地域在住高齢者おける身体活動および座位行動と体力との関連:
篠栗元気もん研究
キーワード:3 軸活動量計,地域在住高齢者,身体活動量,座位行動,体力
行動システム専攻 広田 美江背景
厚生労働省簡易生命表による我が国の平均寿命は 2017 年において,男性 80.1 年,女性 87.3 年と過去最 高を更新した 1).身体活動量が多い者や,運動をよく 行っている者は,総死亡,虚血性心疾患,高血圧,糖 尿病,がんなどの罹患率や死亡率が低いこと 2) 3),ま た,身体活動や運動が,メンタルヘルスや生活の質の 改善に効果をもたらすことも報告された.下方ら4)は, 要支援・要介護となる高齢者の虚弱の予防,健康維持 のためには,慢性疾患を予防し,身体活動を向上させ, 十分に運動して歩行能力や体力を保つことが重要であ ることを報告している.また,アメリカの質問紙法の 研究によれば,身体活動は高齢者の健康寿命の長さや 死亡前の介護期間の長短に関連することが報告されて いる 5).また,体力に関しても,握力,歩行速度,椅 子からの立ち上がり速度は,死亡率との関連が報告さ れている 6).従来の身体活動評価は,質問紙による主 観的な身体活動,座位行動の評価がなされていたが, 近年3 軸加速度センサー内蔵活動量計(以下,活動量 計)が開発され,客観的な評価が可能となった. 高齢期の要介護や要支援の原因となる寝たきりや ADL 低下には,身体活動量の低下が影響していると考 えられている.これを受けてWHO では,65 歳以上の 高齢者に対し,1 週間当たり 150 分の中強度身体活動 (MVPA:moderate-to vigorous-intensity physical activity)を行うことを推奨している.さらに,身体活 動の低下と相俟って,高齢者における座位行動の増大 は,さらなる体力・運動機能の低下をもたらす可能性 がある.つまり,高齢期に身体活動量を過度に低下さ ないことに加えて,座位行動を増大させないことが, 体力・運動機能の低下を予防し,結果として健康寿命 の延伸につながる可能性がある.高齢者にとって,日 常における身体活動量の減少を防ぐことが,運動量の 維持および体力の維持・向上に繋がる可能性があるも のの現時点では,その関連性は未だ結論には至ってい ない.身体活動・座位行動と体力との関連性を検討す ることは,高齢者のQOL(Quality of life)や疾病予防, 障害予防を考える上でも意義があるものと考えられる.目的
本研究の目的は,地域在住高齢者におけるMVPA お よび SB の変化と体力との関連性を縦断的に検討する ことである.方法
1)研究デザイン 本研究は,福岡県糟屋郡篠栗町に在住する地域在住 高齢者を対象に,要介護に関わる変容可能な生活習慣 諸要因を探索することを目的とした「篠栗元気もん研究」の ベースライン調査と 2 年後のフォローアップ調査のデータ を用いて実施された縦断研究である. 2)対象者 本研究の対象者は,福岡県糟屋郡篠栗町に居住する 2011 年 1 月末 65 歳以上かつ要介護認定を受けていな い全住民 4,979 名から,死亡,入院または町外に転居 66 名を除く 4,913 名を初期調査対象とし,郵送によっ て調査への参加を依頼した.この中で 2,629 名(応答 率 53.5%)が,2011 年 5 月から 8 月に行われたベー スライン調査に参加した.この中から,うつ病,認知 症およびパーキンソン病を発症した 38 名が,また,フ ォローアップ調査に 1,564 名が参加しなかっため, 2013 年フォローアップ調査参加したものは 1,045 名 だった.フォローアップ調査は,2 年後の 2013 年 5 月 から 8 月に同様の調査を行った.その中からベースラ イン調査の身体活動のデータがない 235 名,フォロー アップ調査の身体活動のデータがない 135 名,ベース ライン調査の体力データがない 73 名,フォローアップ 調査の体力データない 29 名を除いた.ベースラインお よびフォローアップ調査の両方のデータがあるのは, 573 名であった.共変量のない 12 名を除いた 561 名を 最終対象者とした. 3)測定項目 ①身体活動・座位行動 身体活動量の測定には,3 軸加速度センサー内臓活動量計(Active Style Pro ,HJA-350IT,オムロンヘ ルスケア株式会社)(以下,活動量計と略す)を用いた. 活動量計は体力測定会参加時に十分な説明を行った後 に装着してもらい,1 週間後に郵送で返却してもらっ た.測定期間は連続の7 日間として,風呂に入る時間 と睡眠時間を除いて起床時刻から就寝時刻までの活動 量を測定した.データ記録の間隔は1 分間とした.本 研究では加速度計の採用条件が10 時間以上および装 着日数は4 日以上とした.身体活動量は強度によって 分類された.身体活動水準は,活動強度3.0METs 以 上の活動を中高強度の身体活動量(以下,MVPA,分/ 日),活動強度1.6-2.9METs の活動を低強度の身体活 動 (以下,LPA,分/日)とした.また,日常生活におけ る覚醒時の座位生活の時間などの活動強度1.5METs 以下の活動を座位時間(以下ST,分/日)とした ②体力測定項目 2011 年に行われたベースライン調査の体力測定項 目は,握力,膝伸展力,5m歩行速度,開眼片足立ち時 間,5 回椅子立ち上がり速度であった.また,フォロ ーアップ調査として,2013 年にも同様の体力テストを 行った. ③その他の測定 基本属性は,年齢,性別および教育年数,身体属性 は,BMI,IADL,2 つ以上の疾病罹患,心理・社会的 特性は,主観的経済状態,主観的健康感を調査した. 生活習慣は,喫煙,飲酒,運動習慣に関して自記式質 問紙法を用い調査した.
解析方法
本研究における対象者を,MVPA,ST の四分位に基 づく4 群(Q1~Q4)の測定結果を群別に解析した.参 加者の特性における連続変数は,平均値±標準偏差 (SD)を,カテゴリー変数は割合(%)で示し対応す るt検定を行った.また,ベースライン調査とフォロ ーアップ調査の体力変化量の差と,ベースライン調査 のMVPA と ST における四分位別における 2 年間の体 力変化の関連を解析した. 次に,MVPA および ST と体力との関連性を調査す るため,MVPA および ST を独立変数として,体力を 従属変数として重回帰分析を行い標準化回帰係数(β) とその 95%信頼区間(CI)を示した.Model1 では, 年齢,性別,および装着時間を調整因子として投入し た.Model2 では,Model1 に加えて BMI,教育歴, 飲酒,喫煙,IADL,主観的健康感,経済状況,運動 習慣,および既往歴を調整因子とした.Model3 では, Model2 に MVPA もしくは ST を調整因子として加え た. 最後に,ベースライン調査時から 2 年後のフォローア ップ調査時のMVPA・ST それぞれについて,MVPA は WHO の推奨値(150 分/週)をカットオフ値として 4 群に区分した. MVPA カットオフ値以上から以上を 「高値群」未満に移行する者を「減少群」,カットオフ 未満から以上へ移行した者を「増加群」,カットオフ未 満から未満へ変化がなかった者を「低値群」と定義し た.ST のカットオフ値は,中央値である男性 489. 4722 分/日,女性 420.7875 分/日において区分した. この中央値をもとに各調査時のST 値で対象者を 4 群 ずつに分けた.ST ではカテゴリーが増加に転じた者 を「増加群」,減少した者を「減少群」,高いカテゴリ ーを維持した者を「高値群」低いカテゴリーを維持し た者を「低値群」と定義した.MVPA または ST のカ テゴリー変化と,フォローアップ調査時の体力との関 連の検討には,交絡因子を調整後の標準偏回帰係数と 95%CI を算出した.すべての解析は SAS ver. 9.4(SAS Institute Inc, Cary NC,USA)を用い,統計学的有意水準は5%とする.
結果
表 1 にベースライン調査における MVPA 四分位別の対 象者特性を示した.対象者 561 名における平均年齢は, 73.18±5.38 歳であり,男性が 231 名と 41%を占めた. 活動量計の装着時間は,1 日あたり 830.85±94.52 分, MVPA は,装着時間の 6%(50.34±32.45 分/日)を占め, ST は 55%(455.4±114.5 分/日)であった. MVPA の 4 群比較では全対象者の,性別,教育歴,BMI,IADL, 主観的経済状態および喫煙には有意な関連性を認めな かった.年齢,主観的健康感,飲酒,運動習慣 ,2 つ 以上の疾病罹患,ベースライン調査とフォローアップ 調査の握力,膝伸展力,5m最大歩行速度,開眼立ち上 がり速度,椅子立ち上がり速度,MVPA,ST,装着時 間に有意な関連性を認めた(p<0.05). 表 2 には,ベースライン調査における ST 四分位別 の特性比較を示した. ST の 4 群比較では,性別,教育 歴, IADL,主観的経済状態および飲酒,運動習慣,ベ ースラインの握力,開眼立ち上がり速度,椅子立ち上 がり速度,フォローアップ調査の握力,膝伸展力およ び椅子立ち上がり速度に有意な関連を認めなかった. 一方,年齢,BMI,主観的健康感,喫煙 ,2 つ以上の 疾病罹患,ベースライン調査の膝伸展力,5m最大歩行 速度とフォローアップ調査の 5m最大歩行速度,開眼立ち上がり速度,MVPA,ST,装着時間に有意な関連 を認めた(p<0.05)(表 2). 表 3 には,ベースライン調査とフォローアップ調査 の体力の変化(n=561)を表 3 に示した.2 年間のそれ ぞれの変化量は,握力が-1.12 ± 3.01,開眼立ち上がり 速度が-4.36 ± 33.19 で減少し,膝伸展力 0.18± 7.18,椅 子立ち上がり速度が 0.03 ± 0.18 がやや増加し,5m最 大歩行速度 0 ±0.38 と,有意な変化を認めなかった. 重回帰分析によるベースラインの MVPA および ST とフォローアップの体力との関連性を検討した結果, ベースライン調査の MVPA と開眼片足立ち時間とは, 有意な関連性が認められた(p<0.05). 最後に,重回帰分析による 4 変化群におけるベース ライン調査の MVPA および ST とフォローアップ調査 の体力との関連を分析した.性別,BMI,教育歴,飲 酒,喫煙,IADL,主観的健康感,経済状況,運動習慣, 疾患の既往を調整後,MVPA レベルを高く維持もしくは 増加した者は,膝伸展力を除いた全ての体力との間に有 意な正の関連を認めた(p<0.05).一方で ST との間にはい ずれの体力も関連を認めなかった. さらに,MVPA 増加群および MVPA 高値維持群と握 力,5m最大歩行速度,開眼片足立ち時間,椅子立ち上 がり速度の MVPA 増加群については,ST を調整して もなお関連性は有意なままであった. Q1 Q2 Q3 Q4 561 139 141 140 141 < 基 本 属 性 > 年 齢 ( 歳 . 平 均 ± SD) 72.2±5.4 75.0±5 .8 72 .3 ±5.3 71 .2±5.3 70.2 ±4.3 <.0001 性 別 人 (男 性 . % ) 230(41) 57(10.16) 58(10.34) 57(10.16) 58(10.34) 0.9985 教 育 歴 ( 年 . 平 均 ± SD) 11.5±2.6 11.2±2.4 11.6±2.9 11.6±2.1 11.5±2.8 0.4175 < 身 体 属 性 > BMI( ㎡ /kg. 平 均 ± SD) 23.2±2.8 23.3±3.0 23.2±2.8 23.1±2.8 23±2.7 0.2857 IADL 人 ( % ) 35(6.24) 8(1.43) 8(1.43) 11(1.96) 8(1.43) 0.8337 < 心 理 ・ 社 会 的 特 性 > 主 観 的 経 済 状 態 人 (% ) 229(40.82) 66(11.76) 50(8.91) 66(11.76) 47(8.38) 0.098 主 観 的 健 康 感 人 (% ) 85(15.15) 31(5.53) 25(4.46) 20(3.57) 9(1.6) 0.0002 < 生 活 習 慣 > 喫 煙 人 ( % ) 40(7.13) 12(2.14) 12(2.14) 10(1.78) 6(1.07) 0.135 飲 酒 人 ( % ) 242(43.14) 46(8.2) 60(10.7) 63(11.23) 73(13.01) 0.0018 運 動 習 慣 人 ( % ) 384(68.45) 74(13.19) 95(16.93) 108(19.25) 107(19.07) <.0001 < 多 疾 病 罹 患 > 2つ 以 上 の 疾 病 罹 患 人 ( % ) * 311(55.44) 59(10.52) 78(13.9) 80(14.26) 94(16.76) <.0001 < 身 体 活 動 量 > MVPA( 分 /日 . 平 均 ± SD) 50.3±32.5 16.2±7.1 35.4±6.0 55.0±7.5 94.3±26.8 <.0001 ST( 分 /日 , 平 均 ± SD) 455.4±114.5 518.0±109.6 460.3±103.0 442.5±105.9 401.6±109.0 <.0001 装 着 時 間 ( 分 /日 . 平 均 ± SD) 843.9±94.5 824.6±96.0 834.2±91.0 849.8±96.6 866.6±9.0 <.0001 表1,ベースライン調査におけるMVPA四分位別の特性比較(n=561)
Total MVPA p for trend
*2つ 以 上 の 疾 病 罹 患 :心 臓 病 , 糖 尿 病 , 呼 吸 器 疾 患 , 腎 臓 ・ 前 立 腺 の 疾 患 , 筋 骨 格 系 疾 患 , 外 傷 , 悪 性 新 生 物 注 記 : 各 指 標 に 対 し て 平 均 ( 標 準 偏 差 ) も し く は 中 央 値 ( 2 5 お よ び 7 5 パ ー セ ン タ イ ル 値 ) を 表 示 . BMI: 体 格 指 数 IADL: 得 点 が 5点 を 下 回 る 者 の 割 合 .主 観 的 経 済 状 態 : 苦 し い ・ や や 苦 し い . 主 観 的 健 康 観 :あ ま り 健 康 で な い ・ 健 康 で な い . 飲 酒 :時 々 の 無 ・ ほ ぼ 毎 日 飲 む . 喫 煙 :時 々 吸 っ て い る ・ ほ ぼ 毎 日 吸 っ て い る . 運 動 習 慣 , 2つ 以 上 の 疾 病 罹 患 : あ り . P<0.05 P<0.05 Q1 Q2 Q3 Q4 561 139 141 140 141 <基本属性> 年齢(歳.平均±SD) 72.2±5.4 71.1±4.6 72.0±5.4 72.3 ±5.3 73.3± 5.9 0.0027 性別 人(男性.%) 230(41) 57(10.16) 58(10.34) 57(10.16) 58(10.34) 0.9985 教育歴(年、平均±SD) 11.5±2.6 11.4±2.5 11.7±2.7 11.3±2.4 11.6±2.7 0.9407 <身体属性> BMI(㎡/kg、平均±SD) 23.2±2.8 22.9±2.8 23.2±2.8 22.9±2.7 23.6±2.9 0.0433 IADL 人(%) 85(15.15) 5(0.89) 9(1.6) 9(1.6) 12(2.14) 0.106 <心理・社会的特性> 主観的経済状態 人(%) 332(59.18) 93(16.58) 79(14.08) 81(14.44) 79(14.08) 0.0986 主観的健康感 人(%) 476(84.85) 122(12 .23) 123(12.77) 121(13.57) 110(21.99) 0.026 <生活習慣> 喫煙 人(%) 40(7.13) 20(3.57) 2(0 .36 ) 10(1.78) 8(1.43) 0.0373 飲酒 人(%) 319(56.87) 59(10.52) 76(13.55) 56(9.98) 51(9.09) 0.0782 運動習慣 人(%) 384(68.45) 85(15.15) 105(18.72) 103(18.36) 91(16.22) 0.6091 <多疾病罹患> 2つ以上の疾病罹患 人(%)* 311(55.44) 90(16.04) 81(14.44) 73(13.01) 67(11.94) 0.0024 <身体活動量> MVPA(分/日.平均±SD) 50.3±32.5 65.4±36.2 56.3±33.0 44.5±26.0 35.3±25.3 <.0001 ST(分/日.平均±SD) 455.4±114.5 319.7±64.4 420.9±42.42 486.4±41.7 592.8±73.5 <.0001 装着時間 (分/日.平均±SD) 843.9±94.5 789.7±77.6 824.6±72.2 855.7±77.4 904.6±107.3 <.0001 表2,ベースライン調査におけるST四分位別の特性比較(n=561) Total ST p for trend *2つ以上の疾病罹患:心臓病、糖尿病、呼吸器疾患、腎臓・前立腺の疾患、筋骨格系疾患、外傷、悪性新生物 注記:各指標に対して平均(標準偏差)もしくは中央値(25及び75パーセンタイル値)を表示BMI:身体.格指数 IADL:得点が5点を 下回る者の割合.主観的経済状態:苦しい・やや苦しい.主観的健康観:あまり健康でない・健康でない.飲酒:時々飲む・ほぼ毎日飲 む.喫煙:時々吸っている・ほぼ毎日吸っている.運動習慣,2つ以上の疾病罹患:あり. ベ ー ス ラ イ ン フ ォ ロ ー ア ッ プ 変 化 量 p 握 力 ( k g 、 平 均 ± S D ) 28.0± 8.1 26.8± 7.9 -1.1 ± 3.0 <.0001 膝 伸 展 力 ( k g 、 平 均 ± S D ) 28.2± 10.4 28.5± 10.6 0.2± 7.2 0.5423 5 m 最 大 歩 行 速 度 ( m /秒 、 平 均 ± S D ) 1.8± 0.4 1.83± 0.4 0 ± 0.4 0.9042 開 眼 片 足 立 ち 時 間 ( 秒 、 平 均 ± S D ) 70.2± 47.4 65.8± 47.5 -4.4 ± 33.2 0.002 椅 子 立 ち 上 が り 速 度 ( 秒 /回 、 平 均 ± S D ) 0.6± 0.2 0.7± 0.2 0.03 ± 0.2 <.0001 表3,ベースライン調査とフォローアップ調査の体力の変化(n=561) P<0.05
考察
本研究では,地域在住高齢者のベースライン調査か らフォローアップ調査までの2 年間の身体活動量の変 化と体力(握力,膝伸展力,5m最大歩行速度,開眼片 足立ち時間,椅子立ち上がり速度)に変化量との関連 を縦断的に検討した. 今回の調査で回帰分析によるベースラインの MVPA および ST とフォローアップの体力との関連性を検討 した結果,ベースライン調査のMVPA と開眼片足立ち 時間とは,有意な関連性が認められた(p<0.05).ま た,重回帰分析による変化群別ベースライン調査の MVPA および ST とフォローアップ調査の体力との関 連を検討した結果,MVPA150 分/週および ST 中央値 をカットオフ値とし変化量の維持群と低下群および増 加群を比較した.握力,5m最大歩行速度,開眼片足立 ち時間,椅子立ち上がり速度の4 項目において,有意 差が認められた.握力および歩行速度の低下は,フレ イルやサルコペニアといった診断基準に用いられてお り,高齢者における最も多く使われる体力指標である. また,開眼片足立ちは日本整形外科学会においてロコ モティブシンドロームの改善に推奨されている. 本研究の仮説としては,地域在住高齢者における身体 活動・座位行動と体力について中高強度活動を維持・ 向上させた群および座位行動の減少は,体力の改善が 認められるというものであった.これまで身体活動と 体力は死亡率や冠危険因子,肥満,認知症との関連性 を報告されているものは多くあるが,身体活動の変化 と体力との関連に関する報告は少ない.本研究ではベ ースライン調査の MVPA とフォローアップ調査の体 力を検討した結果,MVPA では関連性を認めた.5 項 目中1 項目の関連性を認めたが,今後調査期間が延び ることで他の体力指標にも影響が出るのではないかと 推測される. 本研究の限界として,研究対象者が測定会に参加可能 な比較的健康な調査に協力的な高齢者であったことに 加え,活動量計の使用未経験者や体力テストの方法の 理解度による差などが偏りを与えた可能性があり, 実 証研究でさらなる検討をする必要があると考える.本 田ら 7)の篠栗研究では,解析対象者は,地区で行われ た測定会に参加できた者であり,比較的健康でかつ活 動的な集団に偏っている可能性ができないと報告の中 で述べている.しかしながら,多くの研究でも同様の ことが起こりうる.以上のことより,MVPA といった 身体活動量を増加させることで体力は改善される可能 性が高いことが示唆された.しかしながら,ST を減 少させても体力に影響がないことも推測された.まとめと今後の展望
地域在住高齢者において,MVPA は膝伸展力を除く, 握力,5m 最大歩行速度,開眼片足立ち時間,椅子立 ち上がり速度などの体力に影響する因子であったこと から,高齢期におけるMVPA の維持または増加は,体 力に影響することが示唆された. また,握力や5m 最大歩行速度は身体的フレイルの構 成因子でもあることから,MVPA の維持・増加はフレ イル予防・改善を通じて健康寿命の延伸に有効に作用 することが示唆された. 6.引用文献. 1)平成29 年厚生労働省簡易生命表の概況. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life17/ dl/life17-15.pdf. (アクセス日:2018 年 12 月 20 日) 2)内閣府 平成 30 年版高齢社会白書(概要版)2 健 康福祉 第1 章 高齢化の状況. https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/h tml/gaiyou/s1_2_2.html. (アクセス日:2018 年 12 月 09 日) 3 ) 厚 生 労 働 省 広 報 誌 「 厚 生 労 働 」. https://www.mhlw.go.jp/houdou_kouhou/kouhou_sh uppan/magazine/2018/03_01.html. (アクセス日:2018 年 8 月 25 日) 4)下方 浩史 安藤 富士子(2013):老化の長期縦断研 究 か ら み た 高 齢 期 の 健 康 増 進 の 解 明 . Geriatric Medicine .51:895-899.5)Ferrucci L,Izmilian G, Leveille et al.(1999) :Smoking, Physical Activity, and Active Life Expectancy . Am1J Epidemiol.149:645-653.
6) Cooper R .Khu D. Hardy R et al. ( 2010 ): Objectively measured physical capability levels and
mortality: systematic review and
meta-analysis,BMJ.341:1-12.
7)本田 貴紀,楢崎 兼司,陳 涛 他 (2014):地域在住
高齢者における3軸加速度計で測定した座位時間と肥