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6 条第 22 「国連特権免除条約」第

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(1)

6

条第

2 2

項 の適用可能性

国際司法裁判所 の勧告 的意見 を中心 に ‑

中 村

1.はじめに

本稿 は,国際司法裁判所が1

9 8 9

1 2

1 5

日に言渡 した勧告的意見の,抄訳 と解説を試みたものである。 この事件 は,国連の経済社会理事会の補助機関で ある人権委員会の,さらにその補助機関である 「差別防止および少数者保護 に 関す る小委員会1)の特別報告者である,ルーマニア国籍を有す る ドゥミトル

・マジール

( Dumi t ru Mazi l u)

氏 (元ルーマニア外務省条約局長) に対す る, 「国連特権免除条約」2)の適用可能性 に関する事件であり,国連の経済社 会理事会 による,最初の勧告的意見要請であ った。以下,事実,裁判所 の意 見,解説の順に検討する。

2.

国際連合の経済社会理事会 は

,1 98 9

5

2 4

日,決議1

9 8 9 /7 5

を採択 し, 国際司法裁判所 に対 し勧告的意見を求めた。決議 の内容 は,以下の とお りで

1)1 9 4 7

年の第

1

回人権委員会において設けられた小委員会であり,その目的は,人 権と基本的自由に関するあらゆる種類の差別防止と,人種的 ・宗教的 ・言語的小数 者の保護について, 世界人権宣言」に照らして研究を行うと同時に,人権委員会 に勧告を行い,かつ,経済社会理事会や人権委員会によって委託されるその他の任 務を,遂行することである。

2)

Conv e nt i onont hePr i v i l e gesandl mmuni t i e soft heUni t edNat i ons,1 U. N. T. S.15.

〔 5 1 5 〕

(2)

5 16 商 学 討 究 第 4 2 巻 第 2・3 号

あった。

経済社会理事会は,1

9 8 8

9

1

日の差別防止および少数者保護に関す る小委員会決議1

9 88 /37

,および1

9 8 9

3

6日の人権委員会決議1 9 8 9/3 7

を考慮 し,(1)差別防止および少数者保護に関する小委員会の特別報告者で ある ドゥミトル ・マジール氏に対する国際連合の特権および免除に関する条約 (以下特権免除条約 とする)の適用可能性に関 し,国際連合 とルーマニア政府 の間に見解の相違が生 じたと判断 し

,(2)国連憲章第9 6

条第

2

項および1

9 4 6

年1

2

11日の総会決議8

9(Ⅰ)に基づき,マジール氏に対する特権免除条約第

6

条第2

2

項の適用可能性に関する法律問題について,国際司法裁判所に対 し, 最優先で勧告的意見を求める。

本件に関す る事実関係の概要 は,次のとお りであった。1

98 4

3

1 3

日, 経済社会理事会の補助機関である人権委員会 (憲章第5

5

Cおよび第6

8

条に基 づいて1

9 46

年 に創設 された機関)は,ルーマニア政府の指名に基づ き,同国 民である ドゥミトル ・マジール氏を

,1 98 6

年1

2

31

日までの

3

年間の任期で, 差別防止および少数者保護に関する小委員会 (以下小委員会 とする)の委員に 選んだ。人権委員会は小委員会に対 し,人権の分野における青年の役割につい て注意を払 うよう求めたので,小委員会 は,第38会期中の1

98 5

8

2 9

日, 決議

1 9 8 5/1 2

を採択 し,マジール氏に対 し 「人権 と青年に関す る報告」 ( に青年の生活権,教育権および勤労権を確保するための手段について分析 した 報告)を準備するよう求めた。さらに,マジール氏に対 し,当該準備に関 し必 要なあらゆる援助を与えるよう,国連総会へ要請 した。

マジール氏の報告が提出される予定であった小委員会の第3

9

会期は,当初予 定の1

9 8 6

年に開催 されず,1

9 87

年に延期になった。当該委員会の委員の任期

3

年間で,本来な らば1

98 6

年1

2

31

日に終了す るはずであったが,経済社 会理事会決議1

98 7 /1 0 2

により

, 1

年間延長 された。小委員会の第3

9

会期は,

1 98 7

8

1 0

日ジュネ‑ヴで開催 されたが,マジール氏の報告は提出されず, そればか りかマジール氏 自身の出席 もなか った。1

9 87

8

1 2

日, ジュネ‑

ヴの国連事務局‑届けられたルーマニア常駐代表団か らの手紙により,マジー

(3)

ル氏が心臓発作のため入院中であることが知 らされた。国連事務総長の書簡に よれば,心臓病のため当該会期に出席できないことを小委員会に伝える

,D.

マジールと署名 された電報が

,1 9 8 7

8

1 8

日ジュネ‑ヴに配達された。か かる状況において,小委員会 は

, 1 9 8 7

9

4

日決議

1 9 8 7 /1 1 2

を採択 し,「 権 と青年に関す る報告」が検討 され るはずであった議題第

1 4

の討議を

,1 9 8 8

年の第

4 0

会期まで延期 した。マジール氏の小委員会の委員 としての任期 は,

1 9 . 8 7

1 2

3 1

日に終了するはずであったが,小委員会 は,同氏か ら提出され るべき報告を

,

差別防止および子供の保護」 と題 された議題に載せ,かっ, 小委員会の委員の準備の下に検討および報告されるべ き一覧表 に

,

人権 と青 年」と題された同氏の報告が加え られた。

小委員会の第

3 9

会期終了後,ジュネーヴの国連事務局人権セ ンターは,可能 なあらゆる手段を用いマジール氏 との接触を試み,同氏に対 し報告準備のため の援助を提供 しようとした。その中には,同氏のジュネ‑ヴ訪問が含まれてい

。1 9 8 7

1 2

月,マ ジール氏 は人権部門の国連事務次長 に対 し,人権 セ ン ターか らの先の連絡を受け取 っていないと伝えた

。1 9 8 8

1

月,マジール氏 は事務次長に対 し

,1 9 8 7

年に

2

回入院 し,同年

1 2

1

日付けで,政府のあ ら ゆる公職か ら退職するよう強いられていると伝えてきた。また同氏は,協議の ためジュネーヴへ出向きたいのだが,ルーマニア当局が旅行許可を出さないと も伝えてきた。マ ジール氏は

,1 9 8 8

4

月 と

5

月に一連の手紙で,同氏の身 辺に関する状況をさらに伝えてきた。それによれば,小委員会に対する報告を 自発的に止めるようにとの

,1 9 8 8

2

2 2

日付 けのルーマニア外務省の特別 委員会か らの要請に従わざるをえず,さらに同氏自身および家族に対 し,強い 圧力が継続的に加え られているというものであった。

1 9 8 7

1 2

3 1

日,マジール氏を含む小委員会の全委員の任期が終了 したこ とは,先に述べた。人権委員会は

,1 9 8 8

2

2 9

日,各政府の指名に基づ き, 小委員会の新委員を選んだ。その中には,ルーマニア国民であるイオ ン ・ディ アコ‑メ

( I onDi ac onu)

氏が,含まれていた。

小委員会の全報告者および特別報告者が,同委員会の第

4 0

会期

( 1 9 8 8

8

(4)

5 1 8 商 学 討 究 第 4 2 巻 第 2・3 号

8日か ら9

2日まで)に,招集された. しか し,マジール氏は再び姿を現

さなかった。 ジュネーヴへ出向き報告を提出するようにとの特別の招請状が, マジール氏に対 し打電 されたが,当該電報は配達されなかった し,ブカレス ト の国連広報セ ンターは,同氏の所在を明 らかにす ることがで きなか った。

1 9 8 8

8

月1

5

日,小委員会 は決議

1 9 8 8 /1 0 2

を採択 し,国連事務総長に対 し,

ルーマニア政府 と連絡を取 り,小委員会がその特別報告者である ドゥミトル

・マジール氏 との接触を緊急に希望 していることについてルーマニア政府の注 意を喚起 し,同政府がマジール氏の所在を明らかにすることを援助 し,かつ, 同氏が希望するな らば,人権 と青年に関する同氏の研究を援助するための,小 委員会の委員および事務局職員のルーマニア訪問に対 し援助を与えるようにと の小委員会の要請を伝えるよう」,要請 した

。1 9 8 8

8

月1

7

日,人権部門の 国連事務次長は小委員会に対 し,事務総長官房 とニューヨークのルーマニア国 連常駐代表団の臨時代理大使 との接触において,国連事務局によるいかなる干 渉 も,またブカレス トにおけるいかなる調査 も,ルーマニアの国内問題に対す る干渉 となるとのルーマニア政府の立場を伝えてきたと,報告 した

。1 98 8

9

1

日,小委員会は決議

1 9 88 /37

を採択 し,事務総長に対 し再度ルーマニ ア政府 と接触 し, とりわけ特権免除条約の適用可能性を援用するよう,要請 し た。さらに,ルーマニア政府が,特権免除条約の本件に対する適用に同意 しな いならば,国連 とルーマニアの見解の不一致を

,1 9 89

年の人権委員会に報告 するよう,要請 した。同時に人権委員会に対 し, このような場合においては,

1 9 4 6

1 2

11日の総会決議

8 9(Ⅰ)

に基づき,経済社会理事会が国際司法裁 判所に対 し,特権免除条約の関係条項の本件に対する適用可能性に関 し,本決 議の範囲内で勧告的意見を求めるよう,要請 した。

この決議 に基づ き国連事務総長は

,1 9 8 8

1 0

26

日,ニ ューヨークのルー マニア国連常駐代表に対 し口上書を手渡 し,マジール氏に対 し特権免除条約を 援用 し,同氏の任務の遂行に関 し,ルーマニア政府が必要な援助を与えるよう, 要請 した。 この口上書 に対す る回答がなか ったので

,1 9 88

1 2

月1

9

日,人権 部門の国連事務次長は, ジュネ‑ヴのルーマニア国連常駐代表に対 し覚書を送

(5)

り,マジール氏の報告作成に対す る援助 について人権セ ンターと協議す るた め,同氏の ジュネ‑ヴ訪問を援助す るよ う,ルーマニア政府 に要請 した。

1 9 8 9

1

6

日,ルーマニア常駐代表 は,国連法律顧問に対 し覚書を送 り, マジール氏に対す るルーマニア政府の立場を明 らかに した。 この覚書 によれ ば,マジール氏は

,1 9 8 7

年,同氏に託 された任務に着手す る以前 に重い病気 にかか り,入退院を繰 り返 した。病気を理由とした同氏の申し出により,ルー マニア国内法に基づき,当初の

1

年間,マジール氏の名前は退職者名簿に加え られた。医師団のその後の診察の結果,同氏の退職状態は延長された。ルーマ ニアは,法に基づ き,「特権免除条約の適用可能性の問題 は,本件に関 しては 生 じない」との見解を明 らかにした。さらに,次のように説明を加えた。 「 告者の活動は,国連のための任務を遂行する専門家 と比較 した場合,その場限 りのものにすぎないので,特権免除条約は,報告者に対 しては適用されない。

また,たとえ報告者に対 し専門家の地位が与え られたとしても,報告者は,機 能的な特権および免除を享有するのみである。つまり,当該任務に関す る旅行 に出発 した時か ら,特権および免除を享有するのであり,専門家の本国におい ては,当該任務についての実際の活動に関 してのみ,特権および免除を享有す るのである」と。さらにルーマニアは,本件に関 し,国際司法裁判所のいかな る勧告的意見を求めることにも反対であると,表明 した。このような見解は, ルーマニアにより,書面で裁判所 自体にも伝え られた。

1 9 8 9

3

6

日,人権委員会 は決議

1 9 8 9 /3 7

を採択 し,経済社会理事会が 国際司法裁判所の勧告的意見を求めるよう,勧告 した。これを受けた同理事会

,1 9 8 9

3

24

日,決議

1 9 8 9 /7 5

を採択 し,裁判所の勧告的意見を求めた。

国連事務総長は,国際司法裁判所に対 し,勧告的意見を求めた後の,次のよ うな事実経過について も伝えた。マジール氏により準備された人権 と青年に関 す る報告は

,1 9 8 9

6

月1

0

日付けで,小委員会の文書 として回覧された。当 該報告は,マジール氏により人権セ ンターに対 し,い くつかの手段を通 じて伝 え られたものであった。小委員会 は

,1 9 8 9

8

8

日,マジール氏の報告を 検討す る会議に,同氏を招 くことを決定 した。 この招請状に対す る回答はな

(6)

520 商 学 討 究 第

42

巻 第

2・3

か った。 しか し, ジュネ‑ヴのルーマニア国連常駐代表団は

,1 9 8 9

8

月1

5

日付けの口上書で,マジール氏による 「いわゆる報告書」について言及 し,鷲 きを現す とともに,この病人の報告を無視するようにと表明 した。 とりわけ, マジール氏は

,1 9 8 7

年以来病気であるので, 「国連の要請 に合致す る報告作 成に関 し,客観的で責任があり,かつ偏向 していない分析のための知的能力を, 有 していない」 と説明 した。小委員会 は

,1 9 8 9

9

1

日, 「ドゥミトル ・ マジール氏により準備 された人権 と青年に関する報告」と題された決議

1 9 8 9 / 4 5

を採択 し,同報告は,国連事務総長により収集された関連情報が提供されな いという困難な状況において作成されたものであると指摘するとともに,同氏 に小委員会の次期会期への出席を要請 し,かっ,同報告を改訂するために必要 なあらゆる援助を (人権センターとの協議を含む),引き続 きマジール氏に与 えるよう,事務総長に要請 した。

3.

裁判所 の意見

(1)裁判所に付託された問題

( para. 2 7 . )

裁判所は,経済社会理事会により求め られた問題の文言を,想起する。理事 会の求めは,マジール氏の場合における特権免除条約第22項の適用可能性に関 するものであって,同項の適用の結果 として,マジール氏がその地位か らいか なる特権および免除を享有するか,そ して当該特権および免除が侵害 されてい るかどうかに関するものではないと,国連事務総長が書面で強調 したこ.とが, 指摘される。さらに裁判所は,口頭手続において事務総長の代理人が,裁判所 に求めた問題 により,見解の不一致を全体 として解決 しようとす るので はな く,単に先決的な法律問題を裁判所に求めただけであるとの理事会の意図を指 摘 したことに,注 目する。

(2

)勧告的意見を与える裁判所の権限

( paras. 2 8‑3 6 . )

はじめに裁判所は,本件が,国連憲章第

9 6

条第

2

項に基づき,経済社会理事 会により最初に求められた勧告的意見であると,指摘する。さらに,同項に基 づ き国連総会が

,1 9 4 6

1 2

11日に決議

8 9(Ⅰ)

を採択 し,理事会の活動の

(7)

範囲か ら生 じた法律問題につき,裁判所の勧告的意見を求めることを認めたこ とを,指摘する。そ して,裁判所に求められた問題について検討 した結果,裁 判所は第一に,求められた問題は,国際条約の適用可能性を決定するために, 当該条約の解釈を含んだ法律問題であるとの見解に至 った。さらに,理事会の 補助機関である人権委員会の,そのまた補助機関である小委員会の特別報告者 にマジール氏を選んだことは,理事会の権能に関連するものであり,理事会の 活動の範囲か ら生 じた問題であるとの見解に至 った。

にもかかわ らず,ルーマニアは,本件に関 し裁判所は,勧告的意見を与える 管轄権を有 しないと判断すべきと主張 したので,裁判所は,この主張について 検討する。ルーマニアは,特権免除条約第 8条第30項に対 してなされたルーマ ニアの留保により,国連は,ルーマニアの同意な しに,ルーマニアとの見解の 不一致に関 して,国際司法裁判所の勧告的意見を求めることができないと,主 張 した。当該留保は,国連 とルーマニア間に生 じた紛争を処理する裁判所の権 限は,勧告的意見に関するものであっても,紛争当事者の同意に基づかせ ると いうものであった。そ してルーマニアは,本件に関 して国際司法裁判所に勧告 的意見を求めることに同意 していないと,指摘 した。特権免除条約第

8

条第30 項は,次のように規定する。

「この条約の解釈または適用か ら生ずるすべての紛争は,当事者が他の解決 方法によることを合意する場合を除き,国際司法裁判所に付託する。紛争が国 際連合 と加盟国 との問に生 じた場合には,紛争 に含まれる法律問題について は,国際連合憲章第

9 6

条および国際司法裁判所規程第

6 5

条の規定に従って勧告 的意見を要請する。裁判所が与えた意見は,関係当事者により最終的なものと

して受諾される。」

本条約に対す るルーマニアの加入書 に付 された留保 は,次のとお りであっ た。

ルーマニア人民共和国は,特権免除条約の解釈または通用か ら生ず るいか なる紛争に対 して も,国際司法裁判所が義務的管轄権を有するという同条約第

8

条第30項の規定に,拘束されないと考える。かかる紛争についての国際司法

(8)

622 商 学 討 究 第42巻 第2・3号

裁判所の権限に関 し,ルーマニア人民共和国は,いかなる紛争で も裁判所へ付 託する場合は,すべての紛争当事国の同意が,個々の事件について必要である

という見解を有する。 この留保は,国際司法裁判所の勧告的意見が最終的であ るとする同項の規定にも,等 しく適用される。

裁判所は,過去の勧告的意見に言及することか らはじめる。事件が,関係国 の問で現に係争中の法律問題にかかわるものであったときで も,裁判所が,国 連憲章第

9 6

条および国際司法裁判所規程第

6 5

条に基づいて勧告的意見を与える 権限は,意見が拘束力を有 しえないものであるので,それ らの国々の同意に依 存するものではないという先例が,想起 される3)。 この考え方 は,国連 と加 盟国間に存在する法律問題に関 し勧告的意見が求められる場合にも,適用され る。 しか し裁判所は,特権免除条約第

3 0

項が,国連憲章第

9 6

条 とは異なった場 合や異なった文脈において機能すると,判断する。すなわち,同項の規定を全 体 として解釈すれば,その目的が,紛争解決手続を提供することにあるという

ことが,明 らかとなる。 もし裁判所が,第

3 0

項に基づ く勧告的意見の要請につ いて検討 しようとするな らば,当然,紛争当事国が同項に対 して行 った留保に ついて,検討 しなければな らない。 しか しなが ら本件に関 しては,裁判所は, 経済社会理事会の決議が第

3 0

項について言及 していないことを想起 し,同項を 援用するのは,ルーマニアの留保のため,理事会の意図ではないということが 明 らかであると考える。 したがって裁判所 は,勧告的意見の要請が第

3 0

項に基 づいてなされたものでないので,同項に対するルーマニアの留保の効果につい て,決定する必要はないと判断する。

しか しなが らルーマニアは, とりわけ次のように主張 した。

特権免除条約の当事国 もしくは国連自体により,当該条約の第

3 0

項の規定 以外の根拠に基づいて,当該条約の適用または解釈に関する紛争を国際司法裁 判所に付託することができるな らば,それは,条約の実体規定 と紛争解決規定

3

)ブルガリア,ハンガリーおよびルーマニアと締結された諸平和条約の解釈に関する 勧告的意見,第

1

段階

,C. I . J. Re cue i l ,1 9 50

,p.71.

(9)

を分離することにより,当該条約の総体を分裂 させることになる。すなわちそ れは,国々により同意された条約義務の内容および範囲の変更に等 しい。

裁判所は,本件の本質および目的は,特権免除条約のある部分についての適 用可能性に関する勧告の要請であって,紛争を解決のため裁判所に付託するこ

とではないと考える。また裁判所は,国々により,特にルーマニアにより同意 された条約義務の内容および範囲は,勧告的意見の要請およびこの勧告的意見 自体により,変更されないと考える。

したがって裁判所は,特権免除条約第 8条第30項に対 してなされたルーマニ アの留保は,裁判所に付託された要請に対する管轄権に,影響を与えるもので はないと判断する。

(3

)裁判所が勧告的意見を付与することの当否

( paras . 3 7‑3 9 . )

本件手続に関 しルーマニアの同意が存在 しないことは,裁判所の管轄権に対 しいかなる効果 も与えないのだが,本件に対 し勧告的意見を与えることが適当 であるかどうか という問題を,裁判所は検討する。裁判所は,「関係国の同意 の不存在により,勧告的意見の付与が,裁判所の司法機関としての性質 と両立 しなくなる場合が存在 し, この例 としては,勧告的意見の付与により,国家は その同意な しに,紛争を司法的解決に付託する義務がないという原則を回避す ることになることが,諸状況により明 らかとなる場合が挙げられる」という過 去の勧告的意見を想起 し,かつ承認する4)。 しか し本件 において,勧告的意 見を付与することは,かかる効果をもた らさないと,裁判所は判断する。確か に経済社会理事会は,その決議

1 9 8 9 /7 5

で,マジール氏に対す る特権免除条 約の適用可能性に関 し,国連 とルーマニア政府の間に紛争が発生 したと結論 し ているO しか しなが ら,本件,すなわち裁判所にもたらされた問題 と,マジー ル氏に対する特権免除条約の適用可能性に関 し,国連 とルーマニア政府の間に 発生 した紛争 とを,裁判所は混同 してはな らないと思われる。 したがって,裁

4)

西サ‑ラ問題」に対する勧告的意見

,C. I . J. Re cue i l ,1975

,p.

25 .

(10)

5 2 4 4 2 巻 第 2・3

判所は,勧告的意見を拒む適当な理由を兄いだす ことはできないと判断 し,か つ,意見が求め られている法律的問題に対 し,回答を与えるよう決定する。

(4)

特権免除条約第

6

条第

2 2

項の意味内容

( par as . 4 0‑5 2 . )

国際連合のための任務を行な う専門家」 と題 された特権免除条約第

6

, 2

つの項に分けられている。その第

2 2

項は,次のように規定す る。

国際連合のための任務を遂行する専門家 (

5

条の範囲に属す る職員を除 く)は,その任務に関連する旅行に費やす時間を含めて,任務の期間中,任務 を独立 して遂行す るために必要な特権および免除を与え られる。 この専門家 は,特に,次の特権および免除を与え られる。

(a)

身柄の逮捕または拘留および手荷物の押収の免除

(b)任務の遂行中に前記の者が行 った口頭または書面による陳述および行

動に関 して,あらゆる種類の訴訟手続の免除。この訴訟手続の免除は, その者が国際連合の任務に従事 しな くなった場合にも,引き続 き与えな ければな らない。

(C)すべての書類および文書の不可侵

(d)国連 との通信のために,暗号を使用 し,および伝書使または封印袋に

より書類または信書を接受する権利

(e)通貨または為替の制限に関 して,一時的な公的任務を有する外国政府

の代表者に与え られる便益 と同一の便益

(f

)手荷物に関 して,外交使節に与え られる免除および便益 と同一の免除 および便益」

裁判所は,まず,第

2 2

項の規定す る 「任務を遂行する専門家」の意味内容に ついて検討する。そ して条約 自体 は, 「任務を遂行する専門家」について,定 義 していないことを指摘する。 しか し第

2 2

項か ら,次の点が明白となる。第‑

に,機構の職員は,たとえ特定分野についての専門的能力か ら選任 されようと ち,規定か らは 「専門家」の範噂に入 らない。第二に,専門家が,機構に対す る任務を遂行 している場合に限 り,第

2 2

項が適用 される。 しか しなが ら第

2 2

は,当該任務の性質,期間および場所について,何 らの規定 ももたない し,ま

(11)

た条約の 「準備書面」 も,この点に関 し,何 らの指針 も示 していない。にもか かわ らず裁判所は,第22項の目的は明白であると,判断する。すなわち,機構 の職員の地位をもたない個人に,国連が任務を託することを可能にし,かっ, 当該任務の独立 した遂行に必要な特権および免除を,当該個人に保障す ること であると。国連事務総長か らの情報によれば,国連は,その職員の地位を もた ない個人に対 し,様々な任務を託 してきたという事実に,裁判所は注目す る。

かかる個人は,仲介,報告書の作成,研究,調査, もしくは事実の発見および 証明という任務を,託 されてきた。さらに,その委員が,国々の代表者 として ではな く,個人的な能力で機能するという,多数の委員会や同様な機関が,機 構の中に設立されてきた。これ らすべての場合において,個人が当該委員会の 委員に任命されると,国連の実行は,第22項の規程か ら,任務を遂行する専門 家 と見な してきた。

次に裁判所は,同項の 「その任務に関連する旅行に費やす時間を含めた任務 の期間中」という文言の意味に,注 目する。 この点に関 し,第22項の 「任務を 遂行する専門家」は,旅行を必要 とする任務の間だけ適用されるのか,それと も旅行のない場合や当該旅行 とは関係な く適用されるのかという問題が,生 じ る。この間題に答えるために,裁判所 は,特権免除条約が採用 している

2

つの 言語,すなわちフランス語の

" mi s s i on"

と英語の

" mi s s i on"

の意味を,明 らかにす る必要があると判断す る。手始めに, この言葉は,人に託 された任 務,特にその遂行のためにどこかへ派遣される場合を指 していた。 しか しなが ら, この言葉がより広い意味をもつようになってか ら,かなりの期間が経過 し た。今 日では,この言葉は,そのための旅行の有無にかかわ らず,人に託され た任務を一般的に包含 している。そ して第22項は,国連のための任務を遂行す る専門家 という文言に関し,

" mi s s i on"

という言葉を一般的な意味で使用 して いると,裁判所は判断する。ある専門家は,その任務遂行のため,必ず旅行 し なければな らないが,一方他の専門家は,その任務を,旅行な しで遂行できる.

いずれの場合において も,第

2 2

項の意味するところは,目的のため必要な特権 および免除を付与することにより,機構の利益に関 し,当該専門家の独立を保

(12)

5 26 4 2 巻 第 2・3 号

障することにある。 したが って裁判所 は,第

2 2

項 は,旅行の有無 にかかわ ら ず,すべての任務を遂行する専門家に適用されると,結論する。

最後に裁判所は,任務を遂行する専門家は,当該専門家が国民である国,ま たはその領域内に専門家が居住する国に対 して,第

2 2

項の規定する特権および 免除を援用することができるかどうかという問題について,検討す る。 この点 に関 し, 「加盟国の代表者 とその代表者が国民である国,またはその代表者が 代表するもしくは代表 した国の当局との間には,当該代表者に関す る特権免除 条約第

4

条第

1 1 ,1 2 ,1 3

項が適用されない」 と規定 している同条約第

4

条第

1 5

項に,注 目する。一方,機構の職員に関する同条約第

5

条,および国連のため の任務を遂行する専門家に関する第

6

条は,かかる規則を含んでいないことに も注 目する。 このアプローチの違いは,容易に説明することができると,判断 する。すなわち,第

5

条および第

6

条の規定する特権および免除は,機構の利 益に関 し,国際的職員および専門家の独立を保障する観点か ら,付与されたも のである。 この独立性は,国籍国および居住国を含むすべての国家によって, 尊重されなければならない。さらに裁判所は,特権免除条約のいくつかの当事 国が,自国民またはその領域に居所を有する個人に関 し,同条約第

5

条または

6

条の規定を留保 していることに,注 目す る5)。 しか し当該留保を必要 と すること自体が,かかる留保が存在 しなければ,任務を遂行する専門家は,国 籍国または居住国 との関係においても,特権免除条約の規定する特権および免 除を享有するということを,確認 していると考え られる。

要するに,特権免除条約第

2 2

項は,機構により任務が託 され,その機能の独 立 した遂行のために同項により特権および免除を付与された,国連職員以外の 個人に対 し適用されると,裁判所 は判断する。また,当該任務が託 された全期 間,専門家は,旅行の有無にかかわ らず,かかる機能的な特権および免除を享 有すると判断する。さらに同条約第

2 2

項に対する留保が有効になされていなけ

5)

5

条は,カナダ,ラオス,ネパール,タイ, トルコ,およびアメリカが,また第

6

条は,メキシコとアメリカが,留保している。

(13)

れば,当該特権および免除は,専門家の国籍国または居住国に対 しても,援用 可能であると判断する。

(5

)小委員会の特別報告者に対する特権免除集約第

6

条第

2 2

項の適用可能性

( par as .5 3‑5 5 . )

小委員会の報告者の地位は,報告者の一般的な法的地位に関係するものであ り,また,国連の機構全体にとって一つの重要性をもつ ものであると,裁判所 は強調す る。また小委員会 は,経済社会理事会の1

9 47

3

28

日の決定によ り,それぞれの国籍国政府の同意に基づいて指名された1

2

名 (現在は

25

名)の 卓越 した個人により構成され,その指名の後,同様な条件の下に人権委員会に よって選任 されるとしたことに,裁判所 は注 目する。さ らに経済社会理事会 が,1

9 83

3

27

日の決議1

98 3 /32

で,「小委員会の委員 は,個人的な能力を 有する専門家 として,人権委員会によって選任される」 と,確認 したことに注 目する。 したがって裁判所は,小委員会の委員は,加盟国の代表者の地位で も ない し,また国連職員の地位でもないが,小委員会によって託 された機能を独 立 して遂行するので,当該委員は,第

2 2

項の規定する任務を遂行する専門家 と みなされるべきであると,判断する。

さらに裁判所は,多数の国連機関の実行に基づき,小委員会が今 日まで,報 告者や特別報告者を,特別な分野の研究のために選任 してきたということに, 注 目する。また, これ らの報告者や特別報告者は,通常小委員会の委員か ら選 任 されるのであるが,特別報告者が小委員会の外部か ら選任 されたり,小委員 会の委員 としての任期終了後に,その報告がなされるという場合 も存在するこ とに,注 目する。 とにか く,報告者や特別報告者は,研究 という任務を,小委 員会により託されているのである。報告者や特別報告者の地位は,加盟国の代 表者や国連職員の地位 とは異なっていても,当該人物が,国連のために独立 し て研究を行 う以上,報告者や特別報告者は,第2

2

項の規定する任務を遂行する 専門家 とみなされるべきであると,裁判所は判断する。たとえ報告者や特別報 告者が,小委員会の委員でなかったり,委員 としての任期が終了 した後であっ ても,同様である。この判断に基づ き裁判所は,第

2 2

項の規定により,その機

(14)

5 2 8 商 学 討 究 第 4 2 巻 第 2・3 号

能の遂行上必要な特権および免除を,特に小委員会に対す る報告の準備,草案 作成および提出にとって有効な通信のための特権および免除を,報告者や特別 報告者は享有するという結論に達 した。

(6

)マジール氏に対する特権免除条約第

6

条第22項の適用可能性

( paras . 56‑6 0 . )

裁判所 は,伝え られた事実 に基づ き

,1984

3

月1

3

日か ら

1985

8

月29 までは小委員会の委員 としての地位を,1

985

8

月29日か ら

1987

年1

2

月31 までは委員 と報告者の双方の地位を,マジール氏は得ていたと判断す る。さら に同日以後 は,小委員会の委員 としての地位は失 っていたが,特別報告者では あり続けたと,判断す る。 したが ってマジール氏は, この期間中,第22項に基 づ く任務を遂行す る専門家 としての地位を失 っていない し,その機能の遂行上 必要な特権および免除を享有 していたと,裁判所 は判断す る。

しか しなが ら,マジール氏 は1987

5

月以降重 い病気 にかか り,ルーマニ アの国内法に基づいた医師団の決定により,退職者名簿に加え られたので,同 氏は,特別報告者 としての職務を遂行できるかどうか疑わ しいとい うルーマニ アの疑念を,裁判所 は想起す る。同時に,報告を準備 した りジュネ‑ヴへ出向 くことができないほど健康状態は悪 くないと,マジール氏 自身が国連 に伝えて きたことを,裁判所 は想起す る。さらに,マジール氏の報告が小委員会の文書 として回覧されたとき,ルーマニアが,「国連の求めに合致す る報告を作成す る同氏の知的能力は疑わ しい」 と主張 したことも,裁判所 は想起す る。 これ ら の点を指摘 した後,裁判所 は,マジール氏の健康状態や,同氏が行 った り小委 員会に対 して行 うべき仕事へその健康状態が与える影響について,言及する必 要 はないと考える。かかる状況において,マジール氏が特別報告者 に留まるこ

とを望むかどうかを決定するのは,国連 自体の役割であると,裁判所 は指摘す る。そ して当該決定 は,小委員会によってなされるべ きであると,指摘す る。

このような状況において,裁判所 は,マジール氏は特別報告者の地位を持ち 続けてお り,その結果 として,特権免除条約第22項の規定する任務を遂行する 専門家 とみなされ, したが って,同氏の場合に第22項は通用可能であるという

(15)

見解に達 した。

(7)勧告的意見主文

( para. 6

1.)

以上のような理由により,裁判所は,全員一致で,

特権免除条約第

6

条第

2 2

項は,差別防止および少数者保護に関する小委員 会の特別報告者である ドゥミトル ・マジール氏の場合に,適用可能である」

,判断する。

4.

本件には,以下のい くつかの論点があると考え られる。

まず第

1

に,本件は, 「国連憲章」第

9 6

条第

2

項および 「国際司法裁判所規 程」第

6 5

条に基づいた,国際条約の適用可能性に関する意見の要請であって,

国連特権免除条約」第 8条第30項に基づいた,紛争の最終的解決の要請では ない。 したがって,第30項に対する関係国の留保は,裁判所の意見を付与する 権限に,影響を与えるものではない。

2

に,本件は,上述のように,紛争の最終的解決の要請ではないので,紛 争の裁判所への付託には関係国の同意が必要 という原則を回避することにはな らない し,司法機関として他に意見を拒む相当な理由がない以上,意見の付与 は適当である。

第 3に, 「国連特権免除条約」第 6条第

2 2

項の規定は,特定の個人に対 し, 国連が任務を託す ることを可能に し,その任務の独立 した遂行に必要な限 り で,特権および免除を付与 したものである。また小委員会の特別報告者は,特 権免除条約第

2 2

項の規定する 「任務を遂行する専門家」の範噂に入 り,その旅 行の有無にかかわ らず,特権および免除を享有する。当該特権および免除は, 特別報告者の国籍国および居住国によって も,尊重されなければな らない。

4

に,ある人物が,特別報告者の地位を有 しているかどうかは,小委員会 自体が決定することであり, したがって,国連の権限に属する事項である。

以上の第

1

と第

2

の論点は,国際司法裁判所が勧告的意見を付与す る場合 の,裁判手続に関する論点である。本件の勧告的意見 自体 もそのい くつかを引

(16)

5 30 商 学 討 究 第

42

巻 第

2・3

用 しているように,常設国際司法裁判所や国際司法裁判所の関連する先例が, 想起 される。それ らは

,

東部カ レリアの地位に関する事件」に対する勧告的 意見 6),「ブルガ リア,ハ ンガ リーおよびルーマニアと締結された諸平和条約 の解釈」に関する勧告的意見7),および 「西サ‑ラ事件」に対す る勧告的意 8)である。 これ らの先例に共通する裁判所の見解は

,

国際連合の機関」で ある裁判所は,国連の活動に関するいかなる法律問題に対 しても,勧告的意見 を付与することができる。この意見は,拘束的ではなくまさに勧告的であり, また,意見は関係国に対 してではな く,要請 した機関に対 して与え られるもの であるので,関係国の同意は,たとえその国が当該意見により影響を受けた り, また関係する紛争等に関与 していたとして も,裁判所が意見を付与するための 条件 とはな らない。 しか し,裁判所 は 「国際連合の機関」であると同時に,

主要な司法機関」で もある。 したがって,意見を要請された問題がたとえ法 律的であって も,当該意見の付与により,裁判所の司法機関としての任務を逸 脱すると判断する場合は,勧告的意見の付与を拒むことができる, というもの であ った9)。本件の場合 は,国連の経済社会理事会 による意見 の要請が,

国連特権免除条約」第22項の解釈および通用に関するものであり,また,前 述の 「東部カレリアの地位に関する事件」で指摘されたように,意見の付与に より,裁判所が実質的に,関係国間の紛争を解決するのと同 じことにはな らな いので1m,本件裁判手続に関する裁判所の判断は,妥当であると考え られる。

次に,第

3

と第

4

の論点は,裁判手続についてではな く

,

国連特権免除条 約」第

6

条第22項の解釈および適用に関する,実体法についての判断である。

条約 は

,

国連のための任務を遂行す る専門家」に対 し,第

2 3

項 との関連で機

6)P. C IJ. ,Se r i e sB,No.5 . 7)前掲註

3)

参照。

8)前掲註 4)参照。

9)

皆川洗 『国際法判例集』,有信堂

,1 97 5

,637

頁。

1 0 )この場合は,特権免除条約第 8

条第

3 0

項にもとづく,裁判所への付託が必要となろ う。

(17)

能主義的な観点か ら,必要な特権および免除を与えると規定 しているが,この

専門家」の範囲が,必ず しも明 らかにされていなか った。本件勧告的意見 は,人権委員会の小委員会の特別報告者が,この範噂に入 ることを明らかにし, また,当該特権および免除は,特別報告者の国籍国や居住国によって も,尊重 されなければな らないと判断 したことは,「専門家」の独立 した活動の遂行を 積極的に保障するものとして,注 目に値 しよう。さらに,特定の人物が特別報 告者の地位を有 しているかどうかを決定するのは,小委員会 自体の権限である

とした判断は,きわめて妥当であると考え られる。

なお本件には, 3名の裁判官が,個別意見を付 している。簡単に紹介する と,まず小田裁判官が,経済社会理事会の真の要請は,マジール氏の具体的な 場合において,同氏に対 して特権免除条約が通用可能であるかどうかという事 であると理解すべきであり, もし裁判所が,同氏に対 して適用可能というより 具体的な意見を述べるならば,同氏の活動にとってさらに有益なものとなるで あろう, というものであった。次に、エベ ンセ ン

( Ev e ns e n)

裁判官の意見 は,特権免除条約が特別報告者であるマジール氏自身ばか りでな く,同氏の家 族 に対 して も厳格に適用されるべ きである, とい うものであった

。 3

人 目の シャハブディー ン

( Shahabuddee n)

裁判官 は,い くつかの論点に対 し,独 自の見解を表明 している。

5.

おわ りに

本稿の筆者 は,1

989

9

月末より1年間,オランダ ・ライデ ン大学におい て在外研究に従事 したが,小田滋裁判官 (現在は,裁判所次長)の格別のお計 らいにより,本件言渡 しを傍聴することができ,言渡 し直後,勧告的意見全文 のコピーを入手することができた。この国際司法裁判所初傍聴 という体験が, 本来国際法の中で も空法 と宇苗法を専攻する筆者に,本稿を執筆 させた主たる 動機である。杉原高嶺教授が, 『国際法外交雑誌』に継続されておられるご労 作のきびにふ して,何等かの付加的な存在意義が有ればと考える次第である。

ともあれ, このよ うな傍聴の機会を与えて下 さった小田先生の ご好意に対 し

(18)

5 3 2 商 学 討 究 第4 2巻 第2・3 号

て,心か らの感謝の意を表 したい。また,在オランダ大使館の明石書記官に は,外交用語の定訳につ き,ご助言頂いた。 この点について も,記 して感謝の 意を表 したい。なお,念のため記 してお くが,本稿に含まれる誤謬は,すべて 筆者の責任に帰するものである。

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