食事調査と生活活動調査からみた小学生のエネルギ ー出納に関する研究
著者 志塚 ふじ子, 寺島 恵
雑誌名 長野県短期大学紀要
巻 63
ページ 9‑16
発行年 2008‑12
URL http://id.nii.ac.jp/1118/00000149/
Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja
長野県短期大学紀要 第
6 3
号2 0 0 8
年1 2
月 長野県短期大学J o u r n a lo fNa g a noP r e f e c t u r a lCo l l e g e , No . 6 3 , De c e mb e r2 0 0 8 〒3 8 0 ‑ 8 5 2 5
長野市三輪8 ‑ 4 9 1 7
食事調査と生活活動調査からみた小学生のエネルギー出納に関する研究
Evaluation of energy balance obtained from food consumption
s u r v e y a n d p h y s i c a l a c t i v i t y r e c o r d i n e l e m e n t a r y s c h o o l c h i l d r e n
志 塚 ふ じ 子 F u j i k o S h i z u k a 寺 島 恵 M e g u m i T e r a s h i m a
Wee v al uat e dt hee ne r gyba l anc ei ne l e me nt ar ys c hoo lc hi l dr e nbye xa mi ni nge ne r gyi n‑
t a kea nde ne r gye xpe ndi t ur e .St udi e so nf oo dc o ns umpt i o na ndphys i c a la c t i v i t ywe r edone f or7 5c hi l d r e noft he2 ndo r5 t hgr a dei na ne l e me nt a r ys c ho o lofNaganoc i t yi nJul y
,2 0 0 7 .Ene r gy i nt a kewaso bt a i ne d by we i ghi ng l unc h andf o od‑ r e c or di ng f ort heot he r me a l s .Ene r gye xpe ndi t ur ewasc al c ul a t e dus i ngphys i c alac t i v i t yr e c o r d.Bi gi ndi v i dua ldi f ‑ f e r e nc ewa so bs e r v e di nbo t he ne r gyi nt akeande ne r gye xpe ndi t ur e .Ene r gyba l anc e ,t he r e
‑f o r e ,Wi de l y r a nge d f r om pos i t i v et one ga t i v eand me an e ne r gy bal a nc ewasne ga t i v e . Re s ul t si nd i c at et hats e as o na lv a r i a t i o nmi ghte xi s ti ne ne r gyba l a nc eofe l e me nt a r ys c ho o l c hi l dr e n,s ugge s t i ngt ha tpo s i t i v ee ne r gyba l a nc emi ghtbea c hi e v e di nt heo t he rs e as o nsof t heye a r,noti nt hee a r l ys umme rs e a s on
,.は じめ に
成長期であ る学童期 の食生活 は、心身の健全な成 長 と発達 に重要であるとともに成人期 の食習慣形成 にも大 きな影響を及ぼす。現在のわが国において は、
児童 の食生活 は社会の急速 な変化 によ り様 々な影響 を受 けている。 このよ うな状況の中で、児童 に対す る食教育 の必要性 が社会的 に認識 されて きてお り、
食青 につ いて次 のよ うな方針が掲 げ られて いる 1)0 すなわち、心身の健康 につ なが る方策 として栄養的
に偏 りのない食事 を楽 しく取 り、適度 な運動 をす る こと、 そ して食の 自己管理が実践で きる能力を育 て ること等 であ る。以上 の学童 に対 す る食 の指導 は、
学校栄養職員 や栄養教諭が中心 となって行 うことが 効果的であると考 え られ るが、学校、家庭、地域社 会 ぐるみの取 り組 みが重要 であることはい うまで も ない。
食青 を実施 す るに際 して重要 な ことは、 まず は栄 養状態 に対す る現状把握 を行 うことである。子 ど も の栄養状態の評価 には、 エネルギー摂取量 と消費量 を正確 に把握す る必要がある。 しか し、子 どものエ
ネルギー摂取量、身体活動塁 などに関す る情報 は必 ず しも十分 ではない。
これまでの全国の児童の食事調査か ら、エネルギー 摂取量 の分布 (所要量 に対す る充足率) をみ ると、
エネルギー摂取量 の低 い ものか ら高 い ものまで大 き な幅が あ る
2
)。 しか し、 エネルギー摂 取量 が高 い 子 ど もで も、単 に食べ過 ぎの場合 もある一方、運動 量 が多 いことが原因であ ることもあ り、身体活動量 か ら判断 しな くて はな らない。これまで に行われた食事摂取状況等 に関す る報告 をみ ると、身体活動 を併せて検討 した研究報告 はほ とん どみ られない。 そ こで、本研究では食事 に関す る実態調査 と活動調査 を並行 して行 い、 エネルギー 収支 の観点 か ら望 ま しい食生活 と生活活動 につ いて 検討 した。
方 法
2 0 0 7
年7
月、 長野市街住宅地 に位置 す るA
小学 校 において、2
年生 と5
年生 を対象 に、連 続す る3
日間の食事摂取状況調査な らびに生活活動調査を行 っ
9
Ev a l ua t i o nofe ne r gyba l a nc eobt ai ne df r om f oo dc o ns umpt i o ns ur v e y andp hys i c a lac t i v i t yr e c o r di ne l e me nt ar ys c ho olc hi l d r e n
た。調査 日は学校給食のある日に設定 した。本調査 は、文部科学省の学校給食に関する調査の一環 とし て行 ったものであり、調査に先立 って文部科学省学 校給食課より
A
小学校 な らびに県保健課に対 して協 力依頼がなされた。学校長の協力を得て、本調査の 目的 と調査内容の詳細を記 した文書を対象学年の保 護者全員に配布 し、調査への協力を依頼 した。保護 者か ら同意が得 られた児童を調査対象者 とした。本 調査 はお茶の水女子大学倫理委員会の承認 (第1 9 ‑ 1
1号) を得て実施 した。調査 はヘル シンキ宣言 の 精神 にのっとり、プライバ シーに配慮するとともに、個人情報が漏洩 しないよう十分注意 しなが ら行 った。
1)食事調査
食事調査の詳細 は前報
3)
に示す とお りである。その概略は次のとおりである。給食については調査 員が当該小学校に出向いて摂取量を実測 し、給食以 外 の食事 (朝食、間食、夕食) については保護者 に 調査用紙を配布 して摂取状況の記入を依頼 した。給 食か ら摂取 した食品の重量 は、給食配送セ ンターか ら入手 した献立表 (食品名 と重量)な らびに完成 し た料理の重量を用いて算出 した。食事調査記入用紙 の記載 されたその他の食事から摂取 した食品の量 は、
Eg民健康栄養調査の目安量重量換算表 4)を用 いて 重量に換算 した。食品名 と重量を検討後、栄養計算 ソフ ト 「エクセル栄養君
V4. 0 」 5)
を用 いて、 エ ネルギー摂取量を算出 した。2)
生活活動調査生活活動調査は、食事調査実施 日と同一 日の連続 した
3日間につ いて、2 4
時間の活動 内容 を記録用 紘 (生活時間調査表) に記入することによって行 っ た。記録用紙への活動状況の記入 は1 5
分刻みで記 録することとした。記録用紙は事前 に配布 し、その 記録は保護者 に依頼 した。なお、5
年生 においては、可能な場合は、記録用紙への記録 は児童本人が行 う
表1 生活活動内容 と活動強度
活動内容 Af*
日常的な活動
1.寝 る
1 . 0
座
2.読む.(
音楽 を聴 く (読書)、書 く、テ レビ、ラジオ も含む)、1 . 3
つて
い 休息、お しゃべ り、電話、話を聞 く、授業 (塾 も含む)、
‑る 宿題、パ ソコン、ゲーム
3 .食事 1 . 6
立
4.お しゃべ り 5.身支度 (
洗面、̲着替え)1 1 . . 4 7
てつしヽる 楽器の演奏 (立つ、座 る両方) 裁縫 .
6.そ うじ . 3 . 4
7 .お風 呂 3. 5
移動
歩く
8.
ゆっくり2. 7 8.普通の速 さ 3 . 3 1 0.かばん等を運びなが ら 4. 2
ll.速 く4. 7
走る
1 1 2.ゆっくり、だ らだ ら 3.ふつ う〜速 く 6. 7 . 0 2
自
転
車 1 1 ̲ 4.ゆっくり 5 .普通の速 さ 3. 3 . 4 8
乗り
物
1 1 6.座 って乗 る . 7 .立って乗 る 2. 1 .3 2
体を動かす (体育、休み時間な ど)1 8.か くれんぼ、ま りつき遊び ・ 2. 2 1 9.砂遊び、ままごと、踊 る、 3. 4
校庭 .公園で遊ぶ (鉄棒、
木のぼ り、プランコ)
2 0 .ボール投げ、 ドッヂボール、 4. 2
野球、 ソフ トボール2
1.縄跳び、鬼ごっこ、5.1
おいかけつこ、体操2 2.テニス、バ レーボール、 7 . . 2
23 .サ ッカー、バスケ ッ トボール 8. 2
*Af: Acti vity factor
10
食事調査 と生活活動調査か らみた小学生の エネルギー出納 に関す る研究
こととした。記録用紙は調査 日翌朝に回収 し、調査 員が内容のチェックを行 った。聞き取 りを行い、記 入漏れや不明な点に関 しては、内容 について追加お よび修正することで、活動記録の精度を高めるよう 努めた。
生活活動 の分類 は、Koe
bni c kら 6
)の先行研究 を参考 に して、2 4
項 目に分類 した。 それぞれの生 活活動 の活動強度 には、 日本人 の食事摂取基準( 2 0 0 5
年版) 7) に示 されてい るAf
値 を用 いた (表1)0 Af( Ac t i v i t y f ac t or )値 は、活動時エネ
ルギー消費量÷基礎代謝量で表わされる活動強度の 指標である。活動量の計算については、各調査日で 身体活動 レベル( Phys i c alac t i v i t y l e ve l:PAL)
を算出 し、3
日間の平均 を求めた。PALは、以下 の式か ら算出 した。PAL
‑∑ (AfX
分)/1 4 4 0
分 エネルギー消費量は以下の式で求めた。エネルギー消費量
( kc a
l/日)‑ BMR X PAL
ここで、 BMRとは基礎代謝量( Bas alme t a‑
bo l i cr at e )
であり、基礎代謝量は基礎代謝基準値 に体重を乗 じて求めた。基礎代謝基準値は、 日本人 の食事摂取基準( 2 0 0 5
年版) に示 された値を利用した。
食事調査な らびに生活活動調査の対象者数は
、2
年生4 1
名 (男子2 4
名、女子1 7
名)、5
年生3 4
名(男子
1 6
名、女子1 8
名)であった。調査結果は、すべて平均値±標準偏差 として示 した。データの解 析には統計 ソフ トSTATI
STI CAを使用 し、平均値
の差の検定には一元配置分散分析( ANOVA)を、
事後比較には修正
Tuke y
法を用いた。有意水準 は5 %
とした 。結 果
調査対象児の身長および体重の推移を表
2
に示す。身長は4月の健康診断時に測定 したもの、体重は毎 月定期的に測定 しているものである。身長、体重 と
も
1 9
年度全国平均8)
(身長2
年生男子1 2 2 . 5
皿、女子
1 2 1 . 6
cm、5
年生男子1 3 9 . 0
m、女子1 4 0 . 3
皿、体重
2
年生男子2 4 . 2
kg、女子2 3 . 5
kg、5
年生男子3 4
.4
kg、女子3 4 . 3k g )
とはぼ同様な値であった。体重についてみると
、1 9
年度の長野県平均9)
では、2
年生男子2 3 . 8k g
、女子2 3 . 1k
gであり、3
年生は 男子2 7 . 8
kg、女子2 7 . 2
kgであった。すなわち、2
年生か ら3
年生 にかけて1
年間で約4k
gの体重増 加が認められている。今回の調査は7
月に行 ったも ので、4月の体重測定時か ら3か月が経過 している。そのため
、3
か月間には約1 k g
程度の体重増加が 期待 されるが、今回 は、男子0 . 3k g
、女子0 . 5
kgしか増加 していなか った。 また
、6
月か ら7
月まで の1か月間の体重増加はほとんど認め られなかった。5年生において も、2年生 と同様な傾向であった。
2 4
項 目に分類 した生活活動 に費や した時間の内 訳を表3に示す。2年生、5年生 とも、生活活動の 主体は、寝 る、座 ったり立 ったりして行 う日常的な 軽い身体活動であった。歩 く活動は主 にランドセル を背負 っての通学によるものであった。休み時間や 放課後に行 う体を動かす活動 は、2年生 は校庭で遊 ぶような軽 い活動が中心であったの対 し、5
年生 に なるとより活動的な球技などを行 うものが多 くなっ た。なお、 この時期は体育の授業でプールでの水泳 を行 っているが、 この時間の活動量は高 くなってい る。表4
には、生活活動を 「寝 る」
「座 っている」「立 っている
」
「移動」
「体を動かす」の5
つ分けて、その合計時間を示 した。生活活動時間は、「寝 る」
が最 も長 く、続いて 「座 って行 う活動」、「立 って行 う活動」、「移動」、「体を動かす活動」の順であった。
2
年生、5
年生 とも、睡眠時間は5 3 0 ‑5 6 0
分( 9
時 間程度)で差はなかった。座 っている時間は5
年生 のほうが長 く、立 っている時間は2年生のほうが長 か った。移動時問は2年生のほうが長いことか ら、2年生 は5年生よりも通学 に時間がかか っているこ とがわかる。
エネルギー摂取量、身体活動 レベル
( PAL)
エl l
Ev a l ua t i o n ofe ne r gy ba l anc eo bt a i ne df r o m f oo dc ons umpt i o n s ur v e y andphys i c alac t i v i t yr e c o r di ne l e me nt a r ys c ho o lc hi l dr e n
表
2
食事調査対象児童の身長お よび体重 の推移身長 (cm) 体重
( kg) n 4
月測定2
年生 男子 女子5
年生 男子 女子21 1 2 0. 3 ± 5 . 6' 1 7 1 20 . 0 ± 3. 6
1 6 1 40. 3 ± 5. 5 1 7 1 40. 6 ± 5. 9
22 . 5 ± 3 . 2 2 2. 7 ± 3. 3 2 2. 8 ± 3 . 3 22. 6 ± 2 . 9 23 . 0 ± 3.2 23 .1 ± 3 . 2
3 2. 4 ± 4. 6 32 . 8 ± 5.1 32 . 8 ± 4. 9 33 . 0 ± 6. 0 3 3 . 6 ± 6.1 3 3 . 8 ± 6. 0
*平均値 ±標 準偏 差
表
3
生活活動時間の詳細活動内容
2
年男子2
年女子5
年男子 .5
年女子n = 2 4 n =1 7 n =1 6 m =1 8
分′日 分′日 分/日 分′日
‑日常的宿,動な 寝 る
‑ 1 ' 5 5 4 ± 2 9 * * 5 49 ± 3 9 5 2 5 ± 3 9 ■5 5 7
±1 1 6
座 っている2l 3 ‑ ‑ 40 1 21 ± 1 3 ± 5 3 4 . 4 1 0 1 9 ± 43. 4 7 ± 1 5 1 9 1 8 7 ± 1
.± 5 5 8 471 1 1 0 ± 1 ± . 7 9 4
5 1 2 2
.± 2 8 ' 1 2 6 ± 2 4 91 ± 2 8 1 06 ± 4 2 6 1 6
.± 4 .1 6 ± 4 2 0 ± 1 2 1 9
.± 1 0 7 3 3 ± 8 3 4 ± 11 29 ± 8 2 8 ± 6
移
動 歩 く
8 2 2 ± 1 2 1 7 ± 1 3 7 ± 1 0 6 ± 8 9 4 ± 7 3 ± 6 5 ± 5 5
±1 1 1 0 5 7 ± 1 2 61 ±̲ 1 2 51. ± 9 5 3 ± 1 8 l l 0
‑± 0 0 ± 0 1 . ± 3 0 ± 0
走 る1 2 6 ± 1 3 ̲0 ± 0 3 ± 6 3 ± 5 1 3 . 0 ± 2 ‑1 ± 2 0 ± 0 0 ± 1
自転牢
1 1 4 5 0 0 ± 2, ± 0 0 ± 0 1 ± 4 . 2 ± 4 4 ± 8 0 3 ± 5 ± 1
乗 り物‑ 1 6 7 ± 9 8 ± 1 0 5
±1 1 4 ± 8 1 7 ・0 ± 0 0 ± 0 0 ± 0 , 0 ± 0
鹿を 動か
・■す 休み時間な どに行球技な どう体 を使う遊び、
1 8 0 ± 0 0 ± 0 1 ± 3 1 ± 3■
1 9 1 0 ± 1 6 23 ± 1 9 1 ± 4 4 ± 4 2 0 1 3 ± 2 0 .2 ± 5 7 ± 8 6 ± 1 4 21 1 0 ± 1 1 4 ± 4 8 ± 1 6 8 ± 1 2 2 2 1 ± 3 0 ± 0 2 ± 6 0 ± 0 2 3 8 ± 8 4 ± 5 1 3 ± 21 1 ± 4
事項 目 (
1 ‑2 4)
の内容 は表1
参照、 **平均値 ±標 準偏差J 2
食事調査と生活活動調査からみた小学生の エネルギー出納に関する研究
表
4
各 種 の 生 活 活 動 に 費 や す 時 間寝 る 座っている 立っている 移 動 体 を動 かす
n 分 /日 分/日 分/日 分 /日 分 /日
2
年 男 子2 4 55 4 ±29 ● 52 4 ±62 8 2 05 ±43 8 b 9 6 ± 2 6 a 61 ± 22 2
年 女 子1 7 54 9 ± 3 9 52 6 ± 5 0 a 2 24 ±40 a 91 ± 21 a b 5 0 ± 1 8 5
年 男 子1 6 52 5 ±39 61 5 ± 5 4 b 1 66 ±41 b 77 ± 22 a b 5 7 ± 3 5 5
年 女 子1 8 557 ± 1 1 6 5 81 ±82 b 1 86 ± 5 9 8 b 7 5 ± 23 b 41 ± 25
̀平均値±標準偏差
各生活活動について、右肩に記 した異なる英字記号はデータ間の有意差
( p ‑ ( 0 . 0 5 )
を示す表
5
エ ネ ル ギ ー 摂 取 量 、 消 費 量 お よ び 出 納 値エ ネ ル ギー 身 体 活 動 エ ネ ル ギ ー エ ネ ル ギー 摂 取 量 レベ ル(PAL) 消 費 量 出納
n kc al /
日kca
l/日kc a
l/日2
年 男 子2 4 1 6 80 ± 1 87
*a1 .72 ± 0. 09 1 805 ± 37 0 a ‑1 3 9 ± 2 89 2
年 女 子1 7 1 47 8 ± 21 7 b 1 . 66 ± 0. 06 1 61 1 ± 243 a ‑1 71 ± 230 5
年 男 子1 6 1 931 ± 1 85 c 1 .73 ± 0.1 6 211 9 ± 3 05 b ‑1 40 ± 3 53 5
年 女 子1 8 1 6 94 ± 206 8 1 . 6 4 ± 0.1 4 1 899 ± 3 85 ab ‑1 87 ± 421
*平均値±標準偏差
各項について右肩に記 した異なる英字記号はデータ間の有意差
( p<0 . 0 5 )
を示すネルギー消費量、 エネルギー出納の値を表
5
に示す。エネルギー摂取量 は
2
年生女子が約1 , 5 0 0kc a
l/日 と最 も低 く、2
年生男子 と5
年生女子 は約1 , 7 0 0kc
a l
/日とはぼ同量 の エ ネル ギーを摂取 して いた。5
年生男子 は約1 , 9 0 0kc a
l/日と最 も多 くのエネルギーを摂取 していた。 いずれの学年、性 において も身体 活動 レベルは 「ふっ う」に相当する レベルであった。
エネルギー消費量 は
、 2
年生女子 が約1 , 6 0 0kc a
l/ 日と最 も低 く、 2
年生男子約1 , 8 0 0kc a
l/日、5
年 生女子約1 , 9 0 0kc a
l/日、 5
年生男子 は約2, 1 0 0kc
a
l/日で あ った。 以上 のよ うに、 いずれの学 年、性 において も、 エネルギー摂取量 はエネルギー消費量 よ りも低か った ことか ら、 エネルギー出納の平均値 はいずれの学年、性 において も負の値 とな った。図1にエネルギー摂取量 とエネルギー消費量の相
関関係 を、 図
2
にはエネルギー摂取量 とエネルギー 出納 の相関関係 を示 した。個人 間な らびに 日々のば らつ きをみ るため、図 には各児童 につ き1日ごとの 値 を、 3
日間で3
つの値 をプ ロ ッ トした。 図1
に示 す よ うに、 エネルギー摂取量、 エネルギー消費量 と もに、個人間、個人内 に大 きなば らつ きが観察 され た。2年生 において は、 エネルギー摂取量 とエネル ギー消費量 の間 に正 の相 関関係 が認 め られたが、5
年生 には認 め られなか った。 エネルギー摂取量 とェネルギー出納の間 に も同様 な傾 向が認 め られた. エ ネルギー出納 の値 は
5 0 0kc a
l/日以上 の正 の値 を示 す者 もあ ったが同程度 の負 の値 を示す者 もあるというよ うに、大 きな幅が観察 された。
1 3
Ev a lua t i o n ofe ne r gyba la nc eo bt a ine df r o m f oo dc o ns umpt i o n s ur v e y a ndphys i c ala c t i v i t yr e c o r di ne l e me nt ar ys c ho o lc hi l d r e n
純
一㈹ 50。 M 紬 2 2 1 1 (一3 1 : A )
T麟雫 ‑ 叶 q rや
H(一3
メ⁚^ )
T鯖雲 ‑
叶qtせH0 0 0 0 ∞ 50 00 50 2 1
11 0 0 0 2 0 0 0 3 0 0 0 0 1 0 00 2 0 0 0 3 0 0 0
エネルギー摂取量
( X: k c a
l) ェネルギー摂取量( x: k c a
l)図 1 エネルギー摂取量 とエネルギー消費量の相関
‑00 0 ‑
‑。。Ⅷ
(一
3 1
:A)
孝志ヨー
叶qrや H I
1 0 0 0 2 0 0 0 3 ∝1 0 0 1 0 0 0 2 0 0 0 3 0 0 0
エネルギー摂取量
( X: k c a
I) エネルギー摂取量( X: k c a
l)図 2 エネル ギー摂取量 とエネルギー出納の相関
1 4
食事調査 と生活活動調査か らみた小学生の エネルギー出納に関する研究
考 察
生活活動調査の結果、本調査の対象児童 は睡眠時 間を
9
時間程度 とってお り、睡眠時間や起床時間か らも早寝早起 きの規則正 しい様子が うかがわれた。若者の生活習慣の乱れが危倶 されている現状である が、中 ・高校生 に比べて小学生 は、規則正 しい生活 習慣を身についているように思われた。
本研究で行 った食事調査で
、2
年生 のエネルギー 摂取量 は食事摂取基準( 2 0 0 5
年版) の推定 エネル ギー必要量( EE
R) にほぼ一致 したのに対 し、5
年 生 はEER
を大 きく下回 っていることは前報3)
で 示 した。今回の生活活動調査か ら求めた対象者の身 体活動 レベル( PAL)
の平均値 は、いずれの学年 ・ 性 において も、約1 . 7
(ふつ う)であったことか ら、本調査の対象者の生活活動 は決 して低 くはな く、 こ の年齢 としては概ね適切なものであろうと思われた。
実際、調査時に観察 した子 どもたちか らは活発で行 動的であるという印象を受 けている。 そのため
、2
年生においては摂取量がEER
にほぼ近か ったことと併せて、低学年児童の
EER
はほぼ適切であると 考えられる. しか し、高学年児童の場合、エネルギー 摂取量を増加 させる必要があり、その手段 として活 動量を増加 させることが望 ましいと考え られる。 し か し、学習塾その他の活動で放課後の時間に余裕の ない現状では、 さらに運動を してエネルギー消費量 をあげることは難 しい。以上か ら判断 して、現行の 食事摂取基準で設定 されている高学年のEE R
は高 すぎることが推察 される。エネルギー出納については、小学生 は成長期であ るので、出納はいずれの時期においてもプラスになっ ていることが考え られた。 しか しなが ら、今回の結 果では出納 は負の値 となっていた。 このことを説明 する要因 として、調査時期が挙げ られる。本調査 は
7
月に行 ったものであるが、 この月 は前の月に比べ て体重の増加がほとんどなか った。その理由として 考え られるのは、7
月は蒸 し暑い季節で食欲が落ちていることに加え、プールが始まるなど身体活動が 活発になったとい う季節的な影響が大 きか った もの と思われる。 このように
、1
年のうちにはエネルギー 出納が正 となり体重増加が認め られる時期 と今回の ような時期の2
つの時期があるようである。そのた め、今回のような調査 は、調査時期を変えて検討す る必要 もあると考える。児童の摂取 エネルギーと消費エネルギーのバ ラン スについて調査 した石松
1 0 )の報告によると、消費
熱量 と摂取熱量 との関係をみてみると、朝食で摂取 するエネルギーは午前中に消費するエネルギー量 と 均衡 しているのに対 して、昼食 と午後の間食か ら摂 取するエネルギー量 は午後の消費量 より多 く、夕食 および夜の間食か らの摂取量 は夜間の消費量に比べ て少ないという。・このように、エネルギー摂取量 に ついては、間食の量や内容 ならびに摂取時間なども 含めて検討が必要である。今回の調査で も、遊 び疲 れて、夕食を食べずに寝て しまったという例が散見 された。活発な子 どもには往々にしてみ られること であるが、 このよ うな食事摂取状況がエネルギー摂 取量や出納値に大 きなば らつ きがみ られた要因 とも なっている。今回の調査では、米国の調査 11)で問題 となって いるように、摂取量が消費量を大 きく上回 るとい う 肥満が危倶 される状況 は認め られなか った。む しろ 摂取量が消費量よりも少ないことのほうが危供 され る結果であった。今回 の結果は、他の報告
1 2 )に も
あるように、個人 レベルでは大 きなば らつ きがあっ たが集団 としてみると概ね妥当な結果 と考え られた。エネルギー出納 は平均値 としてみると負の値であっ たが、 このような調査では摂取量が過小評価 されが ちである 13)ことも関係 しているものと思われた。
参 考 文 献
1)食育基本法 :平成
1 7
年制定2)
独立行政法人 日本スポーツ振興センター( NASS
H):平成
1 4
年度児童生徒 の食事状況調 査報告書、2 0 0 5
1 5
Ev a l ua t i o no fe ne r gyも a l a nc eo bt a i ne df r o m f o o dc o ns umpt i o ns l l r V e y a ndph ys i c a l a c t i v i t yr e c o r di ne l e me nt a r ys c ho o lc hi l d r e n
3)寺 島恵、西洋知恵、吉 岡由美、志塚ふ じ子 :小学校給
食で提供 され るエネルギーおよび主要栄養素量の妥当性 についての検討、長野県短期大学紀要、Vo l .6 3 、 1‑8
、2 0 0 8
4)
平成1 5
年国民健康 ・栄養調査 食品番号表 目安量 ・ 重量換算表、調味料の割合 ・給油率表、他、2 0 0 3 5)
吉村幸雄 :エクセル栄養君Ve r . 4. 0 .
五訂増補 日本食品標準成分表 日本人 の食事摂取基準
( 2 0 0 5
年版)対応、建 吊社
、2 0 0 5
6)Ko e bni c kC,Wagne rK,e ta
l.
:Val i dat i o no fas i m‑
pl i f i e d phys i c a lac t i v i t y r e c o r d by do ubl y l a be l e d wat e rt e c hni que ,T nt∫Obe s .2 9,3 0 2 ‑ 3 0 9 ,2 0 0 5
7)厚生労働省策定 日本人の食事摂取基準( 2 0 0 5
年版)、第一出版
、2 0 0 5
8)
文部科学省 :平成1 9
年度学校保健統計調査、2 0 0 8 9)
長野県保健厚生課 :平成1 9
年度長野県学校保健統計調̀査の概要 について