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雑誌名 古文化財教育研究報告

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Academic year: 2021

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(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

X線回折による産地分析について

著者 市川 米太

雑誌名 古文化財教育研究報告

巻 1

ページ 8‑15

発行年 1972‑01‑20

URL http://hdl.handle.net/10105/358

(2)

Ⅹ線回折による産地分析について  

奈良教育大学 市 川 米 太  

1緒   吉   

最近,自然科学の測定法や技術などが次第に考古学の研究分野にとり入れられるようになって   きた。その代表的なものは各種の理学的年代測定法であるが,考古遺物の産地を化学分析によっ   て同定する試みもしばしば行なわれるようになってきた。これに関する論文の中には,かなり興   味ある結果を報告しているものもあるが,一般的にいえばまだ確定的な結論を出す段階にきてい   るとはいえない。産地分析はその目的からみて,一つの方法で確定的な結論の出せる性質のもの   ではない。   

従来,行なわれてきた発光分析,螢光Ⅹ線分析,放射化分析などの方法以外にも,新しい方法   が開発され,遺物の構成物質を考慮しながら二つ以上の方法を使って総合的に判断することが望    ましい。   

化学分析による産地決定は遺物中の元素の成分の産地による差異を利用する方法であるが,特   に,土器のような遺物の場合は,その産地,焼成法に差異があれば,土器中の構成鉱物がそれに    対応して異なることが予想される。   

この点に着目すれば,土器の粉末をⅩ線回折装置にかけて主要構成鉱物を確認することによっ   て,土器の産地決定のできる可能性が考えられる。  

土器のⅩ線回折に関する実験は,我が国においては,竹岡1)梅田2♭報告がある。これらの  

研究は,土器の物理的,化学的性質の調査にあたって,一つの方法としてⅩ線回折の測定をした   ものである。筆者は産地分析の立場からみて,X線回折がどれ程の有効性を有するものであるか   を検討する目的で試料を選択し実験を行なった。  

2 試   料  

この実験に使用した土器は,まず,大阪府南部窯跡群の須恵器30個,福井,京都,香川,奈   良などの窯跡出土の須恵器10個,奈良県内各地の古墳出土の須恵器13個である。  

ー8−   

(3)

これら須恵韓の試料は京大文学部の高橋氏の提供によるものである。次に参考のために,マ   ラヤのグアケチルの土器4個(熱ルミネッセンス年代測定法による年代はB・R2800年),関   東の縄文土器12個についても測定した。勿論,産地分析に使用する試料数としては充分である  

とはいえ射、が,須恵器を対象として仁Ⅹ繰回折が土器の産地決定にど.の程度有効である声ゝの見   当はつけられるであろうと考えた。  

ま 結   果   

試料はすべて,200メッシュ以下まで粉砕し,東芝Ⅹ繰回折装置にかけ,得られた回折図か   ら試料中の構成鉱物の同定を行なった。   

この実験に使用した69の試料中から代表的なものとして13個を選択し,そのⅩ線回折図を   下記に示した。   

この回折図をみて全役的にいえることは,石英がすべての試料中に入っていることである。   

回折図中の1,2,3の試料は同時代区分に属するものであるが,この三つの試料について   の共通点は,石英の外に,かなり長石類を含んでいることである。土器材料の粗悪さを示すも   のであろうか。また1,2の試料中には粘土鉱物の存在が認められる。これらの土帯の焼成温度   の低いことがわかる。その外に,産地の差異によって角閃石や正長石の有無のあることが落めら   れた。   

試料4から12までiも 各地の窯跡出土の須恵器であって産地の判明しているものと考えてよ   い。須恵掛こついて,共通的にいえることは必ずムライトが含まれていることである。また,同  

じ熱変成鉱物であるクリスト′く/レ石については,ここで全部を図示してはいないが,大阪府南部   窯跡群の須恵考にほとんど存在していた。その代表的なものが試料4,5である。これに対照し  

て,試料7,8,9,12においてはクリスト′くル石は認められない。また,試料10,11に   おいてはクリスト′くル石が存在しているが,その相対強度は大阪府のものより低かった。   

試料5,6,7は全部同じ真跡出土のものであるがクリスト′くル石の相対強度は大きな差を示   した。7の試料においては痕跡にとどまる。   

この三つの試料については,肉眼的に焼成温度に差のあることがわかるもので,5が最も高く7   が最も低い。クリストパル石によるピークの相対強度もこれに対応している。この原因としては,  

焼成時,土器の置かれた窯の中の場所によって,焼成温度に差がでたものであろうと考えられる。   

試料10,11,12は香川県の比較的近い場所にある二つの窯跡出土の土器である。試料  

10と11は窯跡の異なる土器であるがいずれも斜長石のピークが認められる。12において  

(4)

のみ認められない。この三つの土器の肉眼観察の結果lも11が12よりも10に類似していた。  

ある時代同じ材料から土器を作ったものであろうか。   

産地分析の試料として,製造された窯の不明なものとして,奈良県各地の古墳出土の須恵器を    使用した。その代表的なものが試料13である。回折図において,クリストパル石,ムライトが   存在していることが認められること,また,クリスト′くル石の強度の高いことから和泉窯跡出土   ク、苫恵器と非常によく類似していることが確認できる。  

ー10−   

(5)

土器のX繰回折スペクトル(その一)  

(6)

匡コ    Q  

4‑ 

和泉窯跡Ia   T  

3‑ 

M  

2‑ 

l   l  

Q    鱒   

4‑ 

和泉窯跡Ib   

3‑ 

2‑ 

lナ1・  

l   

雷 

l  

圧]  Q  

1  

4‑ 

和泉窯跡Ic   

3‑ 

2‑ 

Q  

嘉 

l   l  

Q  

4‑ 

若狭城ケ谷窯跡   

3 2 ロ  

l   l   

150   200   250   300   二ご     2β    ここ   土器のⅩ凍回折スペクトル(その二)  

350   400   

ー12−  

(7)

Q  

M  

M  

350   400    150   200   250   300  

2β  

土器のⅩ繰回折スペクト′レ(その三)  

(8)

300   350   400  150   200  

Q ご 石  h美   Orト、正 長 石バー 十fl.:斜 長 石    T:クリスト′くル石  M:ムラ イト   H:角 閃 石  

K : カ オリ ン  

土器のⅩ繰回折スペクトル(その四)  

A ≡結   音   

Ⅹ繰回折による産地分析は,土器の材料が時代や産地によっで異なること,粘土鉱物や石英が   熱変成してムライトやクリストバ/レ石になるときその焼成温度や物理的・化学的条件によって差   異のあることなどを利用しようとするものである。今回の実験の結果はほぼ予期していた測定結   果を示した。ただ,クリストパル石のピークの相対強度が焼成温度に対応しているという推定,  

斜長石わ存在によって臭った窯のものを同一材料とした推定などは,更に,基礎的実験によって   確認しなければならない間葛である。   

勿論,Ⅹ線回折が産地分析に対してど 

できれぼ窯跡出土の日本の土器全部について測定した上でなければ判定できないことであろう。  

しかし,この方法は試料の皇が少なくてすむこと,簡単な操作で多数の試料を測定できることを   考えると,化学分析と併せて使用するときかなり有望な方法の一つになるのではないかと思われ   る。この方法に対し,忌偉のない御批軌御指導が頂ければ.筆者の喜びとする所である。  

ー14−   

(9)

参   考   文   献  

1)竹岡清(1968)同志社大学.考古学調査報告第2冊  

2)田窪広,梅田甲子郎(1969)考古学と自然科学第2号  

参照

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