小費商業の襲展と購買力
服 部 政
目次
緒一︑購買力とその測定
三︑購買力構成項目の嚢展と購買力
イ︑入口と購買力
ロ︑所得と購買力
三︑小萱商業の獲展と購買力
イ︑百貨店の嚢展と購買力
ロ︑連鎮店・漣信販萱店の獲展と購買力
結
緒
十八世紀の後牛から二十世紀の初頭に至る約二世紀闇の工業生産組織の偉大なる護展は︑其の内部的事情︑
即ち︑主として生産技術上の攣革によつて生じたのである︒然るに︑十九世紀後牛から現代に亘つて行はれつ
玉ある配給組織の攣革は.配給組織の内部的事情の攣化によつて惹き起されたと言ふよりは︑寧ろ外部的事情
の憂化によつて惹き起された部分が多い︒配給組織の攣革を惹き起させた外部的事情の憂化とは主としてその
杜會の生産組織及び消費部面の攣化是れであつて︑此の黙が配給組織の獲展に特有な一つの特異性である︒も
・ともと配給組織は︑生産組織と消費部面との蓮絡を主要任務とするものであるから︑此の爾極の生産組織及び
泊費部面の攣革によつて影響を受け︑此の爾部面の獲展によつて獲展することは容易に理解し得る︒
り今︑配給組織を假りに卸費組織と小費組織とより成るものとすれば︑其の爾組織は生産︑消費の爾部面から
如何なる影響を︑如何なる程度に受けるであらうか︒概括的に言へば︑卸萱組織は直接生産組織に接燭して生
産物を小費組織に配給するを職能とするから︑生産組織の事情によつて影響される所が極めて多い︒此れに反
して小費組織は直接消費部面に接鰯して︑消費部面の要求を充すべき商品並にサービスを撰揮︑提供するを任
務とすることから︑より多く消費部面の影響を反映せねばならないものであると言ひ得られよう︒然しながら
此の事は小費商業組織が生産組織の攣化によつて起されつ曳ある攣革を否定する.ものではない︒即ち︑生産組
小萱商業の爽展と購買力四三九
1)P.D.Converse,TheElementsofMarketing.Ig34P・302・ 同 書 に 現 は れ
て ゐ る通 りCensusofDistributionIg29」 こ於 てlt卸 商(wholesaler)葎 規 定
し てnonretailerの す べ て な 意 味 す る 。 即 ち 直 接 消 」 費 者 に 接 す る 配 給 組 織
に 小 責 組 織 で あ り,そ れ 以 外 の す べ て の 配 給 組 織 は 卸 費 組 織 と 解 さ れ ろ。
四四〇
織特に工業組織の大資本による大規模化叉は集申化︑叉特に工業生産の軍純化(︒︒剛暑藍§冨)︑及び標準化
(切け騨昌画9円山一N麟ρ一〇昌)が共の生産物たる商品を通じて聞接に小費商業組織に重大なる攣化を齎らしつ曳あることは
めの顯著なる事實である︒同時に︑他面消費部面の攣革が小費商業組織に重大なる攣化を與へつ﹂あることも認め
ねばならない︒然らば︑消費部面の如何なる要素が最も著しい影響を小費商業組織に與へるのであるか︒
パイルは言ふ︑﹁ある商品の市場を決定する要素の研究は次の二つの考慮を含んでゐる︒即ち︑(一)入々
の購買能力(夢竃蔓oh島①ロ8巳①け︒ぴξ)と︑(二)商品或ひはサービスに封する欲求又は必要(島①昌⑦a︒H
牙ω冨ま同昏①筒&自20円︒︒窪言︒①)である︒よしそれが潜在的であらうとも︑現實的であらうとも︒﹂と︒
此の購買能力とは人々の購買力(㌘目冨匂・ぎαq蛸︒蓄目)であり︑欲求とは何虚で︑何故に︑何品を欲するかと言
ふ人々の購買慣習(げ身言じq訂耳)である︒即ち︑配給組織を攣化させる消費部面の事情とは︑此の二要素
購買力と購買慣習の攣化に外ならない︒配給組織中︑特に消費部面と直接に結び付く小費商業紐織は︑殊
に此の二要素の攣革によつて墾化することが多いのである︒
消費部面に於ける購買力と購買慣習の攣化が如何に小費商業組織に影響を及ぼすものでぜあるかを究明せんと
する筆者は︑既に前々號(商學討究第十雀・申冊)に於て購買慣習の攣化が小費商業組織特に︑其の経螢形態
に如何なる攣革を生ぜ七めたかを概括的に考察したから︑鼓では他の要素たる購買力の獲展が小費商業組織に
及ぼす影響を考へて見たいと思ふのである︒勿論此の二要素は相互に密接に關聯するので︑即ち︑何塵で︑何
2)II.F.Holtzclaw,TheI)rincipleofMarketiDg,Ig35p.463,Vaile&Slags‑
vold,MarketOrganization(河 原 茂 太 郎 繹5「7・ 一 一 一538頁),Conve「se・oP・cit・ ・
P.127・
3)∫.F.Pアle,Ma・keti・gPrinciples・g31p・28・
程︑何品が欲求されるかは何程の購買が可能であるかに關聯するのであるから︑爾者の相互依存の關係の下に
於てのみ全面的に消費部面よりする小費商業組織の獲展を究明し得るのである︒だが︑敏では共れへの一階梯
として問題を專ら購買力が如何なる影響を小費商業組織に與へたかに限る︒而して︑本稿に於ては︑此の問題
の解明を米國の資料に基いて行はんとするのである︒
國︑購買力とその測定
先づ鼓に用ふる購買力(雰H臼凱コσq男︒壽同)とは如何なるものであるかを規定してか﹂らねばならない︒普
通に購買力と云へば所得の一部分であつて直接消費に用ひられる部分を指すのである︒而して︑所得(ぎ8ヨo)
とは高田博士によれば︑﹁これを貨幣維濟に就て見る限り︑絡局的に獲得せられたる︑云はゴ主燈の治費‑1任
意庭分1にみて得るところの一定貨幣量(從ひて財の一定量であるが)である︒﹂此の所得は別れて維濟的所
得と経濟外的所得となる︒而して︑経濟的所得とは﹁すべて費買の道行によりて︑從ひて費買の主鎧によりて
わ獲得せられるものである︒﹂に封して︑経濟外的所得とは﹁費買の道行によることなく︑受領せらる﹂ものであ
る︒L此れを具盤的に云へば︑﹁前者は生産財の贋格の形式に於て入手せらる﹂利子︑勢銀など︑及び生産財と
生産物との費買の後︑企業者の手に淺留するところの残飴所得としての企業利潤などである︒又此れに封して
小萱商業の獲展と購買力四四}
1)高 田 保 馬,経 濟 學 新 講,第 四 巻
2)同 上
分配 の理論8頁o
四四二
の國家︑自治饅︑叉は公共團膿より受くる俸給︑手當の如き寄附贈與による牧入の如きものである︒﹂
所得とは以上の形式である経濟主龍の手に絡局的に入手せられる玉もの︑現に費消せられすとも︑費消せら
れ得る性質のものであ歓︒L此の意味の所得はマルクスの言葉を籍りて云へば︑﹁枇會の購買力﹂︑である︒即ち
杜會の購買力とは﹁商品債格の総額︑すべての既製生産物の総債値︑即ち︒+<+ヨ(不攣資本プラス可攣資
あ本プラス剰除債値)に等しく︑そしてcは不攣資本の利用された部分のみと解繹せねばならぬ︒﹂
斯る所得は︑大膿二つに別れ直接人的欲望の充足のために消費せられる部分と蓄積に用ひられる部分とにな
る︒而して鼓に謂ふ所の購買力とは前者の意味に用ひるのである︒マルクスの﹁杜會の清費力﹂が是に當る︒
即ち︑マルグスは杜會の消費力といふ言葉を︑﹁第一部門の商品に封する需要︑即ちく+(Rロー満)1可攣資本の
額に加ふるに︑剰飴債値のうち蓄積に用ひられる額を差引いて︑ブルジヨアジーの個入的要求の満足に用ひら
のれる部分を以てしたものーによつて表はされる治費品に封する需要の意味に解してゐる︒﹂からである︒
購買力をか﹂る有効購買力(田臨8身︒℃霞︒冨︒・写σq蛸︒毛&と解し︑更に之を杢消費口聞に封する一國全罷の有効
購買力の意味に用ひるとすれば︑斯る購買力は経濟歌態の攣化景氣の攣動‑ーによつて攣動する︒だが︑
その攣化には年々の攣動と長期間に亘る攣動とがある︒而して︑今購買力の攣化が小萱商業組織に如何なる影
響を與へるかを問題とする場合には︑專ら購買力の長期に亘る攣化のみを主として取扱ふのである︒即ち︑年
々の購買力の攣動はこれを抽象して平常の年の購買力と規定し︑此れが長期に亘る攣動の傾向が如何に小費商
同 上8‑lg頁o
同 上tO頁Q
「資 本 論 」研 究(マ ル 〃 ス 記 念 論 文 集)マ ル 〃 ス 恐 慌 理 論 と そ の 杜 會 フ ア シ ス ト的 歪 曲 オ イ ゲ ン ・ ヴ ア)b・ガ314頁 。
上同
))))34戸)6
業組織に影響するかをたつねるものである︒
叉︑普通購買力と云ふ時に或る特定の商品の購買力︑叉は或一地域内の購買力を指す場合もあるが︑蝕で軍
に購買力と云ふ場合には常に消費晶一般に封する一國全膿の購買力の意味に用ひること﹂する︒
然らば︑斯る購買力は一艦如何なる項目から成り立つて居るであらうか︑而かも其の質的並に量的攣化を如
何にして測定し得るかを考へる必要がある︒なぜなら購買力を構成する各項目の︑從つて亦全饅としての購買
力の質的︑量的攣化を具燈的に把握して始めてこれと小費商業組織との現實的なる關聯を考へ得るからであ
る︒此れがためには從來屡々行はれて居る所謂市場調査(竃母冨け閃①ω①母9)叉は市場分析(冒薗蒔9>壼蓄芭
の方法を籍りなければならない︒だが注意を要するのは︑是等の調査は殆んど全部が調査を行ふ主禮の経螢上
の目的を以つて行はれてゐることである︒從つて各経螢主禮の自己商品の購買力を全國を数地域に分けて︑そ
の地域内の購買力を調査したものである︒然しながら此の調査に用ひられる方法は︑一鷹吟味を加へれば一般
的購買力の項目の決定並びにその測定に役立つのである︒
今︑市場調査のうち購買力の測定具龍的には購買力指数算出に用ひられてゐる主なる方法を吟味して見よ
㍗
ホウアードによると︑消費品購買力指数の測定方法として興味のあるのは大艦吹の五つの群に別かれてゐ
る︒
小質商業の護展と購買力四四三
7)H.S.Howard,ConsumerPurchas1ng‑PowerIndices, Reviewvol.XINo.IIg320ct.),PP.II5‑lIg・
(HarvardBusiness
四四四
一︑輩純な一個の項目叉は關聯する項目の一組︑又は一群を基礎とする購買力の指歎︑例へば家庭電話の分
布︑雑誌又は雑誌群の獲行高︑工業勢働者所得指歎等である︒然しながら此の軍純な指歎のみによつて一般購
買力指激を得ようとする方法は重大な障害に面せざるを得ない︒例へば家庭電話の分布によつて購買力指数を
確めるとするとシカゴでは家庭の六ニパーセントが電話を有するが︑フイヤデルフイヤでは僅か三七パーセン
トの家庭がこれを有するに過ぎない︒亦イリノイ州はペンシルベニア州より五十三萬六千戸の戸数が少ないに
拘はらす二十七萬個のより多くの電話を有する︒難誌の獲行高はその諦者の種類年齢︑及教養程度によつて異
るし︑叉嚢費者の販費術によつても著しく異る︒叉︑工業勢働者の所得のみを以つてする方法も亦同様で︑斯
る輩純な指数のみを以ても一般購買力指敷となすことは出來ない︒要するに︑此の方法は特殊なる場合をのぞ
く外は疑はしい方法であつて探用し得られない方法である︒特殊的な場合とはフオードの自働車部分品の購買
力は自働車のそれから測定し得らる玉場合︑叉は︑ラヂエーターの購買力が建築藪によつて測定されるが如き
の場合である︒(調査の結果によればラヂエーターの獲逡はその時の建築指数と同傾向を辿る︒)
二︑家計豫算に示された生活費の詳細な研究を購買力指数の基礎とする方法である︒此の各家計の生活費の
ド研究は︑一國全燧の家庭に亘つて調査されたものではなく︑或る特定の代表的家庭を撰揮して︑各戸の大きさ
(人藪)及び所得の大小によつて異なる生活費の相違を示したものである︒從つて︑此れは一般生活様式の刻々
の攣化によつて異るものであり︑而かも都市と田舎とでは自から差異を生する︒要するに現在に於ては此の生
8)H.B.Killough,TheEconomicsofMarketing,p.407.