小田∨遺跡試料 の磁気的性質
西 谷 忠 師 *
Magneticpropertiesofthesamplesin Koda‑V site TadashiNISHITANI*
(Abstract)
Intheexcavatingspotinasite,wesometimesfindredsoil. ForarcheologlCalinter‑ pretationitisextremelyimportanttOjudgewhetherthespotreceivedtheeffectofheat. Howeverwefinditdifficulttodeterminewhethertheredcolorcomesfrom heatorthe soilisoriginallyredcolored. Icollectedsamplesfrom twopartsin KodaV site;one from redsoilandtheotherfrom non‑redsoil.UsingrockmagneticinvestigationIclearly showedthattheredsoildidnotexperienceaheat. Thistechniquecanbeusedtodeter一 minethetraceofheatinthesites.
Keywords:archeomagnetism,susceptibility,thermomagnetlCanalysis,remanenCe direction,traceorheat
1.は じめに
遺跡発掘現場では しば しば赤 い色の土を見かける.
考古学的見地か らこの赤色部分 は住居跡内の炉跡 あ るいはカマ ドなどと解釈 され ることも多い.しか し, この赤い土が熱を受 けたことによって赤 くなったの か,それ とも単 に色が赤 いだけなのか判断 に迷 う場 合がある.被熱作用の有無 は考古学的解釈 に重要 な 意味を もっている. ここでは小 田Ⅴ遺跡か ら,赤 く なっている部分,赤 くなっていない部分の両者か ら 試料を採集 し,岩石磁気的測定 によって この赤 い土 が加熱 によるものか どうかを判断す る.
2.試料 について
試料 は秋田県平鹿郡山内村小 田Ⅴ遺跡の トラップ ピッ トSKT18の周辺 と, この場所 か らやや離 れ た 地点か ら採集 した.Fig.1が試料採集地点の概略図 である.ポ リカーボネイ ト製 の試料 ケースを地中 に 挿入 して試料 を採集 した.A地点 は赤みを帯 びてお り焼土の可能性がある. このA地点か ら8個の試料 を採集 した. S地点 は地山の部分で熱を受 けた可能 性が全 くない場所である. この部分か ら8個の試料 を採集 した.Tablelに採集試料 の走向,傾斜,磁 化方向を決めるための角度,質量,帯磁率を示す.
3.自然残留磁化測定
採集試料 はスピナー磁力計 によって残留磁化を測 定 し,残留磁化強度 と磁化方向を求 めた. この測定
(平成7年2月17日受付,平成7年2月27日受理) 秋 田大学鉱 山学部資源 ・素材工学科応用地球科学教室.
InstltuteOfAppliedEarthSclenCeS,DepartmentofGeosclenCeS,MlnlngEnglneeringandMaterialsProcesslng,Mining College,AkitaUniversity.
150
(cm) LA38
Ssite
Fig.1 AnoutlineofSKT18andsamplecollectionspots.ArablCnumeralsinspreadingfigure aresamplenumbers.
Table1 SamplescollectedfromKodaV site. saw.p.lestrike dip (dEg
)
(d冒g)W(e;Sht(1.‑3sXIunl.) Asite1 N 30oE 2 N 300E 3 N 30oE 4 N 30oE 5 N 24oE 6 N 24oE 7 N 24oE 8 N240E
S site
ll N90oE
12 N90oE
13 N90QE
14 N90oE 15 N53oE 16 N53oE 17 N53oE 18 N53oE
419634441111111
00003333555588(X)844442222000044441111000022222222
NNNNNNNN000000003333555544442222 11l1222211111111
00000000000000000000111100003333999933332222
ssssNNNN000000000000000000001111
3.9777 3.4094 2.5097 3.5041 2.8886 3.3147 3.0306 4.0724 4.2144 3.4568 4.0724
3.8356 2.8412 2.8412 2.8412
3.0306 Note:
めand♂areparametersforaxisrotation, x:susceptibility.
Latitudeandlongitudeofthesamplecollected point are39016'47.6422''Nand140036'37.3685''E.
か ら, 自然残留磁化 (NRM)の強度,平均 の磁化方 向およびそのば らつ き,見掛 けの極 位 置 を求 めた.
A地点
,
S地点 でそれぞれ平均 を求 め,得 られ た結 果 をTable2に示す.自然残留磁化 の強度 はA地点 とS地点で はほとん ど差が無 い ことが明 らかであ る.一般 に熱 を受 ける と自然残留磁化 の強度が大 き くな ることが観測 され ている (Nagata,1961).従 って, 自然残留 磁化重 度か らは,赤みを帯 びた試料 に対す る熱 の影響 は陳
とん ど無 い と解釈 出来 る.
4.磁化のまとま り
磁化 の まとま りの 目安であ るα95は95%の確率で 真 の磁化方向の含 まれ る範囲である(Fisher,1953).
この値が小 さいほうがデー タのば らつ きが少 ないと 言 え る.磁化 のまとま り具合か らほ試料採集場所が 擾乱作用 を受 けて いるか どうかの判断がで きる.A
地点 のα 95は31度
,
S地点 のα。5は約9度でA地点のTable2Averageremanentmagnetizationdirection
D I ∫ k α95 VGP VGP
(O) (Q ) (102A/m) (O ) Lat.(o ) Lon.(o)
(I‑0nLSt.OL)^11tlq‑1dOosns
A site 0.63 44.85 2.455 4.13 31.07 77.15 318.07 Sslte 13.93 51.00 2.627 39.44 8.93 76.38 260.17 Note:
D :declination,Ⅰ:inclination,J:magnetizationperunitvolume,k:precisionparameter, α95:95% confidencelevel,andVGP:vertualgeomagneticpole
‑50
0
50 100 150 200Distance (cm)
FIE.2 Measurementofsusceptibility crossing thereddishpartinA site. Thereddish partrangesfrom 40to60centimeters. A solidcircleandabarshowmeansusceptl‑ billtyValueandanextentoferrorrespec‑ tively.
(l!Un・qJe)uO!tt2Z葛u6tZ∈uO!tt2JnleS
0 200 400 600 Temperature,oC
デー タのば らつ きが大 きい. この原因 は, トラ ップ ピッ トを作 った ときに,あ るい はその後 に物理 的 な 擾乱 が加 わ ったため と考 え られ る.A地点 には赤 色 の土 を他 の場所 か ら運 んで来 たのか も知 れない. い ず れ に して もS地点 は擾乱作用 を受 けて いない場所 で あ り,A地点 は人工 的な擾乱 を受 けて い ること は 確実 で あ る.
5. 帯磁率 の測定
A地点 で,赤 みを帯 びた部分 を横切 って160cmの 長 さにわ た って帯磁率 の測定 を行 った.Bison社 モ デル3010測定装 置 にIn‑SituSampleCoil(モ デ ル 3120)を接続 して,10cmの測 点 間 隔 で測 定 を行 っ た.同一点 で2回〜3回測定 を行 い,平均 を求 め て デー タと した.測定 結 果 をFig.2に示 す . グ ラ フ
200 400 600 Temperature,oC Fig・3 Saturationmagnetizationasafunctionoftemperature・AbscISSaShowssaturation
magnetizationandordinateshowstemperature・(a)reddishpart・(b)noreddlShpart・
NR
1 M ● ●
112x10 0‑8A/∩2
\ 846m
T \ ●
46‑6 ‑4 ‑2 22 4
㌔■ 0○DS‑‑‑‑‑‑11248602
2016 ● NRM /
1842 1
′ 2
/
' m T
4A ‑‑‑1I0482 4 8 12x
\ ○
\
‑16
‑20D 守 ,0 (⊃
14
11864220 N
R M
● ●1 t2 ●4
●
/ 1 0
mT/12 0 .
‑4 ‑2‑‑‑‑2468 \ 2 4 6 q
‑
1 0
P‑
1 2
6○lUN
16 NRM
1
● 一
1842 /
●2/
′ 4
8mT
̲4■04‑8 4⊂む8 12×
‑12
\
(⊃\
‑16
‑20 ○
Fig・4 Decreasetendencyofmagnetizationbyalternatingfielddemagnetization.A solidcircleisth proJeCtiontohorizontalplaneandanopencircleistheprojectiontoverticalplane・Sample collectedfrom reddishpartare(a)Aland (b)A6.Samplescollectedfrom noreddishpartar (C)S12and(a)S18.
の横軸 は距離で,Fig.1のA地点を横切 って設定 し てある測線 と対応 している.縦軸 は帯磁率 で あ る.
平均を黒丸で示 し,誤差の範囲をバーで表現 して あ る.赤みを帯 びている部分 は距離 で は40cm〜60cm の部分である. もし被熟作用を受 けていれば帯磁率 が増加す ることが期待 出来 る (小嶋 ・小 嶋,1972).
しか し,測定値 には誤差の範囲内で特に目立 ったピー クは無 く,赤 い色 と対応 した変化 は現われていない.
従って,帯磁率 の測定か らは赤い土 の部分 は熱の影 響はほとん どないと考えて良 いであろう.
6.熱磁気分析
赤みを帯びた部分 とそ うでない部分の試料の熱磁 気分析を行 った.用 いた装置 は成瀬科学社製MB‑2 型磁気天秤 で あ る.熱磁気分析 は試料 に強 い磁場 (約0.7T)を与 えた状態で真空 中で加熱 を行 い,飽 和磁化の温度変化 を調べ る分析法である (Nagata, 1961).この測定 によって得 られた磁化温度曲線 か ら 磁化成分を失 う温度,即 ちキュ リー点を知 ることが 可能である.これ以外 に,曲線 の減少 の様子 か ら内 部に含 まれている磁性鉱物の情報を得 ることが出来 る.もし被熟作用を受 けていれば磁性鉱物の物性 が 変化 し,磁化温度曲線 に特徴が現われるはずである.
Fig.3に磁化温度曲線を示す.(a)が赤 みを帯 びた 部分,(b)が赤 みを帯 びていない部分 の測定結果 で ある.
赤みを帯 びた部分の曲線 とそ うでない部分の曲線 は極めてよ く似 た傾向を示 してお り, (a)だ けに特 別な変化 は認 め られない.赤い部分の試料のキュリー 点は460℃,558℃である.赤 くない部分ではキュ リー 点は443℃,544℃ とな り, ほとん ど差が無 い ことが 分る.従 って,磁化温度曲線 の解析か らは,含 まれ ている磁性鉱物 に変化 は無 く,赤 い部分 は被熱作用 によって赤 くな ったので はないと考え られ る.
7.消磁 による磁化の減少傾向
もし試料採集地点が後で熱を受 けていれば,最初 獲得 した磁化方向 と別方向の成分が付加 されている と考えて良 いであろ う.後か ら付加 された成分 は最 初の成分 と合成 されて自然残留磁化成分 となってい
る.従 って,付加 された成分を消去す れ ば最初 の成 分が現われ,磁化方向に変化 が生 ず る ことにな る.
磁化を少 しずっ消去す る交流消磁 の手法を用いて赤 みを帯 びた試料 とそ うでない試料 の磁化の減少傾向 を調べた.
Fig.4に交流消磁の結果を示す.黒丸で示 した点 は水平面投影で磁化が水平面で どのような変化をす るかを表わ したものである.白抜 きの丸 は垂直面投 影で垂直面での変化を知 ることがで きる.交流磁場 を次第 に強 くして磁化 の変化を追跡す ると,すべて の試料で磁化の減少傾向が認 め られ る.その変化は, はば直線的で原点 に向か っていることがわか る.原 点 に向か って直線的に磁化が減少す ることは,磁化 成分 は一つであり,他の成分が含 まれていないこと を意味す る.即 ち,他の成分を付加す る現象が生 じ なか ったと考え ることがで きる.
8.まとめ
今 まで小 田Ⅴ遺跡試料の赤みを帯 びた部分 とそ う でない部分の磁気的性質を比較 して検討 して きた.
その結果
(1) 残留磁化強度が両者で ほとん ど変わ らない, (2)帯磁率測定で色 に対応 した変化が現われていな
い,
(3)磁化温度曲線の解析か ら両者の磁性鉱物の物性 には変化がない,
(4)交流消磁 による磁化の減少傾向解析か ら二次的 な磁化成分 は存在 しない, ことが判明 した.
以上の解析か ら,赤 くなっている部分 は熱を受 け たために赤 くなったので はないと結論づ けることが で きる.
更 に,磁化のまとま り具合か ら
(5) A地点 は人工的な擾乱を受 けているが
,
S地意 は擾乱作用を受 けていない,ことを明 らかに した.
以上,岩石磁気的手法を用 いて被熱作用を受 けた 試料であるか どうかの判定 と擾乱 の有無 を調 べた.
この手法 は,赤 くな った土の披熱の有無の判定 に利 用で きるばか りでな く,擾乱の程度の推定 にも利用 す ることが可能である.今 まで遺跡現場での判断が
困難であった被熱 の有無 は,岩石磁気的手法を用 い れば客観的に判断す ることが可能である.
謝 辞
小田Ⅴ遺跡での試料採集 に便宜を計 っていただい た秋 田県埋蔵文化財 セ ンターの高橋忠彦氏 に感謝 し ます.
文 献
Fisher,R.(1953):Dispersiononasphere,Proc.
Roy.Soc.Ser.A,217,2951305.
Nagata,T.(1961):RockMagnetism,Maruzen.
Tokyo.350pp.
小嶋 稔 ・小嶋美都子(1972):岩石磁気学,共立全 書,共立出版,東京.220pp.