様式8の1の2 別紙2
論文審査の結果の要旨
専攻名 システム創成工学専攻 氏 名 奥津 徳也
(1,500字程度とし,1行43文字で記入)
本論文は「産業系用排水からのアシル化ホモセリンラクトン合成細菌の単離および遺伝学的解 析」と題し、産業系用排水の中から、菌体密度の増加に応答して特定の遺伝子発現を制御する Quorum Sensing(QS)機構を有する新規細菌に関する成果をまとめたものである。産業系用排 水においては、微生物の集合体である活性汚泥を用いた排水処理活性の向上が課題となってお り、冷却水系においては、微生物のバイオフィルム形成による配管の詰まりや劣化が問題となっ ているが、これらの微生物機能の多くがQS機構の影響を受けることが明らかになってきた。グ ラム陰性細菌の多くは、QS機構の制御にアシル化ホモセリンラクトン(AHL)をシグナル物質 として用いる。これらの背景を踏まえ、本研究では、産業系用排水からAHL合成細菌を単離す るとともに、AHLの構造解析及びAHL合成に関わる遺伝学的解析を行っている。
本論文は全4章から構成されており、各章の概要は以下の通りである。
第1章では、本研究の背景と目的について述べている。
第2章では、組成の異なる複数の産業系排水処理場から採取した活性汚泥からAHL合成細菌を 単離し、その遺伝学的解析を行った結果について述べている。半導体工場排水処理汚泥からは、
これまでにAHL合成細菌としての報告例がないAlicycliphilus属細菌を複数株単離することに成功 している。さらに、モデル細菌として用いたAlicycliphilus sp. B1株について、次世代シークエン サーを用いた遺伝学的解析を行ったところ、B1株のAHL合成系遺伝子は、他菌種の遺伝子クラ スターがゲノム中に挿入されることで獲得された可能性を示唆している。さらに、LC-MS/MSを 用いた解析により、B1株が生産するAHLの化学構造を明らかにしている。
第3章では、複数の工場冷却水サンプルの中からAHL合成細菌を単離し、その遺伝学的解析を 行っている。AHL合成細菌のスクリーニング結果から、これまでにAHL合成細菌としての報告 例がないLysobacter sp. F13株及びB. massiliensis E9株を用い、次世代シークエンサーを用いた遺伝 学的解析を行ったところ、両菌株のゲノムから既知のAHL合成遺伝子と高い相同性を示す遺伝 子が存在することを明らかにしている。さらに、両菌株が生産するAHLの化学構造をLC-MS/MS を用いて解析し、Lysobacter sp. F13株は2種類のAHLを、B. massiliensis E9株をは3種のAHLを生産 することを明らかにしている。
第4章は、本論文で得た成果を総括して述べている。
本論文については、2016年2月8日に、審査委員及び関連分野の研究者が出席して公聴会が開 催された。論文発表の後、質疑応答が交わされたが、特に問題はないことが確認された。公聴会
終了後ただちに学位審査委員会を開催し、本論文の内容について詳細に検討した。その結果、本 論文は工学的に価値があり、研究内容の学術レベルならびに論文としての独創性及び実用性にお いて優れているとの判断に至った。
よって、本論文は博士(工学)の学位論文に値するものと認める。