715 昭和学士会誌 第79巻 第6号〔715頁,2019〕
横隔膜ヘルニアへの胎児治療
昭和大学医学部外科学講座(小児外科学部門)
渡 井 有
第 357 回昭和大学学士会例会(医学部会主催)研究紹介講演 2019 年 7 月 6 日 13:25 〜 13:50 昭和大学 4 号館 401 号教室
私の博士号は国立岡崎研究所と共同でヒルシュス プルング病の知覚神経に関する研究をAganglionosis rat という特殊検体を使用して論文を書かせていた だきました.Aganglionosis rat に関しては消化管 ホルモンや NO などが調べられていて,ほぼ,人間 のヒルシュスプルング病と同様の病態を示すことが 証明されています.ですから,これをヒルシュスプ ルング病の実験マウスとして使用しました.
Aganglionosis rat の NO や NADPH などの染色 も行いましたが,Aganglionosis rat では人間のヒ ルシュスプルング病患児と同様に外来神経は増生し ていますが,知覚は落ちているということを,核内 遺伝子である c-fos を使用して証明しました.
ここからは現在当小児外科教室で行っている横隔 膜ヘルニアの胎児治療についてお話したいと思いま す.現在の日本の新生児外科の成績は世界でもトッ プレベルで染色体異常症の児を含めても全体の死亡 率が約 6%という統計がでています.しかしなが ら,横隔膜ヘルニア,食道閉鎖症,壊死性腸炎に関 してはまだ改善の余地があると考えられています.
われわれは横隔膜ヘルニアの胎児治療について動 物実験を行っております.
横隔膜ヘルニアは胸腔内に脱出した腸管が肺を圧
迫するため成熟できず,重症例では健側肺も圧迫す るため死亡率は 40%程度とも言われています.胎 児治療の一つとして胎児期に気管内にバルーンを挿 入して産生される肺胞液で肺を拡張させ,発育した 後にバルーンを取り出す FETO という治療があり ます.ただその手術ではバルーンを挿入する際と取 り出すときの 2 段階での胎児手術が必要になりま す.その侵襲を少しでも少なくするためにバルーン の取り出しに HIFU を使用し実験をおこなってい ます.HIFU は超音波を使用してがん細胞を焼灼す る装置で熱エネルギーとキャビテーション作用を利 用しています.
HIFU を利用してバルーンを破壊して胎児治療を より低侵襲なものにできるように周囲組織の侵襲を 最小限にして目標とするバルーンが破壊できるよう にその出力や出力時間を実験してきました.最近の 実験ではミセル化したリモネンをバルーン内に注入 し低出力のキャビテーション作用でバルーンを破壊 することに成功しています.リモネンは柑橘系のオ レンジなどの皮に含まれる物質で人体に無害である ことを証明されています.
これまでは犠死したウサギを用いて行ってきまし たが今後は動物実験を行っていく予定です.
講 演