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(1)

実態―運動有能感と体力・運動能力の関係から―

著者 出井 雄二

雑誌名 明治学院大学心理学紀要 = Meiji Gakuin

University bulletin of psychology

巻 24

ページ 47‑62

発行年 2014‑03‑28

その他のタイトル Motor ability in children who are weak in exercise: The relation between exercise competence and physical strength

URL http://hdl.handle.net/10723/2252

(2)

『心理学紀要』(明治学院大学)第 24 号 2014 年 47–62 頁

1 .緒言

 「てつぼうは全ぜんできないし,サッカーの ルールも全ぜんわからないし,みんな先にいっ ちゃうのに,自分だけおいていかれちゃうし,

体育の時間が一番きらいだった。」

 これは,ある小学校 4 年生の女子児童が書い た体育授業に関する作文の一部である。実際に この女子児童の体育授業を担当した経験(註1)か ら言うと,彼女は体力・運動能力が平均よりも 低いだけでなく,運動に対する自信も非常に低 く,体育授業には消極的であった。このような 児童は全国に数多く存在すると思われる。

1.1 小学生の運動やスポーツに対する    意識の実態

 文部科学省(2013)によれば(註2),「運動やス ポーツが得意だと思うか」という質問に対して 小学校 5 年生男子の 13.2% が「やや苦手」,5.1%

が「 苦 手 」, 女 子 の 24.0% が「 や や 苦 手 」,

10.4% が「苦手」と答えている。同様に「運動 要 約

 本研究の目的は運動を苦手とする児童の体力・運動能力の実態を明らかにすることである。

 小学校高学年の児童を「運動が得意」「やや得意」「やや苦手」「苦手」の 4 群に分けて,それぞれの群の運動有能感 と体力・運動能力を比較した。その結果,運動が苦手な児童は身体的有能さの認知が低く,体幹の筋力・筋持久力,全 身の瞬発力,スピード,全身持久力は劣っているが,上肢の筋力,柔軟性,敏捷性,巧緻性には差がないことが明らか になった。

キーワード:運動が苦手,運動有能感,体力・運動能力テスト,体力要素

出 井 雄 二

(明治学院大学心理学部)

【原著】

運動が苦手な小学校高学年児童の体力・運動能力の実態

―運動有能感と体力・運動能力の関係から―

やスポーツは好きか」という質問に対して,男 子の 6.1% が「やや嫌い」,2.8% が「嫌い」,女 子の 12.9% が「やや嫌い」,5.9% が「嫌い」と 答えている。また,入学前,小学 1・2 年時,

小学 5 年(現在)の変化をみると,入学前から 現在まで,ずっと得意だと思っている児童が最 も多く,男子では 64.5%,女子では 51.7% だっ た。一方で,男子の 8.7%,女子の 14.9% の児 童は,入学前から現在まで,運動やスポーツが ずっと苦手だと感じたまま 5 年生になっていた こともわかった。さらに,運動やスポーツが好 きかどうかについての変化では,入学前から現 在までずっと運動やスポーツが好きな児童は,

男子では 78.3%,女子では 68.4% みられた。

あわせて,ずっときらいな児童は,男子では 3.4%,女子では 6.3% だった。特筆すべきは,

「好きだったが,今はきらい」と回答をした児 童が,男子では 5.5%,女子では 2 倍以上の 12.5% いることである。

 このことから,小学校 5 年生の男子 10 ~ 20%,女子の 20 ~ 35% は,運動やスポーツを「苦 手」,「嫌い」と感じており,特に女子は学年が

(3)

上がるにつれて運動やスポーツに対して消極的 な姿勢を持つ傾向が明らかになっている。さら に中学生女子の約 30% は体育授業以外の 1 週 間の総運動時間が 60 分未満なのに対して,残 りの 70% は 60 分~ 180 分程度運動しているこ とから運動時間の二極化がますます進んでいる と言える。このような状況に対して,前述の報 告書では「体育の授業では,運動やスポーツに 苦手意識を持っている児童や,女子に焦点を当 て,有能感を高める,または,低下させない指 導を一層推進していくことが必要である」と指 摘している。

1.2 運動有能感と運動嫌いの関係

 運動に対する有能感は,自分は運動が上手に 出来るという自信である。しかし,これだけで 運動に対する有能感をとらえた場合には,運動 が苦手な児童・生徒の有能感を高めることは困 難であることから,岡澤ら(1996)は,運動に 対する自信を,運動が上手に出来るという自信 である「身体的有能さの認知」だけでなく,努 力すれば,練習すれば出来るようになるという 自信である「統制感」,指導者や仲間から受け 入れられているという自信である「受容感」の 3 つで捉えることが必要であることを明らかに し,これら 3 つの因子からなる運動有能感測定 尺度を作成している。従来の有能感という考え 方では,「身体的有能さの認知」のみが重要視 され,運動能力が低い児童生徒の運動に対する 内発的な動機を探ることは困難であった。しか し「統制感」「受容感」という因子が加わるこ とによって,運動能力や技能レベルが低い児童 生徒を内発的に動機づける体育授業の在り方を 検討する手掛かりを得ることができるように なった(岡澤,2004)。

 また,岡澤ら(1998)は,大学生を対象にし た研究で運動嫌いは運動有能感の欠如が原因で あること,波多野ら(1981)も,大学生を対象 にした研究で,運動嫌いの者は例外なく運動能 力に関して劣等感を持っていること,それまで

に経験してきた体育授業に否定的な評価を下し ていることを明らかにしている。

1.3 運動有能感と体力・運動能力の関係  岡澤(2004)は運動有能感の高い中学生は体 力・運動能力も高いことを明らかにしている。

武田(2005)も児童期の体力水準が運動有能感 の形成に大きく関与していると指摘している。

さらに武田(2006)は,小学生の体力要素と運 動有能感の関係を検討した結果,スピード

(50 m 走)と巧緻性・瞬発力(ボール投げ)は 全ての学年で,瞬発力(立ち幅跳び),筋力(握 力),筋力・筋持久力(上体起こし),敏捷性(反 復横とび)及び全身持久力(註3)(20 m シャトル ラン)は中・高学年で有意な関係にあることに 対して,柔軟性の指標である長座体前屈はどの 学年の運動有能感に有意な関係が認められない ことを明らかにしている。中山ら(2012)も小 学生の運動有能感と体力・運動能力の関係を検 討し,低学年段階では体力の上位群と下位群で は運動有能感の差は小さいが学年進行に伴って 差が拡大する傾向にあるとしている。

1.4 研究の意義

 このように先行研究によって運動有能感と運 動嫌い,運動有能感と体力・運動能力には密接 な関係があることが明らかになっている。前述 の岡澤(2004)の報告では中学生を対象に運動 有能感の上位,中位,下位の 3 群に分けて,そ れぞれの体力・運動能力の数値が明らかにされ ているが,小学生を対象にした同様な報告はな い。また,武田(2006),中山(2012)らの報 告では,運動有能感を上位・下位の 2 群に分け て検討しているので,特に運動有能感の低い小 学生の実態が明らかになったわけではない。

 そこで,1.1 で述べたような運動やスポーツ に対して消極的な姿勢を持つ小学生の体力・運 動能力の実態を明らかにすることが,生涯にわ たって運動に親しむ資質や能力の基礎を育てる

(4)

ことを教科の目標としている体育科の授業にお いて重要な示唆を与えると考える。

 また,先行研究では身長,体重,肥満傾向と いった体格の差の検討をしたものはない。経験 的に肥満傾向のある児童は運動が苦手と感じる ような傾向があると思われることから肥満度の 比較からも何らかの示唆が得られると予想でき る。

 本研究では,文部科学省が 2008 年度から始 めた全国体力・運動能力,運動習慣調査の対象 が小学 5 年生であり,その資料を活用できるこ と,文部科学省(2013)の報告では,中学生女 子の運動時間の二極化が顕著であり,その傾向 が小学校高学年からみられると指摘しているこ と,運動有能感の発達傾向として小学校 4 年生 から 5 年生にかけて顕著な低下傾向がみられる

(岡澤ら,1996)こと,から小学校高学年を対 象とすることとした。

2 .目的

 以上のことから,運動が苦手な小学校高学年 児童の体力・運動能力の実態を,運動有能感を 手掛かりにして明らかにすることを本研究の目 的とする。

3 .方法 3.1 対象

 関東地方の公立小学校 3 校の 5,6 年生児童 402 名を対象に身体測定及び体力運動能力テス ト,運動有能感調査の 3 つを実施した。そのう ちデータに欠損がある 5 名を除外した 397 名を 対象にした。対象者の人数を表 1 に示す(註4)

表 1 対象者の人数(人)

学年 総計

5 年 96 104 200 6 年 100 97 197 総計 196 201 397

3.2 調査時期

 身体測定は 2013 年 4 月,体力・運動能力テ ストは 2013 年 5 月~ 6 月にかけて,運動有能 感テストは,2013 年 7 月に実施された。

3.3 調査の内容

 本研究では,岡澤ら(1996)の開発した運動 有能感テストを担任教師の指導のもとで実施し た。身体測定及び体力・運動能力テストは各校 で実施された結果を学校長の許可を得て参照し た。

 運動有能感テストの調査項目は「身体的有能 さの認知」,「統制感」,「受容感」の 3 つの因子,

各 4 項目で構成されており,表 2 に示す 12 項 目の質問を使って測定する。各質問に対して「よ くあてはまる」を 5 点,「ややあてはまる」を 4 点,「どちらともいえない」を 3 点,「あまり あてはまらない」を 2 点,「まったくあてはま らない」を 1 点として回答を得る。この 12 項 目のうち,「身体的有能さの認知」を No1,2,

8,10 の合計点,「統制感」を No 3,4,11,12 の合計点,「受容感」を No5,6,7,9 の合計 点で表わす。各因子は 20 点満点,合計 60 点満 点となる。

 身体測定の測定項目は「身長」「体重」 である。

得られたデータを基に標準体重を求め,肥満度 を算出した(註5)

 体力・運動能力テストの測定項目は「50 m 走」「立ち幅跳び」「ソフトボール投げ」「握力」

「上体起こし」「長座体前屈」「反復横とび」「20 m シャトルラン」8 項目である。

(5)

4 .結果

 上記 3.3 で得られた結果を用い,運動有能感,

肥満度,体力・運動能力テストの各項目につい て統計ソフト SPSS  Statistics20 を用いて分析 した。

4.1 学年別男女別の運動有能感

 学年別男女別に運動有能感得点を算出した。

平均値,標準偏差(SD)を表 3 に示す。

表 2 運動有能感調査票

 これはテストではありません。運動や体育について,みなさんの気持ちや考えを知るためのものです。

自分にあてはまる番号に○をつけてください。

NO 質 問 内 容 カテゴリー

1 運動する力がすぐれていると思う

身体的有能さの認知

2 たいていの運動(体育)はじょうずにできる

8 運動のじょうずな見ほんとして,よく選ばれる 10 運動について自しんをもっている

3 練習をすれば,かならずうまくなったり,いい記録が出せると

思う

統制感

4 努力すれば,たいていの運動はじょうずにできると思う

11 少しむずかしい運動でも,努力すれば,できるようになると思

12 できない運動でも,あきらめないで練習すれば,できるように

なると思う

5 運動をしている時,先生がはげましたり,応おうえん援してくれる 6 運動をしている時,友だちがはげましたり,応おうえん援してくれる 受容感

7 いっしょに運動をしようとさそってくれる友だちがいる

9 いっしょに運動する友だちがいる

表 3 運動有能感の学年別得点

学年

身体的有能さの認知

(最大 20 点)

統制感

(最大 20 点)

受容感

(最大 20 点)

有能感 合計

(最大 60 点)

SD SD SD SD

男子 5 年 13.50 3.75 16.51 3.70 14.53 3.75 44.54 9.66 

6 年 13.50 4.70 16.96 3.81 16.44 3.32 46.90 9.71  女子 5 年 12.81 4.21 17.75 2.88 16.21 3.29 46.77 10.10  6 年 11.69 4.38 16.95 3.63 16.54 3.26 45.18 8.50

(6)

4.2 比較群の設定

 本研究では,対象児童の運動に対する意識か ら以下の 4 群に分けて検討することにした。

 岡澤ら(1998)らが示すように,運動嫌いは 運動有能感の欠如が原因であることと,1.1 で 示した文部科学省(2013)の調査報告での「運 動やスポーツが得意だと思うか」という質問紙 調査が「得意」「やや得意」「やや苦手」「苦手」

の 4 件法であることから,運動有能感テスト合 計得点上位から「得意群」,「やや得意群」,「や や苦手群」,「苦手群」の 4 群に分けた。

 具体的には,以下のようにした。

①  調査対象者の運動有能感を学年別男女 別に算出し,得点順に並べる。

②  上記の質問紙調査結果の割合に応じ

て,①の上位から「得意」「やや得意」「や や苦手」「苦手」 の 4 群に分類していく。

③  5 年生は文部科学省の調査結果(2013)

から,男子は「得意」=45.0%,「やや得意」

=35.9%,「やや苦手」=14.1%,「苦手」

=5.1%,女子は「得意」=27.1%,「やや 得意」=39.4%,「やや苦手」=24.1%,「苦 手」 =9.5% の割合で 4 群に分けた。6 年 生は彼らが 5 年生であった 2012 年の調 査結果(文部科学省,2012)を基にして,

男子は「得意」=48.6%,「やや得意」=

33.2%,「やや苦手」=13.2%,「苦手」 = 5.1%,女子は「得意」=28.9%,「やや得意」

=36.7%,「やや苦手」=24.1%,「苦手」

=9.5% の割合で 4 群に分けた。その結 果を表 4 に示す。

表 4 各群の人数と割合

男 子 女 子

得意

(A群)やや得意

(B群)やや苦手

(C群) 苦手

(D群) 得意

(A群)やや得意

(B群)やや苦手

(C群) 苦手

(D群)

5年生 n =人 46 32 13 5 96 30 36 27 11 104

割合(%) 45.0 35.9 14.1 5.1 27.1 39.4 24.1 9.5

得点基準 60–47 46–36 35–30 29– 60–53 52–46 45–35 34–

6年生 n =人 45 34 14 7 100 27 37 24 9 97

割合(%) 48.6 33.2 13.2 5.1 28.9 36.7 24.1 9.5

得点基準 60–52 51–39 38–26 27– 60–52 51–44 43–32 31–

* 人数の割合は文部科学省(2012,2013)の結果を参照した

4.3 群別にみた児童の運動有能感,肥満度 及び体力・運動能力

 対象児童を「得意=A 群」「やや得意=B 群」

「やや苦手=C 群」「苦手=D 群」 の 4 つに分け,

群ごとに運動有能感,肥満度及び体力・運動能 力を算出した。測定項目ごとの群間の差を検定 するめに一要因分散分析と多重比較を岡澤

(2004)に倣って行った。その結果を表 5,6,7,

8 に示した。また体力・運動能力の差を比較し やすくするために,全国平均値を 50 とした時 の群別のT得点(註6)を図 1,2,3,4 に示した。

(1)5 年男子(表 5,図 1)

 5 年男子の身体的有能さの認知,統制感,運 動有能感の合計に各グループ間での有意な差が 認められた。受容感は C 群と D 群に有意な差 はみられず,A 群と B,C,D の各群間,B 群 と C,D 群間には有意な差がみられた。

 肥満度の平均値は A 群がやや痩せ気味で以 下 B 群→ C 群→ D 群の順に数字が上がっていっ たが,どのグループ間にも有意な差が認められ なかった。

 握力の平均値は B 群→ A 群→ C 群→ D 群の 順であったが,グループ間に有意な差は認めら

(7)

れなかった。

 上体起こしの平均値は A 群→ B 群→ D 群

→ C 群の順であり,D 群が C 群を上回っていた。

A 群と C 群の間に有意な差が認められた。

 長座体前屈の平均値は D 群が最も高く D 群

→ A 群→ B 群→ C 群の順であった。A 群と B,

C 群の間に有意な差が認められたが,D 群と他 の群には有意な差が認められなかった。

 立ち幅跳びの平均値は A 群→ B 群→ C 群

→ D 群の順であったが,グループ間に有意な 差は認められなかった。50 m 走の平均値は A 群→ B 群→ C 群→ D 群の順で,A 群と D 群の

間に有意な差が認められた。

 20 m シャトルランの平均値は A 群→ B 群

→ C 群→ D 群の順で,A 群と C,D 群の間に 有意な差が認められた。

 反復横跳びの平均値は A 群→ C 群→ B 群

→ D 群の順であった。A 群と B,D 群の間に有 意な差が認められた。

 ボール投げの平均値は D 群が 2 番目,B 群 が最も低くなり,A 群→ D 群→ C 群→ B 群の 順であった。A 群と B 群の間に有意な差が認 められた。

表 5 5 年男子 群別の運動有能感得点,肥満度,体力・運動能力テスト 学年

平均 SD 得意

(A群)

やや得意

(B群)

やや苦手

(C群)

苦手

(D群)

一要因

分散分析 有意確率 多重比較

n 人 96 46 32 13 5 F 値 *<0.05 LSD p<0.05

身体的有能

さの認知 13.50 3.75 16.15 12.34 9.62 6.60 44.84 0.000* A>B>C>D 統制感 16.51 3.70 19.09 15.81 12.85 6.80 84.96 0.000* A>B>C>D 受容感 14.53 3.75 17.41 13.19 10.00 8.40 60.00 0.000* A>B>C,D 運動有能感

合計 44.54 9.71 52.65 41.34 32.46 21.80 198.65 0.000* A>B>C>D 肥満度 % 0.55 17.52 −1.82 2.28 3.85 2.96 2.61 0.057

握力 kg 16.15 3.84 16.21 16.36 15.81 15.20 0.23 0.879

上体起こし 回 21.64 6.58 23.59 20.50 18.23 19.80 3.12 0.030* A>C 長座体前屈 cm 30.21 7.54 32.13 28.75 26.15 32.40 2.92 0.038* A>B,C 立ち幅跳び cm 153.43 18.56 158.17 150.94 147.15 142.00 2.39 0.073

50 m走 9.44 1.02 9.15 9.60 9.71 10.24 2.94 0.037* A>D 20 m

シャトルラン 56.77 20.00 61.85 55.65 48.92 37.40 3.47 0.190* A>C,D 反復横とび 回 42.07 6.81 44.30 39.94 41.08 37.80 3.70 0.015* A>B,D ボール投げ m 19.71 6.65 21.48 17.53 18.85 19.60 2.38 0.075* A>B

(8)

図 1 5 年男子 体力・運動能力テスト結果の群別T得点 25

30 35 40 45 50 55 60 65

握力 上体起こし 体前屈 立ち幅 シャトルラン 反復横とび ール投げ50

■A 群 ■B 群 ■C 群 ■D 群

(2)6 年男子(表 6,図 2)

 6 年生男子の統制感,運動有能感の合計に各 群間での有意な差が認められた。身体的有能さ の認知では,C 群と D 群に有意な差はみられず,

A 群と B,C,D の各群間,B 群と C,D 群間 に有意な差がみられた。受容感は B 群と C 群 に有意な差はみられず,A 群と B,C,D の各群,

B 群と D 群,C 群と D 群の間に有意な差がみ られた。

 肥満度の平均値は A 群がやや痩せ気味で以 下 B 群→ C 群→ D 群の順に数字が上がっていっ たが,どの群間にも有意な差が認められなかっ た。

 握力の平均値は A 群→ B 群→ C 群→ D 群の 順であったが,群間の有意な差は認められな かった。

 上体起こしの平均値は A 群→ B 群→ C 群

→ D 群の順であった。A 群と D 群,B 群と D 群の間に有意な差が認められた。

 長座体前屈の平均値は A 群→ C 群→ D 群

→ B 群の順で,C,D 群が B 群を上回っていた。

A 群と B 群の間に有意な差が認められた。

 立ち幅跳びの平均値は A 群→ B 群→ C 群

→ D 群の順であった。A,B,C 群と D 群の各

群間に有意な差が認められた。

 50 m 走の平均値は A 群→ B 群→ C 群→ D 群の順で,A 群と B,C,D の各群間,B 群と D 群,C 群と D 群の間に有意な差が認められた。

 20 m シャトルランの平均値は A 群→ B 群

→ C 群→ D 群の順で,A 群と B,C,D の各 群の間に,B 群と D 群,C 群と D 群の間に有 意な差が認められた。

 反復横跳びの平均値は A 群→ B 群→ C 群

→ D 群の順で,A 群と D 群の間に有意な差が 認められた。

 ボール投げの平均値は A 群→ B 群→ C 群

→ D 群の順であった。群間に有意な差はなかっ た。

(9)

表 6 6年男子 群別の運動有能感得点,肥満度,体力・運動能力テスト 学年

平均 SD 得意

(A群)

やや得意

(B群)

やや苦手

(C群)

苦手

(D群)

一要因

分散分析 有意確率 多重比較

n 人 100 45 34 14 7 F 値 *<0.05 LSD p<0.05

身体的有能

さの認知 13.50 4.70 17.22 12.94 7.00 5.29 106.31 0.000* A>B>C,D 統制感 16.96 3.81 19.58 16.88 13.21 8.00 89.65 0.000* A>B>C>D 受容感 16.44 3.32 18.67 15.56 14.36 10.57 32.12 0.000* A>B,C>D 運動有能感

合計 46.90 10.05 55.47 45.38 34.57 23.86 334.90 0.000* A>B>C>D 肥満度 % 0.59 14.76 −0.62 0.06 0.90 10.25 1.11 0.35

握力 kg 19.04 4.72 19.73 18.74 18.18 17.79 0.73 0.538

上体起こし 回 23.04 5.76 24.44 23.03 21.29 16.67 4.08 0.009* A,B>D 長座体前屈 cm 34.70 7.02 36.36 32.29 35.93 33.29 2.49 0.065 A>B 立ち幅跳び cm 162.83 19.00 166.62 162.24 162.07 139.50 3.92 0.011* A,B,C>D 50 m走 8.91 0.92 8.40 9.08 9.41 10.29 16.95 0.000* A>B,C>D 20 m

シャトルラン 65.28 24.96 78.00 61.38 51.29 30.43 14.09 0.000* A>B,C>D 反復横とび 回 44.75 8.66 46.62 44.12 42.93 39.43 1.88 0.138 A>D ボール投げ m 26.53 9.19 28.42 26.74 22.71 21.00 2.36 0.076

図 2 6 年男子 体力・運動能力テスト結果の群別T得点 25

30 35 40 45 50 55 60 65

握力 上体起こし 体前屈 立ち幅 シャトルラン 反復横とび ール投げ50

■A 群 ■B 群 ■C 群 ■D 群

(10)

(3)5 年女子(表 7,図 3)

 5 年女子の運動有能感の 3 因子と合計に各グ ループ間での有意な差が認められた。

 肥満度の平均値は A 群がやや痩せ気味で以 下 B 群→ C 群→ D 群の順に数字が上がっていっ たが,どの群間にも有意な差が認められなかっ た。

 握力の平均値は D 群が 2 番目に高く,A 群

→ D 群→ C 群→ B 群の順であったが,群間の 有意な差は認められなかった。

 上体起こしの平均値は A 群→ B 群→ C 群

→ D 群の順であった。A 群と B,C,D の各群 間,B 群と D 群,C 群と D 群の間に有意な差 が認められた。

 長座体前屈の平均値は A 群→ B 群→ C 群

→ D 群の順であった。群間の有意な差は認め られなかった。

 立ち幅跳びの平均値は A 群→ B 群→ C 群

→ D 群の順であった。A 群と B,C,D の各群 間,B 群と D 群,C 群と D 群の間に有意な差 が認められた。

 50 m 走の平均値は A 群→ B 群→ C 群→ D 群の順で,A 群と B,C,D の各群間,B 群と C,

D 群の間に有意な差が認められた。

 20 m シャトルランの平均値は A 群→ B 群

→ C 群→ D 群の順で,A 群と B,C,D の各 群間,B 群と D 群,C 群と D 群の間に有意な 差が認められた。

 反復横跳びの平均値は A 群→ C 群→ B 群

→ D 群の順であった。全ての群間で有意な差 が認められた。

 ボール投げの平均値は D 群が C 群を上回り A 群→ B 群→ D 群→ C 群の順であった。A 群 と C 群の間に有意な差が認められた。

表 7 5 年女子 群別の運動有能感得点,肥満度,体力・運動能力テスト 学年

平均 SD 得意

(A群)

やや得意

(B群)

やや苦手

(C群)

苦手

(D群)

一要因

分散分析 有意確率 多重比較

n 人 30 36 27 11 F 値 *<0.05 LSD p<0.05

身体的有能

さの認知 12.81 4.21 17.13 13.22 10.30 5.82 75.24 0.000* A>B>C>D 統制感 17.75 2.88 19.87 18.64 16.30 12.64 47.27 0.000* A>B>C>D 受容感 16.21 3.29 18.80 16.81 14.96 10.27 44.37 0.000* A>B>C>D 運動有能感

合計 46.77 8.50 55.80 48.67 41.56 28.73 370.68 0.000* A>B>C>D 肥満度 % 1.21 15.44 −3.60 −0.24 5.75 7.95 2.65 0.53

握力 kg 16.84 3.37 17.33 16.44 16.78 16.91 0.37 0.772

上体起こし 回 19.33 5.54 21.80 19.61 17.31 16.45 4.56 0.005* A>B,C>D 長座体前屈 cm 36.85 6.72 38.57 37.17 36.00 33.18 1.95 0.126

立ち幅跳び cm 147.91 17.92 155.40 151.17 143.00 128.91 8.34 0.000* A>B,C>D 50 m走 9.64 0.88 9.27 9.51 10.02 10.16 5.67 0.001* A>B>C,D 20 m

シャトルラン 47.46 16.68 59.40 47.69 40.89 30.27 14.32 0.000* A>B,C>D 反復横とび 回 41.57 6.60 43.77 42.36 39.37 38.36 3.32 0.023* A>B>C>D ボール投げ m 13.63 5.08 15.77 13.44 11.89 12.73 3.11 0.030* A>C

(11)

(4)6 年女子(表 8,図 4)

 6 年女子の運動有能感の 3 因子と合計に各グ ループ間での有意な差が認められた。

 肥満度の平均値は D 群→ A 群→ C 群→ B 群 の順に数字が上がっていったが,どのグループ 間にも差が認められなかった。

 握力の平均値は C 群が B 群を上回り,B 群 と D 群は平均値が等しかった。平均値は A 群

→ C 群→ B・D 群の順であったが,グループ 間の有意な差は認められなかった。

 上体起こしの平均値は D 群が C 群を上回り,

A 群→ B 群→ D 群→ C 群の順であった。グルー プ間の有意な差は認められなかった。

 長座体前屈の平均値は D 群が最も高く,D 群→ A 群→ C 群→ B 群の順であった。グルー プ間の有意な差は認められなかった。

 立ち幅跳びの平均値は A 群→ B 群→ C 群

→ D 群の順であった。A 群と B,C,D の各群 間に有意な差が認められた。

 50 m 走の平均値は A 群→ B 群→ C 群→ D 群の順で,A 群と B,C,D の各群間,B 群と D 群の間に有意な差が認められた。

 20 m シャトルランの平均値は A 群→ B 群

→ C 群→ D 群の順で,A 群と B,C,D の各

群間,B 群と C,D 群の間に有意な差が認めら れた。

 反復横跳びの平均値は D 群が 2 番目に高く,

A 群→ D 群→ C 群→ B 群の順であった。グルー プ間の有意な差は認められなかった。

 ボール投げの平均値は A 群→ B 群→ C 群

→ D 群の順でグループ間の有意な差は認めら れなかった。

図 3 5 年女子 体力・運動能力テスト結果の群別T得点 25

30 35 40 45 50 55 60 65

握力 上体起こし 体前屈 立ち幅 シャトルラン 反復横とび ール投げ50

■A 群 ■B 群 ■C 群 ■D 群

(12)

図 4 6 年女子 体力・運動能力テスト結果の群別T得点 25

30 35 40 45 50 55 60 65

握力 上体起こし 体前屈 立ち幅 シャトルラン 反復横とび ール投げ50

■A 群 ■B 群 ■C 群 ■D 群

表 8 6年女子 群別の運動有能感得点,肥満度,体力・運動能力テスト 学年

平均 SD 得意

(A群)

やや得意

(B群)

やや苦手

(C群)

苦手

(D群)

一要因

分散分析 有意確率 多重比較

n 人 97 27 37 24 9 F 値 *<0.05 LSD p<0.05

身体的有能

さの認知 11.69 4.38 16.56 12.05 8.08 5.22 78.56 0.000* A>B>C>D 統制感 16.95 3.63 19.63 18.00 15.46 8.56 79.76 0.000* A>B>C>D 受容感 16.54 3.26 18.67 17.27 15.21 10.67 28.54 0.000* A>B>C>D 運動有能感

合計 45.18 9.28 54.85 47.32 38.75 24.44 294.25 0.000* A>B>C>D 肥満度 % 1.99 16.12 −1.56 5.55 3.35 −5.71 1.81 0.151

握力 kg 19.11 3.99 19.50 18.89 19.08 18.89 0.12 0.948 上体起こし 回 22.15 5.70 24.22 22.35 20.08 20.67 2.56 0.600 長座体前屈 cm 40.15 8.62 40.67 39.68 39.75 41.67 0.17 0.916

立ち幅跳び cm 150.07 19.05 158.56 148.62 146.75 139.44 3.21 0.027* A>B,C,D 50 m走 9.18 0.80 8.62 9.24 9.46 9.91 10.20 0.000* A>B,C,D,B>D 20 m

シャトルラン 47.30 15.12 58.85 46.69 39.71 35.33 12.31 0.000* A>B>C,D 反復横とび 回 41.70 6.48 44.30 40.38 40.92 41.44 2.13 0.102

ボール投げ m 16.08 6.26 18.63 15.62 14.58 14.33 2.32 0.081

(13)

5.考察

 本研究では,小学校高学年児童を運動が「得 意=A 群」「やや得意=B 群」「やや苦手=C 群」

「苦手=D 群」 の 4 群に分け,群ごとの運動有 能感,肥満度及び体力・運動能力を算出し,運 動が苦手な児童の実態を明らかにすることを目 的とした。

 運動有能感の「身体的有能さの認知」,「統制 感」,「受容感」,「運動有能感得点合計」の全て において運動が苦手な児童は他のグループより も優位に低い数字を示した。特に身体的有能さ の認知では,他の因子に比べて大きな差がある ことから,運動が苦手な児童は特に「自分は運 動が出来ない」と感じていることが分かった。

このことは岡澤(1996),波多野(1981)の結 果と同様であった。

 肥満度については 5,6 年男女のどの群間に も有意な差はみられなかった。平均値の最小は

−5.71%,最大は 10.25% であり,これはどち らも「正常」に判定される範囲であった。ただ し,6 年女子を除いては,A 群がやや痩せ気味 で,以下,B 群→ C 群→ D 群の順でやや肥満 気味になっていく傾向がみられたことと,6 年 女子では D 群の肥満度の平均値が−5,71% と全 群の中でも最も痩せ気味であったことから,肥 満度が「正常」の範囲から大きく外れた場合に 運動有能感が低下する可能性が示唆された。

 以下,体力・運動能力について考察していく が,武田(2006)に倣って,握力を上肢の筋力,

上体起こしを体幹の筋力・筋持久力,長座体前 屈を柔軟性,立ち幅跳びを全身の瞬発力,

50 m 走をスピード,20 m シャトルランを全身 持久力,反復横跳びを敏捷性,ボール投げを瞬 発力と巧緻性を示す体力要素と考えていく。

 握力は 5,6 年男女とも有意な差はみられな かった。特に 5 年女子では D 群が B,C 群を 上回っていることから,握力には運動有能感に は関係がなく,運動が苦手だから握力≒上肢の 筋力が弱いとは言えないことが明らかになった。

 上体起こしでは,5 年女子と 6 年男子に有意

な差が認められた。5 年女子の D 群は,A,B,

C 群に対して有意に劣っていた。6 年男子の D 群は A,B 群に対して優位に劣っていた。5 年 男子,6 年女子では D 群が C 群を上回ってい るが,その差は小さく,C 群と D 群を 1 つの「運 動が苦手」なグループと考えれば,平均値は 5,

6 年男女ともに A 群>B 群>C,D 群となる。

このことは,小学校中高学年では上体起こしと 運動有能感には有意な関係が認められるという 武田(2006)の報告とも一致することから,運 動が苦手な児童は上体起こし≒体幹の筋力・筋 持久力がそうでない児童よりも劣ると言える。

 長座体前屈の 5 年男子では平均値が D 群

→ A 群→ B 群→ C 群となり,D 群が最も高い 数字を示したが,有意な差があったのは A 群 と B,C 群の間であった。6 年男子では A 群

→ D 群→ C 群→ B 群の順で A 群と B 群に差 が認められた。5 年女子では A 群→ B 群→ C 群→ D 群,6 年女子では A 群→ B 群→ D 群

→ C 群となったが,ともに有意な差が認めら れなかった。このことから,男子の運動の得意 な児童は長座体前屈≒柔軟性が高いが,苦手だ からといって柔軟性が低いとは言えないこと,

女子では運動有能感と柔軟性には関係が認めら れないことがわかった。

 立ち幅跳びでは,5,6 学年男女ともに平均 値は A 群→ B 群→ C 群→ D 群の順であり,5 年男子以外には有意な差が認められた。5 年男 子を見ると D 群の平均は 142.0 cm で C 群とは 約 5 cm,B 群と約 9 cm の差で他の学年男女よ りは差が小さく,群間に有意な差は認められな か っ た。6 年 男 子 で は,D 群 の 平 均 値 が 139.5 cm,C 群が 162.1 cm と C 群と D 群の間 に約 22㎝ の差があり,D 群は A,B,C 群の 各群との間に有意な差が認められた。5 年女子 で は D 群 の 平 均 値 が 128.9 cm,C 群 が 143.0 cm と C 群と D 群の間に約 14 cm の差が あり,D 群は A 群だけでなく,B,C 群との間 にも有意な差が認められた。6 年女子でも 5 年 女子と同様に D 群は A 群だけでなく,B,C 群との間にも有意な差が認められた。このこと

(14)

から,立ち幅跳びと運動有能感には有意な関係 があり,運動が苦手な児童は立ち幅跳び≒全身 の瞬発力が劣ると言える。

 50 m 走では,5,6 学年男女ともに平均値は A 群→ B 群→ C 群→ D 群の順であった。5 年 男子を見ると D 群と A 群の差は約 1.1 秒で有 意であった。D 群と C 群の差も 0.53 秒と大き な差があったが有意差は認められなかった。6 年男子では,D 群の平均値が 10.29 秒と 5 年男 子 D 群(10.24 秒)よりも低い数字を示した。

C 群と D 群の間にも 0.88 秒の差があり,D 群 と A,B,C 群の各群との間に有意な差が認め られた。5 年女子では C 群と D 群の差が 0.14 秒と小さく有意な差もなかったが,B 群と C 群の間に約 0.5 秒の大きな差があった。C 群と D 群は A 群だけでなく,B 群との間にも有意 な差が認められた。6 年女子では A 群と B,C,

D 群に有意な差が認められた。また B 群と D 群の間にも有意な差があった。このことから 50 m 走と運動有能感には有意な関係があり,

運動が苦手な児童は 50 m 走≒スピードが劣る と言える。

 20 m シャトルランでは,5,6 学年男女とも に平均値はA群→B群→C群→D群の順であっ た。5 年男子を見ると D 群は C 群と約 12 回の 大きな差があったが有意差はみられなかった。

しかし,C 群と A 群,D 群と A 群には有意差 が認められた。特に D 群と A 群の差は約 24 回,

C 群と A 群の差は約 13 回と大きな差があった。

6 年男子では,全ての群間に有意差がみられた。

特に D 群と A 群の差は約 48 回,C 群と A 群 の差は約 27 回とここでも大きな差があった。5 年女子の D 群は A 群,B 群,C 群の各群より も有意に劣っていた。その差をみると A 群と は 29 回,B 群とは 17 回,C 群に対しても約 10 回の差があった。6 年女子を見ると D 群と C 群の差は約 4 回で有意差はなかった。しかし,

D 群,C 群ともに B 群,A 群との間には有意 差が認められた。特に D 群と A 群の差は約 23 回,C 群と A 群の差は約 19 回と大きな差があっ た。このことから 20 m シャトルランと運動有

能感には有意な関係があり,運動が苦手な児童 は 20 m シャトルラン≒全身持久力が劣ると言 える。

 反復横跳びの 5 年男子では,平均値は A 群

→ C 群→ B 群→ D 群の順で C 群が B 群を上回っ ていた。B 群,D 群は A 群よりも有意に劣っ ていた。D 群と A 群の差は約 7 回であった。6 年男子では,平均値は A 群→ B 群→ C 群→ D 群の順であったが群間に有意な差はみられな かった。D 群と A 群の差は 5 年男子と同じ約 7 回であった。5 年女子の平均値は A 群→ B 群

→ C 群→ D 群の順であり,各群間に有意な差 が認められた。D 群と A 群の差は約 5 回と,5 年男子,6 年男子よりも小さかった。6 年女子 の平均値は D 群が 2 番目,C 群が 3 番目となり,

A 群→ D 群→ C 群→ B 群の順であった。群間 に有意な差はなかった。5 年男女は群間に有意 な差があったが 6 年男女では有意差がなかった こと,平均値の順位は必ずしも D 群は最も劣っ ていたわけではないことから,反復横跳びと運 動有能感には有意な関係が認められず,運動が 苦手な児童は反復横とび≒敏捷性が劣っている とは言えない。武田(2006),岡澤(2004)の 報告では,小学生の中・高学年,及び中学生で は運動有能感と反復横跳びには有意な関係を認 めていたが,その結果とは一致しなかった。

 ボール投げの 5 年男子の平均値は D 群が 2 番目,C 群が 3 番目に高い値であり,A 群→ D 群→ C 群→ B 群の順であった。A 群と B 群の 間に有意な差があった。6 年男子の平均値は A 群→ B 群→ C 群→ D 群の順であったが,群間 に有意な差はなかった。5 年女子は D 群が C 群を上回り,A 群→ B 群→ D 群→ C 群の順で あった。A 群と C 群の間に有意な差があった。

6 年女子の平均値は A 群→ B 群→ C 群→ D 群 の順であったが,群間に有意な差はなかった。

このことからボール投げと運動有能感には有意 な関係は認められず,運動が苦手な児童はボー ル投げの能力≒巧緻性が劣るとは言えない。武 田(2006),岡澤(2004)の報告では,小学生 の中・高学年,及び中学生では運動有能感と

(15)

ボール投げには有意な関係を認めていたが,そ の結果とは一致しなかった。

6.結論

 小学校高学年児童を運動が「得意=A 群」「や や得意=B 群」「やや苦手=C 群」「苦手=D 群」

の 4 群に分け,群ごとの運動有能感,肥満度及 び体力・運動能力を算出した結果,運動が苦手 な児童の実態として以下のことが明らかになっ た。

1 ) 運動が苦手な児童は,運動有能感の中でも 特に身体的有能さの認知が低く「自分は運 動ができない」と思っている。

2 ) 運動の苦手さと肥満度には明確な関係はな い。

3 ) 運動が苦手な児童は,上体起こし,立ち幅 跳び,50 m 走,20 m シャトルランにおい て体力・運動能力が平均的な児童よりも記 録が明らかに落ちる。

4 ) しかし,握力,長座体前屈,反復横跳び,

ボール投げでは,体力・運動能力が平均的 な児童と比べてもそれほど劣っているわけ ではない。

5 ) 体力要素から考えると,運動の苦手な児童 は,体幹の筋力・筋持久力,全身の瞬発力,

スピード,全身持久力が劣っているが,上 肢の筋力,柔軟性,敏捷性,巧緻性には差 がないと言える。

 今後の課題として以下の点を挙げておく。

① 反復横跳び,ボール投げと運動有能感の関 係が先行研究と一致しなかった原因を明ら かにしていきたい。

② 今回の報告では触れていないが,データ処 理の段階で学級間の格差が明らかになっ た。今回の調査の対象となった 6 学年 6 ク ラスのうち,運動有能感の高いクラスと低 いクラスを比べたところ,50 m 走では学 級間の差が約1秒,20 mシャトルランでは,

20 回もの差があった。これはクラスの雰

囲気が児童のパフォーマンスに大きく影響 しているものと予想される。運動有能感調 査に教師やクラスの仲間との関わりについ ての調査項目があることから,学級間の格 差についても検討していきたい。

③ 上記②のことを踏まえたうえで,運動を苦 手とする児童,身体的有能さの認知が低い 児童に対する具体的な指導法の考案とその 有効性の検証を行っていく。

文献

波多野義郎・中村精男(1981).運動嫌いの生 成機序に関する事例研究.体育学研究,

26,177-187.

文部科学省(2012).平成 24 年度全国体力・運 動能力,運動習慣調査結果報告,30-32.

文部科学省(2013).平成 25 年度全国体力・運 動能力,運動習慣調査結果報告,29-42. 

中山 綾・松坂 晃・吉野 聡(2012).茨城 大学教育学実践研究,31,255-262.

岡澤祥訓・北真佐美・諏訪祐一郎(1996).運 動有能感の構造とその発達及び性差に関す る研究.スポーツ教育学研究,16(2),

145-155.

岡澤祥訓・仲田幸代 (1998).運動嫌いと運動 有能感の関係.体育科教育,1998 年 9 月号,

42-44.

岡澤祥訓 (2004).子どもの体力と運動有能感.

子どもと発育発達,2(2),120-122.

武田正司 (2005).児童期における体力と運動 有能感の関係.盛岡大学紀要,22,41-47.

武田正司 (2006).児童期における体力と運動 有能感の関係−第 2 報−.盛岡大学紀要,

23,67-74.

脚注

(註 1 ) これは I 県の「体育代替非常勤講師」

という制度を活用したものである。妊 娠中の女性教師の母体保護と体育実技

(16)

授業の円滑化を図るという趣旨から 2003 年度から実施されている。筆者は 小学校教員免許を所有し,小学校教師 の経験も長いことから,非常勤講師と して体育授業を担当した。

(註 2 ) この調査は全国体力・運動能力,運動 習慣等調査と呼ばれるもので,小学校 5 年生,中学 2 年生を対象とした全国的 な悉皆調査である。2013 年度は全国の 児童・生徒の 98.4% が参加している。

(註 3 )ここで用語の定義を示す。

筋力:筋肉の力。

瞬 発力:筋力とスピードによって瞬間 的に強い力を発揮する能力。

スピード:筋肉を動かす速さ。

筋 持久力:筋肉が一定以上の負荷に長 時間耐える能力。

敏 捷性:外界の動きに対して,からだ をすばやく適切に動かす能力,ある いは自分の欲する動きをすばやく実 現する能力。

全 身持久力:全身的作業を持続するた めに必要な筋持久力以外の能力。筋 肉が活動を持続するための呼吸器,

循環器系の機能が主体となる。持久 力は「全身持久力」と「筋持久力」

に大別される。

巧 緻性:外界の状況に応じて適切に行 動し,目的を果たす能力。筋力的な 要因よりも,神経系の機能の高さが 重要となる。広義には,「器用さ」と いわれる能力。

柔 軟性:関節が動くことができる範囲 の大きさで,体の各部分の筋肉の伸 展度などに左右され,筋肉と関節と が一緒になって働く動作の円滑さを 決める能力。

(註 4 ) 実際の調査は 1 年~ 6 年生,1197 名に 対して行っている。その分析結果は別 の機会に発表する。

(註 5 ) 標準体重,肥満度の算出は文部科学省

(2013,p10)「肥満傾向児・痩身傾向児 の出現率の算出・判定方法」に拠った。

(註 6 ) T 得点は全国平均値に対する相対的な 位置を示すもので,単位や標準偏差が 異なる調査結果を比較するために用い る。T 得点は次の式で表わされる。

T 得点 =50 + 10×+ 調査結果−平均値)

/標準偏差

(17)

Motor ability in children who are weak in exercise : The relation between exercise competence

and physical strength

Yuzi DEI

(Faculty of Psychology, Meiji Gakuin University)

Abstract

  The objective of this study was to clarify the motor ability of children who are weak in exercise. Sub- jects  were  divided  into  groups  of  four  children  each  on  the  basis  of  exercise  competence,  and  physical  strength and exercise capacity were compared. In children weak in exercise, muscle strength, and muscle  endurance,  speed  was  also  inferior.  However,  there  were  no  differences  in  upper  limb  muscle  strength,  flexibility, agility, or dexterity.

  Key words:weak in exercise, exercise competence, physical strength, exercise capacity

図 1 5 年男子 体力・運動能力テスト結果の群別T得点253035404550556065握力上体起こし体前屈立ち幅シャトルラン 反復横とび ボール投げ50m■A 群 ■B 群 ■C 群 ■D 群 (2)6 年男子(表 6,図 2)  6 年生男子の統制感,運動有能感の合計に各 群間での有意な差が認められた。身体的有能さ の認知では,C 群と D 群に有意な差はみられず, A 群と B,C,D の各群間,B 群と C,D 群間 に有意な差がみられた。受容感は B 群と C 群 に有意な差はみられず,A 群
表 6 6年男子 群別の運動有能感得点,肥満度,体力・運動能力テスト 学年 平均 SD 得意 (A群) やや得意(B群) やや苦手(C群) 苦手 (D群) 一要因 分散分析 有意確率 多重比較 n 人 100 45 34 14 7 F 値 *&lt;0.05 LSD p&lt;0.05 身体的有能 さの認知 点 13.50 4.70 17.22 12.94 7.00 5.29 106.31 0.000* A&gt;B&gt;C,D 統制感 点 16.96 3.81 19.58 16.88 13.21 8.0
図 4 6 年女子 体力・運動能力テスト結果の群別T得点253035404550556065握力上体起こし体前屈立ち幅シャトルラン 反復横とび ボール投げ50m■A 群 ■B 群 ■C 群 ■D 群表 8 6年女子 群別の運動有能感得点,肥満度,体力・運動能力テスト学年平均SD得意(A群)やや得意(B群)やや苦手(C群)苦手(D群)一要因分散分析有意確率 多重比較n 人972737249 F 値 *&lt;0.05 LSD p&lt;0.05身体的有能さの認知点11.694.3816.5612.058.08

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