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ボアソナード民法研究会

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ボアソナード「帝国民法草案註解」 ⑵

Boissonade,Projet de Code Civil pour lʼempire du Japon accompagné dʼun commentaire, tome 1˜4(2)

ボアソナード民法研究会

(代表 清 水 元) 訳

清 水 元

第節 抵当権の種類

DES DIVERSES ESPÈCES DʼHYPOTHÈQUES

Art. 1209. Lʼhypothèque est légal, conventionnelle ou testamentaire.

[2116, 2117.]

[試訳]

抵当権は,法律上,合意上,または遺言上による。

Nº 418 各種の抵当権は,優先権であれ,追及権であれ,その効果に違

いはない。ここで区別されるのは,その[発生]原因の観点からである。

フランス[民]法典では,抵当権は�種がある。すなわち,法律上,裁 判上1)および合意上のものである。最初の[�つの]ものは法律の直接の 規定から生じ,最後のものは当事者の合意より生じる。草案において再度 見いだすことになるこれら[のうちの]�つの原因はすでに,それ自体き わめて明確な意味をもっていた。第二のものは,裁判および裁判の性質を 有しないがほぼ同様の権威を主張しうる特定の裁判上の行為から生じる。

われわれは裁判上抵当権には少々留意しなければならない。第一に,そ

所員・中央大学法科大学院教授

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の意味もそれ自体[法定抵当権や合意による抵当権ほどは]明らかではな く,また,草案はこれを維持しないからであって,その除外する理由をあ えて示さなければならないためである1)

Nº 419 裁判上の抵当権hypothèque judiciaireは金額の支払が命じられる 場合,判決によって宣告されるものではない。それは判決から潜在的に生 じるのである。この点においては,それは法律が判決に結びつけているが ゆえに多かれ少なかれ法的なものなのである。本来,債権者の資格を区別 すべきものでも,債権の性質や原因を区別すべきものでもない。なすべき 登記簿に記載される金銭あるいは金銭に評価されうる価額の支払命令を得 るだけで十分なのである。

フランス民法典(2117条,2123条)は,この点について,裁判所が与え るいわゆる「裁判上作成された私文書の承認」なる判決と同視してい る2)

債権者が債務者を訴求して勝訴したという事実によって,さほど厳しく はないであろう他債権者,あるいはその権利が弁済期に達していないであ ろう他の[債権]者に対する優先権を確保するということは驚くべきもの と言える。この規定は歴史的にしか説明されず,そうした旧い原因が消滅 したことは,制度そのものが今日では捨て去られなければならないことを も説明することになるだろう。

Nº 420 フランス古法においては,黙示の抵当権hypothèque taciteは公 証人の前で,執行形式を以て締結されたすべての契約債務に附着するもの であった。それは一般的[抵当権],すなわち,債務者の現在および将来 の全財産の上に存在するものであった。王の名で命じられた執行形式が財

1) ちなみにボアソナードは,「裁判上書入質ニ付テノ論説」を遺している(『ボ アソナード氏質問録』[明治17年]所収)。その概要については,藤原・前掲書 41頁を参照されたい。

2) これに対して,藤原・前掲書42頁(註)は,私著証書の承認・検証判決と 弁済を命じる判決は異なるものであって,なんら共通性をもたないとして,両 者を同視するボアソナードの理解は表面的であるという。

(3)

貨の上に強力な力を及ぼしたことは,正しいことであるように思われたの である。やがて,それ自体が王の名でなされ,その判決原文も執行形式を もって勝訴当事者に送達される判決が,同じように一般的抵当権hypothè-

que généraleを導くものでないというのは,奇妙なことであると考えられ

た。判例および王令Ordonnances royalesがそれを補充したのである。

Nº 421 しかしながら,こうした変則を終わらせるとしても,他の債権

者に対する優先[権]を勝訴した債権者のために認めているが,われわれ はそれは絶対的正義に合うものではないと言おう。

公証人の前で約束した者が黙示の抵当権を有するということは,債務者 の意思に合致しうるものである。約束のそうした潜在的効果を知り,ある いは知りうべき債務者は,それに合意したとみなされるからである。しか し,かれは明示的に合意による抵当権を与えることもできるであろう。し かし,明示的にも黙示的にも,その財産上に抵当権を設定することに同意 しない債務者は,期限に債権者を満足させられなかったゆえに,突如とし て一般的抵当権の負担を発見することになるが,とりわけ,権利が弁済期 に達しておらず,あるいは厳しい取立てをしない他債権者にとっても,そ こに衝撃的な結果[=ふい打ち]が存在したのである。

[フランス]民法典の編纂がなされたとき,抵当権が共和暦�年霧月11 日の中間法によって維持され,民法典もその多くを取り入れた(�条参 照)ものであるとしても,公正証書に附着した黙示の抵当権を想定するこ とは放棄されたのである。しかし,第一に古法に存在していたのとは逆の 変則により,裁判上抵当権が維持された。この抵当権の基本原理は消失し たが,[なお]理性的にも公平上も正当性の乏しい適用を維持しているの である。

裁判上抵当権が学説・判例上好意的に見られなくなって以来,その廃止 はしばしば求められた。1846年のフランスの抵当権改革草案もこれを維持 しなかった3)。ベルギーの抵当権法(1851年12月16日法)も認めていな

3) 藤原・前掲書43頁(註20)によれば,1846年の抵当権改革法案としているボ

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い。オランダ新民法典も同様である。これに対してイタリア民法典はこれ を維持している。

日本の草案においても導入することを考えるつもりは少しもない。ただ し,遺言抵当権はベルギー法に倣って導入するが,これについては第�節 で説明することにしよう。

草案が拒否しなければならない裁判上抵当権の他の独自性とは,それが 裁判上承認され,あるいは,債務者の支払命令を得た私著証書seing privé だけを有する者が取得することができ,公正証書を有している者は,それ が執行上の[形式]であっても,こうした抵当権を取得することができ ず,裁判に訴えることができないことである。古法は黙示的抵当権[の存 在]によって,こうした変型を有しなかったのである。

*フランス民法

2116条

抵当権は,法定抵当権,裁判上抵当権または合意による抵当権とする。

2117条

法定抵当権とは,法律によって生じる抵当権である。

裁判上の抵当権とは,判決または裁判上ノ行為acte judiciaireより生じる抵当 権である。

合意による抵当権とは,合意によるもので,かつ,契約および証書の方式によ る抵当権である。

2123条

裁判上の抵当権は,対審判決であると欠席判決であると,また,確定判決であ ると仮判決であるとをとわず,判決を取得した者のために生じる。また,私著証 書による債務証書に付した署名の裁判上の承認または検証によって生じる。

裁判上の抵当権は,債務者の現在および[将来]取得するであろう不動産にお

アソナードの理解は,記憶違いか誤植によるものである,とされているが,こ こでは立ち入らない。なお,今村与一「一九世紀フランスの抵当権改革(1-

⑵)」社会科学研究37巻�号[1986]以下参照。

(5)

よぶ。ただし,以下に示す制限の場合を除く。

仲裁決定décisions arbitralesは裁判上の執行命令を備えた場合にかぎり,抵当

権を生じる。

抵当権は,フランスの裁判所によって執行宣告がされた場合にかぎり,外国で なされた判決からも生じる。ただし,法政策または条約で生じることのある反対 の規定を妨げない。

*旧民法債権担保編 203条

抵当ハ法律上,合意上又ハ遺言上ノモノタリ

Art. 1210. Lʼhypothèque existe, de plein droit et indépendamment de toute stipulation:

1º Au profit des femmes mariées, pour toutes les créances quʼelles peuvent avoir contre leur mari, sur tous les immeubles du mari, même mineur, tant sur ceux qui lui appartiennent au jour du mariage que sur ceux quʼil acquiert ou qui lui adviennent postérieurment, à quelque titre que ce soit; [2021, 1eral., 2122, 2135-.]

2º Au profit des mineurs non émancipés et des interdits, soit judiciairement pour démence, soit légalement, par effet de condamna- tions criminelles, pour toutes leurs créances contre leur tuteur, sur tous les biens présents et à venir du tuteur; [2121, 2eal., 2122, 2135-.]

3º Au profit de lʼEtat, des départements, des communes et des établissements publics, sur les biens de leurs comtables à raison de leur gestion, dans la mesure et sous les conditions déteminées, par les lois administratives. [2121, 3eal.]

Est encore considérée comme légale lʼhypothèque qui nâit dʼun privilége dégénéré, aux termes des articles 1187, 1188 et 1190.

[試訳]

抵当権は,当然かつすべての約束から独立して存在する。

(6)

妻の利益のため,妻が夫に対して有しうるすべての債権につき,夫が 未成年者であっても,婚姻時かれに属しており,また,その名義をとわ ず,後にかれに属することのあるすべての不動産上に存する。[第2121 条第項,第2122条,第2135条第号]

未解放未成年者,および,それが心神喪失による裁判によるのであ れ,有罪判決の効果により法律上,禁治産者の利益のため,後見人に対 するすべての債権につき,現在および将来の後見人の総財産の上に存す る。[第2121条第項,第2122条,第2135条号]

国家,県,市町村および公共団体の利益のため,会計官の業務につい て,その財産上に,行政法によって定められた基準と条件において,存 する。[第2121条第項]

第1187条,第1188条および第1190条の規定により転換した抵当権も先 取特権より生じる法定抵当権とみなされる。

Nº 422 一般に,法律は個人またはその代理人みずからが利益を得させ

ることを許している。法律がそれに備えるのは,無能力者incapablesを,

その非力に対してであれ,その代理人の懈怠négligenceあるいはその相反 する利益に対してであれ,保護しようとする場合である。

こうした理由は明らかに前のつの法定抵当権に適用される。すなわ ち,夫の財産に対する妻のそれと,後見人の財産に対する未成年者および 禁治産者のそれである。

法定抵当権は未解放未成年者にのみ属する。解放された未成年者につい ては後見人はおらず,単なる保佐人curateurがいるのみであるが,この 者は代理権を有せず,かれを補助するだけであって,結果としてかれの財 産を管理するものではない。

第三の法定抵当権,会計官の財産に対する国家およびその他の法人の抵 当権は,二重の目的を有する。まず,会計官の長が,会計業務の開始時の みならず,新たな財産を取得するごとに,合意による抵当権を約束するこ と[=煩雑さ]を免れさせるものである。往々にして後者[=新たな抵当 権]は有用な時期には設定しえないであろうからである。次に,長が会計

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官の監督義務そのものを懈怠した場合の国の保証に備えることである。財 政法に属するこの抵当権は明らかに特別の行政法により定められるが,草 案はそれを参照するにとどめる。

第�の最後の法定抵当権は転形した先取特権から生じるものであり,第 1187条,第1188条および第1190条に定められた期間および条件で公示され ることがなかったものである。ここでは抵当権は夙に法律によって認めら れており,先取特権と同一の原因を有するが,[その効力は]脆弱である。

Nº 423 フランスでは,受遺者のために遺贈者の財産上への法定抵当権

が存在する(民法典第1017条参照)。これが与えられたのは,しばしば相 続開始後一定期間その権利を知らずに,また,この期間中遺贈に充てられ るべき死者の財産を承継人が減少させることがあるからである。日本でふ たたびこれを取り上げるべきだとは思わない。というのも,受遺者léga- taireは動産および不動産につき財産分離séparation des patrimoinesをして おり,まさにそれによって十分に保護されていると思われるからである。

これがフランスで若干の学者がこうした抵当権への十分な有用性を認め ず,形を変えた財産分離と同様の権利以外のものではないと考えている点 である。

草案では,財産分離につき先取特権の効果と利益のすべてを与えたか ら,さらに受遺者に対して一般抵当権を与える利益はなんら存在しない。

そもそも,受遺者は第1218条の下で有用性を示している遺言抵当権を受け ることができるであろう。

Nº 424 他のすべての法定抵当権がそうであったように,妻の法定抵当

権および未成年者と禁治産者の法定抵当権については,日本では全く新規 なものであり,少しく取り上げるのが適当である。日本では,これまで妻 の権利は過度に夫の専断に委ねられていたように思われる。そもそも,妻 が,夫の管理に服し,かつ,婚姻の解消のときに返還または取り戻すこと のできる固有の財産を有するということがきわめて稀である。事実,女子 は一般に父の相続から排除されており,家の唯一の子であるときは,その 夫が父の養子となり,財産の相続人であると同時に家とその家名la mai-

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son et du nomの後継者となったのである。

しかしこうした状況は新法では修正をみることになろう。女子が婚姻の 前後に財産を取得したときは,夫がしばしば財産の管理をすることになる であろうし,夫は婚姻解消の際にその返還をしなければならないであろ う。夫はこのようにして妻の債務者または相続人となるであろう。

抵当権については,妻は夫の債権者として一般法に服するならば,夫が 支払不能となりうる[場合]に対する担保または保証をみずから求めなけ ればならないであろう。ただ,妻が抵当権を有するのは,婚姻時であれ,

その婚姻後であれ,その設定を受けたときに限られる。しかし,愛情や敬 意の自然の感情は家事を支えるが,自由を妨げ,利益を危うくすることは 容易に理解されるのであり,それは,夫の権威のもとにある婚姻中のみな らず,婚姻時でも,親族familles間で決定された時はそうである。

Nº 425 こうした妻の利益への危険な状態は,つねに民事法立法者が関

心を寄せるところであり,すでにローマ法では,妻の嫁資の担保のための 法定先取特権が存在したのである。フランスでは,とりわけ嫁資の不可譲 性につき過剰なものであったし,現に過剰なままである(第1554条)が,

草案ではこれを認めない。われわれの関心事である抵当権に関しては,登 記を免除した例外的な恩恵である。それは第三者に予測はしうるものの,

正確にはその重要性を認識しえない優先権をこうむらせることになる。こ のような恩典は草案ではもはや認められないであろう。その理由はその箇 所で説明することとしよう(第1222条)。

さらに妻の法定抵当権は,ここでもフランスと同様に一般[的抵当権]

である。それは,無償で取得したものも有償で取得したものも,夫の現在 および将来のすべての不動産の上に置かれるが,それは,夫に対する妻の すべての債権を区別なく担保することになる。

Nº 426 未成年者および禁治産者の法定抵当権も同様に一般[的抵当権]

である。それはヨーロッパでは,妻の抵当権と同様に古来のものである が,日本ではまったく行われていないものである。

未成年者のための法律の介入は妻の利益よりも必要である。事実,妻ま

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たはその両親は,場合によっては,前に述べたような体面という困難なし に,嫁資およびその取戻しの担保のため,妻に抵当権または他の担保を与 えることに同意するよう夫と約束し,また,それを得ることはできる。そ して,夫の誓約の中で婚姻の申出があれば,放棄の要求がなされることは なかろう。

未成年者と後見人の利害関係については,これとはまったく異なってお り,われわれが未成年者について述べようとすることは,心神喪失による 禁治産者と同様の理由によって説明されるものである。第一に,未成年者 はみずから約束することはできない。その親族については,その遠近はあ っても,つねに抵当権を約束するほどの必要な熱意を欠いていよう。ある いは,後見人が少なくとも近親,たとえば,父母が存命であるときは,良 心の咎めや遠慮でこれをしないであろう。最後に,後見人と夫との間には 大きな違いがある。後見人は後見を承諾したのではないため,合意による 抵当権を拒むであろう。これこそ,成年者に他の損害となるであろうもの なのである。

こうした不都合はすべて,法定抵当権の創設によって避けられ,状態は 単純化される。これは,十分に効果があるが,過剰ではない方法により,

法定抵当権により危うくなる信用を守るため,また,煩わしい負担を果た さずに済むよう,後見を免れようとする悪質[な者]を強制するものにほ かならない。

Nº 427 禁治産者については,それが,純粋な保護である心神喪失によ

る裁判上の決定による禁治産であれ,民事刑であり,かつ,刑事罰の補充 として法律より生ずる禁治産であれ,法律は,法定抵当権がこの者を保護 するということを示す配慮をしている。こうした付加刑は,事実,被告が 自己の財産の処分によって,主たる刑と相容れない自己の満足を得る手 段,とりわけ逃走の手段とし,看守の歓心を買うことを妨げる目的を有す るものである。しかしながら,かれが自己の財産をみずから管理しえない からには,法律は,貪欲な親族の餌食とならないよう後見人を付すること にした。そして,後見人が定められるからには,後見人はみずから,後見

(10)

人に要求される通常の担保に服するものでなければならない。

*フランス民法

1187条

期限はつねに債務者のために約されたものと推定する。ただし,約束または 四囲の状況により債権者のために合意された場合は,この限りではない。

1188条

債務者が破産したとき,または債務者の行為により契約上債務者に付与され た担保を減じたときは,債務者は期限の利益を主張しえない。

1190条

選択権choixは,明示的に債権者に属する場合でなければ,債務者に属す

る。

1554条

嫁資として設定された不動産は,婚姻中は夫によっても,妻によっても,ま た,夫婦の共同によっても譲渡できず,抵当権を設定することもできない。た だし,以下の例外を除く。

2121条

法定抵当権が付与される権利および債権は以下のものとする。

妻の,夫の財産に対して

未成年者および禁治産者の,後見人の財産に対して

国,市町村および公共団体の,収税官receveursおよび会計官comtables の財産に対して

2122条

法定抵当権を有する債権者は,債務者に属するすべての不動産および爾後債 務者に属することのあるすべての不動産につき,権利を行使することができ る。ただし,以下の制限の場合を除く。

2135条

抵当権は次の場合には,登記inscriptionから独立して成立する。

未成年者および禁治産者のための,後見の受諾の日からの後見人に属す

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る不動産に対する管理を理由とする[抵当権]

妻のための,婚姻の日からの夫の不動産に対する夫婦財産契約conven- tions matrimonialesを理由とする[抵当権]

妻は,婚姻中に妻に帰した相続または妻の受けた贈与より生じた嫁資の金額 については,相続の開始または贈与が効力を生じた日より抵当権を取得する

妻は,夫とともに契約上負担する債務の求償およびその特有財産譲渡代金の 利用を担保するための抵当権を,債務負担の日または売買の日より有する

いずれの場合においても,本条の規定は,本編の公布前第三者の取得した権 利を害することができない。

*旧民法債権担保編 204条

左ノ抵当ハ総テノ要約ニ関セス当然成立ス

第一 婦カ其夫ニ対シテ有スルコト有ル可キ総債権ノ為メ婚姻ノ日現ニ夫ニ属 スルト日後之ニ属ス可キトヲ問ハス其夫ノ総不動産ニ付キ婦ノ有スル抵当担夫 ノ未成年タルトキモ亦同シ

第二 未成年者及ヒ禁治産者カ其後見人ニ対シテ有スル総債権ノ為メ現在ニ属 スルト将来ニ得ルトヲ問ハス後見人ノ総不動産ニ付キ有スル抵当

第三 国,府県,市町村及ヒ公設所カ行政法ノ定メタル限度ト条件トニ従ヒ会 計吏員ノ管理ノ為メ其不動産ニ付キ有スル抵当

第百八十一条及ヒ第百八十四条ニ従ヒテ変性シタル先取特権ヨリ生スル抵当 ハ法律上ノ抵当ト看做ス

Art. 1211. Lʼhypothèque conventionnelle ne peut résulter que dʼune convention passée devant notaire, en la forme ordinaire des actes authentiques, à peine de nullité absolue. [2117, 3eal., 2127.]

La procuration pour consentir une hypothèque sur les biens du mandant doit être spéciale et donnée égalemant devant notaire; elle doit être relatée en substance dans la convention dʼhypothèque.

(12)

[試訳]

合意による抵当権は,公証人の面前で,通常の公正証書の方式による合 意によってのみ生じ,これに反するときは絶対的無効となる。[第2117条 第項,第2127条]

委任者の財産の上への抵当権を承諾する委任も,特別なものでなければ ならず,かつ公証人の面前でなされなければならない。委任は抵当権の合 意の中に内容を記載しなければならない。

Nº 428 合意による抵当権は,「solennelles要式[契約]」と呼ばれる数 少ない合意である。その方式が基礎と結合しているので,これが守られな いときは合意が全体的に無効となるのである。しかもこの方式は容易に守 られる。

今日では,公証人が日本で設けられるので,公証人の面前でこそ,書式 契約がなされなければならない。公証人が設けられなかったときは,裁判

所書記官greffier du tribunalの面前で,当事者にとり同等の保証およびお

そらくわずかな費用でもって公式証書が作成されなければならない。

法律が契約者に対し,純粋な私的行為に公吏の介入を課するとき,それ は明らかに,生者間贈与のような一般の衝動[的な行動]に対する,ま た,ここでの関心事である抵当権の場合のような容赦ない債権者の過剰な 要求に対する,保護の目的からである。事実,債務者とりわけ借主が信用 を得るため,抵当権の設定をせざるを得ない場合,かれは,必要とされる よりも多くの担保を債権者が要求するのではないかと怖れることになる。

そこで,公証人は,かれに与えられた法律上の知識,経験および公正さを もった適正な影響の下に,債務者にその利害を教え,その不十分さを用心 させ,しばしば,債権者は[債務の]担保に十分であるもので満足するよ うにさせることになろう。

要式solennitéにはさらにつの利点があるが,それは個の要式契約

に共通のものである。すなわち,証書の原本の作成により当事者の利益の ためにも第三者の利益のためにも保存を確保することであり,また,公正 証書によりほとんど争いの余地のないinattaquable証拠を備えることであ

(13)

[原註�]

[原註�]正規の法典は,抵当権設定につき公正証書を要求していない。

Nº 429 抵当権の設定のために要求される要式の当然の結果として,法

律は,事実上の理由によって債務者みずからが関与することができず,委 任代理人によって代理させる必要があるときは,これについての委任は,

同様に公証人の面前でなされることを望んでいる。むろん,これは主たる 証書を受けたと同じ公証人の前である必要はない。

抵当権の設定において委任の内容を記載するのは,債務者の同意を証明 するだけではなく,受任者がその権限を逸脱しないかどうかを点検する目 的である。

われわれが想定しているのは,この委任には理由があること,すなわ ち,債務者が抵当権設定に関与することを妨げる事実上の原因[があるた め]である。たしかに,それは,まず無能力しかありえないが,障害が法 律上の原因より来るものであれば,債務者はそれ自体適法な代理人を有す る。たとえば,未成年者は後見人をもつ。後見人は,抵当権の設定のため には,親族会および裁判所の承認autorisationを必要としうる(フランス 民法第457条,第458条参照)が,公証された委任には必要でない。ただ,

この場合には,抵当権設定証書は後見人の氏名と資格,必要とされる裁可 の事実と日付が記載されなければならないことになる。

自己の財産上に抵当権を設定することを望む妻に関しては,夫の承認が 必要であり,その旨が証書に記載されなければならないことになる。ただ し,夫が妻を代理するのは,公証された委任によってのみである。という のも,妻はこれに関する証書にみずから関与すべき法律上の障害をもたな いからである。

*フランス民法

457条

後見人は,父または母といえども,親族会の承認なくして未成年者のために 貸借することも,かれの不動産を譲渡することも,抵当権を設定することもで

(14)

きない。

上の承認は絶対に必要な原因か,または明らかに有利な原因によらないかぎ り与えることはできない。

第一の場合には,親族会は,後見人の提出した概算額によって未成年者の金 銭,動産および収入が不十分であることが確証された後でなければ,承認を与 えることはできない。

親族会は,すべての場合に,優先的に売却されるべき不動産および有用と判 断された条件を指示するものとする。

458条

この目的に関する親族会の決議は,後見人が第一審裁判所に裁可を請求し,

かつそれを得たのでなければ,執行することはできない。裁判所は,国王検察 官に聴聞した後に審理部において判決するものとする。

*旧民法債権担保編 205条

合意上ノ抵当ハ公正証書又ハ私著証書ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ設クルコト ヲ得ス

代理人ヲ以テ抵当ヲ設定スルトキハ委任ノ要旨ヲ抵当ノ設定証書ニ示スコト ヲ要ス

Art. 1212. Les conventions dʼhypothèque passées en pays étranger, au sujet de biens situés au Japon, peuvent produire leur effet lorsquʼelles ont été passées dans la forme usitée dans le pays étranger, entre les nationaux, pour cette sorte dʼacte; mais lʼinscription ne peut être prise au Japon, en vertu desdites conventions, quʼen observant les conditions, prescrites aux article 1219, 1225 et suivant. [Sècus2128.]

[試訳]

日本に存する財産に関して外国でなした抵当権の合意は,国民の間でこ の種の行為のため外国で用いられる方式によってなされた場合に,その効 果を生じさせることができる。ただし,第1219条,第1225条以下の規定の 定める条件に遵うものでなければ,日本では,この合意によって登記をす

(15)

ることはできない。[第2128条]

Nº 430 外国で作成された証書が許容される規定の基礎として,また,

当事者に要求される能力について契約者,とくに,義務を負担し,譲渡を する者の国の法律に従うことは一般に承認された原理である。ただし,

[法律]行為についての純然たる証書であるためには,行為がなされた国 の法律にのみ服するのであり,また服することができる(「場所は行為を 規律する」locus regit actum)。実際,公証人と呼ばれる公吏が存在しない 国では,公証行為はどのようにすることができるであろうか。

この�個の原理は抵当権の設定に適用される。ただし,第�のものだけ をここで定式化する。というのは,これだけが本来,当然の区別または留 保を含んでいるからである。すなわち,抵当権の設定に随伴する方式,と くにこれを公示するための登記が日本で効果を生じさせるためには,日本 においてなされなければならず,日本の方式で満たされなければならない であろう。

Nº 431 ここで本条を置くもうひとつの理由は,フランス民法第2128条 について生じている難問を防止することにある。同条によれば,外国で作 成された証書によりフランスに所在する財産に抵当権を設定することがで きるのは,国際上の協定conventions internationalesがこれを許す場合に限 られる。これはほとんどすべての学者が認めているが,つねにわれわれが きわめて重大な疑念を抱いている奇妙な処理である。事実,この第2128条 の規定は執行証書がそれ自体一般的黙示抵当権を含んでいた時代であるフ ランス古法を取り入れたものである(1622年王令第121条)ことは,周知 のところである。さて,国王の名でなされた方式に結びついたこの効果が 他国の主権者の名での執行力をもった証書に拡張されるものではないこと は理解されよう。

民法典草案は,まず執行証書と結びついた黙示的抵当権についても認め ているから,当然に,フランスで作成された証書と同じ条件にしたがう。

しかし,この抵当権を廃止したとき,これを制限する規定を廃止すること を怠れば,大多数の学者には,法典の規定が効力のないものと考えること

(16)

は困難であるように思われる。とりわけ,そこにひとつの意味を与えるこ とができないときは,用語から厳密に生じる効果を与えることになる。し かし,われわれはそのような考えかたを採らない。かくして,フランスで は,外国で作成された証書により,すべての財産につき義務を負担し,不 動産を譲渡し,用益権または地役権を負担することができながら,抵当権 を負担することはできないことになっている! さらに,外国で締結され た約束は,債権者および債務者の資格が備わっておりながら,合意による 抵当権がそれと結びつけることができないとき,フランスでは法定抵当権 を生じさせることがある。

フランス法で認めがちであった処理がどうであれ,日本法は,この点に 関する疑義を植え付けることはせず,また,とりわけ同じような変形を認 めるものではない。

*フランス民法

2128条

外国において締結される契約は,フランスに所在する財産に対して抵当権を 生じさせることはできない。ただし,法政策または条約にこれと異なる規定が ある場合はこのかぎりではない。

*旧民法債権担保編 206条

本邦ニ存在スル財産ニ付キ外国ニ於テ為シタル抵当ノ合意ハ此種類ノ行為ノ為メ 外国ニ於テ用ユル方式ニ従ヒ此ヲ為シタルトキハ其効ヲ生ス然レトモ特別法ニ規定 シタル条件ニ従フニ非サレハ此合意ニ依リ本邦ニ於テ登記ヲ為スコトヲ得ス

Art. 1213. Les acte constitutif dʼhypothèque doit désigner spéciale- ment par leur nature et leur situation, les immeubles affectés à la garantie de lʼobligation. [2129, 1eral.]

Si la constitution dʼhypothèque comprend tout ou partie des immeubles présents du débiteur sans désignation spéciale de chacun dʼeux, elle peut être réduite, sur la demande du débiteur à ce qui est

(17)

nécessaire à la garantie de la créance. [Secùs, ib.]

La constitution dʼune hypothèque générale ou spéciale sur les biens à venir du débiteur est nulle pour le tout. [v. 2129, 2eal. et 2130.]

[試訳]

抵当権設定証書は,債務の担保に供される不動産を,とくにその性質,

所在によって指示しなければならない。[第2129条第�項,第2130条]

抵当権の設定が,各不動産を特に指定せずに債務者の現不動産の全部ま たは一部を含むときは,抵当権は債務者の請求にもとづき債権の担保に必 要な部分に減縮することができる。[同上]

債務者の将来の財産の上への一般的または特定の抵当権の設定は全面的 に無効である。[第2129条第�項,第2130条参照]

Nº 432 しばしば一般的[=一般抵当]である法定抵当権とは異なり,

合意による抵当権は特定のものでなければならない。すなわち,設定行為 は個別に,不動産またはそれに随伴する不動産を指示するものでなければ ならない。たしかに,こうした方法によって一切の現財産を抵当にするこ とをなんら妨げるものではない。しかし,法律は,単純に一般的方式を用 いることにより,債務者が抵当不動産を特定して,たやすく過剰な担保を 与えがちであるに任せるものではないと考える。

債務者が抵当権の特定性spécialitéを遵守しないであろう場合を想定し なければならなかったが,これは,債務者が公証人事務所に頼らざるをえ ない以上,そもそも稀であるに違いないと考えなければならない。

フランスでは,抵当権の設定が有効であるのは,抵当不動産を特定した 場合にかぎられる。[違反の場合の]制裁は,絶対的かつ当然に,ただし,

裁判による無効である(第2129条参照)[原註a]

草案ではさらに先を進めなければならないとは考えない。債権者の担保 に必要な不動産についての抵当権の減縮だけがあることになろう。

次の規定の意味するところは,抵当権は債権者の将来の財産の上に設定 することは許されないことである。しかし,一切の疑点を払拭し,とりわ

(18)

け,この禁止の[違反に対する]制裁を明らかにするためのものである。

法律は,以下のように説明する。すなわち,債権者が将来の財産を一体と して抵当にしようと,それを特定して,他日かれに帰属しうると想定され るあれこれの財産を抵当にしようと,生じるのは単なる減縮ではない。抵 当権は全面的に無効なのである。

さらに,停止条件に服する権利あるいは無効訴権または取消訴権により 回復する権利ないし期待espéranceを有する不動産に抵当権を設定するこ とは,将来財産へ抵当権を設定することではないことに注意しよう。この 場合には,抵当権はそれ自体が条件付なのである。

[原註a]第2130条は,債務者の現在かつ自由な不動産が債権の担保に十分で ない場合にはこの規定をほとんど覆すものである。しかし,一切の現財産は 自由でなければならないのだろうか。われわれは,この意味で法律を善解す るつもりであるが,だれもこのようには理解しない。そこには倣うべきもの はない。

*フランス民法

2129条

合意による抵当権は,債権成立の公正証書においてであれ,または後日の公 正証書においてであれ,債権の担保であることに同意した現に債務者に属する 各不動産の性質と所在を特定しないかぎり,効力を生じない。一切の現財産は それぞれ指定して抵当に付すことができる。

将来の財産は抵当とはなし得ない。

2130条

しかしながら,債務者の現有かつ自由な財産が債権の担保に不十分であると きは,この不足を表示して,将来取得することのある財産をその取得に応じて 割り当てることに同意することができる。

*旧民法債権担保編 207条

抵当権ノ設定証書ニハ義務ノ担保ニ充テタル不動産ヲ其性質及ヒ所在ヲ以テ特ニ 指示スルコトヲ要ス

(19)

若シ抵当ノ設定カ債務者ノ現在ノ各不動産ヲ特ニ指示セスシテ其全部又ハ一分ヲ 包含スルトキハ債務者ノ請求ニ因リ債権ノ担保ニ必要ナル限度ニ其抵当ヲ減スルコ トヲ得

債務者ノ将来ノ財産ニ付テノ一般又ハ特別ノ抵当ノ設定ハ無効タリ

Art. 1214. Lʼacte constitutif dʼhypothèque conventionnelle doit encore désigner clairement la cause, la modalité et lʼobjet de lʼobligation, tant en principal quʼen accessoire.

Lʼobjet en sera évalué en argent, sʼil ne consiste pas directement en cette valeur; toutefois cette dernière condition pourra nʼêtre remplie que dans lʼinstitution comme il est dit à lʼarticle 1226.

[2132.]

[試訳]

合意による抵当権は,さらに債務の原因,態様および目的物を,その主 従をとわず,明示しなければならない。

目的が直接にその価額にないときは,金銭に評価するものとする。ただ し,この条件は第1226条に記載する登記においてのみ履行されるものとす る。

Nº 433 抵当権は従たる権利にほかならないから,とりわけ,これを対

抗される第三者の利益において,被担保債権が十分な正確さをもって特定 されなければならない。それは,抵当権の行使について不確実性がなく,

また,同一当事者間に存在するであろう他の債権と混同することのないよ うにするためである。それゆえ,法律は,債権は設定証書において,その 原因,態様および目的物を明示することを望んでいるのである。むろん,

当事者の指示が不可避であることは当然である。

原因とは,たとえば,貸借とか代金未済の動産または不動産の売買であ る。態様とは,期間,条件または債務者または債権者の連帯である。目的 物とは主物および従物である。約束の原因となる日付を証書に記載する必 要はない。抵当権の設定は,ひとえに,債務を承認し新たな日付を与える

(20)

ことで足りるからである。

法律は明文ではこの新規定になんら[違反の場合の]制裁を結びつけて いない。しかし,必要な叙述をまったく欠いている場合には,抵当権の無 効が,債務者から,また,その他の債権者からの請求により宣告されなけ ればならないことを認めなければならない。なぜならば,抵当権は一般法 の重大な特例であって,法律が課する条件は誠実に守られなければならな いからである。

表示に明晰さがあることについて,裁判所は,それが十分であるかどう か評価することになるが,無効の宣告にはきわめて慎重でなければならな い。

Nº 434 債務が抵当権によって有効に担保されているためには,それが

金銭を目的としていることを要しない。しかし,少なくとも,目的がこれ と異なっているときは,金銭に評価されなければならない。それは,抵当 権に優先される他債権者がその多寡を認識しうるためである。同様に,抵 当権を対抗される第三取得者は,追求権の行使を止めるため抵当債権者を いかに満足させるかを知る利益がある(第1276条以下参照)。

評価は一般には抵当権の設定自体でなされることになる。それが欠けて いる場合,あるいは,その時点で正当な評価をするための何らかの一時的 な支障がある場合は,後の証書ですることができよう。このつの場合に くいちがい,すなわち当事者間で対立があるなら,確定することになる。

これらつの評価のいずれも,いわば契約上欠いているときは,債権者の みが登記がされた時点でこれをすることができる。これは登記の有効条件 でもある(第1226条参照)。ただし,債権者は自己に支払われるべきもの を過大評価しがちであるから,債務者は裁判上その評価を減縮させること ができよう(第1244条参照)。

*フランス民法 2132条

合意による抵当権は,合意された金額が確定しており,かつ証書によって決

(21)

定された場合にかぎり,有効とする。債務証書obligationから生じる債権が,

その存在につき条件が付され,または,その金額が未決定であるときは,債権 者は,自己が明示的に申述する評価額を限度としてでなければ,後述の登記を 申請することはできない。債務者は,必要な場合には,それを減縮させる権利 を有する。

*旧民法債権担保編 208条

抵当ノ設定証書ニハ右ノ外義務ノ原因,体様及ヒ其主従ノ目的ヲ明カニ指示スル コトヲ要ス

義務ノ目的カ金銭タラサルトキハ之ヲ評価ス可シ然レトモ其評価ハ登記ノ時ニ於 テモ猶ホ之ヲ為スコトヲ得

Art. 1215. Lʼhypothèque ne peut être consentie que par celui qui a le droit de propriété ou de jouissance quʼil entend soumettre à lʼhypothèque et sʼil a la capacité dʼen disposer à titre onereux ou gratuit, suivant la cause de la dette; sans préjudice de ce qui est dit, à lʼarticle 1217, de la constitution dʼhypothèque par un tiers. [v. 2124]

Sʼil sʼagit dʼun droit réel temporaire, lʼhypothèque ne peut produire dʼeffet au-delà du temps assigné au droit principale. [2125.]

Toutefois, si avant lʼexpiration de temps, le droit hypothéqué se trouve transporté, par suite de quelque évenement sur une indeminité réprésentant sa valeur, le créancier exerce son droit de préférence sur ladite indeminité.

[試訳]

抵当権は,抵当権に服するべき物の所有権または収益権を有する者によ ってのみ,かつ,債務の原因により,有償または無償でこれを処分する能 力がある場合のみ同意することができる。ただし,第三者による抵当権設 定について第1217条に記載した場合を妨げない。[第2124条参照]

一時的物権に関しては,抵当権は主たる権利について定められた時期を

(22)

超えて効力を生じることはできない。[第2125条]

ただし,期間満了前に抵当権付きの権利が,何らかの事情で移転したと きは,その価値を代表する補償金の上に移転し,債権者はその償金につき 優先権を行使する。

Nº 435 抵当権は抵当物件の公売enchères publiquesを生じさせることが できる。すなわち,この事由は抵当権を設定した者につき,次のつを要 求するものである。第一が抵当権に付すべき所有権または収益権であり,

第がこの権利を譲渡する能力である。

法律は,簡潔な定式で「所有権または収益権」を示すにとどめ,抵当に なし得る種々の権利については第1203条にしたがうものとする。

譲渡する能力については,法律は設定者が有償で譲渡することができる ことで満足しない。より稀ではあるが,抵当権設定と同時であれ,設定以 前であれ,被担保債務がそれ自体無償で生じるとき,無償で譲渡する能力 がここで要求される。たしかに,無償で金額を約束して,抵当権によりそ の支払を特別に担保することにより贈与に付加する者,そして,抵当権 が,他人の贈与の担保のために第三者によって設定されたとき(第1217条 参照),この第三者自身は,担保を贈与した者である。

第1217条により,この第三者による担保の贈与の無償性については,後 に論じることにする。

Nº 436 「何人も自己の有する以上の権利を移転することはできない」と

いうのは,良く知られ,また,しばしば以前にも適用した原理であり(第 一部Nº 282,第二部Nºs221 et 684,第三部Nºs119,360),法律はここで も,新たに適用をするものである。そして,それにしばしば一般原則を想 起させることにしたのは,そこに一つの均衡と修正をもちこむためであ る。

ここに,債権者の抵当権が債務者の一時的権利の消滅後も存続する場合 を例としてあげる。すなわち,抵当権を付された用益権は火災に対して付 保された建物の上に存するが,火災が生じ,あるいは,第三者の過責

fauteによる建物の破壊があり,あるいは,国によって収用されたとする。

(23)

これらの場合,抵当債権者が,用益権者の死亡または当初定めた用益権の 期限の到来により,その権利を失うことはない。かれの権利は保険者,過 責ある第三者または国によって用益権者に支払われるべき補償金の上に移 転するのである。結局,一時的用益権の場合には第1207条第�項の適用が あることになる(第1138条参照)。

*フランス民法

2124条

合意による抵当権は,抵当権に服する不動産を譲渡する能力を有する者によ ってのみ同意することができる。

2125条

不動産上に停止条件付権利,または,一定の場合に解除される権利,または 取消しに服する権利のみを有する者は,同一の条件または取消しに服する抵当 権のみを同意することができる。

*旧民法債権担保編 209条

抵当ハ抵当ニ充テント欲スル物ノ所有権又ハ収益権ヲ有シ且有償又ハ無償ニテ其 物ヲ処分スル能力ヲ有スル者ニ非サレハ之ヲ承諾スルコトヲ得ス但第三者ノ抵当設 定ニ関スル第二百十一条ノ規定ヲ妨ケス

若シ有期ノ物権ヲ抵当ト為シタルトキハ其抵当ハ此権利ノ時期外ニ効力ヲ生スル コトヲ得ス然レトモ抵当ト為リタル権利カ此時期ノ満了前ニ或ル出来事ニ因リ物ノ 価額ヲ代表スル償金ニ移リタルトキハ債権者此償金ニ付キ其権利ヲ行フ

Art. 1216. Les biens des mineurs, des interdits et des absents ne peuvent être hypothéqués par leurs représentants que pour les causes et dans les formes déterminées au Livre 1er. [2126.]

La capacité dʼhypothéquer pour les femmes mariées et les mineurs émancipés autorisés à faire le commerce est réglée au Code de Commerce. [C. com., 6, 7.]

(24)

[試訳]

未成年者,禁治産者および不在者の財産は,第一編に定めた原因と方式 によらなければ,その代理人によって抵当権を設定することはできない。

[第2126条]

商取引を許された妻および未解放未成年者のために抵当権を設定する能 力は,商法典で規律される。[商法第条,第条]

Nº 437 未成年者および禁治産者の財産への抵当権についてはすでに言

及した(Nº 429)。フランス法では,親族会および民事裁判所によって許

autoriséされないかぎり,この抵当権は後見人の権限内にはない(第

457条および第458条)。日本の草案も,第一編でこの点を宣言することに なろう。同様の許可が要求されることはほぼ確実である。同編では不在者 の財産に抵当権を設定することのできる条件についても規律されることに なろう。

フランスと同様,日本でも商取引が明らかにもたらす利点は,いずれ も,適法に商取引をすることが許可された場合には,未成年者および妻の 能力を拡張する。フランスでは,これらの者は,その取引行為のため自己 の財産につき義務を負い,抵当権を設定することができるのである(フラ ンス商法第条および第条参照)。

*フランス民法

2126条

未成年者,禁治産者および不在者の財産は,占有が一時的にのみ付与されて いる場合にかぎり,法律または判決の定める原因および方式によってのみ抵当 権を設定することができる。

*フランス商法

前記のような許可を受けた商人たる未成年者は,その不動産に質権および抵 当権を設定することができる。

(25)

公式のpubliques商人たる妻も,その不動産に質権,抵当権を設定し,また,

譲渡することができる。

ただし,嫁資制度の下で婚姻した場合,嫁資として約された財産は,民法典 により特定され,かつ,民法典により規律される方式によらないかぎり,抵当 権を設定することも譲渡することもできない。

*旧民法債権担保編 210条

未成年者,禁治産者及ヒ失踪者ノ財産ハ法律ニ定メタル原因及ヒ方式ニ依ルニ非 サレハ其代人ニ於テ之ヲ抵当ト為スコトヲ得ス

Art. 1217. Lʼhypothèque conventionnelle peut être donnée pour garantir la dette dʼun tiers, comme il est dit du gage et du nantissement immobilier par les aritcle 1102 et 1122.

Elle constitue une libéralité via-à-vis du débiteur, lorque celui- ci nʼa fait aucun sacrifise pour lʼobtenir, elle en constitue une vis-à-vis du créancier, lorsque la créance a une cause gratuite, ou lorsquʼelle est constituée postérieurement à la convention principale, même onéreuse, et sans avoir été promise.

[試訳]

合意による抵当権は,第1102条および第1122条により動産質権および不 動産質権について記載したと同様に,第三者の債務を担保するために与え ることができる。

この抵当権は,債務者がこれを得るためなんら出捐をしないときは,債 務者に対する贈与である。また,債権が無償の原因を有し,あるいは主た る合意の後に設定された場合は,それが有償であり,また,約束されなく とも,債権者に対する贈与となる。

Nº 438 第三者が他人の債務のために,担保として財産すなわち動産ま

たは不動産を与えることができるのと同様,ここでは抵当権もまた与える ことが認められる。抵当不動産が弁済のために差し押さえられて売却され

(26)

るときは,それが,債務者の委任によって抵当権を設定した場合,あるい は任意,すなわち事務管理人gerant dʼaffaireとして設定した場合を区別し て,物上保証人caution réelleは,保証人と同じく,債務者に対して求償 権を有する(第1230条参照)。第504条に定めるように,かれは法定代位 subrogation légaleの利益も有する。

Nº 439 担保が付せられる債権の性質にしたがい,債務者による抵当権

の設定が有償行為であったり,無償行為であったりすることは上に見たと ころである(第1215条)。本条はわれわれには,抵当権が第三者によって 設定された場合に充てられるものである。

ここでは,被担保債務の原因の有償,無償を区別することは原理上しな い。義務なくして,また,そこから金銭に評価できるような利益を引き出 すこともなく担保を提供する第三者については,[抵当権の]設定は無償,

すなわち,少なくとも債務者に対する恵与libéralitéとみなされなければ ならず,債務者と設定者の間にはそれを提供し,また受領する能力が要求 されよう。

法律は「債務者がこの担保を得るための出捐sacrificeをする」場合を例 外とする。しかし,この場合でも,抵当財産が債務の弁済に役立ったとき は,担保を提供した第三者は完全な求償を得ることになる。なぜならば,

かれは債務者に信用を与えることに同意したのであって,債務を最終的に 支払うことに同意したのではないからである。

[抵当権の]設定は,債権者に対しても,それが,債務の発生後に生じ,

かつ,約束なしになされたときは,無償である。そこでも,債権者のため の贈与であり,提供と受領について同様の能力を要求されることになる。

これとは逆に,主たる契約がそれ自体有償であるとき,抵当権の設定が債 権者に対して有償とみなされるのは,この担保の設定行為または当初の約 束が同時である場合にかぎられる。

*旧民法債権担保編 211条

合意上ノ抵当ハ第九十八条及ヒ第百十七条ニ於テ動産質及ヒ不動産質ニ付キ記載

(27)

シタル如ク債務者ノ債務ヲ担保スル為メ第三者ヨリ之ヲ設定スルコトヲ得 右ノ抵当ハ之ヲ設定セシムル為メ債務者カ何等ノ出捐モ為ササルトキハ債務者ニ 対シテ恩恵ナリトス

又抵当ハ債務が無償ナルトキ又ハ有償ナルモ諾約ナクシテ主タル合意以後ニ之ヲ 設定シタルトキハ債権者ニ対シテモ恩恵ナリトス

Art. 1218. Lʼhypothèque ne peut être conférée par testament, sur un ou plusieurs immeubles du testateur, que pour la garantie de tous ou de quelques-uns de ses legs ou de la dette dʼun tiers, [L. belge du 16 déc 1851, art. 43, 44.]

Dans ce dernier cas, pour que lʼhypothèque testamentaire soit valablement constituée, il doit y avoir respectivement capacité de donner et de recevoir par testament, du constituant au débiteur et au créancier.

[試訳]

抵当権は,遺言により遺贈の全部または一部の担保のため,あるいは,

第三者の債務のためにのみ,遺言者の一つまたは複数の不動産上に与える ことができる。[ベルギー1851年12月16日法第43条,第44条]

この場合には,遺言抵当権が有効であるためには,設定者から債務者お よび債権者への遺言により,相互とも授与し,受領する能力がなければな らない。

Nº 440 以前に述べたように,遺言抵当権は草案により1851年12月16日 ベルギー法に倣ったものである。この法律ははじめて裁判上抵当権を廃止 したものであるが,遺言抵当権を認めていることについて考えてみよう。

日本の草案では躊躇することなく認められる。確かに,遺言により一切 の物権を付与することも,賃借権(第124条参照)をも付与することもで きるのだから,抵当権を設定することができるのは当然である。

しかし,慎重さをもって当たらなければならない場合がある。それは,

(28)

債権者が当初は抵当権を要求せず,または債務者がその信用を失わせない ため,抵当権を設定することに同意しなかったが,その死亡を予期し,後 になってこの債務者の抵当権を付与することを決意した場合ではない。そ うした措置は一種の贈与であり,債権者たちのそれぞれの立場を変えるも のではなかろう。債務者の死がそれを確定するのである。遺言者が一人ま たは複数の受遺者に遺贈の担保のために与える抵当権のみが問題となるの である。抵当権の遺贈は受遺者の他[の債権者]に対する立場を優位にす ることができるが,債権者,単なる一般債権者へのいかなる優先権をも与 えるものではない。

受遺者に認められた財産分離を請求する権利(第1174条第項,第1192 条の)にこの抵当権が付け加わることを訝しむ者もいよう。これは,財 産分離(第2111条)があるためにフランス[民]法典(第1017条参照)の 受遺者の一般法定抵当権に対してなされた異議とほぼ同じである。

しかしこれ[=遺言抵当権]を認めうる有用性はある。財産分離を請求 する受遺者は,すべての債権者と競合する(むろん,これらの者に劣後す る)。しかし,かれが抵当権を得ているとき,登記を備えた遺言がかれに 割り当てた順位になるであろうし,抵当権を一人または複数の者に対して のみ与えたならば,財産分離の一般法しか主張し得ない者に優先権を与え ることになろう。

さらに,遺言者は他の者に優先する利益を望んでいる受遺者に抵当権を 与える必要はない,と反論されるかもしれない。たしかに,この点では遺 言または遺言変更証書codicille(フランス民法第927条参照)においてそ の意思を示すことで足りる。しかし,財産分離がヶ月以内に請求されな かったときに,第三取得者に対して追及できるためには,抵当権はつねに 有用である。

遺言抵当権は他の,そしてより頻繁な適用を受けることになろう。すな わち,抵当権は第三者の債権者の他のために与えることができよう。それ は,第三者によって与えられた合意による抵当権について,すでに説明し たように,債権者のためにも債務者のためにも二重の贈与となるであろう

(29)

(Nº 439参照)。

*フランス民法

927条

ただし,遺言者がある遺贈を他の遺贈に優先して弁済することを望む旨明示 した場合は,これが優先される。ただし,その目的物となる遺贈は,他の遺贈 の価額が法定遺留分réservé légaleを満たさないかぎり減殺されない。

1017条

遺言者の相続人または遺贈債務者は,それぞれ,相続財産で得る割合で弁済す る義務を負う。

これらの者は,自己が占有する相続不動産の価額の限度で,全部につき抵当権 付きとして弁済する義務を負う。

*旧民法債権担保編 212条

抵当ハ遺贈ノ担保ノ為メ又ハ第三者ノ債務ノ担保ノ為メニノミ遺言ヲ以テ之ヲ設 定スルコトヲ得

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