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環 境 保 全 製 品 の 開 発

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(1)

環 境 保 全 製 品 の 開 発

岩 村 淳 一

はじめに

市場の策定

戦略的開発目標の設定

製品コンセプトとアイディアの創出

知的情報の具現化と製品の進化

おわりに

はじめに

ベンチャー企業を開業(もしくは継続)するに当たって,人材,資金が不足し,それ が開業もしくは企業継続の足枷となっていると云われている。特に資金不足は企業を継 続するに当たって致命的要因の一つである。

これを解決する一つとして,ベンチャー企業が有する知的所有権を現金化することは 企業を継続するに当たって重要かつ有効な手段である。しかし,資金調達における知的 所有権の担保価値は極めて低く,高い評価を得ることは極めて稀である。これは知的所 有権を評価する人達(融資,助成)の自然科学的,社会科学的知識がいずれかの分野に 偏執し,判断に躊躇することに起因していると思われる。

しかし,近年,経営感覚を持った自然科学的分野の研究者の育成が進みつつある。一 方行政の取り組みもあって,知的所有権の評価も少しずつ見直され,短期的に具現化可 能な特許等の取り引きが見受けられる。

経済が低迷している,特に近畿周辺において,若い(学生)起業家の開業が望まれて いる。ベンチャー企業の開業もしくは企業の継続に当たって起業家の資金とも云える知 的所有権を確立するために自然科学的知識を社会科学的知識でリスクを最小化し,ベネ フィットを最大化するための開発手法と市場が要求する知的情報をより具現的成果とし て得るべき戦略的手法,特に環境ビジネスの規制強化の内にビジネスチャンスを見い出 す方策についての特許戦略について述べたい。

市場の策定

ここで取り扱う,環境ビジネスの定義と分類は2002年3月に実施した「近畿地域に

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おける環境ビジネス企業実態調査報告」(近畿経済産業局)の概念を私達がそのまま用 いた。

1 環境ビジネスの定義

『環境ビジネス』と一口に云われている経済活動とは,具体的にどのようなものなの だろうか。

その問いに対して,「産業環境ビジョン」(通商産業省産業構造審議会,平成6年7 月)では,『環境産業』の意義を「産業活動を通じた環境対策の新たな展開」に求め,

数多くの企業が環境に対して積極的に取り組むことを期待して,できるだけ広く捉え

『環境負荷の低減に貢献できる可能性がある産業活動分野』としている。つまり,『環境 産業』とは具体的な産業分野で捉えるものではなく,環境に配慮した企業活動全般を指 す。

そのような企業活動について,「循環経済ビジョン」(通商産業省産業構造審議会,平 成11年7月)では,「産業の環境化」と「環境の産業化」という2つのカテゴリーを示 した。

前者は,環境を前提とした企業行動規範の確立を求めたもので,ISO 14000シリーズ

やEMS(環境経営システム)の導入による廃棄物の軽減等といった,いわば内向きな

企業活動に言及したものであった。

一方後者は,企業の商行為において提供する財やサービスに環境という価値を付加さ せ,環境を市場とする新たな動きにつなげる,といった市場創造的な企業活動を指して いる。

また,「循環経済ビジョン」(通商産業省産業構造審議会,平成11年7月)では,資 源循環の考え方について,従来のリサイクル(1 R)対策を拡大して,リデュース(Re-

duce:廃棄物の発生抑制),リユース(Reuse:部品等の再利用),リサイクル(Recy-

cle:使用済製品等の原材料としての再利用),いわゆる「3 R」の取り組みを進めてい

くことが必要であるとの提言がなされた。これにより,『環境産業』に位置づけられる 企業の環境対応のあり方が大きな広がりを持つこととなった。

このように「産業環境ビジョン」や「循環産業ビジョン」で取り上げられた『環境産 業』の考え方を参考にしつつ,産業振興という目的の下に本調査における『環境ビジネ ス』を概観すると,3 Rに対応した製品開発やソフト技術開発等のビジネスモデルを提 供することをより重視する「環境の産業化」の立場から『環境ビジネス』を「新たな市 場形成につながる,環境を付加価値とした財・サービスを提供する商行為」と定義し た。

環境保全製品の開発(岩村) 721)1

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2 環境ビジネスの分類

中小企業の環境問題に対応した新たなビジネス展開事例は,上記の定義により収集し たものである。そして,「産業環境ビジョン」に示された環境関連産業の分類(第1図)

を参考にグループ化し,第1表に示す分類とした。

1 環境関連産業の分類 環境産業

1.環境支援関連分野

(公害防止装置,環境コンサルティング等)

環境調和型企業活動を支援するための装置,サービスの提供を行う事業活動 2.廃棄物処理・リサイクル関連分野

(廃棄物処理事業,リサイクル事業等)

国民生活,経済活動から発生する廃棄物等による環境への負荷の低減を図る事業活動 3.環境修復・環境創造関連分野

(河川・湖沼浄化,都市緑化等)

河川,湖沼等の環境そのものの修復,創造を目的に展開される事業活動 4.環境調和型製品関連分野

(リサイクル容易化のための製品,廃棄物減量化のための製品等)

環境負荷の低減に配慮した製品・材料の供給を行う事業活動 出所:通商産業省「産業環境ビジョン」(平成6年)

1 環境ビジネスの分類 1.公害防止

公害防止装置製造及び設計・管理等,環境調和 型企業活動を支援する為の装置,サービスの提供 を行う事業活動

○大気汚染測定・防止 ○水質汚濁測定・防止 ○土 壌汚染計測装置 ○原油流出対策 ○ごみ分別・粉砕

・焼却炉

2.各種リサイクル

廃棄物等の発生による環境への負荷の低減を図 る事業活動

○古紙リサイクル ○廃プラスチックリサイクル ごみの固形燃料化 ○汚泥・し尿リサイクル ○スチ ール缶・アルミ缶リサイクル ○コンポスト(生ごみ の推肥化) ○廃水再生利用(中水道) 等

3.エコマテリアル(新素材・新技術)

環境負荷の低減に配慮した製品・材料の供給を 行う事業活動

○生分解性プラスチック ○生分解性潤滑油 ○非木 材紙 ○非スズ系船底防汚塗料 ○植物性インク

4.クリーンエネルギー

エネルギー供給の効率化と新エネルギーの導入 を図る事業活動

〈再生可能なエネルギー〉

○小型水力発電装置 ○風力発電装置

○太陽熱利用・太陽光発電 ○燃料電池

〈省エネ&低公害エネルギー〉

○低公害車 ○ヒートポンプ ○廃熱・未利用エネル ギー ○節電装置 ○活用システム ○環境共生住宅

○コジェネレーションシステム 5.エコシステム(生態系)修復

河川・湖沼浄化,都市緑化等,環境そのものの 修復,創造を目的に展開される事業活動

○緑化・植林事業 ○ビオトープ ○屋上緑化 ○多 自然型河川修復 ○人工なぎさ ○土壌・地下水汚染 浄化 ○土壌改良 ○農地改善 ○里山の回復

6.情報・ソフト ○環境コンサルティング ○環境影響評価 ○環境情

報関連 ○金融(エコ・ファンド) 等 出所:通商産業省「産業環境ビジョン」(平成6年)

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戦略的開発目標の設定

1 環境関連法

環境ビジネスに係わる法律の基準値をクリアーすることは先行戦略を推進する企業に とって極めて重要であり,かつ競合他社との競争において勝ち残る方策である。

以下に環境に係わる法律を列挙する。

1−(1)環境一般

1 環境基本法 (平五法律九十一)

2 環境基本法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律

(平五法律九十二)(抄)

3 自然環境保全法 (昭四十七法律八十五)

(第十一章二七七五頁参照)

4 瀬戸内海環境保全特別措置法 (昭四八法律百十)

(第五章一四八五頁参照)

5 公害健康被害の補償等に関する法律 (昭四十八法律百十一)

(第九章二五〇三頁参照)

6 水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法 (昭五十三法律一○四)

(第九章二五七三頁参照)

7 循環型社会形成推進基本法 (平十二法律百十)

(第七章一八〇七頁参照)

8 国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律 (平十二法律一○○)

9 (旧)公害対策基本法 (昭四十二法律一三二)

10 環境影響評価法 (平九法律八一)

11 人の健康に係わる公害犯罪の処罰に関する法律 (昭四十五法律一四二)

12 特定工場における公害防止組織の整備に関する法律 (昭四十六法律一○七)

13 計量法 (平四法律五一)(抄)

1−(2)地球環境

1 地球温暖化対策の推進に関する法律 (平十法律百十七)

2 特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律 (昭六十三法律五十三)

3 特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律

(平十三法律六十四)

4 特定有害廃棄物等の輸出入等の規制等によるオゾン層の保護に関する法律

(昭六十三法律五十三)

環境保全製品の開発(岩村) 723)1

(5)

5 特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律

(平十三法律六十四)

6 特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律 (平四法律百八)

7 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律 (昭四十五法律百三十六)

8 南極地域の環境の保護に関する法律 (平九法律六十一)

9 石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律

(昭五十五法律七十一)(抄)

10 エネルギーの使用の合理化に関する法律 (昭五十四法律四十九)

11 エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関す

る臨時措置法 (平五法律十八)

1−(3)大気汚染・悪臭

1 大気汚染防止法 (昭四十三法律九十二)

2 自動車排出ガスの量の許容限度 (昭四十九環告一)

3 大気の汚染に係る環境基準について (昭四十八環告二十五)

4 二酸化窒素に係る環境基準について (昭五十三環告三十八)

5 ベンゼン等による大気の汚染に係る環境基準について (平九環告四)

6 道路運送車両法 (昭二十六法律百八十五)(抄)

7 揮発油等の品質の確保等に関する法律 (昭五十一法律八十八)(抄)

8 自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減

等に関する特別措置法 (平四法律七十)

9 スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律(平二法律五十五)

10 悪臭防止法 (昭四十六法律九十一)

11 ダイオキシン類対策特別措置法 (平十一法律百五)

1−(4)騒音・振動

1 騒音規制法 (昭四十三法律九十八)

2 特定工場等において発生する騒音の規制に関する基準

(昭四十三厚・農・通・運告一)

3 特別建設作業に伴って発生する騒音の規制に関する基準 (昭四十三厚・建告一)

4 自動車騒音の大きさの許容限度 (昭五十環告五十三)

5 騒音に係る環境基準について (平十環告六十四)

6 航空機騒音に係る環境基準について (昭四十八環告百五十四)

7 新幹線鉄道騒音に係る環境基準について (昭五十環告四十八)

8 幹線道路の沿道の整備に関する法律 (昭五十五法律三十四)

9 公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律

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(6)

(昭四十二法律百十)

10 特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法 (昭五十三法律二十六)

11 空港整備法 (昭三十一法律八十)(抄)

12 航空機燃料譲与税法 (昭四十七法律十三)(抄)

13 防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律 (昭四十九法律百一)

14 振動規制法 (昭五十一法律六十四)

15 特別工場等において発生する振動の規制に関する基準 (昭五十一環告九十)

1−(5)水質汚濁・地盤沈下

1 水質汚濁防止法 (昭四十五法律百三十八)

2 水質汚濁に係る環境基準について (昭四十六環告五十九)

3 地下水の水質汚濁に係る環境基準 (平九環告十)

4 湖沼水質保全特別措置法 (昭五十九法律六十一)

5 瀬戸内環境保全特別措置法 (昭四十八法律百十)

6 特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する特別措置法

(平六法律九)

7 下水道法 (昭三十三法律七十九)(抄)

8 浄化槽法 (昭五十八法律四十三)

9 水道法 (昭三十二法律百七十七)(抄)

10 工業用水法 (昭三十一法律百四十六)

11 建築用地下水の採取の規制に関する法律 (昭三十七法律百)

〔その他の関係法令〕

12 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律 (昭四十五法律百三十六)

13 ダイオキシン類対策特別措置法 (平十一法律百五)

14 自然公園法 (昭三十二法律百六十一)

15 河川法 (昭三十九法律百六十七)(抄)

16 港湾法 (昭二十五法律二百十八)(抄)

1−(6)土壌汚染・農薬

1 農用地の土壌の汚染に関する法律 (昭四十五法律百三十九)

2 土壌の汚染に係る環境基準について (平三環告四十六)

3 農薬取締法 (昭二十三法律八十二)

1−(7)廃棄物・リサイクル

1 循環型社会形成推進基本法 (平十二法律百十)

2 廃棄物の処理及び清掃に関する法律 (昭四十五法律百三十七)

3 地域保健対策強化のための関係法律の整備に関する法律(平六法律八十四)(抄)

環境保全製品の開発(岩村) 725)1

(7)

4 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法

(平十三法律六十五)

5 資源の有効な利用の促進に関する法律 (平三法律四十八)

6 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律 (平七法律百十二)

7 特定家庭用機器再商品化法 (平十法律九十七)

8 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律 (平十二法律百四)

9 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律 (平十二法律百十六)

10 広域臨海環境整備センター法 (昭五十六法律七十六)(抄)

11 下水道の整備等に伴う一般廃棄物処理業等の合理化に関する特別措置法

(昭五十法律三十一)

1−(8)化学物質

1 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律 (昭四十八法律百十七)

2 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律

(平十一法律八十六)

3 毒物及び劇薬取締法 (昭二十五法律三百三)(抄)

4 労働安全衛生法 (昭四十七法律五十七)(抄)

5 食品衛生法 (昭二十二法律二百三十三)(抄)

6 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律 (昭四十八法律百十二)(抄)

7 ダイオキシン類対策特別措置法 (平十一法律百五)

8 ダイオキシン類による大気の汚染,水質の汚濁及び土壌の汚染に係る環境基準に

ついて (平十一環告六十八)

1−(9)被害救済・紛争処理

1 公害健康被害の補償等に関する法律 (昭四十八法律百十一)

2 水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法 (昭五十三法律百四)

3 (旧)公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法 (昭四十四法律九十)(抄)

4 水銀等による水産動植物の汚染に係る被害漁業者等に対する資金の融通に関する

特別措置法 (昭四十八法律百)

5 公害等調整委員会設置法 (昭四十七法律五十二)

6 公害紛争処理法 (昭四十五法律百八)

1−(10)費用負担・助成

1 公害防止事業費事業者負担法 (昭四十五法律百三十三)

2 公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律

(昭四十六法律七十)

3 下水道整備緊急措置法 (昭四十二法律四十一)

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(8)

4 廃棄物処理施設整備緊急措置法 (昭四十七法律九十五)

5 環境事業団法 (昭四十法律九十五)

6 地価税法 (平三法律六十九)(抄)

7 租税特別措置法 (昭三十二法律二十六)(抄)

8 地方税法 (昭二十五法律二百二十六)(抄)

1−(11)自然保護

1 自然環境保全法 (昭四十七法律八十五)

2 自然公園法 (昭三十二法律百六十一)

3 都市緑地保全法 (昭四十八法律七十二)

4 首都圏近郊緑地保全法 (昭四十一法律百一)

5 近畿圏の保全区域の整備に関する法律 (昭四十二法律百三)

6 都市公園法 (昭三十一法律七十九)

7 瀬戸内海環境保全特別措置法 (昭四十八法律百十)

8 温泉法 (昭二十三法律百二十五)

9 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律 (大七法律三十二)

10 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律 (平四法律七十五)

1−(12)国土利用

1 土地基本法 (平元法律八十四)(抄)

2 国土利用計画法 (昭四十九法律九十二)(抄)

3 国土総合開発法 (昭二十五法律二百五)(抄)

4 琵琶湖総合開発特別措置法 (昭四十七法律六十四)

5 大阪湾臨海地域開発整備法 (平四法律百十)

6 総合保養地域整備法 (昭六十二法律七十一)

7 工場立地法 (昭三十四法律二十四)

8 電源開発促進法 (昭二十七法律二百八十三)

9 都市緑地保全法 (昭四十八法律七十二)

10 都市公園法 (昭三十一法律七十九)

11 土地収用法 (昭二十六法律二百十九)(抄)

12 公有水面埋立法 (大十法律五十七)

13 国土開発幹線自動車道建設法 (昭三十二法律六十八)(抄)

14 港湾法 (昭二十五法律二百十八)(抄)

2 開発戦略目標の設定

開発(上流)に当たって,経済が低迷しているこの時期は特に①短期で具現(実用)

環境保全製品の開発(岩村) 727)1

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化が可能である②市場が公共施設等である③開発における達成目標(規制強化)が明確 であることが必要である。一方,市場である下流において政府の支援的,助成的法律の 存在が望ましい。

2−(1)開発に当って

Ⅲ. 1でリストした法律のうち基準値を設けている下記の法律に着目。

① 5.1 水質汚濁防止法

② 6.3 農薬取締法

③ 8.1 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律

④ 8.3 毒物及び劇薬取締法

⑤ 8.7 ダイオキシン類対策特別措置法

等の法律を参照して,特に現在産業廃棄物として有料で処理されている,スラッジ等 から溶剤を回収し,有料廃棄物を有価物とする装置の開発に目標を定める。

2−(2) 市場化に当って

開発製品が国等に窓口があることは販売実績を作る上で極めて有効である。係る内容 を含む法律を下記に示した。

① 1.8 国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律

② 8.2 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法 律(Pollutant Release and Transfer Register : PRTR制度)

上記以外に,民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(Pri- vate Finance Initiative : PFI法)がある。

PFI法の概要は,

(目的)

第一条 この法律は,民間の資金,経営能力及び技術的能力を活用した公共施設等の 建設,維持管理及び運営(これらに関する企画を含む。)の促進を図るための措置 を講ずること等により,効率的かつ効果的に社会資本を整備し,もって国民経済の 健全な発展に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条 この法律において「公共施設等」とは,次の各号に掲げる施設をいう。

一 道路,鉄道,港湾,空港,河川,公園,水道,下水道,工業用水道等の公共施

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設。

二 庁舎,宿舎等の公用施設

三 公営住宅及び教育文化施設,廃棄物処理施設,医療施設,社会福祉施設,更生 保護施設,駐車場,地下街等の公益的施設

四 情報通信施設,熱供給施設,新エネルギー施設,リサイクル施設(廃棄物処理 施設を除く),観光施設及び研究施設

五 前各号に掲げる施設に準ずる施設として政令で定めるもの(啓発活動等及び技 術的援助等)

第十九条 国及び地方公共団体は,特定事業の実施について,知識の普及,情報の提 供等を行うとともに,住民の理解,同意及び協力を得るための啓発活動を推進する ものとする。

2 国及び地方公共団体は,特定事業の円滑かつ効率的な遂行を図るため民間事業者 に対する技術的な援助について必要な配慮をするとともに,特許等の技術の利用の 調整その他民間事業者の有する技術の活用について特別の配慮をするものとする。

附則

(検討)

第二条 政府は,この法律の施行の日から五年以内に,この法律に基づく特定事業の 実施状況(民間事業者の技術の活用及び創意工夫の十分な発揮を妨げるような規制 の撤廃又は緩和の状況を含む。)について検討を加え,その結果に基づいて必要な 措置を講ずるものとする。

第三条 政府は,公共施設等に係る入札制度の改善の検討を踏まえつつ,特定事業を 実施する民間事業者の選定の在り方について検討を加え,その結果に基づいて必要 な措置を講ずるものとする。

第十九条において「特許等の技術の利用の調整その他民間事業者の有する技術の活用 について特別の配慮をするものとする」又,附則第二条において「(民間事業者の技術 の活用及び創意工夫の十分な発揮を妨げるような規制の撤廃又は緩和の状況を含む。) について検討を加え,その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とある。

上流すなわち開発には従来の環境保全装置は負の投資で減価償却をしないのが常であ ったが,生産性を有した環境対応型の装置を目指すと共に市場は行政に的を絞り,行政 で実績を作った上で民間に発展を目指す。

PFI事業として起業が目指している開発内容が合致することは極めて有益である。

他方,グローバル・スタンダード,特にISO 14000シリーズの国際規格の登録状況は 2位のドイツの2,400台の約2倍になるような勢いである。これは,ISO 9000(品質に

環境保全製品の開発(岩村) 729)1

(11)

関する規格)シリーズの取得において他国に遅れを取ったために日本の国際競争力が低 下したと受け止められていたため,ISO 14000シリーズの認証には素早い対応を取った ものとされている。このISO 14000シリーズ登録によって,2−(2)の② 8.2 PRTR制 度の管理物質(増減)の報告に対して,企業内秘密が開示される恐れのあることによっ て企業は管理物質,特に溶剤等の回収をより厳しくする必要に迫られているのが現状で ある。

2−(3)情報の露出

特許申請後,直に新聞や学術雑誌(特に速報誌)等によって開発技術の開示をし,市 場レスポンスを見る。資金が不足している企業の新聞等における記事としての情報の露 出は,第3者(新聞報道者)の評価を経ていることもあってエンゼルに対する効果は絶 大である。

製品コンセプトとアイデアの創出

アイデアの創出に当たっては開発すべく製品コンセプトを充分に検討した上でアイデ アの理論構築することが開発時間の節約,経費の節約にも繋がる。

1 製品コンセプト

1)エネルギー効率がすぐれている(省エネタイプ)。

2)スラッジ中の有価物が定量的に回収できる。

3)回収される溶剤の水分がリサイクル可能である。

4)イニシャルコストが安価である。

5)ランニングコストが安価である。

等の条件を満たすアイデアの創出と構築に努める。

2 アイデアの創出

揮発性有機溶剤の回収には大別して減圧(真空)蒸留法,常圧蒸留法,水蒸気蒸留法 の3法が用いられている。この内前者の減圧・常圧蒸留法は常法として用いられている が,後者の水蒸気蒸留法は工業的にはほとんど用いられていない。

前者の蒸留法は理論的に100% の回収は期待出来ない。それは蒸留の最終段階で蒸留 釜の空間に溶剤蒸気として残留することによる。この結果は第1種の化学物質の分離に は適応できない。

後者の水蒸気蒸留法においては,

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(12)

①二成分共沸混合物を飛沫同伴を伴わずに取り出す必要がある。

②蒸留釜中の水分を最小にする必要がある。

③二成分共沸混合物から三成分共沸混合物への転用が可能であること。

④単蒸留から連続蒸留が可能なアイデアであること。

⑤ミクロからマクロの量の処理が可能であること。

以上,5.1, 5.2の条件を満たす装置は蒸留塔(従来の飛沫同伴を防止するプレート,ラ シヒリング等を用いない)を付加した加熱水蒸気蒸留装置が極めて有望な装置と考えら れる。

知的情報の具現化と製品の進化

1 アイディアの具現化

Ⅳ. 2のアイデアの創出の①二成分共沸混合物が飛沫同伴を伴わず,二成分共沸混合 物として取り出すために,フレキシブルパイプで出来た蒸留塔を付すことにし,これを コンセプトとしてバッチ式装置の開発を立案した。以下に特許内容の要約を述べる。

1−(1)油分回収装置 PAT No. 3263351

【特許請求の範囲】

【請求項1】加熱蒸気発生機から揮発性油分を含有する廃液に加熱水蒸気を送りつつ,

揮発性油分を水蒸気蒸留し,水蒸気蒸留により得られた揮発性油層と水層を分液し,油 層は系外に除き,揮発性油分を含む水層は蒸気発生機に戻して揮発性油分を含む水層を 系外に出さないことを特徴とする油分回収装置。

【請求項2】加熱蒸気発生機,蒸気調整弁,被処理廃液を含有する温度計具備蒸留釜,

冷却器,液面レベルセンサー具備分液器をこの順序で含み,上記分液器から油層を系外 に除くための留出液抜き取りポンプおよび加熱蒸気発生機に水層を戻すための水層循環 ポンプを含む,請求項1記載の装置。

【請求項3】加熱水蒸気の蒸気圧が絶対圧で1−5 kg/cm2である,請求項1または2記載

の装置。

【発明の詳細な説明】

【発明の属する技術分野】本発明は工場等で生じた揮発性油分を含有する廃液を処理し て,蒸留残渣を無害化すると共に,回収原料揮発性油を再利用,さらに揮発性油分を含 む水溶液を系外に出さない油分回収装置に関する。

【従来の技術および発明が解決しようとする課題】従来,揮発性油分含有廃液において

環境保全製品の開発(岩村) 731)1

(13)

油分含量が少量の場合,産業廃棄物業者に委託し,燃料によって処理しているが,有機 塩素系化合物からはダイオキシン等の有害性物質が生成し世界的の問題となっている。

不法投棄はあとをたたず,地下水を汚染したりオゾン層を破壊し,社会問題としても取 り上げられている。又,大量の廃液で比較的油分の含有量の高い水系のものは分液し,

油分は減圧もしくは常圧による蒸留によって処理されているが,法的規制の厳しい有害 性物質の処理については,規則値内での処理において,残渣中の有害性物質の残存とい う問題を常に残している。最終的には有害物質を含有したまま産業廃棄物として燃焼処 理されている。これは蒸留終盤において蒸留釜空間に揮発性油分が残存していることに よる。

なお,水蒸気蒸留を用いる手法は,例えば植物等から精油を製造するために使用され ているが,加熱水蒸気を用いる手法は精油成分が変質するため使用されていない。加熱 水蒸気による廃液中の油分の回収も未だ知られていない。

さらに,水層に溶存した揮発性油分の含有率は高く,環境衛生上そのままでは廃棄で きない場合があり,規制値の含有率に落とすなどの煩雑な処理が必要である。この水層 を蒸気発生機に戻し再利用することは,かつて行われていなかった。

【課題を解決するための手段】本発明は揮発性油分を含有する廃液に加熱水蒸気を送り つつ,揮発性油分を水蒸気蒸留して除去し,蒸留残渣を無害化することを特徴とする油 分回収装置を提供するものである。すなわち,揮発性廃液を加熱蒸気を用いることによ って,廃液の温度を100℃ 以上に上げ,揮発性油分を蒸留され易くし,なおかつ温度が 上がりすぎて廃液の樹脂化が進む程に温度が上がることもなく,廃液を効率よく処理す ることができる。有毒な揮発性油分を除去し蒸留残渣を無害化すると共に,回収揮発性 油を再利用することができる。

さらに,本発明は上記装置の水蒸気蒸留により得られた揮発性油層と水層を分液し,

油層は系外に除き,揮発性油分を含む水層は蒸気発生機に戻して揮発性油分を含む水層 を系外に出さないことを特徴とする油分回収装置を提供する。この装置を用いることに よって,揮発性油分が系外に出ないため揮発性油分の毒性が強いものである場合は環境 汚染などの危険を防ぐことが可能である。

構成要素として,蒸留釜,蒸気発生機,冷却器,分液器,温度計,蒸気調整弁,液面 レベルセンサー,吸着槽,廃液送液ポンプ,留出液抜き取りポンプを含むことができ る。上記構成要素は廃液中の油分の種類,量によって適宜選択される。本発明の装置は バッチ式もしくは連続式のいずれの場合でもよい。さらに,上記の構成要素に水層を蒸 気発生機に返送するための水層循環ポンプを含むことができる。しかし,揮発性油分を 含む水層の蒸気発生機への返送は落差で戻すことも可能である。

本発明の装置は従来の装置あるいは方法に比較して次のような利点を有している。

同志社商学 第54巻 第5・6号(23年3月)

8(732

(14)

1)処理によって新たな有害物質を生じない(有機塩素系化合物処理によるダイオキシ ンの生成は社会問題となっている)。

2)ランニングコストが極めて低い(冷却水,加熱蒸気,人件費)。

3)回収油分の再利用が可能である。

4)操作が極めて容易である。

5)安全性が極めて高い。

6)自動化が容易である。

7)水層が循環することにより,揮発性油分を含む水層が系外に出ないことになり,有 害物質による循環汚染を防ぐことが可能である。

1−(2)連続油分分離装置

多量処理においてはバッチ装置はスペースが大きく,イニシャルコストも増大する。

そこでバッチ式装置をさらに発展させて,連続式の装置に挑戦し,その内容を以下に述 べた。

PAT No. 3321415

【特許請求の範囲】

【請求項1】揮発性油分と難揮発性油分を含有する廃液と加熱水蒸気を連続的に送り,

蒸留塔を備えた気液分離器中で水蒸気蒸留して揮発性油分と水よりなる蒸気と難揮発性 油分を含む罐出液とに気−液分離し,蒸気は凝縮器で凝縮液化後,揮発性油分と水に分 液し,罐出液は罐出液排出弁を通して排出し,空気冷却器を通して冷却して,揮発性油 分と難揮発性油分に連続的に分離し,分液した水は蒸気発生器に戻して再利用すること を特徴とする連続油分分離装置。

【請求項2】気液分離装置,フレキシブルパイプ製蒸留塔,蒸気発生機,冷却器(水

冷,空冷),分液器,温度計,蒸気調整弁,罐出液排出調整弁,廃液廃油送液ポンプ,

を含む請求項1に記載の装置。

【請求項3】揮発性油分と難揮発性油分を含有する廃液と加熱水蒸気を連続的に送り,

蒸留塔を備えた気液分離器中で水蒸気蒸留して揮発性油分と水よりなる蒸気と難揮発性 油分を含む罐出液とに気−液分離し,蒸気は凝縮器で凝縮液化後,揮発性油分と水に分 液し,罐出液は罐出液排出弁を通して排出し,空気冷却器を通して冷却することによっ て,揮発性油分と難揮発性油分に連続的に分離し,分液した水は蒸気発生器に戻して再 利用することを特徴とする連続油分分離装置。

【請求項4】廃液にあらかじめ蒸留安定剤および/または蒸留物安定化剤を加える請求

項3に記載の方法。

【請求項5】加熱水蒸気の蒸気圧が絶対圧で1−5 kg/cm2である,請求項3または4に記

環境保全製品の開発(岩村) 733)1

(15)

載の方法。

【発明の詳細な説明】

【発明の属する技術分野】本発明は工場等で生じた揮発性油分および難揮発性油分を含 有する廃液・廃油を処理して両者を分離し,回収した揮発性油および不(難)揮発性の 油を再利用するための油分分離装置および方法に関する。

【従来の技術および発明が解決しようとする課題】従来,揮発性油分含有廃液・廃油に おいて油分含量が少量の場合,産業廃棄物業者に委託し,燃焼によって処理している が,有機塩素系化合物からもダイオキシン等の有害性物質が生成し,世界的に問題とな っている。また,不法投棄はあとをたたず,地下水を汚染したりオゾン層を破壊する。

一方,これらの代替物は地球温暖化促進物質として,社会問題としても取り上げられて いる。又,大量の廃液で比較的油分の含有量の高い水系のものは分液し,油分は減圧も しくは常圧による蒸留によって処理されているが,化学物質の審査及び製造等の規制に 関する法律に指定された化学物質の処理については,規制値内での処理において,残渣 中の有害性物質の残存という問題を常に残している。最終的には有害物質を含有したま ま産業廃棄物として燃焼処理されている。これは蒸留終盤において蒸留釜空間に揮発性 油分が残存していることによる。一方,水蒸気蒸留は植物等から精油を製造するために 使用されているが,廃液中の油分の回収に用いること,廃液を連続的に処理すること,

水蒸気蒸留に蒸留塔を用いること,水蒸気蒸留法で蒸留安定化剤を用いることは未だ知 られていない方法である。

【課題を解決するための手段】本発明は揮発性油分と難揮発性油分を含有する廃液と加 熱水蒸気を連続的に送り,蒸留塔を備えた気液分離器中で水蒸気蒸留して揮発性油分と 水よりなる蒸気と難揮発性油分を含む罐出液とに気−液分離し,蒸気は凝縮器で凝縮液 化後,揮発性油分と水に分液し,罐出液は罐出液排出弁を通して排出し,空気冷却器を 通して冷却して,揮発性油分と難揮発性油分に連続的に分離し,分液した水は蒸気発生 器に戻して再利用することを特徴とする連続油分分離装置を提供する。

本発明の装置は従来の装置あるいは方法に比較して次のような利点を有している。

1)燃焼等とは異なり,物理的に処理するため非意図的結果(有害な化学物質)は生じ 難い。

2)ランニングコストが極めて低い。

3)回収された揮発性油分および不(難)揮発性油の再利用が可能である。

4)操作が極めて容易である。

5)水蒸気を使用するため熱効率が極めて良好である。

6)留出水分は蒸気発生器給水として再利用するので廃水として処理する必要がない。

7)安定性が極めて高い。

同志社商学 第54巻 第5・6号(23年3月)

0(734

(16)

1−(3)難揮発性有機物質の分別分離方法

更に,ダイオキシン類のような極めて難揮発性有機物質の定量的回収について(1)

の装置に第三成分の水不溶/難溶性溶剤を注入して三成分共沸混合系を形成することに よって,ダイオキシン類の回収を試み,その特許の明細の1部を以下に述べる。

PAT No. 3288995

【特許請求の範囲】

【請求項1】分離すべき難揮発性有機物質を含有する疑いのある液体または固体の試

料,固体試料の場合は分離すべき難揮発性有機物質を溶解し得る水難/不溶性揮発性溶 剤を加え溶解させ液体試料とした後,上記液体試料に加熱水蒸気と上記水難/不溶性揮 発性溶剤を連続的に注入し,難揮発性有機物質および注入した上記水難/不溶性揮発性 溶剤とを水蒸気蒸留によって,共蒸留させ,難揮発性有機物質の溶解した水難/不溶性 揮発性溶剤と水とを分液し,水難/不溶性揮発性溶剤から難揮発性有機物質を定量的に 回収することを特徴とする難揮発性有機物質の分別分離方法。

【請求項2】上記難揮発性有機物質がダイオキシン類である,請求項1記載の方法。

【請求項3】上記難揮発性有機物質が内分泌攪乱化学物質である,請求項1記載の方

法。

【請求項4】上記水難/不溶性揮発性溶剤が炭素数5以上の脂肪族エーテル,炭素数5

以上の脂肪族アルコール及び炭化水素類である,請求項1−3のいずれか1項記載の方 法。

【請求項5】加熱水蒸気の蒸気圧が絶対圧で1−7 kg/cm2である,請求項1−4のいずれか

1項記載の方法。

【請求項6】蒸留釜,フレキシブルパイプ部分を含む蒸留塔,蒸気発生器,冷却器(水

冷または空冷),分液器,温度計,蒸気調節弁および水難/不溶性揮発性溶剤用容器を 備えた請求項1−5に記載の方法に用いられる分別分離装置。

【発明の詳細な説明】

【発明の属する技術分野】本発明は難揮発性有機物質の分別分離方法およびその方法の 実施に用いられる装置に関する。本発明の方法は例えば,難揮発性有機物質(例えばダ イオキシン類を含有する焼却灰)の分析用試料の調製に有効に用いることができる。

具体的には,産業廃棄物,食品,樹脂製品,河川水,湖水,沼水,飲料水等に含有す る難揮発性有機物質,例えば有害な内分泌攪乱物質(環境ホルモン),ダイオキシン類 などを3成分共沸水蒸気蒸留により水難/不溶性揮発性溶剤に溶解させて分別分離し,

ガスクロマトグラフィー(電子捕捉型検出器),ガスクロマトグラフィー・質量分析機 等によって分析するための前処理試料を調製するための分別分離方法および装置に関す る。

環境保全製品の開発(岩村) 735)1

(17)

【従来の技術および発明が解決しようとする課題】 従来,ダイオキシン類の定量におけ る公定法では60% 以上の回収率であることが明記されている。

しかしこの公定法記載の方法は極めて煩雑な上,高度な技術,高価な装置を必要とし ている。一方,F. I. OnuskaとK. A. Terry〔Anal. Chem. 1985, 57, 801〜805〕は水蒸気 蒸留法[メソードⅠ],ソックスレー抽出法[メソードⅡ],超音波抽出法[メソード

Ⅲ]との比較においてメソードⅠ>Ⅱ>Ⅲの順でメソードⅠの水蒸気蒸留法が優れてい ることを報告している。前記公定法はメソードⅡを採用している。また,L. Ramosら は〔J. Chromatogr, A 690(1995)243〜249〕において14種類のポリ塩化ビフェニル 類,10種類のポリ塩化ジベンゾフラン類,7種のポリ塩化ジベンゾ−p−ダイオキシン類 を用いてメソードⅠで検討し,報告しているが,全ての化合物において60% 以上の回 収率が得られているわけではない。

環境汚染物質の代表的な物質であるポリ塩化ビフェニル類,ポリ塩化ジベンゾフラン 類,ポリ塩化ジベンゾ−p−ダイオキシン類(環境省はこれら3種類の化学物質を合わせ てダイオキシン類と称している)。また内分泌攪乱物質としてポリ塩化炭化水素,例え ば,アルドリン(aldrin),クロルデン(chlordan),ディルドリン(dildrin)などが社会 問題化している。ダイオキシン類も内分泌攪乱物質として挙げられている。その他に数 十種類の化学物質が環境汚染物質としてリストアップされている。これらの化合物をガ スクロマトグラフィー,質量分析計で同時分析する場合,公定法では60% 以上と明記 されているが,対象となる化合物(不揮発性有機化合物を除く)は定量的に回収される ことが望ましい。

例えば,ダイオキシン類についていえば,2, 3, 7, 8−テトラクロロジベンゾ−p−ダイオ キシン(2, 3, 7, 8−tetrachlorodibenzo−p−dioxin : TCDD),1, 2, 3, 4, 6, 7, 8, 9−オクタクロ ロ ジ ベ ン ゾ−p−ダ イ オ キ シ ン(1, 2, 3, 4, 6, 7, 8, 9−octachlorodibenzo−p−dioxin : OCDD),1, 2, 3, 4, 6, 7, 8, 9−オクタクロロジベンゾフラン(1, 2, 3, 4, 6, 7, 8, 9−octachlo- rodibenzofuran : OCDF),2, 3, 4, 7, 8−ペンタクロロ−ジベンゾフラン(2, 3, 4, 7, 8−penta- chlorodibenzofuran : PCDF)などが挙げられる。これらのダイオキシン類がすべてほぼ 100% 回収されないとダイオキシン類の分離抽出方法として十分ではない。

メソードⅠではPCDFの3回の回収試験においてNot detected(不検出)と報告して いる。最も毒性の強いTCDDの毒性等価係数が1.0であるが,PCDFのそれは0.5で極 めて強い毒性を有するにもかかわらず,検出されていないことは極めて重要である。

本発明の方法は連続的に揮発性溶剤を注入して,共沸させ難揮発性有機物質の沸点を 下げ,蒸留可能物質として分別分離する水蒸気蒸留法であるが,このような方法は未だ 知られていない。

【課題を解決するための手段】本発明は,分離すべき難揮発性有機物質を含有する疑い

同志社商学 第54巻 第5・6号(23年3月)

2(736

(18)

のある液体または固体の試料,固体試料の場合は分離すべき難揮発性有機物質を溶解し 得る水難/不溶性揮発性溶剤を加え溶解させ液体試料とした後,上記液体試料に加熱水 蒸気と上記水難/不溶性揮発性溶剤を(水に対して)連続的に注入し,難揮発性有機物 質および注入した上記水難/不溶性揮発性溶剤とを水蒸気蒸留によって,共蒸留させ,

難揮発性有機物質の溶解した水難/不溶性揮発性溶剤と水とを分液し,水難/不溶性揮 発性溶剤から難揮発性有機物質を定量的に回収することを特徴とする難揮発性有機物の 分別分離方法を提供する。

本発明では,難揮発性有機物質を含有する試料に,水難/不溶性揮発性溶剤を連続し て注入しながら水蒸気蒸留を実施することによって,難揮発性有機物質を留出させ易く し,温度が上がりすぎて難揮発性有機物質の樹脂化が進む程度までは温度が上がること もなく試料を効率よく処理することができる。また,難揮発性有機溶剤に伴って留出し た水分には,有害な難揮発性有機物質は検出されず環境に安全である。

本発明の装置は,従来の装置あるいは方法に比較して次のような利点を有している。

1)低温で,物理的に処理するため非意図的結果(有害な化学物質の漏出)が生じ難 い。

2)ランニングコストが極めて低い。

3)難揮発性有機物質の回収率が定量的である。

4)操作が極めて容易である。

5)水蒸気を利用するため熱効率が極めて良好である。

6)留出水分中には有害物質は検出されない。

7)安全性が極めて高い。

環境保全製品の開発(岩村) 737)1

(19)

2 知的所有権の露出 2−(1)新聞報道

本章(1),(2),(3)の各装置は新聞で以下のように報道され,市場のレスポンスは 上々であった。

同志社商学 第54巻 第5・6号(23年3月)

4(738

(20)

2−(2)学術雑誌

学術雑誌等では以下の雑誌やJETROの海外情報誌に掲載された。以下にその要約を 示す。

The Chemical Society of Japan

Chemistry Letters No. 10 2002 p. 972〜973 abstract

Polychlorinated aromatic compounds such as Polychlorinated diben−zo−p−dioxins, and dibenzofurans were successfully and quantitatively re−covered using a steam distilla- tion−azeotropy system without the comple−x procedures.

JETRO

NEW TECHNOLOGY JAPAN vol. 26 No. 1 April, 1998 P. 34〜35 abstract System to Recover Volatile Oils from sludge and Waste Oils

Creative Science Laboratory Co., Ltd. has developed a Volatile Oil Recovery System for use by small−scale enterprises such as paint shops and dry cleaning shops that enables recovery of trichloroethylene(trich−lene)and other organic chlorinated substances at a low cost and theref−ore reduce the after treatment cost as well as the cost of procuring solv−ents.

おわりに

最少の実施例で幅広いクレームを得るべく創意工夫する。これはとりもなおさず最小 のリスク(資金・時間)で最大のベネフィットを得る可能性を示している。

この報告が起業を目指す若い企業家の一助になれば幸いである。

環境保全製品の開発(岩村) 739)1

参照

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