第
77回 風洞研究会議論文集 33
風洞用高速ファンの設計事例
和田茂、大野俊仁、関沢裕明、三代川伸、川田貴之(日本飛行機)
Design of Fan Assembly for Low-Speed Wind Tunnel
Shigeru WADA, Toshihito OHNO, Hiroaki SEKIZAWA, Shin MIYOKAWA, Takayuki KAWADA (NIPPI)
概 要
日本飛行機 2m φ低速風洞の最大風速の向上を想定した、現存ファンの再設計の事例を紹介する。
当社 低速風洞の風速性能を 50m/s から 70m/s に向上させるにあたり、現存ファン構造をベースとしつつ、
その限界を検証しながら設計を行った。
また、試作品にてブレード固有振動数計測、静強度試験、整備性確認を実施した。
実運転による風速データは未だ取得出来ていないが、ファンの構造については見通しが得られた。
1.はじめに
日本飛行機
2mφ低速風洞の最大風速の向上を想 定した、現存ファンの再設計の事例を紹介するにあた り、まず日飛低速風洞について説明する。
図1に日飛低速風洞の諸元を示す。
型式は水平単回路式、測定部断面は開放型円形(直 径
2m)であり、送風機形式は固定ピッチ1段軸流式
(
110kW) 、最大風速は
50m/sとなっている。送風機 は、ファン径
3.06m、ボス比
0.33、ブレード枚数8 枚であるが、このファンは自社製である、ニッピハウ デンファンを採用している。
いて、これまでに
10,000台以上の製造・販売実績が ある。
2. 現状ファンの構造
現状ファンであるニッピハウデンファンの基本構 造を図2に示す。
先ず、ブレードは凹面凸面の積層型に外皮部分を 積層後、強度部材であるガラステープをステム部か ら放射状に積層し、硬化後両面を接着して中空のブ レードとして成型される。
成型されたブレードは、スチール製のハブプレー トに取り付けられる。ハブプレート側のロアークラ ンプとアッパークランプにブレードのステム部を挟 み込み、
Uボルトで締結し固定する。このときブレ ードとクランプは
Uボルト締付けによる摩擦力のみ で固定され、遠心力やねじりモーメントの外力を負 担する。
図1 日飛低速風洞
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ニッピ ハウデンファンは、オランダ・
HOWDEN社のライセンス品であり、用途として、主に冷却塔や 熱交換器用に設置されている。
T型、
E型、
SX型と 3種類のタイプに別れ、特に
SX型は、超低騒音型と して特化した製品である。 ファンブレードはGFRP 製であり、ファン径はφ約
1m~
10mを標準として
図2 現状ファンの構造
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宇宙航空研究開発機構特別資料
JAXA-SP-06-02634
3. 現状風洞諸元と性能向上後の想定条件
現状風洞の諸元と、性能向上後の想定条件を示す。
現状風洞の性能諸元は、風速:
50m/s、風量:
157m3/ s、静圧:
502Pa、回転数:
500rpm、モーター出力:
110kW
、ファン径:
3.06m、
Tip Speed:
80m/sであ る。今回の性能向上において、風速性能を
50m/sか ら
70m/sに上げるが、ここで各値は、以下に示すファ ンの相似則に従う。
D
: ファン径
N: 回転数
Q: 風量
P: 静圧
dB: 騒音
W: 出力
風量
Q2 = Q1 x ( D2 / D1 )3 x ( N2 / N1 )静圧
P2 = P1 x ( D2 / D1 )2 x ( N2 / N1 )2騒音
dB2 = dB1 + 70log( D2 / D1 ) + 50log( N2 / N1 )出力
W2 = W1 x ( D2 / D1 )5 x ( N2 / N1 )3この相似則によって得られた性能向上後の想定条件 を図3に示す。
5.現状ファンの限界
この荷重条件でファンを設計する場合、現状の基 本構造のままでは、様々な問題が生じてくる。増加 する遠心力、ねじりモーメントに対抗する為
Uボル トはサイズアップまたは本数を増やし応力レベルを 下げなければならないが、スペース上の制約もあり ブレードの固定方式そのものを見直す必要が生じる。
また、高速回転に対しファンの固有振動数を確保す るためにハブ部は更に高い剛性を必要とするが、現 状のシングルプレートタイプでは限界が生じてくる。
ブレードについても、空気力、遠心力の増加に合 わせて積層数を大幅に上げる必要がある。図5に示 す。
図3 性能向上後の想定条件
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4.性能向上後のファンブレード荷重の算出 更に、性能向上後の想定条件を基に、ブレード1枚 に負荷される荷重を算出した。図4に示す。現状風洞 のファンブレードの荷重と比較して、 空気力又は空気 力モーメント相当で2倍、ねじりモーメントは2倍、
遠心力に至っては
2.4倍に増加する。
図4 性能向上後のファンブレード荷重 2.0
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895 Nm
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図5 現状ファンの限界
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2.4
2.0 2.0
6.ファン構造の検討と結果
これらの問題点に対し、検討を重ね性能向上後の 想定条件に見合ったファンを設計することができた。
ブレードは重心位置に留意しつつ積層数を大幅アッ プした。ブレードの取付部はステム式からフランジ 式とし、ストレートボルト4本で取り付ける様にし た。そのフランジ部のプレートには
SUS材を採用 し、ボルトは高強度品を採用した。その結果、遠心 力とねじりモーメントに対し十分な強度を得ること ができた。
ハブ部は高い剛性を持たせる為にダブルプレート 式とし、全て溶接構造とした。ブレードピッチ角調 整の為、ボルト穴を長穴とし、また上面プレートを 切り欠いて、ボルト締めツールがアクセスできる様 にした。図
6-1にブレードとハブ部構造の検討を示 す。また、図
6-2に検討後のファン全体図と諸元を 示す。
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第
77回 風洞研究会議論文集 35
7.試験結果
設計を終え、ブレードとハブの試作を行い、ブレー ドについては、固有振動数の計測および曲げ試験を、
ハブ部には実際にブレードを取り付けて、整備性の 確認を行った。
固有振動数は2枚のブレードを計測した。図
7-1に 計測状況と結果を示す。要求値は、ファンの回転数か ら
23.3Hz以上、計算予想値も
23.3Hzとしたが、計 測の結果、
No.1供試体は
32.8Hz、
No.2供試体は
32.4Hz
という結果が得られた。計算モデルは、強度
部材であるガラステープのみの片持ち梁とし安全側 の検討を行ったが、ブレード表層部分(ガラスクロ ス)が予想以上に剛性に寄与し、この様な結果となっ たと思われる。
次にブレードの曲げ試験を実施した。 試験状況は図
7-2
に示す。
試験荷重は、 想定運用の
500%相当荷重の
7423Nま で負荷した。先ず、
100%相当荷重
1559Nにおいて 最大主歪
441μεを記録し、評価基準値
554με以 下であることを確認した。また、想定運用の
500%相 当荷重においてブレード取付部に破壊の無いことを確 認した。荷重
-歪みの計測結果を図
7-3に示す。
図
6-1ファン構造の検討
図
6-2ファン全体図
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図
7-1固有振動数の計測
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図
7-2ブレード曲げ試験状況
図
7-3ブレード曲げ試験結果
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整備性については、 実際にハブ部にブレードを取り 付けて、 上面プレートの切り欠きからボルト締めツー ルがアクセスできることを確認した。状況を図
7-4に 示す。
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宇宙航空研究開発機構特別資料
JAXA-SP-06-02636
8. まとめ
今回の設計および試験の結果により、日飛低速風 洞の高速化を想定したファンについて、ブレード積 層構成、取付部構造、ハブ部の基本構造を確立でき た。またハブ部とブレードの整備性を確認できた。
今後の目標は、ブレードを8枚フルに製作しファ
ン
ASSYとしての固有値を確認することである。そ
して何よりも、実運転し風速等ファン性能データを 取得したい。
図
7-4ファン整備性の確認
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