共同研究の概略 ―方法と成果―
著者 洪 政国
雑誌名 国立民族学博物館研究報告別冊
巻 017
ページ 111‑139
発行年 1992‑12‑25
URL http://doi.org/10.15021/00003574
第 皿 部
洪 共同研究の概略 一 一方 法と成果一
共 同 研 究 の 概 略 方 法 と 成 果一
洪 政 国*
要 旨
民 族学 研 究者 に と って重 要 な研 究 資 料 で あ る標 本 に 関 す る各 種 情報 ・デ ー タ類 を 民 族 学 研 究 者 が 活 用 す るた あ のコンピューター 応 用 シ ス テ ムを 検 討 し,民 族 学 研 究 用 画 像 検 索 シス テ ム,画 像 類似 検索 シス テ ム,文 化 項 目分 類 コ ー ド概 覧 シス テ ム等 の試 験 シ ステ ムを 構 築 した 。 本 共 同 研 究 は,人 文 科 学 系 の専 門 家 と コ ンピ ュ ータ ー ・情 報 処 理 系 の 専 門 家 に よ る共 同 研 究 で あ る と共 に,産 学 共 同研 究,さ らに,人 文科 学 系 へ の コ ン ピュ ー タ ー応 用 研 究 や 画 像 デ ー タペ ース シス テ ム とい った,コンピューター の研 究 事 例 が 少 ない 分 野 で もあ る。 我 々は,専 門分 野 を異 にす る参 加 者 に と って興 味 を共 通 に持 つ こ とが で き る技 術 的 課 題 を 中 心 に,コ ン ピ ュー タ ー シ ス テ ムの 最終 利 用者 で あ る国 立 民 族 学 博 物 館 の民 族 学 研 究 者 に と って役 に立 つコンピューター 応 用 研 究 に 努 め た。 本 稿 では,我 々が選 択 した基 本 方 針 とそ の成 果 に つ い て報 告す る。
1 は じめ に
民 族 学 に お い て は,世 界 の 諸 民 族 の文 化 的 特 色 を 明 らか にす るた め,標 本 資 料,映 像 音 響 資料,文 献 図書 資 料 等 が 使 わ れ,実 証 的,比 較 的 に研 究 が 行 わ れ る。 この 内, 標 本 資 料 とは 世 界 各地 の諸 民 族 が使 用 し,あ るい は使 用 して いた 「もの」,つ ま り農 業 ・狩 猟 ・魚 労 等 の生 産 に 関 す る用 具類,衣 ・食 ・住 等 の生 活 に関 す る用具 類,紡 織 製 品 を は じめ と した 「も の」 の製 作 技 術 に関 す る用 具類,お よび 冠 婚 葬 祭 に関 す る用 具 類 等 様 々な もの を い う1国 立 民 族 学博 物 館 1985】。一一方,民 族 学 研 究 に お い ては, 物 理 的 対 象 物(も の)と 人 間 の社 会 的 行動(文 化)と の 間 に は密 接 な関 連 が あ る とい
う立場 を とる 『物 質 文 化 』ISc肌ER]ETH l9851,あ る課 題 につ いて 多 くの地 域 ・民 族 事 例 を 取 り上 げ る 『通 文 化 的 方 法 』[MOORE 1961】 とい う基 本 的 な考 え 方 ・研 究 方 法 が あ り,「 もの」 と して の標 本 資料 が研 究 に供 され る。 この際 標 本 は,民 族 学 的 見 地 か ら意 味 が 付 与 され て い る もの とみ な され て い る。 つ ま り,個 々 の標 本 は,誰 もが 使 う もの の イ ンス タ ンス と して,文 化 的 意 味 を 持 つ もの と して 取 り扱 わ れ,実
*日 本 アイ ・ピー ・エム(株)東 京基礎研究所
国立 民族学博物館研究報告別冊 17号
世 界 の 認 識 に使 わ れ る。
一 般 的 に,標 本 資 料 の 種類 と数 量 の増 加 に は 際 限 が な く,用 途 が 多様 で あ る た め, コ ン ピ ュ ー タ ーに よ り管 理 が 行 わ れ,民 族 学 研 究 に 一 層 活 用 され る こ とが 期 待 され る。 特 に,民 族 学 研 究 で は研 究 者 の専 門 的 知 識 を 前 提 に創 造 的 活 動 が 行 わ れ る た め に,視 覚 能 力 の活 用 が 必 要 で あ る こ とや,各 種 研究 資 料,特 に 標 本資 料 は 「も の 」 と して 一 般 的 に利 用 され る こ と等 か ら,標 本 を 画 像 デ ー タ と して利 用 す る こ と と,画 像 デ ー タの 効率 的活 用 のた め の 画像 デ ー タベ ース の構 築 の重 要 性 が 指摘 され る1)。
㌔温方,コンピューター 技 術,画 像 処 理 技 術 お よび デ ー タベ ー ス管理 技 術 の発 展 ・普 及 に 伴 って,画 像 デ ー タベ ース シス テ ムの 研 究 ・発 展 が近 年 に 至 り大 き く期 待 さ れ る よ うに な って きた1横 矢 ・田村 1981;安 田 他 1985;洪 ・六 川 1985;GARDARIN and GELENBE 1985;CHANG 1985;中 村 ・石井 1987;坂 内 ・大 沢 1987】。 つ ま り,画 像 処 理 技 術 の研 究 や 実 用 化 の発 展 は過 去15年 の 間 に顕 著 で あ り,そ れ に 伴 い画 像 を 効率 的 に 管 理 ・利 用す る こ との重 要 性 が高 ま って きた。 また,デ ー タベ ー ス管 理 技 術 の研 究 や 実 用 化 の発 展 に よ って,デ ー タ ベ ース 管理 シス テ ム の高 水 準 化 や デ ー タ ベ ー ス の 高 度 利 用 化 が 強調 され る よ うに な り,画 像情 報 を新 た な デ ー タ型 と して取 り扱 うため の研 究 も本 格化 して きた。
また,こ れ らの状 況 の 中 でコンピューター の応 用 分 野 が 拡 大 され,い ま ま で機 械 と か 数 理 とい った も のか ら最 も縁 遠 い分 野 と され て きた 人 文 科 学 分野 に も,コ ン ピ ュー タ ーが 普 及す る よ うに な って きた 。 この た め,理 工 系 分 野 の 利 用者 を対 象 と した 従 来 の 「開 発 主 導 型 」 の情 報 処 理 研 究 や ゴ ソ ピ ュー タ ー シ ス テ ム構 築 に 対 して,「 利 用 者 主 導 型 」 のコンピューター シス テ ム の構 築 や,人 文 科 学 分 野 に お け る各 種 デ ー タに 対 す る情 報処 理 研 究 の必 要 性 が強 調 され て い る[杉 田 1987a, b】。
画 像 デ ー タ ベ ー スの 研 究 は,事 務 文 書,図 面,地 図,医 療 画 像等 個 々 の事 例 に つ い てす で に報 告 され[McKEowN l983;篠 田 他 1983;横 矢 ・田村 1984;嶋 田 ・江尻 1986;野 口 他19861,一 部 実 用 化 レベ ル に達 す る もの もあ るが,画 像 デ ー タ ベ ース の概 念 や一 般 的 構 築 法 の確 立 には 至 って は い な い。 一 方,人 文科 学 分 野 の 研 究 を 支援 す るた め の 画 像 デ ー タ ベ ー ス に つ い て は い くつ か の事 例 が報 告 さ れ て い る 【小 沢 1985;OIKAwA 1987;打 波 1987】。 これ らは 古 墳 研 究 を支 援 す る た め に コ ソ ピ ュ ー タ ー グ ラ フ ィ ッ クスを組 み入 れ た もの や,発 掘 物 を 簡 易 に 画 像化 し検 索 す る もの,現 地 調 査 の デ ー タを 使 っ て イ ベ ソ トの 全 体 像 を 把 握 す るた め の マ ル チ メ デ ィ ア デ ー タ ベ ース 等 で あ る。 しか し,民 族 学 研 究 の標 本 の よ うに 各 々の デ ー タが 多様 な意 味 を持
1)本 書 「民族学 とコンピューター」お よび 「画像情報 の利用 と課題」参照。
洪 共同研究の概略 一一方 法と成果一
つ 場合 の デ ー タの 管 理 や,多 様 で 大 量 な もの を カ ラ ー画 像 と して 一 括 して管 理 す る方 法,高 度 で容 易 な 検 索条 件 の入 力 と検 索処 理 を行 う方 法 等 は残 され た課 題 とい え る。
特 に,人 文 科 学 系 で は 一般 的 に思 弁 的 な 作 業 が大 き な比 重 を 占め,処 理 作 業 が定 型 的 では な く個 別 的 にす す め られ,取 り扱 う情 報 や媒 体 が 極 め て多 岐 に わ た る等 の た め, 高 度 で 多様 な統 合 化 され た情 報 処 理 技 術 が 要 求 され る。
国 立 民族 学 博 物 館(民 博)で はす で に 各 種 の 民族 学 研 究 用 デ ー タをコンピューター シス テ ムに 入 力 し,こ れ らの 有効 活 用 を 図 る段 階 に至 って い る。 標 本 も 同様 に 各 種 の 型 の デ ー タ と して入 力 され,利 用 可 能 な状 態 に あ る こ とか ら,本 共 同研 究 に お い て は 主 と して,標 本 画像 の蓄 積 と検 索 を 中心 に コ ン ピュー タ ー の応用 手 法 であ る画 像 デ ー タ ベ ー スに つ い て,そ の基 本機 能 の基 礎 的 研 究 と,そ れ に も とつ い た プ ロ トタイ プの 構 築 を 行 うこ と と した 【洪 他 1986;久 保 他 1986;佐 藤 ・井 岡 1986;洪 ・井 岡 他 1987;洪 ・黒 川 他 1987;井 岡 1987;井 岡 他 1987;佐 藤 1987;佐 藤 他 1987;黒 川 1987;黒 川 他 1987;井 岡 1988;佐 藤 他 1988;HoNG 1988;HoNG et al.
1988;橋 原 他1989;KuRoKAWA 1989;黒 川 他1990;HoNG 1990】。 また,民 族 学 研 究 に お い て共 通 の基 礎 的 情 報 と して 使 用 され て い るHRAFコ ー ド2)を よ り有 効 に 活用 す るた め に,パ ー ソナ ル コン ピ ュー ター上 での コー ド概 覧 機 能 に つ い て も検 討 した。 す なわ ち,こ れ ら民 族 学 研 究 に と って重 要 な情 報 を 有効 利 用 す るた め に コ ソ ピ ュータ ー を いか に応 用 す べ きか につ いて 研 究 した の で,こ れ ら各 テ ー マ の基 本 的 な考 え方 や方 法,お よび 成 果 の概 要 につ いて報 告 す る。 な お,個 々の技 術 的 内 容 の詳 細 は 本 書 で別 途 報 告 され て い る。
2 共 同研究におけ る課題 と方法
人 文 科 学 系 研 究 者 とコンピューター の研 究 者 に よる本 共 同研 究 に お け る特 徴 と課 題 お よび これ らに も とつ い て 選択 ・実 施 した 方 法 は 以下 に示 す通 りで あ る。
2.1課 題
本 共 同 研 究 は 産 学 共 同 とい う特 徴 を 持 つ が,共 同 研 究 を 実 施 す る に あ た っ て は,
「学 」 と 「産 」 の 違 い よ りも 技 術 的,学 問 的 観 点 に お け る 共 通 の 課 題 に 取 り組 む よ う に 努 め た 。 こ の 際 の 課 題 は 次 の3点 に ま と め ら れ る。(1)人 文 科 学 系 に お け る 情 報,
2)本 書 資 料 編B「HRAF/文 化 項 目分 類(OCM)コ ー ド」, C rHRAF/地 域 ・民 族 分 類 (OWC)コ ー ド」 お よび 本 書 「標 本 資 料 検 索 コ ー ドと して のHRAFコ ー ドの 利 用 に つ い て」
参 照。
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デ ー タお よび ユ ーザ ーを対 象 と して い る。 具 体 的 に は,民 博 が所 有 す る各種 の民 族 学 情 報 とデ ー タ,ユ ーザ ー と して の民 族 学 研 究者 を対 象 とす る。(2)人 文 科 学 系 と,コ
ソ ピ ュ・'一タ ー とい う理 工 系 分 野 の研 究 者 に よ る協 力作 業 で あ る。(3)情 報 処 理 ・コ ソ ピ ュー タ ー技 術 分 野 に お け る学 問 的,技 術 的課 題 の解 決 を め ざす 。
コンピューター の 人 文 科学 分 野 へ の 応 用 は,民 博 に お い てす で に実 施 中 で あ り多 く の成 果 を 見 るに至 って い るが1国 立 民 族 学博 物 館 1985】,日 本 ア イ ・ピー ・エ ム(株) か ら参 加 した研 究 者 に と って は初 め て の経 験 で あ り,民 族学 は勿 論 人 文 科学 とは 馴染 み の薄 い分 野 で あ る。 また,民 博 が 所 有 す る各種 の専 門 情報 ・デ ー タに つ い て もほ と ん ど何 の知 識 も持 って い な い状 態 で あ った 。 この よ うに,対 象 とな る専 門 分 野 に お け る知 識 の 乏 し さを いか に 克 服す るか が 大 きな課 題 で あ る。 また,こ の分 野 の 専 門 家 と 協 力 してコンピューター の 応 用方 法 を研 究 す るため に は,相 互 の 理解 が必 要 で あ る。
特 に時 間 に 制 約 され て い る共 同研 究 の期 間 内 で,い か に 相 互 の 専 門分 野 の違 い を 乗 り 越 え て理 解 しあ え るか が,共 同研 究 成 否 の 鍵 と もい え る。
民族 学 情 報,特 にそ の画 像 情報 を民 族 学 研 究者 に と って効 率 的 に蓄 積 し,検 索 す る た め の情 報 処 理 技 術 に お け る課 題 と して次 の3点 が あ げ られ る。 す な わ ち,(1)画 像,特 に カ ラ ー画像 は1点1点 の デ ー タ量 が 大 きい(通 常 は3メ ガパ イ ト)こ とに加 え て,デ ー タ ベ ース の対 象 とな る画 像 デ ー タ全 体 の デ ー タ量 も極 め て大 きい た め に (テ ラバ イ ト単 位),こ れ ら大 容 量 の デ ー タ を いか に効 率 的 に蓄 積 し,実 用 的 な 時 間 で 検 索 す る か とい った,物 理 的 な課 題 が解 決 され なけ れ ぽ な らな い 。 次 に,(2)効 率 的 な 画 像検 索 の実 現 が あ る。 従 来 の デ ー タベ ー スに お け る検 索 は,統 計 デ ータ ベ ー ス の 例 の よ うに キ ー ワー ドに よる もの が 主 で あ り,画 像 の よ うに非 コー ド化 情報 を扱 うも の で は なか った 。 画像 の検 索 は,そ の 内容 の記 述 が一 様 に決 ま らず 極 め て複 雑 で あ る た め,従 来 の よ うに定 型 化 され た 文 字 数値 を用 い るだ け で は効 率 的 な 検 索 が 困難 で あ る。 この ため,従 来 とは異 な り画 像 の 特徴 を考 慮 した検 索 方 法 が 検 討 され な け れ ば な らな い 。 最後 に,(3)画 像 デ ー タ ベ ー ス とい った コ ン ピ ュ ー ター シス テ ム の利 用 者 が 人 文 科学 系 の研 究 者 で あ る ことか ら,馴 染 みや す い マ ソマ シ ンイ ンタ ー フ ェー ス の 実 現 が 必要 で あ る。 コ ン ピ ュー タ ー シス テ ム の機 能 が い か に優 れ て いて も,利 用 者 に と って 使 い難 い もの で あれ ば 価 値 の 乏 しい もの に な る。 特 に今 回の 共 同 研 究 は,人 文 科 学 系 へ の コ ン ピ ュー タ ーの応 用 を め ざ して い る こ とか ら,人 文 科 学 研 究 者 に と って馴 染 み や す い ユ ーザ ーイ ンタ ー ア ェース は極 め て重 要 な研 究 課 題 といえ る。
洪 共 同研究 の概略一 方法 と成果一 一
2.2方 法
我 々が 選 択 した 共 同 研 究 の実 施 方 法 は 次 の5項 目に整 理 され る。 す なわ ち,(1)応 用 指 向 に も とつ い た プ ロ トタ イ プ の構 築,(2)民 博 お よび 民 族 学 研 究 を 知 る こ と,
(3)民 族 学 研 究 者 と情 報 処 理 研 究 者 との 間 の 役 割 分 担,(4)早 い サ イ クル で の プ ロ ト タイ プ構 築 と頻 繁 な フ ィー ドバ ック,(5)既 存 の 最 新 技 術 の応 用 に も とつ いた 研 究 価 値 の追 求 等 で あ る。
民族 学 研 究 者 とコンピューター 研 究者 には そ れ ぞ れ の 専 門 を尊 重 し,専 門 の立 場 で 協 力 しあ う こ とに努 め た 。 そ のた め,そ れ ぞれ の分 担 を 次 の よ うに した 。 民族 学 研 究 者 は,基 礎 デ ー タ の提 供 とデ ー タを コ ン ピ ュー タ ー シス テ ムで使 用 す る際 の要 求 内容 の提 供,お よび プ ロ トタイ プを実 際 に使 用 して,そ の評 価 と改 善 点 を指 摘 す る こ と と した 。 一方 コ ン ピ ュー タ ー研 究者 は要 求 内 容 を分 析 ・定 義 し,コ ン ピ ュー タ ー シス テ ムをデザイン す る と共 に,機 能 や シス テ ムを 実現 す るた め の応 用 技 術 を研 究 し,プ ロ
トタ イ プを 構 築 した。
我 々 は,共 同研 究 を 遂行 す る上 で抽 象的 な論 議 は で き るか ぎ り避 け,具 体 的 な応 用 分 野 で あ る民 族 学 分 野 に お け る 「ナ マ の もの」 にで き るか ぎ り直 接 触 れ る よ うに努 め た 。 具体 的 に は,標 本 を どの よ うに 収 集 し,記 録 し,整 理 し,利 用 す るの か に つ い て は 民 族 学研 究者 か ら直 接 聞 くと共 に,こ れ ら原 デ ー タをコンピューター に入 力 す る過 程(標 本 画 像 入 力,標 本 情 報 カ ー ド作 成 等)や,そ れ ら の管 理 に つ い て は担 当 者 か ら 直 接 聞 き,見 学 した。 我 々は,12名 の民 族 学 研 究者 と各 々1回 お よそ3時 間,こ の 他 に もお よそ10名 の 民 族 学 研 究 者 と も散 発 的 で あ るが 聞 き取 り調 査 を行 った 。 さ らに5 名 の 民 族 学 研 究 者 に 対 して は,標 本 資 料 を 検 索 す る 際 に 必 要 とす る29種 類 の 検 索 項
目3)に つ い てアンケート 調査 も行 った。
これ らの結 果,研 究 者 が個 人 で管 理 で きる カ ー ドの点 数,す なわ ち標 本 の数 は お よ そ2000点 か ら3000点 で あ り,こ れ らを整 理 した フ ォル ダ ーの 場 合 は お よそ100点 か ら 200点 まで で あ ろ うこ とが理 解 で きた。 これ を,民 博 がす で に所 有 す る標 本 画 豫4)と, 標 本 資 料 の情 報 カ ー ドs)を考 慮 した時 の情 報 量 は,お よそ14ギ ガバ イ トか ら21ギ ガ・ミ
イ トに達 す る。 す なわ ち,コンピューター を 使 用 した際 に個 人 と して取 り扱 え る デ ー
3)本 書 「属 性 情報 を 用 い た標 本 検 索 」表1参 照 。
4)カ ラーお よび 濃 淡 で標 本1点 に つ き7メ ガバ イ ト。 本 書 資 料 編D「 標 本 画像 自動 処 理 装 置 」 参 照 。
5)33属 性 項 目が記 述 され,デ ータ量 は標 本1点 に つ き平 均2.1キ ロバ イ ト。 本 書 資 料 編A「 情 報 カー ド」 お よび 本 書 「標 本 資料 の整 理 と活用 一 コ ン ピュ ー ター の利 用一 」 参 照 。
国立民族学博物館研究報告別冊 17号
タ量 は,少 な くと も これ ら以 上 であ る こ とが必 要 と され る。 また,検 索 に必 要 とす る 項 目につ い ては,提 示 した29項 目に対 す る必要 度 は 研 究 者 に よって 異 な る もの の,全 体 的 に は29項 目全 て が必 要 で あ る こ とが わ か った 。 この こ とか ら,利 用 者 全員 に対 し ては これ らの検 索項 目全 て が使 用 可 能 とす べ き で あ る と共 に,個 人 が 融 通 性 を持 って 自 由に項 目を 選 択 利 用 で きる環 境 が 必 要 とい え る。 これ らの値 を 参 考 に して,標 本 画 像 の デ ー タベ ー スに おけ る シス テ ム構 成,各 種 デ ー タの 蓄積 ・検 索 機 能,お よび これ
ら操 作 を容 易 に行 うた め の ユ ーザ ー イ ンタ ー フ ェー スを 検 討す る こ と と した。
また,画 像 の 内容 に も とつ い た検 索 方 法 を研 究 す る上 で,標 本 の実 物 を 民 族学 研 究 者 は どの よ うに見 てい るの か を基 本 に しよ うと した。 形 状 特徴 を も とに内 容 検 索 す る た め に 「か ご」 の画 像 を,ま た色 特 徴 を も とに 内容 検 索 を す るた め に 「仮 面 」 の 画 像 を選 択 した。 これ ら標 本 の民 族 学 的 特 徴 づ け や分 類 を どの よ うにす る のか を知 るた め に,「 か ご」 を研 究 対 象 と して い る民 族学 研 究者 と,色 お よび 「仮面 」 に つ い て 研 究 を行 って い る民 族 学 研 究 者 に それ ぞれ 直 接 面 談 し,聞 き取 りを 行 った。
利 用 者 が要 求す る コン ピュ ー タ ー シス テ ムを 適 切 か つ効 率 的 に 実現 す るた め に,プ ロ トタイ ピ ソ グが有 効 で あ る。 これ は,シ ステ ム利 用 者 とシ ステ ム構 築 者 が 密 に 接 触 し,お 互 に曖 昧 な要 求 定 義 の 内 容 を 「ス テ ップ ・バ イ ・ス テ ップ」 で プ ロ トタイ プを 構 築 しなが ら,「 トライ アル ・ア ン ド ・エ ラ ー」 で 要 求 定 義 を 明 確 に しよ うとす る も の であ る。 そ の た め には,両 者 が頻 繁 に接 触 す る と共 に プ ロ トタイ プ構築 のサ イ クル を で き るか ぎ り短 縮 し,タ イ ミン グの 良 い改 良 に 努 め る こ とが必 要 で あ る。 本 共 同研 究 では,目 標 とす る画 像 デ ー タベ ース シス テ ムの 基 本 的 な概 念(イ メ ー ジ)を 示 す た め の最 初 の プPト タイ プを 共 同研 究計 画 作 成 後5カ 月 で構 築 し,使 用 者 に提 示 した。
まず,構 築 者 が実 演 して 全 体 の操 作 の 流 れ と基 本 機 能(操 作 機 能,操 作 速 度,操 作 性,画 質,馴 染 み やす さ等)を 一通 り見 学 す る こ とか ら始 め た(こ の 際,詳 細 な説 明 や 仕組 み に つ い て は で き るか ぎ り避 け,操 作 の説 明 に 限 定 す る こ とが重 要 で あ る)。
つ い で,使 用 者 が 直接 操 作 を 行 った り,詳 細 な 説 明 を 参 考 に,使 用 者 側 か らの具 体 的 な評 価,印 象,そ れ ま で持 っ て いた イ メー ジ との違 い 等 を聴 い て,次 のバ ージ ョ ソ構 築 に反 映 させ る こ と とな る。 最 初 の バ ージ ョン構 築 か らお よそ3ヵ 月 で 次 のバ ー ジ ョ
ンを構 築 し,そ の後 さら に使 用 者 側 か ら提 供 され る評 価 ・意 見 等 に も とつ い て お よそ 2ヵ 月 周 期 で 改 良 して い った 。 この よ うな短 期 間 で の プ ロ トタイ ピ ン グを可 能 にす る た め には,使 用 者 側 の積 極 的 な参 加 意識 と,忌 揮 の な い 意 見交 換 に加 えて,プ ロ トタ イ プ構 築 者 の プ ログ ラ ミン グ能 力 の高 さが不 可 欠 の 要 因 で あ る。
この よ うに我 々が 採 用 した 方 法 は,民 族 学 研 究 者 が 日常 の 知 的 専 門活 動 に お い て
洪 共同研究の概略一 方法 と成果一
「人 手 に よる情 報 処 理 」 を どの よ うに 行 って い るか を,コンピューター シス テ ム の最 終 利 用者 で あ る民 族 学研 究者 と直接 面 談 して知 る こ とで あ り,ま た プ ロ トタイ プの構 築 と利用 者 に よ る評 価 ・意 見提 供 の反 復 を 通 して,利 用 者 に と って馴 染 み やす い コ ン
ピ ュー タ ー シス テ ムを 段 階 的 に 実 現 し よ う とす る も の で あ る。 この 方 法 は,コ ソ ピ ュー ター シス テ ム利 用 者 の 心 的 特性 を把 握 す るた め の心 理 学 的 方 法 と して,近 年 特 に 注 目を あ び て い る 「思 考 口述 記 録法 」[ERIcsoN and SIMoN 1984;加 藤 1985;甲 ・加 藤 1987】に 準 じる もの で もあ る。 また,知 的専 門活 動 を 支 え る技 術 と して カ ー ドや フ ォル ダ ー とい っ た文 具 類 を 活 用 す る情 報 整 理 の 方 法 【梅棹 1969】を コ ソ ピ ュ ー タ ー シス テ ム上 で電 子 化 し,再 現 す る試 み で もあ る。 この よ うな 実世 界 を疑 似 的 に 実 現 す る こ との 有 用性 は 他 で も指 摘 され て い る[CARRoL and THoMAs 1982】。
民 族 学研 究者 が本 共 同 研 究 の よ うに,コ ン ピュ ー タ ーや 情 報 処 理 とい った馴 染 み の 薄 い分 野 に積 極 的 に参 加 し,そ の 専 門性 に も とつ い たコンピューター の応 用 研 究 を 実 現 す るた め に は,民 族 学 研 究 者 が 本 共 同研 究 に 対 して継 続 して 関 心 を抱 く こ とが 必 要 で あ る。 この た め に,関 心 の あ るデ ータ を対 象 とす る こ とは意 義 が 大 きい。 そ こ で, 本 共 同研 究 に 直 接協 力 参 加 す る民 族 学 研究 者 が 試 験 デ ー タをそ れ ぞ れ の 関 心 に も とつ
い て選 択 す る こ とに した 。 そ の結 果,標 本 資 料2725点 が選 ぽ れ た 。 そ の 内 容 は 刃物 類 が389点,容 器 類 が759点,玩 具 類 が920点,仮 面 類 が657点 で あ る。 前 三 者 は東,東 南,南 ア ジア の 国 々 で収 集 され た もの で あ り,仮 面 類 は 全世 界 的 に 収 集 され た もの で あ る。 民 博 が 所 有す る これ ら の原 画 像 デ ー タ量(カ ラ ー と濃 淡)は1点 に つ き7メ ガ バ イ トであ り,試 験 デ ー タ全 体 で19ギ ガバ イ トとな る。 また,こ れ ら標 本 の 情報 カ ー ド上 に記 述 さ れ て い る 属 性 デ ー タ は,全 部 で5.7メ ガ バ イ トに な る。 これ が,画 像 デ ー タベ ー スを 研 究 す る際 に具 体 的 に扱 う原 デ ー タ の量 で あ る。 これ 以 外 に,民 博 が 対 訳 と して刊 行 した 日本 語OCM(『 文 化項 目分 類 』)【マ ー ド ック 他 198716)も 使 用 した。
最後 に,情 報 処 理 お よびコンピューター 技 術 の研 究 価 値 の追 求が あ る。 画 像 デ ー タ ベ ー ス と,人 文科学系への コンピューター応用 とい う2つ の技術的 目標は,情 報処理 分 野 や コ ン ピ ュー タ ーの 応 用分 野 に お いて も新 しい試 み で あ る こ とか ら,い くつ か の 点 に お い て高 度 な研 究 努 力 が必 要 とされ る。 具 体 的 に は,大 容 量 の画 像 デ ー タを 効 率 的 に 蓄積 ・検 索 す るた め の 画 像圧 縮 方 法 や マル チウィンドウ の 活 用,高 速 画 像 表 示 方 法 とい った デ ー タ処 理 技 術,大 容量 外 部 記 憶 装 置 の活 用 や 高速 転送,パ ー ソナ ル コ ソ ピ ュー タ ーの活 用 等 シス テ ム統 合化 技 術,画 像 デ ータ ベ ー ス の一般 的 概 念 や 構 築 法,
6)本 書資料編B「HRAF/文 化項 目分類(OCM)コ ー ド」参照。
国立民族学博物 館研究報告別冊 17号
文 科 系 利 用 者 の た め の ユ ーザ ーインターフェース の実 現 等 が あ げ られ る。
3標 本 資 料 の情 報 とデ ー タ表 現
ここで は,共 同研 究 にお け る直 接 の研 究対 象 で あ る標 本 資料 を,情 報 処 理 の 立場 か ら どの よ うに認 識 す るか を整 理 す る。
3.1標 本 資 料 の 情 報 ,
標 本 の種 類 は,釣 針 の よ うな 小 さな もの や 家 屋 の よ うに大 きな もの,石 製 の もの, 皮製 の もの,単 調 な形 態,極 め て精 巧 な細 工 が 施 され て い る もの,素 朴 な天 然 の 色 合 を持 つ もの,一 目で な ん らか の意 図 が感 じられ る人 工 色 で塗 り潰 され た もの まで,様
々で あ る。 また,収 集地 は 世 界 全域 にわ た り,多 様 な 地域 や 民 族 で 使 わ れ て い るか あ るい は使 わ れ て い た もので あ る。 基 本 的 に は,こ れ ら標 本は,民 族学 研 究者 に よる現 地調 査 を通 して,文 化的 意 味 を持 つ概 念 と して の 標 本 集 合か らイ ソ ス タ ソス と して 収 集 され た具 体 例 で あ る。 例 え ぽ,「 こ こに あ る"カ ゴ"」 につ い て述 べ る と次 の よ うに な る。 「この"カ ゴリは,『 イ ン ドネ シ アのバ タ ッ ク族 が 収穫 に用 い る"カ ゴ"』 の"カ
ゴ"」 で,固 有 の文 化 的 意 味 や 人 間 の社 会 的 行 動 が 説 明づ け られ,他 の 「カ ゴ」 と識 別 され て,文 化 的 特 色 が実 証 的,比 較 的 に究 明 され る。 民博 に お い て は,こ れ ら標 本 の性 質 や 意 味 づ け,説 明づ け を 次 の3種 類 の形 態 を 用 い て行 っ て い る。 つ ま り,属 性 項 目別 に記 述 す る 「情 報 カ ー ド」,汎 民 族 的,汎 文 化 的 な分 類 体 系 を 持 つrHRAFコ
ー ド」,お よび 標 本 の写 像 体 と して の 「デ ィ ジ タ ル 画像 」 で あ る(図1)。 この よ う
(民博 にお ける標 本 資料 の3種 類 の情報 源) 図1標 本資料 の情報構造
洪 共同研究の概略一 方法 と成果一 一
に,各 々 の 標 本 は これ ら3種 類 の 情 報 源(デ ー タ源)に よ っ てアイデンティティー が 具 現 化 さ れ,コ ン ピ ュ ー タ ー シ ス テ ム で の 処 理 の 対 象 と な る 。 こ の 際,民 族 学 研 究 者 に と っ て 意 味 の あ る 情 報 処 理 を コ ン ピ ュ ー タ ー シ ス テ ム で 行 うた め に は,こ れ ら異 な る デ ー タ 型 を マ ル チ メ デ ィ ア と し て 統 一 的 に 取 り扱 う こ とが 必 要 で あ る 。
3.2 標 本 資 料 の デ ー タ表 現
民博 の情 報 カ ー ド上 で記 述 され て い る属 性項 目を 用 い て,利 用 者 か ら要 求 され る利 用 要件 を反 映 させ て概 念 ス キ ーマ を設 計 す る。 この た め,実 世 界 の デ ー タ を表 現 す る 上 で一 般 的 な モデ ル と して広 く利用 され,デ ー タ間 の マ ク ロな関 係 を わ か りや す く表 現 す る実 体 一関連 モ デ ル 【C朋N 1976】を 用 い る こ と とす る。 この モ デ ル は,既 存 の デ ータ ベ ー ス シス テ ムで実 現 され て い る基 本 的 デ ー タ モデ ル(関 係 型 モ デ ル,ネ ッ ト ワー ク型 モ デ ル,階 層 型 モ デ ル等)の 記 述 能 力 を合 わ せ 持 つ こ とか ら,論 理 設 計 や 物 理 設 計 等 を具 体 的 に扱 う上 で有 効 で あ る。 な お,標 本 画 像 が持 つ 意 味 に つ い て は本 稿 で は扱 わ な い。 これ は,画 像 が そ れ ぞ れ の標 本 の実 物 写 像体 で あ る こ とか ら,画 像 を そ の ま ま表 示 す る こ とに よ って のみ 最終 的 に は意 味 を なす た め で あ り,画 像検 索 に必 要 とさ れ る も のは 属 性 項 目 と してす で に記 述 され て い るた め で あ る。 また,HRAF
コー ドに つ い ては この 意 味 づ け の体 系 化 は す で に で き上 が って い る こ とか ら,意 味 の 取 り扱 い に こだわ る よ りも,こ の コー ド体 系 を コ ン ピ ュー タ ー シス テ ムで 具 体 的 に取
り扱 う方 が 重 要 と思 うか ら であ る。
そ れ 自体 が 概念 と して存 在 し,他 の もの と区 別 で きる 「実 体 」 を ま とめ た 集 合 で あ る 「実 体 集 合 」 と,こ れ ら実 体集 合 間 の 関 連 を 表現 す る と図2の よ うに な る。 また,
図2 実 体 一関連 モ デル に よ る標 本 情 報 カ ー ドの デ ー タ表 現(実 体 集 合 お よび 関 連 に つ い て)
国立 民族学博物館研究報告別冊 17号
表1実 体一関 連 モ デ ル に もとつ く標 本資 料 の実 体 集 合 と属 性 実体集合
標 本 製 作 場 所 用 途 収 集
属 性
標 本 番 号,標 本名,標 本 種 類,大 きさ*,形 態*,色 彩*
製 作 地,製 作 年 代,製 作 者,製 作 法 ・材 料
現 地 名,使 用 地,使 用 年 代,使 用民 族,使 用 者,変 遷 ・分 布 用 途 ・使 用 法
原 収 集 者,入 手状 況,収 集 年 月 日,収 集 地
(*は 民 博 所 有 の情 報 カ ー ド上 に は な い属 性 項 目で,本 稿 に お い て 試 験 的 に追 加 した もの で あ る。)
図 中 の各 実 体 集 合 の持 つ 共 通 性 質,す な わ ち属 性 は表1の 通 りで あ る。
ここ では 実 体集 合 は 「標 本 」,「製作 」,「場 所 」,「用途 」,「収 集 」 の5つ に分 類 され る。実 体 集 合 「標 本 」は,人 間 の 社会 的行 動 や 文 化 的活 動 が 具 現 化 され た もの で あ り,
「製 作 」,「場 所 」,「用 途 」 とい った実 体 集 合 は,人 間 が行 うこれ ら行 動 や 活 動 を積 極 的 に記 述 す る要 素 で あ る。 また,実 体 集合 「収 集 」 は,同 様 に 要 素 で は あ るが,文 化 的意 味 づ け とい う観 点 か ら見 る と消 極 的 な要 素 とい え る。 実 体 集 合 「標 本 」 と,こ れ ら他 の実 体 集 合 との 「関 連 」 は 全 て 多対1対 応 にあ り,各 関連 は 各 々の 実 体集 合 の活 動 を表 現 して い る。 例 え ぽ,各 標 本 は1つ の製 作 法,1つ の使 用者,1つ の用 途 目的
を持 つ も ので あ る,と い った もの で あ る。
この よ うに,民 族 学 研 究 の 対 象 で あ る標 本 は 多 様 な 意 味 づ け が な され る も の で あ り,そ れ らを1つ の 集 合 と して扱 わ なけ れ ば な ら な い デ ー タ集 合 体 とい うべ き もの で あ る。
4標 本 画 像 デ ー タ ベ ー ス シ ス テ ム の 利 用 者 と 利 用 方 法
ここ では,本 共 同研 究 が対 象 とす る画像 デ ー タベ ー ス とい った コ ン ピ ュー ター シス テ ムの利 用 者 が,コンピューター シス テ ムを利 用 す る上 で どの よ うな特 徴 を有 す るか に つ い て,利 用者 と利 用 方 法 とに 分 け て整 理 す る。
4.1利 用 者
まず利 用 者 につ い て整 理 す る と次 の通 りで あ る。(1)利 用 者 は一 般 的 に は人 文 科 学 者 で あ り,(2)民 族 学 の専 門 家 で あ る と共 に,(3)個 々 の研 究 者 で あ る。 これ ら利 用 者 は,コ ン ピュ ー ターに よる デ ー タ処 理 の専 門 家 も し くは そ の訓 練 を 充 分 に受 け た人 達 で は な く,一 般 にコンピューター シス テ ム に は馴 染 み が 薄 く,プ ログ ラム を 自前 で
洪 共同研究 の概略一 一方法 と成果一
は作 成 しな い半 面,コ ン ピ ュー ター シ ス テ ムの 使 用頻 度 は比較 的 高 い。 このた め,コ ン ピ ュ ー タ ー シ ス テ ムに お い て は利 用 方 法 や そ の 内 容 お よび操 作 方 法 が 理 解 しやす く,機 能 の 習 得 が 容 易 で あ る こ とが 必須 と い え る。 一一方,こ のEase‑Of‑Useに 加 え て,我 々が対 象 とす る利 用 者 は 民族 学 分 野 の専 門家 と して これ ら コ ン ピ ュー タ ー シス テ ムを 自己 の研 究 活 動 に使 用 す るた め,創 造 的 活動 を支 援 す る高 度 な機 能 と個 々の 専 門的 利 用 を満 たす 差 別 的 機 能 が 必要 で あ る。 また,利 用 者 は各 々個別 の研 究 の た め の 道 具 と して 画像 デ ー タ ベ ー ス シス テ ム等 を 使 うた め,個 人 のコンピューター 使 用 環境 は勿 論,利 用 者 の研 究専 門 領 域 と関連 領 域 を幅 広 く取 り扱 うた め の コ ン ピ ュー タ ーの 共 有 環 境 が 提 供 され る必 要 が あ る と共 に,個 人 環 境 と共有 環 境 の両 者 間 で の高 度 な 融 通 性 を持 った 相互 切 り替 えが 必 要 と され る。 こ こで い う 「個 人 の コン ピ ュ ータ ー使 用 環 境 」 とは,1つ のコンピューター シス テ ム上 で大 型 計 算 機 や パ ー ソナ ル コ ン ピ ュー タ ー を使 用 して物 理 的 に実 現 され る こ と と同時 に,利 用 時 に お け る利 用 者 間 で の機 能 の上 で の差 別 化 を意 味す る。
この よ うな利 用者 の要 求 を 満 た す た め に は高 度 な 機 能 を 広範 囲 に提 供 す る と共 に, これ ら機 能 を容 易 に,か つ,利 用 者 独 自の方 法 で使 用 で き る こ とが必 要 で あ る。
4.2 利 用 方 法
一般 に,画 像 デ ー タベ ース シス テ ム と して は 図3の よ うな機 能 を備 え てい る こ とが 要 求 され る。 つ ま り,実 世 界 に あ る実物 を 各種 の デ ー タ と して 入 力す る こ とや,そ の デ ータ の蓄 積,検 索 ・表 示,検 索 画 像 デ ー タの特 徴 抽 出 ・強調 処理 や 統 計 処理 等 の各 種 分 析,最 終 利 用 形 態 と して の主 題 図 編 集,印 刷等 で あ る。 検 索 や処 理 され た デ ー タ は 個 人 用 と して保 存 され,自 由 に再 利 用 され る こ とが要 求 され る。 この 内 デ ー タ入 力 に つ い て は,す でに 民 博 で画 像 化,属 性 の 記 述 お よびHRAFコ ー ドが ふ りあ て られ て い るの で 本共 同研 究 で は これ ら既 存 の デ ー タを使 用す るだ け とな る。 検 索 され た 画 像 デ ー タを 処理 し,主 題 図 を 作成 す る こ とは 利 用者 に よっ てそ の 必 要性 が異 な り,処 理 内容 が 極 め て 多岐 にわ た る。一 方,画 像 の 検 索 は利 用 者 全 て に と って必 要 と され る 機 能 で あ り,画 像 デ ー タ ベ ー ス シ ス テ ム を利 用 す る上 で の 第 一 歩 とい え る機 能 で あ る。 この た め,本 共 同研 究 で は,画 像 デ ー タの 蓄 積 と検 索,お よび 検 索 画像 デ ー タ の 保 存 機 能 に つ い て扱 うこ とと した 。
民 族 学 研 究 に お い て は 次 の3種 類 の画 像 検 索 が 考 え られ る。 す なわ ち,(1)属 性 値 か ら画 像 の 検 索,(2)画 像 か ら画像 の検 索,お よび(3)画 像 か ら属 性 の 検 索 で あ る。
属 性 か ら画像 の検 索 に お い て は,「 もの 」 と して の標 本 とそ の画 像 と して の特 徴 に も
国立民族学博物館研究報告別冊 17号 とづ き画像 が 検 索 され る が,こ こ でい う画 像 とは 「もの 」 と して の標 本 画像 で あ り, そ の文 化 的 背 景 と して の 背 景 画(「 もの」 が 使 わ れ てい る様 子 とか,作 られ て い る様 子 等 の風 景 画)で あ る。 画 像 か ら画 像 の検 索 は,あ る参考 画 像 の一 部 また は全 体 の 特 徴 を も とに類 似(内 容)検 索 を行 うも の と,部 分 につ い て抽 出検 索 を行 うもの,お よ び 検 索表 示 され た 標 本 画像 か らそ の背 景 画 を連 動 的 に 検 索 す る場 合 とに 分 け られ る。
い ず れ の場 合 で も,「 もの」 と して の標 本 画 像 と背 景 画,お よび各 研 究 者 の フ ィー ル ドノ ー トに描 か れ た ス ケ ッチ等 が対 象 と考 え られ る。 検 索表 示 され た 画 像 か ら属 性 を 検 索 す る こ とは,民 族 学 研 究 に お い ては 重 要 で あ る。 す な わ ち,「 もの」 と して の標 本 とそ の文 化 的 背 景 と して の 背 景画(風 景画)は どの研 究 者 に と って も客 観的 な もの
図3 画 像 デ ー タベ ー スの 基 本 機 能 と民 博 標 本 デ ー タ(*は 本 共 同研 究 で の 対象)
洪 共同研 究の概略一 一方法 と成果一
であ り,そ れ に も とつ いて 各研 究 者 が 固 有 の 研 究 目的 に利 用 す るた め に文 字 ・数 値 と して表 わ され る属 性 値 が 必 須 とな るか らで あ る。
画 像 の 検 索機 能 は画 像 の 特徴 と,検 索 者 が 持 つ対 象 画 像 に つ い て の記 憶 や検 索 条 件 の正 確 さ等 に対 応 す る必 要 が あ る。 画 像 の内 容 は非 常 に複 雑 で あ り,画 像 が 持 つ 情 報 量 は 極 めて 多 い 。 こ のた め 画像 の 内容 を一 度 に 記 述す る こ とは不 可 能 で あ り,何 回 も 追 加 記 述 され,利 用者 の記 憶 も曖 昧 に な りや す く検索 時 の条 件 設 定 が曖 昧 とな る。 一 方画 像 デ ー タベ ース が これ ら検索 条 件 に対 応 す るた め に は,明 確 な キ ー ワー ド処 理 に よる ものか ら曖 昧 な記 憶 に も とつ い て描 か れ た ス ケ ッチ の一 部 を 頼 りに検 索 処 理 を 行 う機 能 まで,多 様 に提 供 され な け れば な らない 。
各 標 本 のアイデンティティー を 具現 化 す る もの と して,標 本 情 報 カ ー ドの属 性 項 目 が あ る。 この 属性 デ ー タはHRAFコ ー ドと異 な り,そ の意 味 づ け や 体 系 化 を 行 う必 要 の あ る もので あ る。 これ は,標 本 に つ い て利 用 者 が どの よ うに見 て い るか に 係 わ る もの で あ り,検 索 の た め の概 念 スキ ーマ を設 計 す る上 で 基 本 を なす 。 そ こで,民 博 の 利 用者 が検 索 時 の 利 用 要 求 と して どの よ うな ものを 持 って い るか につ い て,ア ソケ ー ト調 査 と聞 き取 り調 査 を通 して分 析 した。 そ の結 果,標 本 を検 索 す る上 で情 報 カー ド 上 の 属性 項 目の重 要 度,必 要 性 は 個 々の研 究 者 に よって 異 な る もの の,全 て の 属性 項
目を 検 索 時 に使 用 で き る よ うにす る こ とが 必要 で あ る こ とが理 解 で きた 。 さ らに検 索 照 会 に 見 られ る特 徴 と して,表2の よ うに検 索 を繰 り返 しな が ら段 階 的 に検 索 範 囲 を しぼ りこみ つつ,徐 々に 検 索 内容 を特 定 化 して い く方 法 を と る よ うであ る。 この方 法 は,検 索 条件 の曖 昧 さに も対応 で き る もの で もあ る。
これ ら検 索 の機 能 と操 作 に お い て重 要 な 事柄 は,画 像 デ ータ と属 性 値 とが相 互 に連 動 され て 検 索 に使 わ れ る こ と,お よび操 作 時 に個 人 化 が提 供 され る こ とであ る。 異 な る タイ プの デ ータが 連 動 され る必 要 が あ る こ とは,そ れ らが 各 々の標 本 資 料 を 補 い あ って表 現 して い る こ とか ら も容 易 に理 解 で き る。 一 方,個 人 化 に つ い て は,利 用 者 が 持 っ て い る操作 技 術 の レベ ル,検 索 時 に おけ る興 味 の お き どころ,ま た重 要 度 や 必 要 度 が 各 自で 様 々で あ る こ とに対 応 す る ため であ る。 これ に加 え て,検 索 評 価 と して い か な る デ ー タベ ース シス テ ムに お い て も トレー ドオ フの 関係 に あ る,再 現 率 と適 合 率
表2 検索範 囲の段階的な しぼ りこみ 最初の設問
誰 が(民 族 名) 何 を
何 の 目的 に使 う
2回 目の設 問 ど この誰 が どの よ うな 何 を
何 の 目的 に どの よ うに使 う
3回 目 の設 問
ど この どの よ うな 誰 が(社 会 的 身 分) どの よ うに作 られ た どの よ うな何 を 何 の 目的 に どの よ うに 使 う
国立民族学博物館研 究報告別冊 17号 の 内 ど ち らを重 視 す るか を 選択 す る こ とが 必要 で あ る。 本 共 同研 究 の よ うに 民族 学 研 究者 を利 用 者 とす る場 合,再 現 率 を重 視 す る こ とが適 切 と思 われ る。 つ ま り,検 索 照 会 処 理 の 曖 昧性,入 力 ミス,各 研 究 者 固有 の検 索,お よび 検 索対 象画 像 のデ ー タ量 の 大量 性 を 考 慮 す る と,そ の 適 合 率 は各 利 用 者 に大 き く依 存 す るた め で あ る。 しか し, 再現 率を 高 め るた め には,雑 多 な 検索 結 果 か ら検 索対 象 とな るデ ータ を しぼ りこん だ
り,画 像 表 示 に よ る視 認 の 活 用 が 有効 で あ る。
5標 本 画 像 デ ー タ ベ ー ス シ ス テ ム
こ こで は,本 共 同研 究 に おけ る主要 な研 究 対 象 で あ る標 本 画 像 の蓄 積 と検 索 の方 法 を 検 討 し,こ れ に も とづ き構 築 した 試 験 シ ス テ ム 「民 族 学 研 究 用 画 像 検 索 シス テ ム (αREε:Color Image Retrieval System for Ethnological Studies)」 の 全 体像 と基 本 的 な機 能,特 徴 お よび評 価 に つ い て報 告 す る。 こ こで対 象 と して い る画 像 は そ れ ぞ れ1 件 全 体 を1つ の デ ー タ と して扱 うもの で あ り,画 像 の 内容 ・部 分 を 対 象 とす る も の は 後 節 の 「6標 本 画 像 類似 検索 」 に お い て報 告 す る。 また,画 像 デ ータ ベ ー ス シ ス テ ムに と って主 要 な技 術 で あ る画 像 圧 縮 ・表 示 方 法 と画 像 の蓄 積 方 法,属 性 デ ー タ ベ ー ス の作 成 と検 索 処 理方 法,視 覚 化 コー一ザ ーインターフェース 等 の詳 細 に つ い て は 本書 の中 で そ れ ぞれ 「画 像 の表 示 とそ の圧 縮 」,「画 豫 デ ー タの蓄 積 」,「属 性 情 報 を用 い た 標 本 検 索 」,「民 族 学 研 究用 画像 検 索 シ ステ ムの視 覚 化 ユ ーザ ーインターフェース 」等 別 途 の論 文 と して報 告 され て い る。
さ らに,検 索 の た め の シ ソー ラス と してHRAFコ ー ドを 活 用 す るた め の最 初 の試 み と して,文 化 項 目分 類 コ ー ドを パ ー ソナ ルコンピューター 上 で扱 ったが,こ れ に つ い て は第7節 に お い てそ の概 略 を,そ の詳 細 は別 途 論 文(「HRAF/文 化 項 目分類 コー
ドの概 覧 表示 」)で 報 告 す る。
5.1基 本 概 念 と シ ス テ ム構 成
画像 デ ー タベ ース を研 究 す る上 で重 要 な技 術 的課 題 と して,次 の3点 に注 目 した。
つ ま り,(1)大 容 量 画 像 デ ー タ の効 率 的 蓄 積 方 法,(2)効 果 的 画 像 検 索 方法,お よび (3)民 博 利 用 者 に親 しみや す い マ ンデ ー タベ ース ・イ ンタ ー フ ェース で あ る。 これ ら は具 体 的 には さ らに 次 の よ うに細 分 化 され,こ れ らを解 決 す る こ とがCIRESで 実現
し よ うとす る基 本 機 能 とい え る。 す な わ ち,(a)標 本 資 料 に関 す る多 様 な情報 が 統一 的 に 扱 え る 。 画 像,標 本 情 報 カ ー ドに 記 載 され て い る文 字 ・数 値 デ ー タ,HRAF
洪 共 同研 究 の 概 略一 一一 方 法 と成 果 一 一
コー ドが 統一:一・的 に扱 え る よ うに す る。(b)検 索 は,標 本 情報 カ ー ドに記 載 され て い る 文 字 ・数 値 デ ー タ と共 に画 像 を見 なが らで も行 え る よ うに す る。(c)検 索 条 件 の入 力 や 検 索 処理 操 作 が 高 い融 通 性 を 持 って行 わ れ る。(d)検 索 操 作 方 法 と内容 が理 解 しや す く,操 作 性 が 良 い。(e)一 般 性 が高 い大 量 な画 像 や デ ー タを 蓄 積 し提供 す るた め の 共 用 環 境 と共 に,個 々 の利 用者 が 自分 に 合 った方 法 で管 理 ・利 用 で きる個 人環 境 の両 方 が 用 意 され て い る。(f)継 続 して増 加 す る大 容 量 の 画 像 や デ ー タが蓄 積 ・管 理 で き
る。(g)色,空 間 解 像 度 等 精 度 の高 い 画 像 が 表 示 で き る。(h)操 作 の 応 答 速 度 が 早 いo
こ こ で(e),(f),(h)が 技 術 課 題(1)に 該 当 し,(b)と(g)が(2)に,そ し て(a), (c),(d),(e),(h)が(3)に 該 当 す る 。
以 上 の 課 題 を 解 決 す る た め の 基 本 的 な ア プ ロ ー チ は 次 の4つ で あ る 。(1)マ イ ク ロ メ イ ン フ レ ー ム 結 合 の シ ス テ ム 構 成 に よ っ て,大 型 計 算 機 側 で は 大 規 模 デ ー タ ベ ー ス 資 源 の 共 有 の た め の 共 用 環 境 を,パ ー ソ ナ ルコンピューター 側 で は 操 作 の 融 通 性 に 富 む 個 人 環 境 を 実 現 す る(図4)。(2)関 係 型 デ ー タ ベ ー ス 処 理 に も とつ く文 字 ・数 値
図4標 本 画 像 デ ー タ ベ ー ス シ ステ ム構成 の概 要
125
国立民族学博物 館研究報告別冊 17号
デ ー タの属 性 検 索 と,カ ラー画 像 の概 覧 を 組 み合 わせ た 検 索 を実 現す る(図5,図6)。
この場 合,属 性 検 索 は繰 り返 し検 索 を 可 能 と し,候 補 の対 象 を大 型 計 算 機 と対 話 的 に 行 い な が ら しぼ りこみ,高 い検 索 効 率 を 実 現す る。 属 性 検 索 に続 き,パ ー ソナル コ ソ ピ ュ ータ ー上 で は縮 小 した カ ラ ー画 像(カ タ ロ グ画 像)を 属 性 デ ータ と共 に マル チ ウ ィソ ドウ内 で統 一 的 に 扱 い,多 数 を同 時 に 高速 に表 示 して概 覧 で きる よ うに し,検 索 候 補 を 視 覚 に も とつ いて しぼ りこん で見 つ け る よ うにす る。 視 覚 に も とつ いた 分 類, 比 較,保 存 が で きる よ うに す る。 これ は,例 え ば,印 刷 され た 商 品 カタ ロ グを 見 て希 望 の 商 品 を探 す よ うな感 覚 を与 え る こ とを 意 図 して い る。 あ るい は,ト ラ ンプ の カ ー ドを 切 った り,任 意 の 順番 で並 べ る よ うな感 覚 と もい え る。(3)多 階 層 構 成 に よ る画 像 の蓄 積 と表 示 に よっ て,高 い 検索 効 率 と応 答性 を 実現 す る。 この た め,で きる か ぎ り高 速 に 展 開 ・表 示 す る画 像 圧 縮 ・伸 長 方 法 を 実 現 し,大 き さを 異 にす る画 像 を 作 成 し,蓄 積 媒 体 と して磁 気 デ ィス ク と光 デ ィス クを 用 い る。 ラ ンダ ムか つ 頻繁 に,高 速 に ア クセ ス され る画 像,つ ま り縮 小 され た小 サ イ ズの カ ラー画 像 は 磁 気 デ ィス クに蓄
図5標 本 画像 デ ー タ ベ ー ス シス テ ム機 能 の概 要
洪 共 同研究の概略一 方法 と成果一
図6 目視 検 索 の た め の 画像 お よ び デ ー タの 多階 層 概 覧 ・表 示
積 す る。 ア クセ ス頻 度 が 高 くな く,か つ転 送 速 度 や 画 像表 示 に 高 速 性 が要 求 され な い 反 面,色 数 が 多 く,空 間 解 像 度 が高 い 高精 細 の画 像 は 大 容 量 の 光 デ ィス クに蓄 積 す る。光 デ ィス クは,現 物 に で き るか ぎ り忠 実 な高 画 質 画像 の保 存 庫 と して の役 割 を 担 う。 画 像 の表 示 は,パ ー ソナ ルコンピューター と高精 細 な 画 像 表 示 装 置 とを 併 用 す る。(4)利 用 者 視 野 は オ ブ ジ ェ ク ト指 向 に も とつ いた 視 覚 化 ユ ーザ ーイ ソタ ー フ ェ ー ス,す なわ ち カ ー ド形 式 に よって 統 一 を 図 る と共 に,画 像 デ ー タベ ース に対 す る操 作 を 直 接 的 な もの と して,操 作 性 の 向上 を 図 る。 シス テ ム操 作 は ポ イ ソテ ィソ グ装 置 に よ る直 接操 作 で あ るた め,操 作 対 象 とな る全 て の デ ー タベ ース資 源 は アイ コ ンに よっ て視 覚 化 され る。 こ のた め,操 作 は 日常 馴 染 み の あ る方 法 で 行 え る こ と とな る(カ ー
ド,フ ォル ダー等)。
127
国立民族学博物 館研究報告別冊 17号
5.2試 験 シ ス テ ム の 概 要
以 上 の 基 本 概 念 に も とつ い て,必 要 な 基 本 機 能 を 実 現 す る と共 に試 験 シ ス テ ム CIRESを 構 築 した 。 最終 版 のCIRESの 概 要 は次 に示 す 通 りで あ る。
5.2.1ハ ー ド ウ エ ア 構 成
シ ス テ ム の 構 築 の 容 易 さ と シ ス テ ム資 源 の 活 用 を 考 慮 し て,入 手 が 容 易 で 用 途 が 汎 用 的 な ハ ー ド ウ ェ ア を 使 用 し た 。 大 型 計 算 機 は 汎 用 型 計 算 機IBMシ ス テ ム/370
(3090,3081,4381,9370等)を,パ ー ソ ナ ル コ ン ピ ュ 一一タ ー はIBMパ ー ソ ナ ル シ ス テ ム55(Ps/55)を 使 用 した 。 高 精 細 画 像 表 示 装 置 と し てIBM5080グ ラ フ ィ ッ ク ス 表 示 装 置(5080)を,画 像 蓄 積 の た め に は 大 型 計 算 機 に 接 続 さ れ て い る 磁 気 デ ィ ス ク と追 記 型 光 デ ィ ス クを,属 性 デ ー タ ベ ー ス 蓄 積 の た め に は 磁 気 デ ィス ク を 使 用 した 。 操 作
は 主 と し て マ ウ ス に よ る が,キ ー ボ ー ドも 用 い る こ と が で き る 。
5.2.2 ソ フ ト ウ ェ ア 構 成
大 型 計 算 機 側 で はVM/CMS(仮 想 計 算 機/会 話 型 モ ニ タ ー シ ス テ ム)が, PS/55側 で はMS‑DOSが 基 本 ソ フ トウ ェ ア で あ る 。 両 者 間 の 通 信 はPC‑VM Bondを 用 い た 。 大 型 計 算 機 側 で は,属 性 デ ー タ ベ ー ス を 管 理 す るSQL/DS(構 造 化 照 会 言 語 ノデ ー タ シ ス テ ム)1IBM l984】,5080お よ び 光 デ ィ ス ク を 管 理 す る ド ラ イ バ ー は,そ れ ぞ れ 1つ のVMと し て 動 作 し て い る 。 一 方PS/55側 で はウィンドウ シ ス テ ム,各 種 の デ ー タ や 検 索 ・表 示 等 各 種 の 命 令 を 管 理 す る応 用 ソ フ トウ ェ ア が 稼 働 し て い る 。
5.2.3文 字 ・数 値 デ ー タ と画 像 の 蓄 積
属 性 デ ー タ は 関 係 型 デ ー タ ベ ー スSQL/DSの 上 で 実 現 さ れ て い る 。 検 索 画 像 は PS/55上 で 概 覧 す る た め の 縮 小 カ ラ ー 画 像 と,確 認 の た め に5080グ ラ フ ィ ッ ク ス 表 示 装 置 に 表 示 す る 高 精 細 画 像(256色 以 上 の カ ラ ー と濃 淡)の2種 類 で あ り,そ れ ぞ れ 用 途 の 特 性 上 磁 気 デ ィ ス ク と 光 デ ィ ス ク に 蓄 積 し た 。CIRES上 で は 縮 小 カ ラ ー画 像 は128×128画 素,16色 に 表 現 さ れ て い る が,一 方,高 精 細 画 像 は256色 で 画 素 数 は 1024×1024,512×512,256×256の3種 類 に 表 現 さ れ,圧 縮 され て い る 。
5.2.4視 覚 化 ユ ー ザ ー イ ン タ ー フ ェ ー ス
操 作 の 対 象 とな る も の は,そ れ ぞ れ 民 博 利 用 者 に と っ て 馴 染 み や す い 形 状 の ア イ コ 128
洪 共 同 研 究 の 概 略一一一方 法 と成 果 一 一
ソ と し てPS/55上 に 表 示 す る。 「情 報 カ ー ド」 は,本 シ ス テ ム に お け る デ ー タ 操 作 の 基 本 単 位 で あ り,縮 小 カ ラ ー 画 像,属 性 デ ー タ,メ モ 欄 が1枚 の カ ー ド と し て 統 一 的 に 扱 わ れ,各 標 本 資 料 を 忠 実 に 表 現 して い る 。 「検 索 カ ー ド」は,民 博 所 有 の 情 報 カ ー ドに 類 似 す る よ うに 属 性 項 目 と 条 件 欄 を 並 べ て カ ー ド化 し た も の で,検 索 の た め に 使 わ れ る 。 「情 報 フ ォ ル ダ ー 」 は,1枚 の 検 索 カ ー ド と複 数 枚 の 情 報 カ ー ドの 集 合 で あ る。 「資 料 室 」,「5080」,お よび 「集 合 演 算 」 は そ れ ぞ れ 大 型 計 算 機 で 管 理 され て い る デ ー タ ベ ー ス,5080グ ラ フ ィ ッ ク ス 表 示 装 置,情 報 フ ォ ル ダ ー 間 の 集 合 演 算 を 行 う 機 能 を 表 わ し て い る 。 こ れ ら以 外 に も,各 種 の デ ー タ ベ ー ス 資 源 ・機 能 を 特 異 な ア イ
コ ソで 表 現 し た 。
5.2.5 属 性 検 索
検 索 条件 の指 定 は,検 索 カー ドの条 件 欄 に文 字 属 性 や 数 値 属 性 を書 き込 む こ とに よ って 行 わ れ る。 この検 索 条 件 は,大 型 計 算 機 の デ ー タ ベ ー ス上 で 処理 され,条 件 に該 当す る レ コー ド数 をPS/55側 に送 り返 す 。 利 用者 は,検 索 条 件 を変 更 ・追 加 す る等 しなが ら,検 索処 理 を何 度 も繰 り返 し,段 階 的 に 目的 とす る標 本 の枠 を しぼ りこん で い く。 文 字 ・数値 等 の 入 力は キ ーボ ー ドを 用 い て行 うか,後 述 す る個 人 ユ ー テ ィ リテ ィーで あ る検 索 リス トとマ ウス を用 い る メ ニ ュー選 択 に よって 行 う。
5.2.6 概 覧 ・表 示
属 性 検 索 で 充 分 に しぼ りこ まれ た結 果,指 定 され た情 報 カ ー ド(す なわ ち,縮 小 カ ラ ー画 像 と属 性 デ ー タ)が 大 型 計 算 機 か らPS/55に 転 送 され,情 報 フ ォル ダ ー に蓄 え られ,画 像 と属 性 デ ー タが 次 の よ うに 概 覧 ・表 示 され る。(a)1つ の 情 報 カ ー ドを 1つ のウィンドウ 内 に表 示 す る。(b)属 性 情 報 を リス トと して表 示 す る。(c)多 数 の 縮 小 カ ラ ー画 像(1画 面28枚 ま で可 能)を 同一 のウィンドウ に表 示 す る。 これ らは 相 互 に切 り替 え な が ら,単 独 に また は 色 々な組 合 せ で マ ル チウィンドウ を使 用 して高 速 に表 示 す るた め,日 常 馴 染 ん で い る商 用 カ タ ロ グを 概 覧 す る よ うに操 作 で きる。 この よ うな概 覧 操 作 を通 して 検索 し よ うとす る画 像 の候 補 を さ らに しぼ りこん で い く。
また,PS/55上 で表 示 され て い る概 覧 用 の 縮 小 カ ラ ー画 像 を指 定 す る こ と に よ っ て,高 精 細 な カ ラ ーお よび 濃 淡 画 像 の単 数 枚 また は複 数 枚 を5080グ ラ フ ィ ヅ クス表 示 装 置 に表 示 す る こ とが で きる。 これ らの 画 像 を見 る こ とに よ って詳 細 が 判 り,検 索 の対 象 画 像 か 否 か の 確 認 が 可 能 とな る 。 こ の た め の操 作 は マ ウス を 用 い て,全 て PS/55上 に表 示 され る アイ コ ソ とポ ップ ァ ップ メニ ューの選 択 に よって 行 う。
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