<翻訳>「クエーカー雇用主と労使関係」ジョン・チ
ャイルド著
著者
幸田 浩文, Child John
著者別名
Kohda Hirofumi
雑誌名
経営論集
巻
45
ページ
115-136
発行年
1997-03-25
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005650/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja経営論集 第45号(1997 年3 月)
(翻 訳)
リ ョン・チ ャイルド著 「クエ ーカ ー雇用主 と労使関 係」
幸田 浩文 訳 115 は し が き 本 資 料 は 、 わ が 国 経 営 学 界 に お い て イ ギ リ ス 経 営 管 理 思 想 研 究 者 な ら び に 状 況 適 合 理 論 (conti-ngencytheory ) の 批 判 者 と し て知 ら れ る リ ョ ン ・ チ ャ イソレド (Child,John ) 教 授1づ 当 時 、 ケ ン ブ リ ッ ジ 大 学 在 学 中 ) が1964 年 に ソ シ オ ロ ジ カ ル ・ レ ビ ュ ー 誌 (Sociol)gicalReview ) に 掲 載 し た 「 ク エ ー カ ー 雇 用 主 と 労 使 関 係」('EmployersandIndustrialRelations') を 、訳 出 し た も の で あ る2)。 組 織 行 動 の 比 較 分 析 研 究 と し て 有 名 な ア ス ト ン 研 究(theAstonStudies ) の 流 れ を 汲 む リ ョ ン ・ チ ャ イ ル ド は 、1969 年 の 著 書 寸イ ギ リ ス 経 営 管 理 思 想 』( 邦 訳 名『 経 営 管 理 思 想 』)3)の 中 で 、イ ギ リ ス 経 営 管 理 思 想 の 発 展 過 程 を 、 ①第 一 次 世 界 大 戦 ま で の「 揺 藍 期 」、② 戦 間 期 を 含 む1920 年 代 初 頭 ま で の 「 台 頭 期 」、 ③ 両 大 戦 間 期 の [ 整 理 統 合 期 ]、 そ し て ④ 第 二 次 世 界 大 戦 期 と そ れ 以 降 の [緊 迫 の 時 代 ] の4 つ に 時 代 を 区 分 し 整 理 し て い る 。 と くに ① の 「揺 藍 期 」 で は 、1840 年 代 に み ら れ る よ う に な っ た 温 情 主 義 (paternalism ) に 基 づ き 従 業 員 福 祉 活 動 を 展 開 す る 企 業 家 た ち が 、 イ ギ リ ス 経 営 管 理 思 想 に 与 え た 影 響 の 重 要 性 が強 調 さ れ て い る3)。 か れ ら は 、 神 か ら 企 業 を 信 託 さ れ た と す る ク エ ー カ ー 教 徒 (Quaker )^)の 雇 用 主 (employer ) た ち で あ り 、当 時 の 労 使 関 係 や 労 務 管 理 か ら 生 じ る 産 業 問 題 を 解 決 す る た め に さ まざ ま な 新 し い 方 策 を 案 出 し 、 そ の 実 践 を 試 み た 。 ク エ ー カ ー雇 用 主 は 、 自 ら の 管 理 活 動 な ら び に 報 告 や 著 作 物 な ど を 通 じ て 、 初 期 の イ ギ リ ス の マ ネ ジ メ ン ト 運 動 や 管 理 思 想 に 多 大 な 影 響 を 及 ぼ し た の で あ る 。 わ れ わ れ が こ こ に チ ャイ ル ド の 本 論 文 を 訳 出 す る 意 義 は 、 彼 自 身 が 述 べ て い る よ うに 、 本 論 文 で は 、 ク エ ー カ ー 雇 用 主 が 宗 教 上 の 立 場 と 実 業 家 と し て の 立 場 の 違 い か ら 生 じ る 矛 盾 を 抱 え な が ら 、 経 営 を 実 践 す る 際 の 、 と く に 労 使 関 係 と 労 務 管 理 問 題 に 取 り 組 む 際 の 態 度 が 手 際 よ く 整 理 さ れ て い る と 考 え る か ら で あ る5)。 ま た 、 わ れ わ れ が 興 味 を 抱 く イ ギ リ ス 経 営 学 の 史 的 展 開 に お い て 、「 不 毛 期 」6)と さ れ る20 世 紀 初 頭 で の クエ ー カ ー雇 用 主 な ら び に そ の 団 体 が 、 イ ギ リ ス 管 理 思 想 に 及 ぼ し た 影 響 の 一 端 を 明ら か に し て く れ る 有 益 な 文 献 資 料 と 考 え る か ら で あ る 。116 経 営 論 集 第45 号 (1997 年3 月 ) 〈 注 〉1 ) チ ャ イ ル ド 教 授 の 略 歴 は 、 次 の 通 り で あ る 。 「 ア ス ト ン ・ グ ル ー プ の 第三 世 代 の 一 員 で あ る チ ャ イ ル ド (1940- ) は 、 ケ ン ブ リ ッ ジ 大 学 を 卒 業 (1965 ) 後p ―ル スP イ ス社 に 入 社 (1965-1966 )、 そ の後1967 年 に ケ ン ブ リ ッ ジ 大 学 で博 士 号 を 取 得 し て 、 ア ス ト ソ大 学 、 ロ ン ド ン 大 学 経 営 大 学 院 、 ブ リ ュ ッ セ ル の ヨ ー ロ ッ パ 高 等 経 営 研 究 所 を 経 て 、1973 年 よ り ア ス ト ソ大 学 組 織 行 動 論 教 授 を 勤 め て い る 。」 岸 田 民 樹 「イ ギ リ ス に お け る 経 営 思 想 の 展 開 」( 第5 章 )『 現 代 の 経 営 思 想 』( 矢 島 基 臣 他 ) 春 秋 社 、1987 年 、192 頁 。 な お 、 本 資 料 の 訳 出に 際 し て 、 イ ギ リ ス ・ ア ス ト ン大 学 の チ ャ イ ル ド 教 授 に そ の 許 可 を 求 め た 。2)Child,J 。“QuakerEmployersandIndustrialRelation ぐSociologicalReview,Vol.12,No.3,1964,pp.293-315.3 )Child,J.,BritishManagementThought,GeorgeAllen &UnuwinLtd.,1969. 『経 営 管 理 思 想 』( 斎 藤 毅 憲 ・ 高 渫 十 四 久 ・ 岡 田 和 秀 訳 ) 文 具 堂 、1982 年 。4 ) ク エ ー カ ー教 徒 と は 、1650 年 に ジ ョ ー ジ ・ フ ォ ッ ク ス(Fox,George )が 創 設 し た キ リ ス} ■教 の 一 派 で あ る フ レ ン ド 会 (theSocietyofFriends) の 会 員 で あ るレ 他 の宗 派 の 人 び と が ク エ ーカ ー と 呼 ぶ の で あ っ て 、 彼 ら は 自 ら を フ レ ン ド と称 し て い る 。 宗 教 儀 式 を 否 定 し 絶 対 平 和 主 義 を 唱 え て い る 。 具 体 的 に は 、 他 人 を 犠 牲 に し て の 搾 取 と利 益 を 嫌 い 、 人 の た め に あ ら ゆ る 奉 仕 を し 、 平 等 主 義 と 民 主 主 義 を 守 り、 人 び と の 間 の 争 い を 憎む も ので あ る 。 な お 、 英 国 の ク エ ー カ ー 教 徒 の 経 済 活 動 に つ い て は 、 次 の文 献 が 詳 し い 。 山 本 通 「20 世 紀 前 半 英 国 の ク ェ イ カ ー実 業 家 た ち の 経 営 理 念 」『 商 経 論 叢 』 第28 巻 、 第1 号 、 神 奈 川 大 学 経 済 学 会 、1992 年 、45-75 頁 。 ; 「英 国 クェ イ カ ー 派 の 職業 倫 理 と 経 済 生 活 」『 商 経 論 叢 』 第30 巻 、 第2 号 、 神 奈 川 大 学 経 済 学 会 、1994 年 、73-85 頁 。5 )Child,op.cit.,1964,p.293. \ \6 ) イ ギ リ ス の経 営 管 理 研 究 に お い て 、20 世 紀 初 頭 は 、 文 献 史 上 の 「不 毛 期 」 あ る い は 「不 毛 の 時 代 」 と 呼 ば れ て い る 。 そ の 背 景 ・ 理 由 に つ い て は 、 以 下 の 拙 稿 に 詳 し い 。 幸 田 浩 文 「 イ ギ リ ス 経 営 管 理 研 究 の 不 毛 期 に み る 社 会 経 済 環 境 −1830 年 代 か ら 第 一 次 世 界 大 戦 ま で ー 」『 経 営 研 究 所 論 集 』東 洋 大 学 経 営 研 究 所 、第20 号 、1997 年 、17-39 頁 。
ジ ョソ ・ チ ャイ ル ド 著 「 クエ ー カ ー雇 用 主 と 労 使 関 係 」 ク ェ ニ カ ー 雇 用 主 と 労 使 関 係 * ジョソ・チ ャイルド(JohnChild ) 117 * 本 稿 に 対 し て 批 評 と検 討 を 加え て 下 さ っ た、 ケ ンブ リ ッ ジ 大 学 キ ソ ダ ズ ・ カ レ ッ ジ (King'sCollege,Cambridge ) のリa ン・H ・ ゴ ールド ソ ープ(JohnH.Goldthorpe ) 氏 には、 たい へ ん感謝し てい る。 本稿 では 、 今世紀 に おけ る クエ ーカ ー雇 用主(Quakeremployers ) の労 使関 係 と労務 管 理に 対 す る 姿勢 を 検 証 する こ とにし たいl。 また長 きに わ た り、多 少 とも 夕子− カ ー雇用主 が経 験し て き た、 宗 教的 教義 と職 業的 立 場 と の違い につ い て考 察 す るこ とに し たい 。彼 ら は、 信 教と 実践 を 両立 さ せ よ うとし て、 さまざ ま な産 業 問題 を 解決 す るた め の新し い 方 策を 成文 化し た ( これ につ い ては 後述 す る)。 また そ うす る こ とで、 イギ リス の管理 思 想全 体 の発 展 に多 大 な影 響を 及 ぼし た。 こ うした こ とは、 た ぶ んに クエ ーカ ー雇用 主 の意 見 がい ま よ り広 く記録 さ れ、 かつ 当 時そ れほ ど 成 熟 し てい な か った と はい え、 クエ ―カ ー雇 用主 のイ ギ リス管 理 思想 へ の影響 が最 も著 しか っ た第 二 次 大戦 以 前 の時 代を 分析 するご とで 明ら か とな ろ ‰ ま た、1945年 以後 の クエ ー カ ー雇用 主 の態 度 に 関 する 別 の結 論 も 検証 するこ とに した い。 最後 に 、 本稿 で は長 年 に わたって クエ ーカ ー雇 用主 が 公表 し て きた さまざ まな 意見を 取 り上 げ る こ とに す る2 こ うした 意 見は、例 に よって 一般 論 とし て 述 べら れ てお り、場 合 に よっ ては 雇 用主 全 体 とい う より も特定 の雇用 主 の見解を 反 映し た も ので あ った3 本 稿 は 、こ の よ うに短 く説 明的 な論 稿 であ り、再 考を 免 れな い とい う限界 はあ る が、( 本 テ ーマに 関し て の 一訳 者) 最 初 の試 み であ る と考 え る。 フ レ ン ド 会 (theSocietyofFriends ): そ の 概 要 と 産 業 問 題 クエ ー カ ー雇用 主 が産 業 管理(industrialmanagement )につ い て の新 しい 考 え方 を論 議 し、成 文 化 す る上 で 、 他 のフ レ ンド会 信者 たち の産業 なら びに 社 会 問題 に対 す る見 解 は、 かな りの影 響力 を もって い た。 クエ ーカ ー教徒 の社会 問題 や 社 会 関 係 に つ い て の最 大 の 関 心 は 、「 キ リ ス ト の 光 」 (LightofChrist ) が、す なわ ちジ ョ ージ・ フ ォッ クス(GeorgeFox) の言葉 を 借 りれば 、[す べ て の人 び と の 内な る神 の光] が、個人 は もと よりす べて の人 び とに与 え られ る だろ うか とい うこ とに あ る。し た が って 、各人 は 個人 とし て個別 の権利 (interest)を もつ とと もに、互い に 同等 の 権利 を もっ て い る。 クエ ーカ ー教徒 として 宗 教生活 を お く るす べて の 男女 には 、つ ねに平 等 な地 位 が与 え られ て お り、 クエ ー カ ー教徒 の礼拝 会で は、 そ の場 に居 合わ せ たす べて の人 び とか ら の寄 付金 の額
118 経 営 論 集 第45 号 (1997 年3 月 ) も平 等に 割 り当て ら れてい る。 こ うした ( クエ ーカ ー教 徒 の) 個人 へ の配慮 は、 平 和 主義 、 奴隷制 反 対 闘争 、 刑 法 改正 ・一般 教 育・ 産業 福 祉 の 唱導 とい っ たフ レ ソ下 会 の歴史 に残 る 関 心事 に 直接 反 映 さ れ てい る。 こ うした あら ゆ る運 動に お い て、 クエ ーカ ー教 徒 の名声 は群 を抜 い て い た。 彼ら の 関 心 は、 す べ て の人 びとに 、 自ら の心中 に あ る 「光」 を 最大 限に 表 現で き る機 会 が与 え ら れるべ き であ るとい う信 念に 基づ いて いた4. ク 土− カ ー教 徒 の社会 的良 心(socialconscience)に は 、次 の ような 一必ず し もそ れぞ れを 容易 に 区別 で き る とは かぎ らな い が−4 つ の面 があ る。 そ れら は、 こ んに ち でも興 味 を引 く もので あ り、 個 人 の人 格 と密 接に 関連 して い る。(i)他人 を 犠牲 に して の搾 取 と利 益 の嫌 悪、 ㈲勤 勉の 価値 、浪 費 の厳 禁 、慎 み 深い 資産 の構成、そ して 他人 へ の奉 仕 のた め のあ らゆ る 自制を 重 視す る、( 才 能を もつ 者 たち の 責 務 べstewardshipoftalents )」 と い う 伝 統 的 な ピ ュ ーリ タ ン の考 え 方 √ ㈲ 平 等 主 義 (egalitarianism) と民主 主 義的 関 係の 伝 統、 そ して ㈲ 他人 と の争い ご と の 憎 悪。 ク エ ー カ ー教 徒 は、 人 び と がこ の よ うな 世 俗的 な(secular )倫 理 観に 基 づい て 生活 し たな らば 、道徳 に よって 世 の 中 の人 間 や 社会 の紛 争を 一 掃で き る社 会 がや っ て くる か も七 れな い と考え てい た5 崇 高な 目標 が社会 構造 内で対 抗 す る諸力 に 最 終的 に は打 ち勝 つ こ とがで き るか も し れな い と信 じ る、 こ の よ うな 「空想主 義 的 な(Utopian )」6性 向に は、 留 意しな け れば なら な い。 こ うし た傾 向は、 クエ ー カ ー雇用 主 が労 使関 係に つ い て 言及 す る際 よく み られ るこ とで あ り、 クエ ーカ ー教 徒 の改革 運 動を 推 進 す る力 であ った。 結 局 のと ころ 、 クェ ヤカ ー教徒 は、 近 代産 業 界に 彼 ら の倫 理的 基 準を適 用 す る こと は でき なか っ た。 彼 ら の最大 の関心 事 が、 工場 内 で の社 会 関 係の質 で あ り、職 場 の労 働条 件 であ り、 こ うした 労 苦 に 対す る報酬 の分配 で あっ たこ と は驚 くま で もない 。 クエ ーカ ー教徒 の世 俗的 な 倫理 で あ る「搾 取 の嫌 悪」 とい う第1 の教 訓(precept )は 、彼 らに 事 業 で 利益 を 上げ るこ とが 道徳 的に 不 適当 な こ とで あ ると 思 わせ た。 そ れは、 と くに キ リス ト教 の他 の数多 く の教 えに も共 通 じ た懸念 で あ っ たレ クェ ーカ ー教 徒 の利 益 動 機へ の疑 念 は、1914年 直前 の 社会 問 題委 員 会(theCommitteeonSocialQuestions )や 最 近 の「『産 業 界の フ レン ド会 員 』の ため の会 議 」(Conferencesfor'FriendsinIndustry' )で報 告 者 が注 意を 促し た よ うに、今 世 紀を 通 して み る こ とが でき るr `・ さら に クエ ーカ ー教徒 は 、第2 の教 訓 と コ ミュ ニテ ィ の一部 門 であ る事 業 が利 益を 上 げ るた め の 原則 と の違 いを 比較 し、 産 業 が、全 体 とし て社 会に 奉仕 す る 機能 を もたなけ れぼ な ら ない こ とを明 ら かに し た8. 事実 、 他人 へ の奉 仕 のた めに 個 人資 産 を能 率的 に 用い る と い っ た 、 こ の よ うな 格 言(maxim ) は 、い まだに 産業 界につ い て の クエ ーカ ー教 徒 の基 本原 則 であ った し 、 クエ ーカ ー雇用 主 自身 の意 見 の中に 見 え かく れし た。 そ の 教訓 は、1918年 の年次 総 会で 最初に 承 認 さ れた 、有 名な
ジa ソ ・ チ ャ イ ル ド 著 [ クエ ー カ ー雇 用 主 と労 使 関 係 ] 119 T 真 の 社 会 的 秩 序 の 創 設 (FoundationsofaTrueSocialOrder )」 の な か に 手 短 に ま と め ら れ て い る 。 。。 「相 互 奉 仕 が 、 生 活 を 営 む 上 で の 原 則 で な け れ ば な ら な い 。 私 利 私 益 を 捨 て た 奉 仕 こ そ が 、 あ ら ゆ る 仕 事 の 動 機 で な け れ ば な ら な い9 」 職 場 で の 民 主 主 義 の 原 則 は 、レ ス ト リ ッ ク(Raistrick)が17 ∼18 世 紀 の ク エ ー カ ー 産 業 に 関 す る 研 究 の 中 で 述 べ た よ う に 、 クエ ー カ ー 教 徒 に よ っ て 長 い 間 遵 守 さ れ て き た も の で あ る10。 し か し 実 際 に は 、 労 使 関 係 分 野 が と り わけ 混 乱 し た 第 一 次 世 界 大 戦 直 後 、 多 く の クエ ー カ ー教 徒 は 、 労 働 力 へ の 広 範 な 命 令 系 統 や 権 威 を 必 要 と す る 大 規 模 工 場 の 開 発 に よ っ て 悩 ま さ れ た 。1920 年 代 初 期 の ク エ ー カ ー 教 徒 に よ るT 社 会 秩 序」 に 関 す る い く つ か の 会 議 で 、 産 業 民 主 主 義 原 則 の 実 践 が 要 求 さ れ て い る1≒ ま た 同 じ よ うな 要 求は 、よ り近 い と こ ろ で は1945 年 の 年 次 総 会 で 承 認 さ れ た 「社 会 的 言 明 (SocialTestimony) 」 の 中 に さ えこみ る こ と が で き る12 こ うし た 要 求 は 、第 一 次 世 界 大 戦(1914 ∼18 年 ) 直 後 に も っ と も 多 く 、 権 威 主 義 的 に 利 益 を 追 求 す る 資 本 主 義 的 企 業 家 の よ り 古 い 体 制 が 、 利 益 だ け で な く 労 働 者 や 顧 客 の 利 害 を 専 門 的 に 処 理 す る 新 し い 管 理 者 に よ る 「 リ ー ダ ー シ ップ 」 制 度 に 取 っ て 代 わ ら れ る べ き で あ る と い う 見 解 と結 び つ い て い た13. 産 業 内 の い か な る 争 い ご と も 嫌 う と い う クェ ー カ ¬ 教 徒 の4 番 目 の 教 訓 は 、 意 思 決 定 と 専 門 知 識 の 問 題 に 関 し て 、 専 門 的 経 営 と 民 主 主 義 的 労 使 関 係 を 実 践 す る 上 で の 両 者 の 矛 盾 を 覆 い 隠 し て 七 ま う も の で あ っ た14. ク エ ー カ ー 教 徒 は 、産 業 内 で の 「 共 通 意 志 (commonwill )且と い う見 解 を 重 視 し て い た 。 そ れ は 、 仲 間 た ち に 対 す る 各 人 の 「心 的卜 態 度 七 あ る と と も に 、 最 終 的 に は 経 営 者 と 労 働 者 が 協 力 す る と い う信 念 で あ る15. 繰 り 返 し に な る が 、こ ケし た 見 解 は 、 クエ ー カ ー 教 徒 の 思 想 に 十 分 根 差 し た も の で あ る 。 す な わ ち 、 す べ て の 人 び と の 善 性 (goodness) を 十 分 に 表 出 さ せ る こ と が で き れ ば 、 一 人 ひ と り の 「光 」に よ っ て 、 兄 弟 愛 (brotherhood ) や 平 和 に 人 び と を 結 束 さ せ ら れ る か も れ し な い16. 労 働 者 か ら 協 力 的 な 反 応 を 得 る た め の 手 段 は 、 苛 酷 な 権 威 主 義 よ り も む し ろ 個 人 の 思 い や り を 基 礎 に お い た マネ ジ メ ン ト で あ っ た 。
づ 公 正(righteousness )、慈 愛(loving −kindness)、そ し て 信 頼(trust)と い っ た 精 神 力 (spiritualforce ) は 、 す ば ら し い 力 を も っ て い る 。 と い う の は 、 そ れ は す べ て の 人 び と へ の 訴 求 力 を も っ て お り 、 そ れを 労 使 関 係 に 用 い る と 偉 大 な こ と が 成 し 遂 げ ら れ る か ら で あ る17 」 要 す る に 、 タ エ ー カ ー 教 徒 の 目 的 (aim) は 、互 い が 善 意 を も ち 、争 い めな い 状 態 が 適 切 で ふ つ う で あ る 産 業 組 織 べindustrialsystem ) を つ く る こ と で あ っ た 。 彼 ら は 、 自 己 表 現 が で き る 限 り 許 さ れ 、 諸 関 係 が 個 人 の 正 し い 「 精 神」 に よっ て 活 発 化 さ れ 、そ し て 企 業 目 的 (purpose ) が 社 会 全 体 へ の 奉 仕 目 的 (goal) に 向け ら れ て い る 経 営 事 業 体(businessenterprise ) で 、 こ の 目 的 が 達 成 で き る と 考 え て い た 。 こ う七 だ 見 解 は 、 産 業 を 権力 シ ス テ ム ズsystemofpower ) と みな し た り 、 ま た 極 端
120 経 営論集 第45号(1997 年3 月) に、 産 業を 社 会 のた った一 部門 の利 益 のた めに 労 働力 を 統治 す る も の と みな す こ と と は 著 し く 異 な って い る。 クエ ーカ ー教徒 の理 想にし た が えぼ、工 場 内 の権 威 の違 いや 地位 の不平 等 さ は、 地位 が似 通 った 職能 の違 いに 置 き換 わる よ うに な ら なけ れ ばな ら ない。 社会 階級 は、 産業企業 内 の人 々 の 相互 関 係を限 定 する 際に 少し も役に 立 ちそ うに は思 えな い。 実 際、 クエ ーカ ー教 徒 の考え では 、 社会 階 級 とは、 企業 独 自 の役割 や利 害関 係か ら 作 り出さ れた 構造 では なく 、個 人 の 属 性(personalattributes ) の質 の良 否に よって、 産業 内 で の社 会関 係にお い てそ の位置 づ け が な さ れ る も の であ る。 こ うし た個 人活 動 の質 の良否 は、一 定 の倫 理 への 固執 や究 極的 には 心中 の 「光」 の力 から 自律 的 に 生 じ る影 響に左 右 さ れると考 えら れ る。 一 部の 有力 な クエ ーカ ー教徒 が労 働党 に 与し た が、 た い てい の クエ ーカ ー教徒 が支 持する 、 この よ うな 自 由で 個人 主義 的 な労使 関 係につ い て の見方 は、 強 権的 な集 団行 動や 権力や 社 会階 級を 改革 し よ う とする 社 会主義 者 の方 針と 比較 して も まず違 うも ので あ る。多 く の クエ ーカ ー雇用主〔 と くに シ ーボソ・ ロ ウソト'J ー(SeebohmRowntree )〕が社 会主 義を 疑 問 視して い たた めに 、物質 的 ・ 職業 的 な利 害だ け で彼ら が産 業 問題 に取 り組 んで い る と み られ る といけ ない ので、 こ の点は力 説 し てお き たい。 ク エ ー カ ー 雇 用 主 の 態 度 へ の 影 響1945 年以 前 の クエ ーカ ー雇用 主 の労 働問 題に 対 す る姿勢 に 影 響 を 与 え た の は お も に 次 の2 点 で あ った と思 われ る。 第1 は 、 クエ ーカ ー教徒 が 教訓 と事 業 目的 とい う2 つ の義 務 に 従お うとす る際 に 生 じ る矛盾 で あう た。 第2 は、 産業 改 革を 組 織的 に 求め る クエ ーカ ー教徒 の圧 力 と、 雇 用主 に企 業 家 と して の 明確な任 務 を 自覚 させ る よ うな諸 々 の要 因に よって、 こ うし た義 務を 変 化 させ ようと す る力 で あっ た。 こ のお もに2 つ の影響 につ い て、 順 次 検討 す るこ とに し よう。 私企 業 や利 益追 求志 向 の雇用 主に 対す る クエ ーカ ー教 徒 の疑 惑や、 せ いぜい 反 感に つ い て は、す でに 述 べ た通 りであ る。 実際、 クエ ーカ ー教 徒 の理 想 と 「企 業家 の関心」 と呼 ばれ る も のとに 唯一 一 致 す る点 があ る とすれ ば、 互い に産業 内 の コソフ リ クト を嫌 うことに 加え て 、 何らそ の根 本原 因 を 認 め た がらな い ことで あろ う。 ま たピ ュ ーリタ ンが 浪費 と怠 惰を 強 く嫌 うこ と と、 雇 用主 が能 率 や労 働 成果 に 興味 を抱 く こと の類似 点 は、 マ ッ クス・ ウ ェ ーバ ―(MaxWeber) が示 し た類 例 の中 に みら れ る19 対照 的に 、 クエ ーカ ー教徒 の世 俗的 な 倫理 と 企業家 的 な 関心 と の間に は、 少 な く とも クエ ーカ ー 教 徒 の実 業家 に と っては 、「 クエ ーカ ー雇 用 主 とい う呼称」 だけ で名辞 矛 盾して い る と み な さ れ る ほ どの 大 きな隔 た りがあ る20。例 えば、ク:x-―カ ー派 の教 義 では、もとも と個人 の人 格 の陶 冶を 目的 とす る こ とが 求め られ るが 、一 方、 雇用 主 は 、当 然 の こ ととし て従業 員を 生 産 目的 の 手段 と して用 い なけ れ ばな らな い。 クエ ーカ ー派 の教義 で は 、個 人的 な利益 や利 得 といっ た 動 機を 自 ら の行 動基
リ3 ン ・ チ ャ イ ル ド 著 「 ク エ ー カ ー雇 用 主 と 労 使 関 係 」 121 準 に し ない よ う信者に 厳 命し てい る。 一 方、 雇 用主 は、利 益 が 自らに 直 接生 じ よ うと株 主 に 生 じ よ うと 、主 要 目、標 の1 つ に利 益 の極大化 を 挙げ なけ れ ばな らな い。 さ らに 、雇 用主 は 、 自ら の 利 益へ の 関 心を 犠 牲 に した場 合に 限 って、 個人 的 な報 酬や 奉 仕に つ い て の クエ ーカ ー教 徒 の 教義 を 従業 員 に 適 用 す る こと がで きる21 結局 の ところ 、 た ぶ ん企業 内の 権力 問題 が もっ とも 重 要 な こ と で あ ろ う。 クエ ー カ ー教徒 の世俗 的な 倫理 では 、民 主 主義 的 な 関係 と、 強制 ・ 権威主 義 の 拒否 を 最 重 視し て い る。 し か し ながら 、 こ んにち一 定 数 以 上 の従業 員 を 雇用 す るす べて の工場 で 、 階層 的 な 権威 関 係 制度 を 否 定 す るとい っ た問題は 、い ま だに 解 決 さ れてい な い。 クエ ーカ ー雇用 主が 、フ レ ンド 会 から の圧 力 と彼 ら の事 業 欲 と の明ら かな 矛盾 に も っ と も悩 まさ れ た のは 、1918∼22年 の「復 興期(Reconstructionyears)」のこ とで あ った。ちな み に、そ の 後 の戦 間 期に は そ うした 悩み はか な り解 消 され てい った。 こ うした 状 況 の中 で 、 クエ ーカ ー教徒 に よる非 難 の圧 力 が より重要 な 影響 要因で あ った よ うに 思 え る。 クエ ーカ ー雇用 主を 悩 まし た こ うし た ジ レ ン マ の高 ま りと静 ま りは、 労使関 係に 対 す る彼 ら の態 度を 形 成 してい く上で たい へ ん重要 で あ る。 ク エ ーカ ー教徒 が、産 業 改革を 強 く要 求 して き た 背景に は 、 と くに 国 家 の緊迫 し た産 業 ・ 社 会問 題 が関 係 七 てい た。19世 紀 末には 、 クェ ーカゞ 雇用 主 へ の世 俗的 な 倫理 の影 響を 促 進 す る( そ して クエ ー カ ー雇用 主 の産業 福 祉の開拓 に 著 し く効 果 があ る) 要 因( 以下 で述 べ る) が い くつ か あ った が、 フ レン ド会 が タエ ー カ ー雇用主 に制 度面 で の急 激 な 改革 を 求めて 、 何ら かの組 織的 圧 力を 加え た とい う証 拠 は ほ とん どな かったレ これに 対 し て、 お よそ1906年 から1922年に かけ て、 繰 り返 さ れ る こ とは 決し て な かっ たが、 クエ ーカ ー雇用 主 、 と く に 「 戦 争 と 社 会 秩 序 委 員 会 (theWarandSocialOrderCommittee )」へ の集 中的 な批 判 の高 ま り が目撃 さ れた。い まま でに な い産 業 な らび に 社 会 不 安に 呼応 し、 ま た背 景にし て、 労 働者 階級 が物 質的 だけ で な く より道徳 的 な 社会 秩 序を 大 々 的 に 要 求 す る時 代に突 入し た≒ こ うし た時 代 に あ って、クエ ーカ ー雇 用主 ぱ、自ら の工 場 で の 労働 争 議 が ない に もかか わら ず、 他の クエ ーカ ー教 徒か ら の非 難 にさ ら され た。 クエ ーカ ー教 徒 の 関心 は (多 く の社 会 評論家 の関心 と同様 に)、 工場 内で の権 限 と所 有 権 とい う基本 問題 に 絞 ら れ てい た。 こ う七 だ クエ ーカ ー雇用 主 への非難 も、1920 年代 初 頭を 境 に 不 意に 止ん でし まい 、 そ れ以 後 の戦 間 期 で は、 失 業 問題 がお もな社 会問題 と し て再 び広 く論 議さ れ る よ うに な った23。 さ らに19 世 紀初 頭に は 、 クエ ーカ ー教 徒 の世俗 的 な 倫理 と 大半 の イギ リス の雇用 主 に 広 ま ってい た 見 解 と の間 に、 も っ とも鮮 明な形 で の食 い 違 いが み ら れる よ うにな っ た。 実 際、 労使 関 係に つ い て の クエ ーカ ー教徒 の考 え方 は、 よ り古 くか ら あ る自 由放 任主 義 ( レセ ・フ ェ ール) のそ れ とは 基 本 的に ほ と ん ど正 反対 のも のであ った24 クエ ーカ ー教徒 は、そ の当時 、資 本主 義 の「悪 魔」 とそ れ に 追従 す る企業 家 の態 度を 改革す る必要 に 迫 ら れて い た。 そ の後 、イ ギ リス の経営 者 の代 弁者 た ち は 「人 的 要 素」 に 注 意を 向け たが、 そ れ は クエ ーカ ー雇用 主 自身 がす でに 広 く受け 入 れて い た もの
122 経 営論集 第45号(1997 年3 月) で あ った。 戦 間期 に入 る と、 マ ネ ジメ ント 研 究者 は 、し だい に 労働 者 とそ の作 業 環 境に 有利 な 意見 を 積極 的に 受 容す る よ うに な っ てト つた。 そ の こと が、 利潤 動 機 とト つた よ うな 私 企業 の もつ別 の 「疑 わ しい 」面 に 何ら か の正当 性 を 与え る こ とに な り、 クエ ーカ ー教徒 の実業 家 へ の非 難 が和らげ ら れる ように なっ てい った。 さら に 戦 間期 の終 わ り頃に な る と、合理 化 や科 学 的管 理運 動に 結び つ く産 業 能率 の 必要性 が しだ いに 高 ま り、 タエ ーカ ー雇用 主 の宗 教的 な 「理想 主 義」 を 拡 大し ようと す る姿 勢は 、徐 々に押 さえ ら れ てい っ た。 こ うし た 能率 へ の関 心はし だ いに 高 ま り、1918年 にそ の 頂 点 を むか え るが 、そ れ と同 時に 多 く の雇 用 主は 商売 の面 で厳 しい対 応を 迫 ら れ た。 マネ ジ メント 運 動 を 通 じて 、産業 内で の最 適技 術 てoptimumtechniques) の必 要性 が 、し だい に 強調 さ れる よ う に な ってい っ た。 とい うのは、 失 業 とい っ た 社会 的悪 魔を 救 済 す る の に 、 最 適 技 術 が 福 祉 政 策 や 「宗 教 心 から の感 傷主 義」 より もむ しろ 一 番 確実 な 手段 と判 断 さ れはじ め たか ら であ る25。 結局 、戦 間 期に は、 産業 の官 僚主 義化 に よ り自ら の 職業役 割 が変化 す るにつ れ て、 クエ ーカ ー雇 用主 は 、し だい に企 業 家 とし ての 真 の管 理役 割を 強 く 自覚す る よ うに な った26.まず 第1 に、企業を 完 全 に 所 有・ 支配 して い た同 族 の クエ ーカ ー企業 の数 が比較 的 少な くな う た。4 つ の クエ ーカ ー雇 用主 会 議 の 出席者 数 の比較 は、 こ う七 た傾 向 を示 す1 つ の 指標 で あ る 。 こ れ に 対 し て 、1938 年 の レ ッ キ ット(Reckitt) 社 と非 クエ ーカ ー教徒 の コ ール マン(Coleman )社 との 合併 や 、( クエ ーカ ー 教 徒に よる) 同族 の支 配 から 離 れ た ロ ウソト リ ー(Rowntree) 社 の例 は別 の指 標 で あ る2≒ こ う七 だ実 質 的な 産業 資産 の所 有と 支 配に よって 、 別 の クエ ーカ ー教 徒にい わ せ れば 、 クエ ーカ ー雇 用 主 は、 倫 理的 に重 大 な責 任を 負 うこ とに なっ た ので あ る。 さら に、 戦 間期 の傾 向 と し て、 当初 より同 族 の クエ ーカ ー教 徒 の独 占的管 理 下 で 規模 を 拡大 し て きた企 業 で 乱 ときに は クエ ーカ ー教 徒 でな い 管 理 者を 追 加募 集す る とか、 こ れま でほ とん ど クエ ーカ ー教 徒を 雇っ た こと が ない 各 種企 業 でも、 し だい に クエ ーカ ー教 徒 が管 理 職に 就 きは じ め る ように な った28 例え ば、( あ る 人 の推 測だ が) ク エ ーカ ー教徒 は、管 理 者や 管 理者 集 団 と一 緒 に 働 くよ うに なる につ れて 、 自ら の 仕 事に 対す る 倫理 的 な関 心は 低 くな り、 能 率的 な生 産 技術 へ の関心 が 高 まっ てい った。 言 い 換え れ ば、 同 族 で資 本を 所 有し 支 配す る 古い体 質 の クエ ーカ ー企業 で は、 一般 大衆や 他 の タエ ーカ ー教 徒 と 接 触し、 両 者 の 考 えを 取 り入 れ るご とに よっ て 、 クエ ーカ ー教 徒 の世 俗的 な倫 理 と産業 思 想 との 相 互作 用を い っそ う強 めてい っ た ので は ない か と 考え ら れ る。 要 するに 、 本節 で 検討を 加 え たい くつ か の要 因は 、 事業 目的 に 自ら の教 訓を 徐 々 に 「調和 」 させ て い こ うとす る、1920年 代初 期 以降 の クエ ー カ ー雇 用主 の態度 の変化 過 程を 説 明 す る のに多 少 と も 役 に 立と う。 全 体 とし て、 こ うし た調 和 は、 企業 家 の 関心 ( とくに 民主 主義 的 な 関 係に つい て の関 心) とは 裏腹 に、 そ れ ほど差 が ない 別 の 教 訓 との バラ ン スを 配 慮 するあ ま り、 クエ ーカ ー教 徒のほ と ん どの 教訓 の価 値を 下げ る こ とに な っ てし まっ た。 人間 の 個 人 主 義 的 な 性 質 と コソ フ リ タト の
リa ン・ チ ャイ ル ド 著 「 ク エ ー カ ー雇 用 主 と 労 使 関 係 」 123 「間 違 った性 質」 に つ い て の クエ ーカ ー教徒 の基 本 仮説 は、 こ うし た 転換 期に おい て少 し は役に 立 つ た っ たか もし れ ない 。 い ま全般的 に結 論 とし てい え るこ とは 、1930年 代 末 までに 、 イギ リ スの管 理 思 想 全体に かな り の影 響を 与え た技術 的 正当性 と倫理 的正 当 性 の両 者に 折 り合い をつ け た企業 家 哲 学 は 、捨 て去 ら れ る運 命に あっ たとい うこ とであ る。 ク エ ー カ ー 雇 用 主 の 態 度 ニ ■ ■ ■ お よそ1910年 以 前 の クエ ーカー教徒 の労 使関 係に 取 り組 む 姿勢 は、 そ れ以降 と 比較 して ほ と んど 知 ら れてい ない 。 最初 の 「 クエ ーカ ー雇用 主会 議」 は、1918年 に 開催 さ れたに す ぎな い。 今 世紀初 頭 の クエ ーカ ー雇 用主 に つ いて の人び と の印象 は、 労 働者 へ の雇用 主 の厳 しい 道徳 的 義務 と、 さ ま ざ ま な 福祉 給 付 の共 同開 発 を 連想 させ る( 自 由放任 主 義と は対 照的 に) 慈悲深 い 温情主 義 的 な支 配 であ る。 さらに 、 ク土 − カ ー雇用主 は 、お おむ ね産 業 能率を 社会的 義 務 として 重 視し てい た が、当 時ほ と んど接 触 がな か った 労働組 合主 義勢 力に は、 い くぶ ん困 惑気 味 な ところ が あ った2≒ し か し、 第一 次 世 界大 戦 の勃発 や タエ ーカ ー教 徒か らの非 難 が強 ま るにつ れて、 クエ ー カ ー雇用 主 は 、 クエ ーカ ー教 徒 の本 質的に 従業 員を 軽視 す る見方 が、 当 時 の基 本的 な労 働 者 の権利 や 雇用主 の特 権 と考 え ら れて いた ものに、 かな り制 限を 加え てい た こ とに 気づ く ように な っ た。1918年 の雇 用主 会 議で は、「人(person) として の 権利を は っ きり と認 め る よう雇 用主 や管 理者 」に 求 め る、労 働者 の 「地 位」 に 関 す る討 議 が多 く みら れた30。 審 議 の結 果、 雇 用主 は、「宗 教上 認 めざ るを え ない 正義 」とし て こ の要 求を 受け 入 れた≒ 労 働者 に 関わ るあ る ゆる事 項 は、彼 らと の協 議に よって 決定 さ れ るべ きで あ る と クエ ーカ ー雇用 主 が譲 歩し た ことは 、同 時 に、 職務 遂行 条 件を 労 働者 に命 じ る こ と がで き ると い う資 本家 の権利 め放棄 を 意味 した32 こ こま で クエ ーカ ー雇用 主 は 、 せ い ぜ い ホ イ ット レ ー主 義 (Whitleyism )の原 則を 支 持す る程 度 であ った が、 別 の クエ ーカ ー教 徒か ら の自ら の財産 や 権益 に 対 す る疑 惑に は、次 に述 べ る よ うな産 業 民主 主 義 の遵 守 とい う態度 で応じ てい た。 「工場 協 議 会を 経 験 し て、従業 員 は事業 経 営へ の参 加に 慣 れ るか もし れな い し、 慣れ なげ れば な らな い 。 ま た、 最終 的に彼 ら は、 販売 ・財 務管 理に 参 画 で きる かもし れな い し、 参画 で き なけ れば な らな い こ とは、し ご く当 然 のこ とで あ る33.] と うし た こと は 、クエ ーカ ー雇用主 が、クエ ーカ ー教 徒 の批 判に さら れ さてい る 時期に 、すす んで 急 激 な制 度 の変 化 を 考え て い るこ とを示 す 特別 な 事例 では な か った。 クエ ーカ ー雇 用主 は、工 業 所 有 権(industrialpropertyrights) を廃 止す べ き とい う一 部 クエ ーカ ー教 徒 の見解 を 決し て認 めず34、 また 自ら の産 業 で の権威 あ る地位 が、 不 必要 な職 能で は ない と主 張す る一 方Tび 、 今ごろに な って、 共同 経 営 の原則 を 受け 入れ ようと七 ていた 。例 えば 、1926年 の未公 開 の メモ の中で36、ジ ョセフ ・ ロ ウ ソト リ ー(JosephRowntree )は 、「権利 事項 」 とし て労 働者 に産 業 に 関 わ る意 思 決 定 の 共 有 を
124 経営論 集 第45号(1997 年3 月) 「勇気 を もって」 要求 す る よう力 説 してい る。彼 の息 子 の シ ーボソ は、1922年 の著 作 の中 で37、彼 の 後年 の見 解と比 較 す ると興 味 深い が、「福祉 問題 だけ で な く、真に 重要 な事 項 の決 定に 際し ては 、労 働者 に 意見 が 求め ら れ、 意思 決定 の共 有がな さ れ るこ と が重要 で あ る」 と述 べてい る。 戦 間 期 の間に 、 クエ ーカ ー雇用主 は、 当 初 の譲 歩 的 な見 解を 退け る ようにな っ た。 彼 らの 見解は 、 次 の よ うな2 つ の段 階を経 て後 退し てい っ た。 ひ どく長 び く 失業 の攻 撃に よって、 フ レ ンド 会内外 で産 業 民 主主 義を もっと も執拗 に 唱え てい た者 たち で さえ 、当 面 の課 題に 目を 向け る ように なっ た。10 年 間 に 及 ぶ失業 と不 況は 、 重大な 産業 問題 を残 し た。 クエ ーカ ー雇 用主 は、 す ぐに 自石 の初期 の 言 質に こ だわ るこ と の空し さ に気づ いた。 同 じ宗 派 の クエ ーカ ー教徒 から の非 難 も次 第に 緩や かに なっ て い った。そ し て 例え ば、1928年 の クエ ーカ ー雇用 主会 議 では 、[労 働者は 産業 …… の経 営に あ る程度 発 言 権を もつ べきで あ る]と( 経営 参加 を)い まだ に 支持 し なが ら も、「大 企業 では 労 働者に い か な る 能 率 的 な 管 理 手 段1も 与 え ら れ な い」 現 実 に 自 ら 直 面 す る エ ド ワ ード ・ キ ャド ベ リ ー (EdwardCadbury) を み るこ とがで き る'\ノ1928年 の会 議 で は、 クエ ー カ ー雇 用主 は、倫 理的 に望 まし い も のとし て、 労 働者 の代表 権 と決 議権 の原 則を な お 討議 し てい たが 、1930年 代 には 、そ の原 則 自体 が時 とし て疑 問 視さ れ る第2 段階に 入 って い た。 上述 した ような 労働 者と の統 制手 段 の共有 とい う考 え方 は、 産業 能 率に は不 可 欠 な もので あ ると して 正 当化 さ れた。 言い 換 え れば、 倫理 が、 経 営管 理技 術 に取 っ て代 わ ら れる よ うに な うた ので あ る。 クエ ーカ ー雇 用主 が、 つ ねに産業 能 率を 社 会的 に 価値 あ る もの と考 え る ように なっ た とはい え、 戦 間期 の新 しい 管 理技術 の 進展 に よ り、 雇用 主 は、 独 占的 な 管理 か、 あ るい は能 率 の低下 か のい ず れ かの 選択 の道 を とらざ る をえ ない 状況 に追 い込 まれ た よ うに 思 わ れた。 シ ーボソ ・ ロウソ ト リ ー は、 こ の点 につ い て1938年 に次 の よ うに 指摘 し てい る。 十 「労 働 者 の総 会に よっ て能 率的 に経 営 され る よ うな事業 な どあ りぱ しない 。 労 働者 は、 命令を 与 え る責 務を も つ 者 だ ち と、 そ れ に 従 う 責 務 の あ る 者 だ ち と に 区 別 さ れな け れ ば な ら な い3≒」 十 工場 内の制 度 改革 とい う伝統 的な 意 味か ら も、 こ うした 産業 民 主主 義を 拒絶 す る よ うな発 言は、1948 年 の最後 の クエ ーカ ー雇用 主会 議で は、 地 位 の不平 等 を 強調 し、 労 働者 の側 に 何ら か め苦情 の 種を 生 じさ せ るも のと して 否定 さ れた。労働 者は 、「経営 者 と 従業員 とは役 割 が違 うが、地 位 は互い に平 等 で あ ると の認識 に 立 たなけ れ ばな らな い] と主 張し 、不 満 では あ るが クエ ーカ ー教徒 の平等 主義 の 教 訓に 立 ち戻 ろ うと した40。 上 クエ ーカ ー雇用 主 の世 俗的 な活 動 は、 クエ ーカ ー教 徒 の世 俗的 な行 動倫 理に つ い ての 教訓 から逸 脱し 、 自制 の概念 を 軽視 し た とい う点 て 非難 さ れ るこ とに な る。産 業 内で の所 得 格差 が拡 大 し、別 の クエ ーカ ー教徒 か ら の工業 所有 権に 対 す る非難 が 高 ま りつ つ あ った 当初 、 こ うし た概念 は 、雇用
ジ ョ ソ ・ チ ャイ ル ド 著 「 タ エ ーカ ー雇 用 主 と 労 使 関 係 」 125 主 の地 位 を守 る もの として 取 り上げ ら れて い た。19 世紀 末に クエ ーカ ー雇用主 が実 施 した 有 名 な草 分 け 的 な 産業 福祉 の多 くは 、 こうした 観点 で み る必要 があ る4≒1918 年 の会議 で は、「す べて の 雇用 主 に 対 し て、 自ら の生 活様 式や個 人的 支 出が、 自ら の 社会 的役 割 を遂 行 し能 率的 な成 果を 確保 す る のに 必 要 な範 囲 内に 収 ま ってい るか ど うかを 慎重 に 検討 す る よ う」 求め ら れた42 そ れ は 、 クエ ー カ ー教 徒 の禁 欲主 義に み られ る伝統的 な 政策 で あ り、 と くに 従業 員 のた めに 犠牲を 払 うと い った 倫 理 的 な言 葉 で ふつ う表 現 さ れてい た43 と はい え、1930年代 に は、以 前ほ ど従業 員 の 意見 は 聞 き入 れ ら れ な くな っ てい た。 そ の後、 クエ ーカ ー雇 用主 は 、 労働 者 の利 益 は企 業家 の犠 牲 では な く、 経営 目標 (mananerialgoals ) のあく なき追 求、 つ ま り能 率 か ら得 ら れか もし れなtヽと 広 言 す る よ うに な っ た44. そ うし た変 化に 対す る1 つ の理 由 とし て 、仲 間 の クエ ーカ ー教徒 から の 非 難 が 減 っ て き た こ とや 、多 く の クエ ーカ ー雇用主 が所 有者 か ら専 門 管理 者 に成 長 して き たこ とを 除け ば 、多 くの クエ ーカ ー教 徒 の経 営す る工 場で、1920年代 ま でに 設け ら れた 利益 分配 計 画やそ の他 付加 的 給 付計 画 が 実際 に 設 置 され た こと がたぶ んあげ ら れ よ う。 クエ ーカ ー雇用 主 が、 自 らの権威 や地 位 の正 当性 を 説 明す る のに 好 ん で用い た理 由は、 産 業 民主 主 義 と企 業 家 の禁 欲 主義 の重要性 が低 下し た こと が、 戦 闘期 に 別 の「正 当性 「」ustifications)」 へ の 高 い 関心 を 呼 び 起 こす こ とに なっ た、とい う もの であ っ た。こ うし た正当 性 の1 つ に 、て奉仕 」の概 念 が あ った 。 奉仕 の概念 は また、 クエ ーカ ー教徒 の 伝統 に 深 く根差 し てお り、1914年 以前 で さ え ク エ ー カ ー雇 用 主 の 見 解 の中 に み る こ と が で き る 。 エ ド ワ ード ・ キ ャド ベ リ ーは 、「 雇 用 主 の権 利 … … と同 様 に 義務」 に つ いても 言及 した45 す なわ ち、 彼 は 、1918 年 の会 議 で 、「 産 業 を 共 同 体 (community ) の利 益 の ために続け ら れ る国民 奉 仕 (nationalservice) と位置 づけ 、 真に 精 神丿 面 から 「わ れ わ れ の真 の社 会(society) で の地位 と 役割 」を は っ き りと定 義し た46 実 際 、こ うし た経 営 方 針 と し 七の 奉仕 と(資 本家 とし ての 権利 の) 放 棄 につ いて の初期 の 宣伝 は また 、雇 用主 の物 財 追 求 へ の関心 を 拒否 す る こ とを 意味し た。 そ れは 当 時 の重 要 な 経 済 学 的 仮 説 を 否 定 す る こ と で も あ っ た 。事 実 、そ れ は、こ んに ちま で続 いて き たビ ジ ネ ス ・イ デ オ ロギ ー(businessideology)とは 根本 的 に 異 な る局 面 の端緒 を 開い た。 し かし な がら 、 ひ とた び、産業 民主 主 義 と資 本家 とし て の権 利 の放棄 が注 意を引 かなく な り は じ め る と、 し だい に クエ ーカ ー教徒 の実業 家に よっ て奉 仕 (あ まり 正確 では ない か献 身 ) が重 視 さ れ、 ま た 最大 の 経営 能 率を 達 成す るこ とが、雇用 主 の義 務 と定 義 さ れ る ように な って き た( 最 高 の)産 業 経 営者 とは、 倫理的 制 約を 適切に 配慮 し た 十分 な技 術 を も った 真 の専門 家 であ る と最 初に 主 張 し た 人 た ち の中に 、1920年 代 以降、 クエ ーカ ー雇用 主 が みら れ た。1928年 の クエ ーカ ー雇用主 会 議 で は 、「(産 業 内 の) 重 要 な地 位に就け よ うとし て選 ば れ たす べ て の人 が、 慎重 に考 案 さ れた 教育 訓 練 課 程 を経 験 す べ きで あ り、‥…・息
126 経 営 論 集 第45 号 (1997 年3 月 ) う古 い考 え は 、い まで は受け い ら れる はず が な い」こ と が強 調さ れ た47.科学的 管理に よる能 率 のあ くな き追 求 は 、産 業 不安 の主 因で あ り、 労 働者 の 自治 を 不当 に 剥 奪 す る も の と し て エ ド ワ ード ・ キ ャド ベ リ ーに はや ばや と非 難 され たが48、1920年 代 末 まで に は、今 度 は従業 員 の た め に な る と い う理 由 で、 正 当化 さ れ る場面 も あっ た。 例 えば 、 能率 は民 主 主 義的 関 係に優 先 しなげ れば なら ない とい っ た シ ー ボソ・ ロ ウソ ト リ ー の 見 解 が す でに 述 べ ら れ て い た のに 、づ928 年 に ウ ィ リ ア ム・ ウ ォー ラス (WilliamWallace ) は、「従 業員 がで き るだけ 高い 賃金 を得 ら れる よう事業 を 組 織 す る 以 上 の 雇 用 主 の道 徳 的 義 務 は な い」 と い う 見 解 を 述 べ た4≒ 事 実 、 専 門 的 経 営(professionalmanagement ) とい う概 念は 、 共同 あ るい ぱ共 有 支配 に よる産業 民 主主 義 の拡 張 と相 い れな い も の であ る。プ ロフ ェ ッシ ョナリ ズ ム(professionalism)とは、定義 に よれば、そ の階 級 に 入 り、そ の特 権を もつ のに ふ さわ しい 資格 を もた ない も のを 排 除 す るこ とを 意味 す る。そ れ ぱ、 クエ ーカ ー教徒 の管 理 者 と 雇用 者に よる工場 組 織へ のあ くな き統 制 の要 求 セあ っ た。 クエ ーカ ー主 義 が、民 主主 義的 な 人間 の相 互関 係 の必 要性 を つ ねに 重 視 し て き た の は 、 こ れ に よっ て の み 個人 の人 格を 十分 に 表現 す る こと がで き る とい う見 解に 基づ い てい る。1918年 の クエ ー カ ー雇 用主 会議 の報 告書 では 、丁労 働 者 の人 間」とし て の権利 を 認 める とい う産業 民 主 主義 の原則 が 承認 さ れ た60。し かし 、工 場 内の適 切 な 権力 闘 争や 権力 問 題に 関 し ては、産業 民 主主 義 の原 則 は まっ た く考 慮 さ れな か った とい われ てい る ーそ れ は彼 ら 自身 の 経験 や クエ ーカ ー教 徒 の見 解以 外 のなに も ので も な かっ た。 した が って、 引 き続 き産業 民 主 主義 が拒 絶 さ れる なら ば、 労 働者 に対 してそ れ 相応 の 給付 、 そ れ もむし ろ 「奉 仕丁 とは 程 遠い もの を与 え る こ とが望 まし い。 す でに み て きた よう に 、 あ ら たに 能 率や 技術 を重 視 す るこ とは 、 労働 者 の物 的 給什 を要 求 す るごと で あ り、そ のこ とは 倫理 的 に 正 しい こ とであ っ た。 より重要 な 要 求は 、 適切 な 職業 倫理 を 吹 き込 ま れ た経 営者 が、 工場 の 情況 と は別 の よ力 価値 あ る社 会環 境を 創造 す るこ とで 、 労 働者 の人 格を 満た す こ とが実 際で き る か もし れ な い という こ とで ある。 これ は √ クェ ー カこ雇 用主 が よく好 んで 用い て きた 従業 員 中 心・ 非 権威 主 義 型の 労務 管理 (labourmanagement ) に よって成 し遂げ ること がで き た。 し た がっ て、 労 働者 は「( 経営 者 と)連携 した 方 が得 か もし れ ない し、良 き 労働 者で あ る=とと もに良ノき市 民に なら なけ れば な らな い」。 実 際、「事 業 は、充 実 し た 生活 に役 立つ 要素 の1 つで なけ れ ばな ら ない 」≒ こ れ は、 初 期 の温 情主 義的 な 雇用 主 にみ ら れた 「道徳 上 の義 務(moralduties )」 の考え に匹 敵す る見 解 であ る。 言い 換え れ ば、 キ ャド ペ リ ー兄 弟 社 べCadburyBrothers 押 の クエ ー カ ー教 徒 の 雇用 管理 者 に よ れば 、新 しい 経営 管理 概念 で あ る専 門 リ ーダ ーシ ップイprofessionalleadership)とぱ 、「労働 者 にm 情 的で 、 個 人の 長所 や短 所に 精 通 して い る リ- ダ ーソ ップ」 のこ とであ り、代 償 的 な社 会的 満足 を 生 み だ し、 クエ ーカ ー教 徒 に とっ てた い へ ん重 要な 人 格 の開発 に役 立つ とい わ れて いず二。 わ れわ れ ぱ、 クエ ーカ ー教徒 の個人 主 義的 な 人間 観や コソ フ リ クト の性 質に つ い て の一 致し た基
・:>ョ ソ ・ チ ャ イ ル ド 著 「 ク エ ー カ ー雇 用 主 と 労 使 関 係 」 127 本 仮説 が、1918年 の 「復 興」 期以後 の クズ ーカ ー雇用 主 の態 度 の変化 に多 少 と も関 係し てい るか=も し れな い と主 張 して き た。 すべて の人 び とぱ個 人 とし て扱 わ れ るべ きで ある とい う見 解 は、 クエ ー カ ー派 の まさ に 教義 から 直接 生 まれた も のであ っ た。 こ うし た見 解を 労働 者に あ 七は め れば、 労 働 力 は 、特 徴 が一 人 ひ と り異な る個人 の集 ま りと考 え ら れた53 こ うした考 え は、労働 組 合主 義 とぱ 観 念 的 に 本質 が 同 じで あ り、労 働者階 級 の規範 とは 共 通基 盤 にあ る・集 産主 義 (国 家 また は私的 な 集団 が生産 分配 の経 済 活動 を 集団 的に統 制す る制 度)と はか な り対照 的 であ った5し そ の結果 、古く から クエ ーカ ー雇用 主 は、大企業 での所有 と 支配(control)の分 離 の進 展に より誕生 し た6≒ クエ ーカ ー 雇 用主 は 、 今世 紀 の長 きに わ たり勢力 を 誇 ってい た だけ で な く、 労 働者 の権 利を い っそ う表 現す る 制 度 ・手段 とし て、 労 働組 合につ い ての 認識を 広 め ようと して きた が55、 労 働者 の利 害 が雇 用 主 の 利 害 とか なら ず対 立 す る と考え る組合 主義 の論 拠 に不 満 を感 じて い た56 同様 に 、 こ うし た 観 点 で み れば 、 雇用 主 の反 応 の中に は、産業 民 主主 義 とは 掛け 離 れた も のも みら れた。 例え ば 、1917年 以 降 の ホイ ット レ:−主 義 の イギ リ ス産業 へ の導 入は 、好 敵 手 とい う より も集産 主 義的な 性 格を もっ た 労 働争 議や 労 働 組合 活 動を 助長 した ように思 われ た。 し た がっ て 、 制 度 的 ア プp ―チ (institutionalapproach ) は、 クェ ー カこ 教 徒い うと ころ の個人 の 人格 の 十分 な発 達に 不利 に なる、 また は役 立 た ない とい う理 由 で 非難 さ れて も七 か た がな かっ たノ 事実 、 工場 協議 会 (workconsultation) の運営 方 法 が クェ ¬カ ー教徒 の月 例 会に似 てな く はない と思え るい くつ か の根拠 が ある。 こう し た両 者 が 似 てい るの では ない か とい う疑問は、 クエ ーカ ー教 徒 の人 格につ い て の見 解や コンフ リ クト の原因 か ら きて い た。 こ の よ うに 、 雇用 主 は、 クエ ーカ ー派 の教 義 の面 から も、 ま た企 業家 の利 益 の面 から も、産 業 コ ソフ リ クト問 題を かな り重 視 した。 第一 次世 界大 戦 (1914∼ 工8年 ) の頃 、 とくにJニ(ド ワ ード ・ キ ャ ドペ リ ーと シ ーボソ ・ ロ ウソ トリ ーとい った雇 用主 の一 部に よ る社会 調査 研 究を通 じて、 産業 コソ フ リ クド の重 大な 原 因 が認識 される よ うに なっ た こ とは たい へ ん興味 深い 。 キ ャド ペ リ ーは、 影 響 要因 の1 つ とし て 、 強制 に よ る管理(managerialcoercion ン と生 産 へ の衝 動(driveforoutput )を 指 摘 し た5≒ 一 方、 ロ ウソト リ ーは √物 質的 な 生活 状況 で の不平 等 を 重視 し た58.社 会 や産 業 がか な り不安 定 な時 で さ え、「好 意」 と 「理解 上 が紛争 解 決 の カギで あ るとい う クエ ーカ ー教徒 の考 えは 、 この よ うな 雇用 主 の 見解を み ても 明ら かで あっ た/ ま た産業 平 和 には 工場 で の制度 上 の変 化 が必 要 で あ る と、1918年 の 会議 で 承認し たに も かか わら ず、引 き続き「理 解」しに 重 きがお か れた59. こ うし た こ とは 、一 方 が 関 係の調 和 を決定 す る他方 に近 づ く とい う精 神 こそ が 理 解 で あ る とす る クエ ー カ ー教 徒 の 教訓 に一 致 し てい た。 し かし 、大 半 は、 個人 の 「徳 性 (goodness)ム/│j>理学 的に 言い 換 え れば 、「心中 に あ る もの」 に 依存 し てい る ような とこ ろ があっ た。 こうし た労 使 関 係 の処 理 方 法 は、 戦 間 期に クエ ーカ ー雇 用主に よって 開発 さ れた も ので ある が、 彼ら の経 営哲学 に と って 別 の面
128 経 営 論 集 第45 号 (1997 年3 月 ) で 重 要 な2 つ の 意 味 を も つ よ う に な っ た 。 ま ず 第1 は 、 労 使 の 調 和 に は 、 労 使 の 権 威 者 た ち が 互 い に 「好 意 」 を 抱 く こ と が 必 要 で あ る と し だ い に 思 わ れ る よ う に な っ て き た こ と で あ る60 こ れ に よ っ て 産 業 民 主 主 義 へ の 印 象 は い っ そ う 良 く な っ た 。 第2 は 、 コ ソ フ リ ク ト に つ い て の 考 察 が 、 労 務 管 理 の 技 術 す な わ ち 「 人 び と と 共 に 働 く 」(workingwithpeople )技 術61に 不 可 欠 な も の と な っ た こ と で あ るo ま た い く ぶ ん 、こ うし た 功 利 主 義 的 な 訴 え は 、 当 初 の 倫 理 的 な 意 味 合 い を 後 退 さ せ て し ま っ た 。 結 局 、 わ れ わ れ が 重 視 し た 従 業 員 中 心 ・ 非 権 威 主 義 的 な 労 務 管 理 ス タ イ ル は 、1914 年 以 前 に は ほ と ん ど 倫 理 的 な 基 盤 に 基 づ き、 ク エ ー カ ー 教 徒 の 教 訓 を 表 現 し た も の で あ っ た こ と に 気 づ こ う。1912 年 ま で 、 少 な く と も ボ ー ソ ビ ル(Bourneville ) で は 、 精 神 的 ば か りで な く 物 質 的 に 得 す る と と も 疑 問 視 さ れ た が62 こ れ に つ い て の 「 論 拠 」 は 、 軍 需 工 場 健 康 委 員 会(HealthofMunitionsWorksCommittee ) の 戦 時 中 の 実 験 や 、人 間 心 理 に つ い て の1918 年 以 降 の 衝 撃 的 な 新 し い 研 究 を 待 つ こ と に な る。 し か し な が ら 、 こ うし た 管 理 ス タ イ ル は 、 ク エ ー カ ー実 業 家 に よ っ て 徹 底 的 に 擁 護 さ れ た63. ま た そ れ は 、 戦 同 期 の 終 わ り ま で クエ ー カ ー企 業 家 と し て の 行 動 基 準 一 リ ー ダ ー シ ッ プ に よ る 管 理 (managementvialeadership )、 管 理 に よ る 「 良 き 」 工 場 生 活 の 創 造 、 産 業 平 和 た め の 管 理 技 術 、 労 働 者 の 最 大 能 率 一以 外 の す べ て の 要 素 と 密 接 に か か わ っ て い たい こ の よ う な 関 係 概 念 を もつ 管 理 ス タ イ ル は 、 現 在 で も 技 術 面 で 価 値 あ る も の と し て 認 め ら れ て い る 反 面 、 も と も と の倫 理 的 な 意 味 合 い も 若 干 残 っ て い た 。 ‥ ク エ ー カ ー の 企 業 家 哲 学 と イ ギ リ ス の 管 理 思 想 の 展 開 クエ ーカ ー企 業家 が、 初期 のイギ リ スの 「マ ネ ジ メン ト運動」 の展 開にお い て果 た し た役 割 の重 要性 につ い て は、 容易に かつ 具 体的 に述 べ る こと がで き る。 例 え ば 、 エ ド ワ ード ・ キ ャ ず ベ リ-(EdwardCadbury ) とシ ーボ ソ・ ロ ウソト リ ー(SeebohmRowntree ) の2 人 は 、 人 事 管 理 部 門 (そ の後 「福祉 職」〈welfarework 〉と呼 ば れ る) の 創設に 寄 与し た。 とりわけ ロ ウソ ト リ ーは、自 ら オ ッ クスフ ォード ・マネ ジ メント 協議 会 (theOxfordManagementConferences ) を 設立 し た人 物 であ る。定 例 の クエ ーカ ー雇用主 会 議(theConferencesofQuakerEmployers )で 公 表 され た報 告書 や 論文 、 さら には 各 クエ ーカ ー企業 家 の著 作 は、 別 の 「進歩 的な」 企 業主 や と くに 増 大す るマ ネ ジ メン トと 労使 関係 分野 の研 究者 に とっ てた い へ ん魅力 あ る もので あっ た。 ご うした 著 者 の中に は クエ ーカ ー企業 出身 の、 ア ーウィ ッ ク(Urwick )、 ノース コ ット(Northcott)、 ワッ ツ(Watts )、 ウ ォーラ ス(Wallace)、 ジ ェル ト ン(Sheldon) とい った一 流 の研 究者 もい た。実 際、シ ー ボソ・ ロ
ウ ソ ト リ ーは 、 ア ー ウ ィ ッ ク自 身 が 最 近 「 イ ギ リ ス の マ ネ ジ メ ン ト の 父」(FatherofBritishManagement) と呼 ぶほ ど の人物 で あっ た64 さら に、 クエ ー カ ー雇用主 は、彼 らを 悩 ます イ デ オロ
リ ョン ・ チ ャ イ ル ド 著 「 ク エ ー カ ー雇 用 主 と 労 使 関 係 」 129 ギ ー の違 いを 理 由に、 少 数 意見を か な り感 情をあ ら わ にが な り立 て たが 、 高水 準の 学校 教育 と独学 に裏 づ け さ れ た彼 ら の見 解 は、比較 的質 が 高 くで説 得 力に 富 む もの であ っ た。 クエ ーカ ー雇用 主 が 経営 す る事 業 が 成功 し、 理 論ばか りか工 場 で の実践 が うま くい った こ とが 、第 二次 大 戦前 の マ ネジ メン ト運 動 に 、 クエ ーカ ー雇用主 が不釣 り合い な ほ ど の影 響を 与 え た理 由 であ る。 だ が、 こ うし た理 由 だけ では、 クエ ーカ ー雇用主 の概 念 の内 容 がマ ネジ メント運 動 に及 ぼ し た影 響 に つい て の説 明 とし ては 不十分 であ る。まず 第1 は 、1930年 代 末期 ま で の クエ ーカ ー雇用 主 は、経 営 者 のi; ーダ ーシ ップを 重 視した が、 そ れは1914年 以 前に みら れ た新 温 情主義 (neo-paternalism) へ のい く ぶ ん の回 帰を 意味 し てい る と思 った 方が よい だろ う。 ま た工 場制 度を 大 幅 に変 更す る 必要 性( あ る い は 欲求 ) はほ と んど感じ ら れなか っ た。 さ らに 、管 理 技 術に 関 する 研究 ( と くに民 主主 義的 関 係)を 好 む クcr.―カ ー雇用主 が、 クエ ーカ ー教 徒 の世 俗的 な 道徳 論 の うちの い くつ かを 嫌 っ た た め、 概 し て イ ギ リスの マ ネジ メント 運 動を 自 ら の概 念に 取 り 入れ る可 能性 は高 まっ た。 クこらー カ ー雇 用 主 が 倫理 基 準 と事 業に不可 欠 な ものを 「調 整 す る」 こ とに み せ る関 心こそ が 、 倫理 的 な性 格を 正 当化 す る マ ネジ メy ト運動 へ の推進 力 の主 な 源泉 であ っ た。j そ の後 の クエ ーカ ー雇用 主 の処 理方 法 は、新 し く登 場 し た 自意 識 の強い 管 理階層 に は 、 まっ た く 受け 入 れ ら れない 内容 懲あ っ た。 新し い管 理 階層 は、 経 営哲 学 のい くぶ ん 「科学的 な」 基盤 を ほし がら だ。 新 し い 心 理学 ブ ームを もたら し た第一 次大 戦中 の実験 に よ って、 クエ ーカ ー雇 用主 が 提 唱 し た労 働 環 境 の改 善 や労 働管 理ス タイル は認知 さ れた。 経 営 者は 、資 本家 と の自立 性を 維 持す る た め の新 し い 倫理 的 支 柱を 必要 とした 。そし て 「奉 仕」を 重 視 す る クエ ーカ ー・アプ ロ ーチ(Quakerapproach) は、 技 術効 率を 犠 牲にす る こと なしに 、 倫 理的 支柱 を 提 供し て くれ た。 またそ れは 、都 合 の良 い 形 で 労 働者 の 支配 権を正当 化 して く れた。 クエ ーカ ー雇用 主 が成文 化 し た、 お もに (別 の クエ ーカ ー教 徒 の) 倫 理的 正当性 に役 立つ と 思わ れ る諸 々 の概 念 は、 彼ら に受 げ 入 れら れ たか 、あ るい は少 な く とも、 事業 の成 功や 声高 を 背景に し だい に 権 限を 増 やし て き た管 理者 の自立 性を 正 当 化 す る た めに つ く ら れ新し い 哲学に匹 敵 す るも ので あ った 。 クェ ーカ ニ雇用 主 の見 解 は、 資本 所 有 者 で あ る 雇用 主 の 自己 防 御的 な古い や り方を 非 難し 、 そ の結 果、 資 本所 有 制か ら管 理 者 が 自立 し よ う とす る 挑戦 に 対 す る1 つ の答えを 彼 らに 与え た。 こ うし た見 解を 「引 き継つ いだ 」 最 初 の著作 は 、1923 年 に 出 版 さ れた ジ ェル トン の有名 な 寸 経 営 管 理 の 哲 学 』(ThePhilosophyofManagement,1923. )で あ っ た。 彼は 、同書 の中で 、資本 家に 対 す る経 営 者 の優 位性 と自立 性を 主 張す る のに たい へ ん苦 心 し た66 ま た ジ ェルト ンは、 ロ ウソト リ ー社 の社員 (staff) で もあ った。 こ のこ と は 、 も ちろ ん、 管理 者で もあ る著 者が 、 自説 を い っそ う発 展 さ せ、 さら に は タエ ーカ ー 企業 家 の意 見 の変 更 に 何 らか の影響を 及 ぼし たか もし れな い こ とを 否定 す る もので はない 。 事実 、 ジ ェルト ンや 後 の ア ーウ ィッ クの よ うな人 だも の仕 事 は、 クエ ーカ ー雇用 主 があ る長 さ と一 貫性 を
130 経 営 論 集 第45 号 (1997 年3 月 ) もっ て最 初 に 解説 し た数多 くの アイ デ アの 展 開を、 よ り完 全 な形 で 書 き留 める こ とであ っ たer 結 局、 クエ ーカ ー雇用主 の概念 の影 響 は、 最 近 で は最 大 の着 想で あ るい わゆ る 「人 間関 係論 」 と い っ た ハ ーバ ―ド学 派 の思想 が、 イ ギ リス の管 理 思 想に す みや かに受 け 入 れら れて い く上 で 、重 要 な 役 割を 果 た し た。 想像に 反 し て、 イギ リス の経営 哲 学 (す な わち √そ の有名 な弁 明者 の著作 ) が、 エル ト ン ・ メイ ヨ ー(EltonMayo ) とそ の同 僚 たち の着 想 に よっ て、突 然、大変 革 を 遂げ た ので は ない こ とを 知 る必 要 があ る。 イ ギ リス の 「科学 的管 理」 研究 者 は、 す みや かに メ イ ヨイ ズ ムを 受け 入れ た68 また、彼 ら は、一 連 の概 念に 「科 学 的」とい う権威 の刻 印をあ っとい う間に 押す こ とが で きる ホ ーソ ン実 験 のよ うな 出来 事を 準備 で き た。さら に、(こ の場合 、世 俗的 な倫 理 から 生 じた)ど の よ うな 権力 ・階級 ・ コソフ リクト の シ ステ ムよ りも、 むし ろ 人 の資質 が労使 関 係を 決定 す る とか。 ご く少 数 の人 だ ち との [心 理的 な] 相 互作 用 の中 に そ の本質 が あ る とい った、 クエ ーカ ー雇 用主 の 仮 定 は 、 ツト(MaryPakerFoUett ) よりも 先に 、イ ギ リ ス の 管理 思 想に す でに 浸 透し てい た。 こ の点 は 、 クエ ーカ ー雇 用主 の最 近 の見 解 と人 間 関 係論 的 アプ ロ ―チ の主要 点 とを 比較 す ればす ぐ に 分 か るこ とで あ る。 まず 、 両 者 とも、 産 業 コソフ リ クト は道 徳的 に 間違 って い るば か りで な く、 不 必 要 であ り決し て産 業に 固有 の も ので はな い と みな した。 労 使関 係の 究極 の 目的 は、 物質 財の 支 給 ば か りで な く 「 より充実 し た生 活1 と か、 メイ ヨ ーのい う 「社会的 満足 」 と考 え られ た。 労 働者 を 動 機づけ る方 法 は、 両者 と も、 労働 者 の人 格 へ の働 き かけ に よ るも ので、非 権 威主 義 者的 ・従業 員 志 向 タイプ の リ- ダ ーシ ップ に 基づ く も ので あ った。 最 も重要 な こ とは、 両者 と も、 労使 関 係 の 全枠 組 みを、 社会 学的 な 「権力 構造 」モ デ ルの 面 でな く、「の れ ん」 とか 「社会 的 スキ ル」とい っ た 心 理学 的 な 面 で位 置づけ た ことで あ る。産 業 内で 権限 を もつ 人 た ち は 、 労 働 者 の 人 格 の 開 発 と か 「社 会的 統 合」 とい った 社会的 目的 のた めに 働ト てい る 限 り正 当視 さ れた。 経 営者 の経 済的 機能は 、 そ れ ほ ど表 面に 出て こな か ったJ と はい え、 広 く社会 に 奉仕 す るた めに 、経 営者 に は、 技術 的 ・ 専 門 的 訓 練に 基づ く権 限が 付与 さ れて いた。な ぜ なら( メイ ヨ ーの言葉 に よれば )、経 営 者 は、技術的 進 歩 と よ力 深 い 人間 の相 互関 係 の助 長 とい っ た、2 つ の 目的 を 結 びっ け るこ と がで き る広 い 視野を もっ て い たか ら であ る。 こ の点を 過 大 評価 しな い ように 注 意す れ ば、2 つ の思 想学 派 の 間に かな りの密接 な 関連 が 存在 す るこ と が分 か ろ う。1 つ は、 第二 次 世 界大 戦 前 のイ ギ リス の管 理 思想に 最 大 の準拠 点 を提 供 して く れた 学 派 であ り、 い ま1 つ は、1940年代 まで かな り重 大 な役 割 を果 た して いた 学 派で あ る。 と くに 、 ノ ー ス コット(Northcott)や ア ーウ ィ ッタの よ うに 、そ の当 時 クエ ーカ ー雇用 主 とい ろい ろ なつ な が りを もう て い た研 究者 は、こ うし た活 動 の中 心 で あっ た69.実 際、 クエ ーカ ー雇用主 の態度 が、倫 理 に よる支 配 か ら動 機づ け技 術に よ る支配 へ と変 わ っ たこ と がは っ き りす れば 、同 じ ように 、批 判
リa ン ・ チ ャ イ ル ド 著 「 ク エ ーカ ー 雇 用 主 と 労 使 関 係 」 131 者 も 、 倫理 学を 明ら か に潜 在的に反 民 主 主義 的 な要 素を もつ 過 程で あ る心理学 の形 に直 し た も のと し て 、「人 間関 係」を 分 析す るか もし れな い70。 1945 年 以 降 の ク エ ー カ ー 雇 用 主 最 後 の ク エ ー カ ー 雇 用 主 会 議 は1948 年 に 開 催 さ れ た レモ れ ま で と 異 な り 、 同 会 議 で は 、 国 家 経 済 計 画 の 検 討 に そ の ほ と ん ど が費 や さ れ 、 労 使 関 係 に お け る 広 範 囲 な 問 題 に つ い て の 集 中 審 議 は な さ れ な か っ た 。 こ の 実 り な き 会 議 は 、 そ の 年 の カ ン ト ン 年 次 総 会 (theLondonYearlyMeeting) で 「 ク エ ー カ ー 教 徒 に よ る 同 族 事 業 の 時 代 は 過 去 の も の で あ る 」 と声 高 に 叫 ば れ た ほ ど 、 初 期 の 会 議 と 比 較 し て 出 席 者 が 少 な か った≒ 事 実 、 ク エ ー カ ー 教 徒 が 経 営 す る 企 業 の 数 が し だ い に 減 少 す る 背 景 に は 、 規 模 の 拡 大 、 合 併 、外 部 か ら の専 門 経 営 者 の 導 入 ・ そ し て 役 員(director ) と し て 経 営 を 続 行 す る 同 族 経 営 者 の 欠 乏 と い っ 九 、 す で に 述 べ た よ うな 産 業 の 官 僚 主 義 化 に 伴 うそ う し た 傾 向 か 依 然 と し て 続 い て い る こ と が あ げ ら れ る 。 こ の こ と は 、 こ ん に ち で も 、 ク エ ー カ ー教 徒 が 経 営 す る 大 規 模 企 業 が あ る こ とを 忘 れ て い る わ げ で は な い 。 管 見 す る と ご ろ で は 、 わ ず か に キ ャド ベ リ ー兄 弟 社 (CadburyBrothers ) と シ ー ・ ア ン
ド ・ ジ ェ イ ・ ク ラ ー ク社 (C.&J.Clark ) は か な り の 規 模 で あ る が 、 カ ラ マ ズ ー有 限 会 社 (Kalam-azooLtd.) は 従 業 員1,450 名 を 抱 え る 中 規 模 企 業 で あ る 。そ の 他 小 規 模 企 業 とし て は 、エ ル ・ ジ ー ・ ハ リ ス 有 限 会 社 (L.G.HarrisLtd. )、エ イ チ ・ エ イ チ ・ ペ イ ン 有 限 会 社(H.H.PayneLtd. )、 ス コ ッ ト ・ ベ イ ダ ー ・ ア ソ ド ・ カ ン パ ニ ー 社(Scott,Bader, で0.) 、 ベ ス ト ・ ア ン ド ・ ロ イ ド 社 (Best&Lloyd ) そ し て ロ ―ズ ・ ス ト ア 有 限 会 社 (LawsStoresLtd.) が あ る 。 以 上 の す べ て の 企 業 で 、利 益 分 配 計 画(profit-sharingschemes) を 含 む 多 く の 便 益 が 従 業 員 に 供 与 さ れ て い る こ と ぱ 特 筆 で き る 。 一 方 で は 、( そ れ ほ ど 深 刻 な 指 揮 系 統 問 題 が な い ) 小 規 模 企 業 の 一 部 で 、「 自 由 集 団 討 議 」 や そ の 他 進 歩 的 な 労 働 協 議会(workconsultation ) 方 式 と い っ た 実 験 が 行 わ れ き た 。 言 い 換 え れ ば 、 多 く の 実 験 が 、 零 細 規 模 の 企 業 内 で 実 施 さ れ て い る た め に 、 別 の 経 営 者 に 影 響 を 及 ぼ す こ と は 限 ら れ て い る が 、 マ ネ ジ メ ント に 関 す る 新 し い 概 念 や 方 法 を 追 求 す る 伝 統 は 、 残 り の クエ ¬ カ ー 雇 用 主 に も 引 き 継 が れ て い る とい え る 。 と は い う も の の 、 現 代 の 管 理 思 想 へ の クェ ー 、カ ー雇 用 主 の 影 響 力 が 明 ら か に 低 下 し た お も な 原 因 は 、 す で に 述 べ た よ う な ク エ ーカ ー雇 用 主 の 態 度 と 「人 間 関 係 論 」 研 究 者 の 態 度 と の き わ め て 近 い 類 似 性 に あ る 。 か つ て 新 分 野 開 拓 の た め に ( ご く わ ず か で は あ る が 他 の 人 び と と) ク エ ー カ ー 雇 用 主 に 託 さ れ て い た ま さ に そ の 概 念 を 、 こ ん に ち 、 イ ギ リス の 経 営 者 は 自 ら の 経 営 哲 学 と し て 受 け 入 れ る 。 第 二 次 大 戦 以 来 、( そ れ 以 前 の ク エ ー カ ー 雇 用 主 の 影 響 力 を 忘 れ て い る 訳 で は な い が)「 人 間 関 係 論 」 の 影 響 を 受 け て い る マ ネ ジ メ ン ト に 関 す る 著 作 や 演 説 の う ち 、 と り わ け 「 奉 仕 」「 社 会 的 責