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複数議決権等と株主平等の原則

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著者 清水 忠之

雑誌名 明治学院大学法律科学研究所年報 = Annual Report of Institute for Legal Research

巻 31

ページ 39‑45

発行年 2015‑07‑31

URL http://hdl.handle.net/10723/2512

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複数議決権等と株主平等の原則

清 水 忠 之 1.はじめに

 わが株式会社法においては株主平等の原則から一株一議決権が原則である。この株主平等の原 則については衡平を理念的根拠とするのがわが国の通説であり、株主の権利性の発現として捉え るドイツ法のような考えもあるが、資本的結合の面から平等の取扱をすべきものとする点では、

ドイツ法、フランス法、英米法も変わりはない。したがって、一株一議決権、ないしは、資本に 寄与する額面額を基準とした議決権(ドイツ株式法。これは結局は、基準となる額面に一議決権 を付与することから一株一議決権と実質的に同じである)が主要国の原則である。

 しかし、ドイツでは一時期、株式法において公開会社においても複数議決権を認める法制度が 存在していた。また、同じくドイツでは最高議決権の制度も現存している。わが国においては、

非公開会社につき、株主の特性として平等に定めることを要しない(つまり、たとえば、一人一 議決権を認める)とする規定が存在する。このような制度・規定と、株主平等の原則との関係を どのように考えればよいのかが本稿のテーマである。

2.ドイツの複数議決権 1)複数議決権の制定 

 複数議決権は、古くは1897年商法典の中の株式会社編にすでに規定されていた。認可を問題と することなく任意に会社に認められてきた複数議決権は1937年株式法では新たな複数議決権株の 導入が禁止され、公共目的に限定した行政庁の例外的承認を根拠としてのみ、会社は複数議決権 株を導入することができた。複数議決権は、インフレの時代にはしばしば100倍という議決権が 定められたこともあり、会社にとって内外の資本の導入に対する保護の手段として有用であっ (1)。しかし、ワイマール時代から複数議決権に対しては批判が多く、賛否についての活発な 議論が行われた。その争点を要約すれば、所有権の自由に対して、資本市場と所有者コントロー ルへの侵害の論争である。反対説の主たる論点である、後者の点は、株式会社において議決権の 行使は原則として保有する議決権の有する株式数に方向づけるられるべきものであるという前提 に反し、相応する持分所有のない勢力を認めるとということは資本市場の予期するところではな く、所有者コントロールを弱めることになるという考えである。そこで、1965年の株式法改正で は、その政府草案で例外のない複数議決権の禁止を採用していたが、連邦議会では基本法第14条 との整合性を勘案して例外条件を定めた。

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 複数議決権導入の例外的規定とは、「会社がその本社を有するラントの経済を管轄する最高官 庁は、より広い全体経済的利益を維持するために必要である限りにおいては」例外を許容するこ とができると定める(65年株式法12条②第2文)。65年株式法以前の法制において複数議決権が 自由に認められてきたという現状を前提にすると、会社に現存する支配関係が継続して維持され ることにつき、公の利益のある場合がある。そのような利益がある場合、支配確保の手段として 複数議決権を利用することも会社にとって許されるべきであると連邦議会における法律委員会お よび経済委員会は判断した。この公の利益の存否は個々の会社において判断されてはならず、む しろ官庁の判断によって決定されなければならないとした。こうして、より広い全体経済的利益 の維持のためにそれが必要である場合に限って経済に関して管轄権のある最高官庁によって例外 が許容されるとしたのである。全体経済的利益の維持のために必要なケースとは、地方公共団体 がエネルギー供給事業の株主となっている場合が典型的であって、この65年株式法の例外規定に よって複数議決権株が認められた実例はジーメンス株式会社を含めて20社が存在し、その圧倒的 多数がエネルギー経済企業であった。 

 その当時存在した複数議決権については、1937年前の時代から超古い複数議決権、1937年から 1965年の間の時代からは公益目的のために承認された古い複数議決権、そして、1965年以降の時 代からは全体経済的利益から承認された新しい複数議決権というふうに区別されるのである(2) とくに最後のもの〈新しい複数議決権〉はとくに、株式の第三者への譲渡の場合、承認の取消し によって同時に公的利益もなくなるというときは、そのときからVwVfG (行政手続法)第49条 に基づいて複数議決権が取り除かれうる。

2)複数議決権の廃止

 1998年施行の「企業領域における管理および透明性に関する法律」(KonTra法)は、新たな複 数議決権株の発行を完全に放棄すること、および5年以内に現存する複数議決権株を廃止するこ とを定めた。廃止については、株式法第12条第2項第2文の削除の要請である。その報告者草案 で示された複数議決権株廃止の根拠は、見合った持分所有が無いにもかかわらず所有かつ行使し ている影響力を認容することは、一般的に許容されるべきではなく、資本市場の期待に一致する ものではなく、所有者による管理を弱体化するものであるということであった。

 複数議決権株式を廃止するについては、これの廃止を反対する根拠であった所有権の保障の問 題があった。そもそも株式所有が基本法第14の保護の下にあるかという問題についてはここでは 省略する。廃止によって幾つかの補償についての訴訟が提起されたことのみを付記するに止める。

 KonTra法によって変更された株式法施行法第5条①1文は、前もって株主総会が決議に代表 される基本資本の少なくとも四分の三を含む多数でその継続を決議しない限り2003年1月1日を もって複数議決権は消滅する、と規定した。さらに、同法第5条②第1文は、前項の規定に関わ りなく、決議に代表される基本資本の少なくとも二分の一を含む多数で廃止の決議をすることが できるとし、同法弟5条③では複数議決権の「消滅」「廃止」にかかわらず、補償をなすべき義 務が定められている。ジーメンス事件では、複数議決権につき株主総会においてその廃止をして、

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それらの株式を普通株に変更する旨の決議を行った(このケースでは補償額は0マルクとし、バ イエルン高等裁判所もこの会社決定を是認した)(3)(4)

3.株主平等原則と一株一議決権

 株主平等の原則は、大株主による議決権濫用や資本多数決によって選任された取締役が業務執 行上、少数派株主の利益を害するという病理的現象に対する対策として、衡平を理念的背景とし て生まれたということに争いはない。株主平等の原則が衡平の理念に基づいて一般的な平等原則 の株式会社における発現の結果であるから、株主がその地位を応じて、すなわち、持分割合に応 じて平等の取扱を受けるということにも争いはない。ただ、ドイツにおいては、かつては「平等 な待遇を受ける権利」として観念していたとされるが、それは株主の個々の権利、たとえば議決 権に付き、持分所有に相応しい影響力、発言力をもってしかるべきであるということで、とくに 権利性を特質としているわけではない。

 以上のように、株主平等の原則とは株式数を基準とする平等であるという点に、異論はない。

しかし、強行法的性質については各国の法制により相違がある。わが国では強行法性が強く法律 でこの例外を認めうるという制度を採用している。これに対して、ドイツは任意法的性質を有す るとされ、また、アメリカ合衆国の多くの州会社法も原始定款においては一株一議決権の原則を 維持しなければならないが、定款変更により複数議決権を認めうるとしていることから判断でき るように、任意法規的性質を有している。この点は後に再論する。

4.一株一議決権の例外 1)わが国における例外

 わが国では株主平等の原則の強行法規性から複数議決権株を発行することはできない。法律に 定めればその発行が許容されるかという点は、株主の基本的権利と株主平等原則という問題に関 係し、ここでの論点とは離れるため深入りをしない。

 本来的には一個の株式に一個の権利しか付与できないにも関わらず、複数を付与するという形 の例外ではなく、本来は持分数に応じて複数の権利が与えられるにも関わらず権利が制限される、

減少されるという形での例外はどうであろうか。その点は非公開会社(全発行株式が譲渡制限株 式である会社)の場合は可能である。すなわち、会社法弟109条第2項は、剰余金配当、残余財 産分配請求権および議決権につき株主毎に異なる取扱を行うことを定款で定めることができるこ とを規定する。これによって議決権についていえば、各株主に持株数の違いがあるにも関わらず、

一人一議決権、つまり、頭数による議決権の行使が認められる。この属人的な規定を許容する制 度は、会社種類の人的要素からそうしたニーズがあるとして旧有限会社に認められていた制度で、

これが有限会社基準の株式会社にも認められたのである。定款における属人的な定めにより、特 定の株主に複数議決権を付与することは認められる。

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 このような旧有限会社における制度については、株式会社では株式が物化されていて、数個の 株式が同一人に集中している場合でも独立性を保持した数個の株式の議決権が集積的に存在して いるものと考えられるのに対して、有限会社では持分が物化されていないから議決権の分量が出 資口数に必ずしも一致しなくてもよいとする見解がある。さらに、有限会社においても、社員平 等の原則(持分平等の原則)は妥当するが、有限会社の人的結合性から 多数持分を有する社員 の会社支配力を抑制することが少数派が社員として会社経営参加を促すことになるため定款に別 段の定めをおいた場合には、議決権の一部が停止したものと解する見解や有限会社では定款自治 の原則が妥当すると解する見解もある。

2)ドイツにおける例外

 一株一議決権の例外としての複数議決権は、現行法ではこれを明確に例外なく認めていない。

したがって、ドイツ株式法第53a条に定める株主平等原則が強行法的規定でなくとも定款におい てこれとは別異に定めることはできない。この点はアメリカ合衆国の多くの州会社法とは異なる ところである。これに対して、一株一議決権の例外としての一人一議決権についてはどうか。

 ドイツ株式法では、ドイツ株式法弟134条弟1項第2文は、最高議決権を規定する。すなわち、

1人の株主が複数の株式を所有する場合、非上場会社にあっては定款で最高額又は段階を設ける ことによって議決権を制限することができるものと定める。最高額を定めるとは、たとえば、基 本資本の5%ないしは10%に定め、議決権行使しうる株式はこれに限定するという方法である。

もう一つの段階設定の方式とは、限定された個数のみが全議決権数が許され、さらにある個数に 短縮された議決権数が分配されるという方式で、たとえば、1,000株単位でその全議決権の行使 を認め、さらに1,000株を超える場合は10株に一議決権を加算し、2,000株を超える場合は20株に 一議決権を加算するという方式である。最高額設定方式と、段階設定方式はこれを組み合わせる ことも可能である。

 これらの二方式のうち、最高額設定方式は、各出資者の持株数のうち最少口数の額面に最高額 を設定することにより、頭数による議決権、すなわち、一人一議決権が可能となる(5)。この最 高額の設定は、非上場会社であること、および、定款によってのみなされることが必要であり、

取締役会や監査役会が最高額を設定することは許されない。最高額の設定は原始定款に含まれて いる必要はなく、設立後に定款変更によってなすことも可能である。また、最高額の設定は最高 額を超える持分額を有する者の存否に関わらず可能でもある等は最高裁の判断である。

5.株主平等原則の例外根拠 1)複数議決権の根拠

 ドイツにおいて複数議決権株が発行できた理由は、その発行が地域の全体経済的利益に合致し ていることがあげられていた。複数議決権株を発行していた企業の多くがエネルギー供給企業で

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あり、その株主は地方公共団体であったことから判るように、そのような事業を外資をも含めた 運営資金による私企業によって安定した継続事業とすることにねらいがあった。

 一般的に株主平等原則は、恣意的な不平等となる内容・取扱を禁止する原則であると解するな らば、恣意的ではないとして許容される不平等は株主平等原則とは無関係であるはずであるものの、

一般的には平等原則の例外として捉えられている。恣意的な取扱であるか否かについては、幾つ かの基準が提唱されており、まず第一には、不平等扱いの領域が平等原則の適用される法律関係 と一致していない場合は恣意的とはならない。この例としては利益配当が株主の家族構成を考慮し てなされている場合は恣意的な不平等となる。第二に、具体的な法律関係の範囲で不平等の恣意 性が判断され、その法律関係外の個人的事情は問題とはならない、この例としては、個人の経済的 事情から株主割当ての機会を逸して締まったとしても恣意的不平等とはならない。第三には動機は 恣意的不平等の対象とはならない。ドイツにおける複数議決権株発行理由はこれらの恣意的不平 等にいずれも該当せず、敢えていえば、全体経済から見た企業維持の見地からの例外といえる。

 アメリカ合衆国において見られる定款変更による複数議決権の例外は、創業者に対する報償と しての意味を有するとされている。この例外はわが国でいえば発起人に対する特別利益と趣旨は 同様である。ただ、特別利益が経済的給付として一度限りのもので、変態設立事項として金額が 定められているのに対して、報償としての複数議決権は株主としての経営に対する多くの発言力、

影響力をも将来継続的に付与するという点が異なる。特別利益については、株主たる資格におい て発起人に与えるものだから、株主平等原則の例外と認めていたのが当時の多数説であるが、特 別利益は株主としての資格を離れて与えるものだから株主平等の原則の例外とする必要もないと の見解が有力に提唱された。ともかくも、複数議決権の付与は、創業者への単なる報償だけでは なく、創業者自身の経営力への信頼の反映であるならば合理的な不平等であるともいえる。

2)一人一議決権の根拠

 以上に対して、一人一議決権の場合の根拠はどうであろうか。非公開会社である全株式譲渡制 限株式会社において定めることができる属人的定めにより、持株数の多寡に関わらない権利配分 を行うことができる。これを定める会社法第109条第2項は、議決権に限定しない属人的定めを 成し得ることを定め、また、元の規定である旧有限会社法第39条第1項但書も議決権や利益配当 などについて属人的定めを成しうる旨を定めていた。非公開会社はこれにより、一人一議決権と することができ、また、特定の株主が所有する株式一株に複数の議決権を付与することも可能で あると解されている。外形的には一株複数議決権が可能であるかにみえるが、これは正確な意味 で複数議決権ではない。この複数議決権は株主に複数の議決権が帰属するのであって株式に複数 議決権を認めるものではないからである。

 旧有限会社における属人的定めの趣旨は、有限会社は株式会社とは異なり、閉鎖的な人的結合 であることを考慮して、多数持分を有する社員の会社支配力を抑制することが、すなわち、少数 持分しか有しない社員の意思反映を相対的に向上させることが有限会社への社員としての参加を 促すことが必要であるとして導入された制度であると解されている(6)。現行の会社法における

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株式会社が旧有限会社制度を吸収合併した以上、当然に、旧有限会社法39条但書も閉鎖的株式会 社の制度として導入されたのである。ただ、この但書による定款規定が原始定款の定めか、また は、設立後の規定化であれば、全員一致の承認によってのみ可能であると解されていたのに対し て、現行会社法では、通常の定款変更によって一人一議決権の定めが成し得るとされた点に変化 がある。

 ドイツにおける最高議決権を利用することによって認められる一人一議決権は、非上場会社発 行の株式につき認められる根拠も、これを小株式会社、非公開会社として捉え、定款自治を広く 認めた結果である。ドイツにおいては、最高議決権もその立法段階では複数議決権について争わ れたのと同様に、異論もあった。それは株式会社において、とくに上場会社において、主として 市場における障碍性からの異議である。つまり、議決権と所有権とは相互に関連性をもつべきで あるとの前提に背くのであり、株式の買収意欲も減退することにもなり、経営意欲の面からいえ ば、多数派による経営が必ずしも実現しない結果、所有者自身による経営管理が悪化・劣化す (7)。こうした点から、報告者草案の段階では、最高議決権は廃止を定めていた。この問題は、

定款自治の要請と、市場性の問題とのせめぎ合いの論争であり、現行法通り、最高議決権が認め られたのである。

6.株主平等原則の強行法規性

 以上のように、わが国においても、ドイツにおいても、閉鎖的会社では属人的定めをおくこと によって一人一議決権とすることが可能である。しかし、わが国とドイツとで決定的に異なるの は、わが通説が株主平等原則を強行法規的原則として捉えるのに対して、ドイツでは任意法規的 に捉えている点である。わが通説が強行法規的であるとする理由は、構成員の個性が濃厚な人的 会社では、その内部的事情・関係を反映させて定款の自治を認める必要が大きいのに対して、株 式会社では金銭という普遍的分量的なものをもって参与するから構成員が特約をもって原則を変 更する必要が乏しく、さらに、大株主兼取締役はややもすれば権力を濫用するするおそれががあ るなどのために任意的な定めを禁ずるのであると説かれている(8)

 この見解のほか、株主平等の原則それ自体は強行法規的ではないが、その具体的な法規が強行 法規なのであり、その根拠としては主として株式会社の社団性に求める見解がある。その見解は、

第一に社団である株式会社の内部関係、ことに会社と株主との権利義務を合理的、かつ、簡易迅 速に処理する上で株式の内容の同一性が要求され、第二にそれが株券という有価証券に化体され 自由譲渡性の保障の下に流通し、取引の客体となっているため一般投資家や取引の安全のために 株式の画一性・客観性が要求され、これを考慮して会社が任意にこれを変更することを禁じてい るのであるとする(9)。この二つの見解は、さほどの見解の相違は存しない。ともに人的結合の 強弱を根拠としており、それから、前者の見解は、団体自治の要否と取締役の専横の可能性を論 じているのに対して、後者の見解は、持分の流通性に言及しているにすぎない。

 社団性から根拠を探求する思考も大いに参考となるが、ここにいう社団性は、実質的な社団に ついて述べていることは勿論である。したがって、これを突き詰めると社団と構成員との結びつ

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き方が典型的に自由な団体で基本的な根本規則たる定款によって規律される関係であるというこ とで必要十分である。株主平等原則が社団性から説明しうるとしても、その強行法規性は、社団 という結合形態に求められるのではなく、社団の構成員への拘束力の脆弱性に求められるのでは ないか。

 ある社団の外部に存在する一般投資家は株主平等の原則の下に規律されているものと信じて証 券投資するのであるから、一般投資家の保護のために平等原則の強行法規性が必要となる。これ に対して、社団の構成員としての持分譲渡につき拘束性がある団体では内部の自由な規律をもっ て運営を行っても一般投資家・証券市場に影響を与えないために、株主平等の原則に任意法規性 を付与しても差し支え無いのである。

7.おわりに

 公開株式会社はその株式の自由市場性から一般投資家保護のために株主平等の原則に強行法規 性が求められるのに対して、旧有限会社、現行会社法の非公開株式会社においては、持分につい ての自由譲渡性を欠くために株主平等原則は任意法規的であると解される。

 ドイツでは、株主平等原則が株式の公開、非公開を問わず、任意法規的と解されている結果、

上場会社でも定款自治が強く認められるものの、最高議決権については上述した理由から、非上 場会社ではこれを定め得ないものと、とくに注意的に規定されているのである。さらに、複数議 決権については本来的には定款自治の範囲内の問題であるが、EU域内での会社法の統一化から 異質な制度との視点で見られることや、その域内での資金の自由な移動を妨害するものと見られ たことも背景として法律で禁止するに至った事情もある。恣意的不平等を許容しない原則と解さ れている株主平等の原則が、一地方の全体経済的利益を維持するための不平等を許容するかどう かが問題となった複数議決権では、確たる解答の出されないまま、廃止となった。法律が明確に 禁止していない場合に、どのような事情が存在すれば合理的不平等になるかについては 今後の 課題としたい。

(1) Zoellner, in : Koelner Komm. z. AktG, 1985, §12 Rn., W. Kluth, Abschaffung von Mehrstimmrecht- saktien verfassungswidrig?ZIP 1997 1217 1217 u. 1218.

(2) Kluth (Fussn. 1), S. 1218.

(3) BayObLG v. 31. 7. 2002, 3Z BR 362/01, ZIP 2002,1765.

(4) 損害賠償額の査定の問題ついては、A. Arnold, Entschaedigung von Mehrstimmrechten nach § 5 EGAktG, DStR 2003, 784., T. Herring/M. Olbrich, Der Wert der Mehrstimmrechte und der Fall

“Siemens” ZIP 2003 104

(5) U. Hueffer, Aktiengesetz, 8. Aufl., 2008, §134 Rn 6.

(6) 菱田政宏・新版注釈会社法(14)308頁(§39注釈4)

(7) Begruendung des KonTraG-Reg E, BT-Drs. 13/9712, S.20.

(8) 鈴木竹雄「株主平等の原則」商法研究Ⅱ所収257頁、昭和56年

(9) 出口正義・株主権法理の展開188頁、平成3年

参照

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