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第 9 章行列と行列式

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Academic year: 2021

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(1)

9

行列と行列式

電気電子回路を解析する際に,取扱い物理現象を分かり易くシステマチックに表 現すると便利である.本章で扱う行列と行列式はこのニーズに対応するもので,計 算も機械的に行うことができる利点がある.パソコンで用いる

EXCEL

もこの行列 の考え方に基づいている.

9.1

行列

数や記号を配列したものを行列といい,数や記号の横の並びを行

,

縦の並びを列 という.行は上から順に第

1

行,第

2

行,

· · ·

と数え,列は左から順に第

1

列,第

2

列,

· · ·

と数える.また,個々の数や記号を要素あるいは成分といい,第

i

行,第

j

列の要素を

ij

要素という.

m

個の行と

n

個の列からなる行列を

m

n

列の行列,または簡単に

m × n

行列 という.とくに,

n × n

行列を

n

次正方行列という.

行列は,たとえば,

A = 12 20 14 19 32 22

!

, B = −2 3

2 4

!

のように,

A

B

C

などの太文字を用いて表すことが多い.また,

[A]

[B]

[C]

のように

[

]

で表すこともある.

1

つの行だけから成る

1 × n

行列は

n

次行ベクトル,

1

つの列だけからなる

m × 1

行列を

m

次列ベクトルという.

9.2

行列の計算

(1)

和と差

次のように,それぞれの行列の対応する要素の和またを差をとればよい.

a b c d

!

± a

b

c

d

!

= a ± a

b ± b

c ± c

d ± d

!

[

複合同順

] (9.1)

(2)

62

9

章 行列と行列式

(2)

行列の実数倍

k

が実数のとき,行列

A

のすべての成分を

k

倍してできる行列を

A

k

倍とい い,

kA

で表す.

2 × 2

行列の場合,

k

倍は次のようになる.

k a b c d

!

= ka kb kc kd

!

(9.2) [

1]

次の計算をせよ.

2 4 1

3 2

!

+ 3 1 2 4 1

!

4 2 1

2 3

!

= 8 3 8 2 + 6 + 4

6 + 12 + 8 4 3 12

!

= −3 12

14 11

!

(3)

行列の積

O

1 行列と列ベクトルの積

2 × 2

行列と

2

次列ベクトルの積は次のように定義される.

a b c d

! x y

!

= ax + by cx + dy

!

(9.3) O

2 行列と行列の積

2 × 2

行列は

2

つの列ベクトルを並べたものと考えられるので,

2 × 2

行列と

2 × 2

行列の積は次のように定義される.

a b c d

! e f g h

!

= ae + bg af + bh ce + dg cf + dh

!

(9.4) [

2]

1 4

1 2

! 3 1 2 2

!

= 1 · 3 + 4 · 2 1 · 1 + 4 · (−2)

1 · 3 + 2 · 2 1 · 1 + 2 · ( 2)

!

= 11 −7

1 5

!

O

3 行列の積の性質

行列についても,数と同様に,次のような等式が成り立つ.

k(AB) = (kA)B = A(kB)

分配法則

A(B + C ) = AB + AC, (A + B)C = AC + BC

結合法則

(AB)C = A(BC)

また,次のような性質がある.

(3)

i) AB ̸ = BA

 行列は数の場合と異なり,

A = B

のような特殊な場合を除い ては交換法則は成り立たない.

ii)

一般に,

A

× m

行列,

B

m × n

行列のとき,これらの積

AB

× n

行列となる.ただし,

A

の列数と

B

の行数は必ず等しくなければならない.

[

3]

A = 4 1

−3 2

!

, B = 1 2 4 −1

!

のとき,行列の積

AB

BA

を求める.

AB = 4 1

3 2

! 1 2 4 1

!

= 4 + 4 8 1 3 + 8 6 2

!

= 0 7

11 8

!

BA = 1 2 4 1

! 4 1

3 2

!

= 4 6 1 + 4 16 + 3 4 2

!

= 10 3 19 2

!

この例でも分かるように,一般に

AB ̸ = BA

となるので,行列積の計算では,掛 ける順序が重要である.

[

4]

1 0 2 1 2 3

!   

2 3

1 −5

4 0

  = 1 · 2 + 0 · 1 + 2 · 4 1 · 3 + 0 · ( 5) + 2 · 0 1 · 2 + 2 · 1 + 3 · 4 1 · 3 + 2 · ( 5) + 3 · 0

!

= 6 3

16 7

!

[

5]

A = 2 3 1 4

!

のとき,

A

2 を求める.

A

2

= AA = 2 3 1 4

! 2 3 1 4

!

= 1 6

2 13

!

【例題

1

】図

9.1

に示すように点

P(x, y)

を角

θ

だけ回転したときの座標点

P

(x

, y

)

は,次式より計算できる.

(4)

64

9

章 行列と行列式

y

x O

θ P'

P( x, y ) ( x', y' )

9.1:

座標の回転

x

y

!

= cos θ sin θ sin θ cos θ

! x y

!

上式を使って,点

A(1, 0)

120

回転したときの 座標

A

(x

, y

)

と,

A

をさらに

120

回転したと きの座標

A

′′

(x

′′

, y

′′

)

を求めよ.

【解】

cos 120

= 1

2

sin 120

=

3

2

だから,

x

y

!

=

12

23

3 2

12

! 1 0

!

=

12

3 2

!

x

′′

y

′′

!

=

12

23

3 2

12

!

12

3 2

!

=

12

·

12

23

·

23

3

2

·

12

12

·

23

 =

12

23

!

したがって,

A

= 1 2 ,

3 2

!

A

′′

= 1 2 ,

3 2

! .

9.3

特殊な行列

(1)

零行列

次のようにすべての要素が

0

である行列を

(

ゼロ

)

行列といい,

0

で表す.

0 =

 

 

 

0 0 · · · 0 0 0 · · · 0 .. . .. . . .. ...

0 0 · · · 0

 

 

 

(2)

対角行列

正方行列の対角線上の要素以外

(

非対角要素

)

がすべて

0

である行列を対角行列 という.

[

6]

次の行列は対角行列である.

 

 

2 0 0 0 0 1 0 0 0 0 3 0 0 0 0 4

 

 

,

 

1 0 0

0 2 0

0 0 −4

 

(5)

(3)

単位行列

対角行列で,対角要素がすべて

1

である行列を単位行列という.

U

[U]

で表 1.たとえば,

2 × 2

行列の単位行列

U

は次のようになる.

U = 1 0 0 1

!

(4)

転置行列

行と列を入れ換えた行列をいう.

A

の転置行列は

A

T と表す2.たとえば,

A =

 

2 1 3 0 1 2

4 2 −3

 

のとき,

A

T

=

 

2 0 4

1 1 2 3 −2 −3

 

である.

(5)

対称行列

A = A

T の場合,

A

を対称行列という.電気電子工学で取り扱う行列は,この 行列が多い.たとえば,

A =

 

1 4 5 4 2 6 5 6 3

 

は対称行列である.

零行列,対角行列,単位行列はいずれも対称行列である.

9.4 2

次正方行列の逆行列

(1)

逆行列の定義

AA

1

= U

または

A

1

A = U (9.5)

を満たすような行列

A

1

A

の逆行列という.

1数学では,単位行列をIまたはEで表すが,電気電子工学では,電流や電圧と混同することを 避けてUで表すことが多い.

2T は英語のTransposeの頭文字を意味している.

(6)

66

9

章 行列と行列式

(2) 2

次正方行列の逆行列の計算

2 × 2

行列

A

について,式

(9.5)

の定義を満たす逆行列

A

1は次のようになる.

A = a b c d

!

に対して,

(i) ad bc ̸ = 0

のとき,

A

1

= 1 ad bc

d b

c a

!

(9.6) (ii) ad bc = 0

のとき,

A

1は存在しない.

ここで,

ad bc

2

次正方行列の行列式である.行列式については,第

9.5

節で 詳しく述べる.

A

の逆行列が存在するとき,

A

は正則行列という.

[

7]

A = 4 3 2 2

!

, B = 4 6

2 3

!

について,

A

では,

4 · 2 2 · 3 = 8 6 = 2 ̸ = 0

であるから,

A

1

= 1 2

2 3

2 4

!

= 1

32

1 2

!

B

では,

4 · 3 6 · ( 2) = 12 ( 12) = 0

であるから,逆行列は存在しない.

(3) AB

の逆行列

AB

の逆行列は

A

B

が共に正則行列のとき,次式となる.

(AB)

1

= B

1

A

1

(9.7)

【例題

2

】 式

(9.7)

を証明せよ.

【解】

(AB )(B

1

A

1

) = A(BB

1

)A

1

= AU A

1

= AA

1

= U

したがって,

(AB)

1

= B

1

A

1

.

9.5

行列式

(1)

行列式の定義

行列式

(determinant)

は正方行列に対して定義され,

2

次の行列

A = a b

c d

!

(7)

の行列式

| A |

は次のように定義される.

| A | =

a b c d

= ad bc

行列式は行列の要素同士の演算であり,単なる値

(

スカラー量

)

3となる.

|A|

は行 列式を表す英単語の略を使って

detA

と書く場合もある.

(2)

サラスの方法

(3

次の行列式の計算

)

a b c d e f g h i

+ + +

a b c d e f g h i

− −

9.2:

サラスの方法

3

次正方行列の行列式は図

9.2

に示すサラスの方法

を使って次のように計算することができる.

a b c d e f g h i

= aei + bf g + chd ceg bdi ahf

[

8]

2 1 3

1 2 1 0 1 −1

= 2 · 2 · ( 1) + 1 · 1 · 0 + 3 · 1 · ( 1) 3 · 2 · 0

1 · ( 1) · ( 1) 2 · 1 · 1

= 4 + 0 3 0 1 2 = 10

(3)

行列式の展開

3

次以上の行列式は,

ij

要素に

i

j

列を取り去った行列式をかけて,次のよう に展開できる.このような方法を小行列式展開と呼んでいる.

a b c d e f g h i

= a

e f h i

b

d f g i

+ c

d e g h

(9.8)

(9.8)

は第

1

行について展開しているが,どの行,または列についても展開する

ことができる.また,展開する行または列の各要素

i

j

列の符号は

(−1)

i+jであ り,次のようになる.

+ +

+

+ +

3スカラー量については22.1節を参照.

(8)

68

9

章 行列と行列式

2

列について展開すると,

2

列目の符号は

+

であるから次のようになる.

a b c d e f g h i

= b

d f g i

+ e

a c g i h

a c d f

(9.9)

[

9]

[

8]

で示した行列式を

1

列目で展開して求める.

2 1 3

−1 2 1 0 1 1

= 2

2 1

1 1

( 1)

1 3

1 1 + 0

1 3 2 1

= 2 · ( 2 1) + ( 1 3) + 0 = 6 4 = 10

参照

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