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九州大学学術情報リポジトリ

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

リジン反応性ケージド人工核酸の開発と標的生体分 子の部位特異的修飾への応用

楊, 波

http://hdl.handle.net/2324/1543945

出版情報:Kyushu University, 2015, 博士(創薬科学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

(2)

リジン反応性ケージド人工核酸の開発と標的生体分子の部位特異的修飾への応用

薬物分子設計学分野 3PS12032K  楊波

【目的】カルボニル基を有する核酸はその反応性や水中における安定性から生体分子のコンジュゲー ト形成やラベリングに広く応用されている。その一例として核酸塩基欠損部位他P)は平衡下、一部存 在する開環型構造ではCl位アルデヒド構造を持ち、生体分子のアミノ基と Schiffbaseを形成し、還 元操作を経て安定なコンジュゲート体を形成する ll(Schemela)。一方、当研究室ではDNAの酸化損 傷体の一つである4位酸化塩基欠損部位(OAS)が平衡下、一部存在する開環型構造においてケト・ア ルデ、ヒド構造を持ち、中性条件下アミン分子と反応し高収率でラクタム体を形成することを見出した 2l(Scheme lb)。ラクタム体は5員環へミアミナール中間体を経由し、 DNA鎖の脱離を伴い、生成する

と考えられる。 OASは塩基部が存在しないが、 DNAと類似構造をとり相補鎖と二本鎖を形成できる ことから、 DNAと相互作用する蛋白質の塩基性アミノ基をラクタム化できると予想した。 DNAと相 互作用する蛋白質のリジン残基はDNAの損傷塩基を除去する触媒作用や核酸のリン酸部との相互作用 に関与するなど重要な働きを持つ。 OASを有する ODNは核酸と相互作用する蛋白質の中で、 ODNの 糖部Cl位または C4位に接近するリジン残基を効率的にラクタム化できると予想した。また、還元的 条件下では、 OASのCl,4位ジカルボニノレ基の協同効果により、 APのCl位アルデヒドに比べ、効率 的に生体分子とコンジュゲートを形成できると予想した。更にOASの糖部C2位に以下の化学修飾を 行い、 OASの反応性及び安定性の向上を目指した。 l)RNAタイプの塩基欠損部位はDNAタイプに比 べて日脱離が起こりにくいことから、 2ーメトキシOASではOASより安定性の向上を目指した。 2)フ

ッ素の強力な電子吸引性を利用し、 2,2'−ジフルオロ OASではCl位アルデヒド反応性の向上を目指し た(Schemele)。これらの化合物の反応性を利用すれば、蛋白質のリジン残基を部位特異的修飾によ

り、リジン残基の位置や機能を特定し、核酸・蛋白質相互作用に関する情報を得ることができるし、さ らに蛋白質の機能制御にも応用できる。本研究では光分解性保護基である 0・Nitrobenzyloxy(NB)基を 導入したケージド化合物を前駆体として光照射により OAS及びその誘導体を合成し、反応性研究を行 った。まず還元条件下において、ジカルボ、ニル基を持つOAS及び2にメトキシOASのアミン反応性を モノアルデヒド基をもっAPと比較した。また2・メトキシOASを用い、還元的アミノ化によるリジン 残基を有するペプチドとのコンジュゲート形成を行った。最後に大腸菌複製開始蛋白質である DnaA のDNA結合配列にOASを導入したODNを用い、 DnaA及びそのDNA結合部位である DomainIV  のリジン残基部位特異的修飾を検討した。

Scheme 1 

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(3)

【実験] 1)反応性核酸と近接するアミンODNとの反応性評価

OASまたはAPのCaged前駆体ODNとアミノヘキシル基を持つ相補鎖からなる 2本鎖を365nm の光照射した後、 OASまたはAPへの変換をHPLCで確認し、更に過剰量のNaCNBH3(103eq.)を加 え、 pH7 (10 m M)リン酸緩衝液中、 25度でインキュベートし、 HPLCを用いて、反応解析を行つ た。 OASとアミノヘキシル基を持つ相補鎖との還元的アミノ化反応では原料ピークの消失を伴い、保 持時間の長い二つの新規ピークを見られ、これを分取し、 MALDI‑TOFMS測定の結果、 Scheme2に 示す5員環アミン構造を持つクロスリンク体1であることが分かつた。また還元的アミノ化において は、 C4位の立体制御ができないため、クロスリンク体1はジアステレオマー混合物で、 HPLCでは二 つのピークとして、分離することができた。 APとアミノヘキシル基を持つ相補鎖との還元的アミノ化 反応では原料消失を伴い、保持時間の長い一本の新規ピークを見られ、これを分取し、 MALDI‑TOF‑

MS測定の結果、 Scheme2に示すクロスリンク体2が得られた。

Scheme 2 

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2・メトキシOASとアミノヘキシル基を持つ相補鎖との還元的アミノ化反応では、 pH7 (10 m M)リ ン酸緩衝液中、 25度でインキュベートし、原料ピークの消失を伴い、保持時間の長い二つの新規ピー クを見られ、これを分取し、 MALDI‑TOFMS測定の結果、 Scheme3に示す5員環アミン構造を持つ クロスリンク体3であることが分かつた。クロスリンク体3もジアステレオマー混合物で、 HPLCで は二つのピークとして、分離することができた。

2,2'−ジフルオロ OASとアミノヘキシル基を持つ相補鎖との反応では、試薬を必要とせず、 pH7、8 (50 m M)リン酸緩衝液中、 37度でインキュベートし、原料消失に伴い、保持時間の長い二本の新規ピ ークを見られ、これを分取し、 MALDI‑TOFMS測定の結果、 Scheme3に示すピロール構造を持つク ロスリンク体4及び3−末端ODN脱離したクロスリンク 5を得ることが出来た。

Scheme 3 

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2) 3・末端または5 ー末端に反応性部位を持つ反応 性核酸とペプチドとのコンジュゲート形成

核酸医薬の臨床応用において細胞内へのデリパリを改善するため、膜透過ペプチドとのコンジュゲ ート形成は有効な方法である。著者は2ーメトキシOAS及びAPを3末端、また5末端に持つODNと 核外移行シグナルペプチドとの還元的アミノ化によるコンジュゲート形成効率を比較した。ペプチド

との反応では、アミン側鎖をもっ相補鎖との反応のように近接効果がないため、過剰量なペプチドを 用いることにした。反応性前駆体を5末端lこ持つCagedODNのリン酸緩衝液中、ペプチド(20eq.)を 加え、光照射により、 2・メトキシOASまたAPを5末端に持つODNへ変換した後、 37度、インキュ ベートし、 HPLCを用いて反応解析を行った(Scheme4a。) 2にメトキシOASを5末端に持つODNと ペプチドとの反応では、原料が消失し、 Scheme4に示すコンジュゲート 6を得ることが出来た。一 方、 APを5末端に持つODNとペプチドとの反応ではHPLCでは新規ピークを確認できなかった。

(4)

反応性前駆体を3 末端に持つCagedODNのリン酸緩衝液中、ペプチド(20eq.)を加え、光照射によ り、 2−メトキシOASまたAPを5末端に持つ ODNへ変換した後、 37度、インキュベートし、 HPLC を用いて反応解析を行った(Scheme4b)。2ーメトキシOASを3 末端に持つODNとペプチドとの反応 では、原料が消失し、 Scheme4に示すコンジュゲート 8を高収率で得ることが出来た。APを3'末端 に持つODNはコンジュゲートと反応ではコンジュゲー ト9を低収率で得ることが出来た。

Scheme 4 

a)反応部位を5末端に導入したODNのペプチドの反応 反応部位を3末端に導入ODNのペプチドの反応

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3)反応性核酸による DnaA蛋白質のりジン基部位特異的修飾反応

DNA鎖のリン酸部に接近するリジン残基を持つDNA結合性蛋白質として大腸菌複製開始蛋白質であ るDnaAを選び、蛋白質のリジン部位特異的修飾反応を行った(Scheme5)。DnaAのDNA結合配列に Caged前駆体を含むODNduplexを光照射した後、OASを含むODNduplexへ変換し、20mMHEPES 緩衝液中(pH 7.6)、DnaAと複合体を形成した後、 25度で、終夜インキュベートし、反応液を SDS‑ PAGEを用いて解析を行った。還元剤非存在下ではDnaAのラクタム修飾成績体と見られる移動度の早 い新規バンドを与えた。還元剤存在下では、 DNA‑DnaAコンジュゲー トと見られる移動度の遅いバン ドを見られた。より詳細な反応解析を行うため、 DnaAのDNA結合部位である DomainIV (Figure la)  との反応を行ったところ、 OASを含むODNは還元的条件下では移動度の低いコンジュゲートバンドが 見られた(Figurelb, Lane 3)。2−メトキシOASを含むODNは、 OASに比べ、コンジュゲート生成効 率が劣るもの、大部分はDomainIVとコン、ジュゲートを形成した(Figurelb, Lane 4)。APを含む ODN はDomainIVとのコンジュゲートのバンドを見られなかった(Figurelb, Lane 5)。更に、 OASODNと Domain IVとのコンジュゲートを酵素による加水分解を行い、得られた核酸ーペプチドフラグメントを MALDI‑TOF MSにより測定し、DomainIVのリジン43残基が修飾されことを示唆された(Figurele)。

Scheme 5 

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【結果】 1)反応性核酸と近接するアミンODNとの反応性評価

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OASを含むODNはアミノヘキシル基を持つ相補鎖との還元的アミノ化で73%の収率でクロスリン クtを与えた。一方、 APを含むODNは71%の収率でクロスリンク 2を与えたが、 OASを含むODN より、 10倍程度反応が遅かった。 2・メトキシOASはOASより安定で0・脱離が起こらず、 83%の高 収率でクロスリンク 3を与え、反応はOASと同程度の速度で進行した。これらの結果からジカノレボニ ル基を有する OAS及び2・メトキシOASはモノカルボニル基を有するAPより反応速度が速いことが 明らかとなったω。一方、 2',2・ジフノレオロ OASは試薬を必要とせず、クロスリンク 4,5を其々55%, 43%の高収率で生成した心。

2) 3・末端または5 ー末端に反応性部位を持つ反応性核酸とペプチドとのコンジュゲート形成

2にメトキシOAS及びAPを3末端、また5末端に持つODNとペプチドとの還元的アミノ化におい て、 2ーメトキシOASを導入したODNのうち、 5'−末端に導入したものでは 70%で、 3 末端に導入した ものでは90%という高い収率でコンジュゲートを形成した。一方、 APを5 末端に持つODNはペプチ ドとの反応はまったく進行せず、また3 末端に持つODNの反応ではコンジュゲート収率は 10%と低 かった。これらの結果からアミン側鎖を持つ相補鎖との反応のように近接効果がない場合でも、ジカ ルボニル基を有する2同メトキシOASはモノカルボニル基を有するAPより反応性が高いことが分かつ た。また反応部位をODNの3末端に持つ場合は、 5 末端に持つ場合より、反応性が高いとしづ興味深 い知見を得た 3。)

3)反応性核酸によるDnaA蛋白質のリジン基部位特異的修飾反応

OASを含むODNはDnaAとの反応において、高収率でラクタム修飾成績体を与えた。また還元条 件下では核酸・蛋白質コンジュゲートを高収率で与えた。更にDnaAのDNA結合部位である Domain IVとの反応を行ったところ、 OASを含むODNは2ーメトキシOAS及びAP含むODNより還元的条 件下でDomainIVとのコンジュゲートの形成効率は高い。得られたコンジュゲートを酵素による加水 分解で生成したフラグメントを解析した結果、 DomainIVのリジン43残基が部位特異的に修飾され

ことを示唆された。 MacroModelを用いた計算ではOASの開環型構造では自由度が大きく、そのCl 位アルデヒドの方がAPのClアルデヒドよりリジン43に接近した可能性が示唆された3。)

【考察】本研究は、ジカルボニル基を有する OAS及びその誘導体はモノカルボニル基を有するAPよ り、アミン側鎖を持つ相補鎖やリジン残基を持つペプチドと効率よくコンジュゲートを形成し、また OASを核酸の特定の配列に導入することにより、核酸と相互作用する蛋白質のリジン残基の部位特異 的修飾に応用可能であることを明らかにした。 OASの高いアミン反応性は開環型構造におけるジカル ボニル基の協同効果によるものと考えられる。

【引用文献] 1) M. Manoharan, L. K. Andrade, P. D. Cook, Org. Letム1999,1,  311‑314. 2) M. Aso,  M. Kondo, H. Suemune, S. M. Hecht, J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 9023‑9033. 3) B. Yang, A.  Jinnouchi, K. Usui, T. Katayama, M. Fujii, H. Suemune, M. Aso, Bioconjugate臼 emistry,2015, in  press. 4) B. Yang, A. Jinnouchi, H. Suemune, M. Aso, Organic Letters, 2012, 14, 58525855.

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