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科学的な探究心を育てる臨海学舎における実践につ いて

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

科学的な探究心を育てる臨海学舎における実践につ いて

著者 石川 利和

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

7

ページ 157‑171

発行年 1971‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/10105/6238

(2)

科学的な探究心を育てる

     臨海学舎における実践について

石  川  利  和  (付属中学校)

は じ め に

 私たちの学校てば,開校以来昭和43年度まで,主として伊勢市二見浦で,7月末に中学2年生全 員について,全教官付添いによって,水泳訓練を中心とした臨海学舎を開設して相当な教育的成果を あげて来た。しかし,昭和40年度のころから,宿泊を伴う行事の持ち方について,再検討を進め,

水泳練習を中心とはしながらも,海の自然研究・観察・等の学習活動を大幅に加えて.実施して来た。

ところが,伊勢の海も公害の影響からか,海のよごれがひどくなり,水泳訓練の場としては,適当と ぱいえなくなった。そこで宿泊行事の検討委員会在とを開き,昭和44年度からは福井県小浜市にお いて,5月末に理科・社会科の学習を中心とする学舎を開設することにした。以下その学舎の中で,

理科学習をどのように進めたかについて,その大一要を報告し,新U(理路鯖のあり方に介で考察する資料 にしたい。

1 伊勢湾における実践(水泳訓練を中心とした二ろ)

 二見浦における臨海学舎てば,生物・地学クラフの生徒を中心に,自由研究として自然研究が続け られ,臨海学舎の手引の内容を拡大していった。そして,昭和42年、44年には,最後の一日を答 志島の桃取の浜における磯採集を実施して来た。またクラブ貝を中心として,宿舎内で図表やスライ

ド幻灯などを使って海の学習のオリエンテーションなどを行った。その持も凌ものを当時の資料から 抜き書きすると,つぎの通りである。

(1〕二見浦付近の地学的な研究

 ①二見浦付近の地形と地質の特徴について

 ② 海風・陸風・朝凪・夕凪現像の観測と実証について  ③ 潮の満干の観測と月令との関係について

 ④ 二見浦の海水の成分について  ⑤ 風力と波の形の変化について 12〕伊勢市付近の生物学的な研究  ①海岸に生育する陸上植物について

 ② 磯に生活する生物の観察と採集標本のつくりカ  ③ プランクトンの採集と観察

 ④ 海中に生活する魚類在との観察(鳥羽水族館見学)

 ⑤  珠貝についての見学(養殖と加工法について)

 約20年間の二見浦に赤いて実践して来た小さな自然研究の資料は,昭和44年度から新しい臨海

一157一

(3)

学舎の立案には,多大の参考になった。

2 小浜苅における臨海学舎の計画と初年度の実艘

 中学校理科の改訂指導要領の目標には,「自然の事物・現象への関心を高め,それを探究させるこ とによって,科学的に考察し処理する能力と態度を養うとともに,自然と人間生活との関係を認識さ せる」と示されている。またその具体的目標としてつぎの諸点があげられている。

1.自然の事物・現象の中に問題を見いだし,それを探究する過程を通して科学の方法を習得させ,

 創造的な能力を育てる。

2.基本的在科学概念を理解させ,自然のしくみゃ,はたらきを総合的,統一的に考察する能力を養  う0

3.自然の事物・現象に対する科学的を見方や考え方を養い,科学的な自然観を育てる。

 これらの目標を臨海学舎に拾いて,どのように実現させるかについては,新しい土地でもあるので,

現地調査も,協力者としての学級担任の先生方とともに数回にわたって行って,立案しての学習目標 をつぎのようにまとめ走。

 〔主題〕グループで見聞し,思考し,作業する中で,自然を科学し,社会を科学する態度をたかめ     ていく。

 〔目標〕① 日本海沿岸の一地方とまわりの諸施設を見聞し,漁業と漁村,沿岸地方の現状と課題       を考える。

     ② 海浜に生息する生物の種類とその生活環境持よび海岸の地形・地質看とを観察し,そ       の中に問題を発見し,それを解決していく活動を通して,自然探究の方法について習得       するとともに,自然保護の重要さについても考察させる。

     ③ グルーブでみる,グループで考える,グループでまとめる態度を身につける。

 この目標で,①ぱ主として社会科,②は理科の指導目標であり,③はそれらの学習活動をささえて 前進させる生徒指導の目標であるといえよ㌔

 ともすれば,教室の中だけの学習に終りがちの生徒たちとともに,大自然の中に問題を探究する学 習を通して,私たち人問の申に忘れられていた自然をよぴもどすことが大切だと考え,具体的な学習 計画は,理科の時間だけでは注く,課外の学級活動などの時間に生徒とともに考え,立案した。それ が仮り。に現地で,すぐには役立たないプランが出て来たとしても,生徒たちの夢を大切にしようとし

走。

【1】 事前指導の実奏【導入の段階】

 「臨海学舎でどんな科学研究をしたいか」について4月末に中学2年生全員について調査したのが つぎの一覧表である。

       生徒が選んだ研究テーマ  1 生物に関する研究テーマ (1O1名)

  ω プランクトンの研究(30名)

(4)

 ① どれほどの種類(採集と形態の比較)が見られるか。 (23名)

 ②海の深さによってどう違っているか。昼と夜とではちがいが見られるか。 (1名)

 ③ 日本海と太平洋とでどう違っているか。 (2名)

 ④ 淡水プランクトンとの遣いはあるか。 (2名)

 ⑤フズリナの種類(1名)

 ⑥ 夜光虫の観察(I名)

 ⑦動物性プランクト;/と植物性プランクトンとではどちらが多いか。 (1名)

ω 磯や潮だまりの生物の研究(55名)

 ① 潮だ言りの生物の分布と生活について調べる。 (17名)(何を食べているかなど)

 ② 岩場の生物の生活を調べる(乾燥にどれくらい耐えられるかをど) (13名)

 ③ 磯で岩にひっついている動植物の生物の観察と採集と標本づくり(貝,海藻在ど)

  (5名)

 ④ 海中にいる生物と海中に出入りする生物のちがい。 (2名)

 ⑤潮だ まりには,どんな海繰が見られるか。 (12名)

 ⑥ イソギンチャクのえさの食べ方の研究(1名)

 ⑦ クラゲ・イソギンチャク・ヒトデ・ウニ左どの解剖と生活のしか旭 (5名)

13〕海浜植物の研究(10名)

 ① 海浜の植物の分布と適応について調べん (6名)

 ②砂浜と岩の多い浜に歩ける植物群落のちがいについて調べ糺(2名)

 ③ 海浜植物は,どれほどの塩分にたえられるか。 (2名)

(4〕海中に生活する魚類の研究(6名)

 ① この付近には,どんな魚がすんでいるか。 (3名)

 ②タイドプールには,どんな魚が見られるか。(2名)

 ③海水魚を淡水で飼育できないか。(1名)

2 地学的領域に関する研究テーマ (11O名)

ω 岩石の種類・色・形・造岩鉱物を調べる。 (25名)

ω 岩石の風化・侵食のようすを調べる。 (13名)

131岩石の節理の研究(6名)

ω 海岸の地層の研究と海の砂の研究(6名)

㈲ 小浜湾の地形の観察(断層・しゆう曲・隆起と沈降なδ(16名)

㈲海岸線のようすとでき方について調べる(3名)

ω 三方五湖と小浜湾の温度と湖水・海水の成分水質の比較(27名)

t8〕海水の成分 1P Hの調査(5名)

 19〕海水の透明度の測定(2名)

(血)潮のみちひについて調べ糺 (5名)

(I1)海風・陸風・夕風・朝凪現象が現われるか。(2名)

一159一

(5)

 つぎに,これらのグループまたは,個人で出されたテーマについて、学級単位で話合いをさせるこ とにした。話合うための資料として用意できたものぱ,伊勢二見浦での先輩たちの手引書,野外観察 の手引き,小浜市付近の観光案内と地図などであった。

 夢は,大きいほうがよいが,研究できる時間の問題,準備できる備品類には,制限があるため,も っとも具体的,現実的にできそうなことがらについて検討させることにした。現地をくわしく知らな い指導者であることと,テーマが多いため,すべての生徒を満足させるような計画が立てられないの は当然のなりゆきであった。

 しかし,グループ活動により,テーマは整理され日程にあわせて春こなう活動計画も立案された。

①海に行くまでに調べておく事前研究 ②海へ出発する日までに準備する物、備品類の点検と一覧表 作成と運搬方法の分担 ③海岸に拾ける研究言十画の分担 ④宿舎に帰ってからの整理の分担,さらに は ⑤帰校後の整理についての話合いなども活綾におこなわれた・

 学校の理科室としては,学校全体として行事に伴う特別予算を組んでもらって,年次計画で,充実 してゆくことをお願いして,第一年度としては,最低の備品で最大の成果をあげるよう努力した。

 初年度に生徒とともにきめた学年全体のテーマは,2領域17項目にわたった。つぎにそのテーマ を掲げて拾く。

①フラニノタトンの研究  ②海浜・海岸礫饅也の植物群落  ③海岸林の研究

④塩湿地の植物群落  ⑤験の潮だ まりの海業    ⑥岩礁の動物

⑦タイドプールの動物  ⑧ウニの発生の観察    ⑨砂泥質の海岸動物

⑳ 漁村のごみ,魚の胃の中のフラノタトン    ⑩ 若狭湾の地質と岩石,砂,士

⑫海岸の地形,沿岸の地形  ⑬ 海水の研究    ⑭ 透明度と海の色

⑮ 潮の満干        ⑯波の研究     ⑫陸風と海風の研究 つぎは生徒のグループ研究をし老いことについてまとめた例である

i生物研究グループ(2/2 I,O,U,Kさん)

○ 海へいってこんな研究がしてみたい。 (昭和44年5月8日)

 1、水の深さによって,すんでいる生物のちがいを,干潮の時に観察する。

  一また、いつもは,水にぬれないよく乾いているところに,どんな生物がすんでいるかを調ぺ   たい。

 2.プランクトンを採集して,顕微鏡で観察して,プランクトンについての知識を,身につけ   たい0

 3.できれば,淡水魚を,海水の中にはなして,その変化を見たい。

 41理科の時間にならった共同生活をしている生物を,さがして,自分の眼で確かめてみたい。

 5.集団生活・群落をつくって生活している生物を、実際に見て,調査したい。

 6一海にすむ ナマコ,イソキノチヤノ,ウニ庄どをとらえて,解剖して,内部構造を調べた   い0

 7、海ぞうが,岩についているようすと.その強さを調べたい。

 8.砂浜に,すんでいる動物や,植物を,手にとって観察し老い。

(6)

9.砂浜の砂の中にあるといわれるフズリナの種類を調べたい。

2 岩石や鉱物の研究グループ(2/1 卿・Y,T・M君)

1.蘇洞門の花こう岩が風化しているようすを調べたい。

  ○海水に接する部分 o海水中の部分 o岩の臭の方在とについて,硬度,色,条痕色,

  比重,塩分をふくむ度合いなどによって風化度を調べん

2 花こう岩や角岩などについて,節理の種類を比べ,どうして節理ができたのかについて・

調べたい。

3.海水の成分,濃度などについて,調べ走い。

4.海水のはたらき,波によって,どのように砂がさらわれるかを調べたい。

<持って行き先い物品〉

  ○ハンマー Oタガネ O虫めがね O蒸発皿 Oアルコールランプ Oメヌシリングー   ○リトマス紙

 このように,多様な計画をどのように,現地の実態と結びつけ,生徒の夢のIつでもかなえさせる かについて,私たちは迷っ走。

 そこで,つぎの方法によって,問題を具体化させ,広がりすぎるテーマを,グループの話合いによ ってしほらせることにした。

 ① 準備すべき研究資材がどれほど必撰か。現在どれほど集められるか。

 ② 発前の事前調査,第1日目の浜辺と宿舎でのしごとの割当て,第2日目の赤篠崎でのしごと,

  帰今後のしごと,学校へ帰ってからのしごとなどを具体的に考えさせる。

 ③現地調査に出かけた学級担任,理科の担当教師にできるだけくわしくそのようナを聞かせる。

 ④ 伊勢二見浦,鳥羽の海で,採集した海産生物の標本凌とを観察したり,先輩のレポート庄とを   調べさせる。

 以上の準備調査の上で,最終的には,現地で問題を具体的にとらえさせ,現地でグループでの話合 いによって,研究テーマを確立させるようにする。

【2】 小浜海岸・赤講崎における生徒の活動の実態とその指導【畳開実習■の段階】

 学級担任の先生と連絡をとりながら,できるだけの準備をして,5月15日午前7時40分奈良駅 にて4台のバスに乗車。ここから,臨海学舎日程表にしえがう生活が始められた。

 計画は,このように立つられていたが,現地では各種の状況の変化のため,思わぬ収穫があるかと 思えば,修正をしなければならをいことが渉とるのが,野外学習の指導では,常に考えて券がなけ ればなら在い。

 とくに修正を必要とした計画は,つぎの諸点であった。

 5月I5日の計画について

一1帆一

(7)

昭和44年度 日 程表

5月15日(木) 5月16日(金) 5月17日(士)

6 30 ・起床 清掃あとかたづけ

045 ・起床,清掃 もちものの

ョ理W合(バス)       』

7

・集合 奈良国鉄駅前・出発

030 ・朝の会(浜辺)

E朝食(あとかたづけ)

O ・魚市場見学

8 車内自由時間

30 S5

・西津港に集合

E乗船

10

Q0 E朝食・帰 舎

9 ・大津 大津市内の見学

^野・湖西の学習

@(湖西の特色)

30 ・蘇洞門着 15 .宿舎出発

10 40 ・今津  上中

@   車内自由時間 30

・赤礁着

E岩石の採集と磯採集

30 T0

     車内自由時間 Ψ

E三方五湖展望

農村景観の特色に注意 11 O ・上中  小浜

瘠キの農村景観の学習 30 昼食(山上40分) 50 ・敦賀港見学

O 12

宿舎(小浜市福喜旅館)

?蜊L間集合一配宿一昼食 1O 20

R0 ・昼食(40分)

13 30 ・西津(小浜市)漁港(集口

剔コ 港漁法の学習

   山   I   I

E湖東の学番 H業の特色

14 O ・彦根

15 I5 ・造船所見学

0釧 ・乗 船

シ津港着 ・地引網見学 10 R0

・大  ノ

E京都東インター 16 0・ ・小浜水産高校

送ソ室見学(2学級ずつ) ・採集物の整理 車内自由時間

・入浴と自由研究

30 ・帰舎 30 O 奈良着(国鉄奈良駅前に

@   て解散)

18 ・夕食

@自由時間(入浴) 30 夕食(30分)

19 50 ・大広間に集合

030 ・海辺の散策(希望者のみ)

ゥ由時間

20 0 ・小浜市観光課長の話 E漁業協同組合理事長り話

①研究と整理 A1/クリエーション 2I 30

漁師の話・就寝準備・班会議

30 ・就寝準備

E班会議(生活の反省をと)

22 30 ・消灯就寝

E教官打合わせ 0

・消灯 就寝 E教官打合わせ

(8)

昭和46年度 日程表

5月27日 (水) 5月28日(木) 5月29日 (金)

活 動 内 容 活 動 内 容 活 動 内 容 0 起床 清掃

6 30 起床・清掃整頓 30 宿舎前集合バス乗車

。魚市場見学

7 0 朝の会(浜辺)

30 朝 食 O 国鉄奈良駅集合

雨(荒)天時     一       一

西津港集合 自由時間 0 帰 合

8 1O .乗車出発 30 ・朝 食

45 ・乗船出航

・持物宿舎整理

9 ・蘇洞門見学 理科学習

40 大津通過 ・透明度、

1O .乗車出発

海色調査

1O ・湖西観察学習 30 赤礁着 プランクト 30 ・三方五湖展望

P0 今津通過 ・採集調査 (雨天中止)

1I

50一 ■ .敦賀港見学

12 0 昼 食 自由時間

30 宿舎者 30 昼 食 30 ドライブイン休息

大広間集合 ・昼 食(40分)

13 ・昼 食宿舎配当 30 1O 出 発

老郵湾リアフ式 湖東観察学習

O 西津漁港集合 30 集 合 淘静くス

14 ・造船所見学 ⑦浜一ヨ藺 0 彦根インター通過

漁港漁村見学

小浜水産高校 0 ・乗船 0 (名神高速道路)

15 .資料室見学 30 ・西津港着 見学曜鯉

.写真撮影 京都東インター通過

ユ 一

O 帰 舎 レクリエイション

16 30 帰舎 小休 ・採集物整理 0 奈良着

(国鉄奈良駅解散)

1? 0 ・入浴開始 O ・入浴開始

(自由時間) (自由研究) ・入浴開始

(自由時間)

O 夕食 @」 o ・夕 食

18 30 ・海辺散策 夕食 v

19 0 大  日 I 一

F 百雷. D 大広間集合

50 30 大広間集合 漁の話

20 (小 休) 30

・採集蟹摺v頂枢妙一

@       以見学の

・採集オリエ方イシヨン

諸連絡 O ・採集グループ会議 O

21 ・斑会議(生活の反省など)

30 ・就獲準備 ・就寝準備

0 消灯就寝 22 消灯就寝

30 教官打合せ 30 教官打合せ

一163一

(9)

  ① 19時50分よりの観光課長さんや漁協1里事長さんらの夜の講話が予定時問をこえてしまっ    走ので,21時30分よりの班会議で,翌日の準備について,話合う時間が注くなり,翌朝に    なってしまった。このことが2日目の学習活動を混乱させた原因にもなっ先と思われた。

  ② 22時30分よりの就寝の徹底が不完全であった。

 5月16日の計画について

  ①1O時30分よりの赤礁の学習を始めるころより,つめたい風が吹いて来た。

  ② 干潮寺にあわせて赤礁における調査時刻を組んでいなかったために,予備調査に来たときの    ようには潮がひかなかった。 (わずか30㎝の満干の差ではあるが,注意すべきことであると    思った。)

  ⑨ 11時ごろより,小雨が降り出した。気温がさがった。  生徒の衣類は海水でぬれている。

   ので昼食時には,寒さをうったえる生徒が目立った。

  ④16時〜I8時30分,採集物を持って帰って,グルーブで採集物を整理する時間であるが,

   活動は特定のグループを除いては活凝には行なわれなかった。  入浴時間のずれと,海での    疲労度をこの計画の中では,充分考えられていなかったのては長いかと思った。

 採集物は未処理のまま,ながしや土間に置かれている。入浴が終ったグループでは,研究宏とは,

もう終っ走,あとのことは考えようともしないのではないかという状況が見られた。そこで,各グル ープの班長を集合させて,その事情を調査するとともに,その対策を考えることにした。

 班長の話を総合すると,つぎのようなことがわかってきた。

 ①予想して来たことと,現地でのようすが,あまク違っているので,どこから手をつけてよいか   わからないので困っている。

②日程がつみすぎているので,ついてゆけない。ゆっくり休む時間がほしい。

 ③ 標本採集はおもしろいので,つい多くをとりすぎ旭

 ④ 赤礁は寒むかったので,その場で観察するしごとはあまりできなかった。

 そこで,今日中にして如くことについて指示を与えた。

 ①海で観察したこと,気づいたことなどを・グループ捨よび個人で・必ずメモして巻くご』

 ② 採集物については,多くとりすぎたという反省は,認めるとしても,責任を持って標本につく   るとカ㍉観察スケッチ,測定などをして後始末をすること。

 ③ 流し台などに,宿舎の方に迷惑になるよう凌ものは,残さないようにするため,余った海ぞう   や動物材料を使ってできそうな研究テーマを考えること。

 これらの指示によって,班長が中心となり,担任の先生の協力で何とか後始末ができたが,生物憂 謹の教育をしなければなら在いと考えながら,それがこわされていく状況を眼の前にして,心をいた めた。次年度からは,余分なものをとらないように予告しておこうと思った。

 しかし,嶋倉校長先生の助言もあり,不用になっ走材料を活用する新しいテーマを見つけることが できたのは,喜ばしいことであった。つぎにそれを述べて拾く。

 ① 海産生物,特に余分な海ぞうについては,水の中でよく洗って,海ぞうに付着してきた小さな   生物には,どん凌ものがあるかを調べる。

(10)

  o.ポリバケツの中に水を入れ,多量の海ぞうをていねいに洗う。  良い海ぞうは標本にし,他    は棄てる。

  ○洗汁に,ホルマリンを少量入れ,海水中の微生物プランクトンを固定する。

  ○数時間後,上ずみ液を流し,下に集った部分をポリびんに入れ,持ち帰る。

  ○学校へ持ち帰り,プレパラートをつくって観察する。

 ② ヒトデ・ウニ■ナマコなどをガラスの標本瓶や解剖皿の中へ入れ,海水中の運動のようすを観   察する・多くの友人に見せるよう展示する。

  ○刺反動物が管足を出して運動したり,水管系で水の流れなどを拾こすようすを見る。

  ○イトマキヒトデを皿に入れ,ひっくりかえして拾き,拾きあがるときの迎動の仕方を見る。

 ③ ヒラムシ(へん形動物)の大型のものについて,標本瓶に入れ、その形態や動き方などについ   て観察する。

 以」=のべたようなにがい思いをしながらも,2泊3日の学舎生活を終えて,学校へ帰ることになっ た。この経験は,次年度のプランを立てる良い参考になったことはいう盲でもない。

【3】 鴉校後の生徒の活動とその指導【整理の段階】

 雨にだ走られた学舎生活でぱあっ走が,帰校後の生徒たちの整理の段階における探究活動には,指 導する私たちさえ,拾どろくほどであった。

 整理の期間を,学校行事や学習の進度から考えて約2週間と定めた。その間に拾ける生徒は,各グ ループで班長を中心として,理科の時間はもちろん,放課後も理科室に集まり,顕微鏡使用,プレパ

ラート製侑動物の解剖 図鑑による調査, など多方面にわたるグルIプ活動が見られれ  集められた情報は,グループの協力によって、整理され,検討され,レポートにまとめられていっ

た。

 教師の指導は多忙をきわめた。2年生180名全員による科学研究のクラブを指導している感じで

あつ走。

 生徒が自主的に活動を始めると,教師は,生徒の奉仕者としての用具係,写真係,判定係,相談係,

進行係などとなってしまった。苦しい2週間であった。しかしやりがいのある2週間でもあったよう

に思う。

 その間,生徒の質問は,具体的でしかも的確なものに変化していった。問題をはっきりとらえた生 徒は,黙々と学習していた。かりに近くで友人がさわいだとしても集中しているようであった。すば

らしい発展であると思った。

 この問来遊した県内の公立中学校理科担任の先生は,この姿を見て,「石川先生,うれしいでしょ う。これが理科学習のあり方なのでしょうね。」ともいってくれ走。このことぱは私に自信のような ものを与え走。

 レポートは集められた。その中で代表的なものは,付属中学校の研究文集「塔」に掲載された。ま た,発展的に,〜=の学習で覚えた研究方法を転用して,奈良県の川の生物の研究にとりくみ,日本学 生科学賞に入賞する生徒も出た。

一165一

(11)

 教室からぱなれ,生徒たちのグループで野外で学習させることは,遊びに持ちいってしまう危険が あるといわれている。しかし全教師の努力と,保護老の理解ある協力を得られれば,か在らず相当の 成果をあげることがてきるものであると考えん

3 昭和45年度(第2年、目)の指導について

初年度の経験を生かし,本年度は次の諸点に改善を加えて,実施した。

【1】 指導計画の改善について

(11日時の決定について

 o5月中句以後の気象条件の良い日を選病

 ○昼すぎに干潮になる上弦か下弦の月のころを選ぷ。

(21自然研究のテーマの選定について,つぎの5種のテーマによって,学級単位てグループ編成を一  拾こな㌔ただし,Iグループの人数は,4〜6名とすん

  1.海岸の陸上植物の研究 21海藻の研究 3.海岸動物の研究 4.プランクトンの研究 5.地質   ・砂の粒度分析・砂中の微生物の研究

  な拾,共通課題として,グループ単位で,つぎの調査をおこ在うこととする

  ①水温・気温の測定②P・Hの測定一各場所で採水して,現地または帰校後測定する。

  ③透明度の測定一各場所で随時おこ底い記録する。 ④海水の水色の測定一フォーレル水色計   を使用してお こなう。 ⑤塩素イオンの検出一各地て採水したものについて,帰校後拾こ在う。

  ⑥潮の満干のようすの観察 ⑦陸風・海風のようすの観察

{3〕各グループ単位の事前研究を充分させて拾く。

 ○昨年度の報告書を輪読させる。

 ○標本・写真在とによって現地を理解させる。

 ○本年度の研究計画(テーマ,方法,準備物など)を班別に書いて提出させん  ○用具などの使用に広れさせるとともに,メモのとり方の練習をさせる。

 ○各学級から各テーマの代表者を集めて、テーマ別班長会議をもたせる。

(4〕理科指導の教師と協力者(大学で教育実習を終った理科専攻の学生)によって,テーマ別に各  グループの計画を検討して,研究方法などについて指導する。

 ○事前研究の指導は,具体的に右こをう。

 ○現地で,実施前に,調査方法について実地指導をする。

 ○宿舎において,まとめの指導も,グループ単位でおこな㌔

 ○標本・資料の整理は,帰舎後すぐ各グループ単位で責任をもって行っているかを点検する。

(5〕帰校後の整理とまとめの学習は,短日時の簡に能率的におこ庄う。

 ○学級単位で理科の時間にグル プ別におこ在わせる。。

 ○課外の学習は,テーマ別に,各学級混成で,理科の2教室を開放して拾こ在わせる。

 ○グループ別に,レポ トにまとめ,期日を定めて提出させる。

(12)

 ○テーマ別に,各学級代表によって,成果をまとめ,研究論文集のようなものをつくる。  研   究文集は全校生徒に配布し,1年生は2年生の臨海学舎の資料になるように編集する。もちろ   ん2年生にとっては,自分たちの成果としてよい記念になるであろうし,3年生にとっては,

  昨年度との対比の資料として活用するだけでなく,新指導要領における「生物と環境」の学習   資料として活用できるものにしたいと考えれ

㈲ V T R等視聴覚用具の活用をはかる。

  本年度購入されたV T R・デンスケV T Rカメラ・顕微鏡カメラなどを活用して,生徒の自然  探究のすがたを記録して拾き,宿舎で,あるいは帰校後教材として活用する。

 以上のことを考慮して,立てたのが,前にかかげた昭和45年度の日程表である。

 つぎに臨海実習についての自然研究の計画(グループ単位)と,帰校後の反省の例をあげて拾く。

臨海実習.自然研究の計画 (昭和45年5月)

I 研究グループ 班員氏名  O植平 班長ぱ○

  2年(1)組 柏本  平本  田中

第(1)班(㊧・女)

研究テーマ (海浜植物の調査・研究)

計画  (1.事前研究        (学校)

2.現地研究(宿舎・海岸)

 (調査・採集)

3.研究の整理.)

  (学校)

1

調べることの順番の整理

海岸の植物の本を使い細かい所をしらべる

2

3

①東西南北,四方向の1皿(直線)おきの植物の分布

②はまべの植物をある面積をとり,その種類と本数調査

  ①で取った植物を一・二種決め,海より遠いものと,海辺と,海に近い所など  海を単位としての塩分の合言れた度を同じ面積(2前〜10㎡)の葉をとり調ぺ  る

 時間があれば垂直分布

○ 記録,発表係の平本を中心とし,班長他でまとめる  ・写真入りでレポート式にまとめる

(奈良教育大学附層中学校)

一167一

(13)

臨海実習の準備物 2年(1)組 (1)班 班長(櫨平)

κ 数量 運搬責任者

う らん 2 植物を入れる 平本

2 1 長さ50m 植平

3 ノレ

3 観察のため 柏本

4 1 50m  (1皿おき印) 柏本

5 2 植物 植平

6 1 植木用 櫃平

メスシリンダー 1 IOO CC 柏本

8 試薬び 30 1O O  C C 保田口) 平本

9 ノレ 50 荷作り用 平本

1O 1

整理用 柏本

11 1 柏本

12 2 手本

13 1

ポリ製 植平

14 各10 櫃平

15 ノレ 30 植平

一6 方位磁石 1 柏本

17 クリノメータ 1 柏本

18 ビニール袋(大きいもの) 3

19

20 マジック I

一■■ 1ユ」

海浜学舎の反省 2/1 第一班班員平本 潤

1.むだな用具を持って行きナぎ走。     2.計画が十分行なえね 3一歩礁へ行ったことがないため予備知識が乏しかった。

4.一人一人集団行動が十分行なわれた。

5・しかし宿舎でぱかってな行動をした・  6.三人で行っ走ため十分できをかった。

7・ちつ序をわきまえず行動し走。      8。時間のけじめがなさすぎた。

9一その日その日のメモがきっちりできた。  IO.パスの中でメモができなかった。

(14)

【2】 昭和45年度の園海学舎における計目と実践よリ

昨年度の経験を生かして,事前研究の指導がグループ別に重点的にできていたためか.生徒の活動 はよくできたように思われた。しかし,次年度については,改善すべき要点にはつぎのことがらが考 えられる。

① 生徒のグループ別の活動が、活溌にしかも余裕を持って行えるような日程と事前指導を考える必  要がある。

  本年度もその点では留意し,第1日目の夜間に,翌日の自然研究のために,テーマ別の班長会議  が担当指導者をかこんで,開くことができたのは良かったが,全体学習に拾ける観光課からの幻灯  や,解説に時間が多くとられ,翌日のグループ別の準備や点検の時間が不充分であったように思わ  れた。

② 第2目目,赤篠崎に歩ける活動は,時間的に余裕があり,のびのびと観察や採集・調査をしてい  たように思われるが,成果のあげたのは指導者につねに連絡をとり,問題をしぼって調査研究をし  たグループであった。

  ところが,ここの環境は,生徒が今までに経験をしたことの庄いよう在事象が多いので,とまど  うだけで,大切な記録を忘れてしまう生徒が見られた。

  島で,できるならば,テーマ別に,集合時間と場所をきめて,情報を交換できる時間をとると,

 さらに成果があがったのではないかと思われる・

⑨ 帰舎後の整理の時間は,日程としては組まれであったが、生徒の活動は低調になった。とくに,

 感じたことは,せっかく良い資料(採集物)を,持ち帰っているのに,観察や整理をしているグル  ープが少ないように思った。

  これは,事前学習に拾いて,標本のつくり方や処理の仕方の指導が不徹底であったためでは左い  かと思われる。

④ V T Rを活用して、テーマ別に記録したり,観察する時間をもっと多くとってやりたい。生きて  いる微生物は,生きたま㌧観察させて寿ぐことが必要である。今年の採集物の中で,V T Rのビデ  オテープに記録できたものに,ヤコウチュウのべ!毛の動きや,アメフラシの卵の発生なども記録す  ることができた。このテープは,記録し在がら,すぐテレビに映写して,観察させる時間があれば,

 もっと良かったと思う。

【3】  校侵の整理と生徒の反省から

 まとめをする段階に拾いて,生徒の各グループで困ったことなどについてを,私の反省としてまと めさせれその中から班別に代表的な意見は,つぎのようなものであん

○ 海浜植物研究班

 ①現地での記録が正確で左かった。

 ② 植物の名と持ちようについての予備知識がたりなかった。

 ③無駄な用具を多く持ちすぎた。

一169一

(15)

 ④ 標本としての植物採集をしなかったため、まとめが不充分になった。

 ⑤ 研究用の材料が不足した。

 ⑥ 赤礁崎だけでなく、水産高校の夏側の砂浜の植物群落の調査もしたかった。

 ⑦帰ってからのグループ活動で,協力が不充分圧人もいた。

○海岸動物班

 ① 珍らしさのあま火遊びすぎて,記録が不確実になった。採集しながらメモをするくふうが必   要であると思う。

 ②水にぬれ,ぱだかになって,海に入った人があった。

 ③ 採集する前に観察したり,調査することを忘れてしまっ旭  ④クラゲをとりすぎて,処理に困った。

 ⑤ 生きたま㌧の小動物は,クーラー庄とに入れて,生きたま㌧学校へ持って帰って,飼育しなが   ら観察すればよかった。

 ⑥ アルコールづけで持って帰った標本より,ホルマリンづけで持ち帰った標本の方が,形態や内   臓のようすぱ,よくわかったように思う。

 ⑦ 小動物は種類別にポリシャレーか,ビニール袋に入れて,こわれないように採集し,運搬しな   ければ,形がくずれたり,こわれたりする。できれば,標本にするものについては,浜ですぐホ   ルマリンで固定して拾けぱよかっ走。

○プランクトン班

 ①プランクトンネットの使い方の練習がたりなかった。もっと多く1グループ2個ひもつきのも   のがほしい。

 ②生きたま㌧観察する資料と,帰校後観察するための材料を区別しておけぱよかっれ  ③帰ってからの観察に,多くの時間がかかった。

 ④海岸へ出るときは,いつもネットとポリビンを忘れずに持って行き,何回もネットを投げて,

  多くのプランクトンを集めて拾けばよかった。

 ⑤ 1グループで1地域を徹底的に調査して,他の学級の同じグループのものと比べると,地域差   がはっきり出たのでは庄いかと思う。

○ 地質と砂研究班

 ① クリノメーターは,できれば個人に1個ずつほしい。少なくとも班に2個はほしい。

ハンマーやタガネを多く持ちすぎた。

砂の分析のとき土壌ぶるいが不足した。

岩石や地質構造の調べ方などについて,予備知識が足りなくて困った。

現地での記録は,時間をかけて,正確にして拾くぺきであった。

 ⑥ 班別に宿舎が割当てられていたので,準備後始末がうまくできた。

○海藻研究班

 ①現地での観察記録がうまくでき注かった。

 ② 標本づくりの時間が足りなかった。

(16)

 ③海藻の調べ方についての予備知識が不足してい走。

 ④ 多く材料をとりすぎて,自然環境をこわしれ

 ⑤ 海藻だけで左く、海藻に付着する小動物の研究も動物班と協力してすべきであった。

 ⑥レポートのまとめ方に苦心した。

 これら生徒たちの反省は、指導者側が,その責任の大部分を負わなければ在らないことは,いうま でも凌い。しかしまた別の角度から考えてみると.学校で通常拾こなわれているような学習てば,

無感覚に在っていることからを,学舎の生活をすることによって,生徒たちが,生徒たちの力によっ て,再発見したことに浸るのではないかと思われる。自己の足りない点を発見することば,今後の 学習の中で,きっと生かされるものと考えたい。

 考えてみれば,これが教育上の最大の成果といえるのかもしれない。

4 終わりに

 科学的な探究心を育てることは,理科教育の大目標である。ここでは,学校行事として行った臨海 学舎の2年間の実践を通じて,それがどのように育っ足かについて,考える資料としてまとめたもの である。

 さいわい,」全校の先生方の理解と保護者の協力によって,事故なく成果をあげることができ走。し かし,さらにこの教育を前進させるためには,このよう庄機会だけではなく、日常の教育実践の中で,

今後の努力点も多く発見することができたのは,喜ばしいことと考えている。

一171一

参照

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