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一般固有値問題から学ぶ線形代数

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Academic year: 2021

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(1)

一般固有値問題から学ぶ線形代数

線形代数学において、線形空間、基底、行列の固有値問題から、さらに一般固有値問題、

ジョルダンの標準形まで講義をすすめることは難しく、理科系教養の講義でも線形代数の 一部の紹介で終わってしまうことが多い。そこで、逆に一般固有空間、ジョルダンの標準 形を学び、その特別な場合として、エルミート行列、ユニタリー行列、対称行列、直交行 列などのスペクトル分解へという方法も考えられる。一般固有空間とその上の適当な基底 での表現行列としてジョルダン標準形を修得すると、上記の行列の固有値問題がその特殊 な場合として見通しよく理解できる。以上のような試みとして、笠原皓司著「線形代数と 固有値問題」(現代数学社)を参考テキストとして、上記のような流れで線形代数学の内容 を再構成してみたものである。ただし線形空間、基底などの基礎的事項は付録を参照して いただきたい。

目 次 §1.一般固有値問題 §2.最小多項式

§3.行列との対応、ジョルダン標準形 §4.ジョルダン標準形の例

§5.(λI ϕ)1の構造

§6.正規変換、エルミート変換、ユニタリー変換 §7.線形変換の正則関数

付録A:線形写像・基底・座標変換・表現行列 付録B:射影作用素

付録C:対称変換・直交変換

付録D:応用(1)線形微分方程式、(2)線形差分方程式

§1.一般固有値問題 E上の線形変換:ϕ

) 0 ( )

(x =λx x

ϕ を満たすxを固有ベクトル、λを固有値という。

λが固有値λdet(AλI)=0(固有方程式)の解である。

ϕの異なる固有値:λ1,λ2,....,λr (係数体:複素数体)

*固有空間 Fi ={x;(ϕλiI)x=0} i=1,2,...,r

*一般固有空間 Gi ={x; ある非負整数kがあって (ϕλiI)kx=0} i=1,2,...,r

(2)

Giは線形部分空間でGi Fi

定理1.任意の線形変換ϕ Gr

G G

E = 1 2 L (直和);各Giに対しある自然数kiが定まって

} 0 ) ( ) (

;

{ =

= x I x

Gi ϕ λi ki かつ (ϕλiI)ki1x0となるxGiに存在する。

kiを固有値λiの標数という。

<証明>

ϕλiI =ϕi (i=1,2,..,r)とする。E ϕi(E)ϕi2(E)ϕi3(E)L Eは有限次元なので ϕik1(E)ϕik(E)=ϕik+1(E)=L となるkが存在する。

このようなkの最小値をkiとし、固有値λiの標数という。ϕiki(E)=Riとおく。

=L

=

= (E) +1(E)

Ri ϕiki ϕiki より部分空間Ri上ではϕikiは全単射である。

Ker(ϕiki)=Gi Gi ={x; あるkがあって ϕik(x)=0}={x;ϕiki(x)=0} 明らかにGi {x;ϕiki(x)=0}。逆にあるkがあってϕik(x)=0のとき、k kiならば明ら

かにϕiki(x)=ϕikik(ϕik(x))=0k >kiならばy=ϕik1(x)とするとk1kiよりyRi

よってϕi(y)=ϕik(x)=0、①よりy=ϕik1(x)=0すなわちkの値を1つ減らせる。これ を繰り返すとϕiki(x)=0、すなわちx(ϕiki)1(0)

E =Gi Ri

) Im(

),

( iki i iki

i Ker R

G = ϕ = ϕ よりdimE=dimGi +dimRi。故にGi IRi ={0}を示せば

よい。xGi IRiならばϕiki(x)=0。一方xRiよりあるyEによってx=ϕiki(y) これよりϕi2ki(y)=0、すなわちyGi。これよりx=ϕiki(y)=0

Gi,Riϕ不変な線形部分空間。 ϕi =ϕλiIϕは可換なので、

Gi

x のとき、ϕiki(ϕ(x))=ϕ(ϕiki(x))=ϕ(0)=0、よってϕ(x)Gi

(3)

Ri

x のとき、x=ϕiki(y), (yE)、よってϕ(x)=ϕ(ϕiki(y))=ϕiki(ϕ(x))Ri

ϕGi上の固有値はλiのみ。Ri上の固有値はλiを除く全てのλ1,Lλr

Giλj(ji)を固有値に持つとする。それに対応する固有ベクトルをxGiとすると

), 0 ( )

(x =λjx x

ϕ これより0=ϕiki(x)=(ϕλiI)ki(x)=(λj λi)kix0となり矛盾。

Ri

x のとき、①よりϕi(x)=0ならx=0。よってλiRiの固有値ではない。

i

i R

G , の基底をそれぞれ{e1,Leμ},{f1,Lfν}とすると、これらμ+ν 個のベクトルはE 基底になる。この基底によるϕの行列表示は

=

B f A

f e e f

f e

e 0

) 0 , , , , , ( )) ( , ), ( ), ( ), (

(ϕ 1 Lϕ μ ϕ 1 L ϕ ν 1 L μ 1 L ν

=

B M A

0

0

B

A, はそれぞれϕGi上、Ri上の表現行列。ϕの固有多項式は

r

i m

r

I m

M I

B I A I

M ) det( )det( ), det( ) ( ) ( )

det( λ = λ λ λ = λ1λ L λ λ

かつdet(AλI)=0λ =λiのみを解に持つのでdet(AλI)=(λ1λ)mi,

=

=

r

i j j

m j

I j

B

1

) (

)

det( λ λ λ 。これよりdimGi =mi

E =G1G2 LGr (直和)

まず③よりE=G1R1、部分空間G1, R1は線形変換ϕ,ϕjについて不変である。部分空間 R1に①~⑤の議論を繰り返し使うことによりE =G1G2LGr Rを得る。Rϕ

不変で固有値を全く含まない。dimR1ならばこのようなことは起こらないのでR={0}

1-1.dimGi =mi (λiの代数的重複度miは一般固有空間の次元に等しい)

1-2.ki mi

kiE ϕi(E)ϕi2(E)ϕi3(E)Lにおいて次元が減少する回数を表わすが、次元 の減少は部分空間Giのみで起こるので、その次元数miを超えない。

§2.最小多項式

定義1. ϕの最小多項式:Ψ(λ)=(λλ1)k1....(λλr)krkjは固有値λjの標数)

定理2.

(4)

(1)Ψ(ϕ)=0

(2)ϕの固有多項式Φ(λ)は最小多項式Ψ(λ)で割り切れる。故にΦ(ϕ)=0

Hamilton-Cayleyの定理

(3)最小多項式Ψ(λ)Q(ϕ)=0を満たす多項式Q(λ)を全て割り切る。

<証明>

(1) 任意のx= x1 +Lxr (xi Gi)について

( )( ) ( )( ) ( ( ) )( ) 0

1 1

1

=

= Ψ

=

Ψ

∑ ∑ ∏

= =

=

r

i r

j

i k j r

i

i I x

x

x ϕ ϕ λ j

ϕ なぜなら(ϕλiI)ki(xi)=0

(2)Φ(λ)=(1)n(λλ1)m1L(λλr)mr , ki mi (i=1,..,r)より明らか。

(3)Q(λ)Q(ϕ)=0を満たす多項式とする。λ =λiを中心としたティラー展開により

p i i

p i

i

i p

Q Q Q

Q ( )

! ) ) (

! ( 1

) ) (

( ) (

) (

' λ λ λ λ λ λ

λ

λ = + +L

0 ) (

, 1

G x

x i ϕiki とすると、

)

! ( ) ) (

! ( 1

) ) (

( ) )(

( 0

) ( '

p x x Q

x Q Q x

Q i ip

p i

i

i λ ϕ λ ϕ

λ

ϕ = + +L

=

ki

p ならϕip(x)=0より ( )

)!

1 (

) ) (

! ( 1

) ) (

(

0 1

) 1 ( '

k x x Q

x Q

Q i

i k

i i

i k i

i i

+ +

= λ λ ϕ L λ ϕ

次の補題1よりx,ϕi(x),L,ϕiki1(x)は一次独立なので、

0 ) ( )

( )

( i =Q' i = =Q(ki1) i =

Q λ λ L λ 。これは多項式Q(λ)λ =λiを少なくともki

重根として持っていることを意味する。よってQ(λ)(λλi)kiで割り切れる。

従ってQ(λ)Ψ(λ)=(λλ1)k1L(λλr)kr で割り切れる。

補題1.線形変換ϕに対しϕk(x)=0, ϕk1(x)0なら、x,ϕ(x),....,ϕk−1(x)

は線形独立である。

<証明>

0 ) ( )

( 1

2

1x+c x +c x =

c ϕ kϕk とする。両辺にϕk1を施すとϕk(x)=0より

0 )

1(

1 x =

cϕk ϕk1(x)0なのでc1 =0。同様にϕk2,ϕk3,....を施すと順に

0

2 =....=ck =

c

(5)

定義2.線形変換ϕがべき零ϕk =0 k1自然数 このようなkの最小の数をϕの零化指数という。

定理3 べき零変換ϕの固有値は0のみ。逆に固有値が全て0ならϕはべき零。

<証明>

固有値をλとするとϕ(x)=λx, (x0) よってϕk(x)=λkx=0よりλ =0

固有値が0だけとすると、ϕの固有方程式はΦ(λ)=λn。よって定理2(2)よりϕn =0 3-1 べき零変換ϕの零化指数は固有値0の標数に等しい。(定理1より明らか)

定義3.線形変換ϕが半単純ϕ =λ1p1+L+λrpr, p1,...,prは射影作用素 3-2 べき零で半単純な変換は0に限る。

r rp

p λ

λ

ϕ = 1 1+L+ とするとλ1 =Lλr =0よりϕ =0

定理4. 二つの半単純変換ϕ1,ϕ2が可換、ϕ1oϕ2 =ϕ2 oϕ1が成り立つための必要十分条 件は共通な射影作用素の組p1,...,pmがあって同時に

ϕ1 =λ1p1 +Lλmpm, ϕ2 =μ1p1 +Lμmpmと表わされることである。

ただし、λ1,...,λmμ1,...,μmは必ずしも異ならない。

<証明> 十分性は明らかなので、必要性を示す。ϕ1,ϕ2の射影分解を

n n m

mp q q

p λ ϕ μ μ

λ

ϕ1 = 1 1+L , 2 = 1 1 +L とする。ϕ1, ϕ2が可換なので、その多項式 も可換、よってpiqjも可換である(射影作用素の表現参照)。そこで

) (

) (

), (

) (

1 1

1 1 2

1 1

1 1 1

m n

n m

n m

m n

p p

q p

p q

q q

p q

q p

+ + +

+ + +

=

+ + +

+ + +

=

L o

L L

o

L o

L L

o

μ μ

ϕ

λ λ

ϕ と書くと、これは pi oqj

線形結合である。そして{pi oqj;i=1,..,m, j=1,..,n}は射影作用素の条件

( ) ( )

( )

, , ,

1 1

1 1

j i l j k i l k j i n

j j m

i i m

i n

j

j

i q p q I p q p q p q

p o o ⎟⎟= o o o =δ δ o

⎜⎜

=

∑ ∑

∑∑

= = = =

を満たしている。

4.1 二つの半単純変換ϕ1,ϕ2が可換なら線形結合aϕ1 +bϕ2およびϕ1oϕ2もまた 半単純である。

<証明>

定理4よりϕ1 =λ1p1+L+λmpm, ϕ2 =μ1p1 +L+μmpm、よって

m m

m b p

a p

b a b

aϕ1 + ϕ2 =( λ1+ μ1) 1 +L+( λ + μ ) ϕ1oϕ2 =λ1μ1p1+L+λmμmpm

(6)

定理5.2つのべき零変換ϕ1,ϕ2が可換なら、ϕ1+ϕ2, ϕ1oϕ2もべき零である。

<証明>

0 ,

0 2

1m = ϕ n =

ϕ mnとする。可換なので(ϕ1oϕ2)m =ϕ1moϕ2m =0

+

=

+ ⎟⎟ + =

⎜⎜

= ⎛ +

+ m n

j

j n m n j

m

j n m

0

2 1 2

1 ) 0

(ϕ ϕ ϕ oϕ 。なぜなら、jmのとき、m+n jn

○一般固有空間への射影作用素の表現

分解E =G1G2 LGrの一般固有空間Giへの射影作用素をpiとする。

I = p1+L+ pr, pi2 = pi, pi o pj =0 (i j), pi(E)=Gi ϕの最小多項式を

=

=

Ψ r

j

k j

j

1

) (

)

(λ λ λ とする。

) ( 1

λ

Ψ を部分分数分解して

kr

r r k

h h

) (

) ( )

( ) ( )

( 1

1

1 1

λ λ

λ λ

λ λ

λ + +

=

Ψ L hj(λ)は高々kj 1次の多項式。これより、

) , (

) ) (

) ( (

) ) (

( 1

1

1

1 kr

r

k hr

h λ λ

λ λ λ

λ λ λ

+ Ψ

+

= Ψ L

) ,.., 2 , 1 ) (

( ) ) (

( )

( h i r

g

ki

i i

i =

= Ψ

λ λ λ λ

λ とすると1=g1(λ)+L+gr(λ) )

( )

1(ϕ gr ϕ

g

I = +L+ より x=g1(ϕ)(x)+L+gr(ϕ)(x)

(

gi( )(x)

)

=( iI)k gi( )(x)=hi( )(Ψ( )(x))=0

k i

i ϕ ϕ λ i ϕ ϕ ϕ

ϕ o よりgi(ϕ)(x)Gi

よって

=

=

= r

i j j

k j i

i i

i

h j

g g

p

1

) (

) ( ) ( ),

(ϕ λ λ λ λ

定理6.

任意の線形変換ϕは互いに可換な半単純変換とべき零変換の和として一意に表せる。

<証明> 分解の存在:

定理1よりϕの一般固有空間によって直和分解:E=G1G2 LGr

これに対する射影p1,...,prが決まり、I = p1 +L+ prϕ =ϕoI =ϕo p1+Lϕo pr

I I

I i i i

i λ ϕ λ

λ ϕ

ϕ =( )+ = + とすると、

θ ψ

ϕ ϕ

λ λ

λ ϕ λ

ϕ ϕ

+

=

+ + +

+

= +

+ + +

=( ) ( ) ( ) ( )

) 1 . 2

( 1 1I o p1 L r rI o pr 1p1 L rpr 1o p1 L r o pr

r r r

rp p p

p L λ θ ϕ o L ϕ o

λ

ψ = 1 1+ + , = 1 1 + +

) 2 . 2 (

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