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中辻, 七朗

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

カード配置法によるデザインの類似の可視化・定量 化に関する研究 : デザイン保護法制の「類似」に関わ る問題への適用

中辻, 七朗

https://doi.org/10.15017/1931922

出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

氏 名 : 中辻  七朗

論 文 名 :カード配置法によるデザインの類似の可視化・定量化に関する研究 ―デザイン保護法制の「類似」に関わる問題への適用―

区 分 : 甲

論 文 内 容 の 要 旨

本論文では、デザイン保護法制における「類似」に対して、実験的アプローチを適用することに より、①デザイン保護法制の論点の存在を検証し、②デザイン保護法制における「類似」の範囲を 定量化し、③デザイン保護法制に関する新たな「類似」の論点を提起することを試みた。また、実 験的アプローチを適用するにあたり、類似関係を可視化することにより類似度を取得する「カード 配置法」を提案した。「カード配置法」は、被験者がカードを類似度に応じて2次元空間に配置する ことによって、カードに配された刺激間の類似関係を可視化し、このカード間の距離から刺激間の 類似度を取得する手法である。

第1章では、デザイン保護法制においては、「類似」の概念がキーコンセプトになるとともに、デ ザイン法制における「類似」に対して、実験的アプローチを適用することによる意義を説明した。

具体的には、①デザイン保護法制で論点となっている「類似」の判断主体の差異が実際に生じてい るのか否かを検証できること、②デザイン保護法制における「類似」の範囲を定量化することによ り、裁判所等の判断の客観性を担保できるとともに、類否判断の予測困難性を低減できること、③ 認知科学分野で指摘されている「類似」のメカニズムがデザイン保護法制における「類似」の判断 手法に反映されていないことを検証し、従来の類否判断手法の修正点を指摘できることを説明した。

第2章では、「カード配置法」の有用性を明らかにするために、カード配置法と多次元尺度法

MDS: Multidimensional scaling)の両手法を、欧文タイプフェイスの刺激に適用し、両手法の 一致点と差異点を検討した。MDS は、対比較で対象間の類似度を取得し、この類似度を空間上の 距離に置換し、各対象間の類似構造をマッピングする手法である。カード配置法により取得された 各刺激の空間的配置と、MDS により取得された各刺激の空間的配置を比較することにより、カー ド配置法は、MDS と同レベルで被験者の認知科学的空間を反映することが分かった。また、カー ド配置法は、実験に要する時間がMDSよりも短くできることが明らかになった。

第3章では、著作権法においてタイプフェイスの保護が弱い原因の一つとして、専門家と非専門 家の類似判断が異なることを仮説として提示し、「カード配置法」を用いて、タイプフェイスの類似 に関する専門家と非専門家の判断の差異を検討した。刺激としては、欧文タイプフェイスであるセ リフ書体とサンセリフ書体を用いた。この結果、セリフ書体およびサンセリフ書体の両方において、

専門家と非専門家では類似の判断が異なることを示した。また、特に、非専門家が判断したサンセ リフ書体の類似度は、字体の太さと強い相関関係があることを明らかにした。

第4章では、「カード配置法」を意匠権侵害訴訟で用いられた登録意匠、被告意匠、公知意匠に適 用することにより、各意匠間の類似度を取得し、閾値を設定することにより、登録意匠と被告意匠 が類似するか否かを判定する2つの手法を検討した。「最短公知距離法」は、各意匠が配置された2

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次元空間において、登録意匠または被告意匠から最も近接する公知意匠まで、登録意匠または被告 意匠の類似範囲が広がっていると考えて、閾値を設定する手法である。また、別の手法として、「単 純距離法」を提案した。「単純距離法」は、模造紙上に配置されている登録意匠と被告意匠の距離自 体と判決の結論を比較して、閾値を設定する手法である。これらの手法によれば、意匠権侵害訴訟 の結論を7割から8割程度の確率で予想できることが示された。このため、意匠権侵害訴訟におけ る類否判断に関する予測困難性をある程度低減でき、意匠権侵害訴訟における類否判断の客観性を 担保することが可能である。

第5章では、意匠権侵害訴訟で行われている類否判断と、認知科学の分野で検討されてきた類似 モデルとの対応関係を検討し、意匠侵害訴訟における類否判断の手法には、認知科学分野で知られ ている「文脈効果」が反映されていないことを指摘した。「文脈効果」とは、2つの対象間の類似度 が「他の対象」により影響を与えられることをいう。意匠権侵害訴訟においては、登録意匠と被告 意匠の類否を判断するにあたり、公知意匠という「他の意匠」が参酌されるが、意匠権侵害訴訟に おける類否判断プロセスでは、公知意匠は登録意匠の類似範囲を狭める方向でしか参酌されない。

そこで、公知意匠によって、登録意匠の類似範囲が拡大し、登録意匠と被告意匠の類似度が高まる 可能性があることを仮説として提示し、「カード配置法」を用いて検討を行った。この結果、公知意 匠によって、登録意匠の類似範囲が拡大しうることを明らかにした。

以上より、本論文では、デザイン保護法制における「類似」概念をキーコンセプトとして定め、

「類似」に対して実験的アプローチを適用するにあたり、類似関係を可視化する「カード配置法」

を提案して、有用性を検証した。また、「カード配置法」を3つの事例に適用し、デザイン保護法制 の「類似」に対して、実験アプローチを適用する意義を確認した。

参照

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