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(1)

SAGA14

(@熊本市動植物園)

ポスター発表要旨集

◆ 掲示場所: 熊本市動植物園 植物園 花の休憩所

◆ 掲示時間: 11月12日 10:00 ∼ 11月13日 17:00

◆ 発表時間: 11月12日 16:00∼18:00

(2)

ポスター発表一覧

ポスタ

番号

発表者 所 属 演 題

P01

坪川桂子 京都大学理学研究科 人類進化 論研究室 野生ニシローランドゴリラの音声レパートリー

P02

五百部裕 椙山女学園大学・人間関係学部 日本モンキーセンター来園者の印象に残ったサ ルの経年変化

P03

久川智恵美 わんぱーくこうちアニマルラ ンド 雄3雌1、合計4個体のチンパンジーの群れの 管理

P04

長尾充徳 京都市動物園 飼育下ニシゴリラに対するハズバンダリー・ト レーニングの実施

P05

蔦谷 匠 東京大・新領域 窒素同位体分析を利用したヒト集団と大型類人 猿の離乳年齢の推定

P06

長野秀美 京都大学農学部 京都市動物園のチンパンジー行動調査

P07

田中正之 京都大学野生動物研究センタ ー 京都市動物園における霊長類3種によるアラビ ア数系列学習

P08

菅 義浩 福岡市動物園 チンパンジー舎リニューアル

P09

鈴村 崇文 京都大・幸島観察所 新燃岳が噴火した!幸島の野生ニホンザルへの 影響は?

P10

鵜殿俊史 京都大・熊本サンクチュアリ チンパンジーに見られた口腔扁平上皮癌の一例

P11

鋤納有実子 大阪大学大学院人間科学研究 科 嵐山ニホンザル集団における 0 歳齢みなしごの 社会関係の縦断的変化

P12

平田 聡 京都大学霊長類研究所 オトナチンパンジーはどのくらいナッツ割りを 覚えられるか?

P13

廣澤麻里 京都大・熊本サンクチュアリ 病気やケガがチンパンジーの睡眠などの活動に 与える影響

P14

伊藤秀一 東海大学農学部 キンシコウの行動と空間利用に暑熱がおよぼす 影響

P15

Yena Kim Primate Research Institute,

Kyoto University Ape Research Project in Seoul Zoo, Korea

P16

松本卓也 京都大・理・人類進化論 チンパンジーのアカンボウ独自の採食品目と禁 止行動の有無の検討

P17

野上悦子 京都大・熊本サンクチュアリ 飼育チンパンジーの雄のみからなる 2 集団の合 流

P18

宝田一輝 京都大学野生動物研究センタ ー 飼育下ニシゴリラの夜間行動

P19

中島麻衣 京都大学野生動物研究センタ ー チンパンジーの空間利用と行動の関係

P20

早川卓志 京都大学霊長類研究所 チンパンジーの味覚に地域差はあるか? ∼分 子遺伝学からの考察∼

P21

江草真治 広島市安佐動物公園 広島市安佐動物公園におけるチンパンジーの群 れ作り攻撃性の強い雄への対応−再同居に向け た新たな試み−

P22

藤森 唯 岐阜大学応用生物科学部 オマキザルにおける環境エンリッチメントとそ の効果

P23

山梨裕美 京都大学霊長類研究所・日本学 術振興会 チンパンジー(Pan troglodytes)における毛中 コルチゾルの測定

P24

髙木美緒 熊本市動植物園 キンシコウの人工哺育について

P25

左座 誠 熊本市動植物園 熊本市動植物園の新チンパンジー舎と環境エン リッチメント

P26

吉川 翠 東京農工大学大学院・連合農学 研究科 乾燥疎開林のチンパンジーの死体の発見報告

P27

平賀真紀 よこはま動物園ズーラシア 飼育チンパンジー管理のための社会ネットワー ク分析

P28

櫻庭陽子 京都大学霊長類研究所 脊髄炎を発症したチンパンジーの 5 年間とこれ から

(3)

P29

渡邉みなみ 岐阜大学応用生物科学部 東山動物園でのチンパンジーの知性展示

P30

秋吉由佳 岐阜大学応用生物科学部 チンパンジーの発達に伴う社会関係の変化∼最 近接個体の縦断的解析∼

ポスタ

番号

発表者 所 属 演 題

P31

田島知之 京都大学人類進化論研究室、日 本学術振興会 オランウータンによる食物移動はどのような関 係でおこなわれるか?

P32

林 美里 京都大学霊長類研究所 罠にかかった動物に対するボノボの行動 ―ワ ンバでのケースレポート―

P33

友永雅己 京都大学霊長類研究所 チンパンジーにおける自己顔の知覚

P34

森 裕介 京都大・熊本サンクチュアリ 演題:離合集散する飼育チンパンジー雄 15 個体 の維持管理についての課題

P35

須田(橋本) 直子 京都大学霊長類研究所 飼育下ニホンザルにおける死児運搬と死児食い の事例

P36

小倉匡俊 京都大学霊長類研究所 YouTube 動画呈示によるニホンザルの異常行動 の軽減

P37

稲田菜摘 NPO 法人東山動物園くらぶ,岐 阜大学応用生物科学部 NPO 団体と動物園の協働「東山こどもガイド」 の紹介

P38

松浦直毅 日本学術振興会/京都大学 ガボン南西部ムカラバ・ドゥドゥ国立公園周辺 における獣害状況とその対策

P39

有賀菜津美 日本大学生物資源科学部 改修工事がチンパンジーの行動に与える影響評 価

P40

山内直朗 日立市かみね動物園 かみね動物園チンパンジーの森 人工哺育個体 と実母との早期群れ入れの試み

P41

座馬耕一郎 (株)林原生物化学研究所 類人猿研究センター 野生チンパンジーの眠りを覚ます要因

P42

Michael Seres Kumamoto Sanctuary, WRC, Kyoto University

Chimpanzee Introductions and Group Formations. The past, the present, with suggestions for the future

P43

北川勇夫 熊本市動植物園 熊本市動植物園のゾウ飼育の歴史と現在のアフ リカゾウにおける飼育管理

P44

松本充史 熊本市動植物園 熊本市動植物園第 3 期再編整備におけるニホン ザルエリア整備経過

P45

山田信宏 高知県立のいち動物公園 チンパンジー飼育 20 年の経緯

P46

森ことの 岐阜大学応用生物科学部 「自然学ポケットゼミナール」活動紹介

P47

寺本 研 京都大・熊本サンクチュアリ 社会的スキルを養う環境作りとしての飼育チン パンジーの集団形成

P48

夏目尊好 岐阜大学応用生物科学部 ニホンザルのあかんぼうにおける固形飼料洗い 行動の獲得過程

P49

平栗明実 日本大学生物資源科学部 チンパンジーの識別可能個体の推移:熊本サン クチュアリ研修の体験から

P50

市野悦子 岐阜大学応用生物科学部 チンパンジーの子どもの成長に伴う社会関係の 変化

P51

田和優子 京都大学野生動物研究センタ ー 飼育下マレーバクの母子の活動の変化

P52

植田 想 京都大学霊長類研究所 チンパンジーによる色と図形の象徴見本合わせ の長期記憶

P53

花塚優貴 中央大学大学院 スマトラオランウータンにおける描画行動の特 徴に関する検討

P54

木村元大 岐阜大学応用生物科学部 東山動物園のチンパンジータワー利用状況の継 続調査

P55

水野佳緒里 岐阜大学応用生物科学部 日本におけるゾウの域外保全の今後∼全国の飼 育下ゾウの分布図から∼

P56

島田かなえ 岐阜大学応用生物科学部 小型展示施設“パンラボ”の評価-チンパンジ ーの利用率・行動の変化を通して-

P57

鈴木健太 岐阜大学応用生物科学部 東山動物園のチンパンジーにおける認知実験参 加率の変動

(4)

P58

森村成樹 京都大・熊本サンクチュアリ 飼育チンパンジーの心音測定

P59

森村成樹 京都大・熊本サンクチュアリ 熊本サンクチュアリの設立

P60

福田 渓 九大・生医研・エピゲノム学 霊長類間における DNA メチル化の違いの同定

ポスタ

番号

発表者 所 属 演 題

P61

大橋 岳 日本モンキーセンター チンパンジーの往来を促進したい:ギニア共和 国ボッソウニンバ地域でおこなう緑の回廊プロ ジェクトの近況報告

P62

綿貫宏史朗 市民 ZOO ネットワーク 「エンリッチメント大賞」の 10 年

P63

落合知美 京都大学霊長類研究所 GAIN ウェブサイトの紹介:類人猿に関する情報 収集

P64

打越万喜子 京都大学霊長類研究所 アジルテナガザルの布を使った水のみ行動

P65

村松明穂 京都大学霊長類研究所 チンパンジーにおける数字の系列学習と作業記 憶:1 から 19 までの学習と 60 ミリ秒呈示

(5)

SAGA14ポスター発表 要旨集

11月12日 10:00−13日 12:00 於 植物園花の休憩所

P01 野生ニシローランドゴリラの音声レパートリ ー 坪川桂子(京都大学理学研究科 人類進化論研究室) 大型類人猿において、音声コミュニケーションは、個 体間の社会関係の調整に重要な役割を果たしているこ とが知られている。しかし、野生ニシローランドゴリラ (Gorilla gorilla gorilla)の研究は他種に比べて遅 れており、どのような音声レパートリーを持つかについ ても明らかにされていない。本研究では、ガボン、ムカ ラバ・ドゥドゥ国立公園において、野生ニシローランド ゴリラの追跡調査を行い、どのような音声を、どのよう な状況下で発するのか、観察記録を行った。その結果、 ニシローランドゴリラは、多様な音声レパートリーを持 つことが明らかにされた。特に、シルバーバックは野生 下では頻繁に音声を発しており、発表者が上野動物園で 行った観察では記録されていない音声も発見された。発 表では、具体的な事例を交えて、野生ニシローランドゴ リラにおける音声コミュニケーションの重要性につい て論じる。 P02 日本モンキーセンター来園者の印象に残った サルの経年変化 五百部裕(椙山女学園大学・人間関係学部) 動物園で動物を見学することが、動物園来園者の展示 動物に対するどのような関心の変化をもたらすかとい う視点から、日本モンキーセンターにおいて 2007 年度 と 2011 年度に、来園者に対する入園時と退園時のアン ケート調査と、いくつかの展示施設前での来園者の行動 観察を行った。アンケート調査では、まず入園してくる 来園者を対象にこれから見学したい動物などを尋ねた。 一方で、退園していく来園者には印象に残った動物など を尋ねた。また行動観察では、それぞれの展示施設前を 通過した来園者の数や来園者の展示施設前での滞在時 間、来園者の行動、そしてそのときの展示動物の行動の 記録を収集した。今回の発表では、このうち入園時と退 園時の来園者の動物に対する関心の変化に焦点を当て、 その経年変化を展示施設の改修などと合わせて考察す る。 P03 雄3雌1、合計4個体のチンパンジーの群れ の管理 久川智恵美,吉川貴臣,大地博史(わんぱーくこうち アニマルランド) わんぱーくこうちアニマルランドでは、1999 年のヤ マト(雄)誕生より、雄 3 雌 3 合計 6 個体のチンパンジー を飼育してきた。雄同士の闘争のため全個体での放飼は むずかしく、2 群での放飼をおこなっていた。2008 年よ り離合集散を目指し、それまで固定のメンバーでおこな っていた放飼をメンバーを入れ替えておこなうように した。しかし、2010 年 2 月タロー(雄・推定 1963 年生) とコータ(雄・1989 年生)が激しく衝突し、タローが全 身に深い傷を負った。以降、タローの年齢も考えタロー とコータの同居を中止した。 2010 年 8 月、雌1個体が BL のために転出し同年 11 月に雌 1 個体が死亡した。そのため雄 3 雌 1、合計 4 個 体の飼育となった。それ以降、コータとタローをわけヤ マトとローラ(雌・1990 年生)を交互に組み合わせてい る。また、この方法ではヤマトとローラを同室にするこ とができないため週に 1 度の休園日にはタロー、ヤマト、 ローラの 3 個体で放飼をしている。 P04 飼育下ニシゴリラに対するハズバンダリー・ トレーニングの実施 長尾充徳,釜鳴宏枝,山本裕己(京都市動物園)、田 中正之(京都大学野生動物研究センター) 京都市動物園での雄ゴリラの死亡原因には心臓疾患 によるものが 6 例中 3 例あり,またアメリカではその死 亡原因の約 40%が心臓疾患によるとの報告もある。こ のことからゴリラの飼育管理において心音を確認する ことが健康管理上有効と判断した。そこで,2011 年 7 月上旬よりモモタロウ(雄)11 歳,ゲンキ(雌)25 歳

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に対し聴診することを目標とし,ゴリラのハズバンダリ ー・トレーニングを開始した。 約 2 か月間で両手足・頭部・胸部,腹部・肩・背中出 し及び保持,開口及び保持を行うようになり,外傷・虫 歯の視診,聴診が可能となった。また,自発的な行動を 強化する方法であったため,トレーニング時間を期待し たり,トレーニング中に満足時の声を発したりするなど, ゴリラ自身が楽しみながら行う様子が伺え,動物への負 担も少ないと思われる。今後,体温測定や注射などに発 展させていきたいと考えている。 P05 窒素同位体分析を利用したヒト集団と大型類 人猿の離乳年齢の推定 蔦谷 匠、米田 穣 (東京大学・新領域) ヒトは,ほかの霊長類と比べて早く子供を離乳させる と考えられており,この特徴が進化のどの段階で獲得さ れたかを知ることは重要である.過去の人類集団の授乳 習慣は,同位体分析によって直接的に復元できる.授乳 中,子供体組織の窒素同位体比は増加し,離乳とともに 値は低下する.発掘されたヒト子供骨に残存するコラー ゲンを分析してこの変化を解析することで,過去の離乳 年齢が推定されてきた. その一方,霊長類の離乳年齢推定は直接的な 観察に頼っており,何歳までどの程度,実際に母乳が飲 まれているかを定量的に評価することが困難だった.本 研究は,窒素同位体分析による過去ヒト集団の離乳年齢 復元例を示し,この方法論の大型類人猿への応用の可能 性について論じる.乳幼児と母親の体毛を同位体分析す ることで,タンパク質源としての母乳摂取量を年齢ごと に定量的に推定でき,授乳と単なる suckling を区別で きる可能性がある. P06 京都市動物園のチンパンジー行動調査 長野秀美(京都大・農学部),石塚真太郎(京都大・ 農学部),千切裕美子(京都大・法学部),青木隼人(京 都大・農学部),橋本知明(京都大・農学部),田中正 之(京都大・野生動物研究センター) 飼育動物の福祉を考えるには、平常時の状態を把握し ておくことが重要である。対象は京都市動物園で飼育さ れているチンパンジー4人(タカシ、ジェームス、コイ コ、スズミ)で、調査は2011年4月から9月にかけ て、チンパンジーが屋外運動場に出ている午前10時か ら午後3時の間におこなった。1分間のスキャンサンプ リングにより、対象個体の運動場内の水平位置と高さ、 およびその時の行動を、小型PCを用いて記録した。1 回の観察は1個体あたり連続10分間とし、4個体を順 に観察、記録した。合計約74.5時間の観察から、個 体によって好みの場所があり、オス同士、メス同士が同 じ場所にいて近接していることが多いことがわかった。 活動時間配分を見ると、すべての個体で何もせずにじっ としている時間がもっとも多かった。本調査は、京都大 学の新入生向け少人数セミナー(ポケット・ゼミ)「野 生動物と動物園科学」受講者によっておこなわれた。 P07 京都市動物園における霊長類3種によるアラ ビア数系列学習 田中正之(京都大学野生動物研究センター)、松永雅 之・伊藤二三夫・岩橋宣明・水野章裕・山本裕己・伊 藤英之(京都市動物園) 京都大学野生動物研究センターが 2008 年 4 月に京都 市動物園と連携して以来、飼育下の霊長類 3 種(チンパ ンジー、シロテテナガザル、マンドリル)を対象として、 アラビア数系列の学習実験を一般来園者に公開でおこ なってきた。この間にのべ 11 個体(チンパンジー5、テ ナガザル 2、マンドリル 4)が自発的に課題に参加した。 学習実験開始後に生まれた、または移動してきた個体も、 同種他個体が課題に取り組む様子を観察するうちに、自 ら課題に取り組んでおり、現在は死亡や移動した個体を 除く 7 個体(チンパンジー4、テナガザル 1、マンドリ ル 2)で継続中である。タッチモニターの画面に提示さ れるアラビア数字を小さい順に押していくこの課題は、 来園者に容易に理解され、足を止めて観察している様子 が見られている。月に一度、研究の解説をおこなってお り、天気のよい日には 100 名を超える人が集まる。大学 と動物園の連携による研究の展開を引き続き進めたい。 P08 チンパンジー舎リニューアル 菅 義浩(福岡市動物園) チンパンジーの生活空間を拡げ、来園者にもチンパン ジーを身近に感じてもらえるよう獣舎のリニューアル を行い、既存の運動場をケージ式に変更しました。一部 はガラス張りになっています。

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またそれに伴い、既設のタワーも木材の腐食が進んでい たので全て合成木材に変更しました。 新たな設備としては、人工アリ塚(半割り)を二台(ト レー式とペットボトル式を一台ずつ)、UFOキャッチ ャーを一台設置しました。 まだまだ手を加える部分も残っていますが、9月27日 より公開を始めておりますので報告させていただきま す。 P09 新燃岳が噴火した!幸島の野生ニホンザルへ の影響は? 鈴村 崇文(京大・野生動物)、冠地富士男(京大・ 野生動物)、杉浦秀樹(京大・野生動物)、松沢哲郎(京 大・霊研) 伊谷原一(京大・野生動物) 2011 年 1 月 28 日に宮崎県と鹿児島県の県境にある新 燃岳が噴火した。その影響で幸島にも降灰が確認され、 生息する野生ニホンザルに対する影響を調べた。降灰が 起こった後に幸島の野生ニホンザルに火山灰の顔面へ の付着、鼻水、目をこする、涙を流すなどの花粉症に似 た症状が見られた。現在まで幸島では花粉症は確認され ていないことから、火山灰が原因ではないかと考えられ たため、2 月 4 日より約 3 ヶ月間調査を行った。その結 果、これらの症状は噴火による降灰が確認できた時に発 症することが多く確認された。火山灰が直接的な原因だ と考えられる。調査を行った 104 個体のうち、症状が出 た個体は 21 個体だった。このうち血縁関係があるもの が 6 例で、兄弟が 3 例、親子が 3 例である。年齢別の発 症率は、1∼5 歳で 15%、5∼10 歳が 9%、11∼15 歳が 19%、 15∼20 歳が 50%、20 歳以上が 100%だった。以上、今回 の調査から、火山灰に起因する症状は、家系で特異的に 起こる可能性があるとともに、年齢が高くなるにつれて 発症する割合が高くなることが示唆された。 P10 チンパンジーに見られた口腔扁平上皮癌の一 例 鵜殿俊史・寺本研・藤澤道子(京大・野生動物・熊 本サンクチュアリ)、伊谷原一(京大・野生動物) 扁平上皮癌は悪性の腫瘍で、サル類ではヒヒ、リスザ ル等に多数の報告があるが、チンパンジーでの発生はほ とんど知られていない。今回チンパンジー(個体名:イ ヨ、雌、推定34歳、野生由来、未経産、C型肝炎ウイ ルス持続感染)で、口腔扁平上皮癌を経験したので報告 する。初発症状は眼窩下部皮膚の腫れで、麻酔下の検査 で右上歯肉の腫脹と壊死を認め、組織所見より扁平上皮 癌と診断された。SCC抗原およびパピローマウイルス は陰性だった。腫瘍は急速に上顎で増大・浸潤し、咀嚼 障害を改善する目的で8回の腫瘍部分切除を実施した。 経口抗癌剤(TS−1Ⓡ)治療は2クール目に摂食を拒 否したため効果が見られないまま終了した。治療困難と 判断し、4ヶ月目以降はターミナルケアを行い、発病よ り6ヶ月で死亡した。剖検の結果、腫瘍は右側鼻部から 口蓋に広く浸潤し、右上顎骨は消失していた。頸部のリ ンパ節、胸膜および肺に転移巣が認められた。 P11 嵐山ニホンザル集団における 0 歳齢みなしご の社会関係の縦断的変化 鋤納有実子(大阪大学大学院人間科学研究科)、山 田一憲(大阪大学大学院人間科学研究科)、中道正之 (大阪大学大学院人間科学研究科) 嵐山ニホンザル集団において、生後 268 日目以降母ザ ル ( 14 歳 齢 ) の 姿 が 確 認 さ れ て い な い 0 歳 齢 (Shiro'62'67'79'85'96'10)を対象に、他個体との社 会関係の変化について、母ザルの失踪前から母ザルの失 踪後 3 ヵ月間の縦断的な観察から検討した。子ザルの社 会的遊びの生起率は、母ザルの失踪前と比較して、失踪 後 1 ヵ月間に著しく減少したが、他個体との接触率は維 持され、毛づくろいを受ける生起率は増加した。近接個 体数や毛づくろい相手数は母ザルの失踪後 1 ヵ月間が 最も多く、その後減少した。母ザルの失踪から 3 ヵ月目 には、特定の世話個体が 2 頭確認され、この 2 頭との交 渉によって子ザルは失踪前と同程度の接触や毛づくろ いを受けていた。一方で、社会的遊びの生起率は依然低 く、母ザルの失踪後 3 ヵ月を経ても失踪前の水準に回復 しなかった。本結果から、母ザルを失った 0 歳齢に対し て、毛づくろいや接触の点においては集団他個体からの 社会的な支援が存在することが示された。 P12 オトナチンパンジーはどのくらいナッツ割り を覚えられるか? 平田聡(京都大学霊長類研究所) 野生チンパンジーは多様な道具を使うことで知られ る。ナッツ割りはそのなかで最も複雑なもののひとつと して知られる。ナッツ、台、そしてハンマーという3つ の物を正しい組み合わせで関係づける必要がある。西ア フリカの野生チンパンジー調査地において、ナッツ割り

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行動の学習に関する多くの知見が得られてきた。一方で、 飼育下のチンパンジーを対象にした実験的研究もおこ なわれており、論文として公表されたものを数えると過 去に 5 例存在する。これらの結果を総合すると、合計で 47 個体のチンパンジーが研究に参加し、そのうち 20 個 体がナッツ割り行動を獲得した。概して、3 歳以上 7 歳 以下の年齢層での習得率が高い。今回、京都大学野生動 物研究センター熊本サンクチュアリのチンパンジーを 対象に、ナッツ割り道具使用の実験的研究を新たに開始 した。参加したチンパンジーは全員 15 歳以上のオトナ である。その経過について報告する。 P13 病気やケガがチンパンジーの睡眠などの活動 に与える影響 廣澤麻里、森村成樹(京都大学野生動物研究センタ ー熊本サンクチュアリ) 口腔扁平上皮癌を患ったチンパンジー(イヨ、推定 34 才、メス)の活動性が、病気の進行に伴ってどのよ うに変化していくのかを調べた。発病して 2 ヶ月後の 2011 年 4 月 8 日から死亡した 2011 年 8 月 17 日まで夜 間撮影(17 時から翌朝 6 時)をおこない、イヨが横臥 している状態を「睡眠」、それ以外の起きて活動してい る状態を「覚醒」と操作的に定義して、1 分ごとに状態 を記録した。一晩の合計睡眠時間と最大睡眠バウト時間 の変化、最大睡眠バウト時間と最大覚醒バウト時間の変 化を分析した。また、闘争で重症を負ったチンパンジー (ブラック、推定 40 才、オス)の治療期間中の夜間の 活動性も同様の方法で調べた。これらの比較から、病気 やケガがチンパンジーの睡眠などの活動に与える影響 について報告する。 P14 キンシコウの行動と空間利用に暑熱がおよぼ す影響 伊藤秀一,下田龍之介(東海大学農学部)、的場秀嗣, 赤星英史,井手眞司,檜垣智行,小山信(熊本市動植 物園) 環境温度は行動に重要な影響を及ぼす要因であるが, 展示動物は本来の生息環境と異なる気候で飼育されて いることが多い.特に高山地帯を生息域とする動物の管 理では,暑熱環境となる夏期は十分な注意が必要である. 本研究では,熊本市動植物園で飼育されている 2 頭のキ ンシコウの暑熱に対する適応についての評価を目的と して,夏期と秋期において行動ならびに放飼場の空間利 用を調査し,両期間での比較を行った。行動観察の結果、 夏期および秋期共に,休息や視覚探査等の非活動的行動 は全体の 60%,摂食や社会行動などの活動的な行動は 約 30%となり,両期で差は認められなかった。一方で, 夏期の空間利用は放飼場内で最も高い場所や,日中でも 日陰が形成されている場所を頻繁に利用し、秋期は個体 差があるものの、日光の入る場所を頻繁に利用していた。 本研究においては,熊本市動植物園のキンシコウは、夏 期は暑熱を避けるために空間を選択するが、活動性は低 下しないことが明らかとなった。

P15 Ape Research Project in Seoul Zoo, Korea Yena Kim¹, Wonhee Lee², Laura Martinez², Sanha Kim², Jae Chun Choe²‚, Ikuma Adachi ¹ and Masaki

Tomonaga ¹

¹Primate Research Institute, Kyoto University, ²Division of EcoScience, Ewha Womans University

Primatology studies have been developed only recently in Korea. The first research project started in 2006 in Indonesia, in which the primate team of Ewha Womans University (EWU) is studying the behavioral ecology of wild Javan gibbons. In 2009, the Seoul Zoo (SZ), belonging to the Seoul Government, renovated the ape facilities and set up a new indoor area devoted to scientific research. The Ape Research Project first drew breath in collaboration with two academic institutions: the EWU and the Primate Research Institute of Kyoto University (KUPRI) in Japan. Since then, the EWU primate team expanded its scope of interests to primate cognition and is currently carrying out the first experiment on four orangutans, focusing on their social cognition. Our long-term goals of this project are 1) to contribute to a better understanding of social cognition in orangutans and chimpanzees, 2) to provide a behavioral enrichment to the ape facility in SZ, 3) to improve the public awareness about primates’ intelligence and welfare of captive animals. The SZ has built and financed the research facility, and the zoo and their keepers provides the extensive support for us to train and study the apes. The EWU primate team is implementing the research activities in tight collaboration with KUPRI researchers, who have been continuously offering a significant academic and technical assistances as well as research equipments. We believe that the Ape Research Project would be a turning point for cognitive studies and animal welfare in Korea.

P16 チンパンジーのアカンボウ独自の採食品目と 禁止行動の有無の検討

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松本卓也(京都大・理・人類進化論) 野生チンパンジーの採食品目は群れごとに異なるこ とが知られており、その違いが遺伝的な差や環境の差に よって説明されにくいため、何らかの社会的学習によっ て採食品目は群れごとに伝達されていると考えられる。 しかし、その詳細な学習プロセスは未だ解明されていな い。発表者は 2010 年 12 月から 2011 年 9 月にかけて、 タンザニア・マハレ山塊国立公園における野生チンパン ジーのアカンボウを対象に、アカンボウの採食品目、お よび採食場面における他個体とのやりとりを観察した。 その結果、アカンボウはオトナの食べない品目を口にし、 なおかつ飲み込んでいる可能性が示唆された。それでは、 なぜアカンボウは幼少期独自の採食品目をオトナにな る過程で食べなくなり、オトナと同じ品目を採食するよ うになるのか。本発表ではまずアカンボウ独自の採食品 目のリストと採食にいたる状況を提示し、次に母親から アカンボウに対する教育、特に禁止行動の有無について、 いくつかの事例を紹介しながら考察する。 P17 飼育チンパンジーの雄のみからなる 2 集団の 合流 野上悦子、長野邦寿、森村成樹(京都大学・熊本サ ンクチュアリ) 熊本サンクチュアリでは、繁殖制限のために雄のみか らなる集団が複数形成され、維持されている。より複雑 な社会交渉が可能になるよう、2010 年 7 月より雄 4 個 体と雄 8 個体の既存 2 集団 12 個体を統合する雄集団形 成を開始した。まず、各個体の個性や個体間の交渉を観 察しながら、集団の構成個体と同居するタイミングを調 整した。まず格子戸越しに豊かな社会経験をもつ 2 個体 が対面する場面を作った。パントやペニスを立てる、遊 びに誘う、体を寄せる、キスをするなどの行動が観察さ れた時点で格子戸を開けて同居させた。加えて、交渉の 乏しい 2 個体間の関係形成では、過去に当該 2 個体両方 と親和的交渉が観察された別の雄個体と 3 個体以上で 同居させた。3 個体以上の同居場面では、チンパンジー どうしの親和的な関係を通じて社会経験の乏しい 2 個 体間の関係形成が進行し、社会経験の乏しい大人チンパ ンジーが社会的スキルを身につける場となり得ること が分かった。 P18 飼育下ニシゴリラの夜間行動 宝田一輝(京都大学野生動物研究センター)、長尾充 徳(京都市動物園)、釜鳴宏枝(京都市動物園)、山本裕 己(京都市動物園)、田中正之(京都大学野生動物研究セ ンター) 飼育下では夜間でも動物の行動の観察が可能であり、 動物の行動を把握するうえで有用な情報を得ることが できる。また観察結果に基づいて飼育環境、飼育管理技 術の改善へ向けた提言を行うことも可能である。本研究 では京都市動物園で飼育されているニシゴリラ (Gorilla gorilla)2 個体(ゲンキ、モモタロウ)を対 象に、夕方から翌朝までの獣舎内の行動を観察した。観 察には獣舎外に設置されている監視カメラの映像を用 いて、ゲンキは 2009 年 11 月から 2010 年 9 月まで、モ モタロウは 2011 年 3 月、4 月の期間を対象とした。対 象とした 2 個体の両方で夜間に寝床から出て行動する 様子(夜間行動)が観察された。夜間行動には採食、飲 水、排便、飼育員通路への注視などの行動が含まれてお り就寝直後の 18 時ごろから 24 時ごろまでに観察された。 また、ゲンキでは夜間行動の頻度や行動の種類に季節変 化が見られた。この要因としては室内の温度、湿度や餌 品目の変更などが考えられる。 P19 チンパンジーの空間利用と行動の関係 中島麻衣、森村成樹、田中正之(京都大学野生動物 研究センター) チンパンジー(Pan troglodytes)の空間利用を理解す ることは、飼育管理に有用だと考えられる。本研究では、 野生下と飼育下においてチンパンジーが利用する高さ と行動カテゴリに注目し、彼らが生活空間をどのように 利用しているかを明らかにすることを目的とした。野生 下での調査は、2010 年 8 月∼10 月にタンザニアのマハ レ山塊国立公園でおこなった。11 個体を対象に終日個 体追跡をおこない、1 分間隔のタイムサンプリングで行 動と高さを目視で推定し記録した。飼育下での調査は、 2011 年 10 月∼11 月に熊本サンクチュアリでおこなった。 11 個体を対象に、1 分間隔のスキャンサンプリングで各 個体の行動と高さを記録した。野生下では地上利用のほ うが樹上利用よりも多かった。また、樹上での行動はお もに採食だった。飼育下では構造物上の利用のほうが地 上利用よりも多かった。構造物上での行動はおもに休息 だった。これは生活環境の違いに起因すると考えられ、

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その要因を考察する。 P20 チンパンジーの味覚に地域差はあるか? ∼ 分子遺伝学からの考察∼ 早川卓志*1,菅原亨*1,郷康広*1,鵜殿俊史*2,平 井啓久*1,今井啓雄*1 *1 京都大学霊長類研究所,*2 京都大学野生動物研究セ ンター 熊本サンクチュアリ 世界中の多様な食文化が示すように、私たちは苦味や 辛味などの味覚を刺激する食事を嗜好する傾向がある。 味覚が生み出す食風景の多様性は野生チンパンジーの 世界にもあるだろうか。チンパンジーは、西アフリカか ら東アフリカにわたって多様な環境に暮らしており、異 なる食環境に身を置かれた地域個体群や亜種が存在す る。味覚についてはどうだろうか。味覚は、主に舌の上 に存在する味覚受容体タンパク質が、食物中の味分子と 結合することでもたらされる。私たちは、日本で飼育さ れている 4 亜種 59 個体のチンパンジーにおいて、28 個 ある苦味受容体タンパク質のアミノ酸配列を決定した。 その結果、西アフリカと東アフリカのチンパンジーの間 には、1 個の苦味受容体あたり平均して 1.1 個のアミノ 酸置換があることがわかった。また 28 個の苦味受容体 のうち 12 個においては機能消失型の個体差が存在する ことがわかった。こうした違いは、野生チンパンジーの 味覚の個体差や地域差を生み出し、異なる食風景を東西 アフリカのチンパンジーにもたらしている可能性があ る。 P21 広島市安佐動物公園におけるチンパンジーの 群れ作り 攻撃性の強い雄への対応−再同居に向けた 新たな試み− 江草真治、山根健市(広島市安佐動物公園)、Michael Seres(京都大学野生動物研究センター熊本サンクチュ アリ) 広島市安佐動物公園のチンパンジー飼育において、大 人雄(サンボウ、18 歳)の他個体への暴力が著しく、 ついにはアカンボウ(ハル、雄2歳)にまで危険が及ぶ 状況となっていた。我々はこれまでの状況を、1.サンボ ウは雌たちの関係を分断しながら暴力的に支配し、サン ボウに盲従するユウコ(雌、推定 41 歳)の存在がそれ をさらに増長させている。2.放飼場の狭さが問題を深刻 にしている。3.少数飼育で見られる典型的な雄の暴力問 題である。と分析し、この状態を改善するためにはサン ボウを物理的・視覚的に雌たちから分離し、ハルを含め た雌たちを団結させることが必要と判断した。2011 年 7月3日にサンボウを分け、7月5日にはサンボウ以外 の個体を同居させた。現在、サンボウは大変リラックス しており、雌たちは徐々に良好な関係を築き始めている ものの、ハルを巡る小競り合いが多く見られ、団結を築 き上げるには更に時間が必要と考えている。 P22 オマキザルにおける環境エンリッチメントと その効果 藤森唯(岐阜大学応用生物科学部)、林美里(京都大 学霊長類研究所思考言語分野) 2010 年度 4 月に、霊長類研究所で飼育されているオ マキザルは、それまでの飼育施設からより狭く単調な飼 育施設へと移動した。その影響か、6 月から吐き戻しと 食べ直し及び糞食が見られるようになった。これらの異 常行動を抑制するために新規物を導入する環境エンリ ッチメントをおこなった。新規物は竹製のフィーダーを 用いた。本研究は、異常行動の頻度を調べるための先行 観察期間、フィーダーを設置した本試験期間、フィーダ ーを外しその後の様子を見る経過観察期間の 3 期間に 分けてオマキザルたちの行動の変化を追った。結果は、 採食時間を大きく延ばすことはできなかったが、吐き戻 しと食べ直しは、本試験期間中に見られなくなり、経過 観察でも観察されなかった。糞食については大きな変化 はなかった。このことから、採食時間を大きく延ばすこ とができなくても、フィーダーという新規物を入れるこ とによって、行動によっては抑制できる可能性があるこ とが示唆された。 P23 チンパンジー(Pan troglodytes)における毛中 コルチゾルの測定 山梨裕美(京都大学霊長類研究所・日本学術振興会)、 森村成樹・森裕介(熊本サンクチュアリ)、林美里・鈴 木樹理(京都大学霊長類研究所) チンパンジーの慢性的なストレスを客観的に定量す ることは、動物福祉の観点から重要である。コルチゾル は身体的・精神的ストレスを受けることにより分泌され るホルモンであり、これまで血・糞・尿・唾液から測定

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がおこなわれてきた。しかし集団で飼育されているチン パンジーにおいて、それらサンプルの収集は難しいこと が多く、保存にも手間がかかる。そこで今回新しいサン プルとして毛に着目し、毛中のコルチゾルの抽出・測定 を試みた。霊長類研究所と熊本サンクチュアリのチンパ ンジー合計 23 個体(オス 13 個体・メス 10 個体)から 毛を採取した。毛は対象個体が慣れ親しんだ飼育者・研 究者によって切られた。抽出にはメタノールを用い、分 析は ELIZA 法を用いておこなった。今回のポスターでは 方法とその妥当性、基準値などについて報告し、今後こ の指標の個体ベースでの動物福祉の評価における有用 性について議論したい。 P24 キンシコウの人工哺育について 髙木美緒・久保麻衣子・松本充史・穴見浩志・山部 哲也・瀧本勉・小山信・本田公三(熊本市動植物園) キンシコウを始めとする葉食ザルの人工哺育はあま り例がなく、一般的に難しいとされている。当園飼育の キンシコウ(ヘンヘン・20 歳)が本年 4 月 23 日にメス 1 頭を出産した。母親は出産・育児経験が豊富であり、 今回も授乳や世話をしている様子が観察されていた。し かし翌日子に衰弱傾向が見られ、乳汁分泌不全が疑われ たためやむなく人工哺育に切り替えた。人工哺育は一般 的なサル類の方法に準じ、子を保育器内に収容、ヒト用 ミルクを与えて行った。当初は哺乳量・体重ともに順調 に増加していたが、人工哺育開始約 3 週間後から軟便、 嘔吐、腹部へのガス貯留といった消化管症状が現れ、整 腸剤・抗生剤の投与やミルクの種類及び濃度の変更等の 対処を行ったが改善せず、6 月 29 日に生後 67 日で死亡 した。解剖の結果、胃から大腸にかけての粘膜の剥離・ 糜爛および浮腫が顕著に認められ、死因は胃腸障害によ る衰弱死であった。本発表では人工哺育の経過とともに、 胃腸障害の原因及び哺育方法の改善点についての考察 を報告する。 P25 熊本市動植物園の新チンパンジー舎と環境エ ンリッチメント ○左座誠・竹田正志・穴見浩志・本田公三(熊本市 動植物園)、鵜殿俊史・寺本研・森裕介・野上悦子・齋藤 亜矢・伊谷原一(京都大学野生動物研究センター) 熊本市動植物園の新チンパンジー舎が、平成 23 年 3 月 1 日に完成した。京都大学野生動物研究センターとチ ンパンジー・サンクチュアリ・宇土(現 熊本サンクチ ュアリ)の助言のもと、園内の池の島を檻で隔てない屋 外運動場(面積 670 ㎡、5m・7m・10mのタワー、登れ る自然木、島にかけた橋)と、間近でチンパンジーを観 察できるガラス張りの屋内展示室を設けた。エンリッチ メントとして消防ホース、ハンモック、各種フィーダー を設置するとともに、大木、孟宋竹及び木の枝等も配置 している。今後も京都大学野生動物研究センターと連携 し、群れの行動観察及び展示を続けながら、当園の特徴 を活かしたエンリッチメントを充実していきたい。さら に、現在の単雄複雌群(♂1・♀3)を複雄複雌群とし、 飼育及び繁殖に取り組んでいくことで、将来的にはニシ チンパンジーの繁殖拠点となることを目指す。 P26 乾燥疎開林のチンパンジーの死体の発見報告 吉川翠(東京農工大学大学院・連合農学研究科)、小 川秀司(中京大学・国際教養学部),Emmanueli Kagoma, 伊谷原一(京都大学・野生動物研究センター) タンザニアの乾燥疎開林地帯のウガラ地域ングエ川 支流の川辺林内(05°13.0′S, 30°27.5′E)でチンパ ンジー(Pan troglodytes)の死体を発見した.発見の経 緯は以下の通りである.2011 年 8 月 19 日に,現地の調 査助手が異臭に気づいてその場所に行ったところ,乾季 で水が干上がった川底の砂地でオスのチンパンジーの 死体を発見した.死体は仰向けで倒れており、腹部に穴 が開き内臓は消失していた.翌 20 日に研究者が助手と 共に現場へ行き状況を記録した.腐敗の状況からすると 死後約 1 週間が経過していた.体重は 18.9kg で,銃痕 はなかった.死体は前日の発見場所から 3m 程移動して おり,地面には引きずられた跡がついていた.また、死 体は横向きになっており,左足の先が新たに齧られてい た.2m 離れた水場の砂地にヒョウ(Panthera pardus)の 新しい足跡があり,1m 離れた木の幹にはヒョウのもの だと思われる動物の爪痕がついていた.他の獣の足跡等 の痕跡はなかった.そのため死体はヒョウに引きずられ た可能性が高い.死因はヒョウ等による捕食の他,病死 等も考えられるが,特定は出来なかった. P27 飼育チンパンジー管理のための社会ネットワ ーク分析

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平賀真紀1),小川直子1),富岡由香里1),小倉典子1),小 林和彦 1), 齋藤憲弥 1),森村成樹 2)、(1)よこはま動物 園,2)京都大学野生動物研究センター) よこはま動物園ズーラシアでは、2009 年より雄 2 個 体、雌 5 個体からなるチンパンジーの飼育を開始した。 生命の共生・自然との調和をテーマに、7 個体を 1 群と する複雄複雌集団がランドスケープイマージョン方式 の運動場で生活している。チンパンジーなどの霊長類の 飼育管理では、集団内の激しい闘争によって個体関係が 不安定になり、場合によっては集団を維持できなくなる ことが知られている。そこで 7 個体の繁殖も計画しつつ 複雄複雌集団を長期的に安定維持することを目指し、2 個体間関係を評価する社会ネットワーク分析を用いた 社会管理手法の開発を試みている。2011 年 8 月∼10 月 までの 3 ヶ月間の観察から、子どもがいない大人 7 個体 の社会関係とその時間的変化について分析した。 P28 脊髄炎を発症したチンパンジーの 5 年間とこ れから 櫻庭陽子、林美里(京都大学霊長類研究所) 京都大学霊長類研究所に暮らす 14 個体のチンパンジー のうち、レオ(29 歳)というオス個体が 2006 年 9 月 26 日脊髄炎を発症し四肢が麻痺した。研究所スタッフの懸 命な治療と介護により体の機能は回復し、現在もスタッ フの介助を得ながらリハビリをおこなっている。今年で 発症から 5 年が経過したことを機に、これまでの行動回 復のまとめと今後どのようなケアが必要なのかを検討 した。まず現在の状況を把握するため、9:30 から消灯 までの行動を記録し、1 日の行動時間配分を明らかにし た。そのデータと、群れで暮らすアキラ(35 歳)のデー タ、過去のレオの寝起き、移動方法の回復経過のデータ とで比較した。結果、レオはアキラよりも社会行動の割 合が少なかった。また、起きている(活動している)割合 は 100%を維持し、主な移動方法がブラキエーションか らクラッチ歩行に移行していた。レオは一人暮らしのた め、社会行動を引き出すためにも人だけでなくほかのチ ンパンジーとの対面機会を増やしていきたい。 P29 東山動物園でのチンパンジーの知性展示 渡邉みなみ1、櫻庭陽子2、市野悦子1、木村元大1 島田かなえ1、鈴木健太1、近藤祐治、木村幸一、足 立幾磨2、(1. 岐阜大学応用生物科学部 2. 京都大学霊 長類研究所 3.名古屋市東山動植物園) 名古屋市東山動物園と京都大学は連携により、2008 年からチンパンジーの知性展示を来園者に向けておこ なっている。この展示を通じて、チンパンジーの知性や 個性、習性を来園者に見てもらい、興味を持ってもらう ことが目的である。具体的な知性展示の内容は東山動物 園で暮らすチンパンジー7 個体に対して、1 台のタッチ パネルを用意し、週 1∼3 回、複数個体を対象に交代で 実験するというものである。実験には馴致課題、見本合 わせ課題、数字系列課題、数字記憶課題があり、各個体 の学習段階に合わせて実験を変えている。今年度の注目 すべき点としては、去年新しく入ったメンバーの学習が スムーズであること、今年の夏にあかんぼうが生まれた ことなどが挙げられる。また昨年度まで積極的に実験に 参加していた個体が、あまり実験に参加しなくなるなど、 数年間実験を続けてきたことによって見つかった変化 もある。今後も実験を継続し、来園者にビデオ映像など を使い展示するとともに、新しい個体やあかんぼうがど のように学習するのかを見ていきたい。 P30 チンパンジーの発達に伴う社会関係の変化∼ 最近接個体の縦断的解析∼ 秋吉由佳1、平栗明実2 水野佳緒里1 市野悦子1 賀菜津美2 渡邉みなみ1 林美里3 (1 岐阜大学 応用生物科学部 2 日本大学 生物資源科 学部 3 京都大学 霊長類研究所) 京都大学霊長類研究所には、2000 年に生まれた 3 個 体のチンパンジーがいる。この 3 個体のチンパンジー、 アユム(オス)、パル(メス)、クレオ(メス)の発達に 伴う社会変化を調べるためにビデオ撮影をおこなって い る 。 こ の ビ デ オ か ら 、 最近 接 距 離 個 体 ( Nearest Neighbor・NN)を 1 分毎のタイムサンプリングで記録し た。1 歳から 4 歳までは 3 個体ともに母親が NN になる 割合が最も高かった。7 歳以降もパルとクレオのメス 2 個体は NN が母親になる割合が最も高かった。しかし、 アユムは 7 歳から 9 歳にかけて同じ群れの α-male のア キラが NN になる割合が最も高くなった。そして、10 歳 以降は、母親個体や他のメス個体が NN になる割合が再 び高くなり、アユムからアキラへの攻撃が見られるよう になった。アユムは α-male に対する挑戦を始めようと して、仲間との同盟関係を広げていると考えられる。今

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後は、2000 年に生まれた 3 個体の社会関係の変化だけ でなく、アユムとアキラの関係の変化にも注目して観察 していきたい。 P31 オランウータンによる食物移動はどのような 関係でおこなわれるか? 田島知之(1 京都大学 人類進化論研究室、2 日本学 術振興会) ヒト以外の霊長類における食物移動は、チンパンジー 属でよく知られてきたが、単独性の強いオランウータン においても同様に起こることが最近わかってきた。しか し高い樹上で起こる社会交渉は観察が困難であり、観察 例数も非常に少ない。そこで直接観察が容易であり、な おかつ多くの食物移動が起こると予想されるマレーシ ア・サバ州のセピロク・オランウータン・リハビリテー ションセンター(SORC)において野外調査を行い、オラ ンウータンの食物移動がどのような関係間で行われる のかを明らかにした。SORC には州内で保護されたオラ ンウータンが森林保護区内で自由生活をしており、林内 では給餌が行われている。この給餌台に訪れた 20 個体 を対象に直接行動観察を行った。観察された事例の半数 以上には年長のオスが関与していた。ワカモノが年長オ スから食物を獲得する場面を見ても、体の大きい年長オ スが小さなワカモノへ攻撃的にふるまうことはほとん どない。こうした年長オスの食物移動場面に見られる寛 容さについて考察していく。 P32 罠にかかった動物に対するボノボの行動 ― ワンバでのケースレポート― 林美里(京都大学霊長類研究所)・大橋岳(日本モン キーセンター)・柳興鎭(京都大学霊長類研究所) ボノボはチンパンジーの近縁種でありながら、その行 動特性や社会のしくみについてチンパンジーとの違い があることも指摘されている。コンゴ民主共和国のワン バ村では長期野外調査が継続されており、野生ボノボの 行動・生態調査がおこなわれている。ボノボの肉食行動 について、ワンバではムササビの肉食が観察されていて、 他の調査地ではダイカーなどのほ乳類の捕食が報告さ れている。2011 年 8 月 24 日、ワンバでボノボが罠にか かったダイカーに遭遇した場面を観察した。まだ生きて いるダイカーに直接・間接的に触れたり、ゆすったりす る行動が見られたものの、殺すことなくその場を立ち去 った。オスだけでなく、子どもを抱えたメスもこれらの 行動に参加した。また、チンパンジーと異なり、環境表 面から遊離した物体を用いた接触は確認されなかった。 肉食の頻度やプレイイメージの存在、対象操作の傾向に ついてチンパンジーとの比較も含めて考察をおこなっ た。 P33 チンパンジーにおける自己顔の知覚 ○友永雅己(京都大学霊長類研究所) チンパンジーは、自己鏡映像認識が可能であることが 知られており、最近では、self-agency の感覚も有して いることが示されてきた。このような側面からの自己認 識の研究に比べて、知覚的な自己、たとえば自分の身体 の知覚や、随伴的な関係から切り離された自己の容姿の 知覚に関する研究はほとんどなされていない。そこで本 研究では、視覚探索課題を用いて、未知顔、既知顔、そ して自己顔の弁別について、3 個体のチンパンジーを対 象に検討を行った。参加した 3 個体はみな、鏡映像に対 して明瞭な自己指向性反応を示した。実験は、まず、既 知個体の顔と未知個体の顔を組み合わせた条件で実施 した。その結果、既知個体を未知個体から検出する方が 逆の場合よりも容易であるということが分かった。この 結果は、これまで人やチンパンジーでの先行研究の結果 とも一致するものであった。次に、自己の顔を用いて実 験を行ったところ、自己の顔に対する成績は既知顔と未 知顔のちょうど中間に位置した。つまりチンパンジーに とって、自己顔は未知顔よりも見つけやすいが、既知顔 よりも見つけにくいことが明らかとなった。 P34 離合集散する飼育チンパンジー雄 15 個体の維 持管理についての課題 森 裕介,野上悦子, 森村成樹(京都大学・熊本サ ンクチュアリ) 飼育チンパンジー(Pan troglodytes)の集団管理で利 用できる情報は限られている。これまで集団を形成する 際の闘争を防ぐための情報、つまり未知のチンパンジー 間での闘争について報告はあるが、集団を長期維持する 際に生じる既知のチンパンジー間の闘争にかんする問

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題についてはほとんど議論されてこなかった。熊本サン クチュアリで飼育されている雄 15 個体は、2010 年 12 月に初めて全個体が同居するに至った。その後、集団構 成が毎日変化する 2∼3 群の小集団と全個体同居を定期 的に繰り返す「離合集散エミュレーション」によって集 団を維持した。10 ヶ月間の経過観察の中で、雄 15 個体 は安定して維持できることが分かった。その一方で、個 体間関係は変化し、決まった 2 個体が組んで他の個体を 攻撃する、緊張場面で劣位の若い個体が過剰に他個体を 攻撃するなどの問題に対処した。時間とともに変化する チンパンジー雄どうしの関係について報告する。 P35 『飼育下ニホンザルにおける死児運搬と死児 食いの事例』 須田(橋本) 直子(京都大学霊長類研究所)、夏目尊 好(岐阜大学応用生物科学部) 【はじめに】 霊長類において死児に対する母親の行動についてはい くらか記述がある(Matsuzawa et al., 1990、Nakamichi, 1996)。ニホンザルにおいても死児運搬行動がしばしば 起こると知られているが、ほとんどが数日以内に死児を 放棄する(Sugiyama et al., 2009)。われわれは、飼 育下ニホンザルの母親が約 1 ヵ月間にわたって死児を 運搬しそれに引き続きミイラ状となった死児を摂食し た事例について報告する。 【経過観察】 京都大学霊長類研究所リサーチリソースステーション の屋外放飼場(約 5000 ㎡・自然林)で飼育されている 24 頭の群において、2011 年 4 月 20 日に生後 0 日齢の新 生児を抱えている 1 頭のメスを発見した。新生児の呼吸 はなくすでに死亡していたと思われる。毎日給餌の際に、 母ザルの行動、死児の状態、他個体との交渉についてア ドリブサンプリングをおこなった。3 日目には死児に対 するグルーミングや尻舐めといった母性的行動がみら れ、8 日目からは口にくわえて運搬することが増加した。 28 日目には突如として死児の下半身を食べ始め、30 日 目には死児の姿は見当たらなくなった。死児運搬が長期 化したことに加え、ニホンザルによる同種他個体の摂食 はこれまでに報告されておらず、まれなケースと考えら れる。 P36 YouTube 動画呈示によるニホンザルの異常行 動の軽減 小倉匡俊(京都大学霊長類研究所) 飼育下の霊長類に対する環境エンリッチメントとし て動画呈示が利用されている。しかし、選好性を満たす 動画を、新奇性を維持しながら提供するのは、飼育者に とって大きな負担となる。そこで本研究では、YouTube 動画を利用して自動的に動画呈示を提供するプログラ ムを作成し、ケージ飼育ニホンザルの動物福祉に与える 影響の評価をおこなった。動画呈示条件における異常行 動の頻度が非動画呈示条件よりも低かった。動画呈示が 持つ異常行動の軽減効果が示された。また、動画呈示に 対する注視時間は維持され、動画の新奇性は保たれた。 ニホンザルが被写体となった動画呈示中の異常行動の 頻度が低く、動画の内容により異常行動の減少効果が異 なった。ケージ内の滞在場所に応じて動画呈示の有無が 変わる条件では動画が呈示される場所に長く滞在し、動 画呈示を選好的に操作した。本研究で作成した動画呈示 プログラムは、選好性を満たす動画を継続的に低コスト で提供し、ケージ飼育ニホンザルの福祉の改善に寄与す る安価な方法であることが示された。 P37 NPO 団体と動物園の協働「東山こどもガイド」 の紹介 稲田菜摘¹²・長尾彩加¹²・櫻庭陽子¹・落合知美¹・ 堤創¹ (¹NPO 法人東山動物園くらぶ・²岐阜大学応用生 物科学部) NPO 法人東山動物園くらぶは、2007 年度に社団法人名 古屋青年会議所発案の事業を名古屋市東山動物園と協 働で実施したことがきっかけで設立し、市民の環境や社 会に対する意識を高め、動物園の振興に寄与することを 目的として、市民参加型事業や普及・啓発・支援事業な どをおこなっている。なかでも「東山こどもガイド」は 今年で 5 年目をむかえた大きなイベントである。小学生 が、当団体オリジナルの教材や、動物園での飼育実習を 通して動物について学び、ガイドの内容やパネルなどの グッズを作成し、最終日に一般来園者の前でその動物に ついてガイドをおこなう。このイベントに参加する子ど もたちは、正しい知識を習得するだけではなく、その知 識を来園者に披露することで、来園者にも動物たちや彼 らの暮らす環境に対して興味関心を深めることができ る。このような市民と動物園とが協働した企画は、動物

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園のソフト面を充実させ、環境教育としても重要だろう。 P38 ガボン南西部ムカラバ・ドゥドゥ国立公園周 辺における獣害状況とその対策 松浦 直毅(日本学術振興会/京都大学大学院アジ ア・アフリカ地域研究研究科) アフリカ熱帯林の保護地域では、近年になってさまざ まな自然保護プロジェクトが進められているが、有効な 保護体制が確立している地域はすくない。その大きな理 由のひとつは、保護活動と地域住民とのあいだに対立が あるからである。なかでも獣害は、住民の生活を脅かし、 野生動物に対する住民の感情を悪化させる問題である。 そこで発表者は、ガボン南西部のムカラバ・ドゥドゥ国 立公園周辺において、地域住民に対する聞きとり調査と 獣害状況のモニタリング調査をおこなった。その結果、 多くの住民が生活をおびやかす深刻な問題ととらえて おり、実際にゾウや大型類人猿による被害が大きいこと が明らかになった。つぎに発表者は、獣害調査の結果に もとづいて住民との意見交換をおこない、有効な対策に ついて検討した。実効性と持続性の観点からは、住民自 身よる畑の見張りが効果的であるという結論がえられ ており、現在は、獣害対策に着手してその効果を検証し ているところである。 P39 改修工事がチンパンジーの行動に与える影響 評価 有賀菜津美1、山梨裕美2、林美里2 (1 日本大学生 物資源科学部、2 京都大学霊長類研究所) 京都大学霊長類研究所では、チンパンジーの放飼場の 改修工事が 2011 年 8 月より始まり、現在もおこなわれ ている。本研究は、飼育環境の変化が、チンパンジーの 行動や利用場所の頻度に影響するのではないかと予測 し、調査した。調査対象は、霊長類研究所で暮らすチン パンジー13 個体のうちの、6 個体(♂2 個体、♀4 個体) であり、工事のおこなわれていない土曜日と日曜日に観 察をおこなった。フォーカルアニマルサンプリング法を 用い、各個体 10 分間、15 秒ごとの瞬間サンプリングで 行動と利用場所を記録した。さらに、改修工事中にかか るストレスによって過剰にグルーミングしているので はないかと考えた。また、チンパンジーの毛の抜け具合 も調査した。今回の発表では、工事中におこなった調査 の途中経過を報告する。調査は、改修工事後以降も続け ていき、新しい放飼場がチンパンジーの行動に与える影 響を評価し、考察していきたい。 P40 かみね動物園チンパンジーの森 人工哺育個 体と実母との早期群れ入れの試み 山内直朗、大栗靖代(日立市かみね動物園) 2011 年 2 月 7 日、かみね動物園に 19 年ぶりとなるメ スのチンパンジーが誕生した。しかし、残念ながら母親 は赤ちゃんを抱くことはなく、やむなく人工哺育に。 人工哺育にはなってしまったが、赤ちゃんにはチンパン ジーとして長い生涯を生きていっほしい、出産、育児も してほしいと考え、できるだけ早い時期に群れに合流さ せるための取り組みを行ってきた。実母との接触、同居、 哺育環境の工夫の様子を紹介する。 P41 野生チンパンジーの眠りを覚ます要因 座馬耕一郎((株)林原生物化学研究所 類人猿研 究センター) チンパンジーは夜間ずっと眠っているわけではなく 騒いだりする。本研究は夜のチンパンジーを観察し、眠 りを覚ます要因(生態的要因:動物の足音や声、社会的 要因:他のチンパンジーの声、生理的要因:糞尿)を分 析した。観察はタンザニア、マハレ山塊国立公園で 2011 年 8∼9 月の 5 夜おこなった。動物の足音は 5 夜とも観 察されたが(N=52)、チンパンジーの発声を引き起こした のは 3 回に過ぎなかった。一方で稀にしか観察されなか ったヒョウの声(N=1)に対しては、多くの個体による発 声が引き起こされた。パントフートは 5 夜とも観察され (N=63)、内 26 回は他個体の発声を引き起こし、20 回は 返事として発声された。返事ではないパントフートの前 20 分以内には糞尿が観察されることが多かった。以上 より、(1)日常的には糞尿により目が覚めて声を出す、 (2)その声により起こされる、(3)まれに動物によって起 こされる、と考えられた。

P 4 2 Chimpanzee Introductions and Group Formations. The past, the present, with suggestions for the future.

Michael Seres ( Kumamoto Sanctuary, WRC, Kyoto University)

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As we gain more precise knowledge about chimpanzees’ husbandry and behavior in captivity the path to improve their welfare worldwide is evident. In the past chimpanzee groups were formed randomly, manipulating available individuals an institute managed to acquire from the wild or with swopping among them. Geographical origin and to promote forming groups out of same subspecies to propagate is only becoming the standard today. With the available technology we clarify subspecies status in existing captive populations with the aim of better management and conservation in the future. (Carlsen, pers. comm.) It is often the necessity to move individual chimpanzees between institutes and integrate them into their social groups. These procedures are still difficult on technical as well as on logistical-behavioral level that undermine their welfare. Obsolete group formation techniques used in the past are still very much employed today. Technical aspects as well as step-wise, dyadic introduction methods, their key points will be highlighted. This poster intends to summarize such obstacles while showing the path for more successful procedures in order to promote chimpanzees’ wellbeing and conservation.

P43 熊本市動植物園のゾウ飼育の歴史と現在のア フリカゾウにおける飼育管理 ○北川勇夫・松本松男・吉村伸也・高田桂史・本田 公三(熊本市動植物園) 熊本市動植物園では、1929年の開園当初から、ア ジアゾウの飼育を開始し、1984年からは、現在のア フリカゾウ(マリー・推定31歳♀)(エリ・推定30 歳♀)を飼育している。過去のゾウ飼育の経験を踏まえ、 日常の健康管理、スキンシップ、飼育員と信頼関係を構 築しながら、人と飼育下によるゾウの豊な暮らしを目的 に、来園当初から直接飼育を行っている。来園した時に は、野生状態のままであり、警戒心が強く、馴致、調教 にとても苦労したと聞いている。しかしながらゾウへの 愛情と努力の結果、現在まで事故もなく、飼育員の引継 ぎもスムーズに行え、様々なハンドリングも可能となっ ている。 2010年4月からは、高齢に向かうゾウの福祉と健 康管理を目的とし、四肢のケア、採血、検温等を新たに 取り入れ、馴致、調教を行っている。その経過と併せて 本園で飼育してきたゾウの歴史を紹介する。 P44 熊本市動植物園第 3 期再編整備におけるニホン ザルエリア整備経過 ○松本充史,松成忠広,中嶋一誠,田口秀之,中村 寿徳,田尻一誠,本田公三(熊本市動植物園)、若生謙 二(大阪芸術大学) 熊本市動植物園では平成 23,24 年度に第 3 期再編整備 としてニホンザル・ペンギン・カピバラエリアの工事を 行う。ニホンザルエリアでは、「奥山と里山の再現」「人 との共生の教育材料としての施設」など飼育員の意見か らコンセプトを決め、展示環境を生息環境に近づけるこ とでニホンザルの行動を引き出す生息環境展示を行う ことを決定した。 そのためには樹木や草本類の植栽を十分に行い、植物 とニホンザルが共生できるパドックを造る必要がある。 パドックはケージ式で、ニホンザルの行動を引き出すた めに十分な樹形のある高木を移植しケージから突出さ せ、低木、草本類も多数植栽する。パドック完成後半年 ほど植物活着のための養生期間を設けることなどを計 画している。 この施設を通じて、来園者が奥山エリアと里山エリア の 2 つの異なる環境の対比を実感し、身近な動物である ニホンザルとの共生や環境教育を学ぶことができる場 となるよう整備していく考えである。 P45 チンパンジー飼育 20 年の経緯 山田信宏、木村夏子、小西克也、福守朗、笠木靖、 本田祐介、増田裕幸(高知県立のいち動物公園) のいち動物公園では、開園した1991年よりチンパンジ ーの飼育を開始した。いずれも当時1歳齢で、人工哺育 により生育した4頭(雄2頭、雌2頭)であった。1994年 に雌1頭(当時6歳)、さらに1999年にも雌1頭(当時21 歳)を導入した。雄2頭に繁殖行動が見られないため、2 003年からは凍結精子を用いた無麻酔下での人工授精に 取り組んだが、受胎には至らなかった。そこで、2008 年に繁殖を目的として計6頭の搬出入を行い、群の再編 成を行った。その結果、計8頭(雄2雌6)の複雄複雌群 が形成された。2009年には双生児が誕生し、自然哺育に て順調に成育している。2011年3月には雄の搬出入を行 い、複雄複雌群の再形成を目指して群づくりを進めてい る。施設面では、2006年に間伐材を用いた木製タワーを 設置し、多摩動物公園の「UFO キャッチャー」を参考に した遊具を導入するなど、飼育環境の充実にも努めてい

参照

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