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水道水のミネラル成分および物性によるグループ化と味の評価に関与する要因の抽出. 研究材料および方法 () 研究材料 ) 水道水北海道から沖縄まで全国 か所の水道局から販売 配布されているボトル詰め水道水 (S~ S) を収集し, 試料とした これらは自治体が水道水の味のアピールや災害時の備蓄のために

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水道水のミネラル成分および物性によるグループ化と

味の評価に関与する要因の抽出

The Relationship of the Components of Tap Water to its Taste:

A Principal Components Analysis of Significant Factors

池   晶 子*

§

山本紗由美* 川 瀬 雅 也**

Akiko Ike Sayumi Yamamoto Masaya Kawase

This study investigates the relationships of the mineral composition, pH, hardness, and other physical and chemical characteristics of tap water to its taste. Using principal components analysis, tap water from 20 areas in Japan is categorized by the extent of concentrations of Na, Ca, K, Mg, Si, and other physical and chemical properties. The tap waters with relatively positive ratings of taste have relatively low concentrations of Si and Ca, and their sources are surface water. The results of a discriminant analysis find that the concentrations of Si and Ca strongly contribute to categorizing tap water into two groups based on the taste test. The pH value also is an important factor in the dis-criminant analysis. Last, the disdis-criminant analysis results are consistent with the results of the principal component analysis. These results suggest that the taste of tap water is related to the concentrations of Si, Ca, and the pH level. キーワード: 水道水 tap water;ミネラル成分 mineral concentrations;味評価 taste;主成分分析 principal

component analysis;判別分析 discriminant analysis

* 羽衣国際大学

(Hagoromo University of International Studies) ** 長浜バイオ大学

(Nagahama Institute of Bio-Science and Technology)

§ 連絡先 羽衣国際大学人間生活学部 〒 592-8344 堺市西区浜寺南町 1-89-1 TEL 072(265)7000 FAX 072(265)7005 E-mail:[email protected] 1. 緒  言  日本の水道水は,概ね渋み,えぐみがない喉越しの良い 軟水であり,水道水の水質基準に沿って安全性も確保され ている。しかし,味や臭い,水道水中の微量有機塩素化合 物への懸念といったマイナスイメージから飲用水としては あまり人気がなく,ミネラルウォーター(市販飲料水)へ の関心・利用度が高まっている。また健康への配慮からミ ネラル含有率の高い硬水を選択し購入する傾向もある。 2014 年の国内生産および輸入量の合計は 3,260,844 kL で 10 年前の約 2 倍に,また一人あたりの消費量は 25.7L/年・ 人で,こちらも倍増している1)  一方,水道水を含めた飲み水の水質と味に関しては,旧 厚生省の「おいしい水研究会」の検討(1985)2)があり,お いしい水の水質要件として蒸発残留物(30~200 mg/L), 硬度(10~100 mg/L),遊離炭酸濃度(3~30 mg/L)など の範囲を提示している。また,足立ら3)が水道水と市販飲 料水や名水などいわゆる「おいしい水」の水質の差異を定 量し,水道水においては KMnO4消費量,SO42-,Cl-濃度 が有意に高くなり,対する「おいしい水」においては有離 炭酸が有意に高くなることを報告している。また,川合ら4) は,井戸水あるいは湧水の官能評価と成分分析を行い,自 然水中に含有されている O2,Si,HCO3- は水をおいしく感 じさせ,Mg は水をおいしくないと感じさせると報告した。 さらに,橋本らは水道水・鉱泉水の成分と官能評価の関係 を調べ,ミネラルバランスによる美味しさの指標化を行っ ている5,6)  水道水の水源となる全国各地の水について,1985 年に当 時の環境庁が「名水百選」を選定し,2008 年には「新・名 水百選」が加えられた7)。日本地下水学会はこれら名水に 含 ま れ る Na+,K,Ca2+,Mg2+と い っ た 陽 イ オ ン と HCO3-,Cl-,SiO22-といった陰イオンの含有量を調べ,そ れらの特性から,いくつかのパターンに分類できることを 報告している8)  これらのことより,国内の水源の水は多様な含有成分特 性を持ち,これらが水道水の味のバラエティーを生み出し ていると予想される。  本研究では日本各地の水道水をミネラル成分濃度と物 性(総硬度,pH,電気伝導度(EC),溶存固形物総量 (TDS),酸化還元電位(ORP),有機炭素源濃度(TOC)) を基にした統計学的分析にてグループ分けを行い,取水源 の地理的特徴づけを行う。また,水の味の評価と,水道水 に溶存量が高い Na,Ca,K,Mg,Si の 5 種類のミネラル 成分および総硬度や pH などの物性との関係を明らかにし, 味の評価に重要な意味を持つ因子を抽出する。

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2. 研究材料および方法 (1) 研究材料 1) 水道水  北海道から沖縄まで全国 20 か所の水道局から販売・配布 されているボトル詰め水道水(S1~ S20)を収集し,試料 とした。これらは自治体が水道水の味のアピールや災害時 の備蓄のために製造しており,基本的に各戸に配給される 水質と同質であるが,塩素は加えないか加熱殺菌等の過程 で除去されている。どの水道水も塩素の残存は検出限界以 下(0.05 ppm 以下)であることを確認しており,味の評 価には影響しないと考えられる。 2) 基準水  味の評価の比較対照となる水(以後「基準水」)として羽 衣国際大学(大阪府堺市)の水道水を用いた。基準水は家 庭用ポット型湯沸し器で約 2 分沸騰させ,ガラス容器に移 して氷水につけて冷却した。その後ペットボトル容器に小 分けにして冷蔵庫(5℃)で一晩保管し使用した。使用時の 塩素の残留は検出限界以下であった。 (2) 研究方法 1) 水道水の味の評価  サンプル水道水を,味が比較的高評価のものと低評価の ものの 2 グループに分けるために,羽衣国際大学食物栄養 学科の学生と大学オープンキャンパスの参加者により,水 道水の味の評価を行った。水道水数が 20 種類と多く,すべ てを比較して順位づけすることが困難なため,味の比較対 象となる水「基準水」との相対評価でグループ分けする方 法をとった。サンプルを 3 分割し,1 回に 6~7 種に対して 基準水との相対評価を行った。基準水と同等のおいしさの サンプルは 4,より味が良いサンプルは 5~7,味が悪いサ ンプルは 1~3 の数値で評価した。  試験日はいずれも 8 月でそれぞれのサンプル水道水およ び評価人数は,1 回目 7 種類(S2, S3, S5, S6, S8, S16, S17) 53 名,2 回目 6 種類(S1, S7, S10, S13, S14, S18) 44 名,3 回目 6 種類(S4, S9, S11, S12, S15, S19)79 名であった。試 験参加者は羽衣国際大学食物栄養学科学生が 19~20 歳(女 性が約 90%),羽衣国際大学オープンキャンパス参加者は 15~18 歳(女性が約 80%)であった。  試験参加者には評価方法について口頭注意をし,Fig. 1 に示す評価記入表に記入してもらった。  なお,サンプル水道水は,水温による評価の差をなくす ため冷蔵庫(5℃)で一晩保管したものを 25℃に温度管理 した室内に適宜取り出して試飲した。試験中,基準水とサ ンプル水道水は常に同条件に置かれた。参加者が 1 回の試 飲(6~7 種類)にかかる時間は 15 分程度であった。 2) ミネラル成分濃度

 Na, Ca, K, Mg, Si, Li, Al, Mn, Co, Ni, Cu, Zn, As, Mo, Ba, Pb 濃度を ICP-MS (Ar gas) Agilent 7700(アジレントテ

クノロジー社)を用いて分析した。リアクションガスは He (Li, Na, Mg, Al, Si, Mn, Fe, Ni, Co, Cu, Zn, As, Mo, Ba, Pb)

および H2 (K, Ca) を用いた。なお,混合標準物質として XSTC-622(SPEX)を使用した。 3) pH,電気伝導度(EC),溶存固形物総量 (TDS)  ポ ー タ ブ ル 多 機 能 pH/EC/TDS/℃計 HI 991301N (HANNA)を用いて測定した。 4) 有機炭素源濃度 (TOC)  TOC-VCSH(Shimadzu)を用いて燃焼酸化方式の非分散 形赤外線ガス分析法にて定量した。無機炭素源は酸性下通 気処理法にて除去し,2 mol/L 塩酸を試料の 1.5%添加し た。燃焼温度は 680℃である。 5) 酸化還元電位(ORP)  ポータブル ORP 計 RM-30P (TOA DDK)を用いて,塩 化銀電極(3.3 mol/L KCl)を参照電極(比較電極)とし て使用した場合の起電力値を測定した。 6) 総硬度  キレート滴定(EDTA 法)にて定量した。即ち,サンプ ル水 50 mL に対し 0.01 mol/L 塩化マグネシウムを 1 mL, アンモニア緩衝液(pH10)を 2 mL 加え,EBT 指示薬を 5~6 滴加えた後,0.01 mol/L EDTA 溶液をビュレットか ら滴下し,青色を呈するまで滴定した。総硬度は以下の式 により算出した。 総硬度(mg/L)= (EDTA滴下量(mL)-1)×1000÷ 検水量(mL) 7) 統計解析  サンプル水道水のミネラル成分濃度と物性に基づいたグ ループ分けをするとともに,味の評価結果や取水地の特徴 と水質にどのような関係があるのかを明らかにするために, Excel 統計 2007(社会情報サービス)を用いて,主成分分 析および判別分析を行った。 水 まずい← 基準 →美味しい 1 2 3 4 5 6 7 7 A 1 2 3 4 5 6 7 7 B 1 2 3 4 5 6 7 7 C 1 2 3 4 5 6 7 7 D 1 2 3 4 5 6 7 7 E 1 2 3 4 5 6 7 7 F 1 2 3 4 5 6 7 7 G 1 2 3 4 5 6 7 7 Fig. 1. 味覚官能評価記入表  (7 種類試験時のもの)

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3. 研究結果 (1) サンプル水道水の取水源と味の評価値  Table 1 にサンプル水道水と製造都道府県,取水源情報 および味の評価を示した。味の評価は試験参加者の評価値 の平均が 4 以上になった水を「高評価」,4 未満を「低評価」 とした。S20 については基準水との相対評価は行っていな いが,順位法で最も低いレベルに分類されたため「低評価」 とした。また 20 サンプル中 9 サンプルが取水源を深井戸水, 湧水など地下水とし,11 サンプルが地表水由来であった。 (2) サンプル水道水の物性およびミネラル成分分析値  20 種類のサンプル水道水について,各種物性とミネラル 成分濃度の分析を行った。結果を Table 2 に示す。総硬度 が 100 mg/L 以下の水は一般的に軟水と定義されるが,今 回の 20 サンプルは 18~82 mg/L の範囲にあり,すべて軟 水であった。pH は 5.8~8.6 が水道水基準で定められてい るが,全サンプルで 6.96~7.57 と基準値の範囲内であっ た。ミネラル成分濃度については微量元素も含めて 16 元素 の測定を行ったが,Table 2 には,含有量の多い 5 元素に ついて示した。 (3) 主成分分析 1) ミネラル成分濃度を基にした主成分分析  水道水に含有量の多い 5 つのミネラル成分濃度を基に, サンプル水道水の主成分分析を行った。結果を Fig. 2 に示 す。水道水は,Mg, Ca 濃度の高いグループⅠ,Si 濃度の高 いグループⅡ,それ以外のグループⅢの 3 群に分かれて分 布していた。主成分分析の分布に製造地や味の評価,取水 源の特徴(Table 1)を重ね合わせて Fig. 3 に示した。製造 地を,北海道・東北地域,関東地域,北陸・関西地域,中 国・九州地域,沖縄に分けて表示したところ,概ね製造さ れた地域ごとに近い位置にプロットされ,ミネラル成分の 含有バランスには地域特性が見られることが示唆された (Fig. 3A)。次に主成分分析結果と味の評価の関係を見る と,原点に近い位置には比較的,味の評価が低いものが集 Table 1. サンプル水の味の評価 サンプル 番号 製造 都道府県 取水源 地上水・ 地下水の別 味評価 平均値 味評価 S1 北海道 河川水 地上水 4.07 高評価 S2 青森 河川水 地上水 4.36 高評価 S3 新潟 河川水 地上水 4.15 高評価 S4 群馬 河川水 地上水 4.14 高評価 S5 埼玉 深井戸水 地下水 3.51 低評価 S6 茨城 ダム水 地上水 3.66 低評価 S7 東京 河川水 地上水 3.16 低評価 S8 神奈川 深井戸水 地下水 3.91 低評価 S9 神奈川 伏流水 地上水 4.09 高評価 S10 三重 浅井戸水 地下水 3.64 低評価 S11 富山 地下水 地下水 3.75 低評価 S12 石川 深井戸水 地下水 4.43 高評価 S13 大阪 河川水 地上水 4.00 高評価 S14 大阪 河川水 地上水 4.34 高評価 S15 兵庫 渓流水 地上水 3.60 低評価 S16 岡山 浅井戸水 地下水 4.25 高評価 S17 島根 湧水 地下水 3.68 低評価 S18 大分 深井戸水 地下水 3.61 低評価 S19 宮崎 浅井戸水 地下水 3.92 低評価 S20 沖縄 配水池 地上水 ― 低評価 Table 2. 水道水の物性およびミネラル成分濃度 サンプル 番号 物     性 ミネラル成分濃度 総硬度 (mg/L) pH EC (mS/cm) TDS (ppt) ORP (mV) TOC (mg/L) Na (mg/L) Ca (mg/L) K (mg/L) Mg (mg/L) Si (mg/L) 基準水 45 7.52 0.21 0.09 236 1.2 19.00 14.00 2.30 2.40 3.20 S1 26 7.00 0.18 0.09 246 0.7 7.29 7.40 0.99 2.54 7.99 S2 18 7.19 0.13 0.07 233 0.4 10.03 4.22 1.44 1.96 23.08 S3 23 7.05 0.18 0.08 256 0.9 11.09 6.58 1.26 1.85 5.02 S4 25 6.96 0.11 0.06 243 1.8 5.86 12.22 0.96 2.21 5.12 S5 40 7.47 0.16 0.08 241 1.0 11.14 11.93 1.06 3.19 15.98 S6 22 7.31 0.14 0.07 246 1.4 9.36 7.96 1.23 1.60 9.57 S7 76 7.57 0.31 0.15 241 1.1 18.72 26.09 2.25 4.81 8.52 S8 82 7.60 0.28 0.13 233 0.7 9.72 23.68 1.96 6.70 20.09 S9 30 7.14 0.13 0.06 248 0.3 以下 3.36 10.39 0.35 1.93 5.44 S10 50 7.48 0.23 0.12 232 0.4 12.81 18.88 3.11 2.70 6.36 S11 67 7.20 0.18 0.09 239 0.4 8.25 26.01 1.42 2.44 7.52 S12 52 7.15 0.22 0.11 237 0.9 8.84 25.16 1.38 3.29 4.40 S13 47 7.30 0.28 0.12 235 1.1 21.77 16.59 3.48 2.48 1.41 S14 40 7.28 0.20 0.10 238 1.1 16.99 14.37 3.09 2.19 3.57 S15 33 7.00 0.15 0.08 253 1.0 11.37 15.26 1.38 1.65 4.51 S16 38 7.16 0.17 0.08 243 0.7 9.23 13.37 1.88 2.85 5.45 S17 33 7.26 0.16 0.08 241 0.6 9.24 8.62 2.39 3.02 19.77 S18 25 7.20 0.14 0.07 239 0.6 7.31 7.93 2.31 2.08 31.73 S19 29 7.15 0.13 0.07 242 0.8 7.21 14.80 2.17 2.54 11.33 S20 58 7.23 0.31 0.14 242 1.8 22.10 15.23 1.14 4.52 5.81

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まっているのに対し,Si, Ca や Mg の低い物が多い Y 軸マ イナス側には味の評価が高い水が集まる傾向が見られた (Fig. 3B)。また,その位置に取水源が河川水やダム水など の地表水であるものが集中していた(Fig. 3C)。  以上より,水道水とミネラル成分濃度を用いた主成分分 析から,味が好評価のグループには,地表水が多いことが 分かった。地下水は地表水に比べて地層中のミネラル成分 の溶け込みが時間をかけて行われ Ca,Mg,Si などの溶解 Na Ca K Mg Si -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 -0.5 0 0.5 1 第二主成分 第一主成分

主成分負荷量

-2 -1 0 1 2 3 4 -4 -2 0 2 4 第二主成分 第一主成分

主成分分析

ミネラル

グループⅠ グループⅡ グループⅢ S11 S6 S8 S2 S18 S7 S17 S5 S19 S12S20 S14 S10 S13 S1 S9 S4 S3 S15 S16 Fig. 2. ミネラル成分分析値による主成分分析と主成分負荷量 -2 -1 0 1 2 3 4 -4 -2 0 2 4 第二主成分 第一主成分

ミネラル

地域

-2 -1 0 1 2 3 4 -4 -2 0 2 4 第二主成分 第一主成分

ミネラル

味高評

-2 -1 0 1 2 3 4 -4 -2 0 2 4 第二主成分 第一主成分

ミネラル

地下水

A 製造地 B 味評価 C 取水源 Fig. 3. ミネラル成分による主成分分析と製造地(A)・味評価(B)・取水源(C)の関係 A:北海道・東北地域(□),関東地域(◆),北陸・関西地域(○),中国・九州地域(●),沖縄(▲) B:味評価 4 以上の高評価(●),4 未満の低評価(○) C:取水源 地表水(◆),地下水(◇)

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総硬度 pH EC TDS ORP TOC -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 第二主成分 第一主成分

主成分負荷量

-2 -1 0 1 2 3 -4 -2 0 2 4 6 第二主成分 第一主成分 グループβ グループγ S11 S6 S8 S2 S18 S7 S17 S5 S19 S12 S20 S14 S10 S13 S1 S9 S4 S3 S15 S16 グループα Fig. 4. 物性値による主成分分析とグループ分け -2 -1 0 1 2 3 -4 -2 0 2 4 6 第二主成分 第一主成分 -2 -1 0 1 2 3 -4 -2 0 2 4 6 第二主成分 第一主成分 -2 -1 0 1 2 3 -4 -2 0 2 4 6 第二主成分 第一主成分 A 製造地 B 味評価 C 取水源 Fig. 5. 物性による主成分分析と製造地(A)・味評価(B)・取水源(C)の関係 A:北海道・東北地域(□),関東地域(◆),北陸・関西地域(○),中国・九州地域(●),沖縄(▲) B:味評価 4 以上の高評価(●),4 未満の低評価(○) C:取水源 地表水(◆),地下水(◇)

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成分が高くなり,一方で地表水は溶解成分が雨水により希 釈されることで硬度が下がることが味の評価が分かれた要 因であると推察される。 2) 物性値を用いた主成分分析  物性値によりサンプル水道水の主成分分析を行ったとこ ろ,Fig. 4 に示すように総硬度や pH に特徴のあるグルー プ α,ORP の高いグループ β,それ以外のグループ γ の 3 群に分かれて分布していた。ミネラル成分濃度を基にした 主成分分析の場合と比較して,地域ごとの傾向はあまり見 られなかった(Fig. 5A)。また,味の評価が高い水は,地 表水がやや多いことが分かった(Fig. 5B,Fig. 5C)が,ミ ネラル成分による主成分分析と比較してはっきりとした傾 向は見られなかった。 (4) 判別分析  サンプル水道水のミネラル成分や物性を用いた主成分分 析から水道水をグループ分けした結果,グループにより味 の評価が分かれることが確認された。そこで,味の評価と 元素および物性因子の関係を調べるために判別分析を行っ た。味の評価の比較的良いものと悪いものをそれぞれ 1 あ るいは 0 とした。結果を Table 3 に示す。ミネラル成分の うち,Si 濃度は,判別係数が最も高く,味の評価の判別に 寄与していると考えられた。次いで,Ca 濃度の判別係数が 高く,硬度を左右する Ca 元素の味の判別への寄与も示さ れた。  物性値の中では,電気伝導度(EC)や溶存固形物総量 (TDS)の判別係数が高い結果となった。さらに,pH の判 別係数も有意に高く,味評価への寄与が示された。 4. 考  察  ヨーロッパでは非常に高い硬度の硬水を飲料水とする場 合もあるのに対し,日本では,国内のいずれの場所でも, 軟水が水道水として利用されている。したがって,当初そ の水質の多様性は低いと予想された。旧厚生省の「おいし い水研究会」2)の示した指標に照らしても,どのサンプル水 道水も硬度は 10~100 mg/L の「おいしい水」の範囲に入 る。しかし今回の分析により,国内の水道水がミネラル成 分によりグループ分けされ,味の差異が見られたことは興 味深い。ミネラル成分の主成分分析では,地域ごとにある 程度傾向が見られた。Ca, Mg 濃度が低いグループには,味 の評価の高い水が集まった。  一般に地下水には,汚染やにごりが少なく良質の水とい うイメージがあるが,今回の味の評価は,地表水の方が高 い結果となった。今回の水道水サンプルは,11 サンプルが, 河川水,ダム水,配水池などの地表水から作られ,9 サン プルが主に井戸や湧水などの地下水由来の水であった。地 表水の多くは主成分分析のグラフ(Fig. 3C)の第二主成分 がマイナスの領域,すなわち Ca, Si, Mg 濃度の低い領域で あることから,地表水にこれらの元素が比較的少なく,そ れによって味の評価が高くなった可能性が示唆された。雨 水に希釈される地表水と比べ,地下水は地下の滞留時間が 長く,ミネラル成分濃度が高くなる傾向がある。  判別分析では味の評価の判別に対する Ca,Si 濃度の判別 係数が高くなり,主成分分析によるグループ分けから得ら れた傾向が裏付けられた。物性指標では電気伝導度(EC) や溶存固形物総量(TDS)といった不溶性成分の量を示す 指標で判別係数が高い結果となった。さらに,pH の判別 係数も高く,味評価との関連性が示唆された。  橋本5,6)らが提唱した O-index では美味しさと含有ミネ ラルの関係を示しているが,下の不等式を満たす水が美味 しい水であるとされる。 O-index=(Ca+K+SiO2)/(Mg+SO4)≧2 Table 3. 判別分析 A ミネラル成分 変 数 Wilks のラムダ F 値 自由度 1 自由度 2 P 値 判 定 判別係数標準化 Na 0.9363 0.9517 1 14 0.3458  0.6110 Ca 0.8326 2.8153 1 14 0.1155  1.0884 K 0.9736 0.3800 1 14 0.5475 -0.3528 Mg 0.9830 0.2425 1 14 0.6301 -0.3179 Si 0.7245 5.3224 1 14 0.0369 *  1.2960 B 物 性 変 数 Wilks のラムダ F 値 自由度 1 自由度 2 P 値 判 定 判別係数標準化 総硬度 0.9354 0.8980 1 13 0.3606  0.7064 pH 0.7292 4.8270 1 13 0.0468 *  1.1679 EC 0.8324 2.6174 1 13 0.1297 -3.5531 TDS 0.9074 1.3259 1 13 0.2703  2.6862 ORP 0.8752 1.8545 1 13 0.1964  0.7117 TOC 0.9623 0.5086 1 13 0.4883  0.3244

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-3 -2 -1 0 1 2 3 4 -4 -2 0 2 4 6 8 第二主成分 第一主成分 Na Ca K Mg Si Li Al Mn Co Ni Cu Zn As Mo Ba Pb -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 -0.6 -0.4 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 第二主成分 第一主成分

主成分負荷量

Fig. 6. 微量ミネラル成分を含めた主成分分析  O-index では,Ca 濃度が分子に,Mg 濃度が分母にあり, Mg が美味しさに逆効果であると示唆されている点では本 研究の結果と同じである。SiO22-や SO42- などの陰イオン の影響については,今後検討していきたい。  なお,今回の主成分分析では,水道水で含有量の高いミ ネラル 5 元素をもとに行ったが,より微量なミネラル成分 を含め,16 元素濃度による主成分分析を行った。結果を Fig. 6 に示す。20 サンプルの水道水の多くが Y 軸周辺に分 布している。これは,K, Na, Mg, Ca, Si といった主要元素 の主成分負荷の高い領域と一致している。したがって,水 道水のグループ分けにはその他の微量元素濃度はほとんど 影響していないといえる。  BP 法にてクロスバリエーションを行うと,主要 5 元素 および物性値を用いた場合のみ有効であるという結果を得 ており,このことも上記の結果を支持している。  ミネラルウォーターとくらべて「まずい」イメージの強 い水道水であるが,今回の研究結果より国内でもミネラル 元素の含有濃度は様々で,味にも差があることが明らかと なった。Si 濃度,Ca 濃度,pH 値といった味評価に貢献度 の高い水質因子や取水源の特徴から地域の水道水を再評価

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し,調理に使う水を選択できるようになると期待できる。 5. 結  論  本研究では日本の水道水に含まれるミネラル成分濃度や TOC や pH などの物性値を基に国内の水道水を主成分分析 によりグループ分けし,水道水の各グループと味評価の関 係および判別分析から,味に貢献するミネラル成分,さら に,総硬度,pH,電気伝導度(EC),溶存固形物総量 (TDS),酸化還元電位(ORP),有機炭素源濃度(TOC) のうち,味に貢献する物性を検討した。その結果,味の評 価の高い水道水には地表水が多く,Si 濃度や Ca 濃度が低 いこと,また判別分析結果より,Si 濃度,Ca 濃度,pH 値 の味の評価に対する判別係数が高いことが分かった。  本研究は科学研究費助成事業の補助金(No. 24500958) により支援を受けました。また,各自治体水道局より水道 水サンプルを提供いただきました。ここに謝意を表します。 文  献 1) 日 本 ミ ネ ラ ル ウ ォ ー タ ー協 会(2015.3.20),ミ ネ ラ ル ウ ォ ー タ ー類 各 種 統 計,http://minekyo.net/publics/ index/5/, (2015.9.10) 2) おいしい水研究会(1985),おいしい水について,水道協会 雑誌,54,76-81 3) 足立昌子,野島佐智子,浜本麻琴,荻原由起子,小林正 (1988),水道水と市販飲料水を含む自然水の成分比較に関す る検討,衛生化学,34,565-569 4) 川合信行,浜下一正,畑本二美,中島一郎(1994),多変量 解析による自然水の味の解析と,成分によるおいしさの判別, 日本食品工業学会誌,41,778-784 5) 橋本奨,古川憲治,南純一(1985),ミネラルバランスから の飲料水の水質評価に関する研究(第Ⅰ報告)ミネラル ウォーターの調整と官能試験,日本水処理生物学会誌,21, 19-24 6) 橋本奨,藤田正憲,南純一(1986),ミネラルバランスから の飲料水の水質評価に関する研究(第Ⅱ報告)おいしく,健 康に良い水のミネラルバランス指標について,日本水処理生 物学会誌,22,1-6 7) 藪崎志穂,島野安雄(2009),平成の名水百選の水質特性, 地下水学会誌,51,127-139 8) 日本地下水学会編(2009),「新・名水を科学する 地質 データからみた環境」,技報堂出版,東京,pp. 263-268 (平成 27 年 6 月 7 日受付,平成 27 年 12 月 2 日受理) 和文抄録  水道水の水質は,原水である河川水,地下水,湧水の質を反映する。なかでも含有ミネラル成分濃度や硬度は水道水の 味に多様性を与えているとの報告がある。本研究では水道水に比較的高濃度に含まれる Na, Ca, K, Mg, Si の濃度および pH や TOC などの物性をもとに国内の 20 か所の水道水を主成分分析にて分類し,判別分析により味の評価結果との関連性を 調べた。その結果,水道水は地域ごとに似かよった水質特性を示し,水道水の取水地の地表水,地下水の別に共通する特 徴が見られた。また,Si 濃度や Ca 濃度が低いグループには,地表水が多く,味の評価の高いものが多く含まれていた。さ らに,判別分析では Si 濃度,Ca 濃度,pH の判別係数が高く,主成分分析での結果と矛盾しなかった。

参照

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