Ⅰ 序
本稿は,わが国において,一般に総合電機メーカーと呼ばれている日立製 作所(1),東芝(2)および三菱電機(3)の3社を対象として,入手可能な最近の公表 資料等に基づきながら,2009年と2010年の連結業績の推移や業績予想の修正 内容等について分析・検討を試みるものである。
過年度の当該研究を総覧すると,a.2003年3月期および2004年3月期に おける企業業績の回復・向上状況についての考察(4),b.総合電機メーカー 9社の2001年3月期から2006年3月期における連結経営指標(連結業績および 単体業績)の推移についての考察(5),c.総合電機3社の2009年における連結 業績通期予想(業績予想修正の公表等)や四半期別売上高・営業損益の推移に
企業業績の推移と財務分析
―― 総合電機3社の連結業績の動向 ――
杉 野 博 貴
Ⅰ 序
Ⅱ 総合電機3社の企業業績の概要
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1 日立製作所の企業業績の概要
!
2 東芝の企業業績の概要
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3 三菱電機の企業業績の概要
Ⅲ 総合電機3社の企業業績の回復状況
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1 日立製作所の連結業績の回復状況
!
2 東芝の連結業績の回復状況
!
3 三菱電機の連結業績の回復状況
Ⅳ 結
−229−
( 1 )
ついての考察(6),などの一連の研究成果をあげることができる。
前回の考察においては,2008年9月のリーマン・ブラザーズ(米国で第4位 の規模を持つ巨大証券会社・投資銀行)の経営破綻を契機とした世界的な金融危 機の影響による日本経済の実状や,総合電機各社の業績悪化の状況を取り上 げている(7)。そして,急激に変化している外部経営環境に対応するための徹 底した事業構造やコスト構造の改革の実施,収益性の改善と今後の成長を図 るための様々な施策の推進,さらに売上高の増加や拡大が見込めない環境の もとでの,一定の収益の確保と強固な財務体質の再構築を図るために,事業 戦略の見直しや事業構造およびコスト構造の改革の必要性を確識することが できた。
最近(2011年3月期第2四半期累計)の総合電機各社の業績動向等をみると,
世界的な金融危機の影響による業績悪化後の企業収益の早期回復の状況を認 識することができる(8)。すなわち,損益面での環境改善が着実に進行してき ており,それを明らかにするために四半期ごとの業績動向や業績予想の修正 内容等について検証する作業が必要とされるであろう。
そこで,上述のような問題意識のもとで,以下の考察においては,総合電 機3社の企業業績の概要や回復状況等に焦点をあてて論及を試みたい。
Ⅱ 総合電機3社の企業業績の概要
!
1 日立製作所の企業業績の概要
日立製作所の最近の業績(実績)をみると,2007年3月期(売上高10兆2,479 億円,営業利益1,825億円,当期純損失327億円),2008年3月期(売上高11兆2,267億 円,営業利益3,455億円,当期純損失581億円),2009年3月期(売上高10兆3億円,営 業利益1,271億円,当期純損失7,873億円),2010年3月期(売上高8兆9,685億円,営 業利益2,021億円,当期純損失1,069億円)の内容が報告されており,4期連続で 当期純損失(最終赤字)を計上している。とくに,2009年3月期の最終赤字
−230−
( 2 )
(7,873億円)については製造業最大の赤字と報道されている(9)。
このような企業業績の悪化状況に対処する施策をみると,2009年度を日立 グループの再スタートの年と位置づけ,社会イノベーション事業への傾注に 向けた施策を強力に推進しており,オートモティブシステム事業やコン シューマ事業などにおける事業構造改革を進めるとともに,固定費や資材費 の削減を実施している。また,上場子会社5社の完全子会社化による社会イ ノベーション事業の強化を目的として,株式の公開買い付けを行ない,さら に,社会イノベーション事業のさらなるグローバル展開に向けた設備投資お よび戦略投資への充当と,財務体質の強化を目的とした新株式および転換社 債の発行による資金調達を実施しているのである(10)。
このような経営資源の選択と集中は,セグメント区分の変更に現れている。
決算資料等をみると,2010年3月期(2009年度)から,セグメント区分をそ れまでの「情報通信システム」,「電子デバイス」,「電力・産業システム」,
「デジタルメディア・民生機器」,「高機能材料」,「物流及びサービス他」,お よび「金融サービス」の7区分から,「情報通信システム」,「電力システム」,
「社会・産業システム」,「電子装置・システム」,「建設機械」,「高機能材料」,
「オートモティブシステム」,「コンポーネント・デバイス」,「デジタルメディ ア・民生機器」,「金融サービス」,「その他」の11区分に変更しているのであ る(11)。
そこで,2010年3月期の企業業績をみると,売上高については,電力シス テム部門は堅調に推移したものの,景気の低迷にともない情報・通信システ ム部門,高機能材料部門やコンポーネント・デバイス部門を中心に前期を下 回り,前期比10%減の8兆9,685億円となっている。また,海外売上高は,
世界的な需要減少の影響を受けて,前期比12%減の3兆6,547億円となって いる。営業利益については,投資抑制の影響等で情報・通信システム部門や 建設機械部門が悪化したものの,固定費や資材調達費の削減に加え,オート 企業業績の推移と財務分析(杉野) −231−
( 3 )
モティブシステム部門やデジタルメディア・民生機器部門が事業構造改革の 効果等で大幅に改善しており,前期比で59%増の2,021億円になったと報告 されている。
営業外損益については,前期から継続した事業構造改革関連費用の収束等 により2,784億円改善して,1,385億円の損失となっており,また,当期純損 失は,前期から6,803億円改善し,1,069億円になったと報告されている。な お,四半期純利益については,第3四半期(2009年10‐12月期)以降において,
黒字に転換しているのである。
2011年3月期第2四半期連結累計期間(4‐9月)の売上高についてみると,
自動車やエレクトロニクス関連分野の需要回復にともない,高機能材料部門 やオートモティブシステム部門,電子装置・システム,建設機械部門等が前 年同期を大きく上回り,前年同期比9%増の4兆5,024億円となった。また,
海外売上高は,世界的な需要回復にともない,前年同期比16%増の1兆9,788 億円になったと報告されている。
この期の営業利益については,売上高の増加に加え,事業構造改革の進展,
原価低減や固定費の抑制等により,高機能材料部門やコンポーネント・デバ イス部門をはじめ,全ての部門が前年同期から改善しており,その結果,黒 字を計上したことから,前年同期に比べて,2,428億円改善し2,180億円と なっている。営業外損益は,円高による為替差損を計上したものの,事業構 造改革関連費用の収束等により,前年同期に比べて1,311億円改善しており,
457億円の利益となった。これらの結果,四半期純利益は,前年同期に比べ て2,912億円改善し1,580億円になったと報告されている。
このような日立製作所の業績改善(急回復)の状況について,いわゆる「V 字回復」と表現することも可能であり,それは事業の選択と集中による「脱 総合電機」経営への転換が指摘できるであろう(12)。
−232−
( 4 )
!
2 東芝の企業業績の概要
東芝は,「デジタルプロダクツ」,「電子デバイス」および「社会インフラ」
を主力事業とする複合的な電機メーカーであり,この3分野に「家庭電器」
(およびその他事業)を加えた4分野において新たな注力事業を加え,東芝グ ループ全体として事業展開を行なっているのである(13)。
東芝の最近の業績(実績)をみると,2009年3月期(売上高6兆6,545億円,営 業損失2,501億円,当期純損失3,435億円),2010年3月期(売上高6兆3,815億円,営 業利益1,171億円,当期純損失197億円)の内容が報告されており,2期連続で当 期純損失(最終赤字)を計上している。このような企業業績の悪化状況に対 処する施策をみると,外的・内的な経営環境を踏まえ,市況変化に影響され ない収益体質への転換を図るため,2009年1月に公表した「収益改善に向け た体質改革プログラム」を全社で強力に展開し,事業構造改革および固定費 の削減に努めるとともに,グローバル事業展開を加速して事業の集中と選択 を推進しているのである。
2010年3月期の企業業績をみると,売上高については円高および上半期に おける景気低迷の影響を受け前期比2,729億円減少し6兆3,816億円になった ものの,下半期では前年同期比増収になっている。なお,海外売上高は前期 比で794億円増加して3兆5,031億円となり,海外売上高比率は55%となって いる。営業損益についてはその他部門を除く全部門で大幅な増益または改善 となり,とくに半導体事業がメモリの好調により大幅に改善して黒字化した 結果,前期比で3,674億円改善し,1,172億円の黒字になったと報告されてい る。これは,半導体事業がメモリの好調により黒字化し,社会インフラ部門 も高水準の利益を確保したことに加えて,上記の「収益改善に向けた体質改 革プログラム」を断行し,事業構造改革等を推進した結果,当初計画を約 1,300億円も上回る4,300億円の固定費削減により経営体質を強化したことに よるものと考えられる。そして,当期純損益については197億円の損失を計 企業業績の推移と財務分析(杉野) −233−
( 5 )
上したものの,前期比では3,239億円の改善となっているのである。
2011年3月期第2四半期連結累計期間(4‐9月)の企業業績についてみると,
この期間の世界経済は,各国における景気刺激策の効果等により緩やかに回 復し,とくに中国をはじめとするアジア諸国で内需を中心に景気拡大が継続 し,また,国内経済も海外経済の改善や景気刺激策の効果等により景気は引 き続き持ち直しの傾向が続いたものの,後半には足踏みの状況もみられたと 分析している。こうした状況のもとでの業績は,NAND型フラッシュメモ リの需要拡大,価格の安定等により半導体事業が好調で,液晶ディスプレイ 事業も黒字化するなど電子デバイス部門を中心に大幅に改善したものである。
売上高は前年同期比1,844億円増加し3兆811億円となり,営業利益は前年同 期比1,027億円増加して1,048億円となった。また,当期純損益についても 855億円に改善し278億円になったと報告されている。
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3 三菱電機の企業業績の概要
三菱電機グループについては,それまで推進してきた経営体質強化に向け た施策として,引き続き「成長性」,「収益性・効率性」,「健全性」の3つの 視点による「バランス経営」に基づき,全社横断的な経営改善の諸施策,着 実な成長戦略および構造改革に取り組んでいるのである。また,とくに経営 環境変化に対応した施策として,固定費の削減,原価低減活動の一段の強化 等を推進し,業績の維持・改善に向けての取り組みがみられる(14)。
三菱電機は,連結売上高では,1位の日立製作所,2位の東芝に次ぐ国内 第3位の総合電機メーカーであり,日立製作所や東芝が,前述のように最近 の連結決算で連続して純損失を計上しているのに対して,一定の純利益を確 保している。部門別売上高(事業セグメント)については,「重電システム」,
「産業メカトロニクス」,「情報通信システム」,「電子デバイス」,「家庭電器」
および「その他」の6つに区分されている。
−234−
( 6 )
2009年度の経営環境においては,各国景気刺激策や在庫調整の進展等を受 けて,前年度後半からの深刻な景気後退の局面から持ち直しに転じたが,設 備投資が低位にとどまるなど,回復力は力強さを欠いたものとなり,また,
為替も対米ドルを中心に前年度比円高で推移するなど,経営環境は総じて厳 しさが残る状況となったと分析している。
2010年3月期の企業業績をみると,売上高については,前年度比9%減収 の3兆3,533億円,営業利益は33%減益の943億円,そして当期純利益は132
%増益の283億円になったと報告されている。
2011年3月期第2四半期連結累計期間(4‐9月)の企業業績についてみると,
全般の概況として,国内外の景気は,急速な円高が進行するなど厳しい動き もあったが,新興国を中心とした世界的な景気回復にともない,総じてみれ ば緩やかな改善が継続したと分析している。このようなもとで,この四半期 累計の連結売上高は,産業メカトロニクス部門,電子デバイス部門および家 庭電器部門の増収などにより,全体では前年同期比112%の1兆7,118億円と なった。連結営業利益は,全ての事業セグメントにおいて増益となり,全体 では前年同期比719%の1,129億円となったと報告されている。
したがって,連続して最終赤字を計上している日立製作所や東芝の事例で は,全社的な事業構造改革や事業展開の見直しによる選択と集中のような対 応策が表面化されているが,三菱電機においては継続した「バランス経営」
という観点からの改善策がなされているものと思われる。
上述のような考察結果に基づき,以下では,とくに四半期ごとの業績推移
(業績回復)の内容について論及を試みることにする。
企業業績の推移と財務分析(杉野) −235−
( 7 )
Ⅲ 総合電機3社の企業業績の回復状況
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1 日立製作所の連結業績の回復状況
まず,2009年〜2010年における日立製作所の主要な決算発表資料等を整理 すると,次の[資料Ⅲ−1]ように示すことができる。
[資料Ⅲ−1]日立製作所の主要な決算発表資料
(2009年1月30日) 業績予想の修正に関するお知らせ
(2009年1月30日) 2009年3月期業績予想の修正と今後の業績改善施策について
(2009年2月3日) 2009(平成21)年3月期第3四半期 連結決算の概要
(2009年3月16日) 業績改善に向けた事業構造改革について
(2009年5月7日) 2009年3月期連結業績予想の修正および個別決算における特別損 失の計上に関するお知らせ
(2009年5月12日) 2009(平成21)年3月期 決算の概要
(2009年7月28日) 2010(平成22)年3月期第1四半期 連結決算の概要
(2009年10月26日) 業績予想の修正に関するお知らせ
(2009年10月29日) 2010(平成22)年3月期第2四半期 連結決算の概要
(2010年2月4日) 業績予想の修正に関するお知らせ
(2010年2月4日) 2010年(平成22)3月期第3四半期 連結決算の概要
(2010年3月18日) 剰余金の配当(期末配当)に関するお知らせ
(2010年4月26日) 業績予想の修正に関するお知らせ
(2010年5月11日) 2010(平成22)年3月期 決算の概要
(2010年7月30日) 業績予想の修正に関するお知らせ
(2010年7月30日) 2011(平成23)年3月期第1四半期 連結決算の概要
(2010年9月16日) 剰余金の配当(中間配当)に関するお知らせ
(2010年10月28日) 業績予想の修正に関するお知らせ
(2010年11月2日) 2011(平成23)年3月期第2四半期 連結決算の概要
(2010年11月2日) 期末配当予想の修正に関するお知らせ
この[資料Ⅲ−1]にもとづき,売上高,営業利益,当期純損益の通期予 想について要約すると,次の[資料Ⅲ−2]のように示すことができる。
−236−
( 8 )
[資料Ⅲ−2]日立製作所の連結業績の通期予想 2009年3月期連結業績通期予想
2008/10/30 2009/01/30 2009/05/07 売上高 10兆9000億円 → 10兆200億円 → 10兆円 営業利益 4100億円 → 400億円 → 1270億円 当期純利益 400億円 → −7000億円 → −7880億円
2010年3月期連結業績通期予想
2009/05/12 2009/10/26 2010/02/04 2010/04/26 売上高 8兆9000億円 → 8兆7000億円 →(通期変更なし)→ 8兆9600億円 営業利益 300億円 → 800億円 → 1350億円 → 2000億円 当期純利益 −2700億円 → −2300億円 → −2100億円 → −1100億円
2011年3月期連結業績通期予想
2010/05/11 2010/07/30 2010/10/28 売上高 9兆2000億円 →(通期変更なし)→ 9兆3000億円 → 営業利益 3400億円 →(通期変更なし)→ 4100億円 → 当期純利益 1300億円 →(通期変更なし)→ 2000億円 →
[資料Ⅲ−1]より,2010年2月4日発表の業績予想の修正内容をみると,
2010年3月期第4四半期連結会計期間は,緩やかな景気回復が続くものの,
民間設備投資等の回復の遅れが懸念されるため,2010年3月期通期の売上高 については,2009年10月26日に発表した予想と同額となる見通しとなってい る。また,損益面では,原価低減施策や事業構造改革の推進に加えて,社会 イノベーション事業でのプロジェクト管理強化などにより,前回の予想から 改善する見通しである。
2010年4月26日発表の業績予想の修正内容をみると,2010年3月期の売上 高は,前回予想に対して,電力・産業システム部門や電子デバイス部門など が上回り,全体としては業績予想を2,600億円上回る見通しとなっている。
営業利益については,売上高の増加に加え,コスト削減施策の効果により,
全部門で改善し,前回予想を650億円上回る見通しであり,その結果,当期 純損失については1,000億円と前回予想から改善される見通しであると公表
企業業績の推移と財務分析(杉野) −237−
( 9 )
されている。
2010年7月30日発表の業績予想の修正内容をみると,第2四半期連結累計 については業績予想を上回る見通しを出しているが,通期については,米国 や欧州を中心とした世界経済の動向や,為替レートの推移,原材料価格の変 動およびエコ減税やエコポイント等の景気刺激策の終了影響などが不透明で あるため,事業環境を見通すことが困難なことから,予想の変更を行なって いない。
2010年10月28日発表の業績予想の修正内容をみると,売上高は社会・産業 システム,オートモティブシステム部門を中心に業績見通しを上回る見込み であり,営業利益については,円高や世界的な景気の先行きに対する不透明 感による影響が見込まれるものの,社会・産業システム,電子装置・システ ム,建設機械,高機能材料や金融サービス部門等,大半の部門で改善するた め,業績予想を上回る見通しであると公表されている。
日立製作所の過去3年間の実績と通期予想を整理すると,次の[資料Ⅲ−
3]のように示すことができる。
[資料Ⅲ−3]日立製作所の通期実績と通期予想 (単位:億円)
2008年3月期 2009年3月期 2010年3月期 2011年3月期
(通期予想2010年11月末時点)
売上高 112,267 100,036 89,685 (93,000)予想 営業損益 3,455 1,271 2,021 (4,100)予想 当期純利益 −581 −7,873 −1,069 (2,000)予想
日立製作所の四半期別売上高と営業損益(2009年3月期〜2011年3月期)の実 績を整理すると,次の[資料Ⅲ−4]のように示すことができる。
−238−
( 10 )
[資料Ⅲ−4]日立製作所の四半期別売上高と営業損益(2009年3月期〜2011年3月期)の実績
(単位:億円)
2009年3月期 2010年3月期 2011年3月期
四半期別 4‐6月期 7‐9月期 10‐12月期 1‐3月期 4‐6月期 7‐9月期 10‐12月期 1‐3月期 4‐6月期 7‐9月期 売上高 25,434 27,670 22,605 24,292 18,929 22,320 21,579 26,857 21,525 23,498 営業損益 776 1,193 −145 −554 −505 258 663 1,605 884 1,295
!
2 東芝の連結業績の回復状況
2009年〜2010年における東芝の主要な決算発表資料等を整理すると,次の
[資料Ⅲ−5]ように示すことができる。
[資料Ⅲ−5]東芝の主要な決算発表資料
(2009年1月29日) 2009(平成21)年3月期第3四半期決算(9か月累計)(連結)
(2009年1月29日) 業績予想の修正に関するお知らせ
(2009年1月29日) 収益改善に向けた体質改善プログラム
(2009年4月17日) 業績予想の修正に関するお知らせ
(2009年5月08日) 2009(平成21)年3月期決算(連結・単独)
(2009年7月29日) 2010(平成22)年3月期第1四半期決算(連結)
(2009年10月27日) 業績予想の修正に関するお知らせ
(2009年10月30日) 2010(平成22)年3月期第2四半期決算(6か月累計)(連結)
(2010年1月29日) 連結業績予想の修正に関するお知らせ
(2010年1月29日) 2010(平成22)年3月期第3四半期決算(9か月累計)(連結)
(2010年4月22日) 連結業績予想の修正に関するお知らせ
(2010年5月7日) 2010(平成22)年3月期決算(連結・単独)
(2010年7月29日) 2011(平成23)年3月期第1四半期決算(連結)
(2010年10月21日) 業績予想の修正に関するお知らせ
(2010年11月9日) 2011(平成23)年3月期第2四半期決算(6か月累計)(連結)
この[資料Ⅲ−5]にもとづき,売上高,営業損益,当期純損益の通期予 想について要約すると,次の[資料Ⅲ−6]のように示すことができる。
企業業績の推移と財務分析(杉野) −239−
( 11 )
[資料Ⅲ−6]東芝の連結業績の通期予想 2009年3月期連結業績通期予想
2008/09/19 2009/01/29 2009/04/17 売上高 7兆7000億円 → 6兆7000億円 → 6兆6545億円 営業利益 1500億円 → −2800億円 → −2501億円 当期純利益 700億円 → −2800億円 → −3543億円
2010年3月期連結業績通期予想
2009/05/08 2009/10/27 2010/01/29 2010/04/22 売上高 6兆8000億円 →(通期変更なし)→ 6兆4000億円 → 6兆3800億円 営業利益 1000億円 →(通期変更なし)→(通期変更なし)→ 1170億円 当期純利益 −500億円 →(通期変更なし)→(通期変更なし)→ −200億円
2011年3月期連結業績通期予想
2010/05/7 2010/07/29 2010/10/21 売上高 7兆0000億円 →(通期変更なし)→(通期変更なし)→
営業利益 2500億円 →(通期変更なし)→(通期変更なし)→
当期純利益 700億円 →(通期変更なし)→(通期変更なし)→
[資料Ⅲ−5]より,2010年1月29日発表の業績予想の修正内容をみると,
通期予想の売上高については当初の予想以上に長引く世界的な景気低迷の影 響を受けて全セグメントで前回予想より減少する見通しとなっている。損益 面については,予想より改善する部門と減益が見込まれる部門があるため,
通期見通しを変更していないのである。
2010年4月22日発表の業績予想の修正内容をみると,営業損益については,
固定費や調達コスト削減の効果等により,デジタルプロダクツ,電子デバイ ス,家庭電器の各部門において,業績予想より増益になる見込みであり,当 期純損失も改善される予想であると公表されている。
2010年10月21日発表の業績予想の修正内容をみると,通期予想については 変更されていないが,2010年度上期(第2四半期連結累計)の予想について は,売上高は減収見込みであるものの,損益面は増益になる見込みであると 公表されている。
−240−
( 12 )
そこで,東芝の過去3年間の実績と通期予想を整理すると,以下の[資料
Ⅲ−7]のように示すことができる。
[資料Ⅲ−7]東芝の通期実績と通期予想 (単位:億円)
2008年3月期 2009年3月期 2010年3月期 2011年3月期
(通期予想2010年11月末時点)
売上高 76,635 66,545 63,815 (70,000)予想 営業損益 2,464 −2,502 1,171 (2,500)予想 当期純利益 1,274 −3,436 −197 (700)予想
東芝の四半期別売上高と営業損益(2009年3月期〜2011年3月期)の実績を整 理すると,次の[資料Ⅲ−8]のように示すことができる。
[資料Ⅲ−8]東芝の四半期別売上高と営業損益(2009年3月期〜2011年3月期)の実績
(単位:億円)
2009年3月期 2010年3月期 2011年3月期
四半期別 4‐6月期 7‐9月期 10‐12月期 1‐3月期 4‐6月期 7‐9月期 10‐12月期 1‐3月期 4‐6月期 7‐9月期 売上高 16,181 18,766 14,883 16,715 13,397 16,160 15,784 18,474 14,692 16,297 営業損益 −229 44 −1,588 −740 −376 402 102 1,043 294 710
!
3 三菱電機の連結業績の回復状況
2009年〜2010年における三菱電機の主要な決算発表資料等を整理すると,
次の[資料Ⅲ−9]ように示すことができる。
企業業績の推移と財務分析(杉野) −241−
( 13 )
[資料Ⅲ−9]三菱電機の主要な決算発表資料
(2009年2月2日) 2009(平成21)年3月期第3四半期 連結決算概要
(2009年2月2日) 2009(平成21)年3月期業績予想の修正
(2009年4月30日) 業績予想の修正に関するお知らせ
(2009年4月30日) 2009(平成21)年3月期 連結及び単独決算概要
(2009年7月30日) 2010(平成22)年3月期第1四半期 連結決算概要
(2009年10月30日) 2010(平成22)年3月期第2四半期 連結決算概要
(2009年10月30日) 業績予想の修正に関するお知らせ
(2010年2月2日) 2010(平成22)年3月期第3四半期 連結決算概要
(2010年3月23日) 業績予想の修正に関するお知らせ
(2010年4月30日) 2010(平成22)年3月期 連結及び単独決算概要
(2010年07月30日) 業績予想の修正に関するお知らせ
(2010年07月30日) 2011(平成23)年3月期第1四半期 連結決算概要
(2010年10月29日) 業績予想の修正に関するお知らせ
(2010年10月29日) 2011(平成23)年3月期第2四半期 連結決算概要
この[資料Ⅲ−9]にもとづき,売上高,営業利益,当期純損益の通期見 通しについて要約すると,次の[資料Ⅲ−10]のように示すことができる。
[資料Ⅲ−10]三菱電機の連結業績の通期予想 2009年3月期連結業績通期予想
2008/10/30 2009/02/02 2009/04/30 売上高 3兆9000億円 → 3兆6000億円 → 3兆6651億円 営業利益 2200億円 → 1200億円 → 1397億円 当期純利益 1200億円 → 100億円 → 121億円
2010年3月期連結業績通期予想
2009/04/30 2009/10/30 2010/02/02 2010/03/23 売上高 3兆4300億円 → 3兆3000億円 →(通期変更なし)→ 3兆3300億円 営業利益 600億円 →(通期変更なし)→(通期変更なし)→ 930億円 当期純利益 −200億円 →(通期変更なし)→(通期変更なし)→ 250億円
2011年3月期連結業績通期予想
2010/04/30 2010/07/30 2010/10/29 売上高 3兆4800億円 → 3兆5300億円 → 3兆5600億円 → 営業利益 1400億円 → 1600億円 → 2050億円 → 当期純利益 700億円 → 900億円 → 1150億円 →
−242−
( 14 )
[資料Ⅲ−9]より,2010年3月23日発表の業績予想の修正内容をみると,
国内の設備投資や建築着工は依然低位にとどまるものの,アジアを中心とし た設備投資需要や各国政府の景気刺激策による効果は想定を上回り,産業メ カトロニクス部門・電子デバイス部門の売上高が前回予想から増加する見込 みとなっている。利益面については,売上高増に加え,固定費の削減や原価 低減活動を一層強化したことなどにより,営業利益が前回予想から増加し,
当期純利益は黒字となる見込みであると公表されている。
2010年7月30日発表の業績予想の修正内容をみると,2011年3月期第2四 半期連結累計期間(4‐9月)の業績見通しは,アジアを中心とした設備投資の 需要増に加え堅調な新車販売を背景とした産業メカトロニクス部門の伸長な どにより,売上高や利益ともに当初予想を上回る業績が見込まれることから,
通期業績についても上方修正を行なっているのである。
2010年10月29日発表の業績予想の修正内容をみると,通期業績については,
想定を上回る円高の進行はあるものの,産業メカトロニクス部門,家庭電器 を中心に前回予想を上回る業績が見込まれることから,上方修正を行なって いる。
そこで,三菱電機の過去3年間の実績と通期予想を整理すると,次の[資 料Ⅲ−11]のように示すことができる。
[資料Ⅲ−11]三菱電機の通期実績と通期予想 (単位:億円)
2008年3月期 2009年3月期 2010年3月期 2011年3月期
(通期予想2010年11月末時点)
売上高 40,498 36,651 33,532 (35,600)予想 営業損益 2,672 1,397 943 (2,050)予想 当期純利益 1,579 121 282 (1,150)予想
三菱電機の四半期別売上高と営業損益(2009年3月期〜2011年3月期)の実績 を整理すると,次の[資料Ⅲ−12]のように示すことができる。
企業業績の推移と財務分析(杉野) −243−
( 15 )
[資料Ⅲ−12]三菱電機の四半期別売上高と営業損益(2009年3月期〜2011年3月期)の実績
(単位:億円)
2009年3月期 2010年3月期 2011年3月期
四半期別 4‐6月期 7‐9月期 10‐12月期 1‐3月期 4‐6月期 7‐9月期 10‐12月期 1‐3月期 4‐6月期 7‐9月期 売上高 8,790 10,193 8,079 9,587 6,994 8,300 7,811 10,427 7,789 9,329
営業損益 674 659 351 −288 73 83 386 391 515 613
Ⅳ 結
以上のように,日立製作所,東芝および三菱電機の総合電機3社を対象と して,2009年と2010年の連結業績の推移や業績予想の修正内容等について考 察を試みた。2011年3月期の通期予想については,業績回復の状況が認識で き,具体的には,各社が公表している業績予想の修正内容や,四半期別売上 高や営業損益の実績値にそれが反映されている。すなわち,企業収益の早期 の改善状況が明らかとなっており,このような業績回復を前提として,日立 製作所や東芝は,「復配」を決定して,投資家への利益配分を強化する方向 に向かっているのである。
次回の考察においては,四半期ごとの業績推移の動向や,事業の選択と集 中の具体的実施状況等について,さらに論及を試みることによって,総合電 機各社の対応施策の内実が明確になるものと考えられる。
注
( 1 ) 日立製作所の財務情報等については,「決算短信」,およびホームページ上(株
主・投資家向け情報)の「業績・財務情報」,「IR資料室」などを参照.
( 2 ) 東芝の財務情報等については,「決算短信」,およびホームページ上(投資家情
報)の「財務・業績」,「IR資料室」などを参照.
( 3 ) 三菱電機の財務情報等については,「決算短信」,およびホームページ上(投資
家情報)の「IR資料室」などを参照.
( 4 ) 杉野博貴「経営財務政策と企業業績」(『九州国際大学国際商学部論集』第17
巻第1・2合併号,平成17年[2005年]1月,25‐51頁).
( 5 ) 杉野博貴「企業業績と財務分析 ―― 総合電機メーカーの連結経営指標の推移」
−244−
( 16 )
(『九州国際大学経営経済論集』第13巻第3号,平成19年[2007年]3月,1‐27 頁).
( 6 ) 杉野博貴「企業業績の動向と財務分析 ―― 総合電機メーカーの連結業績の推
移」(久留米大学商学部編『久留米大学商学部創設60周年記念 人の幸せにつづ くビジネスの研究』中央経済社,2010年,265‐279頁).
( 7 ) 同上.
( 8 ) 日本経済新聞「総合電機は「復活」したか」,2010/11/30.
http://www.nikkei.com/tech/ssbiz/article/
日本経済新聞(朝刊),2010/07/30,「電機4〜6月 液晶テレビなど好調 ソニー など5社黒字化」.
日本経済新聞(朝刊),2010/11/10,「電機8社純利益 リーマン前超え,リスト ラ奏功,得意分野がけん引」.
( 9 ) 日本経済新聞(朝刊),2010/10/29,「日立,2000億円の黒字 今期最終20年ぶ
り高水準」.
(10) 日立製作所アニュアル・レポート2010 2010年3月期.
(11) 日立製作所の決算短信には「セグメント情報は,従来,日本基準に基づいて作 成していましたが,当期から米国財務会計基準審議会の会計基準編纂書280「セ グメント報告」を適用し,セグメント区分の変更を行っています。」と明記され ている。
(12) 日本経済新聞(朝刊),2010/11/10,「電機8社純利益リーマン前超え,リスト ラ奏功,得意分野がけん引」.
(13) 東芝アニュアル・レポート2010 2010年3月期・事業編.
(14) 三菱電機アニュアル・レポート2010 2010年3月期.
参考文献
( 1 ) 『日経会社情報』(日本経済新聞出版社).
( 2 ) 『会社四季報』(東洋経済新報社).
( 3 ) 伊藤邦雄『グループ連結経営』(日本経済新聞社出版,1999年).
( 4 ) 金児昭『「連結」の経営』(日本経済新聞社出版,1999年).
( 5 ) 野村健太郎『連結経営と構造改革 ―― 環境激変への処方箋』(税務経理協会,
2002年).
( 6 ) 野村健太郎『連結企業集団の経営分析〔全訂版〕』(税務経理協会,2003年).
( 7 ) 伊藤邦雄・中条祐介『連結会計とグループ経営』(中央経済社,2004年).
( 8 ) 平松一夫・山地範明・百合草裕康『連結会計情報と企業分析の基礎』(東京経
済情報出版,2005年).
( 9 ) 佐藤文昭『日本の電機産業再編のシナリオ』(かんき出版,2006年).
(10) 新光総合研究所「電機大手の第2四半期決算速報(10/30発表分まで集計)〜10 社合計 経常利益は第2四半期累計が赤転,通期予想が黒転〜」(2009年11月2 日).
企業業績の推移と財務分析(杉野) −245−
( 17 )