北 海 道 草 地 研 究 会 報 第20号: 202 -207 (1986)
オ ー チ ヤ ー ド グ ラ ス と ペ レ ニ ア ル ラ イ グ ラ ス の 混 播 草 地
における草種間競争と個体のサイズ分布
湯 本 節 三 ( 滝 川 畜 試 ) ・ 小 倉 紀 美 ( 天 北 農 試 ) 緒 Eヨ 乙れまで,混播草地における草種構成の変化について様々な立場から多くの試験が行なわれ,非常 に多数の知見が得られている。しかし,それら試験において,草種構成の変化の様相を草地群落の個 体群構造の観点から捕えたものは少ない。 本報では,オーチヤードグラスとペレニアルライグラスの混播草地において 播種当年の群落形成 時に刈取り回数を異にした場合を例にとり,乙のとき草種構成の変化の要因である刈取り回数および 種間競争に対する両草種の反応を個体群構造の一つの尺度である個体のサイズ分布の観点から明らか にしつつ,混播草地における草種構成の変化の様相を検討した。 材料および方法 供試草地は, 1984年から始まった「地域プロ」において,天北農試草地飼料科が分担実施してい る試験区の一部である。試験区はオーチヤードグラス(品種,キタミドリ)とペレニアノレライグラス (品種,ブレンド)の両単播草地およびそれらの混播草地よりなり,播種目は '84年6月5日である。 播種量は,いずれの草地とも,種子数換算で1,800粒/nlであり,混播草地では各草種900粒/nlで ある。同播種量は,重量換算で オーチヤードグラスの場合に 2kg / 10a IC相当する。 播種後晩秋までの間,刈取り回数2,3および4回の処理を実施した。刈取り日は,いずれの処理 区とも,初回刈りが7月25日,最終刈りが10月24日である。なお,上記以外の刈取り日は3回刈り区 2番草が9月3日, 4回刈り区2番草が8月21日,同3番草が9月25日である。 各刈取り回数区最終刈取り時に,区内5カ所で50x 50cm方形枠内の全個体を堀り取り,個体ごとに 地上部乾物重を測定した。本報では,乙れら測定値から個体群構造を個体のサイズ分布に基づき検討 した。 結果および考察 図1には,オーチヤードグラスとペレニアノレライグラスの両単播草地およびそれらの混播草地にお サる各刈取り回数区最終番草の乾物重を示した。単播草地における乾物重は,いずれの刈取り回数区 とも,ペレニアノレライグラスがオーチヤードグラスよりも優った。混播草地における両草種の乾物重 は,単播草地と同様,ペレニアルライグラスがオーチヤードグラスよりも優り,ペレニアノレライグラ スの構成割合(乾物重比)は2回刈り区2番草で67%,3回刈り区3番草で71必, 4回刈り区4番草 で76労であった。乙のように,刈取回数の増加に伴い,混播草地におけるべレニアルライグラスの構 成割合が高まる傾向にあった。 次に,図 lの両草種の単播草地と混播草地での乾物重より,混播草地における草種間競争について 検討した。混播草地において競争(相互作用)が働いていない場合,各構成草種の生産量は播種割合第20号 (1986) 北海道草地研究会報 200 100 乾 物 重 単 0(%) 100(%)
1
昆 単 100 0 ーlanu ハ U 牢 干 円 U j昆 単 100 0 混 単 50 0 50 ' 100。
単 播 種OG 100 割 合PRG 0 50 50 4回刈り区 4番 草 オーチヤードグラス (OG) とペレニア ノレライグラス (PR G)の単播草地 (0 G:・, P R G :0)
およびそれらの混 播草地(⑨)における乾物重(g / O. 25d) 図1
に応じて直線的に変化する(図1の 点線)。 逆に草種聞に競争が働い ていると,各構成草種の生産量は 乙の直線から隔たることになり, 上方向への隔たりは単播に比較し て混播で得をしたことを意味し, 下方向への隔たりは損をしたこと を意味するo~ ¥ずれの刈取り回数区 でも,ペレニアノレライグラスの混 播草地での乾物重は上記直線から 上方向に隔たり,オーチヤードグ ラスは下方向に隔たっている乙とか ら,前者は混播により得をし,後 者は損をしたことになる。言い替 えれば, 50 50 3回刈り区 3番 草 2回刈り区 2番 草 ペレニアノレラ 乙の場合, イグラスはオーチヤードグラスよ りも競争l乙5
郎、と言える。さらに, 2回刈り区2番草と4回刈り区4 番草では,ペレニアルライグラヌ の得した量とオーチヤードグラス の損した量とが一致し,両草種を込みにした混播草地の乾物重は単播草地から期待される量に等しか った。 3回刈り区 3番草では,ペレニアルライグラスの得した量がオーチヤードグラスの損した量よ りもやや上回った。 単播草地と混播草地における2回刈り区 2番草, 3回刈り区 3番草および 4回刈り区 4香辛の個体のサ イズ分布を図2,3および4にそれぞれ示した。これら図において,単播草地との比較のため,混播草 地での各サイズクラスの個体数は実測値の 2倍で示した。両草種とも,個体のサイズ分布は密度スト 混播草地 OG 阿 PRG悶 単播草地 OGf
.
1
PRG11 40 20 個 体 数 3.0 2. 5 個 体 重 (g) オーチヤードグラス (OG) とペレニアノレライグラス (P RG)の単播草地およびそれらの混播草地における 2回刈 り区2番草のサイズ分布,混播草地における各サイズの個 体数は実測値の2
倍 2.0 1.5 1.0 O. 5 0 0.0 図2-203-個 体 数 個 体 数 北 海 道 草 地 研 究 会 報 第20号 (1986) 120I
一
混播草地OG n 肉 PRQ 1吋
1
1
単播草地OPR G n Gf
.
1
80 60 40 20。l~h均一
2.0 個 体 重 (g) 図3 オーチヤードグ安ス (OG)とペレニアノレライグラス (P R G)の単播草地およびそれらの混播草地におけ る3回刈り区 3番草のサイズ分布,混播草地における 各サイズの個体数は実視.IJ値の2
倍 140r 混播草地OG n 阿 PRG吋
同
単播草地OGr
1
PRG:
-
1
100 80 60 40 1.0 2.0 2.5 3.0 個 体 重 (g) 図 4 ォーチャー'ドグラス (OG')とペレニアルライグラス (P RG)の単播草地およびそれらの混播草地におけ る4
回刈り区4
番草のサイズ分布,混播草地における 各サイズの個体数は実測値の2倍北 海 道 草 地 研 究 会 報 第20号(1986) レス下の植物群落で通常見られる,いわゆるL字型分布を示した。 L字型分布は,対数変換することにより,正規分布に従う乙とが知られている。図5. 6では,比 較を容易にするため,個体重を常用対数変換した後の頻度分布に正規分布を適合させて得られた正規 曲線により,個体のサイズ分布を示した。個体のサイズ分布の草種間比較より,一般に,オーチヤー ドグラスはペレニアノレライグラスよりも多数の小さい個体よりなり,ペレニアルライグラスは少数の 大きい個体より構成されている乙とがわかる。 30r 個 l 本 20
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OL OG混 ll=198 PRG混 ll=119 s = O. 4 3 7 . . s = O. 432 単 II=:=252 _ . と 単 ll=141 ~..~、・ 4 s = O.467 _,.~〆'ー』、....,~.., ψs= 0.421 J.~ _.._:;;;シ~ミ芯ミ\ 個 体 重 ( 対 数 日 盛 ) 2回刈り区 2番 草 OG混 ll=250 PRGi
見 ll=133 s = 0.440 30r 単 II= 239 J . ム s= 0.386I
s=O. 438 ~ヱ---戸L... 単 ll= 108体 叶
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3回刈り区 3番 草 OG混 ll=251 PRG混 ll=177 40r "' s =g
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個 体 重 ( 対 数 目 盛 ) 4回刈り区4番 草 混播草地 OG:ーー PRG:一一 単播草地 OG:・一- PRG:一一 nは個体数(/O.25rrC, ただし混播草地での各草種の個体数は 実測値の2倍) sは標準偏差,矢印は平均値。 図5 オーチ,ヤードグラス (OG)とペレニアルライグラス (P R G)の単播草地およびそれらの混播草地におけ る個体のサイズ分布(常用対数変換後にあてはめた正 規曲線によって示す) 両草種の刈取り回数に対する反応を図 5の単播草地における個体のサイズ分布よりみると,両草種 とも. 4回刈り区 4番草で個体数が多く,個体聞のサイズのばらつきが小さく,分布はサイズ、の小さい 方向に位置していた。 同じく,図 5に基づき,単播草地との比較から,混播草地における種間競争の状態を個体のサイズ 分布に着目してみると.2回刈り区2番草では,オーチヤードグラスの場合,各サイズクラスで個体数 が減少し,分布の位置に変化がなく,ペレニアルライグラスの場合,小さいサイズクラスで個体数が-205-北 海 道 草 地 研 究 会 報 第20号(1986) 減少する反面,大きいサイズクラスで個体数が増加し,分布はサイズの大きい方向に移動した。 3回 刈り区3番草では,オーチヤードグラスの場合,小さいサイズクラスで個体数が増加し,その分,大 きいサイズクラスで、個体数が減少して,分布はサイズの小さい方向に大きく移動し,ペレニアノレライ グラスの場合,分布の中心に近いサイズタラスで、個体数が増加した。 4回刈り区 4番草では,オーチ ヤードグラスの場合,分布の中心に近いサイズクラスで個体数の減少が大きく,分布の位置は変わら ないものの,ばらつきは大きくなり,ペレニアノレライグラスの場合,小さいサイズクラスで個体数が 減少する反面,大きいサイズクラスで個体数が増加して,ばらつきは大きくなった。乙のように,個 体のサイズ分布に関して,種間競争に対する反応は草種間で異なるとともに,それら反応は刈取り回 数処理問でも異なった。従って,図 lに示したごとく,いずれの刈取り回数区でも,種間競争により オーチヤードグラスが損をし,その分,ペレニアルライグラスが得をしたが,その損得の仕方は草種 間や刈取り回数処理問で異なると言える。また オーチヤードグラスは ペレニアノレライグラスに比 較して,刈取り回数の違いにともなう種間競争による個体のサイズ分布の変化の仕方が顕著で,これ
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n k 円i ︼ { つ 白 戸 hd τ r -a n 叶 U + 1 0 G 一 一 = o n s r ' B E E F E E E E ﹄ B E E S L ﹁ 同 υ n H U ﹁ h u n H U 1 4 1 i 個 体 数 OG n= 125 s = 0.440 PRG n= 67 s = 0.386 個 20r OG十PRG土
OG n= 126 個 15ト
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個 体 重 ( 対 数 目 盛 ) 4回刈り区4番 草 OG+PRG:……, OG:-ー, PRG:-ー 図6 オーチヤードグラス (OG)とペレニアノレライグラス (P R G) の混播草地における個体のサイズ分布(常 用対数変換後にあてはめた正規曲線によって示す) p n北 海 道 草 地 研 究 会 報 第20号(1986) は同種が相対的に多数の小さい個体より構成されているためと考えられる。 混播草地における構成草種の個体のサイズ分布は,刈取り回数や種間競争に対する上記のような草 種特有の反応により規定されているが,それら個体のサイズ分布に基づく混播草地での草種構成の様 相(図6)は, 2回刈り区2番草と4回刈り区4番草で,両草種の分布の中心聞の距離が同様に短か く,分布の重なりが大きかった。一方, 3回刈り区 3番草では,オーチヤードグラスの分布が顕著にサイズ の小さい方向に位置し,ペレニアルライグラスのばらつきが小さいため,分布の重なりは少なく,両 草種を込みにした混播草地全体のばらつきは大きかった。 混播草地におけるべレニアノレライグラスの構成割合は,刈取り回数の増加にともない高まる傾向に あった。乙れは,主に, 2回刈り区 2番草に比較して 3回刈り区 3番草で,オーチヤードグラスの分布 が種間競争によりサイズ、の小さい方向に顕著に移動していること,さらに, 3回刈り区3番草に比較して