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張 凱惠 学 位 の 種 類

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Academic year: 2021

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(1)

氏 名 ちょう がいけい

張 凱惠

学 位 の 種 類

博士(商学)

報 告 番 号

甲第 1679 号

学位授与の日付

平成 29 年 9 月 13 日

学位授与の要件

学位規則第 4 条第 1 項該当(課程博士)

学 位 論 文 題 目

中国企業における戦略的人的資源管理の発展-人的資源管理の アウトソーシングを中心にして-

論 文 審 査 委 員 (主 査) 福岡大学 教授

中川 誠士

(副 査) 福岡大学 教授

井上 伊知郎

福岡大学 教授

合力 知工

福岡大学 准教授

藤野 真

内 容 の 要 旨

中国企業は、社会主義市場経済体制下での現代経営制度が確立したばかりで、品質 管理、コスト管理、財務管理のような最も基本的な経営管理に集中しているため、長 い間、人的資源管理(Human Resource Management、以下 HRM)に精力をつぎ込 む余裕がなかったが、近年、組織能力の向上、人材の獲得、競争力の強化に向けて、

HRM に関する欧米流の先進理論と実践を積極的に吸収している。例えば、人的資源 管理アウトソーシング(Human Resources Outsourcing、以下 HRO)はその一つで ある。

本論文では、アメリカにおける HRM および HRO の歴史的・理論的バックグラウ ンドを振り返った上で、中国のビジネス環境の特殊性と HRM・HRO に関する理論・

制度との間の整合性を意識しつつ、特に HR 業務アウトソーシングと HRM 機能アウ トソーシングに焦点を合わせて、中国における HRO をより総合的かつ体系的に考察 しようとしている。本論文は、以下の構成で展開する。

第 1 章では、まず、アメリカにおける HRM の理論と実践の発展を振り返っている。

次、企業の持続的競争優位をもたらす HRM を説明するために、経営戦略と HRM と の関わりについて検討する。

第 2 章では、まず、わずか 40 年ぐらいの歴史しか持っていない現代中国における HRM の発展を跡付ける。次、欧米企業の業績に大きく貢献した HRM 実践の中国企 業への適用可能性とその限界を検討し、中国企業独自の高業績 HRM システムモデル を提案する。

第 3 章では、HRM と SHRM の理論と実践の発展の先進国であるアメリカにおい

て、いかなる背景から HRO が登場し、そして、いかなる理論に基づいてその妥当性

(2)

が説明されてきたかを跡付ける。

第 4 章では、 HRO という用語に関する定義上の曖昧さを避けるため、まず、 HR に 関連する主なサービスにおける HRO の位置づけを明確にする。次、政府部門および 専門機構や大手 HR 関連サービス企業が発表した最新のデータを参考にして、中国に おける HRO の発展の基本的な要因である HR 関連サービス業の発展をより深く考察 する。最後に、欧米企業で最も一般的にアウトソーシングされている HRM 活動(訓 練と給与計算)の業績に対する効果を考察し、中国の特別なコンテクストを念頭に置 きながら、中国企業の HRM の現状に合わせて HRO のありかたを検討する。

アメリカの HRM と中国の HRM の発展過程を比較すると、政治環境、経済環境、

文化環境等のあらゆる面に相違があり、欧米企業流の洗練された HRM 理論や実践を 機械的に中国に導入することには限界がある。現段階では、社会主義市場経済におい て事業を展開している若い中国企業にとって、企業の経営戦略と垂直的適合(vertical fit)が要求される「コンティンジェンシー・アプローチ(contingency approach)」や、

HRM システム内部の諸 HR 施策間の水平的適合(horizontal fit)が要求される「コン フィギュレーショナル・アプローチ(configurational approach)」のような「ベスト・

フィット」より、「ベスト・プラクティス」視点に基づいて、厳格な管理制度、動機づ け、訓練・人材開発など中国企業に適する SHRM が構想されるべきである。

アメリカの HRO と中国の HRO の発展過程を比較すると、アメリカでは、企業側 の「需要」があって、市場側からの HR サービスの「供給」が活発に行われた。中国 では、政府の政策から市場化された HR サービスの「供給」が活発に行われたことに より、企業側の「需要」が増加したように思われる。欧米では、企業が HRO を戦略 的に行う様々の理由の中で、特に重要な理由の 1 つは、より戦略的な機能を担う HRM 部門を定型的な業務から解放させ、より中核的な業務に集中させることである。言い 換えれば、 HRM の成熟度の度合が HRO の採用、実施、効果に関係している。一方、

欧米企業と比べて HRM の成熟度の度合が低い中国企業は、HRO を決定する際に、

その決定要素が必ずしも欧米企業と一致しないかもしれない。例えば、欧米において、

最も一般的にアウトソーシングされている HR 業務または HRM 活動は、人員訓練活 動と給与計算活動であるが、中国企業にとって、人員訓練は、従業員の知識、スキル を高め、企業の技術革新につながる重要な手段であるだけではなく、従業員に正しい 価値観を形成させ、責任感を増加させ、モラールを向上させることにとっても大切な 機会であるため、訓練活動を外部にアウトソーシングした場合、短時間で技能が高ま るかもしれないが、 その仕事に対するプロの意識は簡単に身に付かないかもしれない。

また、中国では、 HRO サービス業のための法律や規制が少ないため、給料に関する個 人情報の流出のリスクが存在する。給与計算活動のアウトソーシングを行う場合は、

信用度の高い HRO プロバイダーを選択しなければならない。

(3)

審査の結果の要旨

本論文は、社会主義市場経済体制の下で成長・発展し、そしてさらに今後グローバ ル市場でのより熾烈な競争の下で優位性を獲得していかなければならない中国企業に 適合する戦略的人的資源管理モデルを構想するとともに、人的資源管理アウトソーシ ングをその実現に不可欠の要因として位置づけ、人的資源管理アウトソーシングの一 般的妥当性についての理論的研究の基礎の上に、特に中国におけるその実情と課題と 今後のあるべき姿を考察した研究である。したがって、本論文は、人的資源管理(以 下 HRM と略記) 、経営戦略、戦略的人的資源管理(以下 SHRM と略記)、アウトソ ーシング一般、そして人的資源管理アウトソーシング(以下 HRO と略記)の理論と 実態に関わる多岐にわたる問題を取り扱っているが、論文全体を通じて、それらの間 の関係性を整序しながら、上記の主題を論理的かつ体系的に展開しているといえる。

序章では、上記のような論文全体を貫く問題意識を明確に提示した上で、各章で 取り扱われる問題の輪郭と論文全体における各章の位置づけを確認している。

第 1 章では、企業における従業員対策についての理論と実践について、当該分野 の先進国であるアメリカにおける人事管理(以下 PM と略記)から HRM に至る発 展を跡付け、さらに HRM それ自体に経営戦略的意義を見いだすとともに経営戦略と HRM の統合を指向する SHRM に現在の理論的到達点を見届けている。

第 2 章では、改革開放期以降の中国における HRM の発展を振り返るとともに、

HRM 成熟度の概念(People Capability Maturity Model を基準とした5段階の HRM 発展段階)を用いて業種、規模、所有形態等の点で多様な中国企業における HRM の現状をアメリカで発展したスタンダードに照らしてその機械的適用の限界を 確認し、規律の意義を重視した中国的コンテクストに適合する SHRM モデルを提案 している。

第 3 章では、特に 1990 年代以降、経営合理化の手法として登場したアウトソーシ ングが、経済のグローバル化や情報技術の飛躍的発展により、初期の単一業務のアウ トソーシングから一連の業務の戦略的なアウトソーシングつまりビジネス・プロセ ス・アウトソーシングへと発展し、さらにこのような発展が HRM の分野にまで広が って HRO の形成に至った過程が振り返られるとともに、HRO の妥当性と限界を根 拠づける取引コスト理論、エージェンシー理論、資源ベース理論等が検討されてい る。

第 4 章では、現在の中国企業が HRM を理論的に咀嚼・消化した上で制度として

展開することを十分に実現できていないにも拘わらず、HRM の定型的部分を外部委

託することにより企業が HRM の戦略的機能部分により注力できることにその意義が

見いだされる HRO が、中国において過大に注目されている理由が追究され、「80

後」 「90 後」と呼ばれる新世代における高い離職率への対策としての採用、動機づ

け、訓練・能力開発といった HRM 機能に関わる HRO の重要性を指摘し、これをも

(4)

って本論文全体の結論としている。

終章では、各章の内容と本論文全体の結論が改めて簡潔に述べられるとともに、残 された今後の研究課題が示されている。

本論文の斬新性は以下の 4 点にある。第 1 は、HRO というテーマを取り上げたこ とそれ自体であり、これを理論と実態の両面にわたって総合的に考察した本格的研究 は、欧米、日本、中国においてまだわずかしか現れていない。第 2 は、HRO を、単 なるアウトソーシングの一種としてではなく、SHRM の枠組みの中に位置づけ、そ の役割を考察したことである。第 3 は、第 2 に関連して、外部環境重視と内部環境 重視の両方の視点から捉え直された独自の経営戦略観を構想するとともに、この経営 戦略観と HRM を統合して SHRM をさらに構想するに当たり、その統合の仕方とし てコンティンジェンシー・アプローチ並びにベスト・プラクティス・アプローチを採 用することによって、中国企業に適合する実践的な SHRM モデルを提唱している点 にある。第 4 は、中国の HRO の実態を分析するに当たり、人材派遣、HRM システ ム・アウトソーシング、HRM コンサルティングを含む広義の HRO と、HR 業務ア ウトソーシング、HRM 機能アウトソーシングを含む狭義の HRO を概念的に区別す ることにより、中国の HRO を総合的かつより厳密に考察する視点を提供した点にあ る。

もちろん、本論文においても、十分に考え抜かれていない不十分な点が残されてい ないわけではない。例えば、本論文で示された筆者によるいくつかの主張は、先行研 究において提示された仮説を演繹的に組み合わせた作業の結果に過ぎず、実証的調査 の裏付けをほとんど欠いていること等である。しかしながら、このような問題点は、

むしろ今後筆者がさらに研究を深めていく上での課題とすべきことであって、本論文 の価値を減ずるものではないと考える。

よって本論文は、研究者として自立し優れた研究を行う筆者の能力を示していると

判断し、博士(商学)の学位を授与するに値するものと判定した。

参照

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