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公立小中一貫教育の意義

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Academic year: 2021

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研究ノート

公立小中一貫教育の意義

創価大学教職大学院 教職研究科教職専攻

日本の公立学校における小中一貫教育は教育政策上の「特例措置」として位置づけ られて進展し,小中一貫校は「施設一体型」と「施設分離型」の2種類に大別されて いる。背景には小・中学校間の学習面・生活面での段差,いわゆる「中1ギャップ」

の問題があり,子どもの心身の成長・発達に着目した議論が展開されている。アン ケート調査によると,小中一貫教育の成果と課題の筆頭に「教員の意識の変化」が挙 げられている。校種間の壁を乗り越えた教員間の連携や交流,指導法の確立が急務と なっている。

は じ め に

筆者は本教職大学院における「実習研究」を,東京都内の「施設一体型小中一貫校」

で実施した。ランドセルを背負った児童と制服姿の生徒が同じ校舎で学ぶという,小 中一貫校ならではの環境で教育実習を行った。約9か月に及ぶ実習期間を経て,「小 中一貫教育に取り組む意義は何なのか」「どういった教育効果が期待できるのか」「小 中一貫の特質を活かした教育に必要なものとは何か」との問題意識が浮かび上がって きた。

小中一貫教育に関する研究も徐々に蓄積されてきている。先行研究を大別すると,

小中一貫校における学校経営の視点からの分析と,特定の教科・領域に特化した研究 がある。しかしながら,それぞれの研究の接点が乏しく別々に研究されている傾向が 強い。

筆者は小学校現場で社会科を専門教科とする意向を持っており,教職大学院の授業 を通して学びを深めつつ,実習校での授業実践も社会科を教科指導の中心に据えてき

キーワード:小中一貫教育,社会科教育,小中連携

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た。社会科教育においては,小学校と中学校の学習内容は密接に関連している。その 反面,学校現場では相互の見通しを欠いているために,指導の一貫性が担保されてい ない事案も散見される。小中一貫教育の利点を活かし,学習指導を充実させる方策を 見出すことが,本研究の大きな目的である。

本稿は研究の前段階として,小中一貫教育が導入・推進されてきた経緯や背景,現 状での成果と課題について論点を整理する。

公立小中一貫教育の現状

1 小中一貫教育導入の経緯

学校教育法の冒頭に義務教育学校の定義が掲げられているが,そこに「小中一貫 校」という文字はない。日本の公立学校における小中一貫教育はまだ端緒に就いた ばかりであり,自治体や学校現場による課題解決への施策が,教育政策上の「特例措 置」として位置づけられて進展してきた経緯がある。

公立の小中一貫教育は20(平成12)年に広島県呉市で始まった。市の中心部に隣 接して立地する小学校2校と中学校1校が文部省(当時)の「研究開発学校」の指定 を受け,義務教育9年間を一貫する形での教育課程の開発に取り組んだ。その根底に は,従来の「6・3制」が制度疲労を起こし,子どもの心身の発達や学習指導・生徒 指導上の課題にそぐわない面が出てきているとの現状認識があった。具体例として は,子どもの発達段階に適応するための「4・3・2カリキュラム」の策定や,小学 校と中学校の人的交流を図る「研究開発コーディネーター」を設けた組織づくり等が 挙げられる。こうした試みが先進的な事例となり,以後の小中一貫教育の取り組みに も中核的な要素として取り入れられている。

3(平成15)年からは当時の政権による教育の「構造改革」の後押しを受け,内 閣府の「構造改革特別区域」(通称「教育特区」)における研究事業が進められるよう になった。この「教育特区」の制度を利用して,全国31の自治体で小中一貫教育が推 進されてきた

一連の取り組みに呼応する形で,25(平成17)年10月に出された中央教育審議会 の答申「新しい時代の義務教育を創造する」では,「義務教育に関する制度の見直し」

の項目に以下の記述が盛り込まれた。

義務教育を中心とする学校種間の連携・接続の在り方に大きな課題があること がかねてから指摘されている。また,義務教育に関する意識調査では,学校の楽 しさや教科の好き嫌いなどについて,従来から言われている中学校1年生時点の ほかに,小学校5年生時点で変化が見られ,小学校の4〜5年生段階で発達上の 段差があることがうかがわれる。研究開発学校や構造改革特別区域などにおける

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小中一貫教育などの取組の成果を踏まえつつ,例えば,設置者の判断で9年制の 義務教育学校を設置することの可能性やカリキュラム区分の弾力化など,学校種 間の連携・接続を改善するための仕組みについて種々の観点に配慮しつつ十分に 検討する必要がある

この答申を受けて,28(平成20)年に文部科学省(以下,文科省と略記)が「教 育課程特例校制度」を創設し,文科大臣の指定を受けることで小中一貫教育の実施が 可能となった。これにより小中一貫教育を実施する学校が増加し,全国的に小中一貫 校が加速度を増して広がっていった。

表1 全国の施設一体型小中一貫校

開校時期 自治体 学校 児童生徒数

6年

東京都品川区 日野学園 6人

東京都足立区 興本扇学園 0人 宮崎県日向市 平岩小中学校 約20人

奈良県 田原小中学校 約10人

7年

広島県呉市 呉中央学園 約70人 東京都品川区 伊藤学園 1,6人 宮崎県登米市 豊里小・中学校 3人

8年

広島県府中市 府中学園 1,9人

東京都品川区 八潮学園 9人

川崎市 はるひ野小中学校 0人 大阪府箕面市 とどろみの森学園 5人 佐賀市 小中一貫芙蓉校 約10人 佐賀県唐津市 七山小中学校 約10人

福岡市 照葉小中学校 約60人

9年 千葉県鴨川市 長峡学園 6人 福岡市 小呂小中学校 5人(島嶼部)

0年

東京都品川区 荏原平塚学園 約40人 東京都足立区 新田学園 約50人 東京都武蔵村山市 村山学園 約60人 神奈川県横浜市 霧が丘小中学校 約1,0人 滋賀県高島市 高島小中学校 約50人 香川県高松市 高松第一学園 約1,0人 福岡県八女市

ほくぜい

上陽北 学園 約20人 鹿児島県南さつま市 坊津学園 約10人

1年

東京都品川区 品川地区 約80人 京都市東山地区 開晴小中学校 約80人 島根県松江市 八束小中学校 約30人

2年

東京都渋谷区 本町小中一貫教育校 約50人 京都府宇治市 宇治第1小中教育校 約1,0人 京都市南区 南区小中一貫校 約80人 茨城県つくば市 春日小中一貫校 約90人 熊本県宇城市 豊野小中一貫校

3年 東京都品川区 荏原東地区小中一貫校

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2 小中一貫教育が取り組まれる背景

小中一貫教育が拡大している背景として,近年学校現場で表面化してきたいわゆる

「中1ギャップ」の問題が挙げられる。小柳(2008)は「小学校と中学校の間に学習 面においても,生活面においても大きな段差があり,その乗り越えが困難な子どもが 増加している」事態であると説明し,小中一貫教育の取り組みの背景を以下の6点に 集約している(表3)

小中一貫教育を推進する自治体や各学校は,これらの要因(とりわけ背景①・②・

③)を導入理由として掲げている場合が多い。ここで注目すべきは,3点目の「成長 の実態に即した学校階梯」という視点である。戦後,「6・3制」の義務教育学校制 度が整えられてから60年以上が経過し,学年制や校種間の接続が子どもの心身の成 長・発達にそぐわなくなってきているとの現状認識がある。学年ごとのブロックを組 み替える場合や,義務教育9年間を包括的に捉えて教育活動を行う場合でも,「子ど もの成長・発達に合わせた教育を行おう」との目的意識は共通している。

その一方で,小中一貫教育に対して否定的な見解も存在している。なだらかな接続 を追求するあまり校種間の節目がなくなってしまい,人生において直面する壁をか

表2 小中一貫教育を全市導入する自治体

実施時期 自治体 対象小学校数 対象中学校数 5年 大阪府寝屋川市 6年 東京都品川区 7年 熊本県宇土市 8年 宮崎県日向市

栃木県日光市

9年 鹿児島県薩摩川内市

千葉県鴨川市

東京都三鷹市

宮崎県小林市

宮崎県日南市

大分県佐伯市

0年 埼玉県八潮市

島根県松江市

1年 新潟県三条市

京都市

大阪市 兵庫県神戸市 2年 京都府宇治市 神奈川県横浜市 栃木県宇都宮市

青森県むつ市

3年 福岡県宗像市 時期不明 兵庫県姫路市

大阪府堺市

大阪府門真市

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えって克服しにくくしまうとの指摘である。また義務教育9年間の一貫性が高まるこ とで,子ども同士の,また教職員との人間関係が固定化してしまい,かえって子ども の成長・発達に良い影響をもたらさないとの主張もある

これに対して高階(2009)は,「子どもの確かな成長は,それぞれの段階を充実し て育つと同時に,将来社会人として有為な人材に育つための発達性を加味した継続性 のある教育が必要である。小1プロブレムや中1ギャップで象徴される発達上の問題 は一貫した教育で解消されることが必要なのである」と述べ,小中一貫教育の有用性 を強調している。この主張には,義務教育のシステムを所与のものとしてそこに子ど もを適応させようという発想はない。子ども同士の相互交流や教職員の連携,カリ キュラムの再編成などを通じて,子どもの心身の成長・発達により即した形で教育を 行っていこうというのが,小中一貫教育の取り組みに通底した理念である。

表3 小中一貫・連携の取組動向 取り組み

の背景

①中1問題に対するゆるやかな接続,②学力向上への寄与,③成長の実態に即した学校 階梯の再考,④地域理解・連携の必要性,⑤自己理解・他者理解・縦集団との出会いの 必要性,⑥学校適正規模・統廃校・校舎改築などの理由

9年間の 指導体制

①ブロックを用いる場合;4・3・2(最も多い),5(12・35)・4(67・89),1・

5・4,2・3・4,3・4・2,4・5,4・4・4,②ブロックを用いない場合;

ある教科,各教科,総合,特別活動などでの柔軟な9年間の教育対応を表記 取り組み

の特徴

①外国語・英語系(最も多い),②地域系,③情報・コミュニケーション系,④道徳・

特活・進路融合系(市民科,生き方科など),⑤読解力などある力の獲得への焦点化,

⑥交流学習,⑦教育方法の連携 現状及び

成果

①生徒が落ちついてきた(6年生の変化),②教員組織の意識の変化,③カリキュラム 連携,④指導の連携(教科部会の組織),⑤合同授業,⑥全体計画・カリキュラム案の 構築,⑦校区連携会議の設置,⑧小中一貫コーディネータの設置,⑨兼務体制の明確化 課題 ①より目的を絞った職員の計画的な連携,②学力向上,生活面の変化などに関する評 価・実証,③環境・設備,④移行期に伴う課題への対応。⑤連携校型の学校の意識改革

図1 義務教育9年間の子どもの発達の特性

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3 小中一貫校の形態と実践校の特徴

一口に小中一貫校といっても多様な形態がある。小中一貫校には大きく分けて「施 設一体型」と「施設分離型」の2種類がある。

「施設一体型」は文字通り小学生と中学生が同じ校舎で学ぶ学校である。上述した

「教育特区」制度を利用した東京都品川区では,区内で最初に開校した小中一貫校は

「施設一体型」である。(現在は区内全域で小中一貫教育が行われており,両方の形 態が併存している。

「施設分離型」の学校では既存の校舎を維持したまま,教職員や児童・生徒の交流 を促す形で小中一貫教育が行われている。その代表例は東京都三鷹市である。複数の 小・中学校の上部組織として「学園」を置き,さらにコミュニティ・スクールとして の機能をもたせている。既存の枠組みを活かしながら,地域の実情も反映させようと いう取り組みである。

2種類それぞれの形態に長所と短所があり,どちらの方が優れていると即断するこ とはできない。小中一貫教育の利点を活かすという視点では,「施設一体型」の方が 優れている。授業や行事などを通して,教職員や児童生徒の交流を日常的に図れるか らである。一方,実施の実現性の視点からは「施設分離型」の方に分がある。学校施 設の整備には財政的な裏付けが必須であり,全ての学校が「施設一体型」の小中一貫 校を開設できるとは限らないからである。

近年では両者の利点を併せ持った事例として,隣接する小学校と中学校の校舎を接 続して「施設一体型」の小中一貫校を開校した東京都武蔵村山市の事例もある。こ のように,子どもの実態や地域の実情に合わせた多様な取り組みが進められている。

図2 小中一貫校の形態

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4 小中一貫教育の成果と課題

「小中一貫教育全国連絡協議会」が20(平成22)年6月〜7月に実施した「小中 一貫教育全国実施状況調査」では,小中一貫教育・連携教育の成果と課題がまとめら れている。

成果としては,「教員の意識の変化」が約半数を占めている。実際に小中一貫教育 を担っている教員が,学校文化の違いを乗り越えて協働すること自体に意義を見出し ていることが推察される。続く「中1ギャップの解消」と「児童・生徒の意識の変化」

を合わせると全体の3割程度となり,子どもの側にも一定の成果があることが伺える

(表4・図3)

課題としては,「学校現場の課題」と「制度上・法律上の課題」に分けて調査され ているが,「教員の意識の変化」がここでも筆頭に挙げられている。小中一貫教育の 導入時から交流が進展しつつあるものの,一層の意識変革が求められている証左でも ある。また学校現場では「時間の確保,教員の負担感」や「学校間の距離,予算上の 措置」が上位に挙がっている点も看過できない。黎明期の仕事量の増加はやむを得な い面もあるが,学校現場だけにしわ寄せが来ることのないよう,行政側の支援も欠か せない(表5・図4)。また「教員の定数・人事」や「教員免許状の制限」など,小 中一貫教育の実態と制度の齟齬も浮かび上がっており,法改正も含めた条件整備が必 要である(表6・図5)

「中1ギャップの克服」や「学力向上」を主要な理由として導入・推進されてきた 小中一貫教育であるが,具体的な成果と課題が顕著になるにはまだ時間を要する。た だ成果と課題の両方に「教員の意識の変化」が挙げられているように,子どもの変化 に先立って教員の側が意識変革を求められていることは事実である。これまで「学校 文化の違い」という言葉で片付けられてきた校種間の壁が,小中一貫教育に取り組む ことで直視せざるを得ない状況になったといえる。

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表4 小中一貫教育・連携教育を実施した成果

(自由記述の内容をカテゴリごとに分類)

教員の意識の 変化

児童・生徒の 意識の変化

中1ギャップ

の解消 学力の向上 教育活動の 共通化 5.5% 9.3% 3.6% 9.3% 2.1%

児童・生徒指 導の変化

地域の理解・

支援の変化

学校施設の

有効活用 その他

3.6% 3.6% 0.2% 1.9%

表5 小中一貫教育・連携教育を実施するうえでの学校現場の課題

(自由記述の内容をカテゴリごとに分類)

教員の意識の 変化

時間の確保,

教員の負担感

人員配置(異 動・後補充)

家庭・地域と の理解・協力

複数校との 連携

7.0% 0.4% 9.7% 5.2% 3.4%

教育課程の 編成

学校間の距離,

予算上の措置

県の理解・協 力,市教育委 員会の体制

その他

5.5% 8.7% 2.4% 7.6%

図3 小中一貫教育・連携教育を実施した成果

(表4をグラフ化したもの,項目はグラフの右上から順に対応)

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表6 小中一貫教育・連携教育を実施するうえでの制度上・法律上の課題

(自由記述の内容をカテゴリごとに分類)

義務教育学校の 定義に関するこ

教員免許状の制 限に関すること

教員の定数・人 事に関すること

授業時間・時数 に関すること

補助金・人件費 等の予算に関す ること

3.8% 1.0% 7.2% 1.3% 4.1%

学 習 指 導 要 領

(教育課程)に 関すること

学 校 施 設 の 建 築・利用等に関 すること

その他

9.2% 1.5% 0.8%

図4 小中一貫教育・連携教育を実施するうえでの学校現場の課題

(表5をグラフ化したもの,項目はグラフの右上から順に対応)

図5 小中一貫教育・連携教育を実施するうえでの制度上・法律上の課題

(表6をグラフ化したもの,項目はグラフの右上から順に対応)

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お わ り に

異校種間の連携について研究している小柳は,自身のホームページで公開している

「異校園種連携教育推進ガイドブック(イントロダクション編)」の中で,子どもが 中学校1年生になる時点で遭遇する「4つの壁」について言及している。

1つ目は,「横のつながりの壁(友達関係)」です。これは,複数の小学校から 子どもたちが中学校に集まり,思春期とも重なる中で,その友達関係を構築する のに最初に悩む壁です。

2つ目は,「縦のつながりの壁(先輩関係)」です。これは,中学校に入り部活 動も始まり,小学校とは異なる厳格な先輩後輩関係と出会う中で生じる壁です。

3つ目は,「教科担任制に伴うかかわり方の壁」です。主に,学級担任ベース で進められてきた小学校の授業とは異なり,中学校では教科ごとに教員が変わり ます。教員が変わればその授業スタイルも異なります。難しくなる内容の獲得と 並行して,この授業スタイルの違いに合わせて学んでいくことが中学校の1年生 で突然求められます。そこで生じる,子どもたちが戸惑いを感じる壁を意味して います。よく卒業していった6年生が,中学校の1学期に,小学校にときより立 ち寄り,小学校の頃の担任に中学校の授業がわからない,親切でないなどと言い にくるのは,これと関わっています。

最後に4つ目は,「定期テストの壁・勉強の仕方の壁」です。小学校と異なり,

中学校では,ある程度まとまった範囲の形で,学んだ内容が試されます。そのた め,継続的に学びを積み重ね,広い範囲に関わっても自分でカバーしていかなく てはなりません。このような試験のスタイル,またこれに伴う勉強の方法で戸惑 う壁です

これら4つの事項は,「6・3制」の義務教育学校制度が整備されて以来存在して いたものであり,これまでは校種間の適度な段差として機能していた。しかし,近年 は子どもの発達段階とも相まって多くの子どもが段差を大きな壁と感じ,不適応を起 こしている事態が問題となっている。子どもを取り巻く状況は変化しているにもかか わらず,学校教育が旧態依然で良いはずがない。このような問題意識が,小中一貫教 育の出発点にある。ただ学校運営やカリキュラムのうえで一貫性をもたせるだけで は,対処療法的な施策に留まる恐れがある。子どもが直面している壁を取り除くため の取り組みであるのに,小学校と中学校の教員が断絶したままでは画竜点睛を欠いて しまうからである。

筆者が「実習研究」を実施した小中一貫校でも,9年間の義務教育全体を見通した

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「小・中一貫教育カリキュラム」に基づく教育活動が行われている。小学部・中学部 の教員がティームティーチングで授業を行う「協力授業」や,小学部・中学部の児 童・生徒が一緒に学ぶ「交流授業」などの実践が積み重ねられている。体育の「協力 授業」に携わった教員からは,「小学生だと楽しませる工夫が前に出るけれど,中学 生の場合は技能も大事にしなければならない。いい経験になった」との声が寄せられ ている。校種の垣根を越えて授業を行うことで自身の実践を振り返り,指導の幅を 広げる契機となっている。研究主任の教員も「互いの教え方を知るだけでも意味があ る」と述べ,小中一貫教育に伴う教員の意識変化を好意的に捉えている。また授業 以外の場面でも,小学校と中学校の教員が児童・生徒の情報を共有し,相談し合う光 景が当たり前になったという。

このような小中一貫校での実例は,「子どもを変える以前にまず教師が変わらなけ ればならない」ことを端的に示している。まずは互いの教育観や指導観を共有・交流 することから始め,小中一貫教育の特質を活かした指導法の確立を目指すことが急務 である。

本研究は,創価大学教職大学院21(平成23)年度「教職課題論文」における成果 の一部である。「教職課題論文」では本稿での議論を踏まえたうえで,社会科教育の 視点から小中一貫教育の意義について考察する論述を加筆している。

学校教育法第一章総則第一条には,「この法律で,学校とは,幼稚園,小学校,中学校,

高等学校,中等教育学校,特別支援学校,大学及び高等専門学校とする」との文言があ る。また上記の学校をまとめて「一条校」と総称することがある。

教育再生会議 第9回議事次第「小中一貫教育などに関する関連資料」を参照 http : //www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku/dai9/siryou3_1.pdf

文科省ホームページより引用

http : //www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05102601/004.htm 山本由美編『小中一貫教育を検証する』5ページより引用

同掲書6ページより引用

小柳和喜雄「異校園種連携教育推進ガイドブック(イントロダクション編)」より引用 http : //oyanagi-lab.com/ikouen/handbook1.pdf

小柳和喜雄「幼小・小中連携教育および一貫教育等に関する調査研究」より引用 高階玲治編『幼・小・中・高の連携・一貫教育の展開』48ページを参照 同掲書11ページより引用

0 山形県教育庁義務教育課「さんさんガイド 第6集」より引用

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http : //www2.pref.yamagata.jp/ou/kyoiku/700012/Taro12-I7ae04eca5f8c306e655980b25c715f 62300c3055.pdf

1 武蔵村山市の小中一貫校の取り組みを取り上げた「ルポ・小中一貫校の1年」と題する 記事が,20(平成22)年4月から1年間にわたり隔週で毎日新聞紙上にて連載され た。

2 貝ノ瀬滋『小・中一貫コミュニティ・スクールのつくりかた』47ページより引用 3 全国で小中一貫教育,小中一貫校の研究・開発に取り組む自治体,学校,個人,企業が

情報を交換し,さらに研究・実践を深化させるための連絡協議会であり,既に小中一貫 教育に取り組む京都市,奈良市,呉市,品川区の4つの自治体を発起人として設立され た。「小中一貫教育全国サミット」をはじめとして情報共有・意見交換を活性化すると ともに,小中一貫教育をはじめとした地方からの教育改革に対する国の認知,法的整備 を求めていきたいとしている。「小中一貫教育全国連絡協議会」の事務局を務める東京 都品川区のホームページを参照)http : //www.city.shinagawa.tokyo.jp/hp/menu000006300/

hpg000006232.htm

4 [調査方法]全国の市区町村教育委員会および都道府県教育委員会宛てに「小中一貫教 育全国実施状況調査票」を郵送し,返信用封筒にて回答

[調査対象数および回答数]市区町村教育委員会 対象:1,0 回答:1,1(回収率 4.6%)都道府県教育委員会 対象:47 回答:38(回収率80.5%)

(同ホームページを参照)

5 小中一貫教育全国連絡協議会「小中一貫教育全国実施状況調査(平成22年度最終集 計)」より引用

http : //www.city.shinagawa.tokyo.jp/ct/other000022900/report2010last.pdf 6 同調査より引用

7 同調査より引用 8 同調査より引用 9 同調査より引用 0 同調査より引用

1 小柳和喜雄「異校園種連携教育推進ガイドブック(イントロダクション編)」より引用 http : //oyanagi-lab.com/ikouen/handbook1.pdf

2 「実習研究」を行った小中一貫校では,小学校段階を「小学部」,中学校段階を「中学部」

と呼ぶことが慣例となっている。なお,中学校1年生は「7年生」,2年生は「8年 生」,3年生は「9年生」との呼称を用いている。

3 毎日新聞(朝刊)21(平成23)年1月8日付17面掲載の記事を参照 4 毎日新聞(朝刊)20(平成23)年7月17日付18面掲載の記事を参照

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引用・参考文献

貝ノ瀬滋:小・中一貫コミュニティ・スクールのつくりかた―三鷹市教育長の挑戦,ポ プラ社,2

呉 市 教 育 委 員 会 編 著:小 中 一 貫 教 育 の マ ネ ジ メ ン ト―呉 市 の 教 育 改 革,ぎ ょ う せ い,2

小柳和喜雄:異校園種連携研究における研究動向―小中一貫・小中連携教育を中心に

―,奈良教育大学教育実践総合センター研究紀要,第17号,28,35―3

小柳和喜雄:幼小・小中連携教育および一貫教育等に関する調査研究,奈良教育大学教 育実践総合センター研究紀要,第18号,29,21―2

小柳和喜雄:交流活動を学力向上の取組と連携させる異校園連携の取組―幼保小中連携 の実践的な取組から得られつつあること―,奈良教育大学教職大学院研究紀要「学校教 育実践研究」第3号,21,97―1

高階玲治編:幼・小・中・高の連携・一貫教育の展開,教育開発研究所,2 山本由美編:小中一貫教育を検証する,花伝社,2

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参照

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