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(1)

    需給法則の拡充について

       有   井    治

 およそ或る観念は︑それが一般化し通俗化するに従って︑その内容が多義的となり曖昧となる︒我々はこの適

例を需給の法則について見ることができる︒すなわちこの法則はマルサスが主張しでから今日まで︑諸学者によ

って種々の意味に用いられ︑またそれが常識化したために︑その内容は必ずしも簡単かつ明瞭ではない︒それ故

にフィッシャーは曰く︑

需給法則の拡充について

一一 1 ‑

 μ{youwanttomakeafirst‑classeconomist。catchaparrotandtaQrE∃toSygμt払ypoddem‑

and。Fg召onsetoeveryquestionyoにakhim.Whatdetermineswages?Supplypoddemand.What

determinesthedrtributionofweaeth?SupplyandDemand゙rQg肩{nstQOQ?theanswerisright。

but{{aplamsnothing."(I.Fisher.ElementaryPrinciplesofEconomics.NewYork(MacMillanご

1920。p.145.︶

(2)

 そこで私は市場価格に関する需給法則を中心として︑以下その例外および拡充について考究してみようと思

       一

 市場価格に関する需給の法則を略言すれば︑﹃或る商品の売買について︑もし完全な競争が行なわれているな

らば︑一定の時︑一定の市場におけるその商品の価格は︑これに対する需要額と供給額との一致する点に定まる﹄

と言うことができるであろう︒

 この法則の意味について︑まず第一に注意すべきことは︑それが完全な競争すなわち︵一︶需給当事者の多数

性と︑︵二︶商品の均質性︑︵三︶市場ならびに商品に関する完全な智識︑︵四︶商品の完全な移動性と保存性︑

などを前提とすることである︒この前提が現実に成立しがたいことは︑独占・独占的競争︵複占・寡占・多占・

・双方独占・売買独占など︶や︑不完全競争ないし異質需要などが︑問題とされていることによって明らかであ

ろう︒

 次に需要および供給︑殊にその増減については種々の意味が含まれるのであるが︑ここでは一定の価格の下に

取引される現実的かつ綜白的な需要量および供給量を指すのである︒すなわち需要とは一定の市場における多数

の買手が︑一定の価格で買取ろうとするその商品の数量を言い︑また供給とは一定の市場における多数の売手

が︑一定の価格で売渡そうとするその商品の数量を指す︒それ故に需要は需要表︵DemandSchedule︶であり︑

供給は供給表︵∽毛孔y汐rd巴Q︶である︑と言うことができる︒

‑ 2 ‑

(3)

 需要および供給の意味を右のように限定するならば︑一定の時一定の市場における或る商品の価格は︑その需

要および供給について︑原則として次のような関係に立つであろう︵第一図参照︶︒すなわち需要は効用逓減の

法則︵t/=/宵︶゛特  JT︑宵︶▽FIJベツ=池︑宵︶△0︶または限界代替性

の逓減﹁よ幡﹂△ごなぃし逓増T二にこり∇ごに基づき︑商品の価

格が高くなるに従って少なく︑その低くなるに応じて多いであろう︷第一図︸⁚︶

︷︸︑︶︒また供給は限界生産費逓増の法則に基づいて︑価格が高くなるに従って

多く︑その低くなるに従って少なぃであろう︵第一図∽∽︑︶︒それ故に需給の

関係について見ると︑価格が或る程度以上に高ければ︑供給が需要を超過し︑

また価格が或る程度以下となるならば︑需要が供給を超過することになる︒と

ころが売買は双方行為であって︑一方に或る商品を買う人があるためには︑他方にその商品の売手がなければな

らぬ︒或る商品の一定量が或る価格で買入れられるためには︑同時に同じ商品の同じ数量が同じ価格で売られな

ければならないのであるから︑一定の時一定の市場で或る商品の売買される価格は︑必ずその商品の需要量と供

給量とが一致しうる点︵第一図P︶に決定される︒市場価格に関する需要供給の法則は︑この関係を言い表わし

たものに他ならず︑普通はこれを簡単に市場価格は︑市場における需給がその均衡を保つ点に定まると言われ︑

このような均衡点は一点︵P︶に限られるから︑これを﹃一財一価の法則﹄︵OnePrceinaMarket︶と言い︑

または﹃単一価格の法則﹄︵(yStzderPreiseinheit︶とも言う︒すなわち

 blb︵吻ご哨=哨︵吻ご咄ay︵牡▽ご特△0︶

   需給法則の拡充について

一一 3 ‑

(4)

需給法則の拡充について

 このように市場価格は︑需給がその均衡を保つ点に定まるのであるから︑そ

の変動については次のような法則が行われる︒すなわち︵一︶供給には何の変

化もないのに︑もし需要が増減するならば︑市場価格はそれに伴って或いは騰

貴し或いは下落する︵第二図参照︶︒︵二︶需要には何の変化もないのに︑もし

供給が増減するならば︑市場価格はそれにつれて或は下落し或は騰貴するであ

ろう︵第三図参照︶︒

 これらの法則は前に述べた法則の系︵coroUary︶として当然に出て来るもの

であるが︑これについては需給の増減の意味を明確にしなければならぬ︒その

一は潜在的な需給を意味する場合︵同じ曲線上の移動︶であり︑その二は現実的

な需給を意味する場合︵曲線の位置の移動︶である︒これを需要について見る

と︑或る商品に対する需要が増加したと言われる場合に︑それが一定の価格の

下に需要されるその商品の数量には何等の変化もないが︑ただその価格が下落

したために需要量を増加した︵第三図A←瓦︶のことを指すならば︑それは潜在

的な需要が現実化して︑需要が増加することを意味する︒これに対して商品の

価格には何の変化もないに拘らず︑同じ価格の下において需要されるその商品の数量が増加する︵第二図D←炳

従ってA←瓦︶ことを指すならば︑それは現実的な需要の増加を意味する︒前者は価格が下落したために︑今ま

で沈んで隠れていた需要の現れるものであり︑後者は人口の増加や趣味嗜好ないし流行などの変化から︑各価格

‑4 一

(5)

を通してその商品の需要量が増加することである︒需要の減少についても同様と考えられる︒これを供給につい

て見ても︑その増減に二様の意味のあることは全く同じである︒

 需要および供給の変動に関する以上二つの場合の中で︑市場価格の変動について間題となるのは︑現実的なもの

だけである︒しかしここで注意すべきは︑右に述べた理由から現実的な需給の変動は︑当惑に潜在的な供給また

は需要の変動を伴なうことである︒けだし例えば現実的な需要の増加があった場合︑すなわち買手側の事情が変

化したために︑或る商品の需要量が各価格を通して増加する︵第四図D←ぴ︶ならば︑このためにその価格は騰

貴すべき筈で︵P←F︶︑その価格が騰貴すれば︑たとい売手側の事情に変化

なしとしても︑その騰貴した価格で実際に供給される商品の数量は当然増加す

る﹁皿←皿﹂︶はずで︑ここに潜在的な供給が現実化して︑供給量が増加するか

らである︒しかしこの場合における供給量の増加は︑現実的な需要の増加のた

めに惹起されたところの︑その商品の価格騰貴が原因となっている︒従ってこ

の場合における供給量の変動は︑価格の変動が原因となっているもので︑供給

量の変動が価格変動の原因となっているのではなく︑それは価格変動の結果な

のである︒故にこの供給の変動は︑市場価格が需給の変化に伴って変動する︑という場合の変動の中に含まるべ

きものではない︒

 以上に述べたような市場価格に関する需給の法則は︑更に拡充されて経済理論の種々の分野に応用され︑殆ん

どその全範域に及ぶと考えられる︒特に証券市場︑金融市場︑外国為替市場︑商品取引などに適用されている︒

   需給法則の拡充について

一一5 一

(6)

       二

 前項で述べたような市場価格に関する需給の法則は︑更に拡充されて正常価格に関する需給の法則となる︒い

わゆる正常価格または自然価格とは︑一定の期間に亘り市場価格変動の中心となるべき価格のことである︒そし

て市場価格がこのような正常価格と一致しない場合には︑売手側の事情を変更さし︑潜在的な供給が変化して来

ることのために︑元の市場価格では早晩需給が合致しなくなるという意味において︑需給が均衡を維持しないと

言われる︒この意味において正常価格は︑生産と消費の均衡する価格と考うべきで︑需要と供給という用語はこ

の場合には誤解を招き易い︒このことは再生産の不可能な財貨については︑その正常価格なるものが考えがたい

事実を考えれば明らかであろう︒

 生産量が供給額と一致するためには︑一定の期間を必要とするのであるが︑生産費と価格との関係に応じて生

産量が適当な数量となるためにも︑生産規模の拡大ないし縮小に必要な一定の期間を必要とする︒これが市場価

一一6一一

(7)

格は或る時点における価格であるとされ︑正常価格が一定の期間に亘る価格とされる理由であり︑また前者は需

給の均衡する価格であり︑後者は生産と消費が調和する価格である︑と言われる所以でもある︒

 正常価格の下では生産従って供給は︑増加する傾向もなくまた減少する傾向もない︒いま一定の価格の下に供

給がこのような安定を保つ時に︑学者によってはこれを需給の均衡と言う︵︒そして需給の均衡という語をこのよ

うな意味に用いるならば︑正常価格も亦市場価格と同様に︑需給がその均衡を保つ点に定まると言うことができ

る︒しかしこの場合に言わゆる需給は︑市場価格の説明に用いられるこれらの用語と︑その内容を異にすること

を注意しなければならぬ︒すなわちそれは一定期間における正常的な潜在的需要と︑同じ一定期間における正常

的な潜在的供給を意味する︒また︑正常価格が需給の均衡点に定まるということは︑このような正常的な潜在的

需要の表現である或る現実の需要量と︑同じく正常的な潜在的供給の表現たる現実の供給量とが︑一致する点に

定まるということである︒

 ところが或る現実の需要量と或る現実の供給量との一致する点は︑すなわち市場価格の定まる点であり︑また

その場合に現実の需要量が︑あたかも正常的な潜在的供給の表現であるということは︑決定された市場価格が︑

丁度生産費に普通利潤を加えたものに等しいことを意味する︒それ故に正常価格が需給の均衡点に定まるという

ことは︑すなわち市場価格が生産費に普通利潤を加えたものに等しい︑ということを意味するに他ならない︒従

って正常価格を図示するに際し︑普通に需要曲線とされているものは︑実は市場価格曲線に他ならず︑また供給

曲線とされているものは︑実は生産費曲線に他ならず︑その形状については特に注意を必要とする︒

一一7‑

(8)

       三

 およそ経済法則は︑その存在が意識されると否とに拘らず︑その前提条件が充されるならば︑必ず発動するも

のである︒いわゆる需給の法則は︑公定価格ないし統制価格の説明に拡充されると︑その意味十る内容が最も明

らかになるであろう︒

 いま第五図において宍を正常供給曲線︑匹を正常需要曲線とすれば︑匹は正常

価格である︒ところが例えば我国における米のように︑この商品の生産量は年間

皿しかないとすれば︑この商品はただ或る時にだけ︑またはただ或る場所でだ

け︑或いは特定の恵まれた人々にだけ︑利用可能となるに止まる︒そこで政府は

これをできるだけ公平または平等に︑できるだけ多くの人八に入手できるように

するためには︑生産量皿を供給

/ する生産費Eを償う価格を公定しなければなら

ぬ︒このためには正常需要皿を四万に引下げなければならぬ︒これが配給制︑切符

制︑割当制などと呼ばれるものであるが︑購買力のある人々の欲求を︑権力をもって制限するのであるから︑当

然いわゆる闇価格の成立する余地が生れる︵後述参照︶︒

‑8一

(9)

 逆に政府当局が或る産業を保護するために︑その産業の生産物の価格を︑正常価格よりも高く公定し維持しよ

うと試みたとしよう︒例えば第五図において正常価格匹を013の高さに固定しようとしたとせよ︒この場合の総生

産量はE︑その総消費量はEであるから︑統制機関はこの商品をこの価格で買上げて︑余剰生産量匹を破棄しな

ければならない︒一九二〇年代におけるブラジル政府のコーヒー価格支持計画は︑これを買上げて余分を海に投

棄する方法を採ったのである︒

 さて︑切符制・配給制・割当制などの︑いわゆる価格統制については︑非合法な市場または価格すなわち﹃闇﹄

がさけがたいのであるが︑これも亦需給法則を拡充することによって︑一応の解説を試みることができる︒

 いま第六図においてDとSは︑なんらの規制もない正常的な需給とす

れば︑匹は自由な価格であろう︒ところが価格の統制が行われ︑皿が公

定最高価格とされたとしよう︒この価格では匹が供給され︑需要は匹の

数量に達するであろう︒そこで需要量が吋に制限され︑Wで表わされる

過剰需要によって︑闇市場が発生するとしよう︒ここでは18の左側に闇

市場供給曲線18を想定することができる︒闇市場における営業は︑自由

市場でのそれに比べて︑より大きい費用と危険を必要とするから︑より

高い価格でより少ない数量が供給されるに止まるであろう︒同様に闇市

場における需要曲線乙を仮定することができる︒公定最高価格皿でも︑

総ての潜在的な買手が︑あえて闇市場で購入しようと望んでいるとは限らず︑従って価格皿における闇市場での

−一一9一一

(10)

需要量は︑充されない需要量の全部すなわちWではなく︑それよりも少ない量1124であると考えられる︒価格が高

くなるに従って︑闇市場における需要量も少なくなるであろう︒そして遂に或る価格︵例えば皿︶では︑全く買手

はなくなるであろう︒この場合の闇価格はに一で︑その取引量は1211である︒合法な市場での取引量は匹であるから︑

両者を合計した市場での総売買量は匹となる︒

 右のような分析からえられる興味ある結論の第一は︑闇市場での価格が自由な市場で成立つと思われる正常価

格よりも︑高いこともありうるが︑低いこともあり得るであろう︵︑ということである︒第二は合法市場と闇市場

を併せた平均価格は︑おそらくいわゆる正常価格よりも低いであろうから︑価格統制の結果たとい闇市場が発生

しても︑その結果としての平均価格は︑完全に自由な市場で存立するであろうと考えられる価格よりも安い︑と

いうことである︒第三に闇市場で買手に大きな罰と妨害を課すに応じて︑また売手に対する罰が小さいのに応じ

て︑闇価格が安くなりそうだということである︒もし闇市場での買入れに︑なんらの罰も課せられないとすれ

ば︑闇市場での需要曲線は正常な需要曲線

12 92と同じであろう︒同時にもし売手に厳重な処罰が加えられ︑従って

闇市場での供給曲線が仏であるとすれば︑闇価格は高くに一であろう︒反対に売手は少しも煩わされず︑いかなる

処罰もないとすれば︑闇市場での供給曲線は正常な供給曲線18であろう︒これと共にもし闇市場での買手に処罰

が加えられ︑その結果として闇市場での需要曲線が七となるとすれば︑闇価格は低く10四となるであろう︒これら

の推論からすれば︑他の事情を一定とすれば︑闇市場では売手よりは買手をllI闇商人よりは家庭の主婦を1−

罰する方が効果的ということになりそうである︒固より他の事情は通常等しくはない︑例えば買手よりも売手を

処罰する方が容易であろうし︑売手を処罰する政策的容易さが︑経済的な不利益を依って余りがあるかもしれな

‑10‑

(11)

い︒要するに︑実際上の政策の語間題は︑経済的な分析の結果を︑政治的な分析によって補足する必要のあるこ

とを示している︒

      四

 さて︑すでにマーシャルはいわゆるG唄acaQを挙げて︑貧しい労働家族がパンの価格が騰貴すると︑肉

その他の脂肪性の食物や高価な澱粉性食品を節約して︑なお比較的に安いパンをより多く摂取することを示した

のであるが︑これはいわゆる需要の弾力性が正で1よりも大きい場合のあることを示したもので︑いわゆる所得

効果が負で︑正の代用効果よりも大きいと︑両者の綜合効果が負となることを意味し︑パンの需要曲線が上方に

おいて右方に反転することの一例である︒また効用曲線ないし無関心曲線は右下りである︑という原則に対する

例外としては︑いわゆる劣等財︵InferiorGood已に対する需要や︑価格効果それ自身を目的とするダイヤモン

ドの需要︑他人との張合いや他人への見栄坊のための需要等々がある︒供給曲線についても例えば労働の供給

は︑労賃が或る程度を越えると却って減少し︑その供給曲線は左方に反転する︑と言われている︒逆に労賃が或

る程度以下になると︑生活の必要から残業や副業の欲求が強くなり︑労働の供給は却って増加して︑その供給曲

一一11 ‑一一

(12)

線は右方に反転する︑というような事情が考えられる︒もし我々が熱狂的な

株式市価を考えると︑株価が高くなるに従って︑需要は増加し供給は減少す

るであろうし︑反対に極度に悲観的な株式市場の場合には︑株価が低下する

に従って売りは増加し買いは減少するであろう︒これを図示すれば︑第七図

のw一と匹のようになる︒

 この故に︑いわゆる需給の法則が妥当するのは︑第七図について言えば価

格がMNの間︑従って例えば価格が奴または四︑数量が面または皿のよう

な︑言わばNonmalな範域に限られる︒価格が匹以上の言わばAbnonmal

な範域︑および価格が匹以下の言わばSubinonmalな範域においては︑需給

曲線の反転が考えられる︒

 このような需給曲線の反転とくに供給曲線の反転は︑前に一言したように労働の供給において︑労賃の高さが

或る程度を超えると︑その供給量が却って減少し︑また或る程度以下となると増加するのと︑正に同じ理由によ

って農産物について見られる︒すなわち農産物例えば米の供給曲線は︑正の傾斜従って価格の上昇が生産を刺激

し︑その下落が生産意欲を阻害するのではなくして︑負の傾斜従って価格の上昇が生産を阻み︑その下落が生産

を刺激するのである︒農家は自主経営であり︑自家労働に依存する︒それ故に米価が或る程度以上に高くなる

と︑生産に精を出さなくとも楽な生活ができ︑反対に米価が或る程度以下になると︑生活のために価格の下落を

増収で補うように努力するであろう︒

一12‑

(13)

 いま第八図で示したように︑供給曲線の傾斜が実際に

需要曲線のそれよりも小さいほど︑後方に反転する傾斜

を持つ場合には︑Pにおける両曲線の交点で示された均

衡は不安定である︒この点における需給量は相等しい

が︑余剰需要か余剰供給かの︑いづれかを招米する僅か

な撹乱が起るならば︑経済的諸勢力は価格と数量を均衡

方向へではなく︑かえって均衡点から遠ざかる方向へと

動くであろう︒

 かりに凶作のために生産量が血であったとしよう︒匹

よりも高い価格心︸は︑いまや生産を刺激するどころか︑

 かえってこれを阻害するであろう︒従って次年度には

更に一層少ない生産量心﹁︵a匹一︶を導き︑より高い価格

ぷとなり︑これはまた匹/H心四︶という収穫量となり・︑価格はぷと上昇し︑農産物たとえば米の価格と数量は

︷︸yむか゛︷︸Q:::という矢印の経路を辿って︑均衡点Pから離れてゆくであろう︒

 同様にべというような︑均衡水準を僅かに上廻る生産があいと︑価格は八と下落べこれは次年度に宍子心︶

という産出量を招き︑その結果として価格は︑より低い水準訊に落ち︑それはまたがというより大きな生産量を       D         N 導く︒この過程は進行し続けて︑遂には価格の下落が生産拡大の意欲を喪失さすようになるかIIその場合には

‑13‑

(14)

供給曲線が反転して︑安定的な均衡点瓦で需要曲線と交わるIII或いは需要および供給の基礎条件の撹乱が︑全

需要曲線または全供給曲線の新しい位置への移動︵訃︷︷t︸をもたらすであろう︒

 農業における独特な不安定性の多くは︑このような需給法則の拡充分析の線に沿って説明されうるであろう︒

第八図における供給曲線は︑本質的には短期供給曲線であ

り︑一定数の生産者が各価格に応して生産する産出量を示

すものである︒生産者の数が多ければ︑安定的な短期均衡

点瓦は著しく低いものであり︑従って農業全体は極めて利

潤の少ないものとなるであろう︒このような状態が相当の

長期に亘って持続することは不可能である︒けだし農家に

いわゆる離村向都の傾向が生れるからである︒このような

ことの起る場合の短期供給曲線は︑おそらく需要曲線の左

方へ︑第九図88のような状態へ︑移動するであろう︒第九

図では相当高い価格匹において安定均衡が成立し︑この産業は点瓦からPへ︑汐茫︸⁚︶ふ‰︶︒y⁝⁝という経路を

辿って移動し︑遂には短期の供給または需要の条件が︑再び変化するようになるであろう︒P点でこの産業は異

常な利潤を生むものとなるかもしれない︒そうすると短期の供給曲線が︑第八図に示したような位置へ︑戻り移

動さす新しい生産者をひきつけることになり︑生産数量の拡大と価格の下落が︑これに伴って生起するであろ

う︒反転的な短期供給曲線の場合には︑供給曲線または需要曲線のいづれかの僅かな移動が︑安定的均衡の位置

‑14‑

(15)

の大きな移動をもたらすことは︑明らかに看取されるところであろう帥︒

 さて︑周知のように我国における産米数量は︑消費量の八割すなわち二割の不足と言われている︒そして生産

者米価は田植を終ったばかりの青田を眺めて︑生産費・所得補償方式によって公定される︒しかも政府の買入れ

米価は安すぎる︑という叫びが農家や各政党の中で高い︒消費者米価は数か月遅れてI近頃では同時決定の要

請も強いI公定されるのであるが︑決して安いとは言うことができず︑諸物価騰貴の折柄でもあり︑消費者米

価の引上げは消費家計を圧迫するI︵y氏FcaQを想起せよlという非難も強い︒しかも我国の米価は︑

国際米価と比較すると著しく高い︒はたして米価が高すぎて農家の生産意欲を阻害しているのか︑またまた安す

ぎてその生産意欲を喪失さしているのか︑詳しくはなお考うべき問題であろう︒

‑15‑

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