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およびミトコンドリアタンパク含量に及ぼす影響

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持久性トレーニング後のテーパリングが持久力とマウス骨格筋ヘキソキナーゼⅡ、

およびミトコンドリアタンパク含量に及ぼす影響

Effects of tapering on endurance capacity, hexokinase 2 and mitochondria protein contents in skeletal muscle of trained mice

谷口祐一 1)、篠原暁子 2)、樋口満 2)、3)

1) 龍谷大学農学部

2) 早稲田大学スポーツ科学学術院

3) 早稲田大学アクティヴ・エイジング研究所

Hirokazu Taniguchi1), Akiko Shinohara2), Mitsuru Higuchi2), 3)

1) Faculty of agriculture, Ryukoku University

2) Faculty of Sport Sciences, Waseda University

3) Institute of Advanced Active Aging Research, Waseda Univeristy

キーワード:持久力、テーパリング、ヘキソキナーゼⅡ、ミトコンドリア Key words: endurance training, tapering, hexokinase 2, mitochondria

【抄 録】

目的: Bosquet ら(2007)によって検討されたメタアナリシスにより、トレーニング強度を維持したまま、2 週 間のトレーニング時 間を前半は著 しく、後半はわずかに減少 させ、全 体 のトレーニング時間 を半 減 させる テーパリング手 法 がパフォーマンスの向 上 につながる可 能 性 が示 唆 されている。本 研 究 は、Bosquet ら (2007)によって検 討 されたテーパリング手 法 が持 久 力 、骨 格 筋 ヘキソキナーゼⅡおよびミトコンドリアタン パク含量に及ぼす影響について明らかとすることを目的とした。

方法: 8 週齢の雄 C57BL/6JJcl マウス(n=18)に対し、7 週間のトレッドミル運動を負荷した後、トレーニン グ継続群、テーパリング群および脱トレーニング群の 3 群に群分けを行った(各 n=6)。2 週間の各期間後、

トレッドミルを用 いて疲 労 困 憊 に至 るまでの運 動 継 続 時 間 を測 定 し、その直 後 に解 剖 して腓 腹 筋 におけ るヘキソキナーゼⅡおよびミトコンドリアタンパク含量をウエスタンブロット法にて解析した。

結 果 : 運 動 継 続 時 間 はトレーニング継 続 群 とテーパリング群 と比 較 して脱 トレーニング群 において有 意 に低 い値 を示 した(p<0.05)。一 方 で、トレーニング継 続 群 とテーパリング群 との間 には有 意 な差 は認 めら れなかった。また、腓腹筋におけるヘキソキナーゼⅡタンパク含量は、他の 2 群と比較してトレーニング継 続群において有意に高い値を示した(p<0.05)。ミトコンドリア複合体ⅠNdufa9 サブユニットおよびミトコンド リア複 合 体ⅣサブユニットⅣタンパク含 量 においては、トレーニング継 続 群 と比 較 して、テーパリング群 で は有意な差は認められなかったが、脱トレーニング群では有意に低い値を示した(p<0.05)。

結論: 本研究の結果から、トレーニングの継続と比較して 2 週間のテーパリングは持久力と、骨格筋の ヘキソキナーゼⅡおよびミトコンドリアタンパク含 量 を増加させない可能 性 が推察 された。これらの結果は、

Bosquet ら(2007)によるメタアナリシスにより解析されたテーパリング手法では、持久力の向上につながら ない可能性を示唆している。

スポーツ科 学 研 究 , 14, 29-36, 2017年 , 受 付 日 :2016年 4月 12日 , 受 理 日 :2017年 4月 24日 連 絡 先 :樋 口 満 〒359–1192 埼 玉 県 所 沢 市 三 ヶ島 2–579-15 早 稲 田 大 学 スポーツ科 学 学 術 院

Tel and Fax: 042-947-6745, E-mail: [email protected]

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Ⅰ.背景

持 久 力 は持 久 性 スポーツにおける競 技 力 の決 定 要 因 であるため、持 久 力 を効 率 よく向 上 させる トレーニング方 法 や、その機 序 について多 くの興 味 ・関 心 が寄 せられている。持 久力 を決 定 する要 素の 1 つとしては、骨格筋におけるタンパク含量 が関係していると考えられており、Fueger ら(2005) によって、解 糖 系 の律 速 酵 素 であるヘキソキナー ゼ(HK)Ⅱタンパク含 量 が持 久 力 の決 定 要 因 であ ることが報告されている。

持久 系競 技 のパフォーマンスを高める手法とし て、競 技 前 に一 時 的 にトレーニング量 を減 少 させ る “ テ ー パ リ ン グ ” が 実 施 さ れ て い る (Kubukeli 2002, Mujika 2004)。先行研究において、運動強 度を減らさずに運動時間を減少させる 4 日および 8 日間のテーパリングが、トレーニング休止に伴う 電 子 伝 達 系 酵 素 ( チ ト ク ロ ー ム オ キ シ ダ ー ゼ ; CYTOX)活 性 の減 少 を抑 制 し、さらにトレーニン グを継 続 した群 と比 較 して高 い換 気 性 閾 値 を示 すことが示唆されている(Neary 1992)。従って、骨 格筋における電子伝達系のタンパクに対する脱ト レーニングの影 響 を抑 制 することに加 えて、有 酸 素 エネルギー代 謝 を高 めることがテーパリングに よる持 久 性 パフォーマンスの向 上 と関 係 している と考えられる。

一 方 で、Bosquet ら(2007)によって検 討 された メタアナリシスにより、トレーニング強 度 を維 持 した まま、2 週 間 のトレーニング時間を前 半は著 しく、

後 半 はわずかに減 少 させ、全 体 のトレーニング時 間 を半 減 させるテーパリング手 法 がパフォーマン スを効 率 的 に向 上 させる可 能 性 が示 唆 されてい る。この報告は Neary ら(1992)の先行研究と比較 して運 動 強 度 を低 下 させないという点 で一 致 する ものの、テーパリングの期間が異なるため、2 週間 のテーパリングが、電 子 伝 達 系 のタンパクに対 す る脱トレーニングの影 響 を抑制するのかどうかとい うことについては再 検 証 が必 要 であると考 えられ る。また、テーパリングが持 久 力 の決 定 要 因 であ る骨 格 筋 HKⅡタンパク含 量 に及 ぼす影 響 につ いても解 明 されていない。テーパリングとこれらの

タンパク含 量 との関 係 性 を解 明 することにより、テ ーパリングの有 用 性 に対 する科 学 的 根 拠 の構 築 につながることや、今後、その関係性を応用したト レーニング手 法 の発 展 につながる可 能 性 が考 え られる。

そこで本研究は、ヒト研究におけるメタアナリシス の結 果 を参 考 に、持 久 性 トレーニング後 における 2 週 間 のテーパリングが持 久 力 と、骨 格 筋 ヘキソ キナーゼⅡおよび電 子 伝 達 系 のタンパク含 量 に 及 ぼす影 響 について明 らかとすることを目 的 とし た。

Ⅱ.方法 1.研究対象

骨 格 筋 HKⅡおよび電 子 伝 達 系 のタンパク含 量 の解 析 には骨 格 筋 を摘 出 しなければならない ため、本実験では 8 週齢の雄 C57BL/6JJcl マウ スを対象としたトレーニング負荷実験を実施した。

18 匹のマウスは室温 25℃、12 時間の明暗サイク ルを設 定 した飼 育 室 において、ポリカーボネート 樹 脂 製 の飼 育 ケージを用 いて飼 育 された。全 て の飼 育 期 間 を通 して、市 販 の固 形 飼 料 (CE-2 、 オリエンタル酵 母 )および水 道 水 を自 由 摂 取 させ た。また本 実 験 は、早 稲 田 大 学 動 物 実 験 倫 理 委 員会の承認を得て実施した。

2.トレーニング条件および群分け

本 実 験 では運 動 効 果 に対 するテーパリングの 影響を検討するため、テーパリングの前に 7 週間 のトレーニング期 間 を設 けた。トレッドミル(KN-73、

夏目製作所)を用いて、1 週目に 3 回の馴化を実 施 した後 、速 度 :25 m/分 、斜 度 :10°、時 間 :90 分/回、頻度:5~6 回/週のトレーニングを 6 週間 負荷 した。その後 、同じトレーニングを負荷 し続け たトレーニング継 続 群 (n=6)および運 動 時 間 のみ を減 少 させたテーパリング群 (n=6)に加 えて、脱 ト レーニングによる影 響 を比 較 検 討 するためにトレ ーニングを休止した脱トレーニング群(n=6)の 3 群 に群分けをした(表 1)。

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31 3.テーパリング条件

先 行 研 究 (Bosquet 2007)におけるメタアナリシ スの結 果 を参 考 とし、本 実 験 ではトレーニング強 度を維持したまま(速度:25 m/分、斜度:10°)、2 週 間 の前 半 は著 しく、後 半 はわずかにトレーニン グ時 間 を減 少 させ、全 体 のトレーニング時 間 を半 減させる手法を用いた(表 1)。トレーニング期間の 終 了 後 、1 日 目 はトレーニングを負荷 せず、2~6 日目のトレーニング時間を 90、75、55、45、40 分 と段 階 的 に減 少 させ、7 日 目 はトレーニングを負 荷せず、8~12 日のトレーニング時間を 35、30、

30、25、25 分 と減 少 させた。持 久 力 測 定 の前 日 (13 日 目 )はトレーニングを負 荷 せず、14 日 目 に 持久力の測定および解剖を行った。

4.持久力(運動継続時間)の測定

脱 トレーニング群 における走 行 動 作 の変 化 が 持 久 力 に及 ぼす影 響 を和 らげるため、持 久 力 測 定の 2 日および 3 日前に脱トレーニング群に対し て他の群と同強度(速度:25 m/分、斜度:10°)、

10 分間のトレッドミル走行練習を負荷した(表 1)。

持久力の測定は Wagner ら(2001)の手法を参考 として、各期間終了後、速度を 25 m/分、斜度を 20°に固 定したトレッドミルを用いてマウスが疲労 困憊に至るまでの時間を測定した。

5.解剖および骨格筋の保存

持 久 力 の測 定 直 後 、ペントバルビタールナトリ ウム(5 mg/100 g 体重)の腹腔内投与による完全 麻 酔 条 件 下 において解 剖 を実 施 した。体 重 、肝 臓 、精 巣 上 体 脂 肪 および腓 腹 筋 重 量 を測 定 し、

骨 格 筋 タンパク含 量 測 定 のため液 体 窒 素 を用 い て腓 腹 筋 を急 速 凍 結 し、分 析 まで-80℃の冷 凍 庫において保存した。

6.骨格筋タンパク含量の測定

凍 結 保 存 しておいた腓 腹 筋 を、氷 冷 下 におい て 1/100 Protease inhibitor cocktail (Sig- ma-Aldrich) を 含 む Radio-Immunoprecipitation Assay Lysis Buffer (Upstate Biotechnology)に浸 漬させホモジナイズを行った。凍結融解を 2 回行 ったのち、5 分、700 G の条件で遠心分離を実施 し、分 離 された上 清 を測 定 サンプルとして用 いた。

次 に 測 定 サ ン プ ル の 総 タ ン パ ク 含 量 を BCA Protein Assays (Thermo Fisher Scientific)で求め、

各 サンプルの総 タンパク含 量 が同 一 となるように Sample Buffer Solution (2ME+) (Wako Pure Chemical Industries)と混 合 した後 、5 分 、100℃

の条件で加熱しタンパク質を可溶化した。

可 溶 化 されたサンプルは、10% ミニプロティア ン TGX ゲル(Bio-Rad)を用いたポリアクリルアミド ゲル電 気 泳 動 により分 離 された後 、ミニトランスブ ロットセル(Bio-Rad)を用いてゲルからポリフッ化ビ ニリデン(PVDF)膜に転写された。転写後、10% ス キムミルク/リン酸緩衝生理食塩水 + 0.1% ツイー ン 20 (PBST)に PVDF 膜を浸漬し、室温で 1 時間 振 とうしてブロッキングを行 った。各 タンパク含 量 を 測 定 す る た め の 一 次 抗 体 の 希 釈 濃 度 は 、 1%

ス キ ム ミルク/PBST に そ れ ぞ れ HK Ⅱ (1:1000 、 Cell Signaling Technology, #2867)、ミトコンドリア 複合体ⅠNADH デヒドロゲナーゼ (ユビキノン) 1 α部分複合体 9 (Ndufa9)サブユニット (1:1000、

Invitrogen, #459100)およびミトコンドリア複 合 体

ⅣサブユニットⅣ(1:1000、Invitrogen, #A21348) とし、抗原抗 体反応は冷蔵および振 とう条件下に おいてオーバーナイトインキュベーションを行 った。

翌 日 、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標 識 抗マウスおよびウサギ IgG 抗体(1:5000、Jackson Immuno Research, #715-035-151 お よ び

#711-035-152)を用いた二次抗体反応を 1 時間 表 1. 群 分 け後 のトレーニング時 間

日 数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

トレーニング群 0 90 90 90 90 90 0 90 90 90 90 90 0

持 久 力 測 定 および解 剖 テーパリング群 0 90 75 55 45 40 0 35 30 30 25 25 0

脱 トレーニング群 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 10 10 0

※各 群 における速 度 (25 m/分 )および斜 度 (10°)は同 じ、各 n=6

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32 行った後、ECL Prime Western Blotting Detec- tion Reagent (GE Healthcare Bio-Sciences)およ び LAS-3000 (フジフィルム)を用いて抗原の化学 発光を検出した。

7.解析方法

各タンパク含量は、ImageJ (NIH)を用いて検出 された化 学 発 光 の解 析 を行 った。また統 計 解 析 には SPSS Statistics 21 (IBM)を使用し、各測定 項 目 における正 規 性 をコルモゴロフ–スミルノフ検 定 を用 いて検 証 した後 、群 間 比 較 のために一 元 配 置 分 散 分 析 を行 った。群 間 の多 重 比 較 にはテ ューキーの範囲検定を用いた。また各骨格筋タン

パク含 量 と持久 力 との関係 性を検 討するために、

ピアソンの積 率 相 関 係 数 を用 いた相 関 解 析 も併 せて実施 した。測 定 項 目は全 て平 均値 ±標 準 誤 差 で示 し、統 計 解 析 の有 意 水 準 は p<0.05 とし た。

Ⅲ.結果

1.身体組成および摂餌量

体重、肝臓、精巣上体脂肪および腓腹筋重量 において各 群 間 における有 意 な差 は認 められな かった。また、全 期 間 を通 した摂 餌 量 における群 間差は認められなかった(表 2)。

2.持久力

疲 労 困 憊 ま で の 運 動 継 続 時 間 を 測 定 し た 結 果 、脱 トレーニング群 と比 較 して、トレーニング継 続 群 およびテーパリング群 において有 意 に長 い

運 動 継 続 時 間 が認 められた(p<0.05)。一 方 で、ト レーニング継 続 群 とテーパリング群 との間 には有 意な差は認められなかった(図 1)。

図 1. 持 久 力 測 定 結 果 平 均 値 ±標 準 誤 差 、※:p<0.05 表 2. 身 体 組 成 、摂 餌 量 および血 中 乳 酸 濃 度

トレーニング継 続 群 テーパリング群 脱 トレーニング群

体 重 (g) 27.12 ± 0.93 28.57 ± 0.86 26.63 ± 0.83 肝 臓 (g) 1.17 ± 0.06 1.31 ± 0.05 1.20 ± 0.04 精 巣 上 体 脂 肪 (g) 0.42 ± 0.03 0.43 ± 0.03 0.46 ± 0.02 腓 腹 筋 (g) 0.12 ± 0.00 0.12 ± 0.00 0.13 ± 0.00

摂 餌 量 (g/日 ) 3.63 ± 0.12 3.73 ± 0.16 3.46 ± 0.07 平 均 値 ±標 準 誤 差 、各 n=6

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33 3.骨格筋 HKⅡおよびミトコンドリアタンパク含量

測定の結果、腓腹筋における HKⅡタンパク含 量 は、トレーニング継 続 群 においてテーパリング 群 および脱 トレーニング群 よりも有 意 に高 い値 が 認 められた(p<0.05)。テーパリング群 および脱 トレ ーニング群 との間 には、有 意 な差 が認 められなか った。

電 子 伝 達 系 の構 成 タンパク質 であるミトコンドリ ア複 合 体ⅠNdufa9 サブユニットおよびミトコンドリ ア複合体ⅣサブユニットⅣについては、トレーニン グ継 続 群 におけるタンパク含 量 が脱 トレーニング 群と比較して有意に高い値を示した一方で、テー パリング群と他の 2 群との間には有意な差が認め られなかった(図 2)。

図 2. 腓 腹 筋 HKⅡおよびミトコンドリアタンパク含 量 測 定 結 果

平 均 値 ±標 準 誤 差 、※:p<0.05、HKⅡ:ヘキソキナーゼⅡ、複 合 体 ⅠNdufa9 サブユニット:ミトコンドリア複 合 体 ⅠNADH デヒドロゲナーゼ (ユビキノン) 1 α部 分 複 合 体 9

4.持 久力 と骨格筋 HKⅡおよびミトコンドリアタン パク含量との相関関係

相関分析の結果を図 3 に示す。本実験では、

疲労困憊までの運動継続時間と腓腹筋の HKⅡ、

ミトコンドリア複 合 体 ⅠNdufa9 サブユニットおよび ミトコンドリア複合体ⅣサブユニットⅣタンパク含量 と の 間 に 有 意 な 正 の 相 関 関 係 が 認 め ら れ た (p<0.05)。

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図 3. 持 久 力 と腓 腹 筋 HKⅡおよびミトコンドリアタンパク含 量 との相 関 関 係

r:相 関 係 数 、◆:トレーニング継 続 群 、 :テーパリング群 、△:脱 トレーニング群 、HKⅡ:ヘキソキナーゼⅡ、複 合 体 Ⅰ Ndufa9 サブユニット:ミトコンドリア複 合 体 ⅠNADH デヒドロゲナーゼ (ユビキノン) 1 α部 分 複 合 体 9

Ⅳ.考察

本 実 験 の結 果 、脱 トレーニング群 と比 較 してト レーニング群およびテーパリング群 の持久 力が有 意 に高 い値 を示 し、トレーニング継 続 群 と比 較 し てテーパリング群 および脱 トレーニング群 の腓 腹 筋 HKⅡタンパク含量が有意に低 い値を示した。

またトレーニング継 続 群 の腓 腹 筋 ミトコンドリアタ ンパク含 量 が脱 トレーニング群 と比 較 して有 意 に 高 い値 を示 した一 方 で、テーパリング群 と他 の 2 群 との間 には有 意 な差 は認 められなかった。これ らの結果は、本実験で用いた 2 週間のテーパリン グが、骨格筋 HKⅡタンパク含量のトレーニング効 果 を脱 トレーニングと同 程 度 に消 失 させる可 能 性 と、その影 響 が骨 格 筋 ミトコンドリアタンパク含 量 に は 認 め ら れ な い 可 能 性 を 示 唆 し て い る 。 ま た Bosquet ら(2007)のメタアナリシスによって示 唆 さ れた、効率的に持久性 パフォーマンスを向上させ るテーパリング手 法 は、本 研 究 では、トレーニング を継 続 した場 合 と比 較してマウスの持 久 力 と、HK

Ⅱおよびミトコンドリアタンパク含 量 の増 加 させな い可能性が推察された。

解 糖 系 における律 速 酵 素 である HKⅡは、骨 格 筋 における糖 取 り込 みにおいて重 要 な役 割 を 担っている(Wasserman and Halseth 1998)。持久 力 と の 関 係 に つ い て も よ く 検 討 さ れ て お り 、 Fueger ら(2005)の先行研究では、腓腹筋の HK

Ⅱタンパク含 量 が多 いマウスにおいて、トレッドミ ル運 動 時 における高 い持 久 力 を示 すことが報 告 されている。この結 果 と一 致 して、本 実 験 におい ても持久 力と腓腹 筋の HKⅡタンパク含量との間 に有 意 な正 の相 関 関 係 が認 められた (図 3)。し かしながら一 方 で、テーパリング群 における腓 腹 筋の HKⅡ含量はトレーニング継続 群と比較 して 有 意 に低 い値 を示 したにも関 わらず、両 群 間 の 持 久 力 においては有 意 な差 が認 められなかった (図 1 および 2)。本研究では HKⅡタンパク含量と 比 較 して、ミトコンドリアタンパク含 量 と持 久 力 との 間 により強 い相 関 関 係 が認 められている(図 3)。

持 久 力 と関 係 するミトコンドリアタンパク含 量 の有 意差が両群間に認められなかったため (図 2)、テ ーパリング群 における低 い HKⅡタンパク含 量 が 持 久 力 に強 く反 映 されなかった可 能 性 が考 えら

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35 れる。

ミトコンドリアに含 まれる電 子 伝 達 系 はいくつ かのサブユニットから構 成 されることが分 かってお り(McMillin and Pauly 1988)、本実験では異なる サブユニット のうちミトコ ンドリア複 合 体 ⅠNdufa9 サブユニットおよびミトコンドリア複 合 体 Ⅳサブユ ニットⅣそれぞれのサブユニットのタンパク含 量 に ついて解 析 を行 った。実 験 の結 果 、脱 トレーニン グ群 ではトレーニング継 続 群 と比 較 して両 ミトコン ドリアタンパク含 量 が有 意 に低 い値 を示 した一 方 で、テーパリング群における腓腹筋のミトコンドリア タンパク含 量 は、トレーニング継 続 および脱 トレー ニング両 群と比較 して有 意な差が認 められなかっ た(図 2)。この結果から、本実験で用いたテーパリ ング手 法 では、脱 トレーニングよる骨 格 筋 のミトコ ンドリアタンパク含 量 の低 下 を抑 えられる可 能 性 が 推 察 さ れ た 。 ま た 先 行 研 究 に お け る 骨 格 筋 CYTOX 活 性 と持 久 力 との関 係 と同 様 に(Neary 1992)、相 関 分 析 により持 久 力 と腓 腹 筋 のミトコン ドリアタンパク含 量 との間 に有 意 な正 の相 関 関 係 が認められた(図 3)。

本 研 究 は、トレーニングによる骨 格 筋の解 糖 系 および電 子 伝 達 系 の亢 進 が、テーパリングによっ てどのような影 響 を受 けるかを検 討 するため、トレ ーニングを負 荷 したマウスのみを用 いて実 験 を行 った。しかしながら本 実 験 の結 果 、先 行 研 究 にお いて示 唆されたテーパリングによるパフォーマンス 向 上 効 果 は認 められなかった(Bosquet 2007)。ヒ トにおいては慢 性 的 な障 害 および心 理 面 に対 す る回 復 ・改 善 効 果 などが作 用 していることが考 え られるため、生理・生化学的な指標のみでは検討 できない要 因 が多 く含 まれていた可 能 性 が否 定 できない。実 際 に、Berger ら(1999)の研 究 では、

テーパリング期における Total Mood Disturbance (総 合 感 情 障 害 指 標 )がベースライン期 およびオ ーバートレーニング期 と比 較 して有 意 に低 い値 を 示 すことが報 告 されており、テーパリングは心 理 面 へ好 ましい影 響 を及 ぼすと考 えられる。従 って、

テーパリングによる持 久 力 向 上 機 序 をより詳 細 に 明 らかとするためには、今 後 、ヒトを対 象 とした検 討において、より包 括的・多面的な研 究が必 要で あると考えられる。

Ⅴ.結論

本 実 験 では、Bosquet(2007)らの先 行 研 究 によ り効 率 的 にパフォーマンスを向 上 させることが示 唆 された、トレーニング強 度 を維 持 したまま、2 週 間 のトレーニング時 間 を前 半 は著 しく、後 半 はわ ずかに減 少 させ、全 体 のトレーニング時 間 を半 減 させるテーパリング手 法 を用 いて、骨 格 筋 の解 糖 系 および電 子 伝 達 系 タンパク含 量 に及 ぼす影 響 について検 討 を行 った。実 験 の結 果 、本 研 究 に て用いたテーパリング手法では、トレーニングを継 続 した場 合 と比 較 して持 久 力 の向 上 につながら ない可 能 性 が推 察 された。また解 糖 系 の律 速 酵 素 である HKⅡタンパク含 量 と、電 子 伝 達 系 のタ ンパク含 量 は持 久 力 との間 に相 関 関 係 を示 した ものの、テーパリングにより高 い値 を示 す傾 向 は 認 め ら れ な か っ た 。 こ れ ら の 結 果 は 、 Bosquet(2007)らにより報 告 されたテーパリング手 法 によるパフォーマンスの向 上 が、持 久 力 とこれ らのタンパク含 量 の変 化 とは異 なる要 因 により生 じている可能性を示唆している。

Ⅵ.謝辞

本研究に際しては、文部科学省科学研究費 助成事業(学術研究助成基金助成金)(平成 25 年度~平成 26 年度、研究代表者:樋口満、挑 戦的萌芽研究、課題番号 25560342)の助成を 受けた。

ま た 本 研 究 を 実 施 す るに あ た り 、 修 了 生 の 諏 佐大志氏にご協力頂いたことに感謝する。

Ⅶ.引用・参考文献一覧

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参照

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