対外準備保有の輸入に対する
比率の検討*
宮 田 亘 朗
小 野 玉 恵働挽担当)
1
われわれほかつて国際通貸の需要を取引的動機と予備的動機と投機的動機に
(1) わけて考察した。そ・してそ・のうら予備的動機に.よる国際通貨の需要紅関する1
つの指標として対外準備保有額の輸入額に.対する比率(以下対外準備比率とい う)をとりあげた。しかしそ・の折その詳細な検討はなされず後日紅ゆだねられ た。そこで以下この対外準備比率の検討を行うことに.する。使舟する資料は IMF;IFS,1972Supplementに,ある比率(1957〜1971年)である。
周知の如くこの対外準備比率は古くはトリフィン紅よって強力紅主張された
(2) ものである。彼は過去の資料特に・1950〜1957年の8カ年に・関して検討し,先進
主要国がその比率を40%以下紅ならないよう維持していることまた30〜33%以 下に.なる場合に.ほすべての国が何等かの収支調整策をとっておりさら紅最悪の 場合でも約20%の最低水準を維持していることなどを指摘した。その後マノ、ル
−プ夫人の衣装ダンスのように適正準備水準というものは存在しないとする考
(3)
−トゲ」)えも出されたが,大多数の人々はこの水準が各国の適正対外準備保有の指標に なることを認め,IMFに:おし、ても上記のようにこの対外準備比率を掲げ各国の 参考にr供している状況である。さら阻例えばかつて一考察したク・−ルシェンおよ
*この論文の作製に醸し本学木村等教授および大薮助教授の懇切な御助力を賜わった。こ こに深く,感謝する次第である。
(1)拙稿「国際通貸の需要に関する研究」神戸大学経済経営研究所『■金融研究』1976年。
(2)TI・iffin,R・,G〃J♂α乃♂≠カβ伽/Jαrα∠\ざf∫,1950,Chap14.
(3)Machlup,J., The Need for MonetaIy Reserves ,Banca Nazionale del
La上10rO QtLElrter!)・Rt,E、jcEL・.No.78,Sep.1966.
ー 2 −
算50巻 算1号
2(4)
びユーセフのように・この比率ほしばしば各国の対外準備の需要函数の説明変数 に・使用されている。そしてその背後にほ「最低金・外貨準備は.川・・外国の態度か らも規制されてくる。1国の金・外貨準備高がある一定水準を割るとそ・の国の 政策が国際収支回復の手段として強硬な措置をとるととを恐れて私的融資はゼ ロもしくはマイナスに戯少する可能性がある。また公的機関もその国の経帝政 策を不健全とみなし信用の供与するのをためらうように.なる。この際信用供与 者が最低限度として使う指標は金。外貨準備額の年間輸入額に.対する比率であ
(5) る」とする考えが存在しているのである。
以上のような形で対外準備比率が説明変数として使用できるのであれば,各 国の対外準備比率に.はある−・定の水準が存在しそ・の水準を中心に.変動する傾向 がみられねばならないことになろう。しかもその水準は考察親閲一・定紅維持さ れるようなものである。そこで試み紅主要な40カ国を選びそれらにつき対外準 備比率の期待値(平均値)とその分散を求めてみると第1表のように.なる。・そ
第1表 主要40カ国の対外準備比率の平均値と分散
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れ紅よれば対外準備比率の15カ年平均値(1957〜1971)は,デンマ−ク16.8%,
スクェ−デン19.7%,ニュ−・ジ−ランド16.9。%,インドネレヤ19.2%,フィリ
(4)Courchene,T.J。and G.M仙Youssef,㍑The Demand forInternational Reserves, J.P.E。,Vol.95,Aug.1967.
(5)芦矢栄之助『国際通貸論争』昭和39年,16貢。.
対外準備保有の輸入に対する比率の検討 】3−−
ピン16.7%,ミ/ンガポ・−ル12.5%を除きすべて20%以上であり,そのうち先進 諸国の大部分では40%あるいは悪くでも30%以上となっている。特にアメリカ 85.3%,スイス96.3%,タイ86.9%などが目立って一高率である。このうちアメ
リカは1965〜1971年の後半では46.1%と低くなってくるけれども他の2国では それ俺ど低くなってこない(後出の第2表参腰)。またりフィンが最低水準と する値すなわち20%に近いかそれ以下の国は,イギリス,デンマーーク,ノルウ
ェー・,
スウェ嶋デソニニュ−・汐−ランド,ペルーー,セイロン,イジドネレア,
フィリピン,シ∵/ガポ岬ルの11カ国のみである。かくして前述のトリフィンの 結論すなわち大多数の国が30〜40%以上の対外準備比率をもつことおよび約20
%前後が最低水準であろうことなどほはば妥当するといえそ・うである。
2
ところで前述のように.これらの平均値は.観察期間中一・定に維持されその水準 を中心に対外準備比率の変動する傾向がみられなければならない。そ・こで上記 の各国の対外準備の期待値が観案期間中一定であるかどうかを険討する必要が ある。先ずわれわれは上記15コのデー・タが無作為に抽出されたものと仮定しス チュ・−デソトのf分布表を用いてその後定を行うこと紅.しよう。
この≠検定の前段階としてデータを前半(1957〜1964年)の8コと後半(1965
〜1.971年)の7コに.2分し両期間の分散が等しいかどうかのダ検定を行った。
すなわち両期間で分散の大きい方を512とすれほF=ぶ12/522であり,・そのダの 値が,もし前半の分散が大であればダ0.05=5.695より大きくなるとき,またも
し後半の分散が大であればダ0い05=5.119より大きくなるとき,それぞれガ0:グ12
(6) =q22を棄却するとするのである。その結果は第2表第4欄(F−TEST)の通り
である。棄却される場合に.は粁■印を記入した。すなわち日本,他のアジア諸国,
韓国,マレーレヤ,パキスタンの5カ国を除くすべての国でダ検定に・合格し 分散の均等性が認められること紅なる。
(6)Snedecor,G.W.and W.G.Cochr・an,SiatiSticalMeihods,6th edl・,1967,
pp.117■−18.なお棄却域は日本規格協会『統計数値表.γS■久一1972』よりえた。
第50巻 第1号
4 4
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対外準備保有の輸入紅対する比率の検討 −5−
そこでこの結果把.したがい,分散が等しい場合に.ほ自由度ガユ・+勉−・2のれ05=
〝1クZ2(乃1+〝2−2)
.l−l一ユ■ご
2.1604と f= lT〃「 ̄丁・封こ=■二ん‥:−j.jJ・二・: 乃1十方2 の債を比較し,
また分散が等しくない場合紅ほ自由度仇−1のわ,0.05=2.565と自由度〝2−1 のg2,0朋=2.447を用いん小05=(肌わ・+抑2才2)/(肋・十紗2)(ただし仇=ぶ12/勧,紺2=
ぶ22/狸2) から導かれる値とf/=(ゑ−免)/ノ512/形1+ぶ22/乃2の値とを比較し,それ
ぞれ前者が小さいとき(ただし〝1,わ2は両期間のデータ数,斉1,庖ほ両期間 の平均値)両期間の平均値が等しいとする仮設(ガ0:〝1=〝2)を棄却すること
(7)
粧する。その時果ほ算2表策5欄紅掲げた通りである。前と同じよう紅仮設が 棄却される場合紅は*印を付した。そ・の*印ほ40カ国中知力国紅付されてあり
第3未 達による無作為性の検定 ゆえに上の検定でほ.は ぼ単分の国で期待値の
…・定性がないというと とに.なる。
しかしながらこの結 論ほ本館の最初紅のぺ たよう紅あくまでも無 作為データが前提とさ れて一等かれたものであ
る。したがって使用し たデータが無作為隼抽 出したものであるかど うかを調べてみなけれ ばならない。そこで第 3表で連(r・unS)によ る無作為性あ検定を行 った。中央値より小さ lMEL)TANI Nl 暮 N2 I U I TESr l
INDUST.⊂0UNT.10.4701 T 1 8 t 2 IRE,」E⊂TED t
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(7)Snedecor,G・W・and W・G・Coc士han,ibid ,pp.114−16.およびホ−エル,
浅井・村上訳『初等統討学』昭和48年168貢。
第50巻 第1弓
ー 6 −
い値の個数を凡またそれより大きい値の個数をⅣ2とし5%棄却域を設けて
(8)
それと遵の総個数びとを比較し検定すると,オ−ストリア,デンマ−ク,イ タリア,スクェ・−・デン,カナダ,他の先進地域,フィンランド,トルコ,オ−
ストラリア, ニュー汐−ランド, アルゼンチン,プラ汐ル,メキシコ,ペルー,
グェネゼラ,他のアジア諸国,ビルマ,韓国,マレ−レア,フィリピン,ミ/ン ガポールなどを除く他の19カ国で仮設が褒却され無作為データでないというこ
と紅なった。しかも大部分の国で中央値より大きな値と小さな値とがはば半々
(凡=7,脆=8)にわかれて−おり,さら紅中央値よ.り小さい偲から大きい値 にあるいは大きい値から/J\さい値軋逆転する回数ほ.−・般に.比較的少ないことを 示している。例えば逆転回数1すなわち打=2である国は7カ国であり,また
逆転回数2すなわちぴ=3である国は8カ国,さら紅逆転回数3すなわちひ=
4である国は5カ国である。そしてそれだけで全体の半分の20カ国に達してい るのである。なお最高はU=8でわずかにフィリピンの1カ国にすぎない。こ のように中央値より大きい値と小さい値がはば半々になりかつ逆転回数の少な いことは初期の砥がかなり長く持続する傾向のあることを意味していると云え よう。
そこでこの連による険定の結果を補うために革常云われるように各国の対外 準備率比がその前年の対外準備比率に.依存する傾向があるかどうかを調べた。
その結果は欝4衰および第5表の通りである。算4表は1階のマルコフ過程 プ£=∂1+∂2J′い1十α↓また第5表は2階のマルコフ過程.γる=∂1+あ2.γい1十みa一γ£−2+
urlのそれぞれによる回帰係数の唯計値(BHATl,BHAT2,BHAT3)とそ れらのfの値(括孤内に.記入)およびダービン・ワトソン比(DWR)と決定 係数(R)を記したものである。この場合.γい1や.γい2が説明変数として有効か
どうかを知りたいのであるから決定係数(R)はそれほど注意される必要のない もの紅なる。ゆえに算4表で才の値紅着目し,才分布表のン=13で5%の値(2.
1609)や10%の値(1.7709)と較べてそれより大きなfの値が得られれば.γ巨1 や.γい2が有効であると単純紅判断することにしよう。第4表でプレ1が説明変
(8)ホ−エル、上掲訳書.24い・崩貢。
対外準備保有の輸入に対する比率の検討
ー 7 −数として有効な国ほ23〜29カ国紅及んでいる。しかもそのうちフランス,オラ
ンダ,スづ・イン,タイの各国は次の籍5表でも.少£・・−2の有効なことを表わしてい
(9) る。さら紅発5表のブラジルは.γ=およぴ.γ巨2ともに有効である。こ?タラ
ジル牲第4表では有効でなかった国の1つである。かくしてこのブラジルを加 えて40カ国申30カ国の対外準備比率が前年またほ前々年のそ・の対外準備比率に 依存し変動していると結論することができること紅・なる。
なお上掲の第4表と第5表を比較する
算4表.γ↓=∂1+∂2.γf_1+〝zによる回帰係数の推計
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第50巻 第1弓
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対外準備保有の輸入に対する比率の検討 えている。ゆえにこの第4表をとりあげ1階のマルコフ過程のもとでえられる 残差項に.ついて無作為性の検定を行ってみた。これは第4表で示されるDW R の値が余り良くないことまたこのように・1期前のプレ1を説明変数として用いる 場合紅はかりに.DWRの値が良いとしてもそれはど役紅・立つ指標とならないこ
(10)
となどを配慮して行ったものである。
その結果ほ第6表の如くである。すなわち40カ国のすぺて軋つきその残差項は 第6表 連に.よる残差項の無作為性の検定 無作為となってくる。
そしで前掲の第3表と 較ぺてこの第6表のぴ は.一一・般に大きな値を示 しており,ゆえに中央 値より/J\さな健から大
きな値にあるいほ大き な値から小さな値に.逆 転する回数は.より頻繁 であることがわかる。
すなわち各国の対外準 備比率からその前年の 影響を差引いた残差は もはやはとんど過去の 値紅よって左右される
ことのないものとなっ ているのである。
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SPAIN TURKEY
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NEvJヱEALAトJD しATIN A卜1ERICA ARGENT川A 8RAZl」
MEXICO PERU VENEヱUEJA OTHEH ASIA βURMA
⊂EYJON
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3
以上のように1957〜1971年の各国の対外準備比率が無作為データでないと結
(10)Durbin,J.andG.S.Watson, Testingfor Se:ialCorrelationinLeast−
Squares Regression ,IandII,Biometrika,Vol・37and38,1950,1951・
欝50巻 舞1号 10
ー ヱ0 −
諭されるならば前節で行ったような平均値の−・定性に・関する検定ほ無価値な ものとなつてくる。そこでわれわれほ次蕃の手段として母数紅よらない検定法
(11)
(non−parametr−ict甲t)の使用を考えなければならないであろうo
以下われわれは順位和検定法(rank−Sum teSt)で平均値の一・定性を検定する
(12) こと紅する。それほユ957〜1971年の15コのデータを1957年から∬年間と残りの
Ⅳ−・∬年間との2齢に.分割しその2組の標本を込み紅して値の小さなものから 慣に並べるとき標本の大きさの/j\さな方のグル十プの収位数の和皮を求めその 点の値が棄却域に.あるかどうかで2グル一プの中央値が等しいかどうかを判断 するものである。こ.の場合分布の位置を示す母数としては平均値(mean)よ
(11)なおⅩenda11,M.GりT去∽診∫g㌢云β5,1973,p.26及びMoor■e,G.M・and W・
A.Wallis,以TimeSeriesSignificanceTestsBasedonSignsofDiffer enCeS ,
J.Amer.Stati;t.Ass.,38,153,June1943を使用して,念の為紅符号検定(sign test)を行い各国Z)対外準備比率陀.傾向的変動(trend)があるかどうかを確かめ みた。その結果は下表の通りである。この符号検定とは各国の15コのデー一夕に関して
(乃=15)その系
列の増減妃正負の トレンドの符号検定
−−−−■l−−−−−−−−−−−−−一−−−■■−−−−−−−−−一−−−t−−■−−−t−−−−−−一一一−−−■●−−−−−■
符号を付し例えば 儀
I S l l l S 1 1→−■−一一−−一一−−−−−−−−−−−−一−−−−−−−−−−−−−一−一一−−■−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
INDUST・⊂ouNT.13、.031F サIAUSTRALIA ll.2991 1
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減少(負)の回数と
無作為デー・タで傾 向的変動のない場 合紅正あるいは負 となる期待回数
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