4 84
‑ 弘 前 医 学 第1 5
巻 第3
号特殊環境下におけ る睡眠の脳波的研究
海洋 油 田掘 さ くに関す る労働 医学的研究 第
2
報福 島 裕 清 水 隆 麿
FUKUSHI MA‑ YUTAKA SHI MI ZU‑ TAKAMARO
斎 藤 佳
SAI TO‑ YOSHI KAZU
弘 前 大 学 医 学 部 神 経 精 神 医 学 教 室 (主任 和田豊治 教授)
( 2 2.Ⅳ.1 9 6 3
受付)ま え が き
睡眠 中その深浅の程度 にお いて.種 々変動 を来 たす原 因につい ては色 々の因子が考 え ら れ るが,大 まかに分け る と内 ・外の
2
因子が あ るよ うに思われ る.前者は個人の精神的 ・ 肉体 的状態及 び環境 についてみた内的 な因子 であ り,後者 は騒音,振動,明暗,温度,堤 度 ,気圧,臭気等 の物理 化学的条件 の よ うな 外的 な生活 ・労働条件及び環境等で ある .過 常 の環境 で労働 し生活 してい る者が, これ ら 睡 眠障害 の原因 とな る と思われ る因子 を多 く 含 んでい る異常 な環境 の もとで労働 し生活する場合には,当然 その睡眠状態 は不安定 な変 動 の多い ものになるであろ うとい うこ とは容 易に推測 され る ところで ある.実際,職業 に よ っては, この よ うな特異 な環境 ・条件 の も とで生活 し労働 してい る者が少 な くない .
今回我 々は, この よ うな特殊 な環境 を有 し てい る
1
例 とも思われ る海洋 油 田掘 さ く装置≠白竜号〝 内に於い て労働 し生活 してい る作 業員につ いて,その睡眠状態 の変動 を脳波的 に考察す る機会 を得 た .白竜号は海 底の油 田 を掘 さ くす るために海上 に設置 され てい る と い う点 では,海上労働者の生 活環境 の要素 を 含 んでお り, また掘 さ く作業 その ものは.陸 上 労働者 と同様 な労働条件 の因子 を もってい る .換言すれ ば,一般掘 さ く作業 員 としての
労 働条件 に加 えて,私生活 の場 と職場 とが限 られ た 同一船 内であ るため,私生活 の確 床が 困難 で あ り,更に掘 さ くに よる騒音,振動, 衝撃 ,動揺等 が常に付随 し て い る わ け で あ る.また海上生活 のため家族や一般社会か ら 隔絶 し,男性 のみ で構成す る小集 団であ るの で,船 員的 な生活環 境要 素 も含 んでい る .
以上 の よ うに "白竜号〝 内におけ る労働 ・ 生活環境 は, ある一つ の特殊 な状態 と考 えて よい であろ う.そ して この よ うな異常 な環境 においては,睡 眠状態 は どの よ うな変動 を し てい る もので あろ うか .恐 ら くは不安定に変 動す るであろ うとい うことは予測 され るが, 本研 究はその よ うな変動状態 を考察す るため に,睡 眠脳波 の記録 を行 ない追求 した もの で あ る.
以上 の他 に,精神 医学的 見地 よ り被検者 の 内的因子 をなが め,且つ特 に異常 な ものを被 検者 として採択 す るこ とを出来 るだけ避 け る ために,精神,作業能 力測定
( Ps yc home t r y)
を併せ て行 な った .被横 着及び方法
まず精神 医学的見地 よ り行 な った
Ps yc h0‑
me t r y
の対象 とな った被検 者は,本作業 に従 事 中の20
才 よ り46
才 にわた る以下 の作業員で あ る.即 ち脳研 式知能検査 の1 9
名,Lai r d
情 意生活検査 の1 6
名,淡路 式 向性検査の1 4
名,三宅式性格検査 の
1 7
名, 内田 ・クレペ リン精 神作業 力検査 の1 8
名であ る .睡 眠脳 波 を記録 した被検者は,Ps
yc home‑
t r y
を行 な った被検者 の 中,延 べ1 4
名であ り, 一方対照者は延べ1
1名の計2 5
名で あった .し か しこれ らの中,脳波記録に対す る心的緊張 及 びその他本検査 のため と思 われ る原因に よ り,通常の睡眠状態 が甚 だ し く障害 され た と み られ た ものや,ar t i f ac tの甚 だ しい もの及
び記録 を中断 した もの等 を除外 したので,被 検者 としては1 0
名( 23‑46
才)の作業員 と3
名( 36‑23
才) の対照者 の計1 3
名の脳 波 を採 用 ・追 求 した .対照者 については本調査 に赴 いた弘前大学 医学部職員及 び学 生 をあて .船 内及び陸上 (即 ち作業現場 か ら離れた状 態)に於 いて睡眠 脳 波記録 を行 ない比較 検討 した .
脳波記録には軽便 な 日本光電工業株式 会社 製
6
素子脳波計 を船 内に持込 んで行な った.睡眠状 態 を判定す る基準 としては,記録 さ れ た睡眠脳波 の
pat t er nを,睡眠 深度 の程度
と関連 させ て各段 階に分類 し, それ に従 って 睡眠状態 の判定 を行 な った .睡眠 脳波pa
t t er n
の分類方法 は,従来多 くの研究者達 に よ り種 々行 なわれ て来 た .即 ち,Loomis ,Har ve y
及1)
び
Hobar t
(1 937)
,Blake,Ger ar d
及びKl e
2 )
3)i t man
(1 937). Gi bbs
夫妻(1 95 0)
,塩 月 ,市4 1
5)野及び清水 (
1 95 4)
, 古閑 (1 96 0)
等に よ り 比較 的詳 しい分類 が試み られ ,睡眠 の状態 を 覚醒 よ り最 も深い睡眠 に至 る間 を数.段階に分 けてい る.6) 我 々は これ らの報告 を参考 に し,和 田教授 に よる分類 にな らって,覚醒状態 よ り最 も深 い睡眠 までの脳波 を6段 階
(s t ageO〜Ⅴ)に
分類 した (第1図参照).以下 これ ら各段階 に つ いて簡単に説 明 を加 え る.s t age O
は覚醒状態 で閉眠 ・安静時 の もの で,比較 的 10C/ ′
S前後 のα波が よ く連続 して
いる時期 であ り (覚醒期),s t ageI
は クツラ ウツラした睡眠 で極 く浅 い睡眠状態 であ る.脳 波律動 の振 巾が全般 的に低下 し,周期 も若
1 1 日 l V Y
1 s c c .
第1
国睡眠脳波像の段階分類模式図.0:覚醒時 (覚醒
・開眼 ・安静状態)
,I:抑制期 (
傾眠状態),Ⅱ :
漣波期 (極 く軽い睡眠状態),Ⅲ :癒波期 (軽眠状 態).Ⅳ :紡錘波期 (中等度の深さの睡眠状態),Ⅴ:丘波期 (趣 く深い睡眠状態).
干遅 くな る (抑制期).s
t age
Ⅱは短 く軽 い睡 眠状態 で,α波は殆 ん ど消失 し 5‑ 6 C /
Sで 低 振 巾の β波が主 であ り,時 に20‑30C/
Sの 低振 巾の β波 が 重 畳 し て くる (漣波期 ).s t ageⅢ は軽眠状 態 で,徐波 の振 巾が漸次増
大 し,3‑ 4
C/S位 の高振 巾2
相性 の波,即 ち 癌波が散発す る時期 であ り (癌波期 ),s t age I
Vは 中等度 の深 さの睡眠状態 で,1 2ノ ‑1 4 C / S
の紡錘状 の速 波群,即 ち錘状 波群が 出現 してくる (錘 波期).s
t ageVは深い睡眠状態 で あ
り,1 ‑3 C /
S位 で高振 巾の大徐 波が 不規則に み られ る (丘波期 ).以上 の如 く,
6
段 階 の分類 に従 ってそれ ぞ れ の睡眠 の状態 像 を判定 した .また便宜 上, 睡眠 中に現われ るⅠ. ‑Ⅱまでの.
段階 を浅眠状 態 , それ以上 のⅢノ‑Ⅴの もの を熟眠状態 とし て坂扱 った .結 果
㈱
Ps yc bomet r yに よる結 果
被検者 と検査項 目及びその成績は第
1
表及 び第2
図の如 くである .即ち1)
脳研 式知能 検査 では1 9
名につい て行 な ってお り, その平 均得点は60. 8
点 で あ った .2) Lai r d
情 意生活4 8 6 ‑
福 島・
清 水 ・斎 藤 第 1 表知査)
管鮎脳能(
例検被
Lai r d情意
淡 路 式 】生 活 検 査 向 性 検 査 】 三 宅 式 性 格 検 査 (得点) (向1生指数)
≡
12345、b7890「⊥234rD67891111111⊥11ユl 仁Uワ︼94321⊥3r‑L〇49史UIL?ワ一5ごり8244247ー6666883'DI:Y?LU6867
13
r9813〇一1ll4一104211881GH
2020 920808 16 3l
l284一10741884803600l1 1 1
11l⊥l⊥l
正 常
ク
範ク ク ク 〃
内tD ・クレべ リン精神作業 力検査
検 査 状 態 L卿 .B]L第2回
4闘
不安定性 ,過敏性 ,強 迫性
正 常 範 囲
開性囲性因
力実
範無範確範
常㌔不常う己
正抑正自正
爽
〃ク快
性
正 常 範 囲
隔
間
日 査検
クク
ク ク ク
鴫ク ク ク 〃
クク〃クク〃回 Ij=yLLf,言III=圭:It
会
hcD
L< tCQ t<
嘉tcQ t< t<
瓦;< ㌢ A A
(註 ) 1)脳研式知
能 検 査では50点以上は大体正常知 ,90点台以上は極めて優秀,30点以下は精神薄弱 と
大体判定 出来 る. 2
) Laird情意生活検査 では通常 ,各種作業労働者について男子平均1
0.2,女子24‑27
位である.35以上 の
も のは生活上或いは作業上に何 らかの問題をもっていると考 えられ
る.3)淡路式
向性検査 では,向性
指 数が120‑80は正常範囲であり,140以上は外向性 ,80以下は内向性 と判定される.
4)内田 ・クレペ
リ ン 精 神
作業力検査では,A,B,Cは作業能力の段階区分を示し,A>B>Cの順 に作業量が 少なかった
こ
とを意味する.また作業量の変化の分析結果は符号のつかな い ものは定 型,
「′」のついた ものは準
定 型
,「〝」のついたものは準 々定 型 , 「F」のついたものは疑問型, 「P」のついたものは異常型を意 味
し
,それぞれの順に異
常性 が
高い
ものとして表現 され る.人
80 70 60 50 ▲ 1 0 30 2 r
IJ
I I II l 1 . A 89 79 69 59 . 1 9 39 29
脂研 式知能 検尭
1 0 二 2 0 30 4 0 50 0 1 1 21 3 1 41 Lai r d場長生活検束
14=99. 5
¢ =
3. 0
轟I jEli・,.'打
80 9
0
100 110 1二三0 130 1‑1O 71 81
9 1 1Ol llll二2 11
:う1淡路 式 同作 検査
lr1‑
第
2
図脳新式知能検査 ,Lai
r d
情意生活検査,淡路式 向性検査 の成績 . Mは 平均 値,
Uは標準 偏差 .検査 では
1 6
名に施行 し,得点は0‑4 2
点の聞 えた性格傾 向を示 した ものが,前者 では1 7
名 に分布 じ,その平均得点は1 4
点 であ った .3)
中4
名,後者 では1 4
名 中1
名 であ った .4)
内 三宅及び淡路 式性格検査 では,正常範 囲 を越 田 ・クレペ リン精神作業 力検査 では,1 8
名に6∩
50
40
30
20
日 Ⅹ
′レ/ソ∩)ハU日、nU0一r)TTlつT,りl1
0 1
n m I\1' Ol
Ⅲ m L\ Y 0l
Ⅲ m ll l ・ 0 IⅢ
D i\ I1lrll勤 者 夜 勤 者 対 照者 「船
内)
対照 I1
‑(
搾」第
3
囲各睡眠段階に於け る脳波
pa t t er n
出現率 .実線は個 々例の出現率で,点線は各例の平均値を示す .つ いて延べ31回の検査 を行 な ったが,第
1
回 検 査で疑 問型 ・異常型 を示 した 者は2名で,
第2
回 目の検査で疑 問型 を示 した者 は13
名 中1名 であ った .
( B)
睡眠 脳波底勤 者 (即 ち夜間睡眠 者)
7
名,夜勤者 (即 ち風 間睡眠者)3
名,対照者 (海上及 び陸上 いずれ も夜 間睡眠 のみ)3
名 の3
群 につ いて 前述 の睡眠脳波分類法 に従 って,各睡眠.段階 の脳 波pat t er n
出現率 を個 々について求 めた のが第3
図 であ り,浅眠 ・覚醒 ・熟眠patt er n
の出現率は第4
図,前2
者 のpat t er n出現 回
数 と持続率 については第5
図に示す .ここで云 う脳 波
pこ も 二 L er n出現率 とは,睡眠
脳 波全 記録時 間に対 し, その出現す る各睡眠 段 階の脳波pat t er n
の 占め る時 間を百分率 で 示 した ものであ る.また浅眠pat t er n出現 回
数 と云 うのは熟眠状態 (Ⅲ‑ Ⅴ) よ り浅眠状 態 (Ⅰ‑ Ⅲ)にな り,再 び熟眠状態 にお ちい る1
変動の山を1
回 として計算 し, これが1
時 間当 り何 回起 るか その平均 回数 を求めた も のであ り,陸眠 中散発 的に 出現す る覚醒pat ‑ t er nにつ いて 同様 に求 め たのが覚醒 pat t er n
出現 回数 で ある.そ して この出現 回数 1回当り平均 どの位 の時 間,浅眠或 いは覚醒状態 が 持続 す るか,睡眠脳波全記録時 間に対 す る百
%
80 m
0‑.5040
訓州 10
0覚醒 .浅
賦 pat t e T nの出現率 黙眠 pal t e r nのZ l i 硯率
(,
iT:)J II.
:Jp・Ij † t ・.A
ド‑・
∴∵ ㌧
(陣⊥)JTrf斤(船 r= ) ・・tT 照 賞
夜
勤 老
尿
勤 劣
第 4 図
覚醒,浅眠及び熟眠
pa t t er n
の出現率 (各群の平 均 値 ) を 示 した も の で ,黒 色 棒 グ ラ フは 浅 眠pa t t er n
の出現率の中の覚醒pa t t er n
の出現率を示してい る.
分 率 と し て 現 わ したのが浅 眠及び覚醒
pat ‑ t er n
持続率 である.以下 これ らの結 果 に つ い て述 べ る .(1)睡眠脳波 の各
pat t er n出現率
これは第
3
図 に見 られ る如 くで あ る.即 ち 各被検 者群 の平 均値につ いてみ る と,覚醒状 態 を意味す るs t ageOにつ いてのpat t er n
出現 率 では,昼勤者 >対 照者 (船 内) >夜勤者 >対照者 (陸上) の順位 で,昼勤 者が最 も多 く 睡眠 中覚醒状態に な り,対 照者 (陸上 )では 最 も少 ない ことを示 している ,次 に仮眠状態 であ る
s t age
Iでは,展勤者 >夜勤 者 >対照 者 (船 内) >対照者 (陸上) とな ってお り,4 8 8
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.
●‑・‑1福 島 ・清 水 ・斎 藤
5
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第
5
国技眠及び覚醒
p a t t e r n
出現回数 (回/時間)と持続率( %/
回)を示 したもので,点は個々 例の値で点線は各群の平均値を結んだものである.睡 眠 中仮眠状 態 である割 合は,昼勤 者 で最 も 高 く対照者 (陸上) で最 も低 くな ってい る . 極 く軽 い睡眠状 態 で ある
s t ageⅡ では,各被
検 者群 とも大 同′J\異 で大 きな差異 は認め られ ない .軽眠状 態 のs t age
Ⅲでは,夜勤者 >対 照者 (船 内) >対照者 (陸上) >昼勤者 とな ってお り,軽眠状態が夜勤者 に於いて最 も多 く,底 勤者 で最 少で,対照者 は その 中間であ る ことを意味 してい る.st age I V . ‑V
では, 対 照者 (陸上) >対 照者 (船 内) >夜勤者 ≒ 昼勤者 とな ってお り,深い睡眠状態 では昼勤 者及び夜勤者 に於いて殆 ん ど差異 はな く,対 照者 に比べ ていずれ も少 な くな ってい る.以上 の ことを浅眠状態
(Ⅰ〜 Ⅱ)
, 熟眠状 顔 (Ⅲ〜Ⅴ)の二つ に大別 してその出現率 に ついてみ る と,浅眠状態 では底勤者 >夜勤者>対照者 (船 内) >対照者 (陸上) で,熟 眠 状 態 では対 照者 (陸上) >対 照者 (船 内)
>
夜勤者 >底勤者 の順位 となってお り,昼勤 者 が最 も熟眠状態 が短 くな ってい る.
さらに これ らで,散発的に 出現す る覚醒状 態 の
pat t e
m の出現率 につい てみ る と,その 占め る割合 は底勤者 >対照者 (船 内) >夜勤者 >対照 者 (陸上 (の如 くな ってい る (第
4
図参照 ).(2)浅 眠及 び覚醒
pat t er n出現 回数及び持
続率各被検者群 について これ らを示 したのが第 5図であ る.即 ち各被検者群の平均値 につい てみ る と,浅眠
pat t er n出現 回数 は夜勤者 >
昼勤者 >対照者 (船 内) >対照者 (陸上)で , そ の持続 率は昼勤 者 >対照者 (船 内) >夜勤 者 ≒対 照者 (陸上) とな ってい る.
覚醒pat
t er n
出現 回数は昼勤者 >対 照者 (船 内) >夜勤者 主対照者 (陸上) で,持続 率は 底勤者 >夜勤者 ≒対 照者 (船 内( >
対照者 (陸 上) とな ってい る (第 5図参照).考 接
Ps ychome t r y
に よ り作業員の 内的 な異常性 を調査 したが,全検査 を通 じて精神医学的立 場 よ り問題 と思 われ る ものは 1名で,第 1表 の被検者No.1 2
の脳研式知能検査39
点 ,情 意生活検査42
点 ,淡路 式及 び三宅式性格検査 で79
点 と抑 うつ ・無力性 等 を示 してい る者 で あ る .しか しその他に,或 る
1‑ 2の検査のみ異
常性 を示 した ものは,脳研式知能検査29点 の 者 1名,三宅式性格検査 で不安定性 ・過敏性・強迫性 を示 し,内田 ・クレペ リン精神作業 検査 で
BF
の もの1名,同様に 自己不確実性 でCP
の者 1名,爽快性 でA
の者 1名 であ った ,以上,異常性 を持つ者計 4名であるが,他 の被検者は皆正 常範 囲の者であ った.海上労 働者の代表 である般員 では,その心的特性は 妥協的な心情が強 く,大勢に順応 してい く傾 向を持 ち, 自主性 ,外向性は低い特色がみ ら
7)8)
れ るとい う報告があるが,本作業員 では この よ うな傾向は前述 の異常性 を示 した者 の中 2
・‑ 3見 られ ただけであ った.これ は海上労働 者 とは云え,本作業員は生産労働者 であ り, 且つ船 内勤務が
9
日間の短期 間で上陸 し,3
日間休善後再び乗船す る とい う交替方式のた め,一般の船員 の労働条件や生活環境 とは異 な るためであろ うと推測 され る.
個 々の検査結果について見 る と,知能検査 では平均得点60.
8
点 であ り,正常知能が50.‑ 60
点台 とみ られ てい ることか ら考 えて,概 し て水準が高い と云 えよ う.情意生活検査 では 平均得点14
点 で, これは通常,各種作業労働 者についての既知成績 の男子平均10. 2
とい う のに比べ るとや ゝ高 く,一般 に環境 (従 って ここでは本作業乃至 それに もとず く諸因子) に対す る情緒反応 の不安定性が若干高い こと を暗示す る.精神作業力検査では,第 1回 目 の検査の時,疑 問塑及び異常型を示 した もの2
例 と,4
日後第2
回 目の検査 を施行 した6
例 についてみ る と,第2
回 目が第 1回 目に比 較 しレベ/レの低下 をみた もの,上 昇 した もの 及び不変 な もの各2
例で,その間に一定 の傾 向はみ られ なか った .以上,Ps
yc homet r y
に よ り精神 医学的見地 よ り異常性 を有 してい ると思われ る者 が少数 み られ た ことは疑 い をいれ な い と ころ で あ る.因みに これ らの作業員は勤務上 に於 いて , その職務 ,責任の軽重,職場配置及びその他 労働条件等種 々考慮 を要す ることの他に,育に グ/レープ活動の中で共に労働す るとい う環 境の構成 ・調整等が望 ましい もの と考 え られ る.
睡眠状態 の調査 では,その被検者はPs
yc hO‑
nl e t r y
を 行 な った中で, 出来 るたけ正常範 囲内に あるものを撰択 した .以下,睡眠状態 の変動を各被検老群について考察 してみ る.1) 対照者 (陸上) :被検者は陸上に於い て職場 とは全 く関係のない静か な部屋 で脳波 記録 を行な ってい るので,他 の被検者群に比 べ最 も日常の生活環境に近い条件 で睡眠 して い る もの と考 え られ る.従 って これ を基準 と して他 の被検者群をながめ て み る こ とに す る.
この対照者群の睡眠脳波
pat t er n出現率 を
平 均値についてみる と,第4図の如 く全睡眠 時間 中浅眠状態 は26.4%を示 してお り,覚醒 状態は0. 6
%である.これは船 内で比較 的安 定 した睡眠を呈 してい る対照者 (船 内)の29%及び1
0%
に比較 しては るかに少な く,反対 に熟眠状態は最 も多 くな ってい る.特 に第3
図にみ られ る如 く,s t ageⅣ ・
Ⅴ の脳波pat ‑ t er n
出現率は24%及び35%と最 も高 くな って い る.また第5
図の如 く浅眠及び覚醒patt er n
の出現 回数及び持続率 は最 も少な くな ってい る.即ち,睡眠 中浅自民及び覚醒状態 の占める割 合や,熟眠状態は りこれ らの状態になる回数 とその持続す る程度等 は,他群 に比べ最 も低 く一番安定 した睡眠状態 と云 え よ う.
2)
対照者 (船 内) :浅眠状態については29%で,覚醒状態は1 0%であ り,陸上 の場合
に誘 いで低い値 を示 し,熟眠状態は60%で, 陸上 に次いで高い値 を示 している (第 4図).s t ageⅣ ・Ⅴ
の脳波pat t er n
出現率について み る と,それ ぞれ17. 3%及び21. 0%で,陸上
の場合 に次いで高い値 を示 してい る(第3
図).浅眠
pat t er n出現 回数は,陸上 0. 6や昼勤者
0. 9に次いで 1. 1を示 し,その持続率は陸上
4. 3
や夜勤者4.7
に次いで5.9
で,3者殆 ん ど大 差はない .覚醒pat t e r n出現 回数は,陸上及
49 0 ‑
福 島 ・清 水・斎 藤 び夜勤者 のJ. 1
に次 いで0. 6
であ り,鼠勤 者の0. 7
と同程度 で あ る. 持続率 は,陸上の場合 に次いで多 く4. 6
で夜勤 者4. 7
と殆 ん ど等 しい 値 を示 してい る (第5
図).即 ち,対 照者 (陸 上)に次 いで,浅眠及び 覚醒状 態が 少な くて熟眠状態が多 く, しば し ば浅眠 や覚醒状態 になるが ,す ぐまた深 い睡 眠 に入 る とい う傾 向 を示す ものであ る.浅眠 及 び覚醒
pat t er nの出現 回数及び持続率 は,
他群に比べ て前述 の如 く高低がみ られ るが , 総 じて底 ・夜勤者に比べ る と深 い睡眠 で あ り 安定 した陸眠であ る と云 え よ う.3)
作業員 (昼勤者及 び夜勤者)浅眠 ・覚醒 ・熟眠
pat t er nの出現率 につ い
て比較 す る と第4
図の如 く,昼勤 者が50% ・ 21% ・29%
であ るのに対 し,夜勤者は3 8%
・6% ・56%
とな ってお り,第3
図の各s t age
の 脳波pat t er nの出現率 につ いては,底勤者 は s t ageO ・
Ⅰの値が それ ぞれ21% ・32%
と夜 勤者 の6%・ 21%
に比べ て高 い .stage I V
IV につい ては大差 は ないが,夜勤者 はs t ageⅢ
が3 8%
と昼勤者 の1 3%
に比 べ て は る か に 高 く, これ は対照者 よ りも高 くな ってお り,昼 勤者 よ り深 い睡眠 に入 ってい る傾 向 を示 して い る.浅眠
pat t er nの出硯 回数及 び持続率につ い
てみ る と第5
図の如 く, 出現 回数は展勤者が0. 9
であ るのに対 し夜勤者は1. 5
で多いが ,そ の持続率は反対 に2 6. 5
%に対 し4. 6%
と非 常 に少 な くな ってい る .覚醒pat t er n
の出現 回 数 については,昼勤 者が0. 7
であ るが,夜勤 者はO. 1
と少ない .持続率 も前者が9. 5%
に対 し後者は4. 7%
と前者 同様 に低 くな ってしてる.即 ち展勤者 は夜勤 者に比べ て浅眠及 び覚醒 状 態 が多 く,浅眠状怠削こな る頻度は夜勤者 よ りは少 ないが,一度浅眠状態 にな る とその持 続 す る程度 は長 く,その間に しば しは覚醒状 態 にな り,その持続 も長 い傾 向に あ る.
これに反 し夜勤者 では昼勤者に比べ て, し ば しは浅眠状 態に な るが ,その持続 程度は短 く且つ, その間 に覚醒状態 に な る頻度及びそ
の持続 はは るか に少な く, また浅眠及び嘗醒 状 態の 占め る割合 も低 く,従 って睡眠深度 も 深 くな ってい るので,夜勤 者の方が安定 した 睡眠 と云 え よ う.しか し両者 とも対 照群 に比 較 す る と,いずれ も不安定 な睡眠状態 を呈 し ている .
以上の ことをま とめてみ ると,最 も安定 し た睡眠状態 は対照者 (陸 上)で,次 いで対照 者 (船 内)>作業員 (夜勤者)>作業員 (昼 勤者)の順 とな ってお り,船 内は陸上 と比べ る といずれ も睡眠状態は不 安 定 の 傾 向 に あ る. 尚睡眠時 間は平均 それ ぞれ
6. 6・6. 3
・4. 9・6. 7
時間 とな ってい る.一般的に考 えて,底 夜転 倒生活 を行 な う場 合,底 眠が 夜眠 に比べ て不安定 に なる ことは 推測 し得 る ところであ るが,本調査ではやや 反対 の傾 向がみ られ た原 因については種 々考 え られ るが ,次の よ うな諸 因子 の影響が あ る
もの と思 われ る.
陸 眠脳波 の記録は乗船 して よ り,夜眠 は
5
日目に,展 眠は7日目に夫 々行 な ってい るが , この時期 に於 け る両者の睡眠状態 につ いてみ9110,i ると,本調査 と同時 に行 な った中村教淫 らの ア ンケ‑ トに よる自覚的睡 眠 評 価 の 結 果 で は,両者 の差異 は殆 ん どない状態 であ る こと が示 され てい る .
更に陸眠 障害 とな る因子につ いてみた 同報 告 に よる と,展眠 では夜眠 に比べ て睡眠障 害 とな る体 内的要 因が少な くな ってお り,反対 に 同様に障害 となる居室 での人為的 因子は多 くな ってい る (そにで我 々は人為的因子 につ いては脳波記 録時に昼 ・夜眼 とも同一条件に な る よ う留意 した).
脳波記録時 に貼 付す る電極 や, その他未調 査 に原 因す る と思われ る.」的緊張 のある こ と も認 め られ た .即 ち第
1
回 目記録時 には心的 緊張 が なか った とは云 えな い と云 う者 が 多 く,第2
回 目には殆 ん ど気 にな らなか った と 云 ってい る者が多い点か ら も,或 る程度の慣 れ の影響 も無視 出来 ない .また同報告 に よる と,夜勤 は "ね む くなる〝 と云 う回答 が約60
%近 くで,展勤者 の約
20%
に比べ は るかに多 い点 か ら も一応.夜勤者 の方が睡 眠が深 くな る傾 向が ある と思われ る.以上 白竜号 内に於 け る作業員 の睡 眠状態 の 変動 を対照者 (陸上 ) と比較 して考察 したが ,
これ ら陸眠変動 を起 す原 因については ,本誌 別項 に 中村教授 らが報告 してい るので省略す るが,我 々が実際に船 内で体験 した ところに よる と,外的 な振動,衝撃 ,動揺 ,騒音等が ひ ど く,睡 眠障害 の 1主 因をな してい る こと が強 く感 じられ た .因みに 中村教授 らの同報 告 をみ て も,騒音,振動等 のために睡 眠障 害 を訴 える ものが19例 中15例 の高率 である.戟 々が脳 波的に考 察 した結果に於 いて も,陸上 に比べは るか に不安定 な睡眠状態 を呈 してい るがか,か る生活環境 の もとで労働 す る こ と は,それが危険性 を帯 びてい る本作業 に於い ては特 に問題 とな るこ とであろ う.
総 括
特殊 な生 活環境に於け る睡眠状態 を脳波的 に考 察す るために,石油掘 さ く装 置 で あ る
"白竜号〝 の作業員 (展勤者
7
名夜勤者3
名) につ いて,睡眠 脳波記録 を行 な うと共 に,対 照者 として弘前大学 医学部職 員3
名につい て 海上 及び陸上 に於 いて 同様 に脳波記録を行 なって次 の結果 を得 た .
1) 対照者 (陸上) :睡眠 中最 も浅眠 ・覚 醒状態 が少な く, また この状 態 にな る頻 度及 び持続 す る程度 も少 な く,且つ睡 眠 深度 も深 くて,他 の被 検者群 に比べ て最 も安定 した睡 眠状態 であ る .
2)
対照者 (船 内) :前者 に 次いで浅眠 ・覚醒状 態が少 な くて熟眠状態 が 多 く, しば しば浅 眠 ・覚醒状態 にな るが,長 く続 かず にす ぐまた熟眠状態 に入 る傾 向を示 し,陸上 の場合 に次 いで安定 した睡眠状態 であ る.
3)夜勤期 の屈眠 :昼勤期 の夜眠 に比
べ て しば しば浅眠状態 になるが,その持続は 短 く且つ その間に覚醒状態 にな る頻度及 び持 続 もは るか に少ない .また浅眠 ・覚醒状態が 占め る割 合 も低 く,睡眠 深度 も若干深 くな っ てお り,対照群 に次いで安定 な睡眠状態 を呈 してい る.4)昼勤期 の夜眠 :作 業夜勤期 の
底眠 に比べ浅眠 ・覚醒状態 が多 く,浅眠状態 にな る頻度 は夜勤者 よ りは少ないが ,その持 続 す る程 度は長 くその間 しば しは覚醒状態 と な り,その持続 も長 く,浅 眠 状 態 と云 え よラ.
尚被検者 を精神 医学的見地 よ り考察 し,被 検者 としての内的諸 因子 をながめ るために,
Ps ychomet r y
を行 な ったが,19
例 中4
例 に異 常性 を もつ と考 え られ る ものがみ られ た .稿を終るに当 り御指導御校閲を賜った和田豊治教 授並びに中村正教授に衷心より感謝 の意 を表 しま す .
文 献