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柳原昌輝・柏谷順洋*

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(1)

ポリプロピレンにおける球晶と水トリーの関係

柳原昌輝・柏谷順洋*

RelationbetweenspheruliteSandthewatertree inpolypropylene

MasateruYANAGIwARAandNobuhiroKAsmwAYA*

(2004年11月22日受理)

Awatertreewillbegeneratedifthehighvoltageisimpressedwherethecableinsulator forelectricpowerisdippedinwater. However,therearemanyunknownthingsaboutawater tree. Therefore,weinvestigatedfromvariousviewpointsabOutawatertree. Asaresult, generatingvoltageandtheinsulateddestructivevoltageofawatertreearelowcomparedwith anelectrictree・ AndThewatertreewasunderstoodthattreewidthisthickc(jmparedwith anelectrictree.

のPPフィルム(10mm×10mm)を8枚重ね, そ れをカバーガラス(24mm×24mm)で挟み, その

間に電解研磨した直径50"mの軟銅線を挿入し,

これを針電極とする。挿入した針電極を少しだけ引 き抜き,図2のように針電極先端に微小空隙を作製 し, その空隙に水を注入し,水電極とする。このよ

うに作製した試料を重さ5kgの鋼板でプレスしつ

つ恒温槽に入れ, 200℃程度まで昇温することでポ

リプロピレンを溶融させた。その後1℃/分の割合

で徐冷し, 100℃から150℃範囲で析出, 0℃の水で 急冷した。急冷することにより球晶の成長を止め,

球晶を生成させた。絶縁破壊試験を行うため,水電

極の先端から1000"mの位置に銀ペイントを塗布

し, これを平板電極とした。

1. 緒言

ポリプロピレン(PP)は絶縁性能が高く,加工 性にも優れていることから,電力ケーブルなどの高 電圧機器の絶縁材料として広く使用されている。こ のポリプロピレンを,溶解状態から徐冷すると, そ の過程で球晶と呼ばれる結晶が形成される。その形 成された球晶が絶縁破壊現象であるトリーイング劣 化現象に影響を与えるのではないかと検討されてき たO(').(2)

一方,試料を水に浸漬した状態,つまり海底ケー ブルや地中配電線用ケーブルに交流高電圧を印加し た場合,材料中のポイド等から水トリーが発生する ことが知られているが,球晶が水トリーの発生・進

展に与える影響については,報告が少ない。(3)

本研究では 電力用ケーブル絶縁体をモデル化し

たポリプロピレンの試料に交流電圧を印加して絶縁

破壊実験を行い水トリーを発生させた。この発生し

た水トリーの進展速度,水トリーの発生電圧,絶縁 破壊電圧などの関係について検討した。

2. 実験方法

2.1 試料の作製(4)

試料の構成を図1に示す。試料には厚さ25"m

図1試料構成(単位:"m)

。秋田高専専攻科学生

(2)

柳原昌輝・柏谷順洋

程度の長さで板面に対して垂直方向に折りたたまれ た構造をしており, ラメラとラメラの間は非晶質で

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ある。図5に球晶の構造の概念図を示す。

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図2水電極および針電極

(a)球晶分布状態無し(析出温度150℃)

2.2短時間絶縁破壊試験

絶縁破壊試験回路を図3に示す。作製した試料に 高電圧をかける時に生じる沿面放電を防ぐためにシ リコーン油の中に入れ, 50Hzの交流100Vを, ネ オン変圧器を用いて昇圧し, 0Vから1秒間に200V づつ上げトリーを発生させるという短時間絶縁破壊 試験を行い,発生電圧,絶縁破壊電圧等について計 測した。

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(b)球晶分布状態まばら(析出温度118℃)

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図3絶縁破壊試験回路

3. 球晶の分布状態

球晶分布状態は,析出温度によって, (a)球晶 分布状態なし, (b)球晶分布状態まばら, (c)球晶 分布状態飽和に分類することができる。各球晶分布 状態を図4に示す。球晶は析出温度120℃付近で発 生し始め110・C付近で飽和に至る。

(c)球晶分布状態飽和(析出温度100℃)

図4球晶分布状態の分類

一一

4. 球晶の構造(5)

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結晶性高分子材料であるポリフ・ロピレンはいった ん溶融状態から徐冷すると,結晶化が進み球晶が発 生する。 この球晶は微小な異物等を中心にして板状 結晶が放射状に成長して球形になったものである。

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(3)

5. 実験結果

晒剛蝿88丁図3

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5.1 発生電圧・絶縁破壊電圧と析出温度の関係 発生電圧と析出温度の関係について,電気トリー と水トリーにおける関係を図6(a),図6(b)に示 す。電気トリーの場合, 100℃で7.59kV,118℃で 8.35kV, 150℃で9.07kVであることがわかる。ま た,水トリーの場合, 100℃で7.05kV, 118℃で 7,04kV, 150℃で8.31kVであることがわかる。次 に絶縁破壊電圧と析出温度の関係について,電気ト

リーと水トリーにおける関係を図7(a),図7(b) に示す。電気トリーの場合, 100℃で8.77kV, 118

℃で9.3kV, 150℃で10.86kVであった。また,水 トリーの場合, 100℃で8.17kV, 118℃で7.39kV, 150℃で8.35kVであることがわかる。

電気トリーの場合は,析出温度が上がる(球晶分 布状態が疎になる)につれ,発生電圧,絶縁破壊電 圧ともに上がっていることがわかる。しかし,水ト

リーの場合は,球晶分布状態がまばらのときよりも,

密のときのほうが両方の電圧が高くなっている。こ れは,水電極の先端が球晶内部にある場合,水トリー は発生しにくいため,球晶分布状態まばらよりも球 晶分布状態飽和のほうが発生電圧が高くなっている のではないかと考えられる。また,水トリーは非晶

部を進展し,球晶に衝突すると進路を変える性質が

あるため,球晶分布状態まばらよりも球晶分布状態 飽和のほうが進展が困難なため絶縁破壊電圧が高く なっているのではないかと考えられる。

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(b)水トリー

図6発生電圧と析出温度の関係

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5.2球晶と水トリーの関係

球晶が水トリーに及ぼす影響を調べたところ図8

のように水トリーの進展方向に球晶がある場合,水

トリーは球晶に衝突後分岐を起こし,球晶を避けて

進展した。これは球晶部の密度が高く電気的に強い

ため水トリーは球晶の中に入り込まず避けるように 進展していくものと考えられる。また,水トリーは,

電気トリーに見られるような細かな分岐がなく,水 トリーの終端付近では放射状に交わるようにして進 展していることがわかる。

電気トリー太さは針電極先端付近で約3.5"m,

電気トリーの終端付近で2〃mなのに対し,水トリー 太さは水電極先端付近が最も太く約16"mで,水

トリーの終端付近の太さは,約4〃mとなり,電気 トリー太さより水トリー太さの方が太いことがわかっ た。

(a)電気トリー

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(b)水トリー

絶縁破壊電圧と析出温度の関係 図7

(4)

柳原昌輝・柏谷順洋

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図10析出潟度118℃における試料

(球晶分布状態まばら)

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図8球晶と水トリーの関係

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5.3 トリーの進展速度と球晶分布状態の関係 5.3.1 球晶分布状態がまばらの場合

印加時間に対するトリー長およびトリー進展速度 の関係を図9に示す。 このグラフは118。C(球晶分 布状態まばら)に析出した試料である。作製した試 料の一例を図10に示す。また,印加後27秒, 印加後 28秒, 印加後39秒の画像を図11(a),図11(b),図ll (c)に示す。図9より, 印加時間が27秒を過ぎたあ たりでトリーが発生し,一気に約300"mまでのび,

その後39秒あたりまで停滞し, 40秒で絶縁破壊を起 こしている。また, トリー進展速度においては, 28 秒のとき約300"m/sと最も早く, その後はだんだ ん減速している。また,図9と, 図11(b)印加後 28秒, (c)印加後39秒の画像より, トリー長が停滞 している間は, トリーが球晶にぶつかり,分岐して いっていることがわかる。

弱 ‑WX.l" 1 11 (a)印加後27秒の画像

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(b)印加後28秒の画像

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図9 トリー長・進展速度と印加時間の関係

(球晶分布状態まばら) (c)印加後39秒の画像

(5)

5.3.2球晶分布状態が飽和の場合

100。C(球晶分布状態飽和)に析出した試料の印 加時間に対するトリー長およびトリー進展速度の関 係を図12に示す。作製した試料の一例を図13に示す。

また, 印加後36秒, 印加後41秒の画像を図14(a), 図14(b)に示す。図12より, 印加時間が36秒を過 ぎたあたりでトリーが発生し, 39秒までで約650"m まで伸びている。その間トリー進展速度は, 37秒の とき約80"m/s, 39秒のとき約220"m/sと加速し ていることがわかる。その後42秒あたりまで停滞し,

43秒で絶縁破壊を起こしている。その間トリー進展 速度は減速していることがわかる。これらと,図13, 図14(b)印加後41秒の画像より, トリ一発生後は ボイドなど電気的強度が低い部分をゆっくりと進展 し,分岐するまでは加速する。電気的強度が高い部 分に接触し分岐する際には球晶分布状態がまばらの ときと同様に, トリー長が停滞し, トリー進展速度 は減速していることがわかる。

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(a)印加後36秒の画像

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(b)印加後41秒の画像 図14各時間の分割画像

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5.3.3球晶分布状態がなしの場合

150。C (球晶分布状態なし)に]

150。C (球晶分布状態なし)に析

43

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41

出した試料のト リー長と印加時間について図15に示す。作製した試 料の一例を図16に示す。また, 印加後40秒, 印加後 48秒の画像を図17(a),図17(b)に示す。図15より,

印加時間が47秒を過ぎたあたりでトリーが発生し一 気に絶縁破壊に至っている。

図12 トリー長・進展速度と印加時間の関係

(球晶分布状態飽和)

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図13析出温度100℃における試料

(球晶分布状態飽和)

図15 トリー長と印加時間の関係

(球晶分布状態なし)

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(6)

柳原昌輝・柏谷順洋

リー太さの関係をグラフにした。グラフより, トリー 太さはトリー長が長くなるにつれて細くなる傾向が あることがわかった。

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図16析出潟度150。Cにおける試料

(球晶分布状態なし)

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図18球晶分布状態まばらにおける水トリー

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(a)印加後40秒の画像

図19分岐前と分岐後1 .分岐後2の関係

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(b)印加後48秒の画像 図17各時間の分割画像

図20 トリー長とトリー太さの関係

表2 トリー長とトリー太さの関係 トリー長とトリー太さの関係

5.3

トリー太さ["m]

分岐後1 分岐後2

45 47

62 26

30 37

49 24

22 19

トリー位置

[Lzm]

トリー長とトリー太さの関係について,球晶分布 状態まばらの試料を用いて調べた。そのとき用いた 試料の一例を図18に示す。また, その試料における トリー長とトリー太さの関係を表2に示す。分岐後 1,分岐後2については図19に示す。表2より,水 トリーの分岐は,分岐前のほうが太く,分岐後のほ うが細い。また,必ずしも分岐前の太さは,分岐後 1,分岐後2の太さを合わせた太さに等しいわけで

分岐前

96

78

47

65

31

12

11

①|②|③|④|⑤|⑥|⑦|⑧ 馳一砥一汕一那一卿一皿一皿一脛

(7)

6. 結言 速していく傾向にあることがわかった。球晶分布状

態飽和の場合, トリ一発生時は約80"m/sで, そ の後約220"m/sまで加速していき, その後減速し

ていく傾向にあることがわかった。球晶分布状態な しの場合, トリー発生直後,絶縁破壊することがわ かった。

高分子絶縁材料であるポリプロピレンの試料にお

いて,短時間破壊試験法により水トリーを発生させ た。その後パソコンによる動画処理で試料に発生し た水トリーの発生電圧,絶縁破壊電圧, トリー進展 速度, トリー長さ, トリー太さ等について調べ,球 晶分布状態によるトリーイング劣化現象に与える影 響を調べた。その結果を要約する。

(4)水トリーにおけるトリー太さは, トリー長が32

〃mのところで96"m, トリー長が920"mのとこ

ろで31"mと, トリー長が長くなるにつれて細く なる傾向があることがわかった。水トリーの分岐は,

分岐前のほうが太く,分岐後のほうが細いことがわ かった。

本研究では高分子絶縁材料における球晶と水トリー の関係について,短時間破壊試験を行ってきたが,

今後は長時間破壊試験における球晶と水トリーの関 係についても研究を進めていきたい。

(1)水トリーにおける発生電圧は100℃で7.05kV, 118℃で7.04kV, 150℃で8.31kVであり,絶縁破壊 電圧は100℃で8.17kV, 118℃で7.39kV, 150℃で 8.35kVであった。これに対し電気トリーにおける 発生電圧は100℃で7.59kV, 118℃で8.35kV, 150℃

で9.07kVであり,絶縁破壊電圧は100℃で8.77kV, 118℃で9.3kV, 150℃で10.86kVであった。これよ り,水トリーにおける発生電圧,絶縁破壊電圧は電 気トリーに比べて低いことがわかった。また,水ト

リーにおける発生電圧,絶縁破壊電圧は球晶分布状 態飽和よりも球晶分布状態まばらのほうが低いこと がわかった。

7. 参考文献

(1)絶縁材料トリーイング専門委員会

「有機絶縁材料のトリーイングについて−樹枝 状放電劣化の調査と研究一」電気学会技術報 告,第100号, (1971)

(2) トリーイング劣化基礎過程調査専門委員会

「高分子絶縁材料におけるトリーイング劣化の 基礎過程」電気学会技術報告,第674号,

(1998)

(3)柳原昌輝,吉村昇*,能登史敏*¥

.「球晶中の水トリーについて」電気学会放電・

誘電・絶縁材料合同研究会, ED‑93‑75,DEI‑

93‑92, pp.37, (1993)

(窯秋田大学, **八戸工大)

(4)吉田一秋

「高分子材料中の球晶と水トリーの画像処理」

秋田高専卒業研究報告書, (1992)

(5)池端秀雄,松田直也

「トリーイング劣化現象に対する結晶化度の影

、 響」秋田高専卒業研究報告書, (2000)

(2)球晶が水トリーの進展方向にある場合,水トリー

は球晶に衝突後,球晶を避けるように分岐を起こし 進展した6また,水トリーは球晶内部に入り込まず 球晶界面,球晶外の非晶質を進展していることがわ かった。また,水トリーは,電気トリーに見られる ような細かな分岐がなく,水トリーの終端付近では

放射状に交わるようにして進展していることがわかっ

た。電気トリー太さは針電極先端付近で約3.5"m,

電気トリーの終端付近で2〃mなのに対し,水トリー 太さは水電極先端付近が最も太く約16"mで,水 トリーの終端付近の太さは,約4〃mとなり,電気

トリーより水トリーの方が太いことがわかった。

(3)水トリーにおける進展速度は球晶分布状態まば

らの場合トリ一発生時は約300"m/s, その後は減

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