• 検索結果がありません。

ご(御)存じ:ご(御)存知

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ご(御)存じ:ご(御)存知"

Copied!
27
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

ご(御)存じ:ご(御)存知

著者名(日) 天沼 寧

雑誌名 大妻国文

12

ページ 1‑26

発行年 1981‑03

URL http://id.nii.ac.jp/1114/00001632/

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

(2)

涯 ‖ イ 千 じ

存 知

 

「 こぞん じ」 とい う語の表記については,一般に「 ご存 じ」 と「 ご存知」 との 両様が行われている。更に言えば,以上の二 とお りの外に,接頭語の「 ご」を 漢字書 きに して,「御存 じ」。「 御存知」 とい う書 き表 し方 もあ り,ま,もちろ ,すべてを仮名で「 ごぞん じ」 とい う書 き表 し方 もある。 ここで,主として

問題とす るのは,「ごぞん じ」の「 じ」を,「じ」と仮名書 きにす るか,「知」と漢字 書 きにす るか とい うことであ り,第2に,「ご」か「 御」か とい うことである。

このことについて,雑誌「 言語生活」(筑摩書房発行)の求めに 応 じ ,その昭和55年 9月(通巻 第345号)の「 ことばの質問箱」に答え を載せたのであるが,何,時間のゆ とりが少な く,ま,限られた紙 面であったので,十分に述べ ることができず,かな りの分量を削除 した。

そ こで,本稿において,も う少 し詳 しく述べ ようとす るものである。執 筆に当たって,全くとい うわけにはいかなか ったが,重複はできるだけ 避け るように したつ もりである。なお,この ことについては,「言語生 活」編集部の了解を得ている。

「 言 語 生 活 」 あ て の質 問 は,次の とお りで あ る。 (同 誌 9月 号 に よる。原 文 は縦組 み 。)

私は、現在、市場調査会社に勤めてお ります。仕事柄、消費者か らアンケー トを と ることが多いのですが、最近、私の周囲では,「ご存 じ」を「 ご存知」 と書 く人が め だ って多 くな りました。例えば、「 ご存知の商品名を」 とか「 次のテ レビコマーシ ャ ルをご存知ですか」といった具合です。私は,「ご存 じ」が 正 しい表記だと思います が、なぜ、「 ご存知」が 間違いなのか、 うま く説明できません。 よろしく ご教示 くだ さい。

質問者の住所・氏名 (省)〕

﹂獅刷町

(3)

 「 ごぞん じ」 とい う語

ここで 質問者が 問題に しているのは,「ごぞん じ」 とい う語の「 ぞんじ」の 部分を「 存 じ」と書 くか「 存知」 と書 くかとい うことである。「 ごぞんじ」 とい う語の書 き表 し方 としては,これ以外に,前述のとお り,接頭語の「 ご」の部 分を「 ご」 と書 くか「 御」 と書 くか も問題 となるのであるが,質問者は,こ ことに触れていないので,後回 しとし,ま,「存 じ」か「 存知」かについて, 考える こととす る。以下,記述に 当た って,語を 表す場合には,仮名書きで

「 ごぞん じ」 とし,表記を問題にす る場合は,便宜上,接頭語の部分の漢字書 ,仮名書 きは,一応問題外 とし,すべて,仮名書 きで「 ご存 じ」・「 ご存知」

としてお く。 また,用例を引用す る場合は,もちろん,原文 どお りとす るが,

これ も,「ご」か「 御」かは,ひとまずおき,「存 じ」か「 存知」かを問題 とす るものとす る。

「 ごぞん じ」の「 ご」は,「ご承知」。「 ご得′さ」・「 ご納得」「 ご認識」など の「 ご」 と 同 じく,尊敬の意を表す 接頭語である。すなわち,「ごぞん じ」と い うのは,「ぞん じ」に「 ご」を付けた ものであって,「 (相手が)知っていらっ しゃる (こ )」,「知 っておいでになる (こ)」とかの意を表 している。

「 ごぞん じ」 とい う語の用例 としては,次のようなものがある。 〔用例は,

いずれ も新聞か ら,順序不同。原文は,縦組み。下線は引用者による。

 季節の野菜 の ゴマあえは,食欲をそそ ります。 ゴマ特有の香 りを味わ う には、いってす りつぶす ことは どなたもご存 じですが、い り方一つで焦げ

くさ くなった り、苦みが・・・ 〔昭和55.10.26,朝日新聞⑮〕

 ・・・/も しこのことばを ご存知なら、/あなたは・・・/・ ・・/も しご存知ないなら、/・ ・・ 〔昭和55.4.30,朝日新聞(夕)④,広告。「///」

は行かえを示す。

 「 ご存 じの赤字ですか らね、あまり金をかけずに、できるだけ現状の範 囲内でや るとな ると、百二十 キ ロまでで し よう。 ・・・ 〔昭和55.9.21,読

新聞④〕

 今後 も、皆 さんが私を追い掛け回 しても、おそらくお話 しす ることはな いと思います。 ご存 じの ように心臓が悪 くて今 日まで病院に入 ってお りま

(4)

した。 〔昭和55.9.7,朝日新聞④〕

 西本氏は「 私一人で決め られ るよ うな ものでない ことは (日高 たちは)

ご存 じなので……」 とい って、最後は笑 い声 だ った。 〔昭和55.9.8,朝日新聞 (夕)⑬

 一一 あら、 よくご存 じね。確かにそんな ことがあ りま した。で も、あの ころは若か った し、 ・ ・・ 〔昭和55.8.28,朝日新聞(夕)⑬

  ご存 じ,柳生十 兵衛、又十郎 の兄弟が、  東海道巡検使 ″ とな って江 戸 か ら京都 までの道 中で・・・ 〔昭和55.10.14,朝日新聞② ラジオ・テンビ欄,

番組紹介〕

「 ごぞん じ」の「 ぞん じ」は,「ぞん じる(ぞんず る)」の連用形か ら転 じた名詞 であって,これだけを単独の形で用いることは,現代では,あま りないように 思われるが,各種国語辞典でも,名詞 として採録 してある。 しか し,この論で その書き表 し方を問題 としている「 ごぞん じ」 とい う形では,先に幾つか新聞 からの用例を掲げた ように,しば しば使われ,更連用形を も含めて,「 ん じあげ る」,「ぞん じがけない」,「ぞん じなが ら」,「ぞん じのはか」,「ぞん じよらない」,「ぞん じより」などの語句等 として用いられてもいる。 このほか, 辞典によれば,近ごろでは,あまり使われない と思われ る「 ぞん じあた り 。ぞ ん じあわせ・ぞん じごと・ぞん じさだめ・ぞん じだす 。ぞん じたつ 。ぞん じち がい 。ぞん じつき・ぞん じの うち」な どの語句 もあ り,候文で も,「ぞん じ(あ )そうろ う」などと使われ る。

以上数多 くの語句「 ぞん じ・・・」の「 ぞん じ」は,いずれ も,「(ってい)

(こ)」 とか,「思 っている(こ )・ 思 う(こ )」な どの意味を表 している。

「ぞん じる」は,

 そのことで ございましたら,私もよくぞん じてお ります。

 先生が御病気のことは,全くぞん じませんで した。

な どのように,「(自分が)知っている」 ことの意を表す場合のへ り下 った言い 方 として用いられ る。 これを,更にへ り下 りの程度を強めて,

あの方のことは,私もよくぞん じあげてお ります。

(5)

 お名前は,前々か らぞん じあげてお りました。

な どの ように,「あげ る」を添えて用いることもある。「 ぞん じる」には,ま,

大変,結構な ことだ とぞん じます。

 さぞか し,お喜びの こととぞん じます。

な どのように,「(自分が)考える 。思 う」 ことの意を表す場合のへ り下 った言 い方 としても用いられ る。 この場合 も,「さぞか し,お喜びのこととぞん じあ げます。」な どの ように,更に へ り下 りの度合いを強め る言い方 もある。 すな わち,「ぞん じる」は,「知 る」 とか,「思 う」 とかの謙譲語である。

なお,「ぞん じる」には,謙譲語のほかに,

道順は田中さんが よくぞん じてお ります。

 たぶんそれでいいだろ うとぞん じます。

 私は,まだぞん じませんで した。

な どの ように,「知 る」,「思 う」の 丁寧語 として 用いられ る。ただ し,このよ うな場合に,これを謙譲表現 とみ るか,丁寧表現 とみ るかは,微妙なところで あ って,発話者 と受け手 との関係 ・事柄 ・場面等によって決まって くる場合 も ある。       

この外,「ごぞん じ」には,「知人・知 り合い」な どの意味 ももあるが,今 では,ほとんど用いられていない ようである。謙譲語 として,丁寧語として用 いられ る「 ぞん じる」の連用形 (から転成 した名詞)「ぞん じ」であるが,こ ,尊敬の意を表す接頭語「 ご」を付けた「 ごぞん じ」は,尊敬語 として用い られ る。

「ぞん じる」は,

       ぜ ょ  じる じる じれ         じろ

と活用す る上一段活用の動詞である。 したが って,その連用形「 ぞんじ」は,

「 ぞん」が語幹,「じ」が活用語尾である。語幹の「 ぞん」に漢字を当てれば,

「 存」であ り,「じ」は活用語尾であるから,仮名で書 き表すのが普通である。

すなわち,「存 じ」 と書 くのが 最 も普通な書き表 し方であると,ひとまず 考え てよい。

(6)

○ 各種国語辞典での取 り扱い

各種の国語辞典における「 ごぞん じ」の取 り扱いをみ ると,『言海』(大槻文 彦,第2分冊,明 治22年),『日本大辞書(山田美妙,明26年),『日本大辞林』(物 集高見,明27年干」)等の 明治20年代に 刊行された 辞典には,「ごぞん じ」は,

見出し語 として採録 されていない。 しか し,『言海』には,「ぞん じ」の項に,

(名)存  存 ズル ■。知ル ■。オボエ。「 御― ノ通」

とあって 〔原文は,縦組教。,「ぞん じ」を見出 し語 として採 り,用例 として

「 ごぞん じのとお り」を掲げている。なお,「そん じ」は,『日葡辞書』 〔ただ ,『邦訳 日葡辞書』(昭55.5.19,岩波書店刊による。)(長 崎版 日葡辞書の全訳)]に,

次のとお り,動詞 としての見出しと,名詞 としての見出 しを掲げ,名詞のほ う では,用例に現代 とはぼ同 じ意味で,「ごぞん じ」の形が用いてある。(な,

長崎版では,名詞の「 ぞん じ」は補遺に掲げてあ る。)

Z。可i,Zuru,ita.ゾ ンジ,ズ,ジ(存,ず,し) 思 う。¶また,知っている.1‑般に過去形で使われる時 には,̀知っていたという意味で,肯定の現在形の時は・思

°

という意である。そしてこれは,謙,および,丁 寧の1ウ

]である。1また,生 存する。ただし,この意味では,他 の 名詞と共に用いなければならない。 ,In∝hiuo zon‐

Zuru.(命を存ずる)

iZO■ .・ プシジ(存Go20niinO mayc.l,Gozon‐

jino gotoqu。 (御存じの前。または,御FF じの如 く)あなた が知っておられるように,な.尊敬をこめた言い方.1)¶

また,こZOnil,2uru(存,ず)という動:1に,VO‐

moi,vOmO(思,ふ)などという動:]のもつほとんどすべ ての意味と言い方 とがある 1)この項は,動l ZOn‐

2uruの話棋(連川形)が ,そのまま名:1として用いられるこ とを説り:したもの.

[岩波版『邦訳 日葡辞書』による。

また,『和英語林集成 (初)』 (ただ し,複刻版に よる。)に,

(7)

ZONJl, z′%,‐α,ゾンズル,存,  グ.To

think,to know,a polite word.4″δ‐

Zο″ノグ″αS,thank you.Gδ ‐zοπノゲカα,do you knowP y′ グ。″。gοzοπ′′″′gο″αS力α,

have you ever been to YedoPZO′ ,′′ο″%,

I know or l have been.Syn.sHIRU,OM5.

として,「ぞんず る」を「 そん じ」の見出 しのもとに掲げ,謙譲語・丁寧語 とし て「 ごぞん じ」を含む用例が掲げてある。なお,再版・第三版 ともに,基本的 には同 じであるが,初版の誤植 と思われる部分を訂正 してお りまた,「・・

。ます」の「す」が,初版では2か所 とも「S」 で表 してあるが,再版では,

「 ございます」のほ うだけが「 ・・・Su」 とな り,第三版では,「ぞんじます」

のほ うも「・・・su」 となっている。また,第三版では,見出 し語の変化形を

RU Or  ZuRU」と し,用例 中 の「yι αθ,Yedo」 ,それ ぞ れ 「r硫,T。̲ kyO」 と し,最後 の「OMO」 の つ づ りを「OMOU」 と して い る 。

話を国語辞典にもどす と,「ぞん じ」 の形は,見出 し語 とし て は,年代的に

『 言海』に続 く『 日本大辞書』,『日本大辞林』には採録 してないが,『ことはの 泉』(落合直文,明31年)には採録 されてお り,これ以後のもの に は,ほ とん ど採録 されているょうである。「 ぞん じ」を見出 し語 として掲げ,その子 項 目として「 ぞん じあた り」,「ぞん じかけな・い (し)」,「ぞん じより」など を掲げているものが多い。次いで,『ことはの泉 補遺』(落合直文,明 治41年)

になると,「ごぞん じ」はまだみえないが,「ごぞん じ―より」の見出しのもと ,「句」 として,

自御存。ぞん じよりを見 よ。

とある。〔原文は,縦組み〕。そ して,その「 ぞんじより」の項は,本冊にも補 遺に もあるのであるが,本冊のほ うには,「名」 として,

存寄。かんがへ。れ うけん。所存。俗語。

(8)

と し,補遺 では,やは り「 名」 として,

T寄。○知りあひ。なじみ。春花五大力「いや、ほかに、ぞんじよりの

女が ござって、かのな じみの女郎 も、いつ しか遠ざか りました」 (娼妓な どの、な じみ客にあてて 出す手紙の末に、 自分の名の代 りに、「 御存 じよ り」 と書 くも、 この語に同 じきか。或は、「 あなたの御存 じの人 (即ち、

)から」の意にて、 よりは、助辞なるか)

とある。すなわち,『言海』の「ぞん じ」の項の用例では「 御存 ノ通」であって 送 り仮名を書き表 してなか ったので,「じ」か「知」かがはっき り分か らなか っ たが,『ことはの泉 (補)』 の用例の説明では,「ごぞん じ」を「 御存 じ」と,

「 じ」を平仮名で書き表 してあることが分か る。

明治44年に改訂版を出 した『 辞林』にも「 ごぞん じ」の見出 し語はない。筆 者の調べた範囲では,「ごぞん じ」を 最 も早 く見出 し語 として立てた 国語辞典 ,『改修 言泉』 (落合直文著作・芳賀矢一改修,大10年,ただし昭和3年版によ る。)で,そこでは,漢字書 きを「御存」 としている。「 御存」 としてあって,

「 御存じ」 としていないのは,前述の『 言海』の「 ぞん じ」 に対す る 「存」,

『 ことはの泉』の「 ぞん じより」に 対す る「 存寄」,「ごぞん じより」に 対す る「自御存」 も同様であ るが,これ らの辞典で,見出 し語に当てる漢字表記の 欄に「 じ」の 仮名が送 ってないからといって,「じ」を 送 る慣用や必要がない とか,「じ」を送 っては誤 りであるとかい うことを示 しているとい うわけでは ない。 しか し,少な くとも,「存知」 とか,「存知寄 (り)」 とか,「御存知」な どと,「じ」の部分に,漢字の「知」を当てて書 くのが望 ましい表記,一 的な表記,伝統的な表記 とは認めていない ものとみて差 し支えないであろ う。

なぜなら,戦前の国語辞典では,特に名詞の場合は,今日の 日か らみれば,当

然送るべ きだ と思われ るような送 り仮名で も,送らないで示 してあ る場合 も多 ,なかには,活用語にさえも送 り仮名を付けずに掲げてあ るものもあるほ ど で,ま して,名詞 には,ほとんどの 辞書で,送って いなか った といってもよ

(9)

い。 もちろん送 り仮名は,方向としては,明治の中 ごろか ら戦前にかけて,次 第に多 く送 るようになってきたが,戦後もしばらくは,送り仮名を送らずに掲 げる傾 向があった し,ごく最近の刊行にかかわ る辞典で もこの傾向がみられる ものもある。

すなわち,明20年ごろか ら大正を経て昭和の初め ごろまでの国語辞典の見 出 し語の下の 漢字書 きの欄 の示す ところによれば,「ぞん じ」,又,「ごぞん

じ」 とい う語 を漢字書 きにす る場合に,「じ」を送 り仮名 として 書き表すか ど うかは別問題 として,少な くとも,「じ」の部分に,「知」を当て,「(御)存 知」 としているものは見当た らない ようである。そ して,語釈の部分では,先 に引用 した『 ことはの泉 補遺』にみるように,「御存 じ」 と「 じ」を送 ってあ るものがある。

これ以後,戦前・戦中に刊行された国語辞典の類には,ほとんど例外な く,

「 ぞん じ」 とは 別に,「ごぞん じJをも見出 し語 として立て,その漢字書きと しては,多くの ものが「 御存」であ り,少数のものが「 御存 じ」 としている。

,中に一つ,『大辞典』〔昭和10年,ただし,昭49年刊の覆刻版による。〕では,

「 ゴゾンジ(御存 じ)」 の項の次に,次のように,別に同形の「 ゴゾンジ」の見 出 し語を立てて,「御存知」 と当てている。〔原文は,縦組み。

コゾンジ 御存知 御存 じに同 じ。 日蓮の波木井殿御報 囲「そのや う を御ぞんぢのために申 し候

『 大辞典』では,見出 し語 の片仮名書きに,ア クセン ト符号 を 付けてある ,それに よれば,前者は,「ゴフ ンジ」(第2音節が高い中高型)であ り,後 者は,「ゴゾンジ」(平板型)である。

すなわち,「ごぞん じ」 とい う語に対 して「 御存知」,とい う「 じ」の部分に

「 知」を当てた書 き表 し方は,筆者の見た限 りでは,『大辞典』に 最初に 現れ るのであるが,前述の ょうに 別語扱い (ただ し,その意味は 同 じ。)である。

戦後か ら現在に至 るまでの国語辞典では,な,「御存」 もみられるが,「 存 じ」,「御存(じ)」 が 多 くな っている。それ と ともに,「御存知」 も併せ掲げ

(10)

ているものが数種 目につ くようになってきた。 また「 御存知」の「存知」を, あて字であるとか,借字であるとか注記 しているものもある。

ところで,「ぞん じ」 とは別に,「ぞんち」 とい う語があ り,この語 は,『 葡辞書』,『和英語林集成』の初版か ら 第3版まで,『言海』等には 見出 し語 と して掲げられていない。 この語を 最初に 採録 した辞典は,筆者の みた限 りで ,ま,『日本大辞林』(物集高見)に「 ぞんちす 存知」とあ り,語釈には,

「 しる。さとる。ぞんず。平家̲(既に、十二三 に な らん ず る者 が、今は、

礼義 存知 し て こそ ふ るまふ べ きに、かや う の びろ う を げん じ て)」

とある。次いで,『ことはの泉』に「 ぞんち 存知」 とある。 また,『改修  泉』には,「ぞんち」の見出 しはな く,「ぞんぢ 存知」 として,用例に『 日本 大辞林』 と同 じものを掲げているが,『改修 言泉』には,「ぞん じ 存」が別 に掲げてある。

これ以後の,ほとんどの国語辞典には,「ぞんち」の見出 しのもとに「存知」

と掲げ,その語釈 としては,おおむね,「しること,(そうい う事実を)知って いること,心得 ること,承知」などとし,辞典に よっては,「ぞんぢ(じ)」の語 形 も掲げてあった り,「ぞんぢとも言 う。」な どと注 しているものもある。 この

「 ぞんち」は,「存知」 と書 くことに,疑問や問題はないであろ うと思われ る。

しかし,この「存知」 と「存 じ」 との意味が,はっき りと分け ることができな いほど似通 っているとこからいっても,ま,国語辞典に よっては,「ぞん じ」

と発音す る語について,

ゾンじ 〔(じ)〕 ・・・

ゾンじ 〔存(じ)〕 (動・連用)・ ・・

ゾンジ 〔存知〕一 ヂ 知 っていること。ぞんち 〔用 例略。

3語を掲げているもの,すなわち,「存 じ」 とは別語 として,「存知」を「 ぞ ん じ」 とい う言い方を本体 として掲げ,「ぞんち」の言い方をも認め る立場を と るものもあるくらいであ り,これか ら推 して,「ごぞん じ」を「御存知」 と書

くのは,間違いであるとは言い切れない情勢である。

○ 各種国語辞典におけ る「 ごぞん じ 。そん じ・そんち」 の取 り扱い 。語釈等 につ い て

(11)

何種かの 国語辞典 について,「ごぞん じ・ぞん じ・ぞんち」の取 り扱い 。語 釈等を通覧す るために,表の形にまとめてみると次のとお りである。なお,こ

の表の作成に当た っては,なるべ く,元版・第二版 ・第三版・・ 。(たとえ,

発行所や 書名を異に していても。)と,改訂を重ねて 発行 されているものに重 点をおき,『改修 言泉』,『修訂 大 日本国語辞典』,『新訂 大言海』,『日本 国語大辞典』の4種を加えた。なお,引用に当た って,用,用字は原文のま まとしたが,字体は,便宜上,現行通用 のものとし,かっこ,その他の込め物 ,やは り便宜上,すべて,同 じものを用いた。/」 ,その語を,見出し語 として立てていない ことを示す ものであ り,≪ >に包んだ部分は,引用者の 注記である。〔いずれ も,原文は,縦組み。

ごぞん じ(ご存 じ)ぞん じ(存) ぞんち(存(ぢ) ) 騨伽

存〕(名 )ぞんず ること。思ふこ と。知 ること。

≪子項 目を省略≫

/

//

ぞんち〔存知〕(名)し ること。「権 を―

してこそふるまふベ きヤこ。」

14

・1 20

御存〕(名)①承知せ られてあること。しり ていられること。② し

りあひ。しりびと。

≪上に同 じ≫ ≪上に同じ≫

15

・・

︲0

≪上 に同 じ≫

貪 ]

≪上に同じ≫

33

(御存夕じ〕①承知 し ておられ ること。知 っ ていられ ること。②知

り合い。矢口人。

く引用者注 1を 参照≫

存 じ〕(名)知 っていること。

思 っ て い る こ と。

≪子項 目を省略≫

ぞんち〔存知〕知って いること。心得てい

/

ること。

(12)

42・1

・1

(御}じ①承知 して おられ ること。「―一 のとお り」②知合い。

知人。

≪引用者注 1を 参照≫

存 じ〕知ってい ること。承知。

(子項 目を省略≫

ぞんち 〔存知〕知 っ ていること。承知。

(御存)じ〕①承知 して お られ ること。知 って いらっ しゃること。

各丁

の とお り」②知 鸞引用者注1を参照≫

≪上に同じ≫

ぞんち 〔存知〕う知 っ ていること。承知。

鶏鶏

1110

[苑

御存〕(名)①存 じの 敬称。② しりあひ。な

じみ。

存〕(名)ぞ ずること。知 っ てゐること。思 ってゐること。

ぞんち 〔存知〕(名)

知 ること。心得るこ と。

30 34

・3

・5

御存〕①存 じの尊敬語c

徒然草「 おのれらより は、中々―一などもこ そさぶらはめ」②存 じ ている人。しりあい。

知己。

存 じ〕ぞんず る こと。知 ってい ること。思って いること。

存知〕′ (存在 を 知 る意)知 て い る こ と。承知。

ぞんち 〔存知〕→ ぞ んじ(存)

4 4・5

・︲ 6

≪実質的に上に同 じ≫

存 じ〕知 ってい ること。思 って いること。 「 ご

――の通 り」

存知〕

̀ソ

ぞんち。平 ̲「後 日の 訴訟を一―

して」

ぞんち 〔存知〕 (存 在を知 る意)知って いること。承知。ぞ ん じ。

5︲

12

≪上に同じ≫ ≪上に同じ≫ ≪上に同じ≫ ≪上に同じ≫

御存 じ〕(名)①「 ぞ んじ」の敬称。御存知。

②しりあひ。

存 じ〕 (名)

思ふ こと。知 っ てゐること。

存知〕

(名)知̀′ て ゐ る こ と。ぞんち。

ぞんち 〔存知〕(名)

そんぢ

/

(13)

御存 じ〕(名)①「 ぞ

ん じ」の敬称。御承知。

② しりあい

´

. 

存知〕(名)

知 っている こと。ぞん ち。

。 新 昭昭明

御存 じ〕「存 じ」の 丁寧語。「――〔=ご承知〕

の通 り。一―〔=大衆娯 楽作品に登場 して来て 皆がその名を承知して いる〕近藤勇」 〔御存 知と書けば、歴史的か なづかいはゴゾンヂ〕

存 じ〕知って いること。「 ご ですか」〔 知は、借字〕

≪子項 目を省略≫

/

ぞんち 〔存知〕する そ うい う事実を知 っ ていること。

4 9昭和

・H・ 聴 佐肺

≪上に同じ≫

(じ)〕 知っ ていること。

「 ご――ですか」

存知は、借字〕

≪子項 目を省略≫

/

≪上に同じ≫

︒四 3635許物

御存 じ〕 (名)① っていることの敬語。

御承知。② しりあい。

存 じ〕(名 )思 こと。知 ってい ること。「 ご―一 ですか」

≪子項 目を参照≫

存知〕(名 ) しってい る こと。承知 (ショウチ)。

「 ご一 の とお りJ

o昭

4 91 運

御存 じ〕 (名)知 ていることの尊敬語。

御承知。

存 じ・存:知 (名)思うこと。

知 っ て い る こ と。「 一 ですか」

≪子項 目を省略≫

≪引用者注 2を 多 照≫

ぞんち 〔存知〕(名 他サ)〔文〕〔それが あるとい うことを〕

知 っていること。

≪引用者注 3を 参照≫

3 8

・4

・1 0

御存 じ・御存知〕〔 じ」を敬 って言 う語。

知 ってい らっしゃるこ と。

存 じ〕知って いること。承知。

「 ご一 ですか」

ぞんち 〔存知〕(名 ス他〕知 っているこ と。承知。▽その存 在を知 る意。

≪引用者注 4を 参照≫

f撃

≪上に同じ≫

存 じ〕知って いること。承知.

「 御一一ですか」

「 存知」とも書

ぞんち 〔存知〕(名 ス他)知っているこ と。承知。▽その存 在を知 る意。「 ぞん 12

(14)

→ぞんち。

用者注 4を

/

(引ぢ」 とも言 う。用者注 4を 参照≫

o昭 54

︲2・像

≪上に同じ>

存 じ〕知 って いること。承知。

「 御―一 ですか」

▽「 存ずる」の 連用形。「 存知」

とも 当 て て 書 ,グスJh^

//

/ /

≪上に同じ≫

¨霧三継

︲ 0︲ 0筈3 3 一86

御存〕 (名 )①ぞん じ (存)の敬語。徒然「 お のれらよりは、なかな かの御存 じなどもこそ さぶらはめ」②知 りあ ひ。な じみ。知己。≪ こ の項の次に別項として

「 ごぞんぢ」を立て≫

御存知〕(名)①こぞん (御存 じ)の転訛。

狂言(泉山伏)「私の弟 の太郎を御存知でござ ります るか。②知 り人。

ゆか りある人。知人。

存〕(名)ぞ ずること。知 り てをること。覚 え居 ること。

≪用例を省略≫

ぞんぢ 〔存知〕(名)

じること。ぞんずる こと。心得ること。

平家「十二三になら んずるもの。今は礼 儀存知 してこそ振舞 ふべきに」

≪以下,用例を省略≫

︒剛

御存〕(名)①ぞん じ (存)の敬語。徒然草

「 己れ等 よりは、中中 御存 じなどもこそ さぶ らはめ」狂言 姫剃「御 ぞん じの者」  同 勇

「御存 じの如 く」②存 じたる人。知己。≪別 項 として「 ごぞんぢ」

を立て≫

御存知〕(名 )ごぞん じ (御)に同 じ。狂言泰

「 私の弟の太郎を御存 知で御ざ りまするか」

存〕(名)存 ること。知 るこ と。承知。狂言  「 御ぞん じ のもの、太郎冠 者あるか」

/

ぞんぢ 〔存知〕知 り おぼゆること。心得て 承知。

≪用例を省略≫

︿一一面

御存・御存知〕(名)

ぞんず(存)ノ 条 ヲ見 ヨ〕知る 卜云フコトフ、

〔存 〕 (名)存

ル コ ト。;mル ト。 オ ボエ。 幸

ぞんち 〔存知〕(名)

存在を知る意〕知 リ 居ルコ ト。承知。吾

13

(15)

3 ︲

. 3

﹁ 1

49

12

49

丁寧 二云 フ語。徒然草、

六十七段「 己 レ等 ヨリハ、

中中、 御存ジナ ドモコン サブラハメ」「 ごぞんじ ノ事」

御存・御存知 (ヂ)〕

(名)(「ご」は接頭語)

①知 っていらっしゃる こと。御承知。*徒 草一六七「 己らよりは、

なかなか御存知なども こそ さうらはめ」

≪以下用例を省略≫

②存 じている人。知 り あい。知己。

≪以下を省略≫

若舞曲、和国酒盛

「 義盛ガぞんじニ ハ、抜群違フテ存 ズル」狂言記、姫 糊 「 御ぞん じ ノ 者、太郎冠者アル カ」「 御存 じノ通 り」

存〕(名)(動 詞「 ぞ ん ず る (存)」 の連用形 の名 詞 化)。 っていること。

承知 しているこ と。思 っている こと。

≪用例等を省略≫

妻鏡、七、文治三年十 月三 日「為=御存知̲、

所二申候̲也「御存知 ノ者」

ぞんち〔存知〕(「ぞん ぢ」 とも)①存在を 知 っていること。知 って理解 しているこ と。

≪用例を省略≫

②心得て覚悟してい ること。

≪用例を省略≫

存知〕 (名 )→ぞん (存)

引用者注1〕 :「{御,じ」は,いわゆる表外字・表外音訓ではないが,その辞 典で,仮名書きが望ましい語としているもの。

引用者注2〕 :「在知」という書き表 し方もあるが,その辞典では,あて字・難訓 などとしているもの。

引用者注3〕 :「文〕」は,その辞典で「文章語」としているもの。

引用者注4〕 :「▽ 」以下は,その辞典で,「補足的説明」としているもの。

以上,表として まとめた辞典 は,計23種 であ るが,これ以外に6種 ,計30種 近 い各種 国語辞典等に当た ってみた結果,おお よその傾 向 として,

(1)「ごぞん じ」 の形 で見 出 し語 として採録 され るよ うにな ったのは,大 時代 に入 ってか ら と思われ る。

(2)「ごぞん じ」 は,「 ぞん じ (存 じ)」 の 尊敬表現であ り,「知 る」・「 知 っ てい る」 な どに対す る尊敬語 として,普通 に用 い られ る語 であ る。

(3)その漢字 に よる書 き表 し方は,「 ごぞん じ」 の見 出 しの もとでは,「御存 じ」,又は ,「 御存」 が多いが,戦前 (戦前に発行 され,戦,改訂・新版 等 と して発刊 され てい るものを含む。)の辞典 では,一部 に,「 ごぞん じ」

参照

関連したドキュメント

画面構成等は、電気工事店さまがスムーズに手続きを行えるように設計

[r]

ご着任 室長 齊藤 秀男 氏 ご着任 岡崎 浩 氏 ご着任 堀 知子 氏 ご転任 前室長 中野 智晶 氏 ご転任 清水 法恵 氏 ご転任

最初の 2/2.5G ネットワークサービス停止は 2010 年 3 月で、次は 2012 年 3 月であり、3 番 目は 2012 年 7 月です。. 3G ネットワークは 2001 年と

図⑧ 天保十四年出雲寺金吾版『日光御宮御参詣 

○杉田委員長 ありがとうございました。.

○片谷審議会会長 ありがとうございました。.

スマートグリッドにつきましては国内外でさまざまな議論がなされてお りますが,