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彼らしさを感じて −5年2組『この模様ってきれいだね』の実践から−

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Academic year: 2021

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彼らしさを感じて

−5年2組『この模様ってきれいだね』の実践から−

渡 辺 敏 由

1.教材に込めたもの

五年生になってクラス替えがあり、新しい仲間にも少しずつ慣れ始めてきた四月下旬。P男君は休 み時間になると私の所に来ては体をすり寄せ、彼が前日に遊んだ内容や自分の家庭での様子を楽しそ うに伝えに来ていた。また、教育実習生のお別れ会でわざと罰ゲームを受け、そこで自分の一芸を見 せた。それは、みんなに楽しんでもらい、注目されることに喜びを感じているようでもあった。私は

P男君が、自分を知ってほしい、自分の思いや考えを伝えたいと思っているのではないかと感じた。

私はそんな彼を感じていたので、私が彼の彼らしい追究を支えていくことで、彼の思いや考えを発 揮させたいと願った。 そして、そこから彼の思いや考えをとらえ、さらに彼の魅力に迫っていきたい

と考えた。

小数のかけ算で「なぜ小数点を左に三つ動かすのか」明らかにする場面だった。事象が数という抽 象を対象とした場面だったこともあり、彼は、なぜなのかを明らかにする考えがもてずに困っていた。

しかし、数を1と0.1と0.01のかたまりの図に置き換える方法をアドバイスすると、なぜなのかに 向かって数と図を結び付けながら自分の考えを明らかにしていこうとしていった。私は、彼の思いや 考えをとらえるためには、具体を対象とした事象に出会わせたいと思った。

そこで私は、彼が自分の図形の見方で具体的に模様をかいていく中で、彼らしい思いや考えを発揮 できるであろう本教材『この模様ってきれいだね』を設定した。

2,うーん作ってみたい

く(図1)幾何学模様〉

幾何学模様(図1)を提示すると、P男君はじっと模様を見つめ「最 初気持ち悪く思ったんだけど、作ってみたくなっちゃった」とつぶや いた。私は、彼がこの幾何学模様の何に惹かれたのか、それがその規 則性なのか、対称性なのか、構成している三角形の形そのものなのか

はっきりはしなかったが、彼のこのつぶやきから自分でも幾何学模様 を作って、不思議さを味わってみたいと思っていることを感じた。そ れと同時に私は、彼が幾何学模様を作っていく中で、どんな図形の見 方をし、どんな彼らしい納得の仕方をするのか、それを自分がどのよ うに自分が感じられるのか楽しみになった。

P男君は、自分の「作ってみたい」という発言からみんなが「この模様は三角形ワールドを感じる。

同じ三角形だからではないか。作って確かめてみたい」と反応する中で、彼もまた本当にこの幾何学 模様は全部同じ三角形で構成されているのか確かめてみたくなっていった。

三角定規を平行移動

〇 一→ ○

く(図2)P男君の操作〉

彼は模様を構成している一つの三角形の右辺に三角定規を当て、そ れを横に平行移動させて隣の三角形の右辺の長さと傾きと同じである か調べ、その結果からこの二つの三角形は同じだと考えた。(図2)

彼は、二つの三角形の底辺の長さと傾きが同じだから左辺もきまると 考えたのだろう。彼は辺の長さだけではなく、その傾きにも着目した 見方で三角形を見っめていたのだ。

私は、彼は辺の長さに着目した見方はするだろうとは思っていたが、

その傾きにも着目した見方をしてくるとは思っていなかった。そして、

彼が辺の傾きを二辺が作り出す角と結び付けて見ているかどうかはわからなかったが、平行移動する 操作は、底辺と右辺の位置関係に結び付くと考え、まずは、P男君の見方を支えていきたいと思った。

−53−

(2)

P男君が自分の具体的な操作活動と考えを発表すると、みんなから「お−う!」と感嘆の声があがっ た。彼は自分の考えがみんなに伝えられたことを素直に喜んでいた。そして、その中で彼は、辺の長 さと傾きの見方への思いを強めていったのだろう。

3.かけるはずだよ

(1)傾きの見方にこだわり始めるP男君

彼は、最初に出会った幾何学模様を、自分の辺の長さと傾きの見方で合同な三角形で構成されてい ると確かめ、それを認められた。そのため、自分の図形の見方ならば合同な三角形で構成された幾何 学模様はかける、かいて三角形ワールドを味わいたいとさらに思ったのだろう。

早速彼は合同な三角形をかき始めた。まずは底辺の長さを定規で取り、次に右辺の長さをそろえ、

その傾きを三角定規で取った。そして最後に左辺を結んだ。しかし、彼のかいた三角形は、一本一本 の辺を単独に見て一つの三角定規を操作しているため、●微妙に右辺の底辺に対する角度が違い、左辺 の長さがずれてしまった。(図3)

彼は自分のかいた三角形が合同になっていないことには気づいていたが、どこがずれているのかは はっきりしないようだった。私は、どこがずれているのかはっきりさせることは、傾きの違いが明ら かになることであり、それを見っめることで、傾きは底辺と右辺によ

って作られていることだと気づくのではないかと考え、彼に関わった。

T:P男君どうですか。

C:何か変なのになっちゃった。

T:二っの辺の長さはよさそうだね。左の辺の長さは詞べたの?

C:調べてない。

T:それじゃあ重ならないんじゃないかな。

C:そうか。

′、 ← か き た い ヽ、、  三 角 形 左 辺 、、、右 辺

← か け た  、、、

三 角 形   底 辺

く(図3)P男君の三角形〉

彼は左辺の長さを調べ、その長さが違うことには気づいた。しかし、それがなぜなのか、辺の長さ と傾きの見方に問題があることは気づかず、単に操作上のずれと考えたのだろう。辺の長さと傾きを 使えば合同な三角形はかけるはずだという思いから、彼は同様の操作で再び三角形をかいていった。

しかし、その三角形は再びずれてしまい、なぜかけないのか三角形を見っめながら悩んでいった。私 は、彼の操作を見つめながら、彼が辺の長さと傾きの見方にこだわり始めてきていることを感じた。

彼は自分の納得できる考えで思いや考えを明らかにしたいのだ。

(2)支えることに悩む教師

彼は次の時間も、今まで同様の操作をしながら合同な三角形をかこうとしていた。そして、その度 にずれてしまう三角形を見っめ、首をひねっていた。彼は、どうしてかけるはずなのにかけないのだ ろうと悩んでいたのだろう。

私は、彼らしい追究を支えていく中で、彼らしさを感じていきたいと願っていたはずだったのに、

この時、このままでは三角形の合同条件にふれることなく彼は追究を進めてしまうのではないかと思っ た。私の中でいっしか、彼に願っていたことではなく、彼の方法を何とか合同条件に結び付けさせた いという気持ちが強くなっていった。そのため、左辺の長さがずれてしまうのは、右辺の傾きを底辺 に対して角として見ていないことに気づいてはしくて、彼に問いかけた。

T:P男君、何か形が違うような気がしない?

C:そうなんだよ。

T:三つ目の辺の長さが合わないんだよね?

C:うん。

T:合わせるにはどうすればいいかな。合同とは何が同じなの?

C:辺の長さと角の大きさ。

T:角もあるんだよね。

−54−

(3)

彼は私の問いかけに辺の長さと角の大きさを同じにすればいいと答えた。しかし、彼には傾きを角に 広げなければならない必要性も納得できる考えもなく、彼は辺の長さと傾きを使えば合同な三角形は かけるはずだと考え、同様の操作をしていった。

私はそんな彼の姿を見ながら、傾きの見方を角に広げることに固執していった。そして、今度は私 が定規を使って具体的に説明した。しかし、彼はこれまでと同様の操作で追究を続けていった。きっ と彼の中では、辺の長さと傾きの見方に対しての自信が揺らいでいなかったのだろうし、そう感じる だけの納得できる考えにも出会っていなかったのだろう。やはり彼は自分の納得できる考えで自分の 思いや考えを明らかにしたいのだ。

そう考えると、自分の彼への関わりは彼らしい追究を支えることにはなっていないのではないかと 思った。彼らしい追究は、辺の長さと傾きの見方を大切にすることから始まるのではないか。彼が自 分の納得できる考えでかいてみたい、三角形ワールドを味わいたいという思いを実現す為こと、そこ に彼がどのように迫っていくのか感じていきたいと改めて思ったと同時に、そこにこだわる彼に私は、

彼らしさを感じ始めた。

→ ←

く(図4)B男君の操作〉

私は、B男君の定規を二本使って、底辺に対して長さを保ちながら 右辺と左辺の傾きを変えて交点を探す操作に、P男君が操作を重ねや すいだけでなく、そこに見方の広がりの可能性も感じられていたので、

P男君にB男君甲操作を出会わせた。(図4)しかし、彼は辺の長さ と傾きの見方にこだわった。

私は、B男君の操作に出会ってもなお自分の納得できる考えで自分 の思いや考えを明らかにしたいというP男君の姿に出会い、そこに彼 らしさをはっきりと感じた。彼は納得していないのだ。だから彼はこ

れまでと同様の操作で合同な三角形をかこうとしていったのだ。そして、かけてしまうずれた三角形

をこうして何時間も見っめてきたのだ。

4.自分でもかいたら三角形ワールドを感じるよ

しかし、彼も自分のかき方には行き詰まりを感じ始めたのだろう。これまで一貫して他のかき方は 試さなかったのに「二つの辺とはさむ角を使えばかけるのか」を分度器を使って確かめ、このかき方

ならばかけることは納得した。そして次に、「二っの辺とはさまない角を使えばかけるのか」につい ても確かめていった。もちろ〜これはかき方の確かめであって、彼は辺の長さと傾きの見方をいかし

たかき方を諦めたわけではなかったのだろう。しかし、この「二っの辺とはさまない角」を使ったか き方では、彼がこれまで辺の長さと傾きの見方をいかした操作でかいてきた三角形と同じようにずれ てしま?た。なぜ今度はかけないのか、傾きを角度として見ることのよさには響き始めた彼だったが、

ここでまた悩んでしまった。

6 c m の二 本 の左辺 右 辺

は さま な い角 −→ 底 辺

く(図5)H子さんの考え〉

ここでH子さんから、三本目の左辺は同じ長さの辺が二本取れるこ と、このかき方では合同な三角形がかけないこともあるという考えが 出された。彼は彼女が黒板にかいた左辺を二本取った三角形をじっと 見つめていた。(図5)

彼は、自分がこれまで辺の長さと傾きの見方からかいてきたずれて しまう三角形と、彼女が今黒板にかいた三角形を重ね合わせていたの だろう。そして、そのずれ方が似ていることに、なぜ辺の長さと傾き を使ったかき方でずれてしまうのか気づき始めたのだ。

彼は、自分がこれまでかいて、底辺に対して角がずれてきた左辺と長さがずれてきた右辺を、H子 さんの図の三角形の左辺の角のずれと右辺の長さのずれに重ね合わせたのだ。P男君はH子さんの考 えを確かめるように、そして、自分の重ね合わせた考えを確かめるように作図していった。

確かに6cmの左辺が二本、傾き・角度が違った形で取れた。それは、H子さんの考え通りであっ

−55−

(4)

た。彼はこの事実から、底辺に対して角度が違うことが、自分のこれまでかいてきた三角形の左辺の 長さがずれる原因であることに納得したのだ。そして彼は、自分の納得した考えで自分の思いである 三角形ワールドを味わうために、合同な三角形で構成された幾何学模様をかき始めた。

まずは自分がこれまでしていた辺の長さと傾きを使ったかき方で彼はかき始めた。しかし、彼のか こうとした合同な正三角形は微妙に左辺の長さがずれてしまった。それは、これまでしてきた傾きの 見方では、二辺の作り出す角の大きさが決まらないために微妙に辺の長さがずれてしまうことを確か めるかのようだった。私は、彼が次にどうのようにかくのか、じっと待っていた。

次に彼は、コンパスを使ってかき始めた。彼は底辺に対して長さを保ったまま、底辺と右辺・左辺 の角の大きさを変えてくる、このかき方ならばかけると考えたのだろう。これはH子さんの操作から 彼が納得した二辺の作り出す角の考えにも通じるのだ。′しかし、コンパスが途中でずれてしまい、う まくかくことができなかった。彼はコンパスのずれでは自分の考えでかけないことに納得できなかっ たのだろう、何度もコンパスの操作をやり直し、合同な正三角形がかけるか、模様がかけるか試して いった。私も、かけてほしいと思いながら見つめていた。そしてつい

に合同な正三角形の模様がかけた。彼は自分の納得した考えで、つい にかけたのだ。(図6)彼はすぐに私に伝えに来た。

C:先生、正三角形でかけたよ。

T:正確に合同な三角形で模様ができたね。三角形ワールドを感 じますか。

C:うん。感じるよ。違う三角形でも模様を作ってみるよ。 く(図6)P男君のかいた模様〉

私は、彼のこの言葉を聞き、姿を見て、彼が自分の納得のできる考えで自分の思いを実現できたこ とが嬉しかった。また、この時、このように自分の納得できる考えにこだわる姿が彼らしさではない かと改めて感じた。

5.彼の追究を追って

本教材を通して彼は、自分でも幾何学模様をか いて三角形ワールドを味わいたいと思っていたの だろう。そして、その実現に向けて、自分の辺の 長さと傾きの見方にこだわりながら追究し、角の 見方を取り込んでいった。

一方私は、彼が自分の納得できる考えにこだわ る姿を目の当たりにしながら、自分の関わりに悩 み、どう関わることが彼らしい追究の支えること にな.るのか考えさせられた。

今、改めて彼の追究を追いながら、彼らしさと は、自分の納得のできる考えにとだわる姿ではな いのかと思っている。そう感じながら彼との営み を振り返ると、彼がしてきたことが妙に納得でき

るのだ。

彼の思いや考えを感じていくこと、それは彼らしさを教師である私が感じていくことであり、それ が彼らしい追究を支えることになると感じている。

−56−

参照

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