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井 上 勝 人   

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(1)

LP分割法における分権的特性について  

井 上 勝 人   

‡ 序   

経営の分権管理は一般に.職務権限明確化のための権限委譲の意味に理解され   ている。もっともかかる理解は分梅管理に.かぎらず,組級一般の理解に・とって  

(1) も,組織をば権限委譲の系列として−把挺するところの,すぐれで権限委譲重視  

型の・一般組織論的見解と云うことができる。そ・して権限ほ職務遂行上の決定   権,命令権,行為権を意味し,特に.決定権の下部に.対する委譲が分権的組織形   成の中核として,つまり分権管理を進展せしめるものとして把握されている。  

しかしながらわれわれの見解ではかかる理解は企業の分権,特にその現代鱒顕   現形態としての事業部制を考える場合,一山面的であり問題の本質を把握し七い   るとは云い難く思われるので,以下に.おいて事業部制企業を合理的に運営する   すぐれた手法としてのLP分割法に.おける分権的特性を吟味することを通じて   その本質を明らか紅しようと思う。けだしわれわれの見解では理論構成に・おけ   るapparatusがその理論の妥当性と限界とを規制し,その理論の本質を刻挟す  

る上においてこのapparatuSの究明は欠くことのできないものと思われるか  

(2) らである。   

さて,まず考うぺきはLP分割法を企業の生産計画紅適用した場合,何故分   権管理ないし事業部制となるかの問題である。それ紅は順序としてLP分割法  

(1)H.KoontzandO′donnell,PrinciplesofManagement,McGraw・Hill,1955,  

pp.47ff.  

(2)この関係は逆ではないかと思われる読者もあろう。すなわちLP分割法の前提条件    が事業部生産計画の条件紅適合しているからこ.そ,そこに適用されたのだと○ほじめ    はそうである。しかしLP分割法によっで事業部生産計画が策定されているうちに・,   

事業部制の理論はその分析要具たるLP分割法に・よって二脚色されてゆく。そ・の関係は   

恰も演繹と帰納の如くであるとわれわれは考える。   

(2)

算52巻 第6号  

538  

− 2 −・  

そのもの軋ついて論述することが必要であるが,これについては既に・詳論した  

(3)  

ので,ここでは本論に関係ある部分についてのみ触れる。すなわら,LP分割   法ほ係数行列が分割可能な形せしている場合,全体を対象として−・遍に・解く代  

りに,共通部分と子問題とに分割して解く方法である。すなわちもとの問題を  

(4)  

つぎのように書き表わそう。  

Po.恥十Alg十A2y=∂  

Alズ  

=∂1  

(1・一1)  

(1・−・2)  

A2y=∂2   (1−3)  

ただし,瓦,A乞は行列。j)。は単位列ベクトル。盲:∂iは列ベクトルである。   

上式において,式(トー・1)ほ目的関数と共通条件式で,本社のもつLP,  

式(1−・2),(1−・3)はそれぞれ子問題で,事業部のもつLPである。こ・れ   らをズ事業部,y事業部と呼ぼう。ズ事業部は式(1一−・2)の制約のみを留意   して生産計画を樹て,y事業部は式(トー・3)の制約のみを念頭に・おいて.生産  

(5) 計画を樹立する。これらの制約式のうら,種々の生産資源たとえば労働九原  

材料などの調達,投入は事業部長の権限に任せられる。事業部長に大幅の自由  

裁量(discretion)が与えられると云われる所以である。   

以上の如く,LP分割法の現代企業生産計画への適用は分梅管理ないし事業   部制として顕現することが明らかとなった。こ.こで分権管理ないし事業部倒と   いう云い方について一言触れて.おこう。一般に.は前述した如く企業の分権管理   の現代的形態が事業部制であると理解されており,われわれも一応かかる理解   紅.従って,「ないし」と表現したのであるが,厳密紅は後払詳論されるよう紅事  

(3)拙著,計量経営学,1977.53−62ぺ・−ジ。拙稿,事業部制におけるLPの役乱河    野重栄他編「経営と管理」1973.のうち。拙稿,ダソツイ・−ク,グオルフェ「LP分    割原理」紅ついて,香川大学経済論罫,滞44巻籍3号(1971)。拙稿,LP分割原理の    経営経済学的意義,香川大学経済学部研究年報11(1971)・  

(4)G.B.DantzigandP.Wolfe, DecompositionPrincipleforLinearPrograms,    

Operations Research Vol.8,No.1,Jan.−Feb・1960,p・103・G・B・Dant2:ig,   

以Linear ProgI・amming&Extensions, PrincetonUniversityPress,1963,.p.448・  

(5)したがって,共通資源の制約を超過する計画を樹てる場合もあり得る。かかる場合,   

それを制約の範囲内にひき戻す役割を担うのが任意の事業部生産計画の線型結合によ   

って構成される調整プログラム(coordinatingprogram)である。   

(3)

LP分割法紅おける分権的特性紅ついで  

− 3 −  

539  

業部制は云われるが如き分権管理であるかどうか疑問であるとするのがわれわ   れの見解である。従って■事業部制=分権管理という図式ではなく,事業部制と   分権管理とほ異なることを後に主張することをここ/で付言しておく。しかしそ   れまでは・一般的理解に従って事業部制ほ分権管理の現代的発現形態としてこの   言葉を用いる。   

さて,LP分割法に.おける分権管理の特性ほ以下に論ずるように次の2点に   集約できるものと思われる。すなわち,(1)確定性分析(2)計算価格に・よる   集中統制,である。こ.の二つの特性に閲し,以下に・おいて順次考察する。   

ⅠⅠ確定性分析   

まず,(1)の確定性分析についでであるが,筆者がかつて−経営学全開西部  

(6)  

会において報告した際,「現在の事業部ほ戦略的行動を採るので,常に不確実性   に層面している。しかるに,事業部段階のLPを確定性と云うのはおかしいの  

(7)  

でほないか。」という質問を受けた。  

算1図 経営階層と分析要具   経営機能  経営機能  

の特徴  の担当機関   資本予算と事業部   生産計画の関係  

経営機能(広)の   包摂的階層関係  

不確定性    本社 取締役会 社長 ̄ 事業部長  と全体性    確定性と 部分性  

(6)昭和53年5月20日,香川大学において日本経営学会関西部会が開催され,筆者が「ビ    ジネス・エコノミ.ックスの経営学的展開」と題して報善した際のことを指す。  

(7)第1図事業部LPの左参照。なお,この図は経営階層とそれ阻対応する分析要具と   

の関係を示したものであるが,それ以上紅計算価格による資本管理と部門統制とを表   

わさんとする意図から画かれたものである。後者に・ついては後述する。   

(4)

第52巻 第6号   540    ーー ーノ ー  

こ.のような質問の根は偏えに.確定性に対する常識的理解と決定理論的理解の   差という土壌の申に存する。すなわち,決定理論における確定性(certainty)  

とはぺイオフ表(payofftable)において1列の列ベクトルを意味する。そし   てその極大化とは1列のぺイカ■フベクトルのなかから最も大きい一つのぺイオ   フをもたらす行動を選択することである。すなわち,ぺイオフ表を第1表の如  

〈8) くとすると,1列のぺイオフは.第2表の如くになる。   

第2表1列のベクトル  

5   

第1表 ぺ イ オ フ 表  

51   52   ざ7   5机  

::: α :::  l    ︹一  

−  

〃  

ただし,α…aCt  

s…State Of nature   V‥・Value  

β・・・mOney  

を表わす。括弧はセントぺテルスプルグの逆説(the St.PetersburgParadox)  

紅見る如く,ぺイオフは小額ならば金額で表わしてもよいが,多額になれば効   用に比例しなくなるから,効用で表わすこ・とを適当とすることを示している。   

かくて,この1列のペイオフの中からy(垢)の極大をもたらす戦略を求め   ることを確定性の下に.おける選択と云うのである。LPを確定性の下に・おける   分析と規定する所以である。かくして事業部段階払おけるLP分析が確定性で   あると云うことの意味は,何もかも確定的でルーチンワ−ク的であると云うこ  

(8)W.T.Morris.TheAnalysisofManagementDecisions,R・D・Irwin,軍nc・   

1964,pp.8−10.   

(5)

LP分割法における分権的特性について   −5−  

541  

とではなくして上述の如く1列のぺイオフの申から最適ぺイオフを選択すると   いう行動を意味することに留意しなければならない。因に,戦略という言葉は   経営戦略とか戦略的経営計画とか何か特別な意味をもつものの如く大層に・使わ  

(9)  

れているが,原義はnatureに対する Strategyつまりcourseofaction代替  

(10)  

的行動を意味するものであることを付言したい。つまり代替的行動のなかから   選択する行動ほ意思決定の原義にて,これを殊更紅戦略的などと銘打つ必要は   さらにないのである。また,第1表において自然の状態(環境変数)の確率が   既知の場合を危険(risk),知られていない場合を不確実性(uncertainty)と呼  

(11)  

んで区別する。この区別を認めない論者もいるが,経営学的にはこ.の区別ほ重   要である。すなわち,論理的に.ほ危険と不確実性とはその担当機関が異なるの   である。けだし誰がと云う担当機関論的考察ほ経営学に周有のものであり,階   層的紅危険と不確実性とは担当機関を異にすべきであって,かかる考察を抜き   に.しては経営学の存在理由はないと思われるからである。サーなわち,事業部は   確定性を中心として,せいぜい危険迄を担当し,その上位機関である最高経営   層に‥おいて真の不確実性は担当さるぺきであり,第1区匿おいて事業部段階の   部分を確定性と表現した所以である。けだし事業部に.真の不確実性を担当させ  

ることはあまりに.も危険が大きく,また事業部をして全社的統制の枠内にとめ   おかるぺき観点からも避けるぺき問題のみならず,分析要具たるLPの短期性  

(9)R.N.Anthony,Planning and ControISystems,Harvard University,1965・  

p.16.  

アンソニ−は戦略計画を次のよう紅定義してこいる。「戦略計画とほ企業目的の設定,   

変更,達成のための諸資源の決定,あるいはこれらの資源の獲得,使用,処分を支配   する方針などの決定の過程である。」  

(10)こ.の意味からぺイオフ表の行に.strategyのSをとり,列にInatureのnをとる方    が,それぞれの原義を藩按に反映し得てより妥当であると思われる。  

(11)A.G.Hart,Anticipation$,Uncertaintyand DynamicPlanning,New York,   

1965,p.51.  

なお,ハ−トのⅠiskの使い方は「損失を蒙る」という意味でこの言葉を使用し,   

将来の不確実な結果を伴う行動をすべて,われわれの使うriskも含めてunCertainty    と称している。かかる使い方はSavage以降,統計的決定理論に・おける主流をなして   いる。  

Cf.M.Friedman and L.J.Savage,TheUtilityAnalysisofChoicesInvoIv−   

ingRisk,JburnalofPoliticalEconomy,Vol,LVI,August,1948,pp.279ff・   

(6)

−− 6 −  

第52巻 欝6号   542  

から考えても,必然的に招来される命題なのである。このことを中村常次郎教  

(12) 授ほ次の如く述べでおられる。「事楽部長に.委嘱した職務の範囲紅ついても,  

彼独自の判断で処理されてはならない限界を明示すべきであり,資本支出はそ   の代表的なものである。」かかる観点から事業部の生産計画はLP分割法の子   問題,全般管理層は.親問題,最高経営層の設備投資計画はポ−トフォリオ速択  

(ユ3)  

理論紅よるぺし,としたのがわれわれの見解であった。   

なお,事業部生産計画における事業部長の自由裁蔓事項ほ事業部長の意思決   定と共に変わる費用換言すれば生産患の変化に.比例して変わる所謂変動費であ  

(14) り,固定費ほ除外される。このことはLPの分析要具としての性格が短期分析  

のそれであり,LPに.おける目的関数の係数は所謂貢献利益(contribution   pI■Ofit)であって,はじめから固定費関係は含まれていないこと紅注目すべきで  

ある。かくして固定費関係は,それが意思決定の観点からほ設備投資問題とな   り,そ・の影饗するところが企業の全体性,期間の長期性から不確実性に.諸に.直   面することになり,かかる不確実性濫.対応する分析要具としてポートフオリオ   選択原理が挙げられたのである。このよう紅考えてくるとLPは事業部段階に  おける分析要具としてほ適当であるが,階層的にそ\れより上位における分析要   具としては,不適当であると当然帰結されるところである。しかしながら資本   予算論の分野紅LPが適用されてはじめてこの分野の理論的水準が飛躍的に向   上したのも事実である。けだし資本予算論は後述するように.資本配分の理論で  

あり,制約ある資源を適正配分することを目途とするLPに.とっては恰好の適   用舞台であるからである。然らばこの辺の事情をいかに解すぺきであろうか。  

つまり一方ほ不適当であると云い,片方は成果があったとする相剋をいかに.解   すべきであろうか。このことは資本予算論の分野把.LPを導入するに.当って分  

(12)中村常次郎編著,事業部制,71ぺ−ジ。  

(13)前掲拙著,153ぺ一汐。  

(14)事業部ほ利益重任単位,所謂profit centerである。利益匿.資任を持っことほ原価   に.資任を持つことであり,原価町費任を持つことはそれが管理可能原価であるぺきで  

ある。けだし管理不能なものに資任を持たせられることは不合理であるからである。   

事業部の管理可能原価はそれが事業部生産に、比例して変動する所謂変動費となる。し  

たがって事業部の管理不能費である固定費は除外される。   

(7)

LP分割法に.おける分梅的特性紅ついて  

−7− 

543  

析の便宜上置かれていた前提条件を理解することに.よって納得されるのであ   る。すなわち,LPの導入はある・一定の将来の収益と利率のもとにという前提   を.おいてほじめて可能なのである。ことのところをもう少し敷街しよう。この  

(1S)  

問題ほ云うまでもなくこの方面の研究の囁矢であるワインガ−・トナー・による。   

まず順序としてLPを資本予算に適用した場合どのように・定式化されるかを   見よう。記号を次の如く定める。  

Cげ‥…才期のプロジェクトグの資本支出額   C ……≠期の予算制限  

わ‥…・プロジェクトブの正味現在価値   方グ……プロジェクトグの採用単位   Maximize ∑∂彿   クも  

ブ=1  

循  

S.t.∑叛.ガプ≦C£  

グ=1  

(2−・0)  

(2−1)  

0≦.ガク≦1  

(2・−・2)   

式(2−・0)に見る如く,資本予算論に.おいては正味現在価値の極大化を目   的関数とする。ここに.正味現在価値とはある一定の利率でキャッシュ・インフ   ロー・の現在価値からキャッシュ・アクトフロー・の現在価値を引いた値であり,  

去∴…‥利率  

〃…‥・\期間  

とすると,  

1  

す前節   現在価値=将来価値×  

と表わせる0したがって将来価値を現在価値に換算する割引率は赫であ   り,現在価値は将来価値ならび紅利率が確定していなければ求められないこと   が分かる。つまり一列の列ベクトルである。われわれがLP計算は将来収入の   確定化ならびに.−・定の利率を前提とすると述べた理由である。  

(15)軋M.WeingaItneI・,MathematicalProgrammingandTheAnalysisofCapital   

Budgeting Problems,Prentice−Hal1,1963,p.24.   

(8)

寛52巻 算6号  

− β 汁・  

544   

以上の如くしてLPほ本来的紅確定性の下における分析要具であり,それが   たとえ資本予算の如き不確実性に.満ちた分野紅適用されるとしても,確定性と   t、う鋳型にはめ込まれて,はじめて適用可能であることを見落して−はならない   のそある。われわれが事業部段階のLP分析を確定性分析と表記した所以であ   る。而してこの確定性の仮定の分析が次なる特徴に.われわれを導く。すなわち   然らば不確実性ほどうなるのかとして資本予算ならびに二次計画法の登場とな   るのである。   

ⅠⅠⅠ計算価格による集中統制   

われわれほ前節に.おいてLP分析が基本的に確定性を前提としたものである   ことを考察した。そしてての場合の確定性とは統計的決定理論に云う意味のそ  れであって,決しですべてがルーチン化されて:確定的であるとする常識的用法  

とは異なることを明らかにした。今や次なる問題としで第2の特徴点である計   算価格に.よる集中統制の問題に移ろう。   

この問題におけるわれわれの主張点は次の通りである。すなわち,事業部制   を採用している企業は計算価格によって集中的に.統制されるべきであり,この   場合の計算価格ほ資本管理匿おけるそれと,部門統制紅おけるそれが階層的に  結合関係におかるべきである,と云うことである。   

一般に.事業部制は民主化原理によって貫かれたとこ.ろのすぐれた分権管理制  

(1(;)  

度と云われている。われわれは前述したように.この点でも必ずしも全面的に.こ   の意見紅賛成するものではない。すなわち,各事業部は自己の制約条件のみを   配慮して生産計画を樹立する。この制約条件に.おける技術係数は−・般紅原材   料,労働力などの所謂変動費の範疇に.属する項目であるから,これら紅ついて   は事業部は自由裁量権を有することに.なる。たとえば,労働力について見れ   ば,これほ所謂現地採用として表われる。しかしながら,この自由裁盈権は具   体的には事業部長に.与えられる権限であって,それ以下には何らの権限も与え   られてはいない。つまり,部門の長までは大幅の自由裁量権の委譲が見られる  

(16)P.F.Drucker,Conceptof the Corporation,New York,1946,pp.47−48小   

(9)

LP分割法に.おける分梅的特性について   −∵9−  

545  

が,部門内は従来の職能基準による組織そのままである。民主化は部門の長ど   まりであり,この点だけを見ても事業部制が云うところの民主化原理に・貫かれ   た分権管理であるかどうか旋問の感なきを禁じ得ないのである。われわれは.事   業部制とほ民主化とか分権化と云うよりもむしろ集中統制の色彩が強くしかも   その統制ほ命令や強制によらないで価格によるものであり,この点に民主化の   に.おいがなきにしもあらずであるが,価格による集中管理を本旨とすると考え  るのである。   

かぐて−LP分割原理から導かれるこの問題に.おけるわれわれの主張点は,前   述したように.,事業部制を採用している企業ほ計算価格によって集中的に統制  

されるぺきであり,この場合の計算価格は資本管理におけるそれと,部門統制   におけるそれが階層的に結合関係におかるべきである,と云うことである。   

まず,計算価格に.よる事業部の統制ほ本社で計昇したシンプレックス乗数と   技術係数の資料を各事業部に.通知することから始まる。すなわら,シンプレッ   クス乗数はJ/ンプレックス表に.おける判定要素として,また双対価格として,  

対応する資源1単位の増減が利潤に.いかなる影響を及ぼすかを示すものである  

(17)  

から,これを各事業部に通知することによって,事業部LPの目的関数の係数   を改訂し,改訂されたLPの解を次の生産計画にするためである。つまり,共   通資源の振替価格によって原価計算をやり直させるのである。この根拠は,ダ  

(1$)  

ンチヒによると次の通りである。   

記号を次の如く定める。   

ふ‥…式(1・−2)のズ官紀ついて一線型変換によってg豆に.対応するベクトル   ぶ乞を定義する。   

アブ・、…‥式(トー・3)のyバごついて線型変換によってy.グ紅対応するベクトル   アブを定義する。   

が……‥式(3・−・1)に対応するシ∵ンプレックス乗数。  

(17)この証明は,、拙稿,「PI・etialeBetriebslenkung」についで,香川大学経済論叢第52   巻欝3・4号参照。  

(18)G.B.Dantzig,Linear Programming&Extensions,pp.、450L451.   

(10)

第52巻 貨6号  

−−ヱ〃−  

546  

ぶ0……式(3・−2)に.対応するシ∵/プレックス乗数。  

fO……式(3−・3)に対応するシ∵/プレックス乗数。  

入i,〝ブ,…‥・・重みづけ変数。  

事業部からの基底解の凸結㌧合によって構成した親問題は  

∬  エ   

アo.仇十∑ふ入官十∑rルり=盲(入官≧0,什プ≧0)      1       1  

(3・−1)  

(3・−2)  

(3−3)  

=1  

.乙  

∑〝タ=1  

グ=1  

九わ〝タ≧0   式(3)の最適性判定は   

が∫宅一−・ざ0く0   

あるいは  

(19)   

がアブ−がく0   しかる㌣こ   

Minがふ羊Min(が瓦)Ⅹ名=Minγ宜0Ⅹただしγ冨=がA名  

‡三…≡∂1   

(3−4)  

(3・−・5)  

であるから   

式(3−・4)を求めることほ   AlX=∂1  

(ズ≧0)   

γig=gl(Min)(γ…=が瓦)  

を解き,  

Mingl=γ10ズ*<50  

(3・−・6)  

(3・→7)  

なら,Ⅹ*を次の基底に取り入れること紅相当する。   

なお付言すべきは前橋までの研究発表に.おいて本社から事業部に通知さるべ   きものとして共通資源のシンプレックス乗数のみとしたが,前述の如く共通条   件式は本社が所有するLPであり,事業部はこれを持っていない。したがって−  

(19)式(3−4)と式(3−5)の証明は,前掲拙著,58ぺ−ジ参賂。   

(11)

LP分割法に.おける分権的特性に.ついて  −ヱヱ・− 

547  

事業部において∴原価計算をやり直すために.ほ,本社において技術係数の資料を   も合わせて送付することが必要である。かくして本社で計算する振替価格が各   事業部に.通知されて,これによって:各事業部の利潤が規制されること紅注目  

し,ポーモルほ.「LPの双対価格は,中央集権的管理の代替物の役目を果すと  

(20) 共に・,有効な分権的意思決定への遺を開くものである。」と指摘したのである○   

以上に点いて,LP分割法把おけるシ∵ンプレックス乗数が計算価格として各   事業部を統制することが明らかとなったが,ここで見落してならないことほ,  

この段階で計画にとり入れるぺき変数は次の二つの理由紅よって生産屋の変動   と共紅変わる所謂変動費であることであり,このことが次なる問題としての資   本管理に.おける計算価格のデーマにわれわれを導くのである。すなわち算1  

紅,前述の如くLPの本性上その生産計画は短期のそれであり,規模の改変   事項紅関する長期的琴因の考慮ほ排除されている。第2に二,プロフィツいセ  

ンターの長として−の事業部長は,自己の事業部の利潤に眉任があり,利潤着任   ほ自己の統制し得る原価のみに.よって確定されることが妥当であるから,事業   部生産活動の自由裁鼠事項は自己の統制し得る原価,つまり生産盈の増減と共  

に変動する所謂変動費となって,設備投資などの固定的長期的要因の考慮は排   除されることになる。かくて事業部レベル紅おいては固定費関係事項,意思決   定の観点から将来指向的に換言すれば設備投資問題ほ管理不能費として排除さ   れ,そ・の管理は事業部の上位:機関である最高経営層に委ねられることになる。  

かくして資本投資に.関する計画と統制の問題は経営層において担当せられ,こ   の間題の処理を制度的に.保障する機構が資本予鈴制度となり,′資本予算制度を   成立せしめる理論が資本予算論というこ.とに.なる。かくてわれわれは次なる主   張点である資本管理における計算価格の問題紅入ることに.なる。   

さて,企業における資本管理の考え方に.はいろいろなアブロL−チがあるが,  

ここでほ前述したよう紅近代的な投資決定論の鼻祖たるディ−ンの資本予算論  

く21)  

によって計算価格の問題を考えること紅する。そしてしかも本稿の主題ほ.あく  

(20)W.J.Baumol,Economic Theoryand Operations Analysis,Prentice・Hall;   

1961,p.116.  

(21)J.Dean,CapitalBudgeting,ColumbiaUniversity Press,1951.   

(12)

舞52巻 第6号  

ー∫2−   548  

までもLP分割法にあるから,主題からはずれることのないように配慮しなが   らそれと関連する限り紅おいて論を進めよう。   

資本予算論は資本支出の計画と統制に.関する理論であり,その中心は資本配   分に.ついての分析である。すなわち,(1)資本に対する需要,(2)利用可能   な資金の供給,(3)資本配分,をその内容とするも,その主題は,いくつかの   投資提案に限られた資金をいかに配分するかを考察するもので,その際の基準   になるものが収益拒否率である。収益拒否率は資本需要曲線と資本供給曲線と   の交点で成立し,資本需要曲線は予想収益率で,資本供給曲線は資本費で測ら   れるから,収益拒否率とほ収益率と資本費の等しい点で成立する均衡金額であ   ると云うことができる。この均衡金額であると云うことから,収益拒否率はシ   ュ.マーレ∵/バッノ、の最適有効数に.対応するものであることは直観的にも明らか  

(22) であろう。このような収益拒否率はこれ以下の収益率しかもたらさないような  

投資提案は拒否されるという機能を有し,この意味でこれはまた基準価格であ   ると云うことができる。そしてかかる機能は数理計画法における最大化問題に   対するdualのもつ基本的性格であり,均衡価格を成立せしめる要因として機   能するのである。したがってわれわれはこの資本予算の問題に.数理計画法を適   用した場合のdualが収益拒否率に.なれば,この収益拒否率はLP分割法の   dualと結合されて,現代の分権的大企業は究極的紅は収益拒否率という計算   価格紅よって統制されるぺきであるというわれわれの主張が証明されることに  なる。   

さて,上述の如く,今や資本予算問題に数理計画法を適用して,そのdual   が果して収益拒否率になるかどうかを考察する段階にきたのであるが,その前   に何故数理計画法を適用するかについて簡単に触れよう。資本予算理論の構成   ほ,前述したように,資本需要曲線と資本供給曲線との交点で成立する収益拒   否率によって,それ以下の収益率の投資提案を切捨てるというものであった   が,この理論はディ−ン自ら概念的モデル(conceptualmodel)と呼んでいる  

(22)最適有効数ほ限界効用と限界原価との交点に成立する均衡価格である。  

Cf.E.Schmalenbach,Dieoptimale GeltungSZahl,K81n,1947,SS.11−14.   

(13)

LP分割法における分権的特性について  

・−ヱ∂−・  

549  

(23)  

ように.,実践的価値は乏しい。何奴なら,例えばあらゆる投資提案の予想収益   率を計算してそれが連続的紅変化するような資本需要曲線を画くととは不可能   であり,資本供給曲線に.しても自由に資本を調達できしかもその場合の資本費   が確定していなければ画けない。そこでディーーンは正確度ほ若干犠牲に.して,  

収益拒否率を両曲線の交点でほなく,ある幅を持たせて領域として把擾するべ  

(以)  

く次の4つのものに分けた。すなわち,第1は基礎的最低率(basic minimum   rate),第2は変動的有効率(fl11Ctuatingeffectiveはte),算3は長期拒否率  

(long・runCut・Offrate)写・そLしで第4は例外的拒否率(exception rates)である0   算1の基礎的最低率は読んで字の如く拒否率の下限として機能するものであ  

り,算2の変動的有効率は拒否率が移動しても有効な上下の幅を示しており,  

算3と第4の拒否率は長期的ならびに.戦略的投資に.おける上下の幅の大きい拒   否率である。ここ紅戦略投資とは投資効果が遅行的間接的不可測的であるため   に.,収益率競争から保護されなければならないもの,例えば厚生福祉投資など   を指して:いる。   

かくして収益拒否率ほ資本需要曲線と資本供給曲線との交点ただ1点ではな   く,相当の幅を有する許容域として把握されるに.至ったが,このことばまた多   分紅経営者の盗意をも介入させる余地大となり,当初この資本予算モデルが事   業部長の説得の巧拙や粘り紅よって決定されがちな収益拒否率を,客観的に.き   めることのできるものとして評価されたその長所を自ら放棄すること紅なって  

しまったのである。そ・の原因ほ偏に実践性を増すための工夫として単紅収益拒   否率の幅を拡大する努力しか試みなかったことに.求められる。つまりこの概念   的モデルは最後の投資単位がいくばくの収益をもたらすかを考えるものである   から,これは限界分析であると云えるが,この限界分析の範囲内紅とどまる限   り実践性は増加し得ないのである。かくて限界分析紅代えるに数理計画法の登   場となるのである。   

かくして数理計画法は従来の理論のもつ前提条件を一つずつ取り去って\次第  

(23)Dean,Op.Cit.,p.596.  

(24)Op.cit.,pp.586−595.   

(14)

算52巻 第6号   550  

−−ヱ4−  

に現実に接近していくため紅導入される分析要具であり,それには線型計画   法,ニ次計画法(quadraticprogramming),動的計画法(dynamic progr amm−  

ing)などがあるが,こ.こでは二次計画法をとりあげて.それを資本予算問題に 

(妨) 適用しそのdualを考えるのである。   

ニ次討画法を内容とする代表的なOR手法はポートフォリオ・セレクション  

(portfblioselection)の理論である。ポートフカ・リオ・セレクVヨンはもと金  

■ 融資産選択の理論として株式・社債などの有価証券を危険の最′J\となるように 

(2¢)  

組み合わせる理論である。それが次元の異なる設備投資問題に・適用するのは議   論のあるところであるが,こ.こでは資本配分の問題として設備投資問題もそれ   がもたらすであろう収益を株式のポートフカ・リオのもたらす収益と同列に見立   てて,ポ−トフォリオのなかに含ましめて考えるのである。したがって当該問   題紅ほいろいろな投資対象が含まれ,その企業の相互依存的投資系列を構成す   る投資要素に.,いかに資金を配分するかを考えることになる。こ・のような考え   方によって−,資本予算問題に.ポ−トフォリオ選択理論を通用した研究として,  

(27)  

われわれはコ−エソとエルトンの労作を挙げることができる。   

コ」−エソらが資本予算問題紅ぷ−トフォリオ選択理論を適用するに.当り依拠   した考え方は,設備投資。既存投資および証券投資などをポ−トフォリオを構   成する要素としで,これらのいかなる組み合わせが分散ならびに共分散行列に   ょって表現せられる危険を極小犯するかということが定式化され,何よりも重   要なことほt.のdualについて語られていることである。すなわち,Comple・  

mentary Slacknessの定理に.よって,投資提案の予想収益の現在価値が投入資  

(25)もとより二次計画法でほなくして線型計画法で考えれば,より簡単であるが,線型    計画法では前述した如く確定性の仮定をおかねばならず,不確実性に・対処するために    は,やほり二次計画法の方がベタート思われるのである。ただし計算が複雑に・なり実   践性ほ劣ってくる。  

(26)ここに云う危険ほ,前述の統計的決定理論に云う危険ではなく,損失を蒙るという   意の常識的用法である。  

(27)K.J.Cohenand E.J.Elton,Znter−7bml,OralPoYjわIio Analysis Basedon    Simulaiionqf .70iniReiurns,Management Science,Vol・14,No・1,pp・5→ 

18.   

(15)

LP分割法における分騰的特性把ついて   −ヱ∂−  

551  

金の現在価値を越える分,つまり当該プロ汐エクトの純現在価値は,姶収益の   現在価値を危険と資本費で評価したものとして把撞され,これほ.まさしく収益   拒否率の汲定要因と等しく,したがってこ.とに.資本予算問題に.ポートフォリオ   選択原理を適用した問題のdualは収益拒否率であることが明らかとなるので  

(班)  

ある。   

かくして収益拒否率ほ投資総畳を決定し,この投資総患を決定することは,  

こ.の最後の一単位のもたらす利潤を決定することから,利潤標準として事業部   を統制する標準原価となり,嶋一貫して分権的企業を統制することに.なる。分権   管理とは,このよう紅,単に権限を委譲することを意味するのではなく,収益   拒否率という計算価格に.より全体的集中的紅統制されることを内容とするもの  

である,というと.とができる。   

ⅠⅤ 給   

以上われわれほ.LP分割法の分権的特性について,それを確定性分析と計算   価格に.よる集中統制という要点に.集約して諸論点を考察してきた。すなわち前   者把ついてはLP分割法が確定分析であるというその理由のため紅,さら紅不   確実性を担当する機関と分析要具が必要になり,それが事業部の上位機関であ  

(少)  

る最高経営層とポ−・トフォリオ選択理論となる。後者についてほ,このポ−・ト   フカ.リオ選択理論の適用対象すなわち資本管理とLP分割法の対象たる事業部   門との統制が計算価格に.よって行われることを概観してきた。そして前者は後   者を語るための前提であり,要ほプライスメカニズムに.よって企業内紅おける   資源の適正配分を図ろうとする考え.方,所謂intracompany pricing の問題で   ある。すなわち,企業行動の基盤である競争構造は各業種に.よって異なるとし   ても,現代紅おける代表的競争構造の型はビッグビジネス軋よって行われる寡   占(01igopoly)であり,その内容は一般に,非価格競争(non・pricecompetition)  

(28)これらの分析に関する数式展開による記述と説明ほ,前掲拙著,146−153ぺ・一汐参   照。  

(29)因に.,本文でも前述したが,共通条件式は全般管理層(g♂乃β7 αJ沼α柁αge椚βカf)の   

所管である。   

(16)

第52巻 繹6号  

−−ヱ6∴【   552  

(30)  

である。けだし,価格競争はCutthroatcompetitionであるとしてお互いに回   避され,価格ほ協定されて硬直化される。かくして価格の自動調節機能は失わ   れ,企業は自らの立場にお沌、てかかる価格の自動調節機能を保持する価格を設  

(81)  

定せざるを得なくなる。つまり企業内各部門で受渡される財に価格を与え,こ   れによって企業内経済の運行をスムL−ズに行おうとするのである。要するに自   由競争場裡に.働くプライスメカニズムの導入である。例えば企業内機械管理セ   ンター・は自ら管理する機械を各事業部に貸すことに.よってその賃貸料で賄われ   る独立採算単位であるとする。機械管理センタ−の最も事業部長もこの賃貸料   に対して自己の利益が最大になるよう紅白由競争的に行動する。然る聴この賃   貸料の安定する値はこの磯城を使用した事業部生産のLPのdualである。さ   き隠見た本社から事業部へ通知されるシ∵/プレックス乗数はこのdualなので   ある。かくてこのような計算価格に.よって経営体を統制しようとする考え方が   LP分割法の基本原理である。かくしてdualの計算システムをすべて本社で   留保する事業部制とはすぐれて集中管理された体制であり,本稿序に・述べた如  

くそれが分権管理のすぐれた形態であるとはわれわれほ考えないのである。民   主化を標模する分権管理とは事業部制のような部門管理層紅とどまる方向では   なく,西ドイツの共同決定法(Mitbestimmungsrecht)に・よる労働組合の最高   意思決定に参加する如き方向に在るとわれわれは考え.るのである。   

以上述べたる如く,われわれは事業部生産計画の策定に・LP分割法を適用し   た場合,分析要具たるLP分割法が規制してくる状況を二つの特徴点としてと   らえ,かつ若干の批判を試みた次第である。然れどもこ・の批判はLP分割法が   適用されついで形成されてゆく状況に.対するものであって,LP分割法そのも   のに対するものではなく,むしろ計算価格に・よるかくの如き統制の問題は,事  

(30)J.Dean,ManagerialEconomics,prentice・Hall・1951,pp・51−52・  

(31)かかる価格と所謂商品の市場価格とは根本的紅その機能を異にする。前者ほ計昇価    格であり後者ほ国民経済的価格である。これらを混同すると議論が常紅混乱するo  

Cf.E.Schmalenbach,PretialeLenkung des Betriebes,Ⅹ61n,1948,SS.8−9・   

J.Dean,DecentralizationandIntracompanyPricing,HarvardBusinc$SReveiw,  

Vol.33,No.4,p.67.   

(17)

LP分割法紅おける分権的特性について  

ーーJ7・冊  

553  

業部を企業ないし生産体に,本社を当該プル−−プの中心機関ないし中央の計画   機関に置きかえると,カルテルに.おける計算価格ないし社会主義国家に.おける  

(32〉 統制経済的問題としても取りあげられ,かつかかる問題に対する分析要具とし  

ては当面LP分割法以外に存在しないこと 

られざるを得ないことを見落すべきではないのである。  

(32)E.Schmalenbach,FreienWirtschaftzumGedachtnis,K81nu.Opladen,1949,   

S.95.松尾意橘他著,計画経済と独立採算制,中央経済社,1978.   

参照

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