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都市計画道路の計画及び見直しに関する研究

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(1)

都市計画道路の計画及び見直しに関する研究

著者 倉根 明徳

雑誌名 金沢大学大学院自然科学研究科博士学位論文,

145p.

号 2011

ページ 1‑145

発行年 2011‑09‑01

URL http://hdl.handle.net/2297/34836

(2)

都市計画道路の計画及び見直しに関する研究

倉 根 明 徳

2011 年 7 月

(3)

都市計画道路の計画及び見直しに関する研究

― 目 次 ―

第1章 序論

1-1 本研究の目的---1

1)本研究の背景と目的---1

2)研究の方法と全体構成---3

1-2 既存研究の整理と本研究の位置付け---4

1)既存研究の整理---4

2)本研究の位置付け---13

第2章 日本における都市計画道路整備の実績と法制度の変遷について 2-1 はじめに---17

2-2 都市計画道路整備の実績---19

2-3 都市計画道路整備に関する法制度及び技術基準の変遷---24

2-4 まとめ---29

第3章 都市計画道路の見直しガイドライン策定状況と見直し実態に関する研究 3-1 はじめに---33

1)背景・目的---33

2)既存研究の整理---34

3)研究の方法---36

3-2 全国的な見直しガイドラインの策定状況---37

1)見直しの対象路線と対象路線の抽出基準について---37

2)各路線の検証及び評価について---39

3)住民との合意形成について---40

4)長野県における見直し手順について---41

3-3 道府県・政令市における都市計画道路の見直し実態---43

1)全国的な見直しの実績及び見直し理由別の見直し状況について---43

2)市町村との協議について---45

3)見直し後の対応について---48

3-4 当初計画決定時期や見直し理由からみた見直し路線の特徴---50

1)決定権者別の見直し路線数について---50

2)見直し路線の当初決定時期と見直し理由について---52

3-5 まとめ---54

1)全国的な見直し手法の傾向について---54

2)道府県・政令市における都計道の見直し実態について---54

3)見直し路線の特徴について---55

(4)

第4章 都市計画道路の見直しにおける広域調整及び見直し後の対応に関する実態と課題

4-1 はじめに---59

1)背景・目的---59

2)研究の方法---60

4-2 見直し過程における広域調整に関する実態---61

1)都市計画道路の見直し主体について---61

2)広域調整の方法について---62

3)広域的な影響の検証及び調整の実績について---63

4-3 見直し後の対応に関する実態---65

1)存続路線の対応について---65

2)建築制限の緩和措置について---66

3)固定資産税の減免措置について---67

4)廃止または計画変更路線の対応について---68

4-4 先進自治体の取組み事例---69

1)石川県の取組みについて---69

2)岐阜県の取組みについて---72

3)名古屋市の取組みについて---73

4-5 まとめ---74

1)広域的な調整について---74

2)見直し後の対応について---74

3)見直し先進自治体の取組み実態について---75

第5章 都市計画道路の計画策定における住民の合意形成に関する研究-飯田市における事例研究- 5-1 はじめに---77

1)背景・目的---77

2)既存研究の整理---79

3)対象地域の概要---81

5-2 土地利用規制手法の比較---82

5-3 都市計画道路の計画に伴う都市計画区域の拡大---84

1)事前調整について---84

2)都市計画に関する説明会について---85

3)飯田都市計画区域編入に関する説明会について---87

4)飯田都市計画区域編入に関する説明会(組合単位)について---88

5-4 特定用途制限地域の指定---91

5-5 まとめ---93

第6章 都市計画道路整備の CVM 評価に関する研究-金沢市における事例研究- 6-1 はじめに---97

1)背景・目的---97

2)既存研究の整理---98

(5)

3)研究の方法---100

4)対象地域の概要---103

6-2 歴史的町並みの保存を目的とした都市計画道路の見直し---105

1)調査概要について---105

2)奈良県橿原市の事例について---106

3)大阪府冨田林市の事例について---107

4)ヒアリング調査から得られた見直し時の課題について---108

6-3 CVM調査の概要と回答者属性---109

1)評価シナリオについて---109

2)プレテストについて---111

3)本調査について---112

6-4 支払意志額の推定及び集計額の算出---114

1)支払意志額の推定について---114

2)集計額の算出について---116

6-5 支払意志額の要因分析及び信頼性の検証---117

1)支払意志額の要因分析について---117

2)信頼性の検証について---119

6-6 まとめ---120

第7章 結論 7-1 研究成果の概要---123

1)都市計画道路の見直しの全国的な状況について---123

2)都市計画道路の見直しにおける課題について---125

3)都計道の計画策定における土地利用規制手法導入の有効性と課題について---127

4)仮想的市場評価法を用いた都計道の計画策定手法の有効性と課題について---128

7-2 研究成果を踏まえた提言---129

1)都市計画道路の見直しについて---129

2)都市計画道路の計画策定について---132

7-3 今後の研究課題---133

研究業績

略歴

謝辞

(6)
(7)

1

第1章 序論

1-1 本研究の目的

1)本研究の背景と目的

都市計画道路は、円滑な都市活動を支え、都市生活者の利便性の向上を図り、良好な都 市環境を確保するために計画決定される都市施設である。当然ながら、都市施設の整備に は長い時間を要すため、長期的な視点から都市施設の整備に必要な区域をあらかじめ明確 にし、その区域に建築制限をかけることで円滑かつ着実な都市施設の整備を図っている。

このような考え方は明治初期から存在しているが、馬車や徒歩が主な交通手段であった当 時の道路の役割は、大火が発生した際の延焼拡大防止機能や伝染病防止のための上下水道 整備用地の確保が主なものであり、その後、人口や自動車保有台数の増加に伴い、将来交 通需要への対応に主眼が置かれ、近年では、単なる交通機能としての役割だけでなく、憩 いの場、交流の場等、空間機能としての役割も求められている。

このように、大正 8 年(1919 年)の旧都市計画法制定以降、人口増大や経済成長に伴う 自動車交通量の増加を想定しつつ、多様な役割に対応するために多くの都市計画道路が計 画決定されてきた。しかしながら、平成 17 年の国勢調査により人口減少が確認されるなど、

近年の人口減少や経済の低成長、市街地拡大の収束等の社会情勢の変化を考えると、その 位置付けや必要性に変化が生じている路線も少なくない。また、都市計画道路の計画決定 区域内では建築制限がかけられるため、長期間整備が行われない道路の計画区域内に土地 を持つ地権者から、計画決定の必要性について説明を求められたり、計画廃止の要望が出 されたりしている路線も存在する。平成 17 年には、最高裁において、都市計画道路の区域 内に土地・建物を所有する地権者が、長期に渡り建築制限を受けたことに対して賠償等を 求めた裁判が行われ、賠償等については認められなかったものの、建築制限をかけ続ける には定期的な必要性の検証が必要であるとされた。国土交通省では、このような状況も踏 まえ、平成 12 年の都市計画法改正と共に発表した都市計画運用指針において、初めて都市 計画道路の具体的な見直し方針を示した。この運用指針を受けて、岐阜県では平成 13 年に 都市計画道路の見直し方針をまとめ、県内で 3 つの都市計画道路の見直しを実施した。そ の後、その他の自治体でも順次見直しのガイドラインが策定され、全国的に都市計画道路 の見直しが進められている。

このような状況の中、近年の研究分野においても、都市計画道路の見直しガイドライン

の記載内容や運用上の課題を論じたもの、見直しにおける住民との合意形成の課題につい

て論じたもの、長期未着手路線に対する住民訴訟について論じたもの等、多くの研究が見

られる。しかし、実際に見直しされた路線の全国的な傾向から見直しの課題を論じたもの

や、見直し過程での広域的な調整、見直し後の対応、さらには見直し後に想定される計画

(8)

2

論も含めた多角的な視点から見直しの手法や課題を論じた研究は少なく、今後、さらにそ の必要性が高まると考えられる都市計画道路の見直しの手法等に関する理論化・一般化を 目指し、より多くの研究を重ねていく必要がある。

上記の背景を踏まえ、本研究では、平成 12 年の都市計画法改正以降、全国の自治体で進

められている都市計画道路の見直しについて、各自治体が策定している見直しガイドライ

ンの運用実態や路線の見直し実態、広域的な調整、見直し後の対応、見直し路線の特徴(当

初計画決定時期、見直し理由)等を整理し、都市計画道路の見直しを効果的、効率的に実

施していくための課題や手法について明らかにすることを目的としている。また、見直し

の結果、計画路線の廃止、変更だけではなく、新たな路線の計画決定が必要となる場合も

想定されることから、計画決定過程における土地利用規制手法や仮想的市場評価法導入の

有効性や課題についても明らかにすることを目的としている。

(9)

3

2)研究の方法と全体構成

本論文は、下図に示す7つの章から構成している。

1.序論

・研究の背景、目的、方法、構成 ・既存研究の整理、本研究の位置付け

2.我が国における都市計画道路整備の実績と法制度の変遷に ついて

・都市計画道路整備の実績を整理すると共に、都市計画道 路整備に関する法制度や技術基準がどのような時代背 景により変遷してきたのかを論じる

3.都市計画道路の見直しガイドライン策定状況と見直し実態に 関する研究

・全国的な見直し実態を論じるとともに、見直し路線の特 徴(当初計画決定時期、見直し理由等)を整理し、見直 しにおける課題を論じる

4.都市計画道路の見直しにおける広域調整及び見直し後の対 応に関する実態と課題

・見直し時に課題になると考えられる広域的な調整や見直 し後の対応の実態と課題について論じる

・見直しの先進自治体の取組み内容について論じる

5.都市計画道路の計画策定における住民の合意形成に関する 研究-飯田市における事例研究-

・計画策定における土地利用規制手法導入の有効性や課題 について論じる

・住民との合意形成を図るため、都市計画区域指定と特定 用途制限地域指定を行った事例について論じる

6.都市計画道路整備の CVM 評価に関する研究-金沢市におけ る事例研究-

・仮想的市場評価法(CVM)を用いた計画策定手法の有効 性と課題について論じる

7.結論

・研究成果の概要

・研究成果を踏まえた提言

・理論化

・一般化

・見直し実態(全国)

・国指針、各自治体 ガイドライン状況

・住民との合意形成

・特定用途制限地域

・飯田市の事例研究

・新たな計画論

・CVM手法

・金沢市の事例研究

・制度論

・歴史的背景

・論文全体構成

・見直し実態(事例)

・広域調整等実態

・先進事例

(10)

4

1-2 既存研究の整理と本研究の位置付け

1)既存研究の整理

(1)都市計画道路の見直しに関する研究

都市計画道路の見直しについては、①中央集権的に国が一括して都市計画を行っていた 旧都市計画法時代から、国の機関委任事務として都道府県及び市町村が都市計画を行って いた新都市計画法制定から平成 12 年までの時期(すなわち大正 7 年から平成 12 年)に実 施された見直しと、②平成 12 年以降、国が発表した都市計画運用指針を参考に、自治事務 として都道府県及び市町村が都市計画を行っている時期に実施された見直しでは、その考 え方や位置付けが大きく異なる。当然ながら、都市計画道路の見直しに関する研究におい ても同様である。また、近年になって、③都市計画道路に関する都市計画訴訟を対象にし た研究も見られるようになってきており、以上のことから、都市計画道路の見直しに関す る既存研究としては、大きく 3 つの視点により分類することができる。以下、それぞれに ついて整理する。

①平成 12 年の都市計画法改正以前の見直しを対象とした研究

谷口ら

1)

は、昭和 47 年から実施された「東京都市計画道路再検討」における検討の視点 や検討における計画立案プロセスの基本的な考え方などについてまとめている。東京都に おける都市計画網の検討は昭和 38 年と昭和 41 年にも実施されているが、当時の検討は事 業の促進を主眼に置いて多くの細街路を廃止したものであった。一方、昭和 47 年から実施 された再検討は、環境への対応、交通需要への対応、建築制限への対応等を踏まえた検討 であり、特に、長期間の建築制限に対する住民の不満に対応した初めての見直しと言える。

検討の視点としては、①都市機能の確保、②地域環境の保全、③都市空間の確保、④都市 防災の強化が設定され、それぞれについて多岐に渡る指標から道路網や車線数の検討を行 っている。本文献は、再検討の作業過程における実務担当者の考え方としてまとめられ、

計画立案プロセスに主眼が置かれていることから、住民との合意形成等については論じら れていないが、それらを除けば現在行われている都市計画道路の見直しプロセスとほとん ど変わらないプロセスで検討が行われており、また、前述したように長期間の建築制限に 対応した点も含めて先進的な取り組みであったことがわかる。なお、本文献は、 「東京都市 計画道路再検討」の検討内容を報告したものであり、見直しを対象とした研究とはいえな い部分もあるが、見直しが行われ始めた当時の考え方等を知るうえで重要な文献である。

小場瀬ら

2)

は、昭和 47 年から実施された「東京都市計画道路再検討」の結果、存続とな

った路線について、すべての存続路線を短期的に整備することは困難であるという問題意

識から、世田谷区の一部の区域で決定されている都市計画道路網を対象に、既存道路網を

利用しつつ、その路線と組み合わせて最も有効な路線の整備を優先的に行っていく手法に

ついて論じている。見直し後の対応について論じた最も初期の研究であり、既存道路網を

(11)

5

利用する上で問題となる道路や場所の抽出に、住民を対象にした地図指摘調査を用いてお り、歩行経路や自動車経路、好きな道、嫌いな道、危険と思う道など様々な設問から、道 路の使われ方や道路に対する意識及び評価を整理している。そして、それらの調査結果を もとに代替ルートの検討を行い、都市計画道路整備の優先順位を付けている。見直し後の 対応について着目している点や都市計画道路整備の優先順位を地区レベルの検討から行っ ている点、評価指標に多くの住民意識を導入している点が先進的と言えるが、論文の最後 に述べられているように、代替ルートを設定する際に新たな問題道路を生じさせてしまう 点や、回避された問題道路への対応が困難な場合がある点が課題といえ、また、部分的な 地域の優先順位は示すことができるものの、広域的な道路網における各路線の優先順位付 けといった点は論じられていない。

森津ら

3)

は、都市計画道路の整備順位を決定するために、計画担当者が判断した道路区 間の評価を多属性効用関数で表し、その結果に基づいて優先順位付けを行う方法について 論じている。前述した小場瀬らの研究と同様に、道路整備の優先順位を付ける方法につい て論じたものであるが、森津らは、実際に計画する担当者がどのような項目(市街地開発 政策、地元要望、避難路等)を評価した上で意思決定をしているのかという点に着目し、

提示した代替案の一対比較という簡易な手順で道路区間の優先順位を付ける手法を提案し ている。兵庫県西宮市を対象とした事例研究では、従来までの手法と新たに提案している 手法で優先順位付けをした結果に大きな相違が確認できなかったことから、新たな手法の 実用性や有効性を論じている。また、担当者が判断をする上で最も重要視している項目が、

地域政策に関すものであり、そのもとで幹線道路の区間から優先的に整備していく傾向が あると論じている。

山下

4)

は、新都市計画法制定以降、基本的な制度条件が同質のおおむね 30 年間の東京都 区部の都市計画道路変更案件を対象として、東京都都市計画審査議会の議に供された都市 計画道路の全都市計画決定案件について分析を行い、計画変更内容の変遷を時代背景とと もに論じている。変更理由として最も多いのが、駅前の再開発等による「市街地整備関連」

であり、次に、交差点の立体化や部分的交通渋滞対策等による「交通の整流化」を理由と した変更である。また、新法制定前後は急激な交通需要の増加に対応するため多くの都市 計画変更が行われたことや、1985 年以降になると、環境アセスメント制度の創設等の影響 もあり、それまでの交通機能強化から環境対策に重点が置かれるようになり、1996 年以降 は、都市や道路に対する多様な観点に対応するため、空間機能を重視した変更が多く行わ れたこと等について論じている。しかし、これらの変更はあくまで事業を進めるため、も しくは関連する都市開発に伴った変更であり、都市全体の将来像を踏まえた都市計画道路 の変更を論じたものではない。

以上のように、平成 12 年の法改正以前の研究は、谷口らの報告的な研究を除き、基本的

には、事業を効率的、効果的に進めるための、優先順位付けに関する研究や都市計画変更

を対象としたもののみである。

(12)

6

②平成 12 年の都市計画法改正以降の見直しを対象とした研究

梅宮ら

5)

は、都市計画道路の見直しに関する全国的な状況と、見直しに関する合意形成 の阻害要因について明らかにしている。研究分野において、見直しガイドラインを対象に した最も初期の研究であり、約 8 割の都道府県が見直しの意向を持っており、見直しのガ イドラインを策定済み又は策定準備中であること、岐阜県と大阪府においてはすでに見直 しガイドラインによって見直しを実施していること、見直しに関する合意形成においては、

道路の個別の議論を行うのではなく、目標とする都市像を明確にして議論することが重要 であると論じている。また、事例とした愛知県犬山市では、平成 10 年に都市計画道路の見 直し方針案を策定しようと試みたが、その当時は全国的に道路網の拡大を行っている時代 背景があり、見直しができず、平成 12 年に国が都市計画道路の具体的な見直し方針を示し たことで、見直しが可能になったと論じている。見直しにおける合意形成に関して、新た な知見が示されているものの、見直しのガイドラインが策定され始めて間もない時期であ ることもあり、全国的な見直しの状況としては、多くの都道府県が見直しの意向を持って いること、またその内容が縮小傾向の見直しであること、見直しの対象とする路線の抽出 に関して一定の基準を設ける予定である都道府県が多いこと等を明らかにしているに過ぎ ず、全国的な都市計画道路の見直し状況を論じたとは言い難い。

塚田ら

6)

は、都道府県が策定した見直しガイドラインの作成状況と評価方法の特徴を整 理することで、全国的な都市計画道路の見直しの視点を明らかにしている。また、それら を踏まえた上で、都市計画道路の見直しの必要性や整備の優先順位を客観的に評価するた めに、各路線の特性を定量的に評価する手法を提案し、群馬県前橋市を対象とした事例研 究から、その手法の適応性の検証と課題の抽出を行っている。次に記述する佐野らの研究 と共に、都道府県が策定した多くの見直しガイドラインを比較分析した最も初期の研究で ある。本文献では、まず、全国的な見直しの視点として、都市計画道路の交通機能面を重 視している都道府県が多いことを明らかにした上で、見直しには都市構造を形成し街区を 形成するための「市街地形成機能」と、都市環境や都市防災などを形成するための「空間 機能」が重要であると論じている。そして、それらの視点を考慮した機能面の 16 指標と、

ボトルネックの解消や地元要望、熟度等を考慮した事業実現性に関わる 6 指標の合計 22 指 標を AHP 法で重み付けをし、機能面及び事業実現性を総合的に評価している。前橋市を対 象にした事例研究では、前橋市の上位計画でも位置付けられている環状路線が整備優先路 線として評価され、また、既成市街地に計画された路線や市街化区域と市街化調整区域に 跨る路線が廃止変更候補路線として評価された。土地区画整理事業地内に計画された路線 が廃止変更候補路線として評価されるなど、課題も残ったと論じているが、見直しを行う 上で重要と考えられる指標の多くを定量的に評価でき、客観的な評価手法として評価でき る手法である。ただし、見直しにおいて路線の評価と同様に重要である広域的な調整や地 元調整、住民との合意形成等は言及していない。

佐野ら

7)

は、都道府県が策定した見直しガイドラインから、その記載内容の違いや全国

(13)

7

的な運用実態について明らかにしている。梅宮らの研究では各都道府県の見直し意向でし かなかった全国的な見直し状況とは異なり、 47 都道府県中 46 都道府県で策定された見直し ガイドラインを収集し、比較、分析することで、全国的な見直しの状況を明らかにしてい る点が特徴である。研究の結果から、見直し主体を市町村としている自治体が多く広域的 視点の欠如が懸念される点や地域住民の合意を前提とする自治体が多く、路線の必要性よ りも利害を含んだ地域住民の意見が重視され客観性の問題がある点などを示し、第三者機 関による検証の必要性を論じている。また、見直しの先進事例として、岐阜県、大阪府、

石川県、埼玉県における、見直しの状況を分析しており、少なくとも見直し対象路線の抽 出までは都道府県が市町村に対して強い指導力を発揮し、見直しにおいては、地域住民の 合意形成を重視するのではなく、広域的な観点から検証をする必要があると論じている。

各都道府県が策定した見直しガイドラインを分析することで、全国的な見直しの傾向を明 らかにしているが、ガイドラインについては内容構成の考察にとどまっており、また、運 用実態についても主に見直し主体や合意形成に関するものにとどまっている。

以上のように、平成 12 年の法改正によって、国が都市計画道路の具体的な見直し方針を 示したことで、廃止や縮小傾向の変更を含めた見直しが行われるようになり、研究分野に おいても、それらを対象にした研究がみられるようになった。しかし、都道府県及び政令 市において見直しガイドラインの策定が進んだのが最近であること、路線の見直しも始ま ったばかりであることから都市計画道路の見直しを対象にした研究は少ないと言える。ま た、上記 2 つの研究については、各都道府県の見直しの意向や見直しガイドラインの内容、

見直し主体や合意形成に関する実態を明らかにしたのみで、実際に見直しされた路線の状 況や実務的な課題等について論じられた研究は存在しない。

③都市計画道路に関する都市計画訴訟を対象とした研究

川崎

8)

は、平成 17 年に東京高等裁判所において、既決定の都市計画に違法判決を下した 伊東市都市計画道路変更決定事件の経緯や判決の背景、法律の原理等を考察しながら、都 市計画訴訟制度及び都市計画制度の再構築に向けた検討課題について提起している。都市 計画訴訟についてはこれまでも存在したが、多くは行政事件訴訟法に基づく処分性、原告 適格、狭義の訴えの利益といった訴訟要件が極めて制限的に解釈、運用されてきたため、

訴訟の前に門前払いとなったり、また、訴訟要件を満たしたとしても、行政庁に自由裁量 が相当広範に認められているため、専ら適法判断が下されてきたりした経緯を考えると、

高等裁判所において、既決定の都市計画を違法としたのは異例の判決だと述べている。な お、本裁判では、行政庁が公正かつ合理的な都市計画決定あるいは変更決定を行う上では、

都市計画法に基づく手続きに即して、まずその基礎となる調査や事実認定を公正かつ合理

的に行わなければならいないという「適正調査義務」とも言うべき法的義務を負うことを

確認したとも述べており、都市計画決定に至る判断過程の客観的明示の義務化が重点的に

検討されるべきだと論じている。

(14)

8

川崎ら

9)

は、長期間未整備の都市計画道路をめぐる都市計画訴訟を対象として、長期に わたる都市計画制限の問題について、どのような法律の原理に基づいて適法性や違法性が 判断され、また損失補償の要否が判断されているのかを考察し、今後の都市計画道路の整 備及び見直しを進める上での検討課題について提起している。長期間未整備の都市計画道 路に関する都市計画訴訟を対象とした唯一の研究であり、都市計画道路の見直しを進めて いく上での検討課題を法的な視点から論じている点が特徴といえる。本文献では、これま での都市計画訴訟においては、一旦適法に成立した都市計画は、その後いかに社会経済情 勢や環境諸条件等が変化しようとも違法になることはないといった判断により、多くの案 件が適法とされてきたことが問題であると論じている。ただし、近年においては、高等裁 判所において、適正調査義務を怠った場合の違法性が示されたり、最高裁判所においては、

定期的な必要性の検証の重要性が示されたりしており、都市計画の決定権者はこれまで以 上に、都市計画法第 21 条第 1 項に基づく都市計画変更義務を厳格に受け止め、時の経過と ともに変化する社会経済情勢や環境諸条件のもとで都市計画の合理性を定期的に見直しこ とが重要であり、その結果によっては的確に都市計画の変更を行うことが必要であると論 じている。また、今後、都市計画道路の整備及び見直しを進めていくためには、変更義務 の適格の遂行だけでなく、都市計画決定事項に事業期間を組み入れ、同期間に内に事業が 完了しない場合は関係主体との協議調整のもとに計画の再評価を行った上で、その継続の 要否を決定するべきだと論じている。

都市計画道路に関する都市計画訴訟を対象とした研究で主なものは上記 2 つの研究であ る。本研究は都市計画訴訟を対象とした研究ではないが、平成 12 年の法改正以前に既決定 の都市計画を変更することが困難であった背景を、法的な観点で裏付ける重要な研究であ る。また、都市計画に関する司法判断がどのように変遷してきたのかを知る上でも重要な 研究といえる。

以上、都市計画道路の見直しに関する既存研究として、3 つの視点により整理した。平成 12 年の法改正によって、国が都市計画道路の具体的な見直し方針を示したことで、以降、

全国的に見直しが進められるようになったが、研究の分野においても、整備の推進を主眼 に置いた整備の優先順位付けに関する研究等から、都市計画道路網の見直しや都市計画訴 訟を対象にした研究等に変化していると思われる。

(2)都市計画道路の計画に関する研究

都市計画道路網の見直しにおいては、既決定路線の廃止やルートの変更、幅員の変更等

が行われることが多いが、本来の目的は、社会経済状況の変化を踏まえた上で、都市の将

来像を設定し、都市全体あるいは影響する都市圏全体としての施設の配置や規模等の検討

を行うことにより、施設等の必要性の検証を行うことであることから、当然、新たな路線

の計画も想定される。都市計画道路の計画に関する研究としては、これまでに多くの蓄積

があるが、都市計画区域外や白地地域での計画について論じられた研究は見当たらない。

(15)

9

しかし、都市の将来像を設定する場合においては、それらの地域で都市計画道路が新たに 計画されることも十分考えられる。以上のようなことから、本研究では見直しに伴い新た なに計画される路線が土地利用規制の緩い都市計画区域外や白地地域に計画される場合や、

計画を策定する前に周辺環境や歴史的地区への影響等を評価する必要がある場合を想定し ているため、①規制の緩い地域の土地利用規制を対象とした研究、②都市計画道路計画の 評価を対象にした研究について整理する。

①規制の緩い地域の土地利用規制を対象とした研究

都市計画道路は、基本的に都市計画区域内に計画決定される都市施設であるため、都市 計画区域外の都市計画道路計画を扱った研究は見当たらない。なお、都市計画区域外の土 地利用規制に関する研究としては以下の研究がある。

和多

10)

は、1992 年の都市計画法及び建築基準法の改正までの白地地域や都市計画区域 外における小規模開発の規制の実態を整理した上で、1992 年の法改正による形態制限の適 用状況を考察し、白地地域や都市計画区域外の形態制限のあり方や可能性を論じている。

1992 年までの規制手法としては、都市計画法や建築基準法の枠内で行うもの、森林法や自 然公園法等に基づいて行うもの、自治体の自主条例に基づいて行うものに分けられるが、

森林法や自然公園法は小規模開発に対応できず、また自主条例は法的な担保がないと述べ ている。都市計画法や建築基準法の枠内で規制を行うものとしては、都市計画区域や線引 き区域の拡大、未線引き区域での開発許可の規模要件の引き下げ、形態制限の適用が考え られるが、どれも地元の理解を得ることが困難であり、実態としては緩い規制内容にとど まっている自治体が多いと論じている。なお、今後の提言として、まず、白地地域や都市 計画区域外全域に厳しい形態制限をかけ、ある程度の基盤整備が整った地域やマスタープ ラン等で位置付けられた地域の規制を緩和していく方法を述べている。しかし、全国的な 状況でも述べているように、地元の合意形成が図れるかが課題といえる。

櫻井ら

11)

は、関東地方で策定された市町村マスタープランから、白地地域の土地利用方 針や都市計画区域外の取り扱いを整理した上で、両地区の市街地像と規制誘導方法との関 係を分析することで、市街地像実現のための問題点を明らかにしている。白地地域の土地 利用方針としては、保全系の土地利用方針を定めている自治体が多いが、非線引き自治体

(本文献では市街化調整区域も白地地域として分析している)では、開発整備系の土地利 用方針を定めている場合も多く、開発及び保全の位置付けが明確でないと述べている。ま た、将来的な土地利用を誘導するために用途指定や面的整備のような手法をマスタープラ ンに定めており、実現可能性は高いとするものの、市街地像実現のためには、白地地域や 都市計画区域外の大部分を占める農地を所管する農政サイドとの連携、調整が必要である としている。

秋田ら

12)

は、開発立地コントロールを主目的とする「土地利用調整系まちづくり条例」

の事例として、長野県穂高町の「まちづくり条例」を対象に、同町内における条例施行前

(16)

10

後の開発状況を比較分析することを通じて、当該条例の実効性について評価を行っている。

本文献は白地地域や都市計画区域外のみを対象としたものではないが、それらの地区の土 地利用規制手法として、まちづくり条例を多くの自治体が用いていることからも本文献の 研究内容は重要である。事例調査の結果では、法的強制力のない協議や勧告の仕組であっ ても、立地コントロールの実効性が保たれていたこと、農業保全ゾーンにおける農振除外 の大幅な減少と、集落居住ゾーンにおける農振除外の大幅な増加が確認できたこと、土地 利用調整基本計画を明示したことによる、事前抑止効果が確認できたこと、小規模開発は 条例の対象外とすることで小規模開発化が進むことはなかったことなどを明らかにしてい る。ただし、集落居住ゾーンへの開発誘導が確認できるものの、農業保全ゾーンにおいて も開発は存在することも述べられている。本文献で対象とした穂高町のような比較的開発 圧力の小さい地域では今回のような結果が得られると考えられるが、インターチェンジの 周辺地域や観光資源の周辺地域など、開発圧力が大きい地域においては、必ずしも強制力 の弱い条例でコントロールが可能とは限らない。そのような開発圧力の大きい地域での土 地利用コントロールをどうしていくかが課題といえる。

梶原

13)

は、都市計画区域外の土地利用規制に関して、地方自治体の実態と課題について 論じている。秋田らの研究では、まちづくり条例によって一定のコントロールが可能と論 じられているが、梶原は、地域の「姿勢表明」と「抵抗」としては非常に有効であるが、

実際に運用している地方自治体の職員は、条例の主旨と内容を申請者に理解してもらうこ とに相当なエネルギーを使っており、民間開発主体からの圧力に対しては、法的な根拠が ないとコントロールは困難であると述べている。また、都市計画区域外の土地利用を問題 視する意見が多いが、実際に土地所有者と合意形成を図ろうとすると、特に農地において は後継者不足などの問題から開発を望む要望も多く、また、自治体としても地域振興を目 的に開発しようとする場合もあり、コントロールは容易ではないと述べている。以上のよ うな実態から、今後、自治体においては、地域のイメージを整理し、行政各セクション間 の総合的調整を行う主体を明確にした上で、行政の主体的責任と説明責任を区別し、正し い情報を伝えながら合意形成を図っていくことが重要であると論じている。

岩本ら

14)

は、平成 12 年の法改正によって、白地地域の土地利用規制手法として制度化 された特定用途制限地域制度について、岐阜県美濃加茂市と富加町を事例に、その指定実 態や活用の可能性について論じている。白地地域の土地利用規制手法として特定用途制限 地域制度を対象に論じた初期の研究であり、あまり指定実績のなかった時期において、指 定の実態や活用の可能性について論じた先進的な研究である。同様の制度である用途地域 やまちづくり条例との比較では、用途地域に比べて農政サイドとの調整が容易であること、

また、まちづくり条例で課題となる法的な担保も高い制度であるとする一方、用途地域に

比べて地域毎に規制内容が異なることから住民等への周知や建築確認業務が煩雑になる可

能性を述べている。また、特定用途制限地域制度は、地域の実情に合わせた柔軟な規制内

容を定めることが可能であるといったメリットがある一方で、事例とした富加町のように

(17)

11

インターチェンジの整備に伴う新規開発の期待に応える形で、道路沿道を中心に商業施設 や遊戯施設の立地を許容するなど、運用方法には課題があると論じている。なお、その他 の課題としては、特定用途制限地域が指定された周辺地区に開発圧力が生じる可能性を挙 げている。

以上のように、規制の緩い地域の土地利用規制を対象とした研究としては、同地域全体 をどのようにコントロールしていくかを論じたものや、コントロールするための手法の評 価や課題を論じたものが多い。白地地域や都市計画区域外はもともと開発を予定していな い地域であり、開発を想定していなかった地域であったが、多くの開発が行われたことに よって、法改正毎に新たな規制手法が制定されてきた。人口減少時代に入り、今後、郊外 部での大規模開発はそれほど多く生じないと考えられるが、依然として、郊外部での開発 は確認されており、郊外部をどのようにコントロールしていくかという課題は引き続き検 討していかなければならないものであると考えられる。また、その際は、住民との合意形 成をどのように進めていくかという課題も大きなテーマであるといえる。

②都市計画道路計画の評価を対象にした研究

都市計画道路の整備計画を評価する定量的方法として代替法、トラベルコスト法、ヘド ニックアプローチなどが用いられてきおり研究の蓄積もある。しかし、それらの多くは都 市計画道路の交通機能面を評価しているものであり、道路整備によって影響を受ける歴史 的町並みの価値や周辺環境の価値等の評価については研究の蓄積が少ない。都市計画道路 の見直しでは、多くの自治体がこれまでのような交通機能面のみで都市計画道路の評価を するのではなく、あらゆる視点から評価を試みている実態があり、今後はそのような評価 が一層要求されるものと思われる。これは、新たに都市計画道路を計画する場合にも言え ることであり、今後、都市計画道路の計画においては、道路整備によって影響を受ける歴 史的町並みの価値や周辺環境の価値等の評価を住民にわかりやすい形で説明していくこと が重要であり、本研究では、環境価値評価手法の一つである CVM 手法を使った評価手法の 導入を提案している。研究分野において、CVM のような評価手法を用いた道路整備の評価 を対象とした研究は見当たらないが、 CVM を用いた事業評価の研究についてはいくつかの 実績がある。

青山ら

15)

は、歴史的文化財の総価値について、表明選好を用いる計測手法である CVM

手法と顕示選好を用いる手法である旅行費用法を組み合わせることで、信頼性の高い結果

を算出する手法について論じている。本文献では、歴史的文化財の総価値は、利用価値と

非利用価値の和であるとし、まずは CVM 手法によって 2 つのシナリオ(1 つは災害等から

歴史的文化財を守るために支払う基金、もう 1 つは利用者のための維持管理費用を賄うた

めの基金)の支払意志額から、歴史的文化財の総価値と利用価値の比率を算出し、次に旅

行費用法で利用価値を算出し、CVM で得られた利用価値と非利用価値比率によって、非利

用価値を算出し、それらを合計することで総価値を算出した。この手法によって、CVM で

(18)

12

問題となる様々なバイアスを最小限にすることが可能となり、信頼性の高い結果が得られ ると論じている。京都の歴史的文化財を対象にした事例調査の結果では、利用価値の 1 割 程度が非利用価値として評価されたと述べている。インターネット調査を行ったことによ り、回答者に偏りが生じているが、歴史的文化財の価値を評価する手法として有効な手法 といえる。しかし、寺社仏閣や商業施設等、利用施設の少ない地域を評価する場合は、極 端に低い評価結果となることも考えられ、本文献で事例としているような比較的有名で利 用者の多い地域に限られる手法であるともいえる。

足達

16)

らは、北海道縦貫自動車を対象に、高規格幹線道路の整備によって得られる周辺 住民の満足感(買物など、都市的サービス享受の機会拡大による生活レベルの向上)や安 心感(医療機会の拡大、災害時の代替道路の確保などによる地域の安定性)を CVM 調査に よって算出している。道路整備による定性的な評価を算出した数少ない研究の一つである。

なお、本文献では、整備される道路の沿線住民と沿線から離れた遠隔地住民の評価を比較 しており、予定ルートからより離れた遠隔地域住民の方が、沿線地域の住民よりも高い支 払い意志を示したと論じている。そして、この結果から、従来の評価手法のような手法で は、整備効果が波及する範囲を過小に設定してしまっている可能性があると述べている。

また、遠隔地域では都市的サービス頻度による格差が大きいことから、当初想定していた 通院交通もさることながら、遠距離にある都市での都市的サービス需要が支払意志額に大 きな影響を与えていると論じている。ただし、本文献では、道路整備が行われた後の評価 に限定した分析が行われており、計画の内容を評価しているものではない。しかし、今後、

新たな路線を計画する際は、整備後の効果だけでなく、計画の内容についても評価し、住 民との合意形成を行っていく必要があると考えられる。

以上のように、都市計画道路計画の評価を対象にした研究においては、実績は少なく、

既存研究としては、 CVM のような表明選好を用いる計測手法の信頼性について論じたもの

や、道路整備後の効果について論じたものに限られる。しかし、近年は、道路整備の効果

は当然のこと、道路計画自体の妥当性や評価を求める意見も少なくない。したがって、周

辺環境への影響を考慮した道路計画の評価についても研究を蓄積していく必要があると考

えられる。

(19)

13

2)本研究の位置付け

都市計画道路の見直しを対象にした研究としては、平成 12 年の法改正以前と以後でその 内容が変化している。本研究では、平成 12 年以降に行われている都市計画道路網の見直し を対象としているが、都道府県及び政令市において見直しガイドラインの策定が進んだの が最近であること、路線の見直しも始まったばかりであることからその実績は少ない。ま た、既存研究では、各都道府県の見直しの意向や見直しガイドラインの内容、見直し主体 や合意形成に関する実態を明らかにしているのみで、実際に見直しされた路線の状況や実 務的な課題等について論じられた研究は存在しない。しかし、少子高齢化が進むことが確 実視されている状況において、長期未整備路線の必要性について説明を求められる場面が 増えていると考えられ、それが都市計画訴訟へと発展しているケースも見受けられること から、今後、さらに都市計画道路の見直しの必要性、重要性が大きくなると考えられる。

したがって、本研究では、見直しガイドラインの運用実態や路線の見直し実態、広域的な 調整、見直し後の対応、見直し路線の特徴等を整理し、都市計画道路の見直しを効果的、

効率的に実施していくための課題や手法について論じている。また、見直しに伴って新た な路線の計画も想定されることから、見直しに関する研究に加えて、計画論についても論 じる必要があると考えられる。その際、一般的な都市計画道路整備に関する研究について は多く蓄積があることから、本研究では、特に土地利用規制の緩い地域に新たな路線が計 画される場合や計画を策定する前に周辺環境や歴史的地区への影響等を評価する必要があ る場合を想定した計画論について論じており、同様の研究は見当たらない。

以上を踏まえ、本研究の位置付けとして以下のように整理する。

・見直しガイドライン等から明らかにすることができる「見直しの意向」ではなく、実際 に見直しされた路線の特徴や見直し過程を分析することによって明らかにできる「見直 しの実態」について論じた研究であること

・見直し時に課題になる「広域的な調整」と「見直し後の対応」の全国的な実態と課題を 論じた研究であること

・見直しの検討結果だけでなく、見直し後の対応や見直しに伴って想定される新たな路線

の計画、住民との合意形成も含めて、都市計画道路の見直しについて多角的に論じた研

究であること

(20)

14

【参考文献】

1)谷口丞、戸張好一、古川公毅、中島幸彦、山崎俊一(1977) 「東京都市計画道路再検討 の視点とプロセス」、都市計画、No.98、pp23-33

2)小場瀬令二、秋山哲男(1979) 「都市計画道路の再検討に関する一方法-地区交通調査 からのアプローチ-」、都市計画学会論文集、pp169-174

3)森津秀夫、枝村俊郎、瓦田尚宏(1986) 「都市計画道路の整備順位の策定に関する研究」、

都市計画学会論文集、pp181-186

4)山下保博(2002) 「東京都区部における都市計画変更に表れた道路の政策決定変遷に関 する実証的考察」、都市計画学会論文集 No.29、pp.169-174

5)梅宮路子、岡﨑篤行(2005) 「歴史的町並みにおける都市計画道路の見直しに関する合 意形成過程」 、都市計画学会論文集、No40-3、pp.505-510

6)塚田伸也、湯沢昭、森田哲夫(2009) 「都市計画道路の再評価の現状と評価手法の検討」、

都市計画論文集、No44-3、pp241-246

7)佐野育実、岡崎篤行、梅宮路子(2009) 「都道府県による都市計画道路の見直しガイド ラインに関する運用実態と課題」、都市計画学会論文集、No.44-3、pp.247-252 8)川崎興太(2008) 「計画裁量の司法的統制と都市計画訴訟制度及び都市計画制度の再構

築に向けた検討課題 -伊東市都市計画道路変更決定事件東京高裁判決を素材として-」、

都市計画学会一般研究論文、No.43-2、pp.25-33

9)川崎興太、大村謙二郎(2008) 「長期間未整備の都市計画道路をめぐる都市計画訴訟に 関する研究 -都市計画道路の整備及び見直しのあり方を再考するために-」、都市計画 学会論文集、No.43-3、pp.271-276

10)和多治(1998) 「白地地域・都市計画区域外における小規模開発のコントロールに関す る研究-1992 年都市計画法・建築基準法改正に伴う形態制限の適用事例を中心に-」、

都市計画論文集、No33、pp517-522

11)櫻井祐次、中井検裕、村木美貴(2000)「都市計画マスタープランにおける白地及び都 市計画区域外の土地利用方針に関する基礎的研究」、都市計画論文集、 No35、 pp205-210 12)秋田典子、安谷覚、大方潤一郎(2001)「土地利用調整を主目的とするまちづくり条例

の実効性の評価-長野県穂高町のまちづくり条例を事例として-」、都市計画論文集、

No36、pp1-6

13)梶原文男(2004)「都市計画区域外の土地利用コントロールに関する考察-土地利用 コントロールの手続きの課題を中心に―」、都市計画、No.250、pp35-38

14)岩本陽介、松川寿也、中出文平(2007)「特定用途制限地域の指定実態と活用可能性に 関する研究-岐阜県美濃加茂市と富加町の事例を通じて-」、都市計画論文集、 No42-3、

pp799-804

15)青山吉隆、松中亮治、鈴木彰一(2000)「CVM と顕示選好法を用いた歴史的文化財の

経済的価値計測方法に関する研究」 、土木計画学研究論文集、No.17、pp.47-55

(21)

15

16)足達健夫、石田宣久、萩原享、加賀屋誠一(2001)「安心感・満足感を考慮した CVM による地方高規格幹線道路の整備評価に関する研究」、土木計画学研究論文集、No.18

(1)、pp.65-72

(22)
(23)

17

第2章

日本における都市計画道路整備の実績と法制度の変遷につ いて

(1)

2-1 はじめに

平成 12 年 2 月の都市計画中央審議会において、都市計画制度全般にわたる抜本的な見直 しが求められたことにより、同年 5 月に都市計画法及び建築基準法の一部改正が行われ、

都市計画制度は、地方公共団体が主体となって地域の課題に的確に対応できるよう、より 柔軟で使いやすい仕組みとなった。昭和 43 年(1968 年)の新都市計画法制定以降、国の 機関委任事務とされていた都市計画が、自治事務として地方公共団体へ権限が移譲される ことになった。しかし、広域的な観点から、国として地方自治体が都市計画を運用してい くための指針を定めるべきではないかという議論がなされ、同年 12 月に、都市計画制度全 般にわたる国の技術的助言としての運用指針が示された。運用指針では「都市政策を進め ていく上で都市計画制度をどのように運用していくことが望ましいと考えているか」 「その 具体的な運用が、各制度の趣旨からして、どのような考え方の下でなされることを想定し ているのか」等についての原則的な考え方が示され、本指針によらない運用であっても、

地域の実情等に即して合理的なものであればその運用は尊重されるべきとされた。この運 用指針の内容について、最も重要なものの一つに「適時適切な都市計画の見直し」があり、

国として初めて都市計画道路の具体的な見直し方針を示した。そもそも、都市計画の変更 については、都市計画法 21 条に規定があるとおり、社会経済状況の変化に対応して変更さ れるものとされていたが、国の機関委任事務として都市計画を行ってきた地方自治体にと

都市計画運用指針第 1 版 Ⅲ-2-5「適時適切な都市計画の見直し」

都市計画は、法第 21 条に変更に関する規定があるとおり、社会経済状況の変化に対 応して変更が行われることが予定されている制度であり、基礎調査の結果や社会経済状 況の変化を踏まえて、変更の必要性が吟味されるべきものである。

しかし、一方で、都市計画施設の整備、市街地開発事業の実施、土地利用の規制・誘 導を行って、目指すべき都市像を実現するためには、相当程度長期間を要することから、

都市計画には一定の継続性、安定性も要請される。

したがって、都市計画の変更を検討するにあたっては、その都市計画の性格を十分に

踏まえる必要があり、例えば、根幹的都市施設等継続性、安定性の要請が強いと考えら

れるものについては、その変更はより慎重に行われるべきである。ただし、このような

都市計画についても、都市計画決定当時の計画決定の必要性を判断した状況が大きく変

化した場合等においては、変更の理由を明確にした上で変更することも考えられる。

(24)

18

って、一度国の同意を得て計画決定した都市計画を変更することは相当困難だったと思わ れる。それが、平成 12 年の法改正により、都市計画が自治事務となり、さらに、見直しの 具体的な考え方を国が示したことで見直しが容易になったといえる。また、この当時は、

人口減少が確実とされ、特に長期間未着手の都市計画道路の必要性について説明を求めら れたり、長期におよぶ建築制限に対する都市計画訴訟が行われたりしていた時期であり、

地方自治体にとっては都市計画の見直しが大きな課題であったと考えられる。

このような背景を受けて、平成 12 年以降、全国的に都市計画の見直しが行われているが、

特に都市計画道路に関しては、各自治体において都市計画道路の見直しガイドラインが策 定され、都市計画道路網の見直しが順次進められている。本研究では、次章以降で、全国 的な都市計画道路の見直し実態や課題について論じているが、本章ではまず、日本におけ る都市計画道路整備の実績をまとめ、次に、日本における都市計画制度の変遷と課題につ いて整理すると共に、明治初期から現在に至るまでの技術基準の変遷を整理、体系化し、

都市計画道路がどのような基準、時代背景のもとに計画されてきたのか、また、都市計画

道路の見直しや新たな計画手法、手続き等が生まれた背景について考察する。なお、既存

研究としては、都市計画史全般について論じた研究

(2)

や、街路計画の立案過程や計画思想

を論じた研究

(3)

等多くの蓄積があるが、明治初期からの技術基準について体系的に論じた

ものはなく、今後、都市計画道路の見直しや計画を進めていく上で本研究の成果が一定の

役割を果たすと考えられる。また、近年の見直し実態や課題を論じる上も重要である。

(25)

19

2-2 都市計画道路整備の実績

国土交通省が公表している都市計画現況調査(平成 21 年度)の結果によると、平成 21 年 3 月末現在、全国で都市計画決定されている幹線街路約 66,000kmのうち、約 58%の約

38,000kmが改良済みであるが、残りの 42%の約 28,000kmは未整備または整備中といっ

た状況である。(表 2-1 及び図 2-1)最近 20 年間の整備進捗をみると、年約 600kmで 整備が進められていることがわかるが、ここ 10 年間に限れば、年約 500kmにペースが落 ちており、このままのペースですべて整備するには約 60 年程度要すると考えられる。

また、図 2-2 は最近 20 年間の街路事業予算の推移を表したものであるが、平成 5 年度

図 2-1 都市計画道路及び幹線街路の整備状況の推移

(資料:都市計画年報)

計画延長 計画延長

km km (%) km km (%) 万ha

昭和45年 45,416 12,331 (27.2%) 43,580 11,850 (27.2%) 141.40 昭和46年 46,221 13,373 (28.9%) 44,214 12,626 (28.6%) 126.48 昭和47年 48,545 14,844 (30.6%) 46,731 14,141 (30.3%) 129.33 昭和48年 50,014 15,419 (30.8%) 48,435 14,746 (30.4%) 145.74 昭和49年 50,607 15,877 (31.4%) 49,401 15,451 (31.3%) 148.15 昭和50年 51,495 16,561 (32.2%) 50,084 16,009 (32.0%) 150.97 昭和51年 52,271 17,153 (32.8%) 50,878 16,622 (32.7%) 153.13 昭和52年 53,453 17,950 (33.6%) 51,865 17,400 (33.5%) 155.80 昭和53年 54,187 18,780 (34.7%) 52,467 18,052 (34.4%) 157.84 昭和54年 54,959 19,506 (35.5%) 53,178 18,747 (35.3%) 159.76 昭和55年 55,880 20,310 (36.3%) 54,002 19,506 (36.1%) 160.91 昭和56年 56,799 21,167 (37.3%) 54,774 20,305 (37.1%) 161.92 昭和57年 57,837 22,018 (38.1%) 55,675 21,069 (37.8%) 162.82 昭和58年 58,446 22,712 (38.9%) 56,182 21,668 (38.6%) 164.12 昭和59年 59,108 23,541 (39.8%) 56,734 22,395 (39.5%) 165.76 昭和61年 61,092 25,304 (41.4%) 58,251 23,946 (41.1%) 168.82 昭和62年 62,075 26,452 (42.6%) 59,040 24,961 (42.3%) 169.59 昭和63年 63,003 27,335 (43.4%) 59,684 25,703 (43.1%) 170.33 平成元年 63,661 28,354 (44.5%) 60,018 26,528 (44.2%) 171.13 平成2年 65,296 29,228 (44.8%) 60,902 27,264 (44.8%) 172.16 平成3年 66,212 30,064 (45.4%) 61,595 27,980 (45.4%) 173.00 平成4年 67,183 30,981 (46.1%) 62,308 28,682 (46.0%) 174.17 平成5年 67,655 31,742 (46.9%) 62,687 29,383 (46.9%) 174.36 平成6年 68,876 32,638 (47.4%) 63,630 30,136 (47.4%) 167.33 平成7年 69,448 33,391 (48.1%) 64,035 30,815 (48.1%) 177.33 平成8年 70,901 34,143 (48.2%) 64,525 31,464 (48.8%) 178.55 平成9年 71,586 34,748 (48.5%) 64,900 31,953 (49.2%) 179.46 平成10年 72,463 35,728 (49.3%) 65,455 32,757 (50.0%) 180.44 平成11年 72,882 36,407 (50.0%) 65,277 33,323 (51.0%) 186.15 平成12年 73,117 37,177 (50.8%) 65,806 33,950 (51.6%) 182.14 平成13年 73,439 37,967 (51.7%) 66,037 34,592 (52.4%) 182.96 平成14年 73,674 38,727 (52.6%) 66,197 35,217 (53.2%) 183.25 平成15年 73,863 39,326 (53.2%) 66,322 35,772 (53.9%) 183.48 平成16年 73,854 40,301 (54.6%) 66,319 36,439 (54.9%) 183.97 平成17年 74,142 40,842 (55.1%) 66,439 36,942 (55.6%) 184.27 平成18年 73,988 41,398 (56.0%) 66,254 37,335 (56.4%) 184.48 平成19年 73,540 42,194 (57.4%) 65,832 37,952 (57.6%) 184.74 平成20年 74,106 42,873 (57.9%) 66,166 38,471 (58.1%) 184.85 市街地

改良済延長 改良済延長 面積

都市計画道路 うち幹線街路

(26)

20

0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000

平成元年度 平成2年度 平成3年度 平成4年度 平成5年度 平成6年度 平成7年度 平成8年度 平成9年度 平成10年度 平成11年度 平成12年度 平成13年度 平成14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度 平成20年度

幹線街路延長(km)

未改良 改良済

図 2 - 1 最近 20 年間の幹線街路整備状況(資料:都市計画年報)

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000

平成元年度 平成2年度 平成3年度 平成4年度 平成5年度 平成6年度 平成7年度 平成8年度 平成9年度 平成10年度 平成11年度 平成12年度 平成13年度 平成14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度 平成20年度

図 2-2 街路事業予算の推移(資料:都市計画年報)

をピークに減少傾向にある。現在の社会状況を踏まえた場合、今後これらの予算が増加し ていくことは考えにくく、街路整備には前述した約 60 年間よりもさらに長い期間が必要で あると考えられる。

都市計画道路の整備は、モータリゼーションの進展と市街地の拡大が相乗的に進むこと

に対応して、市街地整備とともに実施されてきた。このような整備は、新市街地を中心に

実施されてきたために、既成市街地での整備が遅れている反面で、市街地の拡大を助長し

てきたと考えられる。したがって、現在の都市計画道路の整備では、市街地形状や交通条

件などに応じて合理的なネットワークを構成するように計画されている。しかし、市街地

の拡大に伴い、整備に必要な事業量が急激に膨張したのに対して、事業費が十分に確保で

きなかったことから、圧倒的に整備が遅れている。このため、効率的・効果的な整備を行

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