北海道に於ける土工部屋
寺山朝
七 六 五 四 三 ニ ー一
序説
募集事情
雇傭契約︑迩走︑解雇
組織及び螢働状況
給付状態
生活態様
結論
北海道に於けろ土工部屋三七七
商學討究第五巻(下)三七八
暴力地獄蟹工船と題し︑九月以來の新聞雑誌に極北の洋上に出稼ぎする勢働者の悲惨なる酷使虐
待事件が暴露されだ︒世人等しく驚異の眼を見張う︑或者は幹部に蜀し︑或者は之を監視する官権
に劃し︑凡ゆる罵僻を弄して非難し︑憤激し如何に其の悪縛非道なるかを攻撃した事であらう︒彼
等雇主には漁雑夫の貴き生命は一個の蟹罐にも値しないのである︒叉一方所謂カムサッカ的資本主
義に魔醇せる幹部等に依つて凡ての人間性を没却され酷使せしめられてゐπのである︒
群鴎齪れ飛ぶ北洋の極地に︑此の暴虐非道を見た筆者は︑蝕に此れと正しく劃照をなしてゐる北
海の原始の森深き荒地に鬼畜に等しき幹部の爲めに酷使にさいなまれてゐる︑所謂監獄部屋を探訪
せんと企てπのである︒
監獄部屋︑それは山林原野に高原に住まう怪物静かに寝るが如く暗黒色に黒づんで︑凄然として
横はつてゐる孤屋である︒此の中に幾多の哀れな土工夫の群が︑苛詠の夕は飲酷の朝に明け︑酷使
の朝は苦難の夕に暮る\生活を績け︑全く超肚會的な規約の下に︑鞭傷と過螢の偶めに喘ぎ働く彼
等が月日を途ってゐるのである︒
血もなく涙も無き幹部の爲めに︑叩かれ撲られ蹴られ果ては︑泥靴を以つて生面を踏みにじられ
る虐待は︑側視するものをして櫟然だらしめるものがあらう︒此の戦慎すべき虐使の下に獣々とし
て牛馬の如く働く土工等は︑或者は機會を見生命を賭して 走を企てるも宜なる哉であらう︒如何
ヘへにπこi(それは自身の身を自身で食ふものとして土工をかく呼ぶ)︑ーとは言へ等しく生を亨
け力人間である︒それは蝕ムに獲忍なる酷使ではなからうか︑併し又宇面に何が斯くの如く幹部を
して酷使せしめるに至るか制度の罪か︑幹部の罪か將叉十工夫の罪かを極めなければなら臓︒斯く
して後初めて土工の正鵠なる研究が果πせるであらう︒
抑ζ我が北海道竜今や︑第二期拓殖計書樹立され年と共に︑富源の開螢︑産業の振興︑土地の改
良等急テンポの婁達を來し︑現今の北海道の登展を見πうと錐も︑此の螢展の最も主要なる要素π
る︑鐵道︑道路︑橋梁︑治水其の他の工事の完成の裏面には︑乙の哀れな幾多の士工の犠牲を偲ば
なければなら漁︒此等諸工事の悉くが土工の血と肉とを以つて築き上げられ禿のである︒
鐵道線路⁝幾尺の地下には︑此等犠牲者が人を呪ひ世を恨み︑干恨の怨嵯を吾等に叫びかけてゐ
る︑無心に路傍に蔽ひ茂る草木にして彼等の生血に染らないものはなからう︒今第一拓殖計書の完
成の跡を眺め︑この哀れな最後を遽げπ土工等に一掬の涙を捧げ︑其の効績を世に讃へ︑今術虐使
北海道に於ける土工部屋三七九
商學討究第五巻(下)三八〇
の鞭下に苦しみつ\ある仲間の存するなちぱ︑之を世に訴へんとするのである︒'
現今國の東西を問はず︑政治的に肚會的に將力思想的に實際的に︑勢働施設︑待遇改善の叫ば
る\今日に此の超世間的な存在を認め得るとは︑稀代の一奇象ではあるまいか︑最近道磨初め各官
磨警察に於いて︑講演會や巡査講習會等を開催し︑種々百方此の取締りに叢痺せられつ\あるも︑
此の存在は全く山間僻地の不便な地に多く︑又此の組織が非常に複難であつて容易に其の内部の槍
討を許されず︑全く肚會より隔離されて居り︑且一叉一般人士には之を正しく認識する事なく︑只恐
ろしき不可抗力的な別の世界との観念の下に︑此問題より遠ざかウ居るが如くである︒故に蝕に一
小文を草して肚會一般の猛省を促し︑項少なうとも識者の意を留むるを得ば幸甚である︒
抑ず此の監獄部屋と云ふ恐ろしい語源は何であらうか︒此の起源について二説ある︒即ち明治+
二年頃の黒田清隆が︑北海道開拓使時代に道路土木工事に勢力の不足を來尤し︑又一方移民の奨働
に依りても︑開登せられない山野の開墾の爲め︑東京石川島刑務所より徒刑に庭せられカるもの
を︑北海道樺戸聚治監(現在樺戸郡月形村)︑之を移逡し︑百人乃至百五+人を一隊となし︑長屋
に入れ技士︑﹂誘工︑傳告等の下に︑道路の開難に從事せしめ尤︑此の際犯罪者が逃走を企てるを防
ぐ駕め之を︑嚴重に監禁しπと言ふ事實よう︑此れに似πる監督制度の土工部屋を斯く繕しだとの
説があり︒叉一説には誘拐︑又は募集の甘言に釣られ︑一度此の盈獄部屋の軒をく讐つた以上︑或
る一定の期間は如何なる事實があらうとも︑全然外界との交渉は絶泥れ︑文書の登逞さへも不可能
にして︑全然賃銀を得られず粗食に甘ぜねばなら澱︑其の冷遇虐待は將に囚人を牧容する︑盈獄に
等しきものなウとの理由よう︑一般に斯く稽しπものなうとの所謂二説がある︒
靱而上記のこ説の中何れの説が正しきかについて古老の言を徴するに︑監獄部屋と辮するに至つ
πのは︑明治三+五年以來にして聚治監と稽する監獄のあつた頃には︑全然斯る呼稽はなかつカと
云ふ︒事實嘗て聚治監の看親πうし一老翁の語る所を聞けば︑士工虐待の事實が甚だしく人道上よ
う識者の偶く論ずるものあう︑叉一般人士が之に驚異の眼を見張るに至つ疫頃より呼んだ竜ので︑
恐らく明治三+五六年以後に厩すと︒此の起源年代よう察するに恐らく後説が正しきに近いと思は
れるも︑併し前説を全然否定する事竜叉誤謬であらう︒要するに前後雨説が共に相合して世人が斯
く呼びしものと推定する外なからうと思はれる︒
然らば現在の如き監獄部屋は何時の時代ようあウしか︑何等の記録なき此の問題については︑説
懐ちーなれども︑恐らく筆者は明治+六︑七年頃ようと想像する︑其の理由は聚治監の囚人は︑
の全然鐵道敷設工事に從事せず︑專ら道路開難造田工事にのみ使役し︑該工事は專ら土木請負業者に
北海道に於けろ土工部屋三八一
商學討究第五巻(下)三八ニ
へね於いて從事したと言ふ︒故に土木請負業者は内地よう所謂πこ釣う入計をめぐらし︑誘導して使用
■し虎と言ふ事である︒
籾而北海道に於ける此の言葉が︑内地樺太に移ウ廣く一般に残酷なる使役と虐待の行はる\人夫
部屋を斯く稻するに至つπ︒されど只一言に監獄部屋と稽するも︑此の中には所謂信用人夫宿含も
包含きれるものにして︑悉くが此の残忍なる搾取の下にあると稽する事は出來ないであらう︒
以下筆者は幼稚な筆を蓮びつ\各章に於いて種々細述解剖を試みやう︒
二
春三月下旬雪も少ぐ溶け暖かくなうかけると町の小路の入口︑電柱叉は塵箱の側面等に﹁××鐵
道工事︑山行キ人夫頼ミマス前金澤山﹂︒とか又.﹁×x××灌概工事︑士工人夫タノミマス前金澤
山貸シマス﹂等々のビラが貼られる︒此の時は人夫募集從業員よう各周旋屋に依頼が來てゐる時で
ある︒併し如何に不景氣でも斯る簡軍な手段では到底所定の人員を募集する事が出來ない︑其庭で
愈,浮浪性勢働者の流れ込む積取人夫の宿泊所︑木賃宿等に募集の網が張られる︒其庭で先づ第一
如何なる方法維路を以て募集乃至牧容をするかを見るに︑
一 ■■四 回 臨 四 ■ 験 \ . 1.
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2.
難
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一擁
{縫工れり篶讐藪離雛聖難鰍羅璽て再び周旋自登的に來るもの窪のの経瞼な難撫灘羅雛霧識灘鱗鷲勧誘ー懸難霧難 難雛馨欝
ー ・無 灘 羅 糠 騨 雛 騨 難
{割込ー灘灘灘礫灘難簾雛難灘
割込に依らず強制されうもの 癒難欝灘搬簾難難雛離繍撚
以上の牧容維路を辿る土工等の以前の職業は︑即ち百種萬般に渉す肚會に存在する凡ゆる職業を
北海道に於ける土工部屋三八三
商學討究第・五巻(下)三八四
網羅してゐる︒されば此庭に如何なる種類の人間が慮募されて來るかを見るに︑
一紫齪し和準をかく家庭の子弟M二主人の金を費消するか叉は意見衝突して主家を飛び出しπる徒弟
三商工業者の失敗せしもの
四諸工揚︑諸會肚より解雇された失業者
五定職を厭ふ浮浪性勢働者
六地方よウ上京し失業の浪に晒されたる勢働者
七自己の職業に不満を抱き他の職を得んとして失敗して其の職を得ざるもの
入學生にして勉學の途中酒色に迷ひ宇途退學せしもの又は此れと反樹に苦學生にして學資を得ん
として稼ぐもの
更に募集の年齢別を見るに左表の如し︒
勢働者年齢表
蒸マ彙竺叢以上マ贅土四+歳以土五+窒丁ハ+歳呈
女 男
一
九
==二 一
正 四、
四 四二
匠
=」 四 '、〇
一
四、
一 五八
一一曽
1宅
lI
然らば此の種類の土工等が如何なる中間介在者の手を経て働くまでに至るか︑其の系圖を明示す
れば次頁の如くであるが︑斯檬に多歎の中聞介在者が存在して︑如何程で募集從事者の手中に入る
か︒
東京地方に於ける人夫相場は︑旛島縣諸工事揚渡淵五六圓︑宮城縣諸工事揚渡光五圓ー四十圓︑
秋田︑山形縣諸工事場渡五十圓内外として︑我が北海道では函館渡四十圓よわ最高入十圓まで︑渡
場の如何に依りて百圓を突破する事も往々ある︒樺太では大泊渡百圓!古廿圓位である︒
北海道土工夫の多くは北海道道内で募集するものにして︑募集從事者が函館︑小樽︑札幌其の他
の諸都市に出かけ︑周旋屋乃至暖昧屋︑小料理店等より牧容して來る竜のにして︑此の経費は凡そ
四十圓内外︑前借金の最も多額なもので入十圓︑此れ以上多額は決して借す事がない︒
而し拾藪年前のあの強制的な非人道的な︑全然土工の意思を無親しπ拉致方法に比して今昔の威
に堪へない竜のがある︒即ち大正入年五月勢務者募集取締規則虹びに同施行細則取扱手績公布以來
北海道に於けろ土工部屋三入五
商學討究第五巻(下)
騨塵
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卜元 言
Ψ 理 看♪
人 下請翼
灘↓(辮
/ 賑ハ繍轟隷
ノく㌧ 紫 夫 一
\
1繋 轟轟 菌医懸歯歯歯幽\薗
i多務 難
三八六
多大の改革︑改正が行はれπ︒
第一如何なる宿含にも必ず募集從事者
を特別に定めなければなら顧︒若し人員
少き部屋に於いては管理者が之を兼ねる
事になつてゐる︒募集從事者が募集に關
し大略次の事項が命ぜられてゐるもので
ある︒
ω募集者許可願勢働者募集取締規則第
入條に依う先づ募集に出かけんとする
時は本籍地佳所︑職業︑氏名︑就業揚
の種類︑所定人員及び募集匠域を記載
して募集主と連署の上道聴長官に提出
する︒
②募集着手届此れには募集從事者の住