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目標志向性からみたスポーツ自己効力感の情報源 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)目標志向性からみたスポーツ自己効力感の情報源 キーワード:自己効力感,情報源,課題志向性,自我志向性,競技スポーツ 行動システム専攻 大石 彩加. 1.背景. 認知に関する指標として目標志向性があり,いくつかの. スポーツ選手の技術面や体力面のトレーニングと同様. 先行研究で,自己効力感との関係について検討されてい. に心理的な状態を望ましくコントロールする心理面のト. る.目標志向性とは,達成目標を達成しようとする際の. レーニングが重要であると指摘されており,心理的競技. 個人の特徴とされており,Dweck & Leggett (1988) はこ. 能力を高めることが必要とされている(煙山ら,2010) .. の目標志向性が動機づけのパターンの違いを導くとして. スポーツ選手の心理的競技能力は競技成績を規定する重. いる.その中における個人差を表す志向性として,課題志. 要な要因であり,スポーツ選手が競技場面で実力を発揮. 向性と自我志向性という 2 つの性質の異なる志向性の機. するために必要な心理的スキルとされている(徳永,. 能・役割の重要性が示されている (磯貝, 2001) . 藤田 (2010). 2003).心理的競技能力には,競技意欲や精神の安定,. はシャトルランテストとスポーツにおける課題・自我志向. 作戦能力,自主性・自発性,自己コントロールなどがあ. 性と自己効力感の影響を検討し,目標志向性の種類に関係. り,その中の1つに自己効力感が挙げられる(村上,. なく自己効力感が高い者は,自己効力感が低い者よりもパ. 2010) .. フォーマンスが高い事を示唆している.さらに,自我志向. 自己効力感とは、「ある状況において、ある結果を達. 性が高い者は,課題志向性が高い者に比べて努力糸が低く. 成するために必要な行動を自分がうまく出来るかどうか. 諦め意図が高いこと, 自我志向性が高く自己効力感が低い. の予期」と定義されており(Bandura,1977),自己効. 場合には,諦め意図が特に高いと報告している.このよう. 力感が高い人は,目標としている行動に挑戦しようと努. に目標志向性と自己効力感の関係について検討した先行. 力する傾向を示したり,課題を達成する可能性が高いと. 研究は多くあるが,情報源と目標志向性の関係性について. いった特徴があるとされ,スポーツ場面においては,自. 検討した先行研究は見受けられない.. 己効力感が高い選手ほど競技成績が高いことが示されて いる. この自己効力感を高める要因として本研究では,情報. そこで,本研究では,目標志向別に情報源の組み合わ せと自己効力感の関係性について検討することを目的と した.. 源と目標志向性に注目をした.Bandura (1997) による と, この自己効力感は自然発生的に生じるものではなく、. 2.情報源と自己効力感の関係性(研究Ⅰ). 「遂行行動の達成」 「代理的経験」 「言語的説得」 「情動的. 1)目的. 喚起」で構成される4つの情報源が自己効力感の形成に 影響すると示唆されている.情報源と自己効力感に関す. スポーツ場面における情報源の尺度を作成し,情報源 と自己効力感の関係性について検討する.. る研究は,スポーツ場面においてもいくつか研究がなさ れている。しかし、多くの先行研究では1つまたは複数. 2)方法. の情報源に焦点を当て,自己効力感との関係性を検証し. ⅰ)対象者. ているものが多く,4つの情報源全てに焦点を当て,自. 個人競技の運動部活動に所属している大学生 209 名. 己効力感と競技成績の関係を検証した研究は見受けられ. (男性 154 名,女性 65 名 19.7±1.3 歳)を対象とした.. ない.そのため、スポーツ場面においてどの情報源が自 己効力感に最も影響を与えているかは明らかにされてお らず,どのように自己効力感を形成しているかという視. ⅱ)調査時期 調査時期は 2013 年 4 月から 6 月であった.. 点からの検討はまだ十分ではないと考えられる. また,自己効力感は個人の認知によって行動に対する 影響が異なるとされている(Bandura,1977).個人の. ⅲ)調査内容 ①フェイスシート.

(2) 表 1 情報源項目が自己効力感に与える影響. ②スポーツ場面における自己効力感の情報源 リハビリ場面のなどの中西(2000)と百瀬(1998) , 藤田(2010),魚尾(2011)の尺度をスポーツ場面に文 言を修正し,遂行行動の達成,代理的経験,言語的説得, 情動的喚起計 16 項目で構成された.回答方法は「1:全 くなかった」から「5:非常にあった」の 5 件法であっ た.なお分析には,情報源の各項目得点を用いた. ③自己効力感. 4)考察. 蓑内(2002)が作成した運動/スポーツの自己効力感. 本研究では,情報源項目のうち遂行行動の達成を想定. 尺度を使用した. この尺度は 4 因子 11 項目で構成され. した項目が最も自己効力感に影響を及ぼすことが確認さ. ていた.回答方法は「1:全く当てはまらない」から「5:. れた.これは,スポーツ場面における遂行行動の達成の. よくあてはまる」の 5 件法であった.なお,分析では 11. 体験経験が自己効力感を形成する最も強力な情報源であ. 項目の合計得点を用いた.. るからと考えられる. Bandura (1977,1986) は,4つの情報源の中で遂行. ⅳ)統計処理. 行動の達成が最も自己効力感を高める情報源になりえる. 統計処理は, SPSS for windows 20 を用いて,相関. と述べており,遂行行動の達成は,自身による成功体験. 分析と重回帰分析のステップワイズ法を行った.有意水. を積み重ねることで自己効力感を高めていると示してい. 準は,5%未満とした.. る.また,遂行行動の達成から自己効力感を高めるため には,個人の目標が関与しているとされており,現在の. 3)結果. 目標は何か,目標にどの程度近づけたのかを自覚するこ. ⅰ)情報源と自己効力感の関係性. とが重要とされている(中西,2000).スポーツ場面に. 情報源と自己効力感の間に関連性が認められるかを. おいては,日々の練習における目標の達成によって成功. 検討するために,情報源の各項目と自己効力感の相関係. 体験が得られたり,試合における勝利や目標の達成によ. 数を算出した.自己効力感と遂行行動の達成 4 項目,代. って成功体験が得られ,それに伴う努力量の実感などに. 理的経験 4 項目,言語的説得 4 項目,情動的喚起 2 項目. より,成功体験が多くなされると考えられる.さらに,. の間に正の有意な相関が見られ,情動的喚起 1 項目の間. 自身の現在の目標は何か,目標にどの程度近づけたのか. に負の有意な相関が見られた.自己効力感と情動的喚起. を自覚できる機会が多く存在する. このようなことから,. 1 項目の間に有意な関係性は認められなかった.. スポーツ場面では,遂行行動の達成が自己効力感に最も 影響を及ぼしている可能性があると考えられる.. ⅱ)情報源が自己効力感に与える影響 情報源が自己効力感に与える影響を検討するために, 情報源の各項目を従属変数,スポーツ場面における自己 効力感を独立変数とする重回帰分析をステップワイズ法 を用いて行った.有意な説明力を有している項目は, 「練 習に積極的に参加した(β=.30, F(5, 203)=27.77, った(β=.23, F(5, 203)=27.77,. p<.01) 」 「チーム. メイトの失敗した場面を見て、“自分も失敗してしまう” と思った事があった(β=.23, F(5,. 1)目的 志向性別に情報源がスポーツ場面における自己効力感 に及ぼす影響を検討する.. R2=.41,. p<.01) 」 「練習をして、“自分にもできた”と思った事があ R2=.41,. 3.目標志向性別にみた自己効力感の情報源(研究Ⅱ). 203)=27.77,R2=.41,. p<.01)」「“自分なら出来る”と言い聞かせた事があった (β=.16, F(5, 203)=27.77, R2=.41, p<.05) 」 「練習をして、. 2)方法 ⅰ)対象者 運動部活動に所属している大学生 366 名 (男性 271 名, 女性 95 名 19.4±1.2 歳)を対象とした. ⅱ)調査時期 調査時期は 2013 年 10 月から 12 月であった.. できなかった動きができるようになった事があった. ⅲ)調査内容. (β=.17, F(5, 203)=27.77, R2=.41, p<.05) 」であった(表. ①フェイスシート. 1) .. ②スポーツ場面における自己効力感の情報源.

(3) 研究Ⅰの結果より項目をスポーツ場面に特化した項. ①両志向群. 目に修正した.修正後の情報源の項目は遂行行動の達成. 有意な説明力を有している項目は,「今までできなか. 6 項目,代理的経験 6 項目,言語的説得 7 項目,情動的. ったことができた時に、チームメイトから褒められた事. 喚起 6 項目の計 25 項目で構成された.回答方法は, 「1:. があった(β=.26, F(3,120)=11.74, R2=.23, p<.01) 」 「練. 全くなかった」から「5:非常にあった」の 5 件法であ. 習 に な る と 、 気 分 が 高 ま る 事 が あ っ た ( β=.25,. った.分析では,各項目の得点を用いた.. F(3,120)=11.74, R2=.23, p<.01) 」 「練習をすると気持ち が 落 ち 着 つ く 事 が あ っ た ( β=.18, F(3,120)=11.74,. ③自己効力感. R2=.23, p<.05) 」であった.このことから, 「今まででき. 研究Ⅰと同様に蓑内(2002)が作成した運動/スポー. なかったことができた時に,チームメイトから褒められ. ツの自己効力感尺度を使用した.内的整合性を確認する. た事があった」がスポーツ場面における自己効力感に対. ために,Cronbach の α 係数を算出した.その結果 α=.89. して最も有意な説明力を有していることが明らかになっ. と高い値を示していた.なお,分析では,11 項目の合計. た.また,各情報源の内訳として,情動的喚起が 2 項目,. 得点を用いた.. 言語的説得が 1 項目の計 3 項目であった(表2) . 表 2 両志向群において情報源項目が自己効力感に与える影響. ④スポーツにおける課題・自我志向性 磯貝(2001)が作成した「スポーツにおける課題・自 我志向性尺度」を使用した.この尺度は「個人志向性」に 関する 7 項目, 「自我志向性」に関する 6 項目から構成 されていた. 回答方法は,「1:全然そう思わない」から 「5:とてもそう思う」の 5 件法であった.内的整合性. ②課題志向群. を確認するために,Cronbach の α 係数を算出した.そ. 有意な説明力を有している項目は,「試合の時にリラ. の結果,課題志向性が α=.75,自我志向性が α=.84 と. ッ ク ス し た 気 持 ち で 臨 め た 事 が あ っ た ( β=.47,. 高い値を示していた. なお,分析には,各志向性の合計. F(2,48)=7.63, R2=.24, p<.01) 」 「チームメイトの練習の. 得点を用いた.. 仕方を見て、動きの参考になった事があった(β=.34, F(2,48)=7.63, R2=.24, p<.05) 」であった.このことから,. ⅳ)統計処理. 「試合の時にリラックスした気持ちで臨めた事があった」. 統計処理は, SPSS for windows 20 を用いて,相関. が自己効力感に対して最も有意な説明力を有しているこ. 分析と重回帰分析のステップワイズ法を行った.有意水. とが明らかになった.また,各情報源の内訳として,情. 準は,5%未満とした.. 動的喚起が 1 項目,代理的経験が 1 項目の計 2 項目であ った(表3) .. 3)結果 ⅰ)志向性の分類. 表 3 課題志向群において情報源項目が自己効力感に与える影響. 全ての対象者を「スポーツにおける課題・自我志向性 尺度(磯貝,2001)」のそれぞれの合計得点の中央値を 境にして,4志向群に分類した.4志向群は,課題志向 性と自我志向性が共に中央値以上を示した「両志向群」 , 課題志向性のみ中央値以上を示した「課題志向性群」 ,自 我志向性のみ中央値以上を示した「自我志向群」 ,課題志. ③自我志向群 有意な説明力を有している項目は,「指導者から、よ. 向性と自我志向性が共に中央値以下を示した 「無志向群」. く頑張っていると励ましてもらった事があった(β=.31,. とした.. F(2,41)=4.85, R2=.19, p<.05) 」 「試合の時にリラックス. ⅱ)志向性別にみた情報源が自己効力感に与える影響. した気持ちで臨めた事があった(β=-.30, F(2,41)=4.85,. 志向性別に情報源項目が自己効力感に与える影響を. R2=.19, p<.05) 」であった.このことから, 「指導者から,. 検討するために,群別に情報源の各項目を従属変数,自. よく頑張っていると励ましてもらった事があった」が自. 己効力感を独立変数とする重回帰分析のステップワイズ. 己効力感に対して最も有意な説明力を有していることが. 法を用いて行った.. 明らかになった.また,項目の内訳として,言語的説得.

(4) が 1 項目,情動的喚起が 1 項目の計 2 項目であった(表. れている.言語的説得が自己効力感に及ぼす影響は,説. 4) .. 得者の威信や名声の高さなどによって異なるとされ,中. 表 4 自我志向群において情報源項目が自己効力感に与える影響. でも個人にとって重要な他者からの言葉がけが有効であ るとされている(Bandura,1977,1992) .スポーツ場 面においてこのような説得者を示す人物の 1 人として指 導者がなり得ると考えられる.また,自我志向性が高い 人は自身の有能さに関心があることから,他者からの能. ④無志向群. 力評価が重要とされている(森,2008).そのため,自. 有意な説明力を有している項目は,「練習で取り組ん だ 事 を 試 合 で 発 揮 す る 事 が で き た ( β=.28, F(3,145)=15.81,. R2=.25,. 身の能力に関する評価を重要な他者から得られる言語的 説得が最も自己効力感へ影響を与えていたと考えられる.. p<.01) 」 「チームメイトの動き. 無志向群は,動機づけが低く両志向性の表出や競技意. を見て、自分にもできるかもしれないと思った事があっ. 欲が少ない志向群とされている.遂行行動の達成は,4. た(β=.20, F(3,145)=15.81, 極的に参加した(β=.17,. R2=.25,. p<.05) 」 「練習に積. F(3,145)=15.81,R2=.25,. p<.05) 」. つの情報源の中で最も自己効力感に影響を与える情報源 である.つまり,個人が認知しやすい情報源であると考. であった.このことから, 「練習で取り組んだ事を試合で. えられる.そのため.無志向群という動機づけが低い者. 発揮する事ができた」が自己効力感に対して最も有意な. にとっては,自己効力感の形成に最も影響力があるとさ. 説明力を有していることが明らかになった.また,各情. れる遂行行動の達成が最も自己効力感へ影響を及ぼして. 報源の内訳として,遂行行動の達成が 2 項目,代理的経. いたと考えられる.. 験が 1 項目の計 3 項目であった(表5) . 表 5 無志向群において情報源項目が自己効力感に与える影響. 4.まとめ・展望 本研究の結果から,志向性によって異なった情報源が 自己効力感に影響を及ぼしていることが確認された.こ のことから,志向性を考慮し,情報源を提示することに よって選手の自己効力感が高まりやすくなり,競技力向 上が見込める可能性が見いだせた. しかし,本研究では言語的説得であれば,言葉の種類. 4)考察. や言葉がけのタイミングといった情報源の詳細について. 本研究の結果から,志向性によって,異なった情報源. は検討されていない.Gould et al. (1981) は,さまざま. が自己効力感に影響を及ぼしていることが示唆された.. な条件で言語的説得を検証しており,その中ではネガテ. 両志向群は,積極的な行動をとったり,スポーツ集団. ィブなトークよりもポジティブなトークの方が,良い成. への適応を重視する傾向があるとされている. そのため,. 績を示したと報告している.言語的説得には他にも,他. 自ら行動したことを自己の能力で判断する自我志向性も. 者からの積極的な説得などの条件も考えられるが,他者. 高いが,スポーツ集団へ適応しているため,自身の行動. あるいは,自己からの説得どちらの方が自己効力感に影. の判断を他者の言葉から受け入れることができると考え. 響を及ぼしているのかといった知見は,数少ない.つま. られ,言語的説得が自己効力感へ最も影響を与えていた. り,言語的説得に限らず他の情報源においても様々な条. と考えられる.. 件下で自己効力感に与える影響を検証することが重要で. 課題志向群は,スポーツ場面で自分の能力が伸びるこ. あると考えられる.. とに喜びや楽しみを感じる志向群とされており,自身の. そのため,今後は,いかにして選手の自己効力感を高. 情動的な変化を捉えやすいと考えられる.そのため,行. めるかについて,4つの情報源の内容を詳細に検討して. 動を起こす前に自分が落ち着いていることや気分が高ま. いく必要があると考えられる.. るといった自己の能力に関する情動的喚起を知覚しやす いため,情報的喚起が自己効力感へ最も影響を与えてい たと考えられる. 自我志向群は,自分の能力が他者よりも優れていると きに成功しているうまくいっていると感じる志向群とさ. 5.主要引用文献 Bandura,A. (1977) Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review, 84:191-215..

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