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1 電磁気学 I の復習 1

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電磁気学 II 講義ノート(ドラフト)

— 2018 年度前期

棚橋 誠治 2017 年 12 月 31 日版

目 次

1 電磁気学 I の復習 1

1.1 電荷密度、電流密度 . . . . 1

1.2 真空中の静電場 . . . . 2

1.3 真空中の静磁場 . . . . 3

2 電磁気学 I で用いた数学 4 2.1 デルタ関数 . . . . 4

2.2 微分、積分 . . . . 4

2.3 座標系 . . . . 6

2.3.1 球座標系 (r, θ, φ) . . . . 6

2.3.2 円筒座標 (R, Θ, Z) . . . . 7

3 物質中の静電場 8 3.1 電気双極子と多重極展開 . . . . 8

3.2 誘電体と分極電荷 . . . . 11

3.3 電束密度(電気変位) D . . . . 12

3.4 誘電体境界での E D の接続 . . . . 13

4 静電場のエネルギー 14 4.1 コンデンサ(キャパシタ)の静電容量(キャパシタンス) . . . . 14

4.2 電荷が電場から受ける力 . . . . 15

4.3 バネとの類推 . . . . 16

4.4 静電場のエネルギー密度 . . . . 17

4.5 静電場の応力テンソル . . . . 19

4.6 誘電体とコンデンサ . . . . 21

5 物質中の静磁場 22 5.1 静電場の多重極展開の補足 . . . . 22

5.2 磁気双極子と多重極展開 . . . . 25

5.3 磁性体と分子電流(磁化電流) . . . . 28

5.4 磁場の強さ H . . . . 29

(2)

5.5 さまざまな磁性体 . . . . 30

5.6 磁性体と静磁場(磁荷と磁位) . . . . 31

6 静磁場のエネルギー 35 6.1 ローレンツ力 . . . . 35

6.2 電流が磁場から受ける力(アンペール力) . . . . 37

6.3 静磁場の応力テンソル . . . . 39

6.4 静磁場のエネルギー密度 . . . . 40

6.5 変位電流 . . . . 41

6.6 電磁誘導 . . . . 42

6.7 磁束の変化と起電力 . . . . 44

6.8 静電容量(キャパシタンス)と誘導係数(インダクタンス) . . . . 47

6.9 ソレノイドコイルのインダクタンス . . . . 50

6.10 帯電した導体にはたらく力、電流が流れているコイルにはたらく力 . . . . 51

7 時間とともに変動する電磁場 53 7.1 マクスウェル方程式 . . . . 53

7.2 電磁波 . . . . 54

7.3 エネルギー保存 : エネルギー密度とポインティング・ベクトル . . . . 58

7.4 運動量保存: ポインティング・ベクトルと応力テンソル . . . . 60

7.5 スカラーポテンシャル、ベクトルポテンシャル . . . . 62

7.6 加速する点電荷からの放射 . . . . 66

8 電気回路 69 8.1 抵抗器とオームの法則 . . . . 69

8.2 定常電流とキルヒホッフの法則 . . . . 70

8.3 準定常電流 . . . . 71

8.4 C, L, R の合成 . . . . 71

8.5 過渡現象と複素インピーダンス . . . . 71

A 線積分・面積分 74 A.1 線積分 . . . . 74

A.2 面積分 . . . . 74

A.3 体積積分 . . . . 75

B ベクトル解析の公式の導き方 76 B.1 内積とアインシュタインの和の規約 . . . . 76

B.2 外積とレビ・チビタ記号 . . . . 77

B.3 重要な公式 . . . . 77

B.4 いくつかの例 . . . . 77

C 演習問題集 79

(3)

参考書

物理テキストシリーズ「電磁気学」砂川重信著、岩波書店

歴史的な経緯も含め、電磁気学の内容がコンパクトに要領よくまとめられた良書。おすすめ。

理解に必要となる計算を飛ばすことなく丁寧に説明してある。あとで紹介する同一著者の演 習書とともに読み進めることで、電磁気学におけるほぼすべての重要なトピックスをひとと おり独習することも可能になっている。演習書のほうだけで説明されている重要なトピック スもあることに注意。この講義では、この参考書あるいは同一著者の演習書での対応箇所を 示しながら講義を進めていく予定。

基礎物理学シリーズ「電磁気学」横山順一著、講談社

独特の語り口で、電磁気学のエッセンスがまとめられている教科書。重要な考え方や、電磁 気学を理解する上で必要となる数学を、その導出や意味まで含めて要領よく紹介してある。

ベクトル解析の記号や数式の意味を分かりやすく説明してある。その分、取り上げられてい る例題の数は多くない。おすすめ。

物理入門コース「電磁気学 I 電場と磁場」 「電磁気学 II 変動する電磁場」長岡洋介、岩波書店 デルタ関数などの数学的な概念を用いることなく、電磁気学の基礎が丁寧に解説されている。

ただ、デルタ関数は、電磁気だけでなく量子力学などでも今後頻繁にあらわれる概念なので、

この段階でマスターしておくことをお勧めする。また、この講義でもデルタ関数を積極的に 使用する。長岡本は、上述の砂川本、横山本を読んでも理解できない箇所を調べるのに使う と良い。

「電磁気学」(上・下)、ジャクソン著、西岡訳、吉岡書店

基礎から発展までもれなく説明してある良書。ただし、すべて読みこなすには分量が多く、

ハードルが高い。アメリカでは大学院生向けとされているが、日本では学部3年〜4年の学 生に広く読まれているようである。原書の”Classical Electrodynamics”, Jackson, Wiley の 方が安く入手できるし、英語も読みやすい。

「電磁気学<上>」「電磁気学<下>」パノフスキー、フィリップス著、林忠四郎、西田稔 訳、吉岡書店

実験物理の結果から、いかに電磁気学の理論が演繹されるのか、という観点を強調して説明 してある、とても「物理的」な教科書。記述の仕方は古く説明は簡潔なものの、カバーされて いるトピックスの範囲は広い。以前は、アメリカでのもっとも標準的な電磁気学の教科書だっ たようである。こちらも、原書の”Classical Electricity and Magnetism” W.K.H. Panofsky

and M. Phillips の方が安く入手でき、英語も読みやすい。

「理論電磁気学」砂川重信著、紀伊国屋書店

この講義での終盤にようやく現れるマクスウェル方程式(電磁気学の基礎法則)を教科書の 出発点にすえることで、電磁気学のさまざまな側面を体系的に説明していくスタイルの教科 書。この講義では時間が足りずおそらく到達できない事項(特殊相対論の記号や解析力学的 な手法を用ると、いかに電磁気学が美しく記述できるかの説明)まで説明されている。

理論物理学教程「場の古典論」ランダウ、リフシッツ著、恒藤、広重訳

砂川「理論電磁気学」の終盤にあらわれる概念、つまり、相対性原理と解析力学の変分原理を

出発点とすることで、電磁気学や重力理論の基礎法則がどのように理論的に演繹されるかを

説明し、さまざまな物理現象を説明していくスタイルの教科書。したがって、理論のフォー

(4)

マリズムとしてはもっとも美しいが、学部2年生が読みこなすのはかなりの困難を伴う。理 論志望の物理学科学生が3年生後期から4年生にかけて読むのにちょうど良い。

演習書

演習問題を解けるようにならないと、電磁気学をそれなりに理解できたとは言えない。この講義で は基本法則の解説に集中するので、講義中では、多くの例題を取り上げることはできない。演習や レポートだけでなく、意識して例題を解くことに努めてほしい。次の演習書がよく使われている。

物理テキストシリーズ「電磁気学演習」砂川重信著、岩波書店

前述の同一著者の教科書の姉妹版演習書。教科書といっしょにに読み進めるための演習書。

「詳解電磁気学演習」後藤憲一、山崎修一郎編、共立出版

さまざまな演習問題とその略解が集められており、ある意味、頼りになる演習書。電磁気学 の演習問題を解くために必要とされる数学公式もコンパクトにまとめられている。ただし、

わからない問題に当たった時、自分で考えることをせずに、すぐにこの演習書の略解を書き 写すくせをつけてしまうと、電磁気学の深い理解は覚束ない。大学院入試の受験勉強の際に よく読まれているらしい。

おすすめ参考書例1:電磁気学発展の歴史から応用までを網羅的に理解する

[1 年次〜2年次 ] 物理テキストシリーズ「電磁気学」 「電磁気学演習」砂川重信著、岩波書店 演習書のほうも必読。演習書のほうでしか取り上げられていないトピックスも多い。

[3年次〜] 物理学叢書「電磁気学」(上・下)、Jackson 著、西岡訳、吉岡書店

原著の “Classical Electrodynamics” Jackson, Wiley のほうが安い、英語も読みやすい。

おそらく、Jackson のほうは、通読するのではなく、必要なトピックスを拾い読みすることになる。

おすすめ参考書例2:電磁気学の数学的基礎から古典場の理論としての完成までを概観する

[1 年次〜 ] 基礎物理学シリーズ「電磁気学」横山順一著、講談社

電磁気学で必要となる数学的知識が第0部にわかりやすくまとめられている。

[2年後期〜] 「理論電磁気学」、砂川重信著、紀伊国屋書店

[ 3年後期〜 ] 理論物理学教程「場の古典論」ランダウ・リフシッツ著、東京図書

上記以外に、物質中の電磁気学をカバーする教科書が必要になるかもしれない。また、電磁気学を

応用する上で必要な演習量については、「詳解電磁気学演習」(後藤憲一、山崎修一郎編、共立出

版)などで不足を補う必要がある。

(5)

成績

基本的に定期試験による。途中でレポートを数回出題するか、出席確認を兼ねて毎回小テス トを実施するかし、その結果を成績に若干加味する。

講義中に疑問に感じることがあれば、すぐに質問すること。良い質問は、質問者だけでなく 多くの聴衆にとって有益である。講義中になされた良い質問や、この講義ノートの誤りの指 摘には、質問者に特別加点を与える。

試験の範囲は、このノートでカバーされているすべての項目を含む。不明な点を残さないよ う、途中出題した演習問題・レポート問題をよく復習しておくこと。

連絡先

電子メール: [email protected]

内線 : 2859

部屋: ES719

講義ノート、レポート課題、演習問題を

http://www.eken.phys.nagoya-u.ac.jp/~tanabash/lecture/em2-18/

に置く。

(6)

1 電磁気学 I の復習

電磁気学 I の内容の詳細については

http://www.eken.phys.nagoya-u.ac.jp/~tanabash/lecture/em1-18/

に置いてある電磁気学 I の講義ノートを参照し、対応する箇所の参考書の説明を復習すること。

1.1 電荷密度、電流密度

定常な電荷密度 ρ(⃗ x) と定常な電流密度 ⃗j(⃗ x) は、電場 E と磁場 B から、単位体積あたり f (⃗ x) = ρ(⃗ x) E(⃗ x) + ⃗j(⃗ x) × B(⃗ x) (1.1) で与えられる力を受ける。

電荷密度や電流密度が時間 t とともに変化する場合には、電荷の保存則は 0 =

∂t ρ(⃗ x, t) + ∇ · ⃗j(⃗ x, t) (1.2) で与えられる(参考書 p.195 近辺)。電荷密度、電流密度が定常的な場合、つまり、 t に依存しない ときの電荷の保存則(定常電流の保存則)は

0 = ∇ · ⃗j(⃗ x) (1.3)

である。

N 個の点電荷が作る電荷密度は、デルタ関数を用いて ρ(⃗ x, t) =

N n=1

q n δ (3) (⃗ x x n (t)) (1.4) で与えられる。ここで、q nn 番目の点電荷のもつ電荷を表し、⃗ x n (t) は n 番目の点電荷の時刻 t での位置を表す。

同様に、N 個の点電荷の作る電流密度は、

⃗j(⃗ x, t) =

N n=1

q n x ˙ n (t)δ (3) (⃗ x x n (t)) (1.5) で与えられる。 x ˙ n は、n 番目の点電荷の時刻 t での速度

x ˙ n (t) := d dt x n (t) を表す。

式 (1.4) を t で偏微分すると

∂t ρ(⃗ x, t) =

N n=1

q n

[

˙ x n

∂x n

+ ˙ y n

∂y n

+ ˙ z n

∂z n

]

δ (3) (⃗ x x n (t))

=

N n=1

q n

[

˙ x n

∂x + ˙ y n

∂y + ˙ z n

∂z ]

δ (3) (⃗ x x n (t))

=

N n=1

q n x ˙ n · δ (3) (⃗ x x n (t))

(7)

が得られる。ここで、1 行目から 2 行目への式変形では、デルタ関数が偶関数であることを用いた。

一方、式 (1.5) からは

∇ · ⃗j(⃗ x, t) =

n

q n x ˙ n (t) · δ (3) (⃗ x x n (t)) が得られる。これらから電荷の保存則 (1.2) を確認するのは容易である。

1.2 真空中の静電場

基本法則はふたつ。(参考書 p.55 〜)

∇ · E(⃗ x) = 1 ϵ 0

ρ(⃗ x), (1.6)

∇ × E(⃗ x) = 0, (1.7)

で与えられる。ここで、

:= e x x + e y y + e z z (1.8) であり、ρ(⃗ x) は電荷密度を表す。ここで、∂ x , y , z を、それぞれ、

x :=

∂x , y :=

∂y , z :=

∂z (1.9)

と定義しておく。

式 (1.6) はスカラーの方程式、 (1.7) はベクトルの方程式であり、合わせて4成分の方程式である

ことに注意。一見すると、求めたい変数(この場合は電場 E 3成分)の数よりも、方程式の数の ほうが多く、解が存在しないように見える。実は、この心配はいらない。このことを見るために、

スカラーポテンシャル ϕ(⃗ x) を導入し、静電場を

E(⃗ x) = ϕ(⃗ x) (1.10)

で与えることにする。このとき、 (1.7) が成立することは自動的になる(後述するベクトルの微分 の恒等式 (2.8) を参照のこと)。式 (1.10) を式 (1.6) に代入すると、ポアソン方程式

∆ϕ(⃗ x) = 1 ϵ 0

ρ(⃗ x) (1.11)

が得られ、求めたい変数(スカラーポテンシャル ϕ(⃗ x) )ひとつを 1 つの方程式で決定する健康的 な問題となる。ここで、ラプラシアン ∆ は

∆ := x 2 + 2 y + z 2

= 2

∂x 2 + 2

∂y 2 + 2

∂z 2 (1.12)

で定義されている。スカラーポテンシャル ϕ(⃗ x) は、静電ポテンシャル、あるいは電位とも呼ばれ ることがある。

実際に、ポアソン方程式 (1.11) をスカラーポテンシャルについて解くと、

ϕ(⃗ x) = 1 4πϵ 0

V

d 3 V

1

| x x

| ρ(⃗ x

) (1.13)

が得られ、電荷密度分布 ρ(⃗ x) が与えられるとスカラーポテンシャル ϕ が求まり、(1.10) から電場

E を決定することができる。式 (1.13) において、有限の3次元領域 V のみに電荷密度 ρ(⃗ x) が存

在するものとした。また、偏微分方程式 (1.11) は、境界条件を与えないと解が一意的には求めら

れないが、ここでは、十分遠方 ( | x | → ∞ ) で、ϕ(⃗ x) 0 となる境界条件を用いた。

(8)

1.3 真空中の静磁場

基本法則はやはりふたつ。(参考書 p.166〜)

∇ × B (⃗ x) = µ 0 ⃗j(⃗ x), (1.14)

∇ · B(⃗ x) = 0 (1.15)

で与えられる。 ⃗j(⃗ x) は電流密度を表す。

ベクトルポテンシャル A(⃗ x) を導入すると、静磁場は

B(⃗ x) = ∇ × A(⃗ x) (1.16)

で与えられる。式 (1.16) によって磁場 B を与えると (1.15) が成立することは自動的になる(式 (2.9) 参照)。式 (1.16) を式 (1.14) に代入し、

( ∇ · A) A(⃗ x) = µ 0 ⃗j(⃗ x) (1.17) を得る。ベクトル解析の公式

∇ × ( χ) = 0 (1.18)

より

A

(⃗ x) = A(⃗ x) + χ(⃗ x) (1.19) で定義されるベクトルポテンシャル A

ともとのポテンシャル A は同一の磁場を与えることに注意 する(この自由度はゲージ変換の自由度と呼ばれる)。したがって、式 (1.17) のみからはベクトル ポテンシャル A を一意的に決定することができない。そこで、ゲージ固定条件

∇ · A(⃗ x) = 0 (1.20)

を課して、ゲージ変換の自由度を消すことにする。ゲージ固定条件 (1.20) のもとでは、式 (1.17) はポアソン方程式

A(⃗ x) = µ 0 ⃗j(⃗ x) (1.21)

に帰着する。この式は、3成分のベクトルポテンシャル A を3成分のベクトルの方程式で決定す るもので、健康的な方程式になっている。

実際に (1.21) をベクトルポテンシャル A について解いて A(⃗ x) = µ 0

V

d 3 V

1

| x x

| ⃗j(⃗ x

) (1.22) を得る。ここで、有限の3次元領域 V のみに電流密度 ⃗j(⃗ x) が存在するものとした。偏微分方程

式 (1.17) は、境界条件を与えないと解を一意的に求めることができない。ここでは、十分遠方

( | x | → ∞ ) で A(⃗ x) 0 となる境界条件を用いた。定常電流の保存則 (1.3) を用いれば、式 (1.22)

の結果がゲージ固定条件 (1.20) を満足することを確認できる。

(9)

2 電磁気学 I で用いた数学

2.1 デルタ関数

ディラックのデルタ関数 δ(x) の性質:

∫ +

−∞

dx δ(x a) g(x) = g(a). (2.1)

δ(ax b) = 1

| a | δ(x b/a). (2.2)

3次元デルタ関数 δ (3) (⃗ x):

δ (3) (⃗ x) = δ(x) δ(y) δ(z). (2.3)

2.2 微分、積分

各種の微分 :

傾き、勾配、グラディエント

grad ϕ(⃗ x) = ϕ

= e x x ϕ + e y y ϕ + e z z ϕ. (2.4)

湧き出し、発散、ダイバージェンス

div A(⃗ x) = ∇ · A

= x A x + y A y + z A z . (2.5) ただし、A x , A y , A z は、ベクトル関数 A の各成分を表す。つまり

A(⃗ x) = e x A x (⃗ x) + e y A y (⃗ x) + e z A z (⃗ x).

渦密度、回転、ローテーション(カール)

rot A(⃗ x) = curl A(⃗ x)

= ∇ × A

= e x (∂ y A z z A y ) + e y (∂ z A x x A z ) + e z (∂ x A y y A x ) . (2.6) 微分を2度行うと、

∇ · ( ϕ) = ∆ϕ, (2.7)

∇ × ( ϕ) = 0, (2.8)

∇ · ( ∇ × A) = 0, (2.9)

∇ × ( ∇ × A) = ( ∇ · A) A (2.10)

が得られる。各種の積分 :

(10)

体積積分: volume integral

V

d 3 V ρ(⃗ x) =

V

d 3 x ρ(⃗ x) =

V

dxdydz ρ(⃗ x). (2.11) 積分する3次元領域 V を積分記号の添字で表す。3次元積分であることを強調するため、こ の講義では、積分の微小体積要素を d 3 V = d 3 x などと書くことにする(標準的な記法ではな いので注意すること)。

面積分: surface integral

S

d 2 S · ⃗j(⃗ x) =

S

d 2 S ⃗ n · ⃗j(⃗ x) =

S

d 2 x ⃗ n · ⃗j(⃗ x). (2.12) 積分する2次元領域(面)S を積分記号の添字で表す。2次元積分であることを強調するた め、この講義では、積分の微小体積要素を d 2 S = d 2 x などと書くことにする(標準的な記法 ではないので注意すること)。⃗ n は微小面積要素 d 2 S の法線方向単位ベクトル。向き付けら れた微小面積要素を d 2 S = d 2 S ⃗ n と表記することもある。媒介変数を用いた面積分の表示に ついては、付録 A.2 を見よ。

線積分: line integral ∫

L

d⃗ · ⃗j(⃗ x) =

L

d⃗ x · ⃗j(⃗ x). (2.13)

積分する1次元領域(線)L を積分記号の添字で表す。微小線素 d⃗ = d⃗ x は方向を持ってい ることに注意。媒介変数を用いた線積分の表示については、付録 A.1 を見よ。

微分してから積分することでふたつの定理が導かれる。

ガウスの定理 ∫

V

d 3 V ⃗ ∇ ·⃗j =

∂V

d 2 S · ⃗j. (2.14)

ここで、∂V は3次元領域 V を囲う2次元閉曲面。

ストークスの定理 ∫

D

d 2 S · ( ∇ × ⃗j) =

∂D

d⃗ · ⃗j. (2.15)

ここで、∂D は2次元面 D(ディスク)を囲う1次元閉曲線。

ガウスの定理、ストークスの定理の応用:

積分形のガウスの法則 1 ϵ 0

V

d 3 V ρ (

=

V

d 3 V ⃗ ∇ · E )

=

∂V

d 2 S · E (2.16) は電場の基本法則 (1.6) とガウスの定理 (2.14) を組み合わせて得られる。電荷密度分布が高 い対称性を持つ場合は、積分形のガウスの法則を用いることで、式 (1.13) の積分を実行する ことなく、比較的簡単に電場 E を求めることができる場合が多い。

積分形のアンペールの法則 µ 0

D

d 2 S · ⃗j (

=

D

d 2 S · ( ∇ × B) )

=

∂D

d⃗ · B (2.17)

は磁場の基本法則 (1.14) とストークスの定理 (2.15) を組み合わせて得られる。電流密度分布

が高い対称性を持つ場合は、積分形のアンペールの法則を用いることで、式 (1.22) の積分を

実行することなく、比較的簡単に磁場 B を求めることができる場合が多い。

(11)

2.3 座標系

2.3.1 球座標系 (r, θ, φ)

具体的な応用問題を解くうえで、通常のデカルト座標系 (x, y, z) よりも、球座標系 (r, θ, φ) の方 が便利なことがある(砂川演習問題集 p.15〜)。球座標系とデカルト座標系との関係は

x = r sin θ cos φ, y = r sin θ sin φ, z = r cos θ (2.18) で与えられる。デカルト座標での x 方向単位ベクトル、 y 方向単位ベクトル、 z 方向単位ベクトル を、それぞれ、⃗ e x 、⃗ e y 、⃗ e z と表記することにする。位置ベクトル

x = e x x + e y y + e z z (2.19) を r, θ, φ で微分することで、r 方向単位ベクトル、θ 方向単位ベクトル、φ 方向単位ベクトルは、

それぞれ、

e r = 1 ∂⃗ x

∂r

∂⃗ x

∂r , e θ = 1 ∂⃗ x

∂θ

∂⃗ x

∂θ , e φ = 1 ∂⃗ x

∂φ

∂⃗ x

∂φ , (2.20)

のように計算できる。デカルト座標系での単位ベクトル e x , e y , e z と、球座標系での単位ベクトル

e r , e θ , e φ の間の関係は

e r = e x sin θ cos φ + e y sin θ sin φ + e z cos θ, (2.21)

e θ = e x sin θ cos φ + e y cos θ sin φ e z sin θ, (2.22)

e φ = e x sin φ + e y cos φ, (2.23)

あるいは

e x = e r sin θ cos φ + e θ cos θ cos φ e φ sin φ, (2.24)

e y = e r sin θ sin φ + e θ cos θ sin φ + e φ cos φ, (2.25)

e z = e r cos θ e θ sin θ, (2.26)

となる。場所によって、単位ベクトル e r , e θ , e φ の指し示す方向が異なることに注意すること。

微小体積要素 d 3 V は、デカルト座標と球座標でそれぞれ

d 3 V = dx dy dz = dr rdθ r sin θdφ (2.27) となる。微小線素の2乗である (d⃗ ℓ) 2 は、

(d⃗ ℓ) 2 = (dx) 2 + (dy) 2 + (dz) 2 = (dr) 2 + (rdθ) 2 + (r sin θdφ) 2 (2.28) で与えられる。

球座標でのベクトル関数 V の成分を V r , V θ , V φ とし、

V = e r V r + e θ V θ + e φ V φ (2.29)

と書くことにする。球座標系での、スカラー関数 f のグラディエント f 、ベクトル関数 V のダ

イバージェンス ∇ · V 、ベクトル関数 V のローテーション ∇ × V 、スカラー関数 f のラプラシア

(12)

ン ∆f は、以下のとおり。

f = e r

∂r f + e θ

1 r

∂θ f + e φ

1 r sin θ

∂φ f, (2.30)

∇ · V = 1 r 2

∂r (r 2 V r ) + 1 r sin θ

∂θ (sin θV θ ) + 1 r sin θ

∂φ V φ , (2.31)

∇ × V = e r 1 r sin θ

[

∂θ (sin θV φ )

∂φ V θ ]

+ e θ 1 r

[ 1 sin θ

∂φ V r

∂r (rV φ ) ]

+⃗ e φ 1 r

[

∂r (rV θ )

∂θ V r ]

, (2.32)

∆f = 1

r 2

∂r (

r 2

∂r f )

+ 1

r 2 sin θ

∂θ (

sin θ

∂θ f )

+ 1

r 2 sin 2 θ

2

∂φ 2 f. (2.33) これらの公式の比較的愚直な導出方法は、砂川演習問題集に載っている。もっと見通しの良い導 出方法は、電磁気学 I の講義ノートの付録を参照。

2.3.2 円筒座標 (R, Θ, Z)

円筒座標を使う方が便利な場合もある(砂川演習問題集 p.26)。円筒座標 (R, Θ, Z) とデカルト 座標 (x, y, z) との関係は

x = R cos Θ, y = R sin Θ, z = Z (2.34)

で与えられ、それらの座標系での単位ベクトルの間の関係は

e R = e x cos Θ + e y sin Θ, (2.35)

e Θ = e x sin Θ + e y cos Θ, (2.36)

e Z = e z , (2.37)

あるいは

e x = e R cos Θ e Θ sin Θ, (2.38)

e y = e R sin Θ + e Θ cos Θ, (2.39)

e z = e Z , (2.40)

となる。

微小体積要素 d 3 V は、デカルト座標と円筒座標でそれぞれ

d 3 V = dx dy dz = dR RdΘ dZ (2.41)

となる。微小線素の2乗 (d⃗ ℓ) 2 は、

(d⃗ ℓ) 2 = (dx) 2 + (dy) 2 + (dz) 2 = (dR) 2 + (RdΘ) 2 + (dZ ) 2 (2.42) で与えられる。

円筒座標でのベクトル関数 V の成分を V R , V Θ , V Z とし、

V = e R V R + e Θ V Θ + e Z V Z (2.43)

(13)

と書くことにする。円筒座標系での、スカラー関数 f のグラディエント f 、ベクトル関数 V の ダイバージェンス ∇ · V 、ベクトル関数 V のローテーション ∇ × V 、スカラー関数 f のラプラシ アン ∆f は、以下のとおり。

f = e R

∂R f + e Θ

1 r

∂Θ f + e Z

∂Z f, (2.44)

∇ · V = 1 R

∂R (RV R ) + 1 R

∂Θ V Θ +

∂Z V Z , (2.45)

∇ × V = e R ( 1

R

∂Θ V Z

∂Z V Θ )

+ e Θ (

∂Z V R

∂R V Z )

+⃗ e Z 1 R

(

∂R (RV Θ )

∂Θ V R )

, (2.46)

∆f = 1

R

∂R (

R

∂R f )

+ 1 R 2

2

∂Θ 2 f + 2

∂Z 2 f. (2.47)

3 物質中の静電場

3.1 電気双極子と多重極展開

物質(絶縁体)中の静電場を理解するには、分子や原子といった極小の領域にどのように電荷が 分布しているかを考察しておくことが有益である。ここでは、そのような考察にあたって有用な概 念である電気多重極子についてはじめに説明しておこう。

原点に存在する電気単極子 (electric monopole) 、つまり、点電荷 Q の作るスカラーポテンシャ ルは

ϕ

単極

(⃗ x) = Q

4πϵ 0 r , r :=

x 2 (3.1)

と表される。点電荷 q が原点にあり、点電荷 +q が位置 d に存在する場合のスカラーポテンシャ ル(参考書 p.53〜)

ϕ(⃗ x) = q 4πϵ 0

[ 1

| x d | 1

| x | ]

(3.2) を考える。 | d | ≪ | x | = r のとき、このポテンシャルの第1項は次のように近似できる。

√ 1

(⃗ x d ) 2

1

x 2 2⃗ x · d

= 1 r

√ 1

1 2 x · d r 2

= 1

r [

1 + d · x

r 2 + · · · ]

. (3.3)

式 (3.2) の第1項と第2項の主要な寄与は打ち消しあい、式 (3.2) のポテンシャルは

ϕ(⃗ x) = 1 4πϵ 0

[ q ⃗ d · x

r 3 + O (q ⃗ d 2 ) ]

(3.4) と近似できる。 p = q ⃗ d を一定に保ちながら、電荷の大きさを | d | に反比例して大きくさせること で、ふたつの電荷の間の距離をゼロにする( | d | → 0)極限を考える。このとき、この極限では、

q ⃗ d 2 0 となることに注意すると、ポテンシャル (3.4) が ϕ

双極

(⃗ x) = p · x

4πϵ 0 r 3 (3.5)

(14)

に帰着することがわかる。このようにして得られる式 (3.5) のポテンシャルを電気双極子 (electric

dipole) ポテンシャルと呼び、このときのベクトル p は電気双極子モーメントと呼ばれる。

ちなみに近似式 (3.3) は、テイラー展開を使って以下のようにしても導くことができる。

√ 1

(⃗ x d ) 2

= 1

x 2 + ∑

i=x,y,z

d i

∂d i

 1

(⃗ x d ) 2

d=0

+ · · ·

= 1

x 2

∑ 3 i=1

d i

∂x i ( 1

x 2 )

+ · · ·

= 1

r d · ( 1

r )

+ · · ·

= 1

r + d · ( x

r 3 )

+ · · ·

= 1

r [

1 + d · x

r 2 + · · · ]

. (3.6)

1行目から2行目への式変形では、

(⃗ x d ) 2 x d のみに依存する関数であることを用いて、

d i による微分を x i による微分に置き換えた。また、ベクトル x、ベクトル d の各成分を x 1 = x, x 2 = y, x 3 = z,

d 1 = d x , d 2 = d y , d 3 = d z

と表記した。ここで、

r = 1 r x

であることを予め導いておくと途中の計算の見通しが得やすい。

次に、原点にモーメント p の電気双極子を置き、位置 d に電気双極子モーメント +⃗ p を置いて みる。このときのスカラーポテンシャルは

ϕ(⃗ x) = 1 4πϵ 0

[

p · ( x d )

| x d | 3 p · x

| x | 3 ]

(3.7) で与えられる。このポテンシャルの第1項を、式 (3.3) や式 (3.6) と同様に

(√ 1

( x d ) 2

) 3 = 1 r 3

[ 1 + 3

d · x r 2 + · · ·

]

を用いて近似すると、やはり主要項はキャンセルし、

ϕ(⃗ x) = 1 4πϵ 0 r 5

[

3( d · x) (⃗ p · x) ( d · p) r 2 ]

+ · · · (3.8)

が得られる。さらに、ふたつの双極子の間の距離 | d | をゼロにする極限をとる。このとき、双極子 モーメント | p || d | に反比例させて大きくしていくことで、

Q ij = 6d i p j 2( d · p ij (3.9)

(15)

を一定に保つようにしておく。この極限で得られるポテンシャル ϕ

四重極

(⃗ x) = 1

4πϵ 0 r 5

∑ 3 i=1

∑ 3 j=1

1

2 Q ij x i x j (3.10)

を電気四重極子 (electric quadrupole) ポテンシャル、 Q ij を電気四重極子モーメントと呼ぶ。電気 四重極子は、ふたつの双極子、つまり、4つの単極子(点電荷)を重ねることで得られることに注 意しておく。これが、四重極と呼ばれる由縁である。

この手続きを順々に踏んでいって、一般の 2 重極子ポテンシャル ϕ 2

重極

(⃗ x) = 1

4πϵ 0 r 2ℓ+1

∑ 3 i

1

=1

∑ 3 i

2

=1

· · ·

∑ 3 i

=1

1

ℓ! Q i

1

i

2···

i

x i

1

x i

2

· · · x i

(3.11) を得ることは容易だろう。ℓ = 0 の場合が単極子(点電荷)、ℓ = 1 の場合が双極子、ℓ = 2 の場合 が四重極子に他ならない。

式 (3.2) の単極子ポテンシャル、式 (3.5) の双極子ポテンシャル、式 (3.10) の四重極子ポテンシャ

ル、さらには、式 (3.11) で与えられる一般の 2 重極子ポテンシャルを比較すると幾つかの事項に 気づく。

遠方で単極子ポテンシャルは 1/r でしか小さくならないのに対し、双極子ポテンシャルは

1/r 2 で急速に小さくなっていく。四重極子ポテンシャルの遠方での減少 1/r 3 はさらに 急速である。つまり、遠方では、単極子(点電荷)に比べ、双極子モーメントや四重極子モー メントは測定しにくい。

単極子の電荷 Q は方向を持たないスカラー量であり、双極子モーメント p は方向をもつベク トル量である。四重極子モーメント Q ij はふたつの添字をもつテンソル量であり、2 重極子 モーメント Q i

1

i

2···

i

個の添字をもつテンソル量である。

これで必要な予備知識についての説明が終わったので、いよいよ、原子や分子など小さく有限な 領域 V 内の電荷密度分布のつくるスカラーポテンシャル

ϕ(⃗ x) = 1 4πϵ 0

V

d 3 V

1

| x x

| ρ(⃗ x

) (3.12) を考察しよう。ここでの積分は、プライム (

) がついた座標変数 x

, y

, z

について行うことに注意 しておく。

d 3 V

= dx

dy

dz

. 式 (3.5) と同様のやり方で 1/ | x x

| のテイラー展開を行うと、

√ 1

(⃗ x x

) 2 = 1

x 2

i

x

i

∂x i

1

x 2 + 1

2

i

j

x

i x

j

∂x i

∂x j

1

x 2 + · · · (3.13)

= 1

r [

1 + 1

r 2 x

· x + 1 2r 4

(

3( x

· x) 2 x

2 x 2 ) )

+ · · · ]

(3.14) が得られる。このことから、ポテンシャル (3.12) が多重極子ポテンシャルの和として

ϕ(⃗ x) = Q

4πϵ 0 r + 1

4πϵ 0 r 3 p · x + 1 4πϵ 0 r 5

i,j

1

2 Q ij x i x j + · · · (3.15)

(16)

の形に展開でき、そのときの多重極モーメントが

Q =

V

d 3 V

ρ(⃗ x

), (3.16)

p i =

V

d 3 V

x

i ρ(⃗ x

), (3.17)

Q ij =

V

d 3 V

(

3x

i x

j x

2 δ ij

) ρ(⃗ x

), (3.18)

.. . と決定できることがわかる。

以上の考察はとても示唆的である。つまり、有限領域 V 内にどのような電荷分布があっても、十 分遠方でのスカラーポテンシャルあるいは電場の測定からは、その領域は、あたかも (3.16) で電 荷が与えられる点電荷であるように見える。これは、式 (3.15) の右辺第2項以降の項は、第1項 に比べて遠方で速く減衰してしまうからである。

さらに、考えている領域に含まれる全電荷 Q がたまたまゼロの場合は、式 (3.15) 右辺の第2項 が主要項となり、十分遠方では第3項以降が無視できる。つまり、その領域は、あたかも (3.17) で 双極子モーメントが与えられる電気双極子であるように見える。

3.2 誘電体と分極電荷

(参考書 p.85〜)誘電体(絶縁体)を構成する原子・分子は電気的に中性であるため、あたかも

電気双極子のように見える。誘電体に含まれる n 番目の原子・分子の電気双極子モーメントを p n とし、そのような原子・分子1個が誘電体中で占める微小体積を d 3 V として、

p n = P d 3 V (3.19)

となる P を考えてみよう。誘電体中には十分にたくさんの原子・分子が存在し、ベクトル P x のなめらかな関数であると考えても良いと思われる。このときのベクトル P (⃗ x) をその誘電体の分 極ベクトルと呼ぶ。以下では、この模型(モデル)を使って、誘電体がスカラーポテンシャルや電 場に及ぼす影響を考察してみよう。

この模型での誘電体の作るスカラーポテンシャルは、

ϕ

誘電体

(⃗ x) = 1 4πϵ 0

n

1

| x x n | 3 p n · (⃗ x x n )

= 1

4πϵ 0

d 3 V

1

| x x

| 3 P (⃗ x

) · (⃗ x x

) (3.20) で与えられる。この式の1行目では、誘電体のつくるスカラーポテンシャルは、多数の双極子モー メントのポテンシャルの和(重ね合わせ)で表されており、1行目から2行目への変形(和から積 分への変形)において、前述の模型が用いられている。

ここで、恒等式

x x

| x x

| 3 =

( 1

| x x

| )

(3.21) を用いて (3.20) を変形してみよう。演算子

:= e x

∂x

+ e y

∂y

+ e z

∂z

(3.22)

(17)

で定義される。式 (3.20) は以下のように変形できる。

ϕ

誘電体

(⃗ x) = 1 4πϵ 0

d 3 V

P (⃗ x

) ·

( 1

| x x

| )

= 1

4πϵ 0

d 3 V

(

· P(⃗ x

) ) 1

| x x

| + 1 4πϵ 0

d 3 V

·

( P (⃗ x

)

| x x

| )

= 1

4πϵ 0

d 3 V

1

| x x

| ρ

分極

(⃗ x

). (3.23)

ここで、1行目から2行目への変形は単なる部分積分であり、2行目から3行目への変形はガウス の定理と十分遠方では誘電体が存在しないこと(表面積分では P をゼロとして良いこと)を用い た。また、式 (3.23) の最終行は

ρ

分極

(⃗ x) := ∇ · P (⃗ x) (3.24) で定義される分極電荷密度と呼ばれる量を用いて書き直されている。式 (3.23) は、「誘電体内部で P の湧き出しに比例する分極電荷が生じ、スカラーポテンシャルや電場への誘電体の影響は分極電

荷 (3.24) を通じて記述できること」を示している。

3.3 電束密度(電気変位) D

(参考書 p89〜)真空中でも誘電体中でも、物理の基本法則

∇ · E(⃗ x) = 1 ϵ 0

ρ(⃗ x) (3.25)

自体は変化しない。この式の右辺の電荷密度 ρ(⃗ x) は、真空中では人間が完全にコントロールでき るが、誘電体中では人間がコントロールできる寄与と誘電体の分極によって勝手に作られてしまう ため直接はコントロールできない分極電荷に分けられる:

∇ · E(⃗ x) = 1 ϵ 0

ρ

(⃗ x) + 1 ϵ 0

ρ

分極

(⃗ x). (3.26)

誘電体中の電磁気学では、実験環境において人間がコントロールする電荷は、慣習的に「真電荷」

と呼ばれる。とはいうものの、人間(実験者)の都合は別として、物理法則として電場 E が感じ る電荷は「真電荷」ではなく、あくまでも ρ = ρ

+ ρ

分極

であることに注意すること。

場の理論における法則の書き方として、人間が直接コントロールできる量を右辺に書き、その 結果現れる場の量を左辺に書き分ける流儀がある。式 (3.26) の書き方はこの流儀に反しているた め、右辺の分極電荷の寄与を左辺に移項して書き直される場合が多い。その際、分極電荷の定義式 (3.24) を用いると

∇ · D(⃗ x) = ρ

(⃗ x) (3.27)

が得られる。ここで D は、電場 E と分極ベクトル P を用いて

D(⃗ x) := ϵ 0 E(⃗ x) + P(⃗ x) (3.28) で定義される補助的な場であり、 「電束密度」あるいは「電気変位」と呼ばれるベクトル場である。

しばしば、式 (3.27) のことは誘電体中のガウスの法則と呼ばれるが、その実態は、通常のガウス

の法則 (3.26) の右辺の一部の項を人間の都合で左辺に移項したものに過ぎない。

(18)

電場 E の存在のもとでの、誘電体中の分子あるいは原子の双極子モーメント p は、一般には複 雑なレスポンスを起こす 1 。しかしながら、これまでに調べられたすべての素粒子と (縮退のない 基底状態の ) 原子において、外部電場がゼロのとき、つまり E = 0 のときの双極子モーメントは

p = 0 であることが知られている。したがって、外部電場 E がゼロのときは、絶縁体の分極ベクト ル P はゼロになることが多い(例外が存在し、強誘電体として知られている)。他方、 E ̸ = 0 のと きには、分極ベクトル P がゼロになる理由はない。電場 E の方向と同一の方向に分極ベクトル P が生じると仮定 2 すると、線形近似の範囲では

P (⃗ x) = χ e E(⃗ x) (3.29)

としてよい。比例定数 χ e は電気感受率 (electric susceptibility) と呼ばれ、物質ごとに異なる係数 である。式 (3.29) を式 (3.28) に代入することで、誘電体における電場 E と電束密度 D の関係

D = ϵ ⃗ E, ϵ = ϵ 0 + χ e (3.30)

が得られる。この式にあらわれる ϵ をその誘電体の誘電率と呼ぶ。

電場 E を表す力線を電気力線と呼ぶのに対し、電束密度 D を表す力線のことは電束線と呼ば れる。

3.4 誘電体境界での E D の接続

(参考書 p93〜)誘電率の異なるふたつの誘電体 A と B が xy 平面(z = 0 面)で接している状

況を考えよう。z > 0 の領域は誘電体 A で、z < 0 の領域は誘電体 B で、それぞれ満たされている ものとする。誘電体 A と誘電体 B の誘電率をそれぞれ ϵ A , ϵ B とし、考えている領域には真電荷は 存在しないものとする。誘電体 A 内(z > 0)の電場を E (A) 、誘電体 B 内(z < 0)の電場を E (B) と置く。したがって、それぞれの誘電体内での電束密度は、 D (A) = ϵ A E (A) , D (B) = ϵ B E (B) であ る。このときの z = 0 面での電場 E と電束密度 D の接続条件を調べてみよう。

電場 E の満たすべき方程式は、

∇ × E = 0, (3.31)

∇ · D = 0, (3.32)

のふたつ。

境界面 z = 0 において式 (3.31) を適用すると、境界面に接する方向成分の電場は A,B で等しい ことがわかる。つまり、接続条件として

E x (A) = E x (B) , E y (A) = E y (B) (3.33) が得られる。他方、 z = 0 において式 (3.32) を適用すると、境界面の垂直方向成分としては、電束 密度の接続条件

D (A) z = D (B) z (3.34)

1量子力学での摂動論計算を行えば、この現象を解析することができる。比較的簡単な例については、倉本・江澤著「量 子力学」(朝倉書店)のシュタルク効果の説明の部分がわかりやすい。量子力学の摂動論計算については、名古屋大学では 量子力学2の講義で取り扱われる。

2 電場

E

の方向とは異なった方向に分極ベクトル

P

が生じる誘電体は多いので、この仮定はあくまでも以下の議論を 簡単にするためものであって、一般的に成り立つわけではない。物理学科の学生は、このような異方性を持つ物質について も、学部の電磁気学の講義で触れることになると思う。

参照

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