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著者 長崎 栄三

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1A3‑D6 現代社会における数学・理科・技術教育の 連携 : 数学教育の立場から(今後の技術教育と理数 教育の関連性‑レディネス・プロセス・コンテンツ の観点に焦点を当てて‑,課題研究,次世代の科学力 を育てる : 社会とのグラウンディングを実現する ために)

著者 長崎 栄三

雑誌名 年会論文集

巻 35

ページ 135‑136

発行年 2011‑08‑23

出版者 日本科学教育学会

URL http://hdl.handle.net/10297/6917

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現代社会における数学・理科・技術教育の連携−数学教育の立場から− 

Cooperation among Mathematics, Science & Technology Education in the  Modern Society 

: From the standpoint of mathematics education 

 

○長崎  栄三  NAGASAKI Eizo 

静岡大学大学院教育学研究科 

Graduate School of Education, Shizuoka University   

[要約]  数学教育・理科教育・技術教育の連携について、数学教育の立場から述べた。数学教育・理科教育・

技術教育の連携を、その共通性と独自性について、考え方・見方、内容、方法から検討した。共通性 については、考え方・見方として社会的有用性と可謬性、内容として応用・相互関連の項目、方法とし てモデリングを、数学教育の独自性については、考え方・見方として概念の一般化や拡張という数学 的創造、内容として純粋数学の項目、方法として数学内での発展を支える数学化を挙げた。そして課 題として、学習過程を同じにしてもその目的は異なり、また同じような表現方法を使ってもそれらの使 い方の習慣が異なることを意識しておくことを挙げた。 

[キーワード]科学技術リテラシー,数学的リテラシー,数学教育,理科教育,技術教育   

1.はじめに 

数学教育・理科教育・技術教育の連携につい ての議論は、日本科学教育学会年会の課題研究 として、2010 年に継続したものとして行われる。

2010 年には、筆者は、現代社会における科学・技 術・数学の協働と科学技術リテラシーの必要性に ついて論じたあとで、数学教育・理科教育・技術 教育での互いの利用の状況とその課題を明らか にし、その上で、科学技術リテラシー、特に現代 社会における科学技術の役割の理解のために、

それぞれの関係を協働に転換する必要性を述べ た(長崎,2010)。なお、昨年度の議論においては、

指定討論者として参加した数学教育の筆者と理 科教育の参加者が共に、三者それぞれの教育の 独自性の重要性を述べたことが印象的であった。 

本稿においては、「科学技術の智」プロジェクト

(科学技術の智プロジェクト,2008)、及び、筆者ら が行ってきた数学的リテラシーの研究などをもとに、

数学教育・理科教育・技術教育の連携について、

数学教育の立場から述べることにする。 

 

2.数学的リテラシーの研究 

筆者は、2008 年度からの 3 年間、科学研究費 補助金を得て研究代表者として大学の数学教育 研究者や小中高校等の数学教育関係者と共に、

約 30 名の研究組織で、数学的リテラシーに関し て、哲学的研究、歴史的研究、比較的研究など 多方面から検討を行った。数学的リテラシーとは、

すべての人が持って欲しい数学の知識、能力、考

え方などを指している。この研究では、数学的リテ ラシー育成のための方策に関して、高校教師、科 学系博物館を対象に調査を行うとともに、学校に おいて授業研究を行い、そして、メディア関係者 に意見を求めた。また、数学的リテラシーをより広 い文脈で考察するために、数学教育の外側の多 様な方々、すなわち、科学博物館やバイオカフェ に携わる科学教育研究者、人間科学研究者、科 学哲学研究者、数学研究者、技術科教育研究者 と意見を交わし、それらをもとに報告書をまとめた

(長崎,2011)。 

研究成果は、おおむね次の 7 点にまとめられた。

(1)数学的リテラシーの研究の動向と特質、(2)数 学教育学における数学的リテラシー論の理論的 な位置付け、(3)数学教育学の立場から捉えた数 学的リテラシーの構成要素、(4)個人の生涯にお ける数学的リテラシーの様相のモデル、(5)学校に おいて数学的リテラシーを育成するためのカリキ ュラム、(6)学校において数学的リテラシーを育成 する教師のあり方、(7)社会で一般人が数学的リテ ラシーを保持・発展させる枠組み。 

この研究は、数学教育学者の立場から行われ ており、数学的リテラシー研究を数学教育学の中 の目標論に位置づけ、数学的リテラシーとしては 数学の概念の習得だけではなく数学の方法・能 力の習得にも妥当な位置を与え、とりわけ批判的 思考や数学的モデル化に着目している。 

  この研究においては、理科教育・技術教育の連 携のあり方に直接は言及していないが、緩やかな

ISSN 2186-3628 日本科学教育学会年会論文集 Vol.35(2011)

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連携を暗黙の前提として、科学のあり方や技術教 育についても触れ、そして、それらに関連する数 学教育のあり方として、実世界の問題解決におけ る数学的モデル化などに触れている。 

 

3.数学・理科・技術教育の共通性と独自性  現代の高度情報化社会においては数学・科 学・技術が基盤にあり、そのような社会に生きるた めには科学技術リテラシーの育成が必須である。

科学技術リテラシーを育成するためには、それら に主として関わる、数学・理科・技術教育の連携 が必要になる。なお、その連携を考える前提とし て、それぞれの教育を、人間形成的目的、実用的 目的、文化的目的の 3 つの視点から考察しておく ことが必要である。数学・科学・技術の目的と、数 学教育・理科教育・技術教育の目的の両者を視 野に入れておく。ここでは、それらの連携のため に必要な共通性と独自性を、考え方・見方、内容、

方法の 3 点から考察する。 

  数学・理科・技術教育の共通性について、考え 方・見方としては、社会的有用性と可謬性、内容 としては、応用・相互関連の項目、方法としては、

モデリングなどが考えられる。 

考え方・見方としての社会的有用性と可謬性と は、科学技術は社会的に有用であるが、それは 絶対のものではなく可謬すなわち誤りを犯すもの であるということである。とりわけ、昨今の福島原発 問題を考えると、科学技術の可謬性すなわち完 全ではないということを踏まえて議論することは必 要不可欠である。 

内容としての応用・相互関連の項目には、言語 や抽象としての数学、理論や契機としての理科、

道具や具体としての技術などが互いに関連し合っ た内容がある。数学教育から見ると、理科や技術 において数学的言語表現、すなわち、式・表・グラ フなどが利用された内容、理科での発見が数学 の探究の契機となった内容、技術によって作成さ れた具体に数学を見出す内容などが考えられる。 

方法としてのモデリングとは、実世界の問題を、

数学的モデルに表現し、それを数学を使って解 決し、それを実世界の問題に戻して解を検証する という一連の循環的な過程である。実世界の問題 は理科の問題や技術の問題が特に扱われる。数 学的モデルが作りやすいからである。 

  数学・理科・技術教育の連携を意識した上での 数学教育の独自性について、考え方・見方として は、概念の一般化や拡張という数学的創造、内容 としては、純粋数学の項目、方法としては、数学 内での発展を支える数学化などが考えられる。 

  考え方・見方としての概念の一般化や拡張は、

独自な数学的創造の場面である。一般化や拡張 によって、概念を創造し、それらをさらに演繹論理 によって体系化していく。 

  内容としての純粋数学の項目は、数学的創造の 中で数学自身の問題意識によって発展していっ た項目である。数や図形の内容はその典型であり、

実世界と密接なつながりを持つ関数でさえ純粋な 思考の対象となる。 

方法としての数学化とは、数学の過程で、当面 の問題を解決するのに、より都合がよい問題や構 造に変換していくことである。数学化は、数学的モ デル化の際にも現れるが、数学の問題をさらにほ かの数学の問題に変換するところにも数学化の意 義が見出される。この種の数学化は数学に特有 なもので数学を発展させるものである。 

 

4.おわりに 

数学・理科・技術教育の連携のあり方としては、

分化的なカリキュラムのもとでの緩やかな連携から 総合的なカリキュラムを構想するまでの幅がある。

総合的なカリキュラムの主題や問題については、

科学技術の智プロジェクトの総合報告書が示唆 的である。そこで現代の科学技術の考え方として 挙げられている、総合的視点に立った選択、多様 性と一様性、科学と技術の相互貢献などは主題と なりえる。また、例として挙げられている、水、食料、

エネルギーなどは問題となりえる。 

連携のあり方がどのようであろうとも、数学・理 科・技術教育を念頭に置くと、仮にその学習過程 を同じにしてもその目的は異なり、また同じような 表現方法を使ってもそれらの使い方の習慣が異 なることを、指導者は心得ておく必要があろう。 

私たちは、ともすると私たちがどのような社会に 生きているかを忘れがちである。数学・理科・技術 教育の連携は、現代の社会や文化と科学技術の 関係を照らし出すものであり、そして、子どもたち が自律的に考えることを目指すものでありたい。 

[文献] 

科学技術の智プロジェクト:総合報告書,科学技 術の智プロジェクト,2008. 

http://www.science-for-all.jp/ 

長崎栄三:科学技術リテラシーの発展に向けた数学 教育・理科教育・技術教育の協働,日本科学教 育学会年会論文集,34,73〜74,2010. 

長崎栄三編,数学教育におけるリテラシーについて のシステミック・アプローチによる総合的研究≪人 間の生涯を視野においた算数・数学教育≫,静 岡大学科研報告書,2011. 

[謝辞] 

本研究の一部は科研基盤(B)20300262(代表 者:長崎栄三)の助成を受けて行った。 

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