニ ュー スで も取 り上げ られたように
6月
3日の大火砕流の直前の情報が,雲仙岳測候所‑
長崎県島原振興局‑島原市‑消防署‑消防団のよ うに国,県,市 という異 なる 機関を伝わる間に,ゆがんで しまった ことがあ った。 この とき,雲仙岳測候所 か らの 「 非常 に危険な状態にな った。避難 させて欲 しい」という電話通報が上 木場地区消防団詰所には 「 山の様子がおか しい。注意す るよ うに
」とゆがんで しまった。結果的には, この情報は消防団員の避難には生か されなか った。火 砕流の危険を知 らせ る雲仙岳測候所 と普賢岳の直下の水無用での土石流を心配 す る島原市,消防署 との問には危険度 に関す る認識のずれがあったため,主観 が入 ったこともゆがみの原因 とな ったと考え られ る。情報 は発信者か ら避難勧 告を発令す る市や町の担当者に直接届 くことが肝要である。 また,災害の初期 段階では,火砕流発生の情報が消防署か ら島原市災害対策本部には届いて も, 島原振興局に行かなか った。長崎県による水無用の土砂撤去の安全確保に,潤 防署か らの情報 は使 っていなか った。
雲仙岳測候所では,火口のす ぐ F に民家が密集 しているので,頻繁 に 「 臨時 火山情報
」や 「 火山活動情報」を発表 した。 しか し,情報を受け取 る島原市側 か ら,住民を避難 させたとか,火砕流が どこまで流下 したとかの連絡 はな く, 一方通行の流れになっていた。 火山情報の末尾には,常 に厳重な警戒が必要 と
‑ 208‑
1章 初動期災害対策 と復興‑の課題
記載 されているが,市災害対策本部や住民が どうすべ きとは指示 されていな い。防災担当者が判断 して避難勧告や外出の際の注意などを指示する必要があ る。火山情報は防災機関などの専門家向けの情報であるために,内容を伝え る だけでは,不十分 と思われる。 これだけの災害になると,雲仙岳測候所に広報 の担当者を置 くか,島原市災害対策本部か ら雲仙岳測候所に職員を派遣す るこ
とも必要であろ う
。「 臨時火山情報
」と 「 火山活動情報」は一般 にな じみに く い用語であるため,テ レビやラジオは
6月中旬か ら注意報や警戒にあたると再 三報道 していた。また,島原市の広報 しまば らにも専門用語の解説が掲載 され ていた。 しか し,火砕流の発生直後にはこの 2つの用語の解釈に大 きな混乱が あった。
土石流によって巨石や橋桁が流れる リアルな映像,溶岩 ドームの出現,火砕 流の発生など,刻々と変化す る火山活動の映像を求めて,テ レビ,新聞などの 報道陣が全国か ら島原に集 まって きた。今回のマスコ ミの取材活動のあ り方 も, さまざまな教訓を残 した。また,全国か ら駆けつけた防災関係者 も地元の 状況を把握 していない状態で コメン トを し,それがそのままマスコミに流れ, 情報の混乱の原因 ともなった。一部では学災 という言葉 も流れ,マスコミも学 者 も同 じだとす る話を現地で何度 も聞か された。
このような情報の混乱のなか,九州大学島原地震火山観測所の太田教授は, 状況を的確に把握 して冷静に対応 して きた。太田教授は,島原市災害対策本部 を通 じて,火砕流による災害の危険が迫 っていることを伝えて きた。 5月26日 の島原市による火砕流に対す る避難勧告 は, この結果発令された。 この発令の 約
30分後 に 「 火山活動情報第
1号火砕流に警戒」が発表 されている。
警戒避難勧告区域内に,マスコ ミ,防災,消防関係者が入 り込んでいること に対 して も,太田教授 は,
5月
29,30日に入 らないように島原市や市消防署を 通 じて依頼 していた。 この依頼によって島原市の消防団は上木場地区の詰所を 北上木場農業研修所か ら下流の白谷公民館 まで下げた。島原市 も記者に内容を 伝えたが,必ず しも真意が伝わ らず,結果的には生かされなか った。 このよう
な災害当初の システムが未整備な うちに生ず る情報の混乱をみると,災害時の 情報伝達にあた っては,災害対策本部に消防庁などか ら災害専門家あるいは情 報伝達の研究者を派遥す るようなシステムが必要 と考え られる。
1 209‑
火山活動 の さなか に も, 島原市の市民 は,眉 山の崩壊 に対 して過剰な まで ナーバ スにな っていた。誤報やデマが数回発生 し,その度 に島原市災害対策本 部や九州大学 島原地震火山観測所 は現地を調査 し,その結果を公表 した。島原 市災害対策本部で は,数度 にわた って, 「眉山」の情報のチ ラシを作 って全世 帯 に配布 した。眉L吊ま活火山でないとい う理 由で,火山噴火予知連絡会は眉山 に対 して コメン トしないため,活火山であ る普賢岳 と眉山に対 し対応で きる地 域 に存在す る九州大学島原地震火山観測所の存在 は,極めて大 きい ものであ っ た。災害は,地形,土地利用, 災害暦 など地域性 を抜 きにはその対策はで きな いので,地域 に存在す る大学が中核 になるべ きことを改めて示唆 している。
2 節 情報伝達体制 の整備
日)
火山活動の監視体制 長崎県 は1991年 (平成 3) 2月の降灰堆積 による 土石流を警戒 して雲仙岳緊急火山対策検討委 員会 を3月に設置 し,水*)廿の土 石流対策および火砕流を含めた監視体制を計画 して きていた。火砕流 による警水≠酎 ‥に計画 されていた監視カ メラ,熟映像 カメラは岩床山に6月中和 こ設置 された。仁 田峠に も監視 カメラが設置 された。警戒区域であ る水無目憐 域の土 石流の監視には,投下型の土石流検知セ ンサーが 自衛隊によ って設置 された。
これ らのワイヤーセ ンサーおよび投下型セ ンサーか らの無線通報 は仁田峠,中 尾川の ロボ ッ ト雨量計のデータとともに,島原振興局内の土砂災害情報処理装 置で集中管理 されている。セ ンサーが 切断 して作動 した場合,ただちに電話応 答通報装置を通 じて,NTT回線 よ り島原振興局,関係市町村,島原警察署, 島原消防署 に自動適話 され る。 テープの音声によ り, どの地点の ワイヤーセ ン サーが切れたかが通知 される。
土石流,火砕流用のカメラはその後,普賢岳北東側斜面監視用 と して上折楕 町に も設置 された。 これ らの映像 は島原市,深江町の災害対策本部 に もNTT
回線を通 じて送 られている。監視カメラは自衛隊 も
4
箇所 に設置 してお り,そ の映像 はケーブルテ レビで も住民 に流 されている。火山情報 を発表す る雲仙岳‑ 210‑
1章 初動期災害対策 と復興への課題
測候所においては, 6月 3日の火砕流以後,監視カメラ,熱映像カメラ,空振 計 と各種の観測器が導入 された。
(2)
眉山の監視体制 島原市民の関心が高か った眉山について も,観測体制 が整備 されて きた。当初は水位計,雨量計 しかなか ったが,
3月に林野庁が設 置 した 「 雲仙岳 ・眉山地域治山対策検討委員会
」の提言を受けて,長崎営林署 眉山治山事務所 は山体やその周辺 に,伸縮計,傾斜計,加速度計,ひずみ計な どの観測機器を設置 し,観測体制の整備を図 った。 これ らの観測データは, ケーブル搬送により営林署内の眉山山体変動観測 システムで一括管理 される。
これ らの観測データを もとに,眉山の崩壊につなが る前兆現象を把え,防災対 策に使用す ることになっている。眉山については,九州大学島原地震火山観測 所で も,九州大学西部地区災害資料セ ンターと協力 して, これまでの地下水位 変動の他に,地震計,地すべ り計, GPS 観測を始めた。 さらに,林野庁が新 しく出来た観測坑道を利用 して,超広帯域地震計,気泡型傾斜計を設置 して, 観測体制を強化 した。また,地下水位の変動データも人手による読み取 りを改 め,パ ソコンにより,消防署にデータが直接届 くように改善 した。
このように,各機関の観測体制が完成す ると,長崎県は眉山の異常を予知す るために,新たに 「 島原地区防災検討委員会」を1
0月2
3日発足 させた。 この香 員会では,林野庁などの各機関が観測 しているデータを もとに,総合的判断を 加え各専門分野か ら詳細な分析を試みる。各機関か ら地震,山体変位,光波観 刺,雨量などの観測データが
7日ごとに各委員に送 られ,検討結果は必要に応 じ 長崎県知事に報告 される。 このように,観測体制が整備 されて きて,
7月 後半以降は以前多 く見 られたデマの発生は減少 した。
(3)
火山情報の連絡体制 長崎県および島原半島の
1市
16町の地域防災計画 書には火山の葦があるにもかかわ らず,火山活動に伴 う被害の発生を十分に想 定 していなか ったため,情報伝達体制は整備 されずにいた。平成
3年度までの 長崎県地域防災計画書には火山活動 「 雲仙岳」災害対策計画は第
3編災害応急 対策計画の第21 章に記載 されていた。平成
3年度には
,1990年 ( 平成
2)11月 か らの噴火を教訓に,火山情報が地域住民のみな らず雲仙岳の登山者にも届 く ように書 き改め られた。1
991年 ( 平成
3) 5月末か らの火砕流の発生直後か ら 臨時火山情報および火山活動情報が頻繁に発表 されだす と,雲仙岳測候所
‑島
‑ 211‑
原振興局‑島原市のルー トでは 伝達の途中で情報が歪んだ り,時間的な遅れ が生ず ることがわか った。 このために,雲仙岳測候所 と防災機関の問にホ ッ ト ライン設置や
FAX
による伝達体制が導入 された。特に,島原市には雲仙岳測 候所や長崎海洋気象台か らの情報が直接届 くように伝達体制が改め られた。 ま た,住民の避難状況を島原市か ら雲仙岳測候所に連絡す るなど,実情 に応 じた 体制が取 られた。噴火開始以前の雲仙岳の観測体制および機材 は雲仙岳測候 所,九州大学島原地震火山観測所および長崎営林署の11人, 13機材であった。しか し,噴火が始 まり活動が活発になるとともに充実 ・強化 されて きた。気象 庁による機動観測,大学合同観測班,陸上 自衛隊第16普通科連隊,長崎県およ び島原市が観測および監視を行 っている。 1992年 (平成4年)5月現在の観測 体制 は17人 101機材 (自衛隊を除 く) とな って いる。 この他,科学技術庁, 海上保安庁,通商産業庁,建設省などの国の機関が組織的な観測,測定および 調査を行 っている。 このような各機関の収集 した情報を速やかに伝達するため に,平成
4
年度の長崎県地域防災計画書‑)では,九州大学島原地震火山観測所 および陸上 自衛隊の情報 を活用 した臨時的な伝達方法 を採用 し,実施 してい る。島原の現状 にあわせた効率のよい システムづ くりの一環であ るが,気象 庁,建設省,林野庁,長崎県,島原市 と行政機関が異なるので情報の一元化 ま で進んでいない。水無用の土石流監視 も道路管理者,河川管理者,消防署,響 察署, 自衛隊,島原市,深江町が独 自に行 っている。使用す る無線 も異なるの で情報の交換 は行われていない。島原振興局でまとめて初めて市町村に伝達 さ れ る。( 4)
島原市の情報伝達体制 噴火開始時の島原市情報収集 は電話回線のみで あ ったが,情報収集の混乱および遅 れをな くす ために, ホ ッ トラ インお よび ファクシミリの導入がなされた。 さらに,長崎県や陸上 自衛隊による火砕流や 土石流監視 カメラの映像を受 け取 る端末が導入された (図 1)。 水無川流域の 警戒区域が解除 され ると,水無用の土石流や溶岩 ドームの監視,雨量の観測の ため,島原市が独 自に機器を導入 した2) ,,島原市か ら住民に対す る情報伝達体制 も,防災行政無線 (同報系)が1991年 (平成3年)8月末に導入されたが,雨の 目に閉め切った屋内では聞えないこ とが判明 した。 このため,戸別受信機が各家庭 に配布 された。 1991年 (平成
一一‑‑2仁 ‑‑‑
1葦 初動期 災害対策 と復興‑の課題
■ ● I I 島 原 市 災 害 対 策 本 部
太 枠 情報収集機関
細 枠
情 報
伝 達 機関
図
‑ 1島原市 の情報伝達体 制 ( 気 象 ・火 山 ・土石流 その他関連情報 )
3) 8
月末か らの住民の警戒区域の一時入城の際には携帯用の戸別受信機が利 用 された。島原市独 自の方式 といわれている
。1992年 ( 平成
4)に入いると, 避難勧告が解除 された水無川下流域の土石流の発生 に備える体制が必要にな っ た。土石流の発生監視 には, ワイヤーセ ンサーおよび監視カメラが使用 され
た 。
ワイヤーセ ンサーは,す ぐに復旧で き,流下速度が遅 い水無川の土石流に よる避難対策には有効であ った。
‑2 1 3‑
噴火前には,島原市の 自主防災組織 は5組織のみであ った。島原市 は自主防 災組織を育成す る計画であ ったが,噴火に伴 う対策に追われ,平成3年度 には 自主防災組織 は7地区で新たに結成 されたのみで,結成率 は4.4%であ った。
平成4年度 に入 って, 自主防災組織の結成 に,島原市義援金基金よ り支出され ることが決め られた。 この結 果10月末 には,全町内会が 自主防災組織 を結成 し,結成率 は100%に達 した。 しか し, 自主防災組織 の活動 は これか らであ る。 自主防災組織を育成 し,定着化 させ るためには,マニ ュアルの作成,避難 訓練,勉強会, リーダーの育成,行政の支援などの きめの細かい対応策が望 ま れる。 この地区は地域の コ ミュニテ ィがあるので,地域行事のなかに防災を取
り込む ことを考えるべ きである。
( 5)
島原市災害復興計画における予警報 ・避難体制 島原市災害復興検討香 員会で は,土石流に対す る緊急対策および火山地 における長期的な情報収集 ・ 伝達体制を復興計画に盛 り込んでいる二〜)。① 緊 急 対 策
a 水無川流域では,実測 雨量 による土石流発生の予知が困難 とな ってお り, これまでの雨量を中心 とす る予知技術や観測デー タを基礎 に普賢岳周 辺の状況変化 と土石流発生の相関関係を明確 に した上で,より確実な予知 手法を構築 し得 るよ う早急に関係機関に働 きかける。
b 一方,予知の困難 さを補完す る上で も,広域的な気象情報の収集 と処理
・伝達の休制を一層強化す る。
C 水無川流域においては,警報発令や避難指示の主体,および道路や河川 などの主要施設の管理者が異な り,特 に情報管理や伝達の一元化を図 るた め,関係機関の連携を一層深める。
② 長 期 構 想
島原市においては,火山災害 に対す る防災対策の長期的継続が必要であ り, ソフ ト面では,特に災害情報 システムを構築 し,防災情報の集約化を図 る。 ま た‑‑ ド面では 災害情報の管理伝達の中枢機関 としての島原市防災セ ンター の設置を検討す る。
‑214
1章 初動期災害対策 と復興への課題
3
節 災害の長期化 と復興への課題
雲仙普賢岳の火山災害の初動期 における災害応急対策の課題を述べた。 これ らは,現在解決済にな っているもの もある。 この災害を教訓にシステムの見直 しも行われている。
現在,雲仙普賢岳の火山災害は,
3年が経過 しようとしている。 この間,災 害の長期化に伴 って被災者対策が見直され,災害対策基金の増額および
21分野
98項 目の救済対策の対応 となっている。 さらに,災害応急対策に加えて終息後 の‑‑ ド・ソフ ト面の復興計画 も策定 された。
雲仙岳の火山活動は1
992年 ( 平成
4)の年末か ら1993年 ( 平成
5) 1月にか けて終息の兆 しがあった ものの再び活動が活発化 している。
4月末か らの千本 木地区での土石流,火砕流による大災害で,
2年前の水無川の上木場地区の被 災の再現を招いた。水無川流域の対策の教訓を生か した中尾川流域や眉山の第
6渓の土石流対策,水無川上流部での土石流の拡散防止対策および島原の孤立 防止対策を早急 に行 うことが最重要課題である。 さらに,守台山,砂防,河川, 道路,海 と各セ ッションを越えた対策が是非 とも必要である。
これまで,予警報 システムや情報伝達 システムはかなり整備 されている。 し か し,災害の長期化に伴 うたび重なる避難および同時多発的な災害に的確に対 応す るためには,現在結成 されている自主防災組織が実質的に活動で きるよう な体制づ くりを支援す ることが望 まれる。病人や高齢者がいる家庭の避難誘導
も自主防災組織で対応する必要がある。
これまでの雲仙普賢岳災害に関する砂防計画の基本構想,河川 ・道路などの 都市基盤の復興対策は災害が終息することを前提に策定 されている。 しか し, 火山活動が継続 しているので,遊砂地や矢板工などの応急対策で被害の拡大防 止を して きた。応急対策はその場その場でできることを行 ってきているために 全体か ら見た場合に,有効に機能 しているとは限 らない。平成
5年度に入 って か ら恒久対策 と応急対策の中間の緊急対策 (
2‑ 3年で対応)がやっと導入 さ れた。緊急対策によって安全が どの程度確保されるかが,今後の復興のカギを 握 っている。 これまでの噴火の教訓を もとにまとめ上げた被災者の生活再建,
‑ 215
‑
防災都市づ くりおよび地域振興か らなる復興計画を もとに地元,行政が一体 と な って取 り組む体制が整 って きた。地元の意向を もとに災害対策に取 り込む こ とが復興の基本であ り,や っと望ま しい形 にな って きたといえる。特に,安中 三角地帯の嵩上げ構想 は地域の要望によってで きた復興 プラ ンであ り是非実現 して欲 しい。 また,被災者の生活再建の意向 も固まりっつあ る。 このように, 現在復興に向けての形がや っと見えだ した状況にある。災害の長期化に伴 い, 被災地以外で も降灰 によ って,生活,農業,商工業に大 きな障害 を受 けてい る。火山活動 と共生 した地域復興に向けて,総合的な視点か らの対策が必要で ある。
ま と め
今回の噴火災害の初動期の情報伝達の調査か ら得 られた事実 と教訓を もとに 提言をまとめると,
( 1) 噴火までの活動が
198年前の噴火とよ く似ているため火山対策 と して1
98年前の ス トー リーにこだわ りす ぎて,火砕流への対応が取れなか った。火山の 防災対策には,有史以前の噴火記録 も参考 にすべ きである。
(2)
水無用の土石流には事前の行政 による緊急対策によって対応で きた。 し か し,住民‑の情報伝達,避難体制は未整備で,人海戦術によって住民を避難 させた。住民 は危険が迫 るごとに安全な避難所‑ と移動 させ られた。防災計画 の策定 には,当初か ら市や町の担当者を参加 させてお くことが必要である。
( 3) 火砕流の危険性を正確 に行政や住民 に伝え ることがで きなか ったため に,火砕流 に対す る対応が遅れた。火砕流で亡 くな った クラフ ト夫妻 による
「 火山災害 を知 る」の ビデオなどがあ った ら,啓蒙用 と して きわめて有効で あ った と思われ る。
( 4) 警戒区域の設定に,火砕涜,土石流,火山泥流に対す る‑ザー ドマ ップ が始めて使用 された。 また
6月
8日の火砕流 もハザー ドマ ップ内に納 まり,そ の有効性が評価 された。
(5)
避難勧告や警戒区域を設定す る災害対策本部 は素人集団であ り,災害発 生当初 には情報の混乱が見受 け られた。情報化社会にあった情報伝達機器を備
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1章 初動期 災害対策 と復興への課題
えること,および情報 は発信者か ら担当者に直接伝えることが必要である。 ま た,事前の関係機関間の綿密な打合せおよびシ ミュレーションが必要である。
消防庁などに専門家を登録 してア ドバイザーとして派遣す るシステム も考え ら れる
。(6)
噴火当初に比較すると,火山活動,土石流,山体崩壊に関す る監視体制 が著 しく整備 され,情報伝達体制が確立 した。 これ らの努力によって,デマや パニ ックが減少 した。
(7)
住民の合意の形成,全体計画の作成,地元の自治体 ( 市や町) と国およ び長崎県の調整,事業化 と日常の行政の枠内を越えた手法が災害復興には必要 である。雲仙普賢岳の火山災害の復興が,災害復興の新 しい見本になるように すべ きである。 このためには復興計画 と事業化するための行政の枠を越えた推 進支援体制 と地域のまとまりが必要 と思われる。
本報告をまとめるに当たって島原市,長崎県災害対策本部をは じめ数多 くの 関係機関および個人に資料および情報提供の協力を得た。著者等は,雲仙岳の 火山災害の防災対策,復興対策および国 レベルの システムの見直 しなどの,
10件の委員会の委員長あるいは委員 として,調査結果を具体的に反映 させるため の努力を している。また,島原における勉強会,講演会およびシンポジュウム の講師やパネラーとして地元市民 に調査結果を反映 している。 この間,文部省 の科学研究費
5件および学内特定研究
5件の援助( 分担 もしくは代表) を受けた
ことを付記す る。
参 考 文 献
1) 長崎県防災会議 :長崎県地域防災計画書 ( 平成 4年 5月修正)
2)島原市防災会議 :島原市地域防災計画書 ( 平成
4年修正 )
3)
島原市 :島原市復興基本構想 「とり戻 そ う 水 と緑 の島原を」,平成
5年2月‑ 217‑