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A study on the distribution and factor of burglary in the Tokyo ward area

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Academic year: 2021

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1.はじめに

犯罪発生状況の悪化に伴い,近年一般市民の防犯 への関心が高くなっている中,都市計画アプローチ による防犯対策が注目を集めている.その理論的背 景になるのが「犯罪機会論」である.つまり,物的 環境の設計や人的環境の改善を通して,犯行に都合 の悪い状況を作り出し,犯罪の機会を与えないこと によって犯罪被害を防止することである(小宮,

2005).具体的な手法としては,犯罪が起きる環境に 着目し,その場所の誘発要因を除去し,犯罪予防の 観点を計画の段階から取り入れた街づくりを行うと いうことである.

このような理論的な背景を受けて,犯罪が起こり やすい空間とはどのような特徴を持っているのかに 着目した研究が行われるようになった.近年では,

全犯罪(島田ら,1999),公園(雨宮ら,2005),放火

(伊藤ら,1997)コンビニエンスストア(柏原ら,

1997)等に着目し,その犯罪発生空間の特徴を明ら かにする論文が見られる.これらの論文では,一地 域を対象にし,犯罪や空間的特徴を明らかにしてい るが,東京区部全域ほどの広域的な特徴を取り上げ たものは少ない.その理由の一つに,広域にわたる 都市空間データの構築の難しさがあげられる.既存

徐 鳳教:〒305-8573 茨城県つくば市天王台 1-1-1 筑波大学大学院システム情報工学研究科リスク工学 専攻総合研究棟 B722号室

Tel:029-853-5600 (8203) E-mail : [email protected]

研究としては島田ら(1996)は東京都区部を対象に した研究で,空き巣狙いと低層密集,道路の整然性 の関係について明にしたが,こうした知見の蓄積は 必ずしも多いとは言えない.

そこで,本研究は,1)東京区部における住宅系侵 入窃盗認知件数を用いてその分布の特徴を捉え,2) 犯罪の多寡を説明するモデルを構築し,把握された 実態と都市空間特徴との関係をモデル化することで,

住宅系侵入窃盗に寄与する環境要因を定量的に明ら かにし,根拠に基づく問題解決に向けた知見を得る ことを目的とする.

研究方法としては,GIS を用い,住宅系侵入窃盗 の発生のマップを作成することにより空間的の犯罪 特性について考察する.また,犯罪の発生地点の分 布はランダムではなく,ホットスポットが存在し周 辺に何らかの影響を及ぼしているという知見が多く 見られることから,その確認を行うとともに,空間 上の特性を配慮したモデル構築を行うこととする.

2.住宅系侵入窃盗の発生分布

犯罪の環境による要因を分析するためには,まず,

犯罪が空間上どのような特徴をもっているのかを明 らかにする必要がある.犯罪の種類としては住宅系 侵入窃盗(空き巣,忍び込み,居あき)(以下住宅系 窃盗)を対象とし,データは警視庁の町丁目別犯罪 認知件数データ(平成13~16年度合計)を用いた.

図1は,町丁目ごとの面積当り住宅系窃盗の件数

(以下,住宅系犯罪密度,単位:件/ha)を示してい る.このように集計データを使うのは,警視庁で公

東京区部における住宅系侵入窃盗の地理的分布の特徴とその空間的要因

徐 鳳教・鈴木 勉

A study on the distribution and factor of burglary in the Tokyo ward area

Bong-gyo SEO, Tsutomu SUZUKI

This paper aims to clarify the characteristic of burglary and the relationship between burglary and spatial composition. In order to investigate them, we use a geographic information system (GIS) which is a useful tool in the spatial analysis. Regression analysis is used to determine the factor of burglary. We applied spatial lag model to solve the problem of autocorrelation. As a result, it demonstrates that making the density maps of burglary is easy to understand its spatial characteristic, and through the spatial lag model we can consider the autocorrelation problem in burglary analysis.

Keywords: Tokyo 23 ward area, burglary, spatial autocorrelation, regression, spatial lag model

(2)

開されている犯罪発生マップとは違い,他の地区特 性データと照合し,犯罪要因を分析するのに適して いるからである.

図1を見ると,東京都の中心部分,海岸沿い,端 の部分で,犯罪の発生密度が低く,千代田区を中心 に外側,江戸川区の東部分に犯罪密度が高い地域と なっている.犯罪発生密度の高い地域の中には,い くつかの固まりの存在が確認される.これは,よく 知られているように,犯罪の発生はランダムではな く,集中している地域と疎な地域があるということ であり,地区の特性によって異なると考えられる.

住宅系窃盗の場合,世帯数が多い地域に発生件数が 多くなると思われるので,世帯数を考慮した図を作 成した.それが図2及び図3である(人口密度が40 人/haの以下の地域は分析から除外した).図2は100 世帯当りの発生件数について平均値より少ない地域 を青系色,多い地域を赤系色で表現した.図3は世 帯数と犯罪件数の平均値,標準偏差を用いて,16カ テゴリーに分けした図である.紫系色は世帯数が多 く件数も多い地域であり,赤系色は世帯数が少ない が発生件数は多い地域を表している.青系色は世帯 数が十分あるが犯罪発生は割と少ない地域,緑系色 は犯罪も世帯も他の地域に比べて少ない地域を表し ている.つまり,赤系色はいわゆるホットスポット,

青系色はクールスポットという解釈ができる.

3.住宅系犯罪発生の環境要因分析

ここでは,上記で考察した犯罪分布の特徴の要因 を探るために,町丁目別の面積当り住宅系窃盗発生 件数を被説明変数とし,町丁目の特徴を示す変数を 説明変数とするモデルを作成した.

3.1 変数

防犯環境設計の理論において,犯罪が起こりやす い空間は,①監視性,②領域性,③対象物の強化,

④接近性の4点から整理される.防犯環境設計とは,

環境のこうした特徴を制御することによって犯罪に 強い環境を作るということである.そこで,防犯環 境専門家らにより住宅系窃盗とつながりがあると指 摘されてきた要素を抽出し,個々の特徴を端的に示 す定量化可能な変数を設定した.以上のまとめは表 1に示す.

3.2 モデル構築とモデルの比較

説明変数の選択は,ステップワイズ増減法を用い,

ツールはSPSS11.0を用いた.また,空間ラグモデル

(Spatial Lag Model: SLM)については,イリノイ大学 の Luc Anselin教授の主導の下で開発されたGeoDa (Spatial Data Analysis Software)を用いた.

概念 仮説 理由 モデル構築に用いた変数 データ出所

警察官による監視が頻繁に 行われていると犯罪が起こ りにくい

監視の機能が行き届けば,犯 意者に警戒心を及ぼす

交番等警察機関から

の距離 ④

昼間人口密度  ③

夜間人口密度 ③

中高層住宅がある程度ある と狙われにくい

中高層住宅は入りにくく,周り の視野が確保されやすい

住宅棟数当り世帯数

①+⑤ 持ち主比率が高いと狙われ

にくい

地域の領域性が保ちやすい 持ち主世帯比率 

① 低層共同住宅とその周辺の

住宅が被害が多い

単身者や共働き世帯などで は,昼間に不在が多い

低層共同世帯の比率 

① 平均居住年数が長いと犯罪

は起こりにくい

近所の付き合いがよく,領域性 が守られやすい

5年以上定住人口率

① 接近性

駅まで距離が近いと狙われ やすい

駅と距離が近いと,アクセスが しやすく,外部の者が侵入しや すい

駅からの距離 

④ 古い住宅が多いと狙われや

すい

対象物が犯罪に脆弱である 昭和45年以前の建物比率 

③ 世帯が多ければ被害に会い

やすい

犯意者にとっては対象を選ぶコ ストが少なくなる

世帯密度 ①

対象物 の強化

⑤

人の目が監視性が働く場所 では,犯罪は起こりにくい

人の目が届いていると,犯意者 に警戒心を及ぼす

領域性 監視性

建蔽率が高く,隣棟間隔が 狭いところが犯罪が多い

住宅が詰まっているため,住宅 相互の見通しが悪い

棟数密度

注)①平成12年国勢調査東京都市区町村別報告書,②第6回東京都の市街地状況調査,③第4回東京都地域危険度,

④数値地図2500,⑤東京都都市計画地理情報システム 表1 住宅系犯罪に関する仮説とその理由

表2 OLS とSLMとの比較

表1 住宅系窃盗に関する仮説とその理由

OLS SLM

決定係数 0.5004 0.5577

自由パラメータ数 2832 2831

AIC 5044.83 4845.53

残差のMoran's I 0.2319 0.0358 尤度統計量 -2514.41 -2413.77

概念 仮説 理由 モデル構築に用いた変数 データ出所

警察官による監視が頻繁に行わ れていると犯罪が起こりにくい

監視の機能が行き届き,犯意者に 警戒心を及ぼす

交番等警察機関から

の距離 ④

昼間人口密度  ③

夜間人口密度 ③

中高層住宅の多い地区ほど狙わ れにくい

入りにくく,周りの視野が確保さ

れやすい 住宅棟数当り世帯数 ①+⑤

持ち主比率が高いと狙われにく

い 地域の領域性が保ちやすい 持ち主世帯比率  ①

低層共同住宅とその周辺の住宅 が被害が多い

単身者や2人世帯では昼間に不在

の場合が多い 低層共同世帯の比率  ①

平均居住年数が長いと犯罪が起 こりにくい

近所の付き合いがよく,領域性が

守られやすい 5年以上定住人口率 ①

接近性 駅までの距離が近いと狙われや すい

駅と距離が近いと,アクセスがし

やすく,外部の者が侵入しやすい駅からの距離  ④ 古い住宅が多いと狙われやすい 対象物が犯罪に対して脆弱である 昭和45年以前の建物比率  ③ 世帯が多ければ被害に遭いやす

い

犯意者にとっては対象を選ぶコス

トが少なくて済む 世帯密度 ①

対象物 の強化

⑤

人の目が多く,監視性が働いて いると,犯罪が起こりにくい

人の目が届いていると,犯意者に 警戒心を及ぼす

領域性 監視性

建蔽率が高く,隣棟間隔が狭い ところほど犯罪が多い

住宅が詰まっているため,住宅相

互の見通しが悪い 棟数密度

(3)

通常の回帰分析(OLS)とSLMの比較は表2に示し た.表で示しているように,決定係数,AIC統計量,

尤度統計量等モデルの有用性を表す指標が良くなっ たのが分かる.特にモデルの残差のMoran’s I指標を みると,通常モデルは0.2319で自己相関があると思 われるが,SLM では 0.0358 で残差の自己相関がな くなったのが注目すべき点である.このように空間 的要因分析を行う際には空間的特徴を調べ,それを 反映する必要がある.

3.3 結果

回帰分析では東京区部3131町丁目の中,40人/ha 以下の地域を除いた2840町丁目を対象とした.変数 の中,夜間人口は他の変数と 0.6 以上の強い相関が あったため説明変数から除外した.(世帯当りの発生 件数を被説明変数とした時には有意ではなかった.)

SLMを用いて,回帰分析を行った結果,採択され た環境要因と統計量は表3に示している.係数の中 で,(+)値は住宅系窃盗が起こるリスクを上げる方 向に寄与し,(-)値は,窃盗が起こるリスクを下げ る方向に寄与することを意味する.まず,窃盗発生 の働きに大きく影響を与える変数から並べると,世 帯密度,低層共同世帯,棟数密度となる.反対に窃

図1 面積当り住宅系窃盗件数(件/ha) 図2 100世帯当り窃盗件数(件/100世帯)

図3 犯罪件数密度と世帯数密度の関係

変数 平均 標準偏差 係数 t統計量 有意水準

空間ラグ 0.344 17.045 0.000

世帯密度(件/ha) 73.880 32.875 0.009 19.011 0.000 低層共同世帯比率(%) 16.220 10.941 0.014 12.412 0.000 棟数密度(建物数/ha) 33.819 14.492 0.014 8.899 0.000 5年定住人口比率(%) 61.810 10.237 -0.014 -11.382 0.000 昭和45年以前の建物比率 20.500 14.086 -0.010 -5.745 0.000 住宅棟数当り世帯数(世帯/住宅) 0.321 1.099 -0.044 -4.299 0.000 駅からの距離(m) 619.941 423.390 0.000 -3.604 0.000

定数項 0.513 6.359 0.000

表3 住宅系犯罪の説明変数と各統計量の値 注2) 図2,3の中,μは全地区の平均(1.09),

σは全地区の標準偏差(0.86)を表す.

(4)

盗を抑止するような働きをする変数は5年間の定住 人口比率,昭和 45 年以前の建物比率,住宅棟数当 りの世帯数,駅からの距離であった.大半の変数が 表1の住宅系窃盗空間の仮説を支持する結果となっ たが,昭和 45 年以前の建物比率については反対の 結果になった.仮説では,古い建物は防犯性能が落 ちる場合が多く,狙われやすいと思われたが,むし ろ,そこに長年住む人が多く,防犯上良好なコミュ ニティが形成される場合が多いのではないかと思わ れる.しかし,上の結果に関しては,今後より深い 議論が必要である.

4.まとめ

本研究の結果は以下の通りである.

①東京都区部を対象に住宅系窃盗の認知件数を用い,

密度マップを作ることによって住宅系窃盗の地理的 分布の特徴を明らかにした.このように,多様な犯 罪マップを作成することは,犯罪発生の地理的な分 布を理解するのに役立つ.

②使用したデータに空間的バイアスがあることを示 し,モデルで明らかにした.空間自己回帰を行った 結果,通常の回帰分析よりも説明力が良くなり,残 差の自己相関もなくなることを示した.

③住宅犯罪に対する犯罪データや空間特性を示す変 数を用いて,犯罪が空間特性と関係があるのかを把 握した.その結果,区域別の異なる空間特性と住宅 系窃盗は何らかの関係があるのではないかというこ とを明らかにした.

今後の課題としては空間構成指標の改善が挙げら れる.本研究は,東京区部全域という広い範囲を対 象に一つの物差しによって空間構成を定量化したが,

これによって犯罪発生要因を全て説明することは不

可能である.

今後指標としては示すことが困難な要素,例えば 住民のコミュニティとの関係等も考慮に入れながら 分析する必要がある.

参考文献

小宮信夫 (2005) 『犯罪は「この場所」で起こる』,光 文社新書.

安全・安心まちづくり研究会編 (2004) 『安全・安心ま ちづくりハンドブック』,ぎょうせい.

樋村恭一,小出治編 (2003) 『都市の防犯-工学・心理 学からのアプローチ』,北大路書房.

杉浦芳夫編 (2004) 『地理空間分析』,シリーズ人文地 理学6, 朝倉書店.

島田貴仁,原田豊 (1999) 「都市の空間構成と犯罪発生 の関連」,科学警察研究所報告犯罪少年編,40(1),1

-22

雨宮護,横張真 (2006) 「住宅地に立地する小公園に対 する地域住民の犯罪リスク認知の構造と要因」,ラン ドスケープ研究,68(5),947-950.

伊藤篤,近江隆,石板公一 (1999) 「機会犯罪の成立に 関連する都市空間特性に関する研究:放火犯罪を対 象にして」,都市計画論文集,34,721-726.

柏原哲郎,伊藤篤,近江隆(1997) 「コンビニエン スストアのセキュリティに関わる都市空間要因の研 究:東京 23 区を対象にして」,都市計画論文集,32,

715-720

警視庁 犯罪発生マップ.

http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/toukei/yokushi/

yokushi.htm.

Goldsmith, V., McGuire, P., Mollenkopf, J.H. and Ross, T.A.

(2000) Analyzing Crime Patterns, Sage Publications, Inc.

図4 OLSの残差の標準偏差 図5 SLMの残差の標準偏差

図

図 4  OLS の残差の標準偏差  図 5   SLM の残差の標準偏差

参照

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