家庭科における衣生活の管理に関わる教育内容の検討
岩 田 利 美*・吉 田 紘子**
(1998年10月6日受理)
Studies on Clothing Management of Homemaking Education
Toshimi IwATA*and Hiroko YosHIDA**
(Received October 6,1998)
は じ め に
家庭科は,戦後,社会科と並んで,民主的国家建設のための新教科として,家事・裁縫の合科で はない,技能教科ではない,女子教科ではないという三否定のもとで生まれた。しかし,実際には,
その時々の時代の波をもろに受けて大きく変遷してきた。民主的な家庭という理念は後退し,実用 的・技術的な面が強調されてきた(岩崎ほか1980)。
こうした中で,被服領域においては,53年版の指導要領までは技能中心であった。家事処理技能 教科として家庭科の独自性を保つことができるという現場の動きも根強いものがあり(岩崎ほか 1980),教材研究も,いかに短時間で分かりやすく製作を終えることができるかということに追われ がちであった。被服学は,被服を「なぜ」「どのように」着るか(着装),「何によって」つくられて いるか(被服材料),「どのように」つくるか(被服構成),「どのように」扱うか(被服管理)など を軸とし,それらを取り巻く文化を含めて構成している。しかし,衣生活文化である着装や被服管 理に関わる教育内容は少なく,被服構成に片寄った教育をしてきたことになる。したがって,平成 元年版において,男女共修となっても,このイメージが根強く,教育現場においては,被服教育は 既製服時代には不要だという論や男子には適さないという論が,一部には残っている(軍司・吉田
1994)。
しかし,社会や産業の進展によって衣生活は変化し,衣生活用品の多様化,機械化,社会化が進 み,生活が複雑になる一方,洗剤による環境汚染など,さまざまな衣生活問題が発生している。し かも,衣生活の社会化によって,被服はわたしたち生活者の手から離れ,衣生活の問題自体に気づ くことが難しくなっている。着ることを楽しむ飽衣時代の衣生活者は,衣生活の問題点に気づこう としなくなっているとの指摘もなされている(田中1990)。このような時代にあって,家庭科教育に おいては環境問題などの社会的問題も視野に入れ,主体的な衣生活を営むための人間教育としての
*茨城大学教育学部家政教育講座家庭科教育研究室(〒310−8512水戸市文京2−1−1)
**茨城大学教育学部家政教育講座被服学研究室(〒310−8512水戸市文京2−1−1)
衣生活教育という新たな視点が重要となってくると考えられる。
軍司・吉田は,高等学校における衣生活教育内容の変遷とその時代的背景について明かにした
(1994)。その中で,教科書の内容は,従来の着想観を維持しており,価値観が多様化し,ファッシ ヨン情報が氾濫し,技術革新で変化の激しい現代社会において,結果的に「今」を反映していない と結論づけた。では,衣生活の課題が著しく変化してきた中で,小学校から高等学校にわたっての 衣生活教育の視点はどのように変化してきたのであろうか。特に,「被服管理」は,環境問題の深刻 化などの社会的影響や社会の生産体制と深く関わり,その教育内容は著しく変化してきたことが予 想される。また,これからの社会においては,資源のリサイクルでは不十分で,資源の採取からリ サイクル・廃棄に至るまでの製品のライフサイクル全体を通して環境への影響を評価するライフサ イクルアセスメント(LCA)1)などが重視される。社会的影響が大きいゆえに,単なる「家庭の被服 の管理」という意味合いではなく,地球環境までを視野に入れた「衣生活の管理」が行える力を育 てることは,非常に重要であると考える。
以上のような問題意識に立ち,本研究においては,「被服管理」を地球環境までを視野に入れた「衣 生活の管理」と定義し直し,その教育内容の変遷と体系性を小学校から高等学校の教科書の内容を 見ることで明らかにしていく。その際「衣生活の管理」を,被服の入手から廃棄に至るまでの管理 計画(被服計画),洗濯などの被服の手入れや保管(被服整理),衣生活の合理化・能率化・社会化
(衣生活管理の合理化)の3つに分類し,調査・検討する。また,衣生活管理の合理化は,例えば,洗 濯機の普及→合成洗剤の開発と普及→水質汚染問題のように社会問題との関連が深いため,社会問 題を含めて調査する。それらをもとに,今後の家庭科教育の中での衣生活の管理に関わる教育の在
り方について検討する。
調 査 方 法
小学校「家庭」,中学校「職業・家庭」「技術・家庭」,高等学校「家庭一般」の教科書の被服領域 の「衣生活の管理」の内容を,[被服計画],[被服整理],[衣生活管理の合理化]の3項目に分けて 分析した。年代は,軍司・吉田の調査(1994)と同様,学習指導要領の改訂に合わせて,6期に区分し
た。
教科書については,小・中学校においてはT社とK社,高等学校においては茨城県での採用率の 高いJ社を取り上げて調査した。但し,第1期の高等学校J社の初版本は入手できなかったため,C 社発行のものである。また,小・中学校においては,第1期は暫定教科書が使用されていたため,そ
の内容を記した。さらに,小学校においては昭和26年に「家庭生活指導の手引き」が文部省から出 されたに過ぎず,教科書も作成されていなかった。昭和29年発行のTa社の5年生の教科書のみしか 入手できなかったため,主に第皿期から教科書内容を検討することとした。教科書の発行年度は,以 下のとおりである。以降冒頭につけたアルファベットでその教科書を示す。
第1期(昭和20年から30年)
小 暫定教科書 昭和21.8.5発行
中 暫定教科書 昭和21.8.5発行
高 a 昭和26.3.25検定発行 昭和29.1.25改訂発行 昭和31.5.25発行 第H期(昭和31年改訂以降)
小 小学校学習指導要領家庭科編 S31.2.24発行 二葉株式会社 中 t2 中学校職業・家庭1〜3 S33.12.5発行
高 b 昭和32:1.25第一版発行 昭和37.1.25発行 第皿期(小・中は昭和33年改訂,高校は35年改訂以降)
小 T3昭和37.1.10発行 K3昭和40.12.5発行 中 t3 昭和41.1.20発行 k4昭和40.12.5発行
高 c 昭和38.1.25一版発行 昭和42.1.25改訂版発行 昭和45.1.25発行 第IV期(小は昭和43年改訂,中は昭和44年改訂,高校は45年改訂以降)
小 T4昭和48.2.10発行 小 K4昭和51.12.5発行 中 t4 昭和50.2.10発行 中 k4 昭和49.12.5発行 高 d 昭和48.1.25一版発行
第V期(小・中は昭和52年改訂,高校は53年改訂以降)
小 T5.昭和62.2.10発行 小 K5.昭和61.12.5発行 中 t5.昭和62.2.10発行 中 k5.昭和61.12.5発行
高 e 昭和57.1.25初版発行 昭和60.1.25改訂版発行 第VI期(平成元年改訂以降)
小 T6.平成8.2.10発行 小 K6.平成7.12.5発行 中 蛤.平成8.2.10発行 中 k6.平成7.12.5発行 高 f 平成6.1.25発行
衣生活の管理についての教育内容の変遷
3−1被服計画
被服計画は,被服の入手方法,更生・補修の計画,被服の種類と数量,被服費など,被服の入手 から廃棄までの被服管理の計画を内容とする。被服計画に関する小学校・中学校・高等学校の教科 書の内容を表1にまとめた。
第1期は,各学校において暫定教科書が使われていた。この教科書は,戦後家庭科の理念に反し
表1被服計画についての教科書の内容
一
第 1 期
第 1 期 第 皿 期5 暫 記述なし *指導要領の内容
T3記述なし
○被服生活の計画
・被服の種類と合理的な生活
」 。被服の補充
・既製品の選び方,買い方
暫 記述なし
T3 7 衣服の着方
6
7−4 被服の計画
U)下着
② 上着
⑧ 不足している被服のおぎ ないかた
暫 記述なし
k2第2 衣生活 kδ記述なし
4 被服計画
1
4−1 被服計画
(D 被服の種類と数
② 自分の被服計画
4−2 衣料事情
中
暫 十四 上手な買い物
k2第1 被服計画と被服整理 k3被服製作
○買い物に成功した経験,失敗した 1 被服計画とそのめやす 3 衣生活
験
1−1 被服計画 3−1 被服計画
2 ・衣服の付属品を買うときの注意 1−2 被服の修理・更生 (D 被服計画の必要
・新調の計画 (2)被服の種類と数量
1−3 被服費
(31被服計画の立て方 1−4 被服の選択と購入 (4}被服計画の記録(D 被服の選び方 3−2 被服費と家庭経済
年 (2}買い方 (D 被服費
(3)既製品 (2)被服の買い方
暫 三 一年間の被服計画
k2記述なし k3被服製作
3 ・必要な被服の数 4 衣生活の改善
・手入れの時期,くりまわし等
4−2 改善の方法
(2}被服計画とその実践
a.単元1.被服生活の計画 b.第1 被服生活とその計画 c.第5章 衣生活の経営
局
2.高等学校の生徒の身なりはどうあり第1−2 被服計画の立案 第5−4 家族の被服計画
たいか 1,被服費の予算 (1}被服の種類と枚数
㈲女子学生の被服はどんな種類が,μ 2,所持数の調査 (2}適正な被服費
枚くらい必要か 3,被服の年中行事の一例 (3)被服費の支出計画
(イ)女子学生の服装 4,被服資源の現状 ㈲ 被服計画の実際
(ロ)必要な被服の数 5,所持数の決定
(ハ〉家族関係と被服 6,更生・補修の調査
(⇒被服の修繕・更生・新調の計画
第 IV 期
第 V 期 第 VI 期
5T4 記述なし
T5記述なし T6記述なし
」
K4 記述なし
K5記述なし K6記述なし
T4 8 衣生活のくふう T5 4 日常着の着方 T5 6 くらしと買い物
6
8−2 衣服の計画 4−2 着方のくふうと選び方
6−2 商品の選び方を考えようω 衣服の種類と数 (2}衣服の選び方 (2)衣服の選び方
君2 ② 衣服のほじゅう 6−4 買い物とくらしを考えよ
▲
K4 T4とほぼ同じ K5 T5とほぼ同じ
う(2}私の生活の見直し
・衣類を整える場合
k4 記述なし
t5 2 作業着の製作 t8 3 衣生活
2−5 生活への応用 3−2 計画的な衣生活を心
1
② 衣生活の工夫 がけよう・買い物の計画
3−3 衣服の入手方法を考
えよう
オ
k5記述なし
中 k6 3 私たちの家庭の仕事
k4 2 被服整理 t5記述なし 3−4 衣服の着用と手入れ
2−1 衣類整理の計画
③ 衣服の計画を考えよう(D 衣類の整理と衣生活
k5記述なし
や ・衣腺の計画2 被服と生活 ・衣服の再利用
(1)計画的な衣生活
一
t8 3 衣服の購入の仕方
凸
k6 5 快適な衣生活
5−2 既製服の選び方と被
服の活用の仕方を考えようk4 記述なし
t5 1休養着の製作
3
1−3 生活への応用
(2}着装と被服計画
k5 記述なし
d.第5章 衣生活の経営
e.第2章 衣生活の設計と被服製作 f.第4章 衣生活の設計と被服製作尚
3 家族の被服管理 3 家族の被服管理 2 被服材料と被服管理3−1 被服費と被服計画 3−1 衣生活の計画 2−2 被服計画
(1)衣生活の現状 (1)被服費の特質 {1)被服費の特質
(2)被服費の特質 (2}家族の被服計画 ② 家族の被服計画
(3)家族の被服計画
3−2 被服の購入と選択
㈲ 被服の選択と購入3−3 既製服の選択と活用
て,教科書の内容は戦前の教育内容そのものだったため,新しい教科書の発行が求められていた2)。
これを受けて,高等学校においては,昭和24年に学習指導要領に即した教科書が発行された。
小学校の暫定教科書においては,被服計画に当たる内容は扱われていない。また,内容的にも,戦 後の息吹は全く感じられない。しかし,中学校においては,内容的には家事・裁縫科の域を出ない が,「父とぼくは男ですが,さら洗いもするし,くつ下の破れくらいは,自分でつくろいます。」と,
女子教科ではないことを強調している。また,「この教科書は,読んで暗記するためのものではあり ません。この教科書は,しばしば,学習の糸口として用意されています。この本の中に,問題解決 の手がかりを見いだす場合もあるでしょう。」とあるように,被服計画についても,1年間に必要な 被服の数や自分の被服計画についての詳しい記述はなく,自分で調べられるように表が示されてい たり,例が挙げられている。
これに対して,高等学校においては,当時の衣料事情(1年間に使う一人当たりの被服地は,戦前 の1/6〜1/5程度)を反映し,「もっとも必要とする最低衣料を計画の基準として調べなければな らない」「家族で譲り合って」「各人の必要度を比較して,もっとも必要とする家族のものを先にす る」などの記述がなされている。そして,被服の修繕・更生・新調を計画的に行い,衣服を大切に するよう,具体例が示されている。このように,高等学校の内容は,戦後の繊維事情に合わせ,簡 素で工夫した衣生活の必要に適した内容となっている。
第H期になると,各学校において,計画化,合理化,能率化の視点がはっきりと現れてくる。こ の時期の小学校の教科書は入手できなかったため,指導要領に記された内容を示した。「生活管理」
の領域で,生活の計画化,合理化,能率化が示されているように,被服においても,「自分の被服の 種類と数を考えて,合理的な計画を立てる必要がある」と記述されている。
中学校においては,被服費という各家庭の経済的側面と国の衣料事情を考え合わせ,被服計画を 立てるようにということが,繰り返し述べられている。経済的側面からは,1年生で自分の衣生活を 見直し,必要数から被服計画を立て,2年生で,新調の際の被服の選択と計画的購入ができ,3年生 で自分の被服の種類や数の改善の計画が立てられるように,内容が構成されている。また,国の繊 維事情からは,2年生で,現在あるものを修理・更生しながら活用する方法を示し,購入については,
既製品を含めて記述されている。3年生になると,外出着より普段着,下着を重点に考えること,死 蔵品を活用することがあげられ,修理の内容として「つくろい」が,更生の内容としてはぎ合わせ
などによる作り替えや染色があげられ,より具体的な内容になっている。高等学校においては,中 学校よりさらに具体的に自分で被服計画が立てられるよう,被服所持数明細調査表,被服の年中行 事の一例,都市生活青年女子の最低限被服などの表が記載されている。また,「研究」として,具体 的に各自の衣生活を見直すことを課題としてあげている。更生・補修として,仕立替え,染め直し,
編み直しがあげられ,この時期はまだ,家庭において裁縫技術の習得が重要であったことを暗示し
ている。
このように,小学校で計画化の視点を与え,中学校で修理・更生の仕方を学び,高等学校で具体 的に衣生活を営んでいく主体者を育てるという流れになっている。
第皿期は,学習指導要領が初めて官報公示され,性別による教育内容の切り離しが明確になり,科
学技術振興の方針が打ち出されるという,大きな変化がみられた。経済的にも徐々に復興してきた
ため,国の衣料事情に合わせた簡素化を重視した被服計画から,流行に流されない被服計画へと視
点が移行している。
小学校においては,「いつも清潔な服装ができるように,着方や必要な枚数について考え,また,
衣服を長持ちさせるように工夫しましょう」と記述され,下着の枚数,不足している衣服の補い方,
ほころびのつくろいの仕方が記載されている。しかし,「家族と話し合って適当な方法(古いものを 作り直す,新しく仕立てる,きせい品を買うなどの方法)でおぎなう」と記述されているに過ぎず,
具体的な方法についての記述はない。
中学校においては,「思いつきや流行に流されず,自分の被服の種類や現在の所持数などをもとに して補充の必要などをよく考える」として,「中学生の女生徒に必要と思われる被服の例」の表が記 載されている。また,「衣生活の現状」では,「流行」と「和洋の2形式」から,経済的・労力的負担 が大きいとし,「簡素で合理的な生活をするように,種類や所持数を計画的にすることが大切」と,
衣生活の大きな変化の中で,被服計画が重要であることを指摘している。
高等学校においては,「国民所得が低いわりに繊維消費が多い」とし,「堅実な国民生活をする上 から現状を再検討する必要」があると,安易な繊維消費の伸びを戒めている。そして,「手入れ,保 管の労九時間を軽減し,被服費支出の節減の上からもなるべく少ない方が望ましい」とし,「着用 するときの組み合わせ方,付属品の活用などを工夫して少ない枚数でも豊かな衣生活を」送ること ができるよう,具体的資料や方法が記載されている。例えば,「女子高校1年生の被服調査とその計 画例」の表,家族各個人と共用被服の調査,家族の被服費の配分比率季節別,被服費の月別支出の 均衡,不要被服の更生利用などである。
この時期は,戦前戦後の物資不足の時の生活観と戦後の復興期の急激な経済復興期のものの豊か さの中での生活観との両方が教育内容に現れてきた時期と言えるだろう。そして,どちらかと言え ば,ものの豊かさを戒め,堅実な衣生活教育に重きが置かれている。小・中・高の教育内容の流れ は第H期と変わらず,一貫した流れとなっている。しかし,中学校は「職業・家庭科」,高等学校は
「一般家庭」として,ともに選択教科となり,女子の選択を想定したものであったため3),結果とし て男子の学ぶ機会はなくなり,主婦準備教育となってしまったことは否めないだろう。
第lv期は,高度経済成長真っ只中とも言える時期で,技術教育としての性格がより明確になった。
中学校の「家族」の領域が家庭科からなくなり,社会の公民へと移行したのもこの時期である。被 服計画の内容も浅くなり,特に高校においては,第1期〜第皿期まで8〜10ページあった内容が,2 ページと大きく減少した。小学校では,衣服調べの例を表にして示すなど,記述は具体的になって いるが,中学校においては,「費用や労力のむだをなくすために,計画的な衣生活を」と,被服計画 の例や被服の手入れの計画の例が記載されているに留まっている。高校においては,既製服の活用 が被服計画の中心となり,既製服は「家事労働の軽減という点で能率的」とし,「既製服購入の要点」
の表が記載されている。以上のように,既製服化が進んだことにより,その選択方法における消費 者教育の必要性が増し,被服計画の大半は既製服に関する内容となった。しかし,ページ数も減り,
全体として軽く取り扱うことのできる内容となり,被服製作の狭間で,省略されやすい内容となっ ているように感じる。
第V期は,第IV期と内容的には大きく変わっていないが,小・中・高全てにおいて,既製服の活
用と計画が中心となっている。小学校で自分の衣服の選び方を学び,中学校では被服費を意識した
自分の被服購入の計画,高等学校においては,家計における被服費を考慮した家族の被服計画と発
展させている。社会的には,オイルショックの影響からは省資源・省エネルギーが,高度経済政策 による公害問題の表面化からは環境問題が,共にクローズアップされ,これらの視点が少しずつ盛 り込まれてきている。例えば,小学校のT5の教科書においては,「衣服がきつくなったり古くなった りして着られなくなったときに,どんな方法で補っているか,考えてみよう」として,「他の人のも のをゆずってもらう」「きせい服を買う」「布を買って作る」「つくりかえる」の4つの方法が図で記 載されている。
第VI期は,「女子差別撤廃条約」の批准を受けて,中学校で男女別履修の規定がなくなり,高等学 校においても男女とも4単位の必修教科となった。そして,男女ともに学ぶ教科としての内容の見直
しが行われた。こうした中で,中学校の被服領域は選択領域となった。また,衣生活の社会化が進 み,かつ,大量生産・大量消費の生活が進む中で,被服を更生・修繕する必要性が国民の意識の中 から薄れてきたことを背景として,修繕の技術は,主として小学校から中学校へと移行し,かつ,実 習例としてしみぬきと半返し,まつり縫いによるほころび直しが扱われる程度に縮小された。一方,
ごみ問題を背景として,「不用品の活用」が被服計画の一つの視点として,大きく取り上げられるよ うになった。
小学校においては,K6では,既製服の選び方が記載されているに留まっているが, T6では,「買い 物とくらし」の中で,「衣服を整える場合」の例が図示され,「買う前に」「しまつする前に」「着て いるときに」の3点から記述されている。手入れや再利用,購1入すべきか,といういろいろな角度か ら被服計画を考えられるような内容となっている。中学校においては,被服領域において「計画性 のない衣生活は,衣服の種類や数が増加し,十分活用されない衣服が増え,経済・手入れ・収納・保 管などの面から考えるとむだが多くなる」,「繊維資源には限りがある」と,再び,被服計画の重要 性を指摘する内容へと変化している。また,中学生が「既製服を買うときの基準」の調査結果のグ ラフ,中学生の「不用になった衣服の処理の仕方」の調査結果のグラフ,「日本人一人当たりの衣料 用繊維消費量」などが示され,社会的な立場で自分で考えることができる資料となっている。しか
し,高等学校においての記述は少なく,流行に流された「衝動買い」はしないという視点から書か れている。また,省資源についても,衣料品のリサイクルの方法として「衣料不用品のバザー」の 写真1枚が取り上げられているのみである。全体として,「計画性のない衣生活」が問題として取り 上げられ,考えられるようになってきてはいるが,具体的に改善する技術は軽視されているように 感じられる。
以上のように,被服計画の教育内容の変遷を見てきたが,第皿期を境として,国の衣料事情に合
わせ簡素化を重視した被服計画から,既製服の購入の仕方や被服費など,大量生産・大量消費や衣
生活の社会化に対応した合理的で堅実な被服計画へと変化してきた。高等学校においては,第1期
は被服計画と手入れ・保存がそれぞれ独立した章となっており,第H・皿期は被服計画が一つの章
として独立し,被服整理を含んだ内容となっていた。第IV期以降は,被服管理という項目が現れ,被
服計画はこの中に含まれるようになった。このように,被服計画の位置付けの変化は,被服計画が
教科書の中において徐々に内容が変質し,重要性が少なくなっていったことを示している。第V期
以降においては,小学校や中学校の「被服」領域においては環境問題,エネルギー問題を加味した
被服計画の必要性が盛り込まれてきた。しかし,男女共修である中学校の「家庭生活」領域や高等
学校においての内容は非常に少なく,中学校で「被服」を選択しない場合は,小学校からの深まり
は見られないだろう。これでは,生活の主体者として,社会を視野に入れた被服計画を行うことの できる生徒の育成は望めない。生産から廃棄までを視野に入れた被服計画ができるような体系的な 内容構成にしていく必要性を感じる。
3−2被服整理
被服整理は,洗濯などの被服の手入れや防虫・防カビなどの保管に関わることを内容とする。被 服整理に関する教科書の内容を,表2にまとめた。
第1期は,小・中学校の暫定教科書,高等学校の教科書ともに,洗濯の用剤や方法について,非 常に詳しく書かれている。小学校では簡単なしみぬきを行い,中学校において簡単な洗濯,のりつ け,仕上げを行い,高等学校において,より高度な洗濯技術(洗濯剤,しみぬきを含めた洗濯方法 など)を身につけるという流れになっている。特に,高等学校では,まる洗い,とき洗いなど,和 服の洗濯方法について詳しく記載されている。初の過脂肪石鹸「オリーブ石鹸」が発売され,撹拝 式洗濯機の生産が始まったのが昭和26年,脱水機付き洗濯機i,渦巻き式洗濯機の発売が昭和29年
ということ4)を考えると,この時期,被服整理は手作業がほとんどで,それなりの技術の習得は必要 であったのである。また,高等学校については,保存についても触れられ,虫干しの仕方や防虫剤 についても記述されている。
第H期になると,高等学校で扱われていた被服整理内容の多くが,中学校の内容に下りてきてい るのが分かる。高等学校の教科書のページ数の変遷をみると,被服管理のページ数は,昭和24年の C社発行の教科書で89ページ中32ページ(約36%),J社発行の昭和31年改訂版で97ページ中29 ページ(約30%)であったのが,第H期は,65ページ中10ページ(約15%)と半減している(軍 司・吉田1994)。小学校においては,しみぬきに加えて,生地の種類と洗剤,洗濯の仕方,手のしや アイロンでの仕上げの仕方,防虫剤の種類と使い方が内容としてあげられ,一通りの被服管理が自 分でできるような構成になっている。中学校では,さまざまな手洗いの仕方,板張り,しんし張り を含めた仕上げの仕方,増白・漂白と,小学校の内容を発展させた内容となっている。また,昭和 26年にABS合成洗剤の国産第一号が生産された。教科書においても,「合成洗剤」の記述が見られ,
中性洗剤,ソープレスソープが取り上げられ,石鹸より多くの比重がおかれている。そして,「市販 されている洗剤を調べてみよう」と問いかけている。これに対して,高等学校では,先に触れたよ うに,簡単な手入れと保存の記述に留まっている。
第皿期から第V期までは,小・中・高の内容の関連性が同じような傾向となっている。小・中学 校では実習が中心となり,小学校において下着と上着の洗濯,中学校において毛・絹や編み物の洗 濯が主な内容となっている。高等学校においては実習ではなく,洗剤を含めた被服整理用剤の科学 的内容(洗浄力,洗剤の働き,洗剤の性質と種類など)が中心となっている。
第皿期においては,小学校で洗剤の種類が石けんと合成洗剤(アルカリ性・中性)の2種類に分け て表示されるようになった。また,昭和31年に厚生省が中性洗剤の安全性を保障し,全国都道府県 知事あてに,中性洗剤による野菜,食器類の洗浄を指導したことを受け,この時期の教科書におい ては,小学校から高等学校に至るまで,生食野菜の中性洗剤による洗浄を勧めている。この時期(昭 和38年)合成洗剤の生産量が石鹸を上まわり,教科書においても合成洗剤の利点を取り上げている。
そのほか,衣服の手入れとして,小学校ではつくろい,しみぬき,衣服のしまい方(保管)に関す
表2被服整理についての教科書の内容
第 1 期 第 H 期 第 皿 期
身なりの整え方 導要領 33よい身なり一2衣服の日常の手入れ
ブラシかけ・たたみ方 第二章 第二節 小学校家庭科の指導内容 {11ブラシのかけ方②たたみ方㈲しまい方
5
しみぬき
被服 ・ほころびのつくろい」 Aしみをとかして取る方法 手入れと保存 5下着の洗たく
水・揮発油・ベンゾール。ア脚一ル 簡単なしみぬき α}せんたく用具とせんざい
B中和させる方法一ン.ウ酸・アンモニア水
bさらす方法墨・絵の具・どう・果汁・しょう
?ニしまっ……ブラシの使い方
洗ざい
l│最徽野瀧.中性、
知一勧瞬・過酸化水素・漂白の薬 しまい方 ……防虫剤の種類と使い ②洗たくの仕方一準備・洗い方・すすぎ
Dその他 ブラシかけ
洗たく
しぽり方・ほし方・あとしまつ洗たくの仕方 K34洗たくと仕上げ
せっけん,その他の洗剤の区別 4−1上着の洗たく
生地の種類と洗剤 {D布地の種類と洗ざい
6 仕上げの仕方 せっけん,合成洗剤(アルカ唾牲,中甚)
手のし。しきのし仕上げ 4−2衣類のしまい方 簡単なアイロンのかけ方 4−3洗たく
衣服の着方 のりつけとほし方,アイロン仕上げ(
噌 衛生的な着方 温度,しっきのあたえ方,かけ方)
4−5しみやよごれの簡単な落とし方 5衣服の手入れ一っくろい,しみの取り
方,衣服のしまい方(防虫)
四 被服の手入れ・保存 k21V食物と被服一第2衣生活 k3被服製作 3衣類の整理
○せんたく一材料,方法,洗たく液,洗た剤 2衣服の手入れ 3−1綿・化繊のせんたく
1 のりつけ,仕上げ(素tt毎に謎) ・ブラシかけ,形を整える {3}せんたく用剤一増白剤,漂白剤,のり
。洗たく剤一石けん.アンモニア水,きはっ油 ・繊維に適した洗剤一せっ嚇,合域酬
⑤ブラウスの洗い方一準備,予洗い,本洗い・のりっけ一しょうふ,コンスターチ,ふのり
3せんたくすすぎ,脱水,のりつけ,乾燥,仕上げ
・仕上げ一手のし,しきのし,アイロン
3−4洗い方 {1}準備 (2}下洗い(3}本洗
3−2しみぬき一必要性,方法,用剤,用具中 板張り,しんし張り
い(液,洗い方,絞り方X41干し方
3−3保管○たびのつくろい 3−5仕上げ一手のし,しきのし,アイロン ω被服の防虫一害虫,防虫剤,防湿剤
○くっ下のつくろい 3−6のりつけ一効果,種類(でんぷん,化学のり)
②保管の仕方一容器(ブラスチ,ク),しまい方
記述なし k21被服一第1被服計画と被服整理 k3記述なし2被服整理
2−1せんたく一湿式,乾式
2 2−2湿式せんたく
(1〕洗剤一せっけん,合成洗剤(中牲,ソイレス トブ),せんたく助剤(殿ソーダ,アンモニ琳
。市販されている洗剤を調べてみよう。
(3〕洗い方一ふり洗い,っかみ洗い,おし っけ洗い,もみ洗い,板もみ,はけ
⑥仕上げ一手のし,しきのし,アイロン,
蒸気,板張り,しんし張り,湯のし
2−3増白と漂白増白(llい光染料,方法),漂白(さらし粉
2−4しみぬき2−5しまい方と防虫剤
2−6衣類の乾燥一アイロン,防湿剤
記述なし k2アイロン仕上げ以外の記述なし k3被服製作
2毛・絹のせんたく
3 2−2洗剤と洗い方
・中性洗剤
(3}洗い方一つかみ洗い,おしっけ洗い
乾燥の仕方一おししぼり,っつみしぼり{4}仕上げ一蒸気で形を整える
2−3これからの被服管理・ドライクリーニング…長所と短所
・洗剤の選び方
4衣生活の改善一各種洗剤の発達 a.単元5 自分や家族の被服の手入れ b.第1衣生活の現状と改善 c.第5章 衣生活の経営
1せんたく 2 これからの衣生活 2被服計画
1−2用水,せんたく
ワ,せんたく用具 2−4手入れ・保存の工夫 2−3被服整理(a>せっけん(b)炭酸ソーダ(c)重炭酸ソイ(d)アン 第3日常服の製作例 (1}洗たく
ニァ(e)ほう砂(f)あく(g)せっけんの代用品
6日常着の着方手入れ・保存(b)洗剤一石けん(固形,粉)
〈帥筋,むくろじ,ふのり,米帥,油粕の煮出した液, 6遭手入れ・保存 合成洗剤(弱アルカリ,中性
ミカン破舵)(h)酢酸(i)シュウ酸(しみぬき
(c)洗浄作用一界面活性剤の働き局 (」)揮発油(ドライ列一ニング,しみぬき)(k)漂白剤 (d)洗たく用水一硬水・軟水と洗剤
1−3せんたくの方法 (e)のりっけ一CMC系のり
{D準備②水洗い{3)せっけん洗い(4)水すすぎ
②漂白一さらし粉,次亜塩素酸ソーダ(5瞭白(さらし醤,重羅㍗ダ.ハイドロサルファイトX6}乾燥 過酸化水素, ・イドロサルフ7イト
1−4仕上げ一のりつけ,しきのし,アイロン (3腺管一ブラシかけ,しみぬき,乾燥
伸子張り,板張り,湯のし 保存方法(防虫,防湿〉
1略しみ抜き
(Dしみ抜き剤と用具②種類(3)処置法 2 被服の手入れ
3 被服の保存
3−1容器と置き場所 3−2しまい方 3−3虫干し一害虫,時期,方法,防虫剤
第 w 期 第 V 期 第 VI 期
T42整った身なり
K54着方とせんたく T6住まいのところで「不用品の活用」が扱2−1身なりの整え方…ブラシかけ,しまい方 4−2下着とせんたく れ,「古着のリフォーム」が紀載 5 4せんたくとほころびなおし
(2)せんざいの選び方と使い方
量 4−2下着のせんたく ・せんざいの品質表示例 K6記述なし
(1}せんたく用具とせんざい
(せんたく用せっけん)合成洗剤(弱アルカリ,中性)・石けん
・せんざいの牲質と適する布地せんたくの仕方,しまい方 せっけん,合成せんざい
4−3ほころびなおし ・せんざいのこさとよごれの落ち方
・半返し,本返し,まつり,重ねぬい ㈲衣服の整理…たたみ方,しまい方
T44せんたくとしあげ
K54日常の衣服 T64夏のくらし
4−1上着のせんたく 4−2日常着の手入れ 4−4衣服の手入れをしよう
・布地の種類とせんざい {D上着のせんたく ②せんいの種類とせんざい
弱アルカリ合成せんざい 綿など ①せんたくの準備 ・せっけん,合成せんざい
6 せっげん ・布地に適したせんざいを選ぶ ・合成せんざいでひふのかぶれやはだ
中性合成せんざい 毛など ・布地の種類とせんざいの表 あれを起こすこともある。
4−2アイロンしあげ 。手洗いと電気洗たく機の違いの表 ・せんざいの品質表示の例(せっけん
・布地の種類とアイロンの温度 ②ほころび直し ・せんざいの種類と適するぜんい
4−3しみぬき 重ねぬい,まつりぬい ・せんざいの量と汚れの落ちる割合
8衣生活のくふう 8沼っくろい
(3}せんざいと環境
・かぎざき,あな,布の弱っている部分 T5 K、とほぼ同じ ・標準使用量を守ってせんたくすることは 地球の環境を守ることにもつながる K6 T 5とほぼ同じ
・なみぬいによるほころび直しが記載
1
k4記述なし t6k5記述なしt52家族の生活
2−3衣生活
⑤衣服の手入れをしよう
一 実醐1通学服の手入れ…アイロン
k4被服
t6被服旺{6}洗たくをしよう
中 2被服整理 2日常着のせんたく 餌ドライクリーニングの注意
2−1衣類整理の計画 2−2編み物の洗たく 賄編み物を洗ってみよう
{3}洗たく用剤
(1}洗剤{7}きちんと整理。保管しよう
2 ①洗ざい ・洗剤の種類と特徴 日常の衣服,季簡の衣服の整理
・はたらき ・種類,性質,用途 …せっけん,合成洗剤 k63わたしたちと家庭の仕事
・合成洗剤の品質表示 ・中性洗剤の品質表示例 3−4衣服の着用と手入れ
・洗ざい液の濃度 ・洗剤濃度による汚れの落ちる割合 姻飢通学用のワイシャツ・ブラウス
②増白剤・漂白剤
(毛織物)と収縮率(毛の編み物)
の洗たく〈合成洗剤には,蛍光染料が配合さ ・洗剤にはどのような働きがあるか薯 実翻2通学用衣服のしみぬき
れている) べてみよう。
・しみの性質・種類としみぬき③のり一CMC, PVA ・洗剤による汚れの落ちる様子 の方法
④柔軟仕上げ剤 2唱生活への応用 実翻3通学服のほころび直し
2遣洗たく
{1}ドライクリーニングの利用
・半返しぬい,まっりぬい(1}綿・化繊の織物の洗たく
{2}用員・用剤の進歩と安全・環境の保 ドライクリーニング,ブラッシング②毛糸織物の洗たく ・合成せんざいによる河川の汚れ 二層式・一層式(全自動)洗濯機の図
2−3しみぬきと保管 ・皮膚障害 ・節水
(Dしみぬき…用剤・用員,しみぬきの仕方 t5, k 6記述なし
(2)保管の仕方…①害虫 ②防虫剤・乾燥 k5 t 6とほぼ同じ
剤 ③容器 ④しまい方 ・洗たく用剤として柔軟仕上げ剤と静電気
〈被服と生活〉 防止剤
(2}被服材料などの進歩と衣生活
・洗剤による河川の汚れ
3k4記述なし k5 t 6記述なし
d.第5章衣生活の経営 e.第2章衣生活の設計と被服製作 f.第4章衣生活の設計と被服製作
3家族の被服管理 3家族の被服管理 2被服材料と被服管理
3−2被服整理 ω手入れと保管 2−3被服整理
(D洗たく (b)被服整理用剤
(D被服の手入れ(b>洗剤の働きと種類 ・洗剤には20〜7脳の界面活性剤や ・浴比,洗濯時間,再汚染,すすぎ
・洗剤には20〜30駕の界面活性剤が含ま 浄効果を高める物質,仕上げに 脱水
れている 響を与える物質等が含まれている ・仕上げ…漂白剤,柔軟仕上げ剤,
尚 ・汚れの落ちる過程 ・合成洗剤の品質表示例 帯電防止剤,アイロン
・せっけん…せっけんやけについて ・汚れが落ちる過程 ・ドライクリーニングの賠償基準
・合成洗剤一陰イオン系 ・洗剤の種類と性質
(2}被服の保管
石油系,高級アルコール系
洗濯用合成洗剤 。かび。害虫非イオン系 直鎖アルキルベンゼン系 ・防虫剤…パラジクロロベンゼン
…蛍光増白剤について 高級アルコール系 ナフタリン,しょうのう
(e)浴比 (f)時間 (g)すすぎと脱水
アルファオレフイン系 ピレスロイド②仕上げ…漂白剤・柔軟剤・のり [研完]2リンが水質汚染を引き起こす
翰ドライクリーニング 由を考えてみょう
⑤絵表示の活用
[実組洗剤の働き
{6)保存…ブラシ、しみぬき,乾燥剤,防虫剤 ・漂白剤.増白剤,のり,柔軟仕上げ
剤,帯電防止剤(e)ドライクリーニング…苦情内容
(f)しみぬき
(g)保管…分類,乾燥剤,防虫剤
る内容が詳しく記述されている。例えば,布の弱った部分のつくろいとして,しきしつぎの仕方が,
しみぬきでは,しみの種類を「水にとけやすいしみ」「ベンジンにとけやすいしみ」「その他(どう)」
に分類し,取り方について詳しく記述されている。
第IV期からは,昭和30年代後期から40年にかけて,合成洗剤による河川の汚れが社会問題とな り,昭和40年に洗剤協会が自主的にソフト化(LASへの切り替え)を始めた。このことを背景とし て,教科書においても,洗剤による環境への負荷が取り上げられるようになってきた。しかし,中 学校の教科書においてのみである。昭和40年以降は,ABSやLASの催奇形性などの人体への影響や リン酸塩などによる河川の富栄養化が社会問題となり,第Iv期の教科書は改訂を重ねる中で,初期 にあった中性洗剤による生野菜の洗浄などの記述がなくなるなどの変化も見られる。しかし,第皿 期同様,合成洗剤に対し,「すすぎが簡単」,「布に残っても布地をいためない」など,肯定的記述が されている。また,昭和43年に繊維品の取り扱い表示(絵表示)が制定され,小学校の教科書にお いても,簡単な絵表示が記載されるようになった。中学校・高等学校においても,洗剤そのものの 記述がより詳しくなっている。中学校では品質表示に加えて洗剤の働きが取り扱われている。蛍光 増白剤については,「合成洗剤や化学のりにはけい光染料が配合されている」と明記されている。高 等学校においては,合成洗剤の液性だけでなく,陰イオン系(石油系・高級アルコール系),非イオ ン系など,界面活性剤の種類や性質について詳しく記載されている。この時期,衣生活の管理の機 械化や社会化によって,洗濯そのものの技術,特に手作業によるものは簡略化されてきたのに対し,
繊維の種類や洗剤の種類・用剤が増え,用途や使用法などが複雑化し,より確かな知識が必要とさ れてきたためといえるだろう。
合成洗剤の環境への負荷は,昭和48年に,業界が自主的に合成洗剤中のりん分の減少化を図った ことに現れているように,ある程度は認識されてきた。これを受けて,第V期になると,ようやく,
合成洗剤の問題が高校においても記述されるようになった。「リンが水質汚染を引き起こす理由を考 えてみよう」という研究課題が載せられている。また,合成洗剤の肯定的記述はなくなり,成分と 液性に関する記述となっている。小学校においても,5年生の教科書には「せんざいのこさとよごれ の落ち方」の表が記載され,洗剤の使い過ぎを防ぐような内容記述となっている。中学校において は,第IV期と同様,河川の汚れについて記述されているが,「洗剤による」という記述から,「合成 洗剤による」という記述に変化している。しかし,昭和51年に厚生省がrLASの催奇形性なし」と,
科学技術庁が「経口吸収による生体影響は見られない。皮膚障害は中程度」と相次いで発表したこ とを背景に,人体への影響は,中学校において皮膚障害について触れるに留まっている。
全体として,洗濯についてはどの学校においても扱いがていねいになっている。小学校では,「手 洗いと電気洗たく機の違い」の表が詳しく記載されている。また,中学校においては,洗剤濃度に よる布の収縮率や洗剤の働き,汚れの落ちる様子について記述されている。
衣生活の社会化が進み,昭和51年の「白洋舎事件」などのクリーニングトラブルも起こってきた。
これを受けて,第V期の教科書においては,中学校でクリーニングの利用について記述され,高等
学校においてはその苦情内容について記述されるようになった。しかし,一方,ほころび直しは,使
い捨て文化,ものの豊かな社会にあって,その必要性が減少してきたためか,小学校5,6年で扱わ
れていたのが,5年のみになり,しかも「かぎざき,あな,布の弱っている部分」のつくろいについ
てはどの学校の教科書においても記述されなくなった。
第VI期になると,洗剤を環境問題と結び付けた記述が多くなった。特に,小学校においては,合 成洗剤による皮膚障害,環境を守るうえでの標準使用量を守って洗濯することの大切さなどを取り 上げるようになった。食物においても,「油や台所用洗剤を川や海に流したとき,魚が住めるように するために必要な水の量」を提示したり,「洗剤は必要な量だけ使う」ことを明確に記述している。
中学校においても口絵などで環境問題を積極的に取り扱っている。また,住居の領域で,洗濯によ る環境問題も引っくるめて扱っている。しかし,「家庭生活」における衣生活の題材や,「被服」領 域においては,環境問題を関連づけて扱ってはいない。生徒の思考としては,実習と結び付いたと
ころで考えていけるような構成になっていないと,環境問題と洗濯などの自分たちの衣生活が結び 付きにくく,実感としてとらえにくいのではないだろうか。例えば,環境を意識した洗濯実習を行 うために,洗剤についてや環境問題を調べ,その上で実習してみることで,自分の生活そのものの 問題であることがとらえられ,その問題点も明らかになってくるのではないだろうか。あるいは,実 習後にそれらの問題を考えるという逆の方向でもよい。いずれにしても,自分の問題としてとらえ られなければ,行動化は望めない。さらに,家庭生活と生活環境は密接に結び付いているにもかか わらず,高等学校において,環境問題に触れられていないことは問題であると感じざるを得ない。界 面活性剤など,科学的知識に関するものについては詳しく記述されているが,環境に対する中学校 からの発展は見られない。
洗濯以外の衣服の手入れについては,小学校からほころび直しが消え,中学校において,「家庭生 活」で実習例としてしみぬきやほころび直しが記載されている。高等学校においては,手入れは洗 濯が主で,保管について防虫剤の記述が詳しくなっているに過ぎない。
以上のように被服整理に関する教科書の内容の変遷を見てきたが,衣生活の管理に関わる仕事の 社会化や機械化,洗濯用剤の開発が進み,手入れや洗濯についての技術そのものが簡略化されてき た。一方,洗濯機などの機械の使い方や洗濯用剤そのものが複雑になり,教科書においてもそれら の知識が多く記載されるようになった。科学技術の発展に対応した科学的教育内容が盛り込まれて いることは評価できる。しかし,環境や資源の問題がクローズアップされている現代においては,製 造から廃棄に至るまでのサイクルを考慮した衣生活を営むことが求められている(武井1996)。した がって,さまざまな洗濯用剤の特徴や扱い方,働きばかりでなく,自分がどのような被服整理の仕 方を選択し生活していくかを考えて行けるような教科書の構成にしていく必要性を感じる。知識ば かりが羅列してあっても,主体的生活者を育てることはできない。主体的生活者として児童生徒を 育てるためには,教科内容とその構成の両方をもっと検討していく必要性を感じる。
3−3衣生活管理の合理化
衣生活管理の合理化は,省資源・省エネルギーなどの衣生活の合理化,洗濯機などの利用による 衣生活管理の能率化,クリーニングなどによる社会化及びそれに伴う社会問題との関連を内容とす る。衣生活管理の合理化の教科書の内容を,表3にまとめた。
表からも分かるように,この内容が盛り込まれるのは,経済が復興し始め,繊維洗濯機やミシ ンなどの機械などの開発が進んできた第H期からである。また,小学校においては,公害や環境問 題がクローズアップされてきてもなお,第VI期に至るまで,この内容に関する記述は見られない。
第H期は,中学校の3年生の教科書で,製作の能率化と被服管理の能率化が記述されている。製作
表3衣生活の管理の合理化についての教科書の内容
第 1 期 第 H 期 第 皿 期
暫 記述なし *指導要領の内容
T3記述なし
」
5 記述なし
一
f
6
暫 記述なし
T3記述なし
オ4
暫 記述なし
k2第2 衣生活 k3記述なし
1
4 被服計画4−2 衣料事情
年
中
2
暫 記述なし k2 記述なし k3 記述なし
一
暫 記述なし
k2家庭生活の改善 k34衣生活の改善
六3 2 衣生活の改善
4−1 衣料事情と衣生活
2−1 改善の必要
(1)衣料事情2−2 衣生活の簡素化
(2)衣生活の改善年 2−3 被服製作・手入れの能
4−2 改善の方向
化 (1)改善の方向
㈲ 被服製作の能率化
(4}被服整理の能率化
⑤ 衣生活の簡素化
.記述なし b.第3 家庭生活の改善 c.第5章 衣生活の経営
高
2 新生活運動と家庭1衣生活の現状
3衣生活の合理化
一 {1)被服材料の質的向上
(2}被服の量的均衡
(3)調整・形態の合理化
(4)被服整理の能率化
、 ㈲ 衣生活運営の社会化
家庭生活編
第2 能率的な家庭生活 1 家庭生活の科学化と能率 2 家事労働の計画
第 IV 期
第 V 期第 VI 期 T4記述なし T5住居領域でゴミと不用品の処理に
T6 住まいの「ゴミのしまつ」の中に1 5 ついて記述。しかし,衣類再利用 古着のリフォーム
についての記述はない。
K4記述なし K5 同上
子
K6記述なし
6
T4記述なし T5記述なし T6 9 これからの家庭生活
、 9−2 住みよい地域の環境につ
いて考えよう
年 *被服についての記述はなし
K4記述なし K5記述なし
K⑤ 同上
1 k4記述なし t5記述なし t63 衣生活
3−7 きちんと整理・保管し よう
一 (3}衣服の再利用
中
<実蹄3>洋服カバーk5記述なし
4 まわりの人々の生活4−2 地域環境作り
k4被服と生活
t5 2 日常着の洗たく ・リサイクルやリフォーム② 被服材料などの進歩と衣生活
2−3 生活への応用
・生活排水2 ・洗剤による河川の汚れ (2}用具・用剤の進歩と安全・
k63 わたしたちの家庭の仕事
環境の保全
3−4 衣類の着用と手入れ
・合成洗剤による河川の汚れ ・衣類の再利用
・皮膚障害 ・節水 5 わたしたちの家庭と地域社
k5衣生活の合理化 5−2 地域の生活環境
一 幽 1 衣生活の資源の節約 ・水資源,合成洗剤の使い方
2 衣生活と安全性 リサイクル
t64 これからの衣生活
k4被服と生活 t5これからの衣生活
・リサイクル3 2 家族の衣生活 ・クリーニングトラブル,化繊や ・クリーニング事故・衣料障ロ
② 被服費と家庭の経済 加工剤による皮膚障害,資源の ・水質汚染・皮膚障害 3 これからの衣生活 有効利用,既製服と流行 ・社会化くレンタル,クリーニン
・資源の活用,環境汚染の防止 k5 これからの衣生活 グ)
・和服と洋服 (話のひろば一新しい被服と生活環
・生活環境の現状と対策
k6住居で,ごみ,生活排水,省資
生活排水 源・省エネの問題を記述
d.第5章 衣生活の経営
e.第2章 衣生活の設計と被服製作 f.第4章 衣生活の設計と被服製作局
3 家族の被服管理 3 家族の被服管理 2 被服材料と被服管理3−1 被服費と被服計画 3−3 家族の被服整理 2−3 被服整理
(D 衣生活の現状 (2)被服管理の合理化 ② 衣生活と省資源
(a)省資源・省エネルギー
(b)被服管理の社会化
・クリーニング
・コインランドリー
・布団乾燥車
・クリーニングの苦情内協