原 著 〔甕女嘉i驚6鐸護、翻骨〕.
各種抗菌薬の飽傭。伽6渉θγ”Z碗セこ対する抗菌活性の検討
東京女子医科大学 消化器病センター消化器内科(主任:小幡 裕教授) 同 臨床中央検査部(指導:清水喜八郎教授) ハル キ春 木
コウ スケ宏 介
(受付 平成4年6月16日) Studies o皿Antimicrobial Activity of Antimicrobials agai皿st」磁」5coのαc蝕r”∫oγ’Kosuke HARUKI
Department of Medicine(Director:Prof. Hiroshi OBATA), Institute of Gastroenterology, Department of Central Cl圭nical Laboratory(Director:Prof. Kihachiro SHIMIZU), Tokyo Women’s Medical Co董1ege Antimicrobial activities of ant童microbials against飽〃60δα6‘θγ1妙Jo7げ(」砿ρyJo7のwere studied on minimal inhibitory concentration(MIC), time kill curve and postantibiotic effect(PAE), The MICs of 7 antimicrobials and l anti−ulcer drug against clinical isolates of E勿Jo7∫were determined by agar dilution method. The effect of antimicrobials on l砿」妙107ゴstrain ATCC 43629 was determined by time kill curve. PAE was measured after l hour exposure to antimicrobials。 MIC 50s were as follows: ampicillin O.2μg/ml, ofloxac重n O.8μg/m1, cef孟xime O.4μg/m1, erythromycin O.2μg/mi, azithromycin O.2μg/m1, clarithromyc孟n O.013μg/ml, and roxithromycin O.1μg/mL Ampicil蓋in was the most effective antimicrobials on the time kill curve. Ofloxacin showed about 16 hours PAE with l MIC for l hour exposure. To establish the therapy of且ρylo7ゴ, further study must be needed about dosage regimen and combination. 緒 言 肋傭0ろα漉7ρ蜘万(以下H勿ゐ7のは胃十二 指腸疾患との関連において重要視されつつあるグ ラム陰性螺旋状桿菌である.すでに1896年に胃粘 膜における螺旋状桿菌に関しては報告があった が1)2),病態との関連は不明であった.1983年,オーストラリアのWarrennとMarshallによって
unidenti丘ed curved bacilliとして初めて報告さ れ3),胃十二指腸潰瘍とりわけ十二指腸潰瘍患者 から高率に検出されることからこれらとの関連が 検討された4).近年,慢性萎縮性胃炎,胃癌との関連を示唆する報告が相次ぎ注目を集めてい
る5)6).一方,抗菌薬による除菌の試みがなされ, 難治性胃十二指腸潰瘍の寛解および再発予防に効 果をもたらしているとの報告もある7)∼9).しかし ながら薬剤投与中止による菌の再増殖,潰瘍め再 発が観察され,薬剤の選択,投与法,:量,期間,副作用などの問題が提起されるようになっ
た10)11).本論文ではH勿‘0万に対する各種薬剤の 抗菌活性に関しminimal inhibitory concentra− tion(以下MIC), time kill curveおよびpos− tantibiotic effect(以下PAE)を検討し,その成 績から投与薬剤の選択,投与方法に関して基礎的 に検討を行い若干の知見を得たので報告する. 材料および方法 .1.MIC測定 Eρ吻万標準株ATCC 43629,および臨床分離 Eρヅ♂oガ40株に対するMICを寒天平板希釈法にて測定した.10%馬脱繊維血液(Nippon Biotest Laboratory Inc.),各種抗菌薬を添加したbrain heart infusion agarに菌液106CFU/mlをmulti・ planterにて接種後,72時間培養した.
抗菌薬としては以下のものを使用した.
ampicillin sodium(明治製菓), oHoxacin(第一 製品),ce丘xime(藤沢薬品), erythromycin(大 日本製薬),azithromycin(ファイザー製薬), clar− ithromycin(大正製薬), roxithromycin(エーザ イ),plaunotol(plaunoi抽出精製油,三共) 2.Time kill curve Eρ:y♂07’ATCC 43629を5%馬血清(Gibco) 添加brain heart infusion brothにて10%CO2存: 在のもと遠心沈澱管(Pyrexネジ付,』丸心50ml, Iwaki Glass Co. Ltd.)にて48時間振盗前培養 (Water Bath Shaker PERSONAL 11, Level Keeper UB2, TAITEC Co. Ltd.)した後,薬剤 (ampicillin, o且oxacin, cefixime, erythromycin, azithromycin, plaunotol)をそれぞれ1,2,4MIC となるように添加し,さらに48時間振盗培養した. 薬剤添加後0,6,12,24,48時間にサンプルを 採取して10倍希釈系列を作製し,5%馬血清,20 mg/12,3,5・triphenyl tetrazolium chrolide (Merck)添加brain heart infusion agarにコン ラージにて100μ1ずつ塗布し72時間培養後に生菌 数を測定した. 3.PAEI2) 48時間振温品培養した且必2Zb万ATCC 43629 に薬剤(ampicillin, oHoxacin, erythromycin, clarithromycin, azithromycin)を各濃度が1,2MICとなるように添加し1時間接触後,遠心
(1,800G,10分)にて薬剤を除去,新鮮5%馬血清 添加brain heart infusion brothを加え振回培養 した.10時間毎にサンプルを採取,tryphenyl tetr− azolium chrolide添加培地で72時間培養して生菌 数を測定し,以下に示すごとく計算しPAEを求 めた. PAE(hrs)=T−C T:薬剤を加えた菌が薬剤除去後,110g増殖す る時間 C:コントロールの菌が遠心後110g増殖する時 問 培養にはいずれもGas Pak System(BBL), CampyloPack(三菱ガス化学)を用い,ガスは CO210%,02.5%,.N285%混合を使用した. 結 果1.MICの検討
各種抗菌薬のH勿Zo7’に対するMICは図1,
2で示したようにampicillinでは0.025∼1.56 μg/mlに分布し, MIC 50は0.2μg/ml, MIC 90は 0.8μg/mlであった. onoxacinでは0.4∼3.125μg/mlに分布し, MIC 50は0.8μg/ml, MIC 90は3.125μg/mlで ・あった. cefiximeでは0.05∼1.56μg/mlに分布し, MIC 100. 80 .雲・・ 草 書、。 δ 20 0 +Ampicillin 一一Z一一〇floxacln 十 Cefixime +Plaunotol 0,003 0.OO50.01250、025 0.050 0.¶00 0.200 0.400 D.8DO 1.5δ0 3.1256.250霊2.500 Concentration μ9/ml 図1 MIC distribution of antimicrobials and plaunotol against・磁1」606α(7’θγρ=yJo7ゴ (Clinically isolated strains n=40) 100 80 婁60 至 霧40 δ 20 0 一つ一Erythromycin 十Azithromycin 一{卜一Clarithromycin 十Roxithromycin 0.006 0.013 0.025 0.05 0,1 0.2 0.4 0,8 Concentrationμ9/mI 図2 MIC distribution of macrolides against .・磁」ガ60ゐα6花γρツ♂07ゴ(Clinically isolated strains n= 35)50は0.4μ9/ml, MIC 90は0.8μ9/lnlであった. erythromycinでは0.1∼0.8μg/m1に分布し MIC 50に0.2μg/m1, MIC 90は0.8μg/mlであっ た. azithromycinでは0.1∼0.8μg/mlに分布し MIC 50は0.2μg/ml, MIC 90は0.8μg/mlであっ た. clarlthromycinでは0.013∼0.8μg/mlに分布 しMIC 50は0.013μg/ml, MIC 90は0.5μg/mlで あった. roxithromycin’では0.5∼0.8μg/mlに分布し MIC 50は0.1μg/ml, MIC 90は0.2μg/mlであっ た. plaunotolでは1.56∼6.25μg/mlに分布し MIC 50,90ともに6.25μg/mlであった. MIC 50の結果からはclarithromycin, roxith・ romycin, ampicillinの順に優れていた. 2.Time kill curveの検討 Time kill curveはampicillin 1/2MICにおい て12時間では110gの生菌数減少を認めたが24,48 時間では変化がみられなかった.1MICにおいて は12時間で1.510gの生菌数減少を認めたが,24, 48時間では変化がみられなかった.また2,4MIC において12時間ではそれぞれ2,310gの減少で あったが24,48時間では生菌数はほぼ変化しな かった.ampicillinは12時間までに殺菌的に作用 するものの24時間以降では各濃度とも生菌数に変 化は少なくしかも48時間では1/2,1,2MIC間にお いて生菌数に差は見られなかった(図3). ofioxacinでは1MIC 12時間では生菌数は約1 10g減少したが24時間では12時間値より約!10g増 加し,48時間もほぼ同様の生菌数を示した.2MIC では12時問で約110gの生菌数の減少を認めたが その後24,48時間では生菌数に変化はみられな かった.4MICでは生菌数は12時間では110g減少 し,24時間では410g以上の減少が認められ,検出 限界の210g以下となった(図4). ce丘ximeでは1MICにおいて12,24,48時間とほ ぼコントロールと同様の菌の増殖が観察され殺菌 効果は認められなかった.2MICでは12時間にお いて110gの減少であったが,その後24,48時間で は生菌数変化を認めなかった.4MICでは12時間 で310gの減少を認め,以降24時間では変化はな かったものの48時間では検出限界以下となった (図5). 8 6 華 卍 巳 ヨ4 2 一一ツ一一ControI 一一ュ)『一一 〇floxacin l MIC 一≒国一一 〇刊oxacin 2 MIC →一 〇刊oxacin 4 MIC lMIC協O,8μ9〆mI 0 6 12 18 24 30 36 哩2 48 ’「ime(hours) 図4 Time kill curve of ofloxacin against 飽1ガ60ゐαo’召7血yJoゴ4 ATCC 43629 8 7
套6
記巳5
24
3 2 一一怦鼈黶@ControI HンーAmpicillin 1/2 MIC →一Amplcil瞳n l MIC +Ampic薩【in 2 M[C →一一Ampic薩畦n 4 MIC l M5C =0.σ5ρμ9/π7, 0 6 12 18 24 30 36 42 48 Time(hours> 8 葦6 己 葛 ヨ4 2 一Control +Cefixime l MIC 一唱一一一Cefixirne 2 MIC +Cefixime 4剛C l MIC=0.4μ9/mI 図3 Time kill curve of ampicillin against 飽1ガ60伽6’6γρッJo短ATCC 43629 0 6 12 18 24 30 36 42 48 Time(hours) 図5 Time kill curve of cefixime against 飽1ゴ60∂α6彪7ρッ10γガATCC 436298 華6 記 葛 ヨ4 2 一一怦黷bontroI }Erythromycin l MIC +Erythromycin 2 MIC 一☆一Erythromycln 4 MIC l M「C罵O,2μ91m圏 0 6 12 18 24 30 36 42 48 Time(hours) 図6 Time kill curve of erythromycin against 飾1ゴooろαo≠67ρヅ。ゴゴATCC 43629 8 6 三 卍 葛
24
2 一一怦鼈黶@Control + Plaunotol,MIC †一 Plaunotol 2 MIC 十 Piaunotol 4 MIC lMIC旨3.125μ9/ml 0 6 12 18 24 30 36 42 48 ↑ime(hours) 図8Time kill curve of plaunotol against 旋」∫60ゐα6彪7勿Jo7づATCC 43629 8 亘6 召 出 ヨ4 2 一一怦黷bontroI +AzithromycinてMIC 十Azithromycin 2 MIC 一一「一一Azithromycin 4 MIC l MIC=O.2μg/mI 10 8 垂 卍96
3 4 2 Removal of drug ↓ 十 Control + Ofloxacin l MIC 十 〇floxacin 2 MIC l MIC=O,8μ9!mI 0 6 12 18 24 30 36 42 48 Time(hours) 図7 Time k三ll curve of azithromycin against 施」∫60ゐαo’θγヵyJoガATCC 43629 一10 0 10 20 30 40 50 Time(hours) 図9 Postantibiotic effect of onoxacin against H薦60加吻7ゑyJo万ATCC 43629 macrolideのerythromycinは1MIC 12時間で は生菌数に変化なく,24時間で約0.510g,48時間で 約110gの減少が認められた.2MIC 12時間では1 10g,24時間では2.510g生菌数の減少を認め,48時 間では検出限界以下となった.4MIC 12時間では 310gの生菌数減少を認め,24時間で検出限界以下 となった(図6). azalideのazithromycinでは1MIC 12時間にお いて約0.510g,24時間では110g,48時間では310g の生菌数減少を認めた.2MICでは12時間で2。5 10gの生菌数減少を認めたが24時間では12時間と 変化なく,48時間では検出限界以下となった.4 MIC 12時間では2.510g,24時間では510g以上の生 菌数減少を認めた. azithromycinはerythromycinとほぼ同様の・ 殺菌傾向を認めた(図7). 抗潰瘍薬であるplaunotolは1MICでは各時間 で生菌数に変化なくコントロールと同様の変化が みられた.2MICでは12時閾で約0.510g,24時間ま でに110gの減少を認め,48時間では24時間とほぼ 同様の生菌数であった.4MICでは12時間で310g, 24時間では410g以上の生菌数減少を認めた(図 8). 以上よりtime kill curveにおいてはampicil− linを除く他薬剤では,1MICにおいての・殺菌力は 弱く24時間には再増殖が観察されたが,ampici1・ linでは24,48時間で再増殖は認められなかった. 各薬剤とも4MICでは24時間から48時間で生菌数 は210g以下となったが, ampicillinでは310g以下 には減少しなかった.ampicillinは他薬剤に比べ 濃度による殺菌力の変化が少なく低濃度でもある 程度の殺菌効果が認められた.macrolide, azalide は1,2MICでは時間経過とともに生菌数が減少す る傾向があった.3.PAEの検討
亙ρッ‘oかに対する各薬剤のPAEは各薬剤
1MIC,2MIC,4MICの濃度で1時間接触させ観察 した.その結果ampicillin, erythromycin, clarith− romycin, azithromycinではPAEは認め・られな かった.oHoxacinについては1回目C,1時間接触 後のPAEは約16時間であった. oHoxacin 2MIC 1時間接触では観察時三内に再増殖は起こらず, PAEは30時間以上と考えられた(図9). 考 察 1.侃ρy’o〃の細菌学,疫学的特徴 Eρッ‘07∫は1983年にWarennらにより胃,十二 指腸潰瘍との関連が指摘された細菌である3).当 初,形態や発育条件からCα〃zρッJo∂α6’θ7属に分類 されたが,1987年にGCコンテント等から新しく 三山0加6孟67属として分類された13).Eρ蜘万は 形態的にはグラム陰性の螺旋回短桿菌で数本の鞭 毛を一極に有しており,生化学的性質としては強 いウレアーゼ活性がその特徴である.微好気下で 血液寒天培地に48時間から96時間かけて緩徐に発 育し透明平滑なドーみ型のコロニーを形成する. この菌は自然環境ではまだ発見されておらず,生 理食塩水中では約6時間で死滅し牛乳中では24時 間生存するという報告がある14).本菌は水を介し たり15),内視鏡などを介して16)経口感染する17)と いう報告がなされているが,明らかな感染経路は 不明である.胃では幽門腺領域の非萎縮域に多く 存在し腸上皮化生からは検出されない18).胃以外 では十二指腸の胃粘膜島19)や直腸の異所性胃粘 膜20)から検出されている.胃十二指腸疾患との関 係については様々な報告があるがH:ρ蜘7ゴは十 二指腸潰瘍では90%以上,胃潰瘍では70%以上, また正常人でも40∼50%の胃粘膜より検出され る21).当院での調査では十二指腸潰瘍で100%,胃 潰瘍78%,正常人では約45%から検出されている. その病原性に関しては強いウレアーゼ活性に よって産生されたアンモニアによる細胞障害とガ ストリソ産生過剰による過酸などが考えられてい る22). 2.侃ρylor’の培養法 胃粘膜など生体材料から本菌を検出するために.^添憾
図10 5%馬血清,triphenyl tetrazolium chrolide添 加brain heart infusion agar上でのEρッ‘07’のコ ロニー はvancomycin, trimetoprimを加えた選択培地 としてのSkirrow培地が用いられているが,本実 験では菌量を求める必要がありコロニーカウント を容易にするためbrain heart infusion培地に 5%馬三二化血清と2,3,5−triphenyl tetrazolium chrolideを加えた培地を作製し用いた23)(図10). 本培地は馬血液の代わりに馬血清を用い,培地 自体がやや黄色の透明で,ここにアルカリ性で赤 色に変化するtriphenyl tetrazolium chrolideを 加え,Hρ蜘万の産生するアンモニアで発色した コロニーが観察されるよう考案した.従来より丑 ρ吻ガの培養に用いられている血液寒天培地に比 べ,Hρ吻万の発育に差がなく,コロニーカウン トが容易に行える点で優れていた. 3.侃ρylor’除菌に関する臨床的考察 一方,H:ρ蜘万の発見以来,その治療として除 菌の試みがなされ潰瘍の治癒率,治癒期間,再発 率について効果的であるとの報告がなされてい る7)8).しかし除菌したと思われた症例でもその後 数週聞から数ヵ月の間に菌の再増殖が認められて いる9)10).また薬剤によってはニューキノロン剤の ように除菌傾向の少ない薬剤も存在する11).臨床投与例の中で最も効果があるとされるのが
ampicillinであるが,多くの場合,ビスマス製剤, H2 blockerの併用が行われており抗菌剤単独治 療の例は少ない.これらのことはHρッ1碗を完 全に除菌することの難しさを示している.本菌の 除菌のための薬剤選択は今後の重要課題である.4.凡ρy’o〃に対する抗菌薬のin vitroでの効 果および胃粘膜濃度 薬剤選択の一つのてがかりとして,πρ吻7脅こ 対する抗菌薬のMICと殺菌効果, postantibiotic effectについて検討を行った. MICでは, clarith・
romycinが最:も優れ,ついでampicillin,
cefixime, roxithromycin, erythromycin, azith・ romycin, ofloxacinそしてplaunotolの順であっ た.今回のMICの成績は従来報告されている諸 家の成績と比較してほぼ同じであった24)25》.各種 抗菌薬のHρ蜘かに対する殺菌性を標準株であ るHj鰯。露ATCC 43629を用いてampicillin, oHoxacin, ce且xime, erythromycin, azithromycin およびplaunotolについて検討した.1MICでは 24時間までにampicillinが最も殺菌性が強いが, 48時間まで観察した場合,24時間以降ampicillin の殺菌がほぼ横ばいであるのに対し,eryth・ romycin, azithromycinでは時間経過とともに生 菌数の減少が認められた.またoHoxacinでは一 過性に生菌数減少を認めたものの,24時間以降菌 の再増殖が観察された(図3∼8).しかしながら 濃度を増した場合ampicillinでは殺菌性が24時 間以降頭打ちになるのに対して,他薬剤では殺菌 性に濃度依存性の傾向が認められた.このことは これら薬剤の胃粘膜内濃度が高ければ,有効に作 用する可能性があり,臨床的に効果があるといわ れるampicillinに比べ,より殺菌的に働く可能性 を示唆した.しかし低濃度でも殺菌効果の存在す るampicillinに対し他薬剤の低濃度殺菌力が劣 ることは胃粘膜濃度との兼合いで考える必要があ る.抗菌薬の胃粘膜濃度に関してはMcNultyら はerythromycin, amoxycillin, pivamp量cillin, およびciproHoxacin各500mg経口投与後の胃粘 膜濃:度を薬剤投与後30分から480分で内視鏡によ る生検を行い,HPLCで測定した.そしてeryth− romycin<0.7∼40.9mg/kg(n=18),amoxycillin 15∼322mg/kg(n=7), pivampicillin 47.5∼209 mg/kg(n=5), cipronoxacin〈1.5∼1,762mg/kg (n=15)であり幅があるものの胃粘膜濃度はグラ ムあたり約100MICという結果が得られている. また,高濃度であるにもかかわらず臨床効果が得 られない理由としてpHの問題を挙げている26).一方Westblomらは生検材料からの測定ではテ
クニックや組織の量に問題があるとし,モルモットを用いたcefuroximeとdproHoxacinの胃粘
膜濃度測定を試みその結果,cefuroximeで30mg/kgの筋注では1時間でピークを認め,濃度は
2.97±2.28μg/mlでありciprofloxacinの場合, 20mg/kgの筋注でピークは4時間で0.61±0.55 μg/mlであったとしている.この濃度は約1MIC の濃度であった27).さらにHarr量sonらは胃癌の 術前患者22例に経口でazithromycin 500mgを投 与し摘出胃の粘膜および組織濃度を測定してい る.その結果,服用後49∼72時間までの胃粘膜濃 度が0.52μg/mlと最も高く,組織では73∼96時間 で4.61μg/mlと最も高かった.この濃度は約1∼2 MICと一致する28).またVeldhuyzen van Zanten らはH:ρッJoガ陰性のヒト胃液中のampici1董in, erythromycin, metronidazole濃:度をそれぞれ 500mg静注したのち測定している.結果はeryth− romycin投与後30∼80分で2.2∼4.8μg/ml, metronidazole投与後30分で5∼6μg/mlであっ た.またampicillinは胃液からは検出されなかっ た29).これらの報告から考えると胃粘膜の抗菌薬濃度はMcNultyを除いてほぼ1∼10MICの間に
あることが推測される. 5.胃酸による影響 この他重要な因子として胃酸の影響について考 える必要がある.通常抗菌薬の至適pHはpenicil− lin, cephalosporinで約6.8, macrolide系の erythromycinで約7.8といわれている. eryth− romycinはアルカリ性でその抗菌力が増加する. 酸性条件下での抗菌薬の抗菌力は低下することが 知られており30},Eρ吻かに関しても同様と思われる.McNultyらによれぽE勿Zo万に対する抗
菌力はpH 7.5におけるampicillinのMIC 90は 0.06であるが,pH 5.5では0.5と低下する. eryth・ romycinは0.06から8へ約130倍, cipro且oxacin は0.12から2へ約15倍低下する. 6.κρy’or’に対する理想的抗菌薬 以上,胃粘膜濃度,pHの影響を含めて考えた場 合,理想的抗菌薬は以下のものが望まれる.①H勿Zoγ’に対するMICが低い,②殺菌性に 働く,③胃粘膜への移行がよくMIC以上の濃度 が長時間持続する,④酸に対して安定である. ここで検討した抗菌薬のうちMICについては clarithromycin, ampicillinが優れている.し.かし ce丘xime, erythromycin, azithromycin, roxith− romycinでもMIC 90は1μg/ml以下であった.殺 菌性に関してはampicillinは濃度による差は比 較的少なかったが,他薬剤は濃度の増加により殺 菌性が増強された.また胃という特殊条件下では
他に比べ比較的低いpHでampicillinは効果を
示す.従って胃粘膜の薬剤濃度を考えた場合,低 濃度でも抗菌作用のあるalnpicillinが第一選択 となると考えられる.またerythromycin, azith− romycinでは長時間接触させることにより抗菌 作用が増加するので胃粘膜濃度が1∼2MICに達 し半減期の長いazithromycinは今後注目すべき 薬剤の一つであるかもしれない.またHρyJo万 除菌にあたりH2 brockerとの併用は胃内pHを 上昇させ抗菌活性不活化を抑える意味で必要であ るかも知れない.PAEについての検討は未だみら れていないが,今回の検討では。伽xacinにのみ 認められた.PAEは抗菌剤を除去し,その直接の 影響を除いたあと菌の再増殖が抑制される現象 で,抗菌薬の投与間隔,投与法,投与量など投与 計画のうえに重要な意義をもつものである. 7.まとめ H勿痴万除菌における薬剤投与法は確立され. ておらず,現在様々な薬剤を様々な組合せで,し かも様々な期間で投与されているが,キノロン系 薬剤がE勿♂o万に対してPAEを持つことは,胃 粘膜濃度との兼合いで投与量,投与間隔決定のた め重要なパラメーターとなるものと思われる.潰 瘍患者でE勿Zo万が検出されている患者に抗菌 薬を投与した報告は多いが,抗菌薬のπ」妙の万 に対する抗菌活性ならびに投与計画の検討は少な く,今後多くの検討が望まれる.Eρ蜘万の.胃十 二指腸疾患との関連,とりわけ癌の発生との問題 も論議されており,今後H:必伽ゴ除菌方法の確 立にはPAEおよび他の抗菌薬との併用を含めて の投与法の検討が必要であると思われた. 稿を終わるにあたり,御校閲を賜りました東京女子 医科大学消化器内科小幡 裕教授,御指導を賜りまし た臨床中央検査部清水喜八郎教授に深謝致します.ま た内視鏡検査につき御指導頂いた消化器内科黒川き みえ名誉教授,消化器内視鏡科鈴木 茂教授に感謝い たします.その此前協力いただいた中央検査部の諸先 生方に心より感謝いたします. 文 献 1)Salomon H:Ueber das Spirillum des Saugetiermagens und sein Verhalten zu den Belegzellen, Centralbl Bakt 19:433−443,1896 2)Krin辻z W;Ueber das Auftreten von Spiro。 chaten verschiedener Form im Mageninhalt bei Carcinolna ventriculi. Dtsch Med Wochenschr 22:872, 1906 3)Warren JR, Marshall B:Unidenti丘ed curved bacilli on gastric epithelium in active chronic gastritis. Lancet i:1273−1275, 1983 4)Gr曲am DY:(弛溺ρッ‘06σ6ま召γ1ワ♂oガand peptic ulcer disease. Gastroenterology 96:615−625,、 1989 5)多田正弘,重枝正樹,村上敦司ほか:胃炎におけ る0α翅砂10加。孟θγ砂Jo万の意義. Ther Res 10: 1468−1477, 1989 6)Fox JG, Correa P, Taylor NS;C㍑賜勿/Jo∂ασ彪γ ρylo7’・associated gastritis and immune response in a population at increased risk of gastric carcinoma. Am J Gastroenterol 84: 775−781, 1989 7)Rauws EAJ, Langenberg W, Houtho貸HJ: Oz〃吻∼∼∂翫z6彪プ〃γ♂07ゴ・associated chronic active antral gastritis. Gastroenterology 94:33−40, 1988 8)Rauws EAJ, Tytgat GN:Cure of duodenal ulcer associated with eradication of 漉8げ60ゐαc‘θγ≠りJo万. Lancet 335:1233−1235,1990 9)Glupczynski Y, Bロrette A, L3bbe M: Cα辮砂♂oゐα6’θアρ夕10ガ・associated gastritis:A double−bl董nd placebo・controlled trial with amやycillin. Am J Gastroenterol 183:365−372, 1988 10)MarshaH BJ, Goodwin CS, Warren JR:Pro− spective double・b】三nd tr三a董10f duodena玉 ulcer re至apse after eradication of Cα吻ツZoゐα6’θγ ρッ♂07ガ,Lancet ii:1437−1442,1988 11)Ghlpczynski Y, Labbe M, Burette A:Treat. ment failure of ofloxacin in (h吻ρyloろα6’6γ ρッJo7ゼinfection. Lancet i:1096, 1987 12)Craig WA, Gudmundsso皿Sl Postantibiotic e仔ect.1ηAntibiotics in Laboratory MedicineChapter 12, 3ed, pp403-423, Williams and kins, Baltimore (1991)
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