肝切除後のドレーン至適管理基準の検証
日本大学医学部外科学系消化器外科学分野
三塚 裕介
申請年 2016 年
指導教員 高山 忠利
肝切除後のドレーン至適管理基準の検証
日本大学医学部外科学系消化器外科学分野
三塚 裕介
申請年 2016 年
指導教員 高山 忠利
目次
Ⅰ.要旨---1
Ⅱ.背景---3
Ⅲ.ドレーン至適管理基準の検証---6
1.目的---6
2.対象と方法---6
2-1.患者---6
2-2.手術---7
2-3.ドレーン管理---8
2-4.評価項目---9
2-5.統計学的解析---9
3.結果---10
3-1.患者---10
3-2.患者背景---10
3-3.ドレーン管理基準の検証---11
3-4.Validation患者の背景因子の検討---12
3-5.合併症の発生数とその内訳---12
Ⅳ.考察---13
Ⅴ.図表---17
Ⅵ.引用文献---25
Ⅶ.研究業績目録---32
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I.要旨
背景: 2006年7月から2009年8月に肝切除を施行した316例を対象に、腹腔 ドレーン至適管理基準 “3 x 3 rule”(術後3日目の腹腔内ドレーンの排液中ビリ ルビン値が3.0 mg/dl以下かつ塗抹培養陰性のドレーンは抜去する)を作成した。
この基準を順守することで、過去に行われた87%(275/316)の症例を対象とし たデータにおいて有害事象なく安全に管理できると予測した。
目的: 腹腔ドレーンの至適管理基準の正当性を異時性集団で検証する。
方法: 2011年1月から2012年6月に肝切除術を施行した274例(腹腔内留置
ドレーン総数493本)を対象とした。術後 1,3,5,7日にドレーンの塗抹培養検査 と排液ビリルビン値の測定を行い、3 x 3 ruleに従いドレーンを管理した。この 基準における総感染率、合併症率、術後在院日数、医療コストを検討した。
結果: 274例を対象としたValidation set (2011~2012年)における3 x 3 rule の 検証では、Test set(2006~2009年)と比較して総感染率は [4例 (1.5%) vs. 58 (18.4%), p<0.01]、合併症率は [16例 (5.8%) vs. 54 (17.1%), p<0.01] と有意に減少 し、術後在院日数は[11日 (6-73) vs. 16 (9-59), p=0.04]へと有意に短縮された。医 療 コ ス ト に お い て も 有 意 に 減 少 し た [1,453 米 ド ル (968-6,859) vs. 1,847
(4,667-9,498), p<0.01]。また再手術が必要となった5例は、腹腔ドレーンによる
情報で早期に再手術を施行し、術後は明らかな合併症なく経過した。
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結語 肝切除後の腹腔ドレーン至適管理基準 “3 x 3 rule”の正当性は異時性集団 においても再現された。
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II.背景
近年肝切除の成績は向上し、日本肝癌研究会による第 17 回全国原発性 肝癌追跡調査報告(2002~2003 年)では肝細胞癌に対する肝切除後の手術死亡 率は0.8%である。しかし、術後合併症は 30%~40% (1)、術後在院日数は2 週 間以上と消化管手術と比較し満足できるものではなく周術期管理の更なる向上
が望まれる(2-4)。
肝切除術における腹腔ドレーンの留置は、術後早期の胆汁漏や出血の予
見、腹水貯留の治療といった合併症の予知に必要とされてきた(2-11)。一方、
外科感染症の観点からは、腹腔ドレーン留置が逆行性感染を助長し、surgical site
infection (SSI) の発生に関与するとされ、早期抜去や腹腔ドレーン非留置が推奨
されている(12-14)。
これまで肝切除後の腹腔ドレーンの是非については、ドレーン留置群と
非留置群の4つの無作為化比較試験(RCT)を含む多数の試験で検討されてい
る (Table 1) (10,13-16)。その結果、腹腔内ドレーン留置は腹水の漏出や逆行性
感染、創部感染を増加させると報告された。また腹腔ドレーン留置は術後在院 日数を延長し、合併症率を軽減させず、肝切除後腹腔内ドレーン留置の習慣化 について異論を唱えた。Kyodenらは1269例の腹腔ドレーン留置を伴う肝切除に ついて検討した(10)。感染率は他の RCT と差は認めないが、腹腔ドレーン留
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置は腹腔内の腹水貯留を軽減し、胆汁漏の認識や biloma 形成の軽減に効果的と した。しかし、いずれの報告でも術後の腹腔ドレーン管理は曖昧で一定化され
ていないため、ドレーンの是非を比較できない(17-21)。よって現在も多くの施 設で術後の腹腔ドレーンは管理基準が定まらないまま留置されている。
腹腔ドレーン非留置はドレーン関連の合併症のリスクを軽減するが、ド レーンによる情報が得られないという欠点がある。一方、腹腔ドレーン留置は 再手術が必要となるような重症な合併症を早期に予測するための情報が得られ るが、ドレーンの抜去時期は定まらず長期留置により逆行性感染のリスクは増 大する。よって我々は腹腔ドレーン留置の是非を議論する前に、最小限のリス クで最大限の効果を得られるドレーン抜去基準が必要と考えた。
ドレーン管理基準は、2006年7月から2009年8月に腸管切除や胆管吻 合のない肝切除を施行した 316 例(腹腔内留置ドレーン総数 514 本)より作成 した。腹腔ドレーン排液の培養結果より感染群と非感染群の 2 郡に分け、主要 な感染に関わる因子を後ろ向きに検討した。腹腔内に挿入されたすべての腹腔
ドレーンに対して術後 1,3,5,7日に排液量、排液中ビリルビン値、培養を経時的 に検査し感染症発生との関連を検討した。多変量解析では術後 3 日目の排液ビ リルビン値が最も強い因子であった [オッズ比: 15.11, 95%信頼区間3.04-92.11,
p<0.001] (Table 2)。感染をイベントとし、至適排液ビリルビン値の決定のため
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にreceiver operating characteristic (ROC) のarea under the curve(AUC)を算定し
た (Figure 1)。ROC 解析では術後 3 日目の腹腔ドレーンの排液ビリルビン値が
3.01mg/dlで、AUC は83.6%という結果であった。以上より術後3日目の腹腔ド
レーンの排液ビリルビン値 3.0 mg/dl 以下がドレーン抜去の最適時期と判断し 3x3 rule を作成した (22)。
しかしこの研究は後ろ向き試験であるが故に、本管理基準で扱われた症
例は40.5% (128/316例)であった。よって実際に本基準を異時性集団で導入しド
レーン管理の安全性と情報としての有用性を検証する必要がある。
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III.ドレーン至適管理基準の検証 1.目的
ドレーン至適管理基準 “3 x 3 rule” は “術後3日目の腹腔内ドレーンの 排液中ビリルビン値が 3.0 mg/dl 以下かつ塗抹培養陰性のドレーンは抜去する” と定義され現在臨床で使用されている。本研究の目的は3 x 3 ruleの正当性を前 向きに患者データ集積し、異時性集団で検証することである。
2.対象と方法
2-1.患者
2011年1月から2012年6月に腸管切除や胆管吻合のない肝切除術を施 行した 274 例(腹腔内留置ドレーン総数 493 本)を対象とした。術後の腹腔ド レーン管理は全て3 x 3 ruleに従って行い、データは加療に関わらない第3者に よって前向きに集積された。ドレーン作成時に検証した316例を‟Test set”、今回 集積した274例を‟Validation set” と定義した。
本研究は日本大学医学部附属板橋病院の臨床研究倫理審査委員会の承 認を得た(承認日:2011年1月7日、承認番号:RK-101208-6)。
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2-2.手術
肝切除の術式と適応は、本邦で最も肝切除術に頻用されている幕内基準
に準じている(23,24)。この基準は C 型肝炎を背景とした肝硬変症併存の病態を 想定して作成され安全性を担保されたもので、肝機能条件毎に可能な最大術式
が決定される(Figure 2)。まずコントロールの悪い腹水併存患者は外科切除の適 応外とし、肝機能条件は血清ビリルビン値および indocyanine green 15-minute
retention rate (ICG-R15) によって評価される。基本的に肝細胞癌は系統的切除、
転移性肝癌に対しては部分切除を施行する。肝臓はCouinaud分類でS1〜S8の8 つの亜区域に分けられ、尾状葉(S1)、外側区域(S2,S3)、内側区域(S4)、前
区域(S5,S8)、後区域(S6,S7)の5区域に分けられる。Couinaud分類における
2区域以下の肝切除を minor liver resection、3 区域以上の肝切除を major liver
resectionと定義した。肝離断は間欠的肝流入血流遮断法を施行し、鉗子圧挫法で
行った。肝動脈、門脈血流を遮断し、圧挫は15 分間で施行し血流遮断解除は 5 分間とした。Glisson 枝はすべて絹糸で結紮処理した(25,26)。肝切除施行後に、
離断面にガーゼを敷き胆汁漏の有無を確認した。複数個所の肝切除や葉切除の ような離断面積の大きな症例に対しては、術中胆道造影を施行し肝離断面から の胆汁漏が無いことを確認した。肝離断面の出血や胆汁漏を認めた場合は縫合 処理し、組織の接着・閉鎖を目的として離断面にフィブリン糊を塗り補強した。
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抗生剤はcefazolinを使用し、術中は3時間おきに使用し術後3日目まで2 g/日
で予防投与した(27-29)。
2-3.ドレーン管理
腹腔ドレーンは10 mmイリゲーションプリーツドレーン(Prates drain®;
Sumitomo Co, Ltd, Tokyo, Japan) を使用した。刺入部から留置部位までが最短距
離かつ離断面に対してなるべく並行になるよう留置した。1つの離断面につき 1本のドレーンを留置するため、複数個所の切除の場合は複数本のドレーンが 留置された。感染の有無は、排液のグラム染色による塗抹検査で菌が検出され た場合を感染あり(陽性)とした。迅速なドレーン抜去のために短時間で結果 が得られる塗抹検査を臨床使用した。
術後 1,3,5,7日にドレーンの培養検査と排液ビリルビン値の測定を行い、
術後3日目の塗抹検査が陰性かつ排液ビリルビン値が3.0 mg/dl以下の場合はド レーンを抜去した(22)。胆汁漏や感染を認めた場合は腹腔ドレーンを抜去せず、
遷延する場合は数日で細い腹腔ドレーンに入れ替える。その後胆汁漏が軽快し た事を確認しながら徐々に腹腔ドレーンを抜去した。
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2-4.評価項目
総感染率、合併症率、術後在院日数、医療コスト、について test set と
validation setで比較した。本研究では腹腔ドレーン排液感染を評価する目的で
あるため、創部感染と分けて比較した。SSIは表層感染と深層感染に分けられ、
創部感染は前者、腹腔ドレーン排液感染は後者に分類される。腹腔内感染は症 状の有無に関わらず、ドレーン排液の塗抹検査で菌が検出された場合と定義し た。
術後合併症の評価にはClavien-Dindo分類を使用した(30)。この分類は 5 段階に分けられ、grade III以上を重篤な合併症と設定した。腹腔内感染はgrade III、創部感染はgrade Iに分類された(Figure 3)。
2-5.統計学的解析
連続変数は中央値で表し、単変量解析にはχ2検定、Fisher正確確率検定 を用いた。ドレーン感染と抜去時期の比較にはKaplan–Meier法を用い、Log rank 検定で比較した。有意差はp値<0.05とし、統計処理はJMP 8.0 (SAS Institute, Cary, North Carolina, USA).を用いた。
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3.結果
3-1.患者
肝切除が施行された 306 例中、胆道再建や腸管吻合などを施行した 32 例は本研究から除外され274例を対象とし解析した(Figure 4)。その内訳は肝細 胞癌(n=205)、転移性肝癌 (n=56)、肝内胆管癌 (n=8)、胆嚢癌 (n=2)、その他 (n=3) であった。対象患者中の93.1%(255/274例)が3 x 3 ruleに該当し、19例は術 後3日目の腹腔ドレーンの排液ビリルビン値が3.0 mg/dl以上の胆汁漏と診断さ れた。胆汁漏を認めた19例のうち3例は再手術を必要とした高度な胆汁漏であ った。また腹腔ドレーンの排液感染率は1.1%(3/274例)であった。
3-2.患者背景
Validation setとTest setの2群間で患者背景を比較した。年齢 (p=0.61)、 肝細胞癌 (p=0.83)、血清アルブミン値 (p=0.86)、血清ビリルビン値 (p=0.89)、 alanine aminotransferase値 (p=0.64) に有意差は認めなかった(Table 3)。しかし ながら Validation set は血小板数 [14.7 x 104 /mm3 (2.1-67.1) vs. 19.9 (5.7-51.0), p<0.01] は有意に低値で、ICG-R15 [11.7% (1.34-74.6) vs. 9.8 (2.2-41.6), p=0.04]は有 意に高値で、糖尿病患者 [96例 (35.0%) vs. 59例 (18.7%), p<0.01] は有意に多か った。また多発腫瘍例 [81例 (29.6%) vs. 60例 (18.9%), p<0.01], 再肝切除例 [50
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例 (18.2%) vs. 32例 (10.1%), p<0.01]においてもValidation setで有意に多かった。
手術因子ではmajor liver resection (p=0.66) 、系統的切除 (p=0.18)、手術 時間 (p=0.87), 肝血流遮断時間 (p=0.43) 、出血量 (p=0.14) 、再手術率(p=0.58) 全てにおいて2群間で有意差を認めなかった(Table 4)。
3-3.ドレーン管理基準の検証
3x3 ruleによる腹腔ドレーン管理はvalidation set は255例(93.1%)に施
行され、Test setの 128例(40.5%)と比較し有意に高かった。したがって腹腔
ドレーンの留置期間は有意に短縮された [3日 (1-30) vs. 7 (2-105), p<0.01]。腹腔 ドレーン排液感染は有意に減少し [4 例(1.5%) vs. 58 (18.4%), p<0.01]、術後在院 日数は有意に短縮された [11日 (6-73) vs. 16 (9-59), p=0.04]。Validation setでは
Clavien-Dindo 分類で grade III 以上の重症な合併症患者は有意に低く [16 例
(5.8%) vs. 54 (17.1%), p<0.01]、医療コストも有意に減少した [1,453 米ドル (968-6,859) vs. 1,847 (4,667-9,498), p<0.01] (Table 5) 。
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3-4. Validation患者の背景因子の検討
3 x 3 ruleで扱った症例(n=255)とそうでない症例 (n=19)での患者背景
の比較では、major liver resection (p=0.42)、再肝切除 (p=0.61), 手術時間 (p=0.67)、 肝血流遮断時間 (P=0.32)、出血量(P=0.06)は有意差を認めなかった (Table 6)。 3x3 rule 管理内のドレーン留置期間は有意に短縮され[3 日 (1-3) vs. 5 (5-30), p=0.01]、重症な合併症の割合は有意に減少し [8例 (3.2%) vs. 8 (42.1%), p<0.01]、 術後在院日数は有意に短縮された [11日 (6-25) vs. 16 (9-73), p<0.01] 。
3-5. 合併症の発生数とその内訳
肝切除後における全合併症率は 27.8%であった。Clavien-Dindo 分類で grade Iは11.7% (n=32)、 grade IIは10.2% (n=28)、 grade IIIは4.0% (n=11)、grade IVは1.5% (n=4)、grade V: 0.4% (n=1)であった。 Grade Iに分類される創部感染 は6.2% (n=17)であった。
術後に再手術が必要となった患者は5例で、すべて腹腔ドレーンの排液 情報より判断された。高度な胆汁漏を認めた 3 例は、ドレーン排液のビリルビ ン値をもとに術後2日以内に再手術(胆汁漏閉鎖術)を施行した。2例は後出血 で再手術を施行し、いずれも術後1日以内に再手術を施行した (Table 7)。再手 術により重症化した症例は認めなかった。
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IV.考察
本基準の導入前、逆行性感染を含む腹腔ドレーン排液感染率は 18.4%
(58/316例)であった。これに対して本基準の導入による予想腹腔ドレーン排液感
染率は2.2%(7/316例)であり、腹腔ドレーン管理順守率は87% (275/316 例)であ
ると予想されたが、逆行性感染、術後在院日数の短縮、医療コストの削減はす
べて理論値であった。Test setの316例の内、3日以内にドレーンが抜去された 実症例は 40.6%と少なかった。残りの症例は本来抜去可能であった腹腔ドレー ンが長期に留置された。総感染率が 18.4%(58/316 例)と高値であったのは腹 腔ドレーンを抜去する基準がなかったことで、留置期間が延長したためと考え
る。Validation setでは術前肝機能が悪い条件であるにも関わらず、感染率や在院
日数などが有意に良好であった。これは93.1%の患者が3 x 3 ruleに従い術後3 日目にドレーンが抜去され、腹腔ドレーンの長期留置が防止されたことが感染 率低下の要因となった。腹腔ドレーンの長期留置による逆行性感染が、在院日 数の延長や合併症の増加につながったと考えられた。
肝切除は胆汁漏や出血が不可避な術式である。一方、胆汁漏が起こって
からドレナージを施行する事で十分とする考えもある(32)。しかし経皮的穿刺 による危険性や、感染巣が深部に存在し穿刺困難症例もあるため腹腔ドレーン 留置そのものの短所がなければ留置の意義は十分にある(9,10)。
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3 x 3 ruleに基づき術後3日目で腹腔ドレーンを抜去した症例において、
早期抜去による腹腔内合併症を認めなかった。胆汁漏は腹腔内ドレーン排液の 性状によって診断するが、その定義は(1)肉眼的なドレーンからの胆汁流出
(2)ドレーン排液の総ビリルビン値が血清総ビリルビン値の 3 倍以上(3)
ドレーン排液中の総ビリルビン値が5.0 mg/dl以上など様々である (10,32-37)。 術後3日目で胆汁漏や感染を認めた症例は、継続留置し術後5日、7 日 目の排液ビリルビン値を再測定し 3.0mg/dl 以下の場合は抜去する事で重症化す る症例は認めなかった。
留置期間が7日以上となるか、感染が証明されている症例は腹腔ドレー ン入れ替えを行う。Test set、Validation setにおいて腹腔ドレーン入れ替えによる 有害事象の発生や腹腔内の膿瘍形成などの合併症は認めなかった。Validation set におけるドレーン交換率は2.9% (8/274例)であった。また排液量はドレーン長期 留置の要因と考えられていたが、本研究において排液量は肝切除後の感染の発 症と関連しなかった。
次に腹腔ドレーン留置による早期の重症な合併症の予見に関して検討
した。Validation setにおける術後の重症な合併症(Clavien-Dindo 分類のgrade III
以上)は5.8 % (16/274例)であった。当科では術後1日目の排液ビリルビン値が
20 mg/dl以上と高値である場合、翌日にも排液ビリルビン値と排液量を計測し、
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増悪を認めた場合は再手術の適応としている。ただし胆汁漏に関してはドレナ ージが良好であれば重症化しないため、排液ビリルビン値が軽快する症例を除
外するために翌日に判断している。術後出血に関してはInternational Study Group of Liver Surgery (ISGLS)の基準(Table 11)を参考にヘモグロビン値の3.0 g/dl以 上の低下、腹腔ドレーンの排液ヘモグロビン濃度が3.0 g/dl以上、輸血によるヘ モグロビン値の改善を認めない症例を再手術の適応としている(38)。再手術が 必要となった症例は 5 例認めたが、胆汁漏や後出血に対し早期に再手術を施行 した結果、再手術後の在院日数は他の合併症のない症例と変わらなかった。再 手術の判断が遅れないようにするためにも腹腔ドレーンによる情報は重要な要 素と考える。
逆接的に考えれば 93.1%の患者でドレーンは不要であったと考察できる。
しかし3 x 3 ruleによる管理を行えば、術後3日でドレーン抜去が可能でありド
レーン留置のリスクは最小限である。腹腔ドレーンの不要な長期留置を防止す ることで、感染率や在院日数の低下、合併症の軽減以外に医療コストにおいて
も有意な減少を認めた。3 x 3 rule作成時より手術点数は増加し、診断群分類包 括評価加算も高くなったが、在院日数の短縮により入院費自体が低くなり、コ ストの面においても3 x 3 ruleの有用性が証明された。さらに腹腔内ドレーン留 置で予見できる重症な術後合併症に対する対応が可能となった。
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以上より肝切除後の腹腔ドレーン管理基準 “3x3 rule” は異時性集団に おいても有用であると検証された。
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Ⅴ. 図表
Table 1 Results of the previous randomized controlled studies
J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2010; 17: 186–192 より
Table 2 Multivariable analysis of variables associated with infection
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Table 3 Patient characteristics
Table 4 Surgical outcomes
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Table 5 Validation of 3 x 3 rule
Table 6 Within or Out of 3x3 rule
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Table 7 Prognostic value for prophylactic drain
Table 8 The definition and severity grading of post-hepatectomy hemorrhage
International Hepato-Pancreato-Biliary Association. 2011; 13:528-35より
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Figure 1 Criteria for drain removal following liver resection
Time after surgery Sensitivity 1-specificity AUC Drain-fluid bilirubin
(days) (%) (%) (%) (mg/dl)
1 63.3 21.8 73.2 1.05
3 69.4 3.9 83.6 3.01
5 48.9 6.8 72.7 3.64
Receiver operating characteristic (ROC) curves of true-positive (sensitivity) versus false-positive (1—specificity) rates with respect to infection plotted for days 1, 3 and 5 after surgery
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Figure 2 Makuuchi’s criteria
Algorithm for treatment in Japanese hepatocellular carcinoma guideline より
Algorithm before proceeding to safety hepatectomy for hepatocellular carcinoma with cirrhotic liver. Makuuchi's criteria include three factors: ascites, total serum bilirubin, and the ICG-R15. This algorithm shows the maximal area for which an operation can be performed safely.
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Figure 3 Classification of Surgical Complications (Clavien-Dindo Classification)
Ann Surg. 2004; 240: 205–213より
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Figure 4 Flow chart of the patient in validation set
306 patients underwent liver resection
274 patients analyzed
16 patients bilio-enteric anastomoses 12 gastrointestinal procedures
4 others
32 patients excluded
255 patient’s drain were removed on POD3
Within 3x3 rule Out of 3x3 rule
19 bile leakage
3 drain infection on Gram staining
19 patient’s drain were not removed
Flow chart
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Ⅵ.引用文献
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33. Brooke-Smith M, Figueras J, Ullah S, Rees M, Vauthey JN, Hugh TJ, et. al.
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35. Torzilli G, Olivari N, Del Fabbro D, Gambetti A, Leoni P, Gendarini A, et al.
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36. Nagano Y, Togo S, Tanaka K, Masui H, Endo I, Sekido H, et al. Risk factors and management of bile leakage after hepatic resection. World J Surg. 2003;27:695-8.
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38. Rahbari NN, Garden OJ, Padbury R, Maddern G, Koch M, Hugh TJ, et al.
Post-hepatectomy haemorrhage: a definition and grading by the International Study Group of Liver Surgery (ISGLS). International Hepato-Pancreato-Biliary
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Ⅶ.研究業績目録
三塚 裕介
1.発表 ① 一般発表 16 ② 特別発表 1
2.論文 ① 原著論文 5 (共 5)
② 症例報告 5 (共 5)
③ 総説 なし 3.著書 なし
以上
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1.発表
① 一般発表
1. 三塚裕介、山崎慎太郎、渡辺慶史、吉田 直、岩間敦子、桧垣時夫、井上和 人、高山忠利:腸管Contrast CTが病態診断に有効であった結腸脂肪腫の一 例、第18回日本肝胆膵外科学会総会、東京、2006.5
2. 三塚裕介、山崎慎太郎、渡邊慶史、吉田 直、岩間敦子、檜垣時夫、井上和 人、高山忠利:腸管 Contrast CT が病態診断に有効であった結腸脂肪腫の 1 例、第68回日本臨床外科学会総会、広島、2006.11
3. 三塚裕介、高山忠利、山崎慎太郎、宮国泰己、花田 学、岩間敦子、冨塚龍 也、木村友紀、有坂理英、渡邊慶史、東風 貢、桧垣時夫、中山壽之、井上
和人:当初虚血性腸炎と診断された悪性腹膜中皮腫の一例、第 69 回日本臨 床外科学会総会、横浜、2007.11
4. 三塚裕介、遠藤大昌、高澤慎也、千野慎一郎、吉敷智和、竹中芳治、小林 隆、
三木健司、小林 薫、森田恒治、照屋正則、清水誠一郎、上西紀夫:Lipid-rich
carcinoma の一例、第810回外科集談会、東京、2008.9
5. 三塚裕介、荒牧 修、北條暁久、青木 優、渡邊慶史、東風 貢、桧垣時夫、
高山忠利:横紋筋融解症を併発した急性上腸間膜動脈血栓症の一例、第 71 回日本臨床外科学会総会、京都、2009.11
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6. 三塚裕介、高山忠利、山崎慎太郎、渡邊慶史、富塚龍也、檜垣時夫、井上和 人:虚血性腸炎と診断された悪性腹膜中皮腫の1例、第495回日大医学会例 会、東京、2010.1
7. 三塚裕介、窪田信行、間遠一成、大久保力、海賀照夫、三原良明、中田泰彦、
神野大乗、小林槇雄、高山忠利:大動脈周囲リンパ節に跳躍転移をきたした
胃癌の1例、第48回日本癌治療学会学術集会、京都、2010.10
8. Mitsuka Y, Yamazaki S, Iwama A, Funada T, Aoki M, Aramaki O, Higaki T, Nakayam H, Kochi M, Takayama T.:A case of malignant peritoneal mesothelioma mimicking ischemic colitis、21st World Congress of the International Association of Surgeons, Gastroenterologists and Oncolopgists(IASGO2011)、東京、2011.11 9. 三塚裕介、中山壽之、高山忠利:肝切除における術後細菌培養陽性例の検討、
第24回日本外科感染症学会総会学術集会、三重、2011.12
10. Mitsuka Y, Yamazaki S, Iwama A, Kurokawa T, Takayama T, : Validation of “3x3 rule” as Accurate Drain Tube Management in Liver Resection , 10th World congress of IHPBA, Paris,2012.7
11. 三塚裕介、舟田知也、三原良明、江原千東、九穂明子、東風貢、藤井雅志、
高山忠利:術後 VAHS を併発した潰瘍性大腸炎,S 状結腸穿孔の1症例、第 67回日本大腸肛門病学会学術集会、福岡、2012.11
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12. 三塚裕介、尾形哲、橋本拓哉、高本健史、井上和人、丸山嘉一、幕内雅敏:
門脈域に線維化を伴うグラフトを用いた生体肝移植の一例、第 12 回東日本 肝移植周術期研究会、東京、2013.3
13. 三塚裕介、橋本拓哉、島田恵、高本健史、荒牧修、井上和人、丸山嘉一、高 山忠利、幕内雅敏:長期生存を得た膵腺房細胞癌の一例、第835回外科集談 会、東京、2014.12
14. Mitsuka Y, Hashimoto T, Takamoto T, Inoue K, Maruyama Y, Ogata S, Komatsu M, Ikeda S, Takayama T, Makuuchi M. Living-donor liver transplantation using a graft with periportal fibrosis. 第27回日本肝胆膵外科学会・学術集会、2015.6 15. 三塚 裕介 山崎慎太郎 島本直明 宮崎晃行 緑川泰 檜垣時夫東風貢
高山 忠利
急速に増大した AFP 産生胃癌の肝転移に対して肝切除を施行した1例、第 53回日本癌治療学会学術集会、2015.10
16. 三塚 裕介 山崎慎太郎 島本直明 宮崎晃行 緑川泰 檜垣時夫東風貢 高山 忠利 :AFP 産生胃癌の肝転移に対して肝切除を施行した1例、第 77 回臨床外科学会総会、福岡、2015.11
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② 特別発表
1. 三塚裕介、山崎慎太郎、岩間敦子、青木 優、緑川 泰、荒牧 修、森口正 倫、中山壽之、檜垣時夫、高山忠利:当科における肝切除後ドレーン早期抜
去基準(3-3rule)の再検証(ワークショップ)、第67回日本消化器外科学会総会、
富山、2012.7
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2.論文
① 原著論文
1. Yamazaki S, Takayama T, Moriguchi M, Mitsuka Y, Okada S, Midorikawa Y, Nakayama H, Higaki T. Criteria for drain removal following liver resection.
Br J Surg. 2012 Nov;99(11):1584-90.
2. Takamoto T, Hashimoto T, Inoue K, Nagashima D, Maruyama Y, Mitsuka Y, Aramaki O, Makuuchi M. : Applicability of enhanced recovery program for advanced liver surgery. World J Surg. 2014 Oct;38(10):2676-82
3. Iwama A, Yamazaki S, Mitsuka Y, Yoshida N, Moriguchi M, Higaki T, Takayama T. A Longitudinal Computed Tomography Imaging in the Diagnosis of Gallbladder Cancer.Gastroenterol Res Pract. 2015;2015:254156.
4. Yamazaki S, Takayama T, Moriguchi M, Hayashi Y, Mitsuka Y, Yoshida N, Higaki T. Neutrophil Elastase Inhibitor Following Liver Resection: A Matched Cohort Study. Hepatitis Monthly. 2015 Nov 7;15(11)
5. Kurokawa T, Yamazaki S, Mitsuka Y, Moriguchi M, Sugitani M, Takayama T.Prediction of vascular invasion in hepatocellular carcinoma by next-generation des-r-carboxy prothrombin.Br J Cancer. 2016 Jan 12;114(1):53-8.
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② 症例報告
1. Mitsuka Y, Yamazaki S, Miyakuni T, Iwama A, Funada T, Watanabe Y, Kaiga T, Okada S, Kochi M, Takayama T.:Malignant Peritoneal Mesothelioma Mimicking Ischemic Colitis , Case Reports in Gastroenterology , 4(2):238-242、2010.7 2. 青木優、三塚裕介、岩間敦子, 緑川泰, 山崎慎太郎, 荒牧 修, 中山壽之, 森
口正倫, 檜垣時夫, 高山忠利:肝転移を来したステージI若年性大腸癌の1 例、日大医学雑誌 (0029-0424)71巻3号 Page224-225
3. Ebara C, Yamazaki S, Moriguchi M, Mitsuka Y, Funada T, Higaki T, Takayama T.
Complete remission by transarterial infusion with cisplatin for recurrent bile duct tumor thrombus of hepatocellular carcinoma: report of a case. World J Surg Oncol.
2013 Mar 23;11:78.
4. 三塚裕介、高山忠利、窪田信行、山崎慎太郎、大久保力、間遠一成、神野 大乗、小林槇雄、:大動脈周囲リンパ節に跳躍転移をきたした MP 胃癌の 1例、日外科系連会誌38(1):90–94,2013
5. Mitsuka Y, Hashimoto T, Takamoto T, Inoue K, Maruyama Y, Ogata S, Komatsu M, Ikeda SI, Takayama T, Makuuchi M,: Living-donor liver transplantation using a graft with periportal fibrosis. Hepatol Res. 2015 Dec;45(12):1248-50.