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教授・学習過程の実験的分析(1)1)

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茨城大学教育学部紀要(教育科学)31号(1982)157−168      157

教授・学習過程の実験的分析(1)1)

分数指導における慣習的方法ピアジェ的方法,プログラム学習の比較一

*       **

馬場道夫 ・吉村知恵子

(1981年10月15日受理)

Exper㎞ental Analyses of Teaching/Learning Processes(1):

Comparisons between Conventional Method, Piagetion Method and Progra㎜ed Learning in T田ching Calculation of Fractions。

Michio BABA and Chieko YosHIMuRA

(Received October 15,1981)

教授方法の研究法については既に多くの問題が指摘されて来ているが,従来の実験群統制群法 についても馬場(1976)の研究や考察において検討されるべきいくつかの点が明らかにされた。しかし,

教授・学習過程の分析には,その前提として実験的方法をとることも必要である。つまり,特定 の教授法が他の方法に比較して全体として有効であることが客観的に示されなければ,その方法 を更に分析したりその方法の部分や要因の有効性を検討することは,あまり意味がない。勿論,

適性・処遇交互作用のように,個人によって教授法の効果に違いがあって,全体としては効果が 生じないことも考えられるから,全体として効果がないからといって,それだけで否定されるべ きものではない。本研究では,個人の認知・学習過程に視点を置きながら,実験群法を採用して,

教授・学習過程を分析・究明しようとするものである。また,認知・学習過程,特にその教授・

学習過程を明らかにするたあには,それにかかわる心理過程に関する仮説を必要とするだろう。

      一 Pなる教授法とその学習効果の検討では十分でないことは,これまでのぼう大な研究がポしてい

るように思われる。ある教授法に対応して,ある心理学的過程が存在すると仮定し,その仮定に 従ってどのような学習効果が生ずるかが予測され,その予測と実際の結果が一致するかどうかで,

その心理過程を明らかにすることができるであろう。要するに,ある教授法から生ずる心理学的 過程を仮説し,その結果を検討することによって,教授・学習過程を明らかにしようとするもの である。本研究は,そのような一連の実験的研究の最初の試みとして位置づけられるも

のである。

本実験では,その最初の素材として,分数計算を採りあげた。分数の理解は,一般にかなり困難

(P24)

であり,国立教育研究所の調査(有本1977)でも,線分の長さを分数で表わす3年内容の問題が,4年生で 50%以下の正答率にな( ̲いる.分数計算が,心理学的にどのような過程であるかG。即δ(1977)

に従って分析してみると,計算そのものは規則学習であり,それに分数の概念学習を利用したものであ

1)本論文は吉村(旧姓深谷)知恵子の卒業論文を馬場の理論的見解の下に馬場が修正,加筆し,まとめた。

*茨城大学教育学部教育心理学科 Department of Educational Psychology, Ibaraki University

**勝田市立三反田小学校,Mitanda Shoo1, Katsuta, Ibaraki Pref㏄ture.

(2)

るということができる。分数の概念の難かしさには,分数の意味の多様性があげられるだろう。

大きくいっても割合分数と量としての分数があり,そのほか分割操作として,商の表現としても 分数が用いられている。この様な多様な分数の概念を理解して,その場面に応じて適切に利用し,

計算することが,まずできなければならない。ここでは,その基礎的分数概念の形成から初歩的 分数計算までの過程を研究素材として採りあげることとする。

ところで,指導法の問題と学習過程は切り離すことはできないであろう。一般に学校教育では,

何等かの指導が教師によって行われて,生徒の学習が進行するからである。海外では発見学習の 研究が数多く行われ,現在でもその傾向は続いていると思われる。しかし,分数計算のように,

分数式の表現は全く人為的なものであり,計算法については,既習の四則計算法が単純に応用で きる場合には,殊更発見学習を用いることは不適当である。他方,社会・経済的地位の低い家庭 の児童についての大規模な研究(Follow Through and Planned Variation Programs)では,

教師の指示に重点をおく構造化された教授活動は,自由な生徒中心で構造化されない教授より も,生徒の成績との正の関係が見られ,監督された座席での勉強を強調し,かなり構造化された 材料をスモール・ステップで学習させることが重要であることが,Rosenshine(1976)によって示唆 されている。ただし,社会・経済的水準の高い児童では逆の傾向があるという。また,プログラム学 習は,成人における学習を中心にかなりの普及を見せており,馬場(1979)の大学生における研究でも有 効かつ能率的である。いずれにしても,スモール・ステップの原理を中心に分数指導のプログラ ム学習を行わせることは,そのつまずきを解除するために有効な方法であると考えられる。松浦(1972)

の規則学習についての研究においても,法則の提示による説明的方法がすぐれていた。また,

Fra ncis(1975)は,概念学習で言語的提示が,発見学習より優っていることを示した。Ca孟dwel1(1977)

らは,CAIを用いて記号置換規則を小学5,6年生に教え,単純な規則の場合には規則の提示が規 則学習にとって有利で,複雑な規則の場合はステップの差の大きい高次単位学習に有意に良い転 移効果が見られた。

以上のように,規則が単純で,その学習の転移を幅広く考えない場合には,スモール・ステッ プによるプログラム学習が有利のように思われるが,分数学習の教育効果を考える場合には,そ の転移効果は更に幅広く,日常生活や実際の事象との対応が必要である。量の概念の発達には,

あまりにも有名なPiagetら(1965)の研究があり,それは実事象との対応において研究がされている。ま た,一般の見解として操作の重要性が指摘され,児童による具体物の操作が知的発達にとって必

要であると考えられて来ている。Piaget(1975)自身も対象の認識は対象に対する働きかけとその変型から (P3の      (P75)生ずるとし,言語による教育の補助としての映像の教育の必要を認めながらも,能動的方法を重視した。

プログラム学習については,言語教育のような知識の習得についての優越を認めながら,推論を

      (P79)一定の枠内にはあて,創造を排除しようとするとしている。他方,Piagetの理論の教育への適

用については,かなりの批判もあり,Anthony(1977)は, Piagetのいう児童による対象の能動的操作 が知的発達の教育の必要な部分であるとする見解が,経験的証拠に矛盾し,観察学習も有効である

としている。具体物の操作が知的発達にとって必要かどうかは別にして,それが学習に対して促 進的転移効果を持つことは期待できるところである。この種の実践的研究はかなり多いのではな いかと考えられるが,厳密な形での比較実験は少ないように思われる。

以上の様な理論的背景から,本研究においては,分数指導においてプログラム学習,ピアジェ

的方法,それに我国で行われている教科書中心の3つの方法を試み,その教授,学習過程を分析

することにした。

(3)

馬場他:教授。学習過程の実験的分析(1)      159

方     法

被験児:小学校3年生,44名,男性24名,女性20名,同一のクラスに属する。

手続き:被験児は算数の成績をもとにできるだけ等質な3群に分けられた。1群は,15名でピ アジェ的方法が用いられる群。皿群はプログラム冊子が与えられる。15名。皿群は,14名で通常 の授業法で算数教科書による。3群とも男児は8名,女児は1,皿群が7名で皿群のみ6名であっ

た。

まず,形成的評価の可能な事前テストが全員に与えられた。テストの内容は,分数の理解,1 桁の加算と減算,その応用問題,分数計算とその応用問題である。全部で17問,67項であり,全 部できれば67点が与えられる。なお,テストは分数計算の準備的学力をみる準備問題と,その学 習過程ステップを示す過程問題と学習目標行為を示す目標問題に分類される。テスト問題は論文

(付表1・2)

末尾に示してある。実験授業は事前テストの4日後より,4日間5校時を利用して行われ,翌日 事前テストと同一内容の事後テストが行われた。実験授業にはそれぞれ別の教室が用いられた。

教授の方法

1群のピアジェ的学習指導法は,具体物(色水や粘土,紙テープ)を最初に提示し,後に線 分図や数直線を用いて指導する一斉授業の形態で行われたが,できるだけ個人指導をとり入れる ようにした。具体物を操作する時は,個人あるいは二人一組になり行わせた。概略を述べると次 のようである。

第1時,具体物を用いて等分した大きさを分数で表わし,量の分数として理解させる。色水,

ピーかを用いて去,影暑dlを作らせる・

第2時,数としての分数を理解させ,分数,分母,分子を知る。粘土で作ったようかんを音,

暑曙本になるように線を引かせる・算数ノートに学習のまとあをし練習問題をとく・

第3時,分数の大きさをくらべる.紙テープ,はさみを用いて,暑,去,1,書准を小さし・

順に並びかえさせる妨〜1につし・て大きい順に並びかえさせる・学習をまと癩習問題を解く・

第4時,分数の加算をビーカー,色水,紙テープ,模造紙を用いて行わせ,数直線を用いて考 え方をまとめ,練習問題を解く。

第5時,分数の減算を第4時と同じくビーカー,色水,模造紙を用いて行わせ,数直線で考え 方をまとめ,練習問題を解く。なお,授業は,当時大学4年次であった吉村が担当した。

皿群 Gagneの累積的学習理論によってプログラム学習冊子(構造図は付表3に示した)

を作り,これを友人の学生に配布してもらい,学習させた。冊子は5冊作成し,1校時に1冊ず つ児童が個別学習するようにさせた。

冊子1.互除法による分数の導入

冊子2.用語「分数」 「分母」 「分子」を知る。数としての分数理解 冊子3.分数の数直線化と大小比較

冊子4.同分母分数の加法計算 冊子5.同分母分数の減法計算

上記の冊子の内容は,「水道方式」を参考にして作成した。また,各時のまとめと練習問題は他 の2群と同一のものが各冊子末尾に加えられた。

皿群 教科書による説明的教授法,算数指導書に書かれている指導案を用いる。担任教師に よって授業が行われた。

(4)

第1時,測定の操作を通して端数部分を基準量の等分した大きさで表わすことができることを 理解させ,分数を量の分数としても理解できるようにする。紙テープ,はさみ,模造紙を用いて,

2つ分と半分,壱mの2つ分の長さは何mか,などを線分図で解く。学習のまとめをし,練習問

題を解く。

第2時,数としての分数理解,「分数」「分母」 「分子」を知る。線分図や数直線を用いて,

単位分数のいくつ分として分数を分かるようにする。分数式を数直線上に位置づけさせる。学習 のまとめをし,練習問題を解く。

第3時,分数の大きさの比較を数直線を用いて行わせ,大小関係を不等号を用いて表わすこと ができるようにする。学習のまとめをし,練習問題を解く。

第4時,分数の加算を文章題を例にしながら,線分図を用いて考えさせる。数直線を用いて分 数の加算を行わせる。学習のまとめを行い,練習問題を解く。

第5時,分数の減算を文章題を例にしながら,線分図を用いて理解させ,数直線を用いて計算 をさせる。学習のまとめをし,練習問題を解く。

以上のように3群の授業は各時対応していて,できるだけ方法上の違いのみになるように条件 統制されている。勿論,実施時間も,それぞれ同じ校時を利用している。

結     果

実験期間中に被験児3名が1日ずつ欠席したため,その3名をデータ処理から除き,1群14名

(男8,女6),H群13名(男6,女7),皿群14名(男8,女6)となった。事前,事後テス トの結果は第1表のようである。得点分布は,事前テストは低得点に,事後テストは高得点に偏 づでいるので,H一検定が用いられたが,各群間に有意の差の見られないことは明白である。事 後テストには,皿群・1群・n群の順に成績が良い傾向が見られる。慣習的教授法がかなり良い 成果を収あていることが推定される。ところで,初めに考えられたようにプログラム学習は一般 に特定の規則の単純な適用には向いていても,転移効果は少ないと考えられ,ピアジェ的方法で は,より広い転移効果を示すと予想される。そこで事後テストにおける計算問題10題と最後の応 用問題4題を抜き出して,別に計算してみると,1群は9点の者8人,10点の者6人であり,H 群は,7点以下2人,9点7人,10点4人,皿群は9点以下4人,10点が10人となり,やはり皿 群の成績が良く,次いで1群,H群の順になっている。

第1表a 事前テストの成績         第1表b 事後テストの成績 群 平 均 中央値 H・テスト     群 平 均 中央値 H・テスト

1 33ユ 28.5 1 59.2 61.0

潔ヨ=0.979 !=3898

H 36.5 34.0

55.7 57.0

P>.60 P>.10

皿 34.1 33.5 皿 59.9 64.5

しかし,応用問題4題の成績は第2表のようになっている。1群及び皿群の優位は明らかであ

る。表中の数字は,人数で,事後テストの得点から事前テストの得点を減じ2点を境に上下に分

類したものである。期待されたピアジェ的方法の優位を示唆しているようである。ピアジェ的方

法とプログラム学習が学生によって行われ,慣習的方法が現職の担任の教諭によって行われたこ

(5)

馬場他:教授・学習過程の実験的分析(1)      161

とから考えると,このことはかなり意味のあることと思われる。

第2表 応用問題の事前テストと事後テストの得点差(単位は人)

    群成績

1

皿 計

2点以上 10 2 85 2α5 2点以下 4 11

5.5

20.5

計 14 13 140 410

2点の者はそれぞれ上下で2分して各細胞に入れられた。

z2・=12841    df=2    P〈.01

次に,児童1人ひとりの学習過程を3表に示す11段階に分けて記録・整理した。それに合わせ て事後テストの成績がどの段階に達しているかを明らかにしたものが第4表である。上段2列目 の○×は,それぞれの段階が完全に習得されたかどうかを示したもので,○は習得を示し,×は その習得が未完成であることを示している。相互に関連させた段階ごとにその習得・未習得の4 つの組み合わせの人数を各細胞の中に記入してある。表中に見られる傾向を指摘してみると,

群,皿群の2→3段階の移行が良くなく,Oxの人数がそれぞれ6人,7人と多くなっているのに 対して,皿群はこれが2人と少ない。これは分子が1でない分数の理解が十分でないことを示し ている。このほか皿群では,分子と分母が等しい分数は1であることを習得する5段階の学習に 欠陥があるようで,Ox,x×の人数が,それぞれ5人,3人となっている。このように見て来

ると,プログラム学習には,テキスト作成上の欠陥があった可能性があると考えられる。1群,

皿群には,最終の11段階を除いて大きなつまずきが見られない。1群,皿群が13人,14人とそれ それ少人数の授業で,かなり細かい個別指導ができる状態であったため,指導案上の欠陥が適宜 補正されたことも考えられる。これに対してプログラム学習を個人個人で行った皿群は,プログ

ラム・テキストで十分理解できないとしても,教師から補足・修正を受けずに学習をしてしまう 可能性がある。これは,ある意味でプログラム学習の本質的欠点であるといってもよい。以上,

形成的評価による分析は,一部に欠陥が見られるものの,全体として学習がスムーズに進行した ことを示している。全体として3群とも大差なく学習が進行したが,プログラム学習群のみが最 後の11段階でっまずきを見せたということができるだろう。

第3表学習段階 第4表 学習の形成的評価(単位は人数)

1 分数とは何か

1

2 分子が1となる単位分数 段階 Od

○×

×X xO ○○

○×

XX xO ○○ Ox XX xO

3 分子が1でない分数 1→2 14 12

1

12 2

4 分数,分母,分子の用語が分かる 2→3 8 6

5 7 1

10 2

1 1

5 分子と分母の等しい分数は1である 3→4 5 3

2

4

5 3

5 11

1

2

6 分数の大きさと数直線を関係づける 4→5 8

1 1

4 4 5 3 12 2 7 同分母真分数相互の大小判定は分子の大小による 5→6 8 4

1 1

2

3

8

7

6

1

8 数概念を理解している 6→7 6 2

1

5 8

1 1

3 10 2

1 1

9 整数1桁の加法・減法ができる 7→8

7

4

2 1

2 9 2 6 5

1

2

10 減法は加法の逆演算である 8→9 13 13 13

1

11 同分母分数の加法・減法ができ,それを用いて文 9→10 12

1

13 13

1

章題を解くことができる。 10→11 8

5 1

2 11

7

7

(6)

考     察

本研究当初に期待されたように,ピアジェ的方法は,プログラム学習に比べて,転移力におい て大であった。これは,事後テストの最後の4つの応用問題の成績から見て明らかである。念の ため,第2表の結果のうち1群とII群を取り出し,z2一検定をすると,z2=8.575,df=1,P<

.01で有意の差が得られる。他方教科書を中心とした皿群は,やはりH群より有意によい成績を 示し(z2=5828,df=1,P〈・05),1群とほぼ同等の結果を得ている。このことは,何を 意味するのか検討が必要であろう。

慣習的指導法を用いた皿群が,そのように良い成績を収めた理由は,色々考えられる。第1に,

皿群は担任の教師が少人数の児童を指導したこと。しかも,その指導時間は5校時に及び,その 間,他の1,H群は見なれぬ学生に指導された。特にプログラム学習群は,冊子を与えられ,い わば放置されたという印象を与えた可能性もある。本研究では,教師と児童の社会的人間関係に ついて,全く調査が行われていないし,児童のその場面での学習意欲もことさら調べられていな いので,この点について確認できることは何もない。教授・学習過程を詳細に明らかにするため には,この種の配慮は常に必要であった。第2の理由は,特に1群との比較においてである。1 群のピアジェ的方法の指導案が良くできており,指導が良く行われたことは,形成的評価の分 析からほぼ明らかである。第3段階の指導に多少の問題があったとしても,その後回復している

し,最終の分数計算では,10点満点で,すべてが9点以上,皿群には,5点,4点,0点が1人 ずつ含まれていた。やはり一斉指導による見逃しがあったと見るべきだろう。応用問題では4点 満点で,1,皿群共3点以上が10人で,1群は2点が4人,皿群は2点が3人,1点が1人とな っている。1群の指導が現職の熟練した教師であれば更に成績のあがることが期待されるので,

1群の優位はかなり可能性のあることになる。従っで1群との関係でいうと,皿群が良い成績を収 めたのは,実験仮説から考えられるものというより,見かけ上の問題ということになり,慣習 的指導法は,ピアジェ的方法に比べて若干劣るのではないかと予想される。但し,用いた用具,

準備にかける時間と手間を考えると,現行の指導法はかなり能率的であると言わなければならな い。つまり教科書と若干の操作を行なわせるだけで,結構良い成果をあげているのである。しか しまた,通常の40数人のクラスで授業を行ったならば,このような良い成果をあげられるか疑問 もある。一斉授業によって生ずる,修正されるべき児童の学習行為を見落すことが更に増加すると 考えられるからである。この点からいっても,1人ひとりに具体的操作の行為を行わせるピアジ

エ的方法は,優れた方法であると考えられる。

最後にプログラム学習群の成績が,他の2群に比べあまり良くなかったことが問題である。プ ログラム学習の性質からすれば,少なくとも分数計算は他群に比べ劣ることは推測できない。事 後テストの10題の計算問題でも,他の2群に有意の差はないとしても,やや劣る傾向にある。「結 果」において示したように10点をとった人数でいうと,1群6人,且群4人,皿群10人となって いる。しかもn群には0点と7点が1人ずつ含まれている。H群の成績の劣る理由としては,既 に指摘された・担任教師によらず学生によって冊子が与えられて,1人ひとり独立で学習した理 由のほかに・そのたδ6にまた,教師による補足,修正が受けられにくいという理由が考えられる。

仮りにプログラム中に欠陥があり,そのたあに生徒がっまずいたとしても,教師との対面授業で

あれば,質問したり,教師の注意によって,補足修正を受けることができる。このことのできな

いことは,いわばプログラム学習の本質的欠陥でもあり,プログラムは十分周到に検討され完成

(7)

馬場他:教授・学習過程の実験的分析(1)      163

されたものでなければならないことを示している。この点,本研究で使用されたプログラムは自 作のものであり,実際に他の多くの児童に用いられたことのない,未検証のものであった。ただ

し,プログラムの内容は,むしろ形成的評価のテストに沿ったものであり,また,各時の終りに 行う練習問題も,3群とも同一のものが用いられた。また,互除法に問題は感じられるものの,

他の群も同様の方法をとっているので,これをプログラムの内容そのものの欠陥ということはで きない。結局,推定の範囲をこえないが,プログラムや教授順序・内容に問題があったとしても,

他の群は修正補足できるが,プログラム群はそれができないというところにプログラム群のや〜

成績の悪かった理由が求められるだろう。このようなことは,授業過程のVTR記録やプログラ ム学習結果の検討によって容易に明らかになることであるが,残念ながら今回の研究ではそれが 行われなかった。

ただし,各群の児童の事後の感想を聞くと,1群にはおもしろかった,楽しかったという感想 が8人,1群は,楽しいが5人,簡単だったが2人,皿群は,人数が少なくてよかったが7人を 数え,また3班に分かれてやりたいという児童が4人いた。それぞれ良い条件で学習が行われ ていたようであるので,結局,その他の感想を含めて3群の学習効果をあえて質的に表現すれば,

1群は色々なものを使って楽しかった。n群は,静かに勉強できた。皿群は担任の先生がよく教 えてくれたのでよく分かったというのではないだろうか。

結     語

結局,プログラム学習は累積的学習理論の考え方を採用し,そのことによって学習を進行させる ことができたが,教科書を中心としそれに多少の具体物の操作を加えた慣習的教授法は更にそ れよりもよい成績を示し,ピアジェ的方法といわれた種々の具体物を操作させた方法によって後 者とほぼ同等かそれ以上の学習効果を得ることができた。なお,プログラム学習は,個別学習 で,友人や教師からの援助を受けられないという不利益を受けながらも,教育目標の1つの分数 計算は良く学習していたが,応用問題への転移力には欠けていた。担任教師による授業がプログ

ラム学習に比べて優れた効果をみせたのは,クラスの人数が通常授業の児童数の%に減ったこと,

担任教師が熱心に教えたことなどのプラスの要因によるものと思われるが,紙テープなどの操作 が行われた点は重要のように思われた。これは,特にピアジェ群が学生の指導によりながらも,

種々の具体物を操作させて,より大きい転移力を示したことと関係させると,その重要性を増し て来るであろう。これらのことから敢えて推測すれば,分数計算の学習は,累積的学習によって も可能であるが,それが紙の上での操作だけでは不十分で,具体物の操作を通して,学習が促進 されるものと思われる。但し,具体物の用意やその教育のための準備の手間と時間を考えると,

多少の具体物の操作で,かなりの効果をあげた教科書を中心とした学習は,効率的であったこと も指摘されるであろう。また,具体物の操作が転移力を増すという仮説が確認されたことも重 要な知見であると考えられる。

要     約

分数計算の実験授業が小学校3年生1クラス44人について行われた。授業は等質な3群に分け

られ,それぞれ,1群は具体物の操作に重点を置くピアジェ的方法を用い,皿群は累積学習理論に

(8)

基づくプログラム冊子により,皿群は教科書を中心とする慣習的方法が用いられた。事前,事後 テストの間に4日間5校時の授業が行われた結果,1,皿群の事後テストの成績が改善されてお り,特に分数計算の応用問題について,且群よりも有意に優れていた。このことから,具体的操 作を取り入れた指導法によって,転移力が高まるという予想は確認されたように思われる。他方 教科書を中心とする授業も良い成績を示し,ピアジェ的方法が色々の用具の準備の手間を必要と することを考えると,効率的な方法であると考えられた。プログラム学習を用いた1群の成績は,

他の2群に比べ多少劣るものの,事後テスト全体としては有意差はなく,累積的学習理論の一応 の正当性を確認できた。

引 用 文 献

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(9)

馬場:教授・学習過程の実験的分析(1)      165

付 表 1 算 数 テ ス ト 年  組 名まえ

ω① ⑳セの口ばいは勧⑳口mは静が2こ

②で璽懸鑑[二 (7)⑳か暑・号のようにあらわされる数

@  を何といいますか。  (   )

② 下のずで ,くろくぬってあるところは, ⑧ [コにあてはまる数をかきましょう。

ぜんたいのなんぶんの1でしょう。 ⑱争の分母は口,分子は口です・⑳

③        ④ ⑨ ⑳ をは,つぎの3つの数のうち,どれ と同じ大きさですか。まるでかこみな

さい.    〔2量,1〕

(   )   (   ) ㈹ 口にあてはまる数をかきなさい。

(3)つぎの計算をしましょう。

@ ⑤ 4+5=   ⑥ 10−9= 1響禦響諾

⑦ 1+6一   ⑧ 7−4= (11)分母が8の分数を直線上にかきました。

⑨ 2+3一   ⑩ 5−3= 下のそれぞれのぼうの大きさをかきなさい。

⑪ 3+7竃   ⑫ 4−3= ・壱     1

⑬ 6+2一   ⑭ 8−1一

⑳(  )

(4)つぎのもんだいにこたえなさい。

⑮ 色紙で赤いふねを3つ,青いふねを ⑯(  ) 6つおりました。みんなでいくっでき

⑰(  ) たでしょう。しきをかいてこたえまし

 , 謔ツo ㊥(  )

しき         こたえ

⑳(  )

⑯ みかんが10こあります。4こ食べる

と,なんこのこるでしょう。 ⑳(  )

しき      こたえ

⑤ 口の中にあてはまる数を入れましょう。 (12)下の数直線で,やじるしのところの分数

⑰ 3+口=5  ⑱ 口+3=8 をかきなさい。

⑲ 2+口=9  ⑳ 口+1−7 0

(61口にあてはまる数をかきましょう。 @(  )

1m 0        1 ⑫(  )

⑳  口m 幽  ⑬( )

      14⑫

口6

㊧ 1d乏

口d6

⑭去mの2つ分は口m

注 11ト{5}準備問題  (6ト{蝸過程問題  11⑤血の目標問題

(10)

       付 表 2(っづきです)         算 数 テ ス ト

(13 つぎの分数を下の数直線であらわすと, (17)つぎのもんだいにこたえなさい。

どこになりますか。やじるしをつけ,その ⑭雌のし・うゆのうち,紅だけつ

ばんこうをかきなさい。 かいました。のこりは何dfでしょう。

⑭去 ⑮含 しき        こたえ

0         1 ⑮ジー一スが春d2はいっているコ。プ

⑯号 ⑰与

が2つと,苦d乏はいっているコ。プが Pつあります。みんなで何d4でしょう。

0      1 しき        こたえ

⑯孟mの長さのひもがあります。その

(強 つぎの分数で,どちらが大きいか。不等 う輪mをきりとりました。のこりは 号(〈,〉)のきこうを入れなさい。 何mですか。下の数直線をもとにして

⑱(3   45   5)⑲(号 与)

こたえましよう。

⑩(4   56   6)⑪(亮 岳)

0      1

{15)つぎの分数を大きいじゅんにならべまし

l    i    :       I        l

 ワ 謔ツo 1      浄一『r    l

⑫(音,書,書,者・,1)一 しき        こたえ

(        ) ㊥水そうに物の水が入っています。

⑬(号m,÷m,与m,号m,1m,÷m) あとから物の水をくわえました.あ

→(      ) わせて何4でしょう。ずの中をくろく

(16)つぎの計算をしなさい。 ぬりなさい。

⑭芸+÷  ⑯争+÷

⑯暑一吉  ⑰品一琵

㊥含+蓋  ⑲甚+去 十      =

⑳暑一吉  ㊥号一吉

⑫号+暮  ㊥1一音

(11)

馬場他:教授・学習過程の実験的分析(1)      167

付 表 3

Group皿累積学習理論によるプログラム学習

1.同分母分数の加法計算及び減法計算 分母は10までとし,仮分数は取

り扱わない。

加えた結果が1以下

加法:分母はそのままで分子の数を たすこと。

減法:分母はそのままで分子の数を ひくこと。

5.分子と分母が等しい分数 7.同分母真分数相 10.加減相互の関係

は1である 互の大小判定は, がわかる

分子の大小による 4.概念:分数・分母・分子

9.(整数の加法)

6.分数の大きさを 1位数+1位数≦10 3.概念:分子が1でない分 テープ図や数直線 (整数の減法)

数 の中でとらえられ a……≦0

る a−1位数=1位数

2,概念:分子が1となる単

位分数 8.概  念:数

1.概念:分数

量の大きさ(測定値)や直線上の位置(座標)を

端下のあるときに分数で表す。しかもその端下は小

数では,表わせない時もあるものとする。

参照

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男性収入: 2,436,347 円(月額: 203,029 ) 女性収入: 2,139,510 円(月額: 178,292

 2018年度の実利用者92名 (昨年比+ 7 名) ,男性46%,女 性54%の比率で,年齢は40歳代から100歳代までで,中央 値は79.9歳 (昨年比-2.1歳)