音楽科学習指導要領における「日本の音楽」の変遷 (2)
― 昭和43年 (小) から53年 (高) の改訂までの分析的検討を通して ―
佐 川 馨
Transition of Japanese Music in the Course of Study for music(part2):
Analytical Review of Course of Study for Music from1968to1978
Kaoru SAGAWA
The purpose of this research was to investigate the transition of "Japanese Music" in the "Course of Study for Music" . This paper analyzed how the Course of Study had been revised between the one for ele- mentary school in 1968 and the revised one for high school in 1978. This research presented two findings.
First, every time the Course of Study was revised, the importance of learning "Japanese music" was em- phasized, which led to the development of the common teaching materials and the publication of relevant guide books. Second, if the teachers themselves do not appreciate "Japanese Music", the teaching of
"Japanese Music" will be neither developed nor matured. It is important to reconfirm the idea and the meaning of the teaching of the other areas of music education as well as the teaching of "Japanese Music".
And it is significant to consider the contents of teacher training.
Key words:Japanese Music,Course of Study for Music
1 はじめに
第1報においては,学習指導要領における日本の音楽 の変遷を,〈第一次〉昭和22(1947)年の試案から〈第 三次〉同 35(1960)年の高等学校の改訂までの流れの 中で分析,考察した1。その結果,戦後の混乱期におい て,しかも明治の洋楽一辺倒の時代の影響が色濃く残る 音楽教育思想の最中にもかかわらず,「日本の音楽」は 自然な形で学校音楽に取り入れられ,改訂の度に充実・
発展をしてきた足跡が確認された。
たとえば,〈第一次〉昭和22年の『学習指導要領(試 案)』は,徳性の涵養を目指すという戦前の音楽教育観 が転換され,「音楽美の理解・感得を行い,これによって 高い美的情操と豊かな人間性とを養う」2ことを目指し たものであるが,その目標を具現化するためのカリキュ ラム構成の中での日本の音楽の取り扱いは,戦後の学校 音楽教育の再出発の道標の一つとして最善のものであっ たといえよう3。また,〈第二次〉の小学校の改訂では,
小学校第1,2学年の歌唱領域の教材として「日本音階 によるもの」と示されるなど,早い段階からの導入がみ られた。さらに,中学校,高等学校では「わらべ歌」と いう用語が初めて用いられたり,鑑賞教材として民謡が
多数示されるなど,自国の音楽の理解を基盤とした国際 理解という視点からの内容構成,教材配当が特徴的であ る4。そして〈第三次〉では,共通教材の設定により日 本人の手による歌唱教材が多数導入されるとともに,小 学校5,6学年から中学校にかけての邦楽,民謡,雅楽 などの鑑賞教材が,日本の音楽の授業実践の推進に大き な役割を果たしたのである5。
このように,改訂を重ねるごとに日本の音楽の取り扱 いは重視され,内容の取扱いが充実してきたことが分か る。
本稿では第1報に引き続き,表1の分析区分により,
<第四次>昭和43(1968)年の小学校の改訂から〈第五 次〉同53(1978)年の高等学校の改訂までを取り扱う。
主たる資料は,学習指導要領の解説,指導書とし,日本 の音楽に関連する記述の有無および内容についての分析 と考察を行う。
学校音楽における日本の音楽の取り扱いは,〈第四次〉
の改訂が最も充実したものといわれるが,〈第一次〉か らの流れ,また〈第五次〉への変遷の道筋を辿ることに よって日本の音楽を学校教育で取り扱うことの理念や意 義が再確認されるであろう。
表1 分析の区分
なお,本稿における日本の音楽は,「我が国の古典音 楽および現代作曲家による邦楽器のための作品,さらに わらべうたや民謡,郷土芸能を含むもの」6と定義し,
分析・考察を進めるものとする。
2 [第四次]昭和43 (1968)年の小学校の改訂から45
(1 9 7 0) 年の高等学校の改訂まで 2.1 改訂の背景
昭和 35 年 12 月,第二次池田(勇人)内閣によって国 民所得倍増計画が閣議決定され,国の教育政策として高 度経済成長を支えるための人的能力の開発が推進される こととなった。それにより,中等教育の完成と,科学技 術者,技能者の増員及び教育の充実に向けての長期経済 政策に基づく教育制度・内容の大規模な再編計画が進め られた7。
文部省では同37(1962)年11月5日に教育白書『日本 の成長と教育』8を発行し,同38年には中央教育審議会 が「後期中等教育の拡充整備について」9を答申するな ど,経済政策の推進にともなう教育施策を展開した。33 年の答申では,道徳の徹底と基礎学力の充実を掲げてい たが,この答申では基礎的理解を第一とし,第二に,生 活習慣や態度・健康・体力などの「調和と統一」のある 人間形成が求められることとなった。そして同40年6月 14 日,文部大臣が教育課程審議会に対して「小学校・
中学校の教育課程の改善について」諮問し,第四次学習 指導要領改訂の具体的な取り組みが始まったのである10。
2.2 昭和4 3 (1 9 6 8) 年の小学校の改訂内容の分析 2.2.1 「基礎」領域における日本の音楽
小学校音楽科においては教科の性格,役割をより明確 化するために,総括的目標として「音楽性をつちかい,
情操を高めるとともに,豊かな創造性を養う」11が掲げ られた。「音楽性」は「音楽的諸能力を総括したもの」
(指p.7)12として,ここで初めて用いられた用語である。
学習領域は,鑑賞と表現に共通する基礎的内容をまとめ た「基礎」が新設され,基礎,鑑賞,歌唱,器楽,創作 の5領域となった。そして,総括的目標を達成するため に鑑賞,基礎,表現,生活化の四つの具体的目標が設定 された。中でも基礎の目標は教科の性格や役割が明確に 表されている。「音楽的感覚の発達を図るとともに,聴 取,読譜,記譜の能力を育て,楽譜についての理解を深 める」(指 p.10)と示され,和声の聴き分けや聴音など のソルフェージュ的学習活動によって音楽的感覚の発達 を目指したものである。
基礎領域においては,いずれの学年でも(2)「旋律に 関する次の事項を指導する」内容として,日本の音楽に かかわる記述がみられる(表2)。第1学年では,事項 ウ「長調,短調,日本旋法の旋律を聞き分けること」
(指p.17)と示されており,「わらべうたに親しみ,その 感じが長調や短調の旋律の感じと違うことに気づく」
(指 p.17)などの学習活動により,調性感を育てること を目指している。
表2 4 3年 (小) の「基礎」領域における日本の音楽
第2から第3学年でも事項ウとして同じ表記がされて おり,「長調,短調,日本旋法の旋律を,習った歌の仲 間として感じ分ける」(第2学年,指p.31),「 長調,短 調,日本旋法の用語を知って,その旋律を聞き分けたり,
調の変化を聞きとったりする」(第3学年,指 p.47)な どの学習活動によって調性感を育てる例が示されてい る。
第4学年では,旋律の聞き分けに加えて視唱・視奏や 旋律の写譜が盛り込まれ,「ハ長調,イ短調および同じ 記号で書かれた日本旋法の旋律を,階名で視唱したり,
笛やオルガンなどで視奏したりする」(指 p.62)ことや
「陽旋から陰旋に,または陰旋から陽旋に変わった歌を 区 分
第一次 第二次 第三次
第四次
第五次 第六次 第七次 第八次
昭和22年 昭和26年 昭和31年 昭和33年 昭和35年 昭和43年 昭和44年 昭和45年 昭和52年 昭和53年 平成元年 平成10年 平成11年 平成20年
1947 1951 1956 1958 1960 1968 1969 1970 1977 1978 1989 1998 1999 2008
内 容 学習指導要領(試案)発行 小学校・中学校・高等学校の改訂 高等学校の改訂
小学校・中学校の改訂 高等学校の改訂 小学校の改訂 中学校の改訂 高等学校の改訂 小学校・中学校の改訂 高等学校の改訂
小学校・中学校・高等学校の改訂 小学校・中学校の改訂
高等学校の改訂
小学校・中学校・高等学校の改訂 年 度
学年 1 2 3
4
5
6
(2)旋律に関する次の事項を指導する
ウ 長調,短調,日本旋法の旋律を聞き分けること ウ 長調,短調,日本旋法の旋律を聞き分けること ウ 長調,短調,日本旋法の旋律を聞き分けること イ ハ長調,イ短調およびそれらと同じ調号で書か
れた日本旋法の旋律を視唱・視奏すること。ま た,視唱・視奏した旋律を写譜すること ウ 長調,短調,日本旋法の旋律を聞き分けること イ へ長調,ニ短調およびそれらと同じ調号で書か
れた日本旋法の旋律を視唱・視奏すること。ま た,視唱・視奏した旋律を写譜すること ウ 長調,短調,日本旋法(陰,陽)の旋律を聞き
分けること
イ ト長調,ホ短調およびそれらと同じ調号で書か れた日本旋法の旋律を視唱・視奏すること。ま た,視唱・視奏した旋律を写譜すること ウ 長調,短調,日本旋法(陰,陽)の旋律を聞き
分けること
歌い比べて,感じの違いを味わう」(指 p.62)などのソ ルフェージュ的な学習活動の例が示されている。
第5,6学年では,旋律の聞き分けの日本旋法が陰旋 法,陽旋法と明記されている。学習例は「ヘ長調,ニ短 調および同じ調号で書かれた日本旋法」(第5学年,指 p.79)「ト長調,ホ短調,同じ調号で書かれた日本旋法」
(第6学年,指 p.96)の旋律を,階名で視唱したり,笛 やオルガンなどで視奏したりすることや「陽旋法と陰旋 法の慣用句,音列,終止音の違いなどをとらえて,旋法 を聞き分ける」(指p.79)などが示されている。
以上,基礎領域だけでも,この改訂において日本の音 楽の取り扱いが大きく前進,充実したことが分かる。す なわち,第1学年からわらべうたや長調,短調の聞き分 けに取り組んだり,第4学年からは器楽や歌唱とも関連 させたソルフェージュ的な学習活動に取り組んだりする ことによって,西洋音楽,日本の音楽の偏りのない調性 感を養うことを目指しているのである。
2.2.2 「鑑賞」領域における日本の音楽
鑑賞領域においては,いずれの学年でも(3)「聞いた り演奏したりすることを通して,次の音楽の種類や演奏 形態に関心をもたせる」ための事項として日本の音楽に かかわる記述がみられる(表3)。
表3 4 3年 (小) の「鑑賞」領域における日本の音楽
第1学年から第3学年までは,事項ア「いろいろな種 類の声楽曲(わらべうたを含める。)」(指 p.19, 34, 50)
と示され,わらべ歌の鑑賞を取り入れることにより,基 礎領域の旋律の指導との関連が図られている。
第4学年では,事項の(2)に「チェロ,オーボー,
ホルンおよび箏の特徴を理解し,その楽器のもつ特有の 音色を聞き分ける能力を育てる」(指 p.65)と示されて おり,和楽器と洋楽器,発音原理の違いによる聞きわけ の比較が注目される。また,この学年から「わらべうた を含める」という表記がなくなっているが,指導書では 声楽曲の分類の一つとしてわらべうたも含めるとしてい る13。
第5学年からは日本の音楽の取扱いが急増した印象を 受ける。(2)「楽器や声の種類とその特徴を理解させる」
ための事項イとして「箏,三味線,尺八およびその他の 日本の民俗楽器」(指 p.82)と示されている。ここでい う民俗楽器とは,「それぞれの地方で実際の生活に生か されている楽器について扱う」(指 p.82)とした上で,
「レコードの選択教材と関連させ,祭り太鼓,神楽笛,
ささら(四つ木)その他,自分の県の民謡や踊りに関し たもの,能楽における笛,小鼓,大鼓
おおかわ
,太鼓,雅楽にお ける三管(龍笛,篳篥,笙),三鼓(鞨鼓,鉦鼓,大太 鼓),和琴,琵琶などの中から,直接間接にふれられる ものを選んで扱う」(指 pp.91-92)と,和楽器の体験や 郷土の伝統音楽をも含めた形で述べられている。
(3)「音楽の種類や演奏形態について理解させる」た めの事項アでは,「いろいろな種類の声楽曲(日本の民 謡を含める。)」(指 p.82)と,わらべうたから発展して 民謡の取り扱いについて示されており,「日本の民謡に ついては,全国的に有名な民謡もさることながら,自分 の地方の民謡についても扱うことが望ましい」(指p.83)
として,郷土の音楽の取り扱いを求めている。
第6学年では,(2)の事項イとして「日本の楽器およ び世界のおもな民俗楽器」(指p.99)と示されているが,
ここでいう民俗楽器については,「民俗楽器といっても,
今日では一般化しているものも少なくないが,このよう なものは,その源(発達した国)にもふれ,その国の民 謡とともにとりあげ,視野を広くとらえる芽を育てるよ うに配慮する。具体的には,マンドリン,ギター,ウク レレ,バラライカ,バンジョー,バックパイプ,胡弓な どがあげられる」(指p.108)と解説されており,第5学 年の和楽器の学習から諸民族の音楽の理解や音楽観の拡 大を目指すものへと発展させることを求めている。
表4は鑑賞共通教材の一覧であるが,日本の音楽に関 連する教材は第6学年の筝曲《六段》のみであり,昭和 33 年の改訂と比較しても日本の音楽の取り扱いについ ては何の変化もみられない。また,指導事項との関連か ら捉えても手薄な印象は否めない。ただ,表5に示した ように指導書では付録として学年別鑑賞教材例が示され ており14,その中には日本の音楽に関連するものも含ま れている。また,各都道府県の代表的な民謡,子もり歌,
わらべうたを2頁にわたって紹介しており,授業を展開 学年
1 2 3
4
5
6
(3)聞いたり演奏したりすることを通して,次の音 楽の種類や演奏形態について関心をもたせる ア いろいろな種類の声楽曲(わらべうたを含め
る。)および器楽曲(描写音楽を含める。) ア いろいろな種類の声楽曲(わらべうたを含め
る。)および器楽曲(行進曲を含める。) ア いろいろな種類の声楽曲(わらべうたを含め
る。)および器楽曲(舞曲を含める。)
ア いろいろな種類の声楽曲(歌曲を含める。)お よび器楽曲(舞曲を含める。)
(2)チェロ,オーボー,ホルンおよび箏の特徴を理 解し,その楽器のもつ特有の音色を聞き分ける 能力を育てる
(2)イ 箏,三味線,尺八およびその他の日本の民 俗楽器
(3)ア いろいろな種類の声楽曲(日本の民謡を含 める。)
(2)イ 日本の楽器および世界のおもな民俗楽器
(3)ア いろいろな種類の声楽曲(日本の民謡を含 める。)
する上で実際に何を教材として用いるかが明確に示され ていることは評価できる。
表4 4 3年 (小) の鑑賞共通教材
表5 4 3年 (小) 小学校音楽学年別鑑賞教材例からの抜粋
2.2.3 「歌唱」領域における日本の音楽
歌唱領域においては,いずれの学年でも共通教材を含 めた歌唱教材の選択にかかわる事項として「調は長調,
短調および日本旋法のもの」(指 p.21, 37, 53, 68, 86, 102)
と示されている。このうち「日本旋法のもの」にあては まる教材は,鑑賞など他の領域との関連から,第1学年 から第4学年まではわらべうた,第5学年から第6学年 までは民謡と類推される。
表6は歌唱共通教材であるが,そのうち日本の音楽に かかわるものは,第2学年の《さくらさくら》,第4学 年の《子もり歌》のみである。33 年の改訂時と同様に 文部省唱歌が中心となっている。
表6 4 3年 (小) の歌唱共通教材
2.2.4 「器楽」領域における日本の音楽
器楽領域においては,いずれの学年でも日本の音楽に かかわる直接的な記述はみられない。打楽器,オルガン,
ハーモニカ,笛(リコーダー)及びそれらによる合奏の 技能を伸ばすことのみが記述されている。しかし,「指 導計画の作成と各学年にわたる内容の取り扱い」では領 域相互の有機的な関連と統合的な取扱いを求めている15。
したがって,鑑賞領域における和楽器の取り扱いや基 礎領域における日本旋法の調性感を育てるための視唱,
視奏などとのかかわりの過程では,民俗楽器などを取り 扱うことも可能であったと思われる。
2.2.5 「創作」領域における日本の音楽
第1学年から第3学年までは,ことばで歌ったり,楽 器で演奏したりしながら「ふしあそび」「ふし問答」を するなどして,創作の予備的活動を通して基礎的技能を 育てることを求めている(指p.24, 40, 56)。
表7 4 3年 (小) の「創作」領域における日本の音楽
「日本旋法を含める」ことについては,たとえば第1 学年では「『ふしあそび』に含められた日本旋法につい ては,この学年では特に重視する」(指p.25),第2学年 でも「『ふし問答』に含められた日本旋法旋律の扱いに ついては,この学年でも特に力を入れることが必要」
(指p.41)と強調した上で,「指導のおさえ」として次の 学年
1 2 3 4 5 6
楽 曲 名 ガボット,おもちゃの兵隊,森のかじや かっこうワルツ,トルコ行進曲,ユーモレスク 組曲「アルルの女」第2のなかのメヌエット,金婚 式,軽騎兵
白鳥,軍隊行進曲,スケーターズワルツ
滝廉太郎の歌曲,歌劇「ウイリアム・テル」序曲,
組曲「くるみわり人形」
六段,組曲「ペールギュント」第1,流浪の民
学年 1
2
3
4
5
6
楽 曲 名 ほたる
自分の県のわらべうた 他県のわらべうた あんたがたどこさ うさぎ
自分の県のわらべうた 他県のわらべうた かごめかごめ 花いちもんめ
自分の県のわらべうた・子もり歌 他県のわらべうた・子もり歌 さくらさくら
この道
自分の県のわらべうた・子もり歌 他県のわらべうた・子もり歌 滝廉太郎の歌曲から!花
②荒城の月
③箱根八里 小鳥の歌
日本の民謡(日本の民俗楽器の演奏を含む。)
「こびき」の中の盆踊り 六段
からたちの花 いろは歌 羊 浜辺の歌
作曲者等 わらべうた わらべうた わらべうた わらべうた わらべうた わらべうた わらべうた わらべうた わらべうた
日本古謡 山田耕筰
滝廉太郎 滝廉太郎 滝廉太郎 橋本国彦 別表参照 小山清茂 八橋検校 山田耕筰 信時 潔 橋本国彦 成田為三
学年 1 2 3 4 5 6
楽 曲 名 かたつむり,月,日のまる
さくらさくら,雪,春がきた
春の小川,もみじ,村まつり 茶つみ,村のかじや,子もり歌 こいのぼり,海,冬げしきおぼろ月夜,われは海の子,ふるさと
学年
1 2
3
4
5
6
(1)即興的に音楽表現しようとする意欲と基礎的技 能を育てる
イ ことばで歌ったり楽器を演奏したりして,ふし あそびをすること(日本旋法を含める。) イ ことばや階名で歌ったり楽器で演奏したりし
て,ふし問答をすること(日本旋法を含める。) ウ フレーズのまとまりに気をつけて,ことばや階
名で歌ったり楽器で演奏したりして,ふし問答 をすること(日本旋法を含める。)
(1)旋律創作の技能を育てる
ア 短い旋律(4小節程度)を,歌ったり楽器で演 奏したりして作ること(日本旋法を含める。) ア 旋律(8小節程度)を,歌ったり楽器で演奏し
たりして作ること(日本旋法を含める。) ア まとまった旋律(一部形式など)を,歌ったり
楽器で演奏したりして作ること(日本旋法を含 める。)
ような例を示している。
この学年では,陽旋法のものを中心に扱う。そして,2 音旋律,3音旋律,4音旋律の各種を目安として扱う。
2音旋律……基音とその長2度下の音,以上の2音によ るもの(終止音が一つ。)
3音旋律……基音とその長2度下の音,それに基音の長 2度上の音,以上の3音によるもの(終止 音が一つ)。基音とその長2度下の音,それ に基音の完全4度下の音,以上の3音によ るもの(終止音が二つ)。
4音旋律……基音とその長2度下の音,それに基音の長 2度上の音,さらに基音の完全4度下の音,
以上の4音によるもの(終止音が二つ)。基 音とその長2度下の音,それに基音の長2 度上の音,さらに基音の完全4度上の音,
以上の4音によるもの(終止音が一つ)。基 音とその長2度下の音,それに基音の完全 4度下の音,さらに基音の完全5度下の音,
以上の4音によるもの(終止音が二つ)。
(文部省『小学校指導書音楽編』1969,p.41)
第4学年からは,(1)「旋律創作の技能を育てる」指 導事項のアとして「短い旋律(4小節程度)」を歌った り楽器で演奏したりして作ること(指p.71),「短い旋律
(8小節程度)」(第5学年,指 p.89),「まとまった旋律
(一部形式など)」(第6学年,指p.105)と発展的に示され ているが,これらの内容は基礎領域や鑑賞領域とも深く かかわるものであり,日本の音楽にかかわる指導内容を 一貫した姿勢で取り扱おうとする工夫がうかがえる。
2.3 昭和4 4 (1 9 6 9) 年の中学校の改訂 2.3.1 目標における日本の音楽
中学校音楽科においては,総括目標として「音楽の表 現や鑑賞の能力を高め,鋭敏な直観力と豊かな感受性を 育て,創造的で情操豊かな人間性を養う」16が掲げられ,
さらに総括目標を達成するために「音楽の表現能力」
「鑑賞能力の伸長」「音楽活動の基礎となるべき諸能力」
「わが国および諸外国の音楽文化への理解と,音楽を生 活化する意欲と態度の育成」についての4項目の具体目 標が設定された。学習領域は,小学校音楽と同様に基礎,
鑑賞,歌唱,器楽,創作の5領域である。
日本の音楽にかかわるものとしては,目標の2「わが 国および諸外国のすぐれた音楽に親しませ,よい音楽を 愛好する心情を養い,音楽が鑑賞できる能力を高める」
(指 p.4),同4「わが国および諸外国の音楽文化を理解 させるとともに,よい音楽を生活に生かし,生活を明る
く豊かにする態度や習慣を育てる」(指p.4)が設定され ているが,特に目標2の「わが国の音楽」については,
特定の地域や時代の音楽ではなく幅広い内容を含むとし て次のように解説している。
「わが国の音楽」といえば,直ちに伝統音楽として 考えられやすい(中略)が,これを基盤として,ある いは発展させて,新たな音楽が,現代日本の作曲家た ちによって創造されつつあり(中略)『新しい日本の 音楽』として教育の場に取り上げることがたいせつで ある17。
しかし,〈第三次〉昭和33年の中学校の改訂では宮城 道夫の《春の海》が鑑賞の共通教材となり,〈第五次〉
昭和 52 年の改訂では小山清茂の《管弦楽のための木挽 歌》が鑑賞の共通教材となっているが,このことがあえ て言及されている〈第四次〉では具体的な教材の設定は みられない。
目標4については,「わが国および諸外国の歴史的ま た民族的な独自性をもつ音楽を理解させる」ことによっ て文化一般に対する国際的視野を広めることを求めてお り,〈第二次〉昭和26年の音楽科の学習を通しての国際 理解という視点が継続されている。
各学年の目標は7項目で構成されており,そのうち第 6項は「民族的音楽および日本の音楽についての指導目 標」(指 p.12)であり,各学年ごとに下記のように発展 的に示されている18。
第1学年
(6)郷土の音楽やわが国および諸外国の民謡,民族音楽 に親しみをもたせる。
第2学年
(6)郷土の音楽やわが国および諸外国の民謡,民族音楽 の特色を味わわせる。
第3学年
(6)郷土の音楽やわが国および諸外国の民謡,民族音楽 の特色を味わわせるとともに,日本の音楽の動向に 関心をもたせる。
その設定理由として「音楽教育の目的のひとつは,西 洋ならびに日本の伝統的な音楽文化の価値を生徒に伝え ることとともに,わが国の新しい音楽文化の創造の素地 を養うところにある。日本の音楽については従来も考慮 がはらわれてきたところであるが,今後はいっそう重視 する方向をとった」(指 p.20)と述べられ,日本の音楽 の取り扱いを重視していくことが明確に示されたのであ る。
2.3.2 「基礎」領域における日本の音楽
全学年において,(2)旋律の指導にかかわる事項のイ で「長音階,短音階および日本の音階における全音と半 音の位置がそれぞれに異なること」(指 p.40, 47-48, 50)
(表8)と示されている。ここでの日本の音階とは,陽と 陰音階をさし,音楽理論としての理解ではなく,音楽の 中から感覚的,感性的にとらえさせることを求めている19。
表8 4 4年 (中) の「基礎」領域における日本の音楽
第2学年の(1)リズムの指導にかかわる事項のイで は,「音の長短の組み合わせと拍子との結びつきによっ て,いろいろなリズム型とリズムフレーズおよび複リズ ムが生じること」(指pp.47-48),また第3学年の同じ事 項のアでは「拍におけるアクセントの位置とその反復の 仕方によって,単純拍子,複合拍子および混合拍子が生 じること。また,拍節的でないリズムがあること」(指 p.50)と示されている。
ここでの「拍節的でないリズム」は第3学年で新しく 加わった文言であり,「特に日本の音楽の中で取り扱わ れる」とした上で,「日本の音楽は,洋楽のホモフォニ ー(homophony)とかポリフォニー(Polyマ マphony)など とならべてヘテロフォニー(heterophony)と解釈され る。日本の音楽では一つの旋律を多人数で演奏していく ことがその演奏のあり方の基調となってきた。したがっ て,特に旋律的な装飾において変化をみ,楽曲全体が緩 急自在の速度とか,伸縮自在の間をもち,いわゆる洋楽 のように一定した拍子,拍に拘束されない自由で拍節的 でないリズムをもった音楽の特質がみられる」20と解説 している。その上で,日本の音楽の特徴の一つである拍 節的でないリズムの指導にあたっては,鑑賞活動と並行 してリズム打ち,リズム唱などの実践を通して感覚的に 理解させることを求めている21。
2.3.3 「歌唱」領域における日本の音楽
歌唱領域においては,「日本の音楽を重視するという 態度の一環」と強調した上で,共通教材に日本民謡が各 学年1曲ずつ配当されている(表9)。
表9 4 4年 (中) の歌唱共通教材
日本民謡は,「日本の音楽に接する手がかりとして,
最も手近で親しみやすい素材」(指 p.59)であり,日本 民謡を鑑賞教材としてだけではなく,歌唱教材とするこ とによって「日本の音楽に接する態度として,受動的な 態度にとどまることなく,自分の声で表現する『歌う』
という実感に訴えた直接的,能動的な受容が期待されて いる」(指p.59)と設定の理由が述べられている。
日本民謡を共通教材として設定するにあたっては,三 つの選定基準が設けられた23。第1は,地域的な配慮で ある。日本の北部からは宮城県の《斉太郎節》,中部か らは富山県の《こきりこ節》,南部からは宮崎県の《か りぼし切り歌》が選ばれた。
第2は,音楽的特徴による類型別配慮である。《こき りこ節》は「全体にリズムが明確であり, ふし回し も明るく簡潔で歌いやすい」。《斉太郎節》は「音域が 広く,全体に躍動的」であり,特に,「曲の途中で一時 的に旋律の感じが変わるという効果が取り入れられてい る」。そして《かりぼし切り歌》は「息の長い牧歌調の 歌で,自由なリズムで歌われる。いわゆる無拍節的であ り , こ の よ う な 歌 に こ ぶ し が よ く 現 れ る 」( 指 pp.60-61)。
第3は,歌詞についての配慮である。「生徒に理解さ れやすく,その内容に,教育上問題がないもの」が選定 の条件の一つとされた。民謡は酒席で歌われたり,猥雑 な内容を含む歌詞も時にはみられたりするので,学校教 育で取り扱うにあたっては,一定の配慮が求められるの である。
2.3.4 「器楽」領域における日本の音楽
小学校と同様に,中学校でも器楽に関する日本の音楽 の取扱いは他の領域に比べて少ない。
第1学年の器楽領域(1)「器楽表現の意欲を高める」
ことの事項イでは,「編成にいろいろなくふうを試みて,
それぞれの効果の違いを味わうこと」(指 p.89)に関連 し,内容の取り扱いの(2)において「和楽器について は,楽曲の性格や生徒の能力に応じて,たとえば箏や打 学年
1
2
3
(1)リズムに関して,拍子,リズムの形態および表 情の変化を感得し理解させる。
(2)旋律に関して,音の高低,音階の特性,フレー ズのまとまり方および音程の特徴を感得し理解 させる。
(2)イ 長音階,短音階および日本の音階における 全音と半音の位置がそれぞれに異なること
(1)イ 音の長短の組み合わせと拍子との結びつき によって,いろいろなリズム型とリズムフレ ーズおよび複リズムが生じること
(2)イ 長音階,短音階および日本の音階における 全音と半音の位置がそれぞれに異なること
(1)ア 拍におけるアクセントの位置とその反復の 仕方によって,単純拍子,複合拍子および混 合拍子が生じること。また,拍節的でないリ ズムがあること
(2)イ 長音階,短音階および日本の音階における 全音と半音の位置がそれぞれに異なること
学年 1 2 3
楽 曲 名
こきりこ節,わかれ,赤とんぼ,子もり歌
斎太郎節
22,サンタ ルチア,夏の思い出,勝利を たたえる歌かりぼし切り歌,花,故郷の人々(スワニー川)
楽器類を用いることはさしつかえないこと」(指 p.187)
と示されている。特に箏については,「『柱』(じ)の移 動によっていろいろな音階を作り出すことができるの で,今後の活用に期待がもてる和楽器の一つ」(指p.187)
としている。
小学校と同様に,領域相互の有機的な関連と統合的な 取扱いの中で,必要に応じて和楽器の使用を期待してい るのである。
2.3.5 「創作」領域における日本の音楽
第1学年では,日本の音楽に関連する記述はみられな い。第2学年でも同様であるが,旋律の創作にあたって 日本の音階を使用した旋律を作った生徒がいる場合の対 応について「日本の音楽は本来単旋律のものであるから,
創作学習では日本音楽の本質である単旋律として取り扱 うほうがよい」(指p.130)と述べられているのみである。
第3学年では日本の音楽に関連する記述はみられない。
2.3.6 「鑑賞」領域における日本の音楽
第1学年の鑑賞領域の(2)ねらいについての事項の イとして「日本の音楽や諸外国の音楽がもつそれぞれの 特質やよさを感じ取って聞くこと」(指p.141)と示され ている。ここでは,「日本の音楽や諸外国の音楽に対し て偏見をもつことなく,広くそれらの音楽が享受できる 基本的な態度の育成」(指p.141)を目指している。また,
(3)鑑賞の理解事項のイとして「日本の音楽には,独特 の演奏形態や表現のしかたがあることを知ること」(指 p.145)と示されているが,ここで日本の音楽の鑑賞指 導にあたっての具体的な指導事項が初めて示されること となった。そして,指導の手がかりとして,2ページに もわたって詳しい解説が載せられている。
共通教材として設定されたのは筝曲《五段砧》,三曲 合奏《四季の眺め》24である(表10)。
第2学年では,(1)鑑賞のねらいについての事項のイ として「日本の音楽や諸外国の音楽がもつそれぞれの特 質やよさを味わって聞くこと」(指p.156)と示されてい る。また,(3)鑑賞の理解事項のイとして「日本の音楽 には,洋楽とは違った形式のあることを知ること」(指 p.157)と示されている。ここでは日本の音楽の形式に ついて,声楽,舞踊,演劇の形式が音楽の形式に与える 影響について解説するとともに,楽曲の形式は器楽曲の 方が捉えやすいとして筝曲《六段》を例に挙げて解説し ている。
共通教材は長唄《小鍛冶》,雅楽《越天楽》である。
第3学年では,(1)鑑賞のねらいについての事項のイ として「日本の音楽や諸外国の音楽がもつそれぞれの特 質やよさを理解し,味わって聞くこと」(指p.168)と示
されている。また,(3)鑑賞の理解事項のウとして「日 本の音楽には,独特な演出法があることを知ること」
(指p.169)と示されている。ここでは日本の音楽におけ る指揮者の役割について雅楽,能楽,長唄や常磐津や清 元を例に挙げて解説するとともに25,男の演奏家に女が 混ざらないことや「ひき語り」「ひき歌い」についても 詳細な解説をしている。共通教材は尺八曲《鹿の遠音》,
義太夫節《木遣の段》26である(表10)。
表1 0 4 4年 (中) の鑑賞共通教材
「指導計画の作成と学習指導」においては,前述のと おり,器楽における和楽器の活用について「和楽器につ いては,楽曲の性格や生徒の能力に応じて,たとえば箏 や打楽器類を用いることはさしつかえないこと」(指 p.187),また,「鑑賞のための資料として,和楽器を用 いてもよいこと」(指p.188)と示され,指導内容に応じ た和楽器の導入の可能性が示唆されている。
指導書の巻末においては,「特に留意すべき学習指導」
の1項目として「日本の音楽の指導」が設けられ27,教 師の心構えから基本的な用語の解説などが 19 頁にもわ たって述べられていることは注目に値する。日本の音楽 の指導について,これほどまでに充実し,かつ詳細に解 説されたことはなく,重視の姿勢が明確に出されている ことが分かる。
さらに,それを裏付けるように昭和 48 年には中学校 音楽指導資料として『日本の音楽の指導』が刊行されて いる。その中では,日本の音楽の種類と特色,音楽理論,
楽器についての豊富な写真や図版とともに詳細な解説が 載せられている。また,実際に学校で授業を行うにあた っての留意事項や指導の実際例が示されるなど,日本の 音楽の実践を確実に推進していく取り組みが国レベルで しっかりと行われたのである。
2.4 昭和4 5 (1 9 7 0) 年の高等学校の改訂 2.4.1 音楽Ⅰにおける日本の音楽
音楽Ⅰでは,芸術科の総括目標である「芸術的な能力 を伸ばし,情操を豊かにするとともに,創造性に富む個 性豊かな人間の形成を目ざす」28を受けて四つの具体目
学年 1
2
3
楽 曲 名
筝曲「五段砧」
,三曲合奏「四季の眺め」,「四季」から「春」,魔王,「アルルの女」組曲第1番,第2 番,チゴイネルワイゼン
長唄「小鍛冶」
,雅楽「越天楽」,小フーガ ト短調,ソナタイ長調K.331「トルコ行進曲付き」,バイオリ ン協奏曲ホ短調,青少年のための管弦楽入門
尺八曲「鹿の遠音」
,「木遣の段」(義太夫節「三十
三間堂」から)
,交響曲第6番「田園」,交響詩「は げ山の一夜」,弦楽四重奏曲「アメリカ」標が設定された。その(2)鑑賞にかかわるものとして
「わが国および諸外国のすぐれた音楽に広く親しませ,
音楽を愛好する心情を養うとともに,鑑賞する能力を伸 ばす」(解 p.11)29,そして態度や習慣にかかわるもの として(4)「わが国および諸外国の音楽の動向を概観さ せるとともに,音楽によって明るくうるおいのある生活 を営む態度や習慣を養う」(解p.12)ことが示された。
目標としては示されたが,音楽Ⅰにおいては,基礎領 域,表現領域のどちらにも日本の音楽に関連する内容は みられず,鑑賞領域で初めて直接的な記述がみられる。
ただし,「 日本の音楽 については,従来ともに目標の 中で,『わが国および諸外国の音楽』とうたってきたよ うに,すでに取り上げてきているもの」(解 p.31)とい う立場であり,直接的な記述はしなくとも取り上げるこ とを前提としている。
鑑賞領域の(1)「いろいろな楽器を通して,音楽鑑賞 の喜びを感得させる」ための事項のエとして「日本の音 楽の美しさに関心をもつこと」(解 p.32),(3)「鑑賞に 必要な理解を得させる」ための事項ウとして「日本の音 楽の演奏形態および声や楽器の使用上の特徴を知るこ と」(解p.34)と示されている。
上記(1)のエについては,特に触れられていないが,
(3)のウについては,「日本の音楽の理解や感得をいっ そう徹底する趣旨から,特に鑑賞に加えられた指導事項」
と強調した上で,「『演奏形態および声や楽器の使用』に ついては,現象的にはたしかにヨーロッパ音楽とは違う ものであるが,これを特別なものとして見るのではなく,
日本の音楽を性格づける特徴としてとらえることが必要 である(中略)日本人の音楽観や感受性に特徴があるも のとして,これをとらえる必要があろう」(解pp.35-36)
と解説している。
この解説はごくあたりまえのことを書いているが,当 時としては,このことをあえて書かなければならない日 本の学校音楽教育の実情があり,解説を加えなくては理 解を得られない教師の音楽観や教材観があったのだろう。
内容の取扱いでは,表現領域の歌唱の指導にあたって の配慮事項のウとして「教材の選択については,わが国 の民謡や現代の作品も積極的に取り上げるようにするこ と」(解 p.38)と示されている。このことについては,
中学校の歌唱共通教材に「日本の音楽を重視するという 態度の一環」として各学年1曲ずつの日本民謡が示され たことを踏まえ,高等学校においても「日本の音楽に接 する態度が受動的なものにとどまらず,自分の声で表現 することにより直接的,能動的な受容が期待される」
(解 p.39)として,中学校,高等学校を通しての民謡を 教材とした日本の声の実践を求めている。
また,器楽の指導にあたっての配慮事項のアとして
「和楽器を取り扱う際には,楽曲の性格や生徒の能力を じゅうぶんに配慮すること」(解p.39)と示されている。
このことについては,「筝などの和楽器を使用すること は,単に楽器に対する関心と理解をうながすだけでなく,
それを通じて日本の伝統音楽を理解する糸口ともなろ う。したがってその取り扱いに際しては,楽曲の性格や 技術的な難易度,そして生徒の能力をじゅうぶんに考慮 しておくことがたいせつであるし,理解をうながすため に和楽器を使用するのか,合奏の中の一楽器として和楽 器を使用するのかなど,ねらいを明確にしておくことが たいせつである」(解p.40)と述べられている。
一方,鑑賞の指導にあたっての配慮事項のイとして
「教材の選択に当たっては,西洋のものにとどまらず,
日本や東洋のものなどにわたるようにする」(解 p.41)
と示されているが,このことについては「西洋音楽中心 の考えから幅を広め,教材の選択に当たっても,西洋の ものにとどまらず,日本や東洋のものなど,民族音楽の 立場からもこれを取り扱うようにするとともに,時代的 には現代にわたる多様な音楽をも含めて取り扱うように する」(解p.42)ことを求めているのである。
中学校の指導書では日本の音楽の取り扱いについての 詳細な解説がなされており,高等学校でもその姿勢は同 様であろう。しかし,高等学校の解説の記述は教師自身 が幅広い音楽観をもつことの必要性や教材観の転換を求 めているかのように感じられる。それはすなわち,当時 の高等学校の実践は西洋音楽的な教材のみで進められる ことが多く,日本の音楽も諸民族の音楽も取り扱われる ことが少ないという状況の表れといえよう。
2.4.2 音楽Ⅱにおける日本の音楽
音楽Ⅱにおいても,Ⅰと同様に日本の音楽に関連する 記述がみられるのは,鑑賞領域のみである。(1)「いろ いろな楽曲を通して,音楽のもつおもしろさを文化との 関連において感得させる」ために,ウ「日本の音楽の特 徴を理解すること」(解 p.56)と示されている。この項 目は「日本の音楽の重視の一環として設けた指導事項」
(解 p.57)であり,趣旨等はⅠに準ずるが,内容の取扱 いにおいては「西洋音楽との比較において取り扱うよう にする」として特に次のように解説している。
日本の伝統音楽には西洋音楽とは全く質の異なる音 楽美や音楽性があるが,これを西洋音楽の尺度に当て はめて聞こうとすると,満足しなかったり倦怠を覚え たりすることにもなりかねない。元来西洋音楽とは全 く関係なしに独自に育ったわが国の伝統音楽ゆえ,も し西洋音楽と共通点があったとしても,それは結果的 なことであって,西洋音楽の影響があってそうなった
ことではない。
西洋音楽との比較において日本の音楽の特徴を感得 することのたいせつさはいうまでもないが,どちらが 良いとか,どちらが芸術的かなどといったことを単純 に決めつけてしまうようなことがあったら,それはき わめて危険なことである。西洋人と日本人との感覚の 違いなどをよく理解した上で取り扱うことがたいせつ である(解p.61)。
Ⅰと同様に,あえてこの解説を加えていることの裏側 には,当時の高等学校の音楽科教育の状況や音楽教員の 意識があるものと考えられる。
2.4.3 音楽Ⅲにおける日本の音楽
音楽Ⅲにおいては,目標の(4)態度や習慣にかかわ るものとして「わが国および諸外国の音楽文化の伝統や 動向を理解させ,わが国の音楽文化の発展に寄与しよう とする態度を養う」(解 p.64)とした上で,音楽Ⅲの最 も特色のある部分として留意することを強く求めてい る。
その解説として「特に『わが国および諸外国の音楽文 化の伝統や動向の理解』を強調するゆえんは,新たな音 楽文化の創造が伝統の上に成り立つものであること,こ のため,伝統的音楽文化の再認識と過去,現在,未来に わたっての音楽の動向とを思考させ理解させる必要があ る。その理解の上に立って,わが国の音楽文化に対して 国民としての立場からこれを支援し助成することによっ て,その『発展に寄与しようとする態度を養う。』こと が,『音楽Ⅲ』の段階では必要と考えるからである」(解 p.64)と述べている。
選択科目とはいえ,学校音楽の最終段階として達成す べき目標の一つとして設定しているところに日本の音楽 を重視するという姿勢がみられる。この改訂では日本の 音楽を重視するという姿勢が,小学校音楽から高等学校 の音楽Ⅲまでの一貫したカリキュラムとして構築されて いるのである。
3 [第五次]昭和5 2 (1 9 7 7) 年の小学校・中学校の改訂 から同5 3 (1 9 7 8) 年の高等学校の改訂まで
3.1 改訂の背景
2度に渡るオイルショックや高度経済成長の陰で進ん でいた公害,大学紛争などの社会不安が起きる一方で,
教育界では偏りすぎた知育偏重教育による落ちこぼれ,
校内暴力,登校拒否などの諸問題が噴出した。教育界を はじめとして,前次までの教育が教育の科学化,現代化 による歪をもたらしたことが指摘され,人間中心の教育 の必要性が叫ばれた。そのため,児童生徒の負担を軽減
し,ゆとり教育と自己教育力の回復を志向する改訂が進 められることとなった。
改訂は昭和 51(1976)年 12 月の教育課程審議会の最 終答申に基づく。改善の基本方針の第1は,人間性豊か な児童生徒を育てることであり,第2は,ゆとりある充 実した学校生活がおくれることである。第3は,国民と して必要とされる基礎的・基本的な内容を重視するとと もに児童生徒の個性や能力に応じた教育が行われるよう にすることである。そして,この改訂の大きな特徴の一 つは基準の大綱化,いわゆる「弾力化」である。そのた め,第四次の改訂に比べ記述内容が簡明になり,頁数も 少なくなった。知・徳・体の調和を図るための,授業時 数の削減と教育内容の精選は,児童生徒のゆとりある学 校生活とともに教師や学校の創意工夫と裁量範囲の拡大 をもたらしたのである30。
音楽科の改訂は,①音楽を愛好する心情を育成するこ とに一層重点を置くこと,②合唱や合奏が一層活発に行 われるようにすること,③我が国及び諸外国の多様な音 楽に関心をもたせることを基本方針として改訂された31。
3.2 昭和5 2 (1 9 7 7) 年の小学校の改訂
小学校音楽科の目標は,「表現及び鑑賞の活動を通し て,音楽性を培うとともに,音楽を愛好する心情を育て,
豊かな情操を養う」32と改められた。また,学習領域は 表現と鑑賞の2領域に統合され,基礎的・基本的な事項 が確実に身に付けられるよう内容が精選された。
それに伴い,日本の音楽に関連する事項や内容も精選 されたため,直接的な記述は第4学年まではみられない。
第5学年からは,鑑賞領域の(2)教材の取り扱いにつ いての事項ア「序曲及びそれぞれの郷土の音楽を含めた いろいろな種類の声楽曲や器楽曲」(指p.72)と,同第6 学年の「組曲及び歌曲並びに筝及び尺八の音楽を含めた いろいろな種類の声楽曲や器楽曲」(指p.84)がみられる。
「指導計画の作成と各学年の内容の取扱い」の5では,
「歌唱共通教材のうちのわらべうたや日本古謡の指導に 当たっては,それらの教材と関連して,それぞれの地方 に伝承されているわらべうたなどを適宜取り上げるよう に配慮する必要がある」(指 p.87)として,地域に伝わ るわらべうたや日本古謡のよさや楽しさを味わい,その 上で中学校における日本の音楽の学習へと発展的につな げていくことを求めている。しかし,日本の音楽の取り 扱いについては,ここに示した内容のみであり,単純に 分量だけを見てもかなり後退していることが分かる。
共通教材については表 11,12 に示すとおりである。
歌唱共通教材は,わらべうたか日本古謡が第1学年から 第5学年まで各1曲ずつ入っており,前次の改訂よりも 系統的な指導ができるよう改善が図られている。一方,
鑑賞の共通教材は第6学年の《春の海》のみであり,筝 曲から筝曲と尺八の合奏曲になったことは一定の進展と みることもできるものの,量的には十分とはいえないだ ろう。
表1 1 5 2年 (小) の歌唱共通教材
表1 2 5 2年 (小) の鑑賞共通教材
3.3 昭和5 2年の中学校の改訂
3.3.1 「表現」領域における日本の音楽
中学校音楽科の目標は,「表現及び鑑賞の能力を伸ば し,音楽性を高めるとともに,音楽を愛好する心情を育 て,豊かな情操を養う」34と改められた。また,学習領 域は小学校と同様に表現と鑑賞の2領域に統合され,基 礎的・基本的な事項が確実に身に付けられるよう内容が 精選された。
この改訂により,歌唱共通教材は日本の歌曲のみから 選択することとなり,日本の民謡は削除され,各地域の 民謡を適宜選択して用いることとなった(表 13)。〈第 四次〉までの歌唱共通教材が《サンタルチア》《故郷の 人々》などの外国の民謡や作曲家の作品が設定されてい ることと比べれば,小学校の歌唱共通教材とのつながり や設定の意図が明確になったことは評価できるのではな かろうか。
表1 3 5 2年 (中) の歌唱共通教材
第1学年の表現領域では,ア「豊かな響きをもった歌
声や美しい音色に関心をもって表現すること」(指p.21)
と示されているが,ここでいう「豊かな響き」や「美し い音色」は西洋風のベルカント的な発声のみを想定した ものではなく,「わらべ歌や民謡風な味わいをもつ曲で あれば,やや胸声がかった声がかえって好ましい効果を 生むこともあろう」(指 p.21)という解説をしており,
〈第七次〉平成10年の「曲種に応じた発声」にも通じる ものとして興味深い。
器楽に関する指導内容の事項カ「高音の旋律楽器に中 音や低音の楽器を加え,豊かな響きを聴きながら合奏す ること」(指p.25)の編成の工夫例には,「箏などの和楽 器との編成あるいは各地域に伝わる『祭囃子』のリズム を生かすための楽器編成」(指 p.27)など,地域や学校 の実態に応じた編成や編曲の工夫によって,郷土の音楽 や和楽器の活用が望まれると述べられている。現在のよ うな「3学年間を通じて1種類以上の和楽器を学習する」
という強い内容のものではないにしろ,和楽器の導入に ついての教師の創意工夫を求めたものといえる。
表現領域の(2)理解事項のアでは,「長音階及び短音 階と日本の音階の特徴」(指 p.28)を,体験を通して感 覚的に理解させることを求めている。(3)教材の取り扱 いについては,ア「我が国及び諸外国の民謡並びに古典 から現代の作品までのうち,平易で親しみのもてるもの であること。また,郷土の民謡を取り上げるようにする こと」(指 p.31)と示されており,歌唱共通教材として の民謡は削除されることとなったが,郷土の民謡を取り 扱うことを明確にしている。このことについては第2,
3学年でも同様である。
第2学年の表現領域の(2)理解事項では,日本の音 楽にかかわる内容はみられない。第3学年の同(2)理 解事項のアでは,「日本民謡の旋律における装飾的な音 の動き」(指 p.48)である「小ぶし」を,表現活動を通 して感覚的に把握させることを求めている。
3.3.2 「鑑賞」領域における日本の音楽
鑑賞領域では,第1学年の鑑賞の能力にかかわる指導 事項のアとして「声や楽器の音色及びその組み合わせに よる響きと効果を感じ取ること」(指 p.57)の指導にあ たって,「西洋音楽という範囲に限定せず,我が国の音 楽及び諸外国の民族音楽についても取り扱うように配慮 すること」(指pp.57-58)が求められている。
第2学年の同事項では,「発声の仕方,楽器の音色,
音階などによって生じる独特な味わいを感じ取ること」
(指 p.65)の学習例として「伝統音楽や民謡を含めた我 が国の音楽及び民謡や民族音楽を含めた諸外国の様々な 音楽(中略)に見られる特徴の共通性や特異性を感じ取 らせたり,味わせたりする」(指p.65)が示されている。
学年 1 2 3 4 5 6
楽 曲 名 うみ,ひらいたひらいた,日のまる 春がきた,夕やけこやけ,かくれんぼ33 春の小川,うさぎ,ふじ山
さくらさくら,もみじ,とんび 子もり歌,冬げしき,スキーの歌
おぼろ月夜,かりがわたる,ふるさと学年 1 2 3 4 5
6
楽 曲 名 ガボット,おもちゃの兵隊,おどる子ねこ かっこうワルツ,トルコ行進曲,メヌエット 歌劇「軽騎兵」序曲,「メヌエット」ト長調,ポロ ネーズ
白鳥,ホルン協奏曲第1番K.412,ガポット 歌劇「ウイリアム・テル」序曲,ピアノ五重奏曲
「ます」第4楽章,歌曲「花」「荒城の月」又は「箱 根八里」のうち1曲
春の海,組曲「ペールギュント」第1,歌曲「この
道」「赤とんぼ」又は「待ちぼうけ」のうち1曲学年 1 2 3
楽 曲 名 砂山,赤とんぼ,荒城の月 浜辺の歌,夏の思い出,早春賦 椰子の実,花
また,同イ「音楽の流れの中における反復,変化,対照 などによるまとまりを感じ取ること」(指 p.66)の指導 では,西洋音楽的な教材に限らず,「我が国の伝統音楽 に見られる独特なまとまり方」(指 p.67)をも,音楽の 流れの中から感じ取らせることを求めている。
さらに,同ウ「多声音楽と和声音楽との特徴を感じ取 ること」(指 p.67)については,ここでいう多声音楽,
和声音楽を西洋音楽に限定せず,広義に捉え,「我が国 の伝統音楽にみられるヘテロフォニー(Heterophony)
的な音楽」や「我が国や諸外国の民族音楽などにみられ るいろいろな楽器の音色を巧みに組み合わせた合奏法に よる音の重なり,単独の楽器から発せられる音の重なり」
(指 pp.67-68)などの響きや効果を含めるとしている。
鑑賞のあらゆる指導事項について,その対象に日本の音 楽を含めた幅広い音楽を取り扱うことを求めているので ある。
第3学年の鑑賞の能力にかかわる指導事項のア「拍節 的でないリズムによる音楽及び微小な音程を伴う音楽の 特徴を感じ取ること」(指 p.74)は,第2学年の鑑賞の
(1)のア,第3学年の表現の(2)のアと強く関連し,
日本の音楽や諸民族の音楽にみられる「独特なリズムや 音程による表現法をもつ音楽の特徴を感じ取る」(指 p.74)ことを通して幅広い音楽観を培うことを目指した ものである。そして,楽曲のもつ特質を総合的に深くと らえるために特に取り上げられたイ「楽曲について,お よその時代的,地域的特徴を感じ取ること」(指 p.75)
は,特に共通教材や郷土の音楽などと関連付けながら取 り扱うことが望ましいとしている。
教材の取扱いについては,「筝曲,独唱曲,弦楽合奏 曲,管弦楽曲,郷土の音楽及び諸外国の民族音楽」(第 1学年,指p.60),「雅楽,三味線音楽,独筝曲,管弦楽 曲,郷土の音楽及び諸外国の民族音楽」(第2学年,指 p.69),「尺八音楽,協奏曲,管弦楽曲,郷土の音楽及び 諸外国の民族音楽」(第3学年,指p.76)を取り扱うこと となっている。鑑賞共通教材は表14のとおりである。
表1 4 5 2年 (中) の鑑賞共通教材
「指導計画の作成と内容の取扱い」の(4)では,「器 楽の指導においては(中略)必要に応じて弦楽器,管楽 器,打楽器,鍵盤楽器,電子楽器及び和楽器を適宜用い ること」(指 p.86)と示され,楽器編成,編曲の工夫な
どによって箏などの和楽器などを組み入れることについ て,小学校と同様に教師の創意工夫を求めているのであ る。
3.4 昭和5 3年の高等学校の改訂 3.4.1 音楽Ⅰにおける日本の音楽
この改訂における芸術科の要点は,第1に,内容構成 については各科目独自のものであったが,小学校,中学 校との関連を図るために全ての科目を「表現」と「鑑賞」
の2領域としたことである。第2には,芸術科および各 科目の目標を総括的なもののみとしたこと,そして第3 には,内容を基本的事項に精選したことである。
音楽Ⅰの表現領域(1)歌唱に関する指導事項のア
「的確な視唱,発声の基本」(解 p.11)の解説では,「発 声は,我が国の伝統音楽や諸外国の民族音楽にもみられ るように多様」35であるので,発声とそれらの音楽のか かわりに積極的な関心をもたせる指導の工夫が必要であ るとして,中学校と同様に,現行の「曲種に応じた発声」
に通じる内容となっている。
(2)器楽に関する指導事項のイ「合奏における声部 の融合と均衡」(解 p.14)では,リコーダーなどの一般 的な楽器による合奏の他に,各学校の実情に合わせて和 楽器を含めた合奏や重奏も可能としている。
以上,音楽Ⅰの表現領域では,日本の音楽に関連する 指導事項は二つだけである。
鑑賞領域においては,指導事項のウとして「日本の伝 統音楽における演奏形態及び表現上の特徴」(解 p.18)
と1項目明確に示しており,①雅楽,琵琶楽,能楽,尺 八音楽,筝曲,三味線音楽等の種目や流派,またその表 現上の特徴が多様であること,②謡曲,義太夫節,常磐 津節,清元節などの声楽は種目や流派により発声法が異 なる場合が多く,それぞれ独特な表現力をもっているこ と,③三味線のサワリや尺八のカリ,メリ,ムラ息など の奏法や楽器の構造に,音色やリズムに対する日本人の 美意識が見られることを詳細に解説している。その上で,
指導にあたっては,「その背景にある精神的要素の濃い 美意識や鋭い感受性,他の芸術との深い関連性等を理解 した上で行うことが大切であって,西洋音楽を形づくる 諸要素を音楽美の価値基準とするような一元的な評価は 避けなければならない」(解 p.21)と述べ,西洋音楽を 中心とした音楽観,教育観に対しての注意を喚起してい る。
鑑賞のア「声や楽器の特性と表現上の効果」(解p.18)
およびイ「音楽の歴史の流れ」(解 p.18)においても
「日本の伝統音楽をも含めて取り扱うようにすること」
(解 p.19)や「日本の音楽の歴史をも適切に指導される こと」(解 p.20)を求めている。特に日本の伝統音楽の 学年
1 2 3
楽 曲 名
「四季」から「春」,魔王,山道を行く,管弦楽のた
めの木挽歌,筝曲「六段」
小フーガ ト短調,交響曲第5番ハ短調,月の光,
雅楽「越天楽」 ,長唄「勧進帳」
モルダウ,ピアノ協奏曲イ短調,