国際農業経済論4
講義内容
• 貿易パターンの決定理論
• 穀物の貿易パターン
• 部分均衡分析
• D.Ricardo の比較生産費の理論
• ヘクシャー・オリーンの貿易理論
• 貿易の利益
• 新貿易理論、新々貿易理論
貿易パターンの決定
• 貿易パターンの決定とは、どちらの国がどの財を 輸出(輸入)するかを決めるということ。
• ひとりあたりの穀物消費、生産技術 ( 単収 ) が国 際間で同一だとすると、ひとりあたりの耕地面積
(相対的要素賦存量)の大きい国が輸出国となる。
• 穀物価格の安い国が輸出国となる。
• D.Ricardo の比較生産費理論
• 貿易パターンを決めるのは 絶対優位 構造ではな
く 比較優位 構造。産業別生産費の比率が重要。
貿易パターンの決定
生産量 反収 作付面積
消費量 1人当消費 人口
資源賦存量 生産・消費・貿易
輸出
輸入
貿易パターンの決定
高コスト国 国際市場 低コスト国
=
Ricardo の比較生産費理論
• 前提条件1:生産要素は労働のみ
• 前提条件2:投下労働量が生産費となり、商品の 価値(価格)を決定(労働価値説)
• 前提条件3:生産要素の国際間移動は不可能
• 数値例
• 1単位の生産に必要な労働量
ぶどう酒 ラシャ
ポルトガル
80 90イギリス
120 100Ricardo の比較生産費理論
• 数値例
• P
:
W 1単位は
R 90/80=1.125と交換可能
• P
:
W、
Rともに生産コストが小さい(絶対優位)
• P
:
W、
Rを1単位ずつ生産可能だが、
Wのみ生産すると、
2.125単位 の生産が可能。
• 1.125
単位のWをEに輸出すると、
120x1.125/100=1.35単位の
Rが入 手可能
•
貿易パターンの決定では、比較生産費(コストの比率)が重要!
1単位の生産に必要な労働量 ぶどう酒
(W)ラシャ
(R)ポルトガル
(P) 80 90 (170)イギリス
(E) 120 100 (220)Ricardo の比較生産費理論
• 図示
•
赤のラインはイギリス、黒のラインはポルトガル
•
ラシャで測ったぶどう酒の費用はイギリスの方が高い
Ricardo の比較生産費理論
ヘクシャー・オリーンの貿易理論
貿易前の均衡
(自給自足
)共通接線の傾きが均衡価格比率
ヘクシャー・オリーンの貿易理論
• 2財 ( 農業、製造業 ) ・2要素 ( 資本、労働 )
• 生産技術は国際間で同一
• 農業は労働集約的、製造業は資本集約的
• 嗜好 ( 無差別曲線 ) は国際間で同一
• 生産要素賦存量には国際間格差あり
• 労働 ( 資本 ) の豊富な国は、労働 ( 資本 ) 集
約的な財に比較優位を持つ。
ヘクシャー・オリーンの貿易理論
農業 製造業
基準となる生産要素から労働賦存量を増やすと青のよう
な
PPFの形状になる。また、資本の賦存量を増やすと黄
色のよう
PPFの形状になる。
ヘクシャー・オリーンの貿易理論
農業 製造業
相対的に資本の豊富な国は、農
業の相対価格が高い。
ヘクシャー・オリーンの貿易理論
農業 製造業
相対的に労働の豊富な国は、農
業の相対価格が低い。
自由貿易のもとでの均衡
農産物輸出国の場合
国際価格比率
消費点
生産点
貿易三角形
輸出 輸
入
自由貿易のもとでの均衡
農産物輸入国の場合
国際価格比率 輸
出
輸入
消費点
生産点
ヘクシャー・オリーンの貿易理論
•
要素価格均等化の定理
自由貿易が開始されると、生産要素の国際間移動がなく ても、要素価格は均等化する。
•
ストルパー・サミュエルソンの定理
ある財の価格上昇は、その財の生産に集約的に投入さ れている要素の価格を引き上げる。
•
リプチンスキーの定理
労働賦存量の増加は、労働を集約的に投入する財の生 産を増加させ、資本集約的な財の生産を減少させる。
• Twoness in International Trade Theory by R.Jones
ヘクシャー・オリーンの貿易理論
ヘクシャー・オリーンの貿易理論
ストルパー・サミュエルソンの定理
P2
P1 P1
P2
通常は要素価格フロンティアを用いる。正確ではないが、後のリプチンスキーの定理とパラレルに説明する。
リプチンスキーの定理
L K
農業の投入係数ベクトル
要素価格は一定なので、投入係数も一定。
貿易パターンの決定
• 自給自足経済での価格水準の決定
需要サイド
(①選好、②相似拡大的)
↑
食料を扱う時には問題あり 供給サイド
(③生産技術、④生産要素賦存量
)• 選好・生産技術を国際間で同一と仮定
• 要素賦存量格差が価格差を決定づける
(ヘクシャー・オリーンの理論)
• 実際には、要素賦存量以外の格差もあり
貿易の利益 Gain From Trade
• 小国経済を仮定
• 自給自足経済と自由貿易との比較
• 輸入国の場合:国内価格は低下
消費者余剰の増加、生産者余剰の減少、総余剰は増加 所得分配の問題
補償原理で解決可能か?
• 輸出国の場合:国内価格は上昇
消費者余剰は減少、生産者余剰は増加、総余剰は増加
• 自由貿易により、輸出国も輸入国も厚生水準は向上
S0
0
EA
O Q
P
PW
PA
W
QD W
QS QA
MW
D0
D0
S0
貿易の利益:輸入国
S0
0
EA
O Q
P
PW
PA
W
QD QA QWS
EXPW
D0
D0
S0
貿易の利益:輸出国
貿易の利益
高コスト国 国際市場 低コスト国
新貿易理論
•
ヘクシャー・オリーンの貿易理論:産業間貿易
•
先進国間での貿易が世界全体の貿易の多くを占めると いう現実。しかも、先進国間貿易では、産業内貿易の割 合が高いという特徴を持つ。
•
嗜好や技術、要素賦存が同じ
(先進国間なので
)でも貿易 が生じる理由を追求。
•
独占的競争モデルの応用
•
生産要素は労働のみ
•
規模の経済の存在
•
製品差別化と財の多様性
•
企業の同質性
伝統的貿易理論と新貿易理論の比較
貿易理論 貿易の原因 貿易の利益
伝統的 リカード 技術格差 機会費用の差
から生ずる ヘクシャー・オリーン 生産要素賦存の差
新 クルーグマン 規模の経済・財の多様性 消費財の種類
の拡大
新々貿易理論
• 近年の個票レベルでの分析
• 輸出企業数は、極めて少数
• 米国の例: Bernard et al. (2007)
• 操業企業 550 万のうち、輸出企業は 4%
( 2000 年時点 )
• 輸出企業の上位 10% が輸出総額の 96% を 占める
• 輸出企業は、非輸出企業よりも高生産性
• 新貿易理論では、企業の同質性が前提
新々貿易理論
• Melitz (2003) は、生産性の異なる企業の存
在(異質性)を敷衍し、生産性の高い企業 のみが輸出を行うモデルを構築。
• 輸出には大きな固定費用が発生すること、
高生産性企業のみが、当該固定費用を賄 えるほどの利潤が得られる点がポイント。
• 農産物の輸出が促進されると、研究が進む
分野 ( 個票レベルでのデータ収集が前提 )
新々貿易理論
企業の生産性 利
潤
生産の固定費用 輸出の固定費用
撤退 国内供給 国内供給・輸出
非国際化企業
輸出企業
直接投資企業
国内供給・現地生産
新々貿易理論
企業の生産性 確
率 密 度
輸出企業
直接投資企業 非国際化企業