一軸異方性媒質からの光波の反射に関する一考察
(昭和55年9月18日 原稿受付)
電子工学科羽野一則
AStudy on the ReHection of Light Waves from Uniaxial Anisotropic Media
by Kazunori HANO
Synopsis
Although the problems on reHection of a plane wave from uniaxial anisotropi¢media are of great
importance as regarding polarization cφversion in thin−film optical−waveguide type devices, little con・
sideration seems to be given to two, longitudinal and polar, con6gurations.
In this paper we discuss the reflection properties in these con丘gurations in some detail. It is shown
that for large incidence angles the reHeCted TE and TM waves are complementarily inHuenced by thechanges of refractive index of an extraordinary wave due to the rotation of optic axis in the longitudinal con6guration, and then the coupling of TE and TM waves is e伍cient. In the polar, on the other hand,
only the TE waves are effected by the rotation of optic axis but the reflected TM waves are independent of it, and this leads to the weak TE−TM coupling.
るが,Polar形状では異常波の臨界角は光軸の回転とと L まえがき もに変化する。また,TE#TMの変換率は, Longitudinal 異方性媒質からの光波の反射による偏波面変換は,薄 形状の場合には,正常波の臨界角で最大のピーク値をと 膜光導波路構造を用いた光変調器,光スイッチや光アイ るが,Polar形状の場合には正常波の臨界角で0となる。
ソレ_タなどの基本問題として重要である。1)〜3)この偏 また,2.3で述べるようにLongitudina1形状の方がPo一 波面変換に寄与する異方性媒質の形状として,Longitu・ lar形状より大きな変換率を示すのは入射角が大きい場 dinal形状とPolar形状とが扱われているが1),これらの 合であって,逆に入射角が小さい場合は, Polar形状の 形状における電磁波の反射特性の詳細に関しては報告さ 場合の方が大きくなると考えられる。これは入射角の大小
れていないようである。 によってTM波の電界ベクトルの境界に対する接線成
本論文の目的は単軸結晶の光軸を回転させることに 分と法線成分とで,一方が他方より大きくなったり小さよって異方性媒質の誘電率要素を変化させ,Longitudi・ くなったりするためである。入射角が大きい場合・Lon・
nalとPolarの形状の違いによるTE波とTM波の反 gitudinal形状ではTM波とTE波とが相補的に光軸回 射特性の違いを明らかにすることである。媒質の 異方 転の影響を受けるため・TM波とTE波との結合が強く 性、、が生じるのは光波の電界ベクトルの 見る、、媒質の なるが,Polar形状ではTE波のみがこの影響を受ける 性質が方向により異なるためである4)が,このために ためTE波とTM波との結合は弱くなる・これらの事柄
Longitudinal形状とPolar形状では反射特性が大きく を確iかめるためにTM波だけが光軸回転の効果を受け
異なる。つまり,Longitudinal形状では正常波と異常波 、 るEquatorial形状をも検討する。のそれぞれの全反射の臨界角は光軸の回転に無関係とな
2. 反射係数と変換係数 ε11一η゜
ε22=ηぎsin2ζ十η2 COS2ζ 図1のような構造での反射係数1〜MM, REEや変換係 ε、、=η』cos2ζ+毎sin2ζ
数RM4〜EMはすでに求めてあるのでu 5)以下では数値 ε12=ε13=0
例の結果のみを与え,これらに対して検討を加えること ε2、=(擢_η』)sinζcosζ にする。ここで,
(2)
(a)絶対値
1.0
0.8
isotr ic
κ (Σ6
anisot ropic
o.4
0.2 2
図1 構造と座標系
1〜w=11〜⇒ピ輪:TM波入射時のTM波への反射
係数 o
REE=IREE Iピ鬼 :TE波入射時のTE波への反射係数
R。。−IR。、1・〔TE波入射時のTM波への変換 W
係数
REM=11〜EM I〆・・:TM波入射時のTE波への変換 係数
である。光軸回転による誘電率テ/ソルは一般に次式と なる。ただし,ε。は真空中の誘電率である。
巨〕一 oi;iiii iiiト ω 号
数値例として,等方性媒質にはZnS(ηρ=2.345,⑧ λo=0.6328μm),異方性媒質にはLiNbO3(η。=2.288,
%,=2.207,⑧λo=0.632勘m)を用いている。
2.1Longitudina1形状
0・93 0・94 0.95 0.96 0・97 0・98 0.99 1・0
(b)位、 相
・のとき,誘甦テン・ルの各成分は次式で与えられ ゜σ,4幡。.,6、。.97。.,、ぴ991.。
る。 ・・ 〉 図2 TM波の伎射係薮(Longitudina1形状)
こ咋。。,。、は正常波と難波の屈折率であり,ζは 1θ (a)絶対値
y軸からの光軸の回転角である。
図2,図3,図4に,入射角φに対して,それぞれ1〜MM,
REε, RMε(REM)の大きさと位相を示している。これら
0.8 (a)絶対値
1.O
0.2
冗
旦2
0
093 0・94 085 0・96 0・97 0・98 0・99 1・0
(b)位 相
0.2
0・94 095 096 0し97 098 0・99 1・0 0
(ユ93 0・94 095 ぴ96 〔197 σ98 0・99 10
(b)位 相
図3 TE波の反射係数(Longitudinal形状) 図4 TE骨TM変換係数(Longitudina1形状)
の図では,入射角の2ヵ所で特性が急変しているが,こ E o
の2点は正常波と異常波の臨界角に対応するものである.正常波と異常波の屈折率凡,N・はそれぞれ 1
2V8=726 (3)
ノV3ニ{η膓η}+(η2一η』)sin2ζ・η2プ}/@2 sin2ζ +η3COS2ζ) (4)
図5 TM波の電界ペク〔
である。ここでμ、プは実効屈折率で等方性媒質の屈折率をηρ,入射角をφとすると めにTE波とTM波の相互作用が大きくなるからであ
η、ノニηρsinφ (5) る1}が,その位相特性図4(b)は光軸の回転角にほとんど である。正常波と異常波に対する臨界角はそれぞれ 関係がないことがわかる。これは,φ〉φ。、 では相反関係φo、=sin−1(%o畑ρ)=0.9757 (6) によりψEE+ψMM=2ψME±(π/2)が常に成立し・図2(b)・
φ、。=sin−1@、/πρ)=0.9412 (7) 図3(b)のψEEとψMMのζへの依存性が互いに打ち消し となって,光軸の回転角ζとは無関係に定まる。図2(a), 合っているからである。φ、、<φ<φ。,でも同様な打ち
(b)と図3(a),(b)とを比較すれぽ,ζ=5°の時,φ〉φ,。 消し合いが見られる。この打ち消し合いは光軸がγ一2面 で1〜EEがほとんど全反射的であり,1〜MMは小さく,位相 内で回転しており,この効果をTE波とTM波とで分け
もほとんど0であるのは,このとき光軸がほとんどy軸 持つからであると考えられる。悟MEIの大きさに関し
方向にあるため異方性媒質中の異常波はほとんどTE ての, Longitudina1形状とPolar形状との比較検討は
波になっており,一方正常波はほとんどTM波となって 2.3で行う、。いるからであって,ζが大きくなると,この状況は逆にな 2・2 Polar形状
る。このように,ζによってTE波, TM波ともに変化す このとき,誘電率テンソルの各成分は次式となる。
るのは次の理由による。すなわち,TE波の電界ベクトル ε11=嬬cos2ζ+%2 sin2ζ はy方向にあり,TM波のそれは図の入射角の範囲では ε22=η…sin2ζ+η2 cos2ζ ほとんどz方向にある(図5参照)。このため,光軸がナz ε33=硝
面内で回転すると,この回転によって,それぞれの電界 ε12=(η2一ηぎ)sinζ・COSζ
E,とE、の見る屈折率が(2)に従ってそれぞれ隔や ε13=ε23=0
(8)
漏のように変化するからである。φ<φ・cでは ここで,ζはy軸からの光軸の回転角である。図6・図 lR〃Ml,11〜Eヨ は小さくなっているが,このとき正常 7,図8に,入射角に対して,それぞれR〃M,1〜EE,
波,異常波ともに伝搬波となっている。φoc<φでは RME(1〜EM)の大きさと位相を示している。 Longitudinal lR棚1やIREEIはほとんど1になっているが,この と異なり,1〜棚はζには依存せず,全反射の臨界角が1 とき,正常波と異常波は消滅波となっていわゆる全反射 ヵ所であるが,1〜Eガは2ヵ所あり,そのうちの1つはζ 状態になっている。φ・,〈φ<φ促では,ほとんど一定に とともに変化している。また,RMEもζとともに変化す なっているが,このとき,正常波は伝搬波となり,異常 る。これらの臨界角は正常波と異常波に対するものであ 波は消滅波となった半漏れ状態である。図2(b),図3(b) る。正常波と異常波の屈折率」W∧らはそれぞれ の位相特性は,φ<φ。。の近傍で負の傾きを呈しており, 1V8=η6 ⑨
このことは負の光線シフトを意味する6)が,光線のシフ N2=嬬一@多一嬬)sin2ζ π6∫/ηぎ ⑩ トに関しては,図2(b),図3(b)のφ訟φ。、付近での振幅特 であり,臨界角はそれぞれ
性の急激な変化を考慮に入れねぽならないと思われ φ。、=sin−1(η。/%ρ)=0.9757 ⑪
る7)・ 一 φ.、=、in−1{。。。,/(。,。』・。・・ζ+・2・i・・ζ)}0力
図4(a)では,IRMEIがφゴφ。、でピーク値を不すのは,TE波またはTM波が基板中へ深く浸透し,そのた となる。このように,異常波の臨界角はζに依存して変
0.8
0.6
0.4
O・2
π
五2
(a)絶対値
(a)絶対値 1.00・94 0・95 σ96 0 97 0・98 0.99 1・0
(b)位 相
↑ 蓼
妻
855
04
工
2
0・93 ひ94 0・95 0・96 0・97 0・98 0・99 1・0
(b)位 相
51n〆→ 0
0・94 0二95 0 96 037 0・98 0・99 1.0 0・94 ◎・95 0・鵠 σ97 098 099 1・0
◎
図7 TE波の反射係数(Pol訂形状〉
図6 TM波の反射係数(Po18r形状)
る。今,光軸が分y面内で回転すると,TE波の電界はy 化することになる。これをもとに,図6,図7を検討す 方向にあるため,⑧より』らの見る屈折率は厄=
ると,次のようになる。 嬬sin2ζ+η2 COS2ζとなり光軸の回転による屈折率の変
まず,TE波の電界ベクトルはy方向にあり,TM波の 化を受けることになるが, TM波は2方向にあるため
電界ベクトルは図5に示すようにほとんど2方向にあ E・≒0とすると,(8)よりE.の見る屈折率は厄=η6(a)絶対値 が,これは,IRMEiがη,ノ=κ。となる入射角で零とな
0・6
0.4
0.2
芸
0
るからである。この入射角に対してLongitudinalでは TE波とTM波の位相整合がとれて IRMdは最大の
ピークを示したが,PolarではTE波とTM波とで逆位
相となったため, IRMEIは0となるものと思われる。2.3Longitudina1形状とPolar形状との比較
図4(a)と図8(a)を比較すると,一般にLongitudinalの 方がPolarより変換率が大きいことがわかるが,これは 次のように説明できる。入射角が充分大きいときには,TM波の電界は図5に示すように2成分のみと考えて
よい。一方,TE波はy成分のみである。 TE波とTM波との結合はLongitudina1形状とPolar形状に対して Maxwellの方程式より
,…−r揖・
@「二㌘三}[》=・o⑳(b)位 相 (Longitudinal形状)
{言劃[》一・⑭
ま 1 (Polar形状)ハ ま となる。ここで,κはZ方向の伝搬定数を自由空間中の波 数島で規格化したものである。Eズゴ0とすると⇔では
l TE波とTM波はE,とE、とがε2、を通じて結合する
1 が,⑭では瓦とE、との結合は0となって,Longitudi・
ロ
{ nal形状では結合し,Polar形状では結合しないことにな 2 る。このことは,2.1と2.2で述べたことがらと一致す
25 4 6541 る。つまり,Longitudinal形状では・光軸の回転つま 6 り非対角要素の大きさの効果はTE波とTM波の両者
ロ肪 に同じように作用するが,Polar形状ではTE波のみに
|曲φ→ 作用し,TM波への効果繭めて小さ・・からであると考
0・94 0・95 0・96 0・97 ◎・98 0・99 1・O
えてよい。
図8 @TE榊TM変換係数(Pola「形状) 2.4 Equatoria1形状
となり,光軸の影響を受けないことになる。したがって, このとき,TE波とTM波との結合はなく,TE波は等 R朋は異常波の臨界角のζへの依存性の影響を受ける 方性媒質における場合と全く同じになるため・ここでは が,R願は異常波の影響はほとんど受けずに,ほとんど TM波のみについて述べる。図9に,入射角φに対して 正常波に支配されることになる。この状況は,2.4で述べ RMMの位相特性を示している。全反射の場合には・
るEquatorialの逆の場合になっている。 Equatorialで IR凧1は常に1となる。このとき,異方性媒質中の異常 は異常波がTM波となる。一方,1〜舵はTE波とTM波 波の波面は傾いている8)。これは異常波のz方向の伝搬
との相互作用を示す係数であるから,正常波と異常波の 定数が複素数になる事実に基づいている。異常波の臨界 両方の影響を受けることになる。φびφ促では,R舵の位 角は
相はLongitudinalと異なり,不連続的に変化している φc=sin−1(、/踊sin2ζ+㎡cos2ζ/ηρ) ⑮
五
変換に重要な形状であるLongitudinal形状とPolar形
状を中心として検討を行い,これらの特長や相違点なら びに特性の物理的説明を与えた。つまり,Longitudina1 形状では正常波と異常波は光軸の回転角に無関係な臨界角を持ち,TE波とTM波との結合に寄与する誘電率テ
ンソルの非対角要素,すなわち光軸の回転の影響はTE 波とTM波に対して同程度の効果を相補的に及ぼすが,Polar形状では,異常波の臨界角は光軸の回転角ととも に変化し,又,光軸の回転はTM波には影響せず,ほと
んどTE波のみへ効果を及ぼす。このために1回の反射 でのTE⇔TMの変換率は導波路では一般にLongitudi・
nal形状の方がPolar形状より大きいことになる。これ らの要因は光波の電界ベクトルの 見る、、屈折率がTE 波とTM波とで異なるところにある。
094 (L95 0㌦96 0・97 0・98 0・99 1・0
参考文献
図9 TM波の反射係数の位相(E卯atorial形状) 1)SWa㎎, M. ShaE and J. n Crow, J. ApPl、 Ph)鳳,43,4,
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で与えられる.ここ1・ζは・軸と光軸とのなす角である. 2)M;潔ll㌫LT「an&Mi wave The°「y&鳳
この位相特性がPolar形状の場合のψEE(図7)と非 3)H. Kit司ima and KHano, J. Opt. Soc. Am。68,12,.1693
常に似かよっているのは,2.2で述べたように,どちらの (1978)・櫟・おいても電界の方向力・光軸の回転の面内にあり, 〃),撫=罵IP「鎗cip1 f°pticS 5th磁 ch14
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である。 6)MMcGuirk and C K・CamigliaJ・Opt・Soc・Am・67・1・
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一軸異方性媒質からの光波の反射問題について,偏波面 441(1974)・