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第14章 事例地域における諸課題と課題解決のための実践

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第14章  事例地域における諸課題と課題解決のための実践

  第14章においては、事例地域における諸課題と課題解決のための実践について論じる こととする。14.1項において、事例地域の経営資源、インフラに関する諸課題につい て、14.2項において、事例地域におけるコーディネート活動の実践について論じ、1 4.3項において、第14章のまとめを行うこととする。

事例地域におけるコーディネート活動、産業クラスター組織立ち上げ等の実践から得ら れた知見が示され、先行研究で示された諸概念等についても検証がなされる。

14.1 事例地域の経営資源、インフラに関する諸課題

  本項においては、事例地域の経営資源、インフラに関する諸課題について論じることと する。第12章、第13章における詳細な事例地域に関する分析を基礎として、14.1.

1項では経営資源の諸課題、14.1.2項においてはインフラの諸課題が示される。

  そして、14.1.3項においては、事例地域に若手企業家が少ないという問題意識に 基づき、若者の職業選択と創業意欲に関する諸課題について、千人を越える学生へのアン ケート調査に基づき論じることとする。

14.1.1 経営資源の諸課題

  地域産業の経営資源については、第10章において示したように4M1I、すなわち人 材(Man)、設備等(Machine)、材料・部品等、Money(資本)、Information(情報、技術、ノ ウハウ等)の4M1Iの体系で考える必要がある。

  第10章にて示されたように、4M1Iのうち Machine/Material については、地 域外から規格化された財を購入する場合、差別化要因とはならない。

優れた地域企業は、自社開発の設備、材料を使用し、規格化された他社開発の設備、材 料を改良する。他社が保有していない先端設備をいち早く購入し使いこなそうとする。

Money については、人、設備、材料、情報を調達するために使用され、資本の運用に

ついては、投融資のプロの能力や情報が必要となる。

そもそも Information は属人的な要素が大きい経営資源である。

企業の情報・技術・ノウハウは、一義的には企業に帰属するものであるが、知財化・形 式知化される情報はその一部にすぎず、多くの場合、特定の人材と不可分のものである。

情報は公共財的な性質を持つため、個人・企業に付随するほか、ネットワーキングを通 じて地域内外で複製・共有化されることとなる。

結果的に地域の経営資源は、1)人材、2)人材が保有する「目に見えない経営資産(主とし て暗黙知である情報、技術、ノウハウ)」、3)企業・支援機関が保有する「目に見える資産(設 備等、材料・部品等、資本、知財化・形式知化された知識)」に3分される。

企業内・支援機関内にも内部人材に付随する目に見えない経営資産があるものの、これ は人材の流動化により消失しかねない資産である。人材の定着率の良い企業等はこうした

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目に見えない良質の経営資源を内部に定着させることが出来る。

本項では、企業・支援機関は、主として目に見える経営資源を保有する一次インフラと して位置づけ、第10章にて論じたとおり、情報・技術・ノウハウを保有する人材を中核 的経営資源と位置づける。海外先進地域事例を見る限りにおいて、有能な人材が地域外か ら流入し、地域の有能な人材に機会や必要な資源がいかに供給されるかがカギとなる。

本項では、事例地域の経営資源の諸課題について、(1)企業家、(2)技術者・技能者等、(3) 経営資源のまとめ、の順に以下論じていくこととする。

( 1 ) 企業家

  企業家は、創業者、後継者に大別され、企業家輩出の予備軍として、社内企業家、社内 専門家、支援機関内の専門家、大学等の研究者・学生といった様々な人材が挙げられる。

  企業家予備軍としての学生については、14.1.3項において、若者の職業選択と創 業意欲について別途論じることとする

ここでは事例地域の企業家、企業家の輩出についての諸課題等をまとめる。

1) 第一次調査 ( 1994年度 ) から明らかになった企業家の諸課題等

太田地域の機械金属系製造企業を対象とした第一次調査から明らかとなったように、企 業数ベースでは小企業が地域の多数を占めている。

小企業の多くは下請的色彩が強い生産技術型企業であり、小企業の経営者達は消極的な 市場浸透化戦略を採用している。この戦略を多くの企業家が採用しているため、成熟経済 の下で、下請け同士の椅子取り合戦激化、事業所数の減少へとつながっている。

大手自動車メーカーの輸出増等を背景に、地域の製造品出荷額等は伸び、地域製造業の 景況感は悪化するという状況が続いている。

一部の需要リンケージ能力を持つ小企業の経営者は、ニッチ市場において独自の地位を 占めているが群生的なイノベーションにはつながっていない。

中核企業・大手企業の経営者は、国際的競争・地域間の広域的競争の激化を想定してお り、意欲的というより慎重な経営スタンスである。

  現状は、既存の企業家セクターが選別の篩にかけられているフェーズと言える。

  長期的な信頼関係に基づく取引関係の再検討が進展しており、既存の製造系の企業家セ クターでは、広域的な勝ち組企業間のネットワーク構築への動きがはじまっている。

  活力ある小企業、中堅企業は存在しているものの、直接金融志向のベンチャー的な製造 企業は地域において少数派である。

2) 第二次調査 ( 2000年度 ) から明らかとなった企業家の諸課題等

  太田市内の製造系の意欲的企業を調査した第二次調査から明らかになったように、地域 の新規法人設立は増加しているが、これは流通サービス系法人設立増加によるもので、製

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造企業の設立は横這いである。

意欲的企業の過半が小企業であり、年間売上高「10億円前後の壁」を新たに突き抜け る企業が少ないことが指摘される。社歴は平均約30年と長く、既存製造企業によるイノ ベーションの重要性が改めて認識される。

創業10年以内の企業には、機械金属系製造企業に加えて、IT、工業系サービスとい った事業領域に属する企業が見られる。

経営者の年齢については、50台を中心とするきれいな釣り鐘型分布となっている。4 0−60代で大半を占めており、20代の若手経営者は極めて少ない。 

  将来像として多いのは、生産技術型、次いで製品開発型企業である。自社製品保有企業 には、高成長企業が多い。 

世界水準の競争力を持つとした腕に自信のある企業の企業規模はやや大手企業が多いも のの、自信を持つ小規模な企業も見られる。創業年から見ると、世界水準の競争力を持つ とする企業は、創業間もない企業と設立後40−50年の企業が強い。

株式公開等の直接金融志向の企業は約8.5%あり、一次調査に比し高い比率となって いる。顧客との関わりについては、既存事業で新規顧客確保するという考え方が最も多い が、広域的な競争力が問われてくる。

3) 新分野進出企業の調査 ( 1994年度−1997年度 ) から明らかとなった企 業家の諸課題等

自動車産業との技術的シナジーが見込まれる住宅産業への進出、土地勘のある自動車産 業・電機産業周辺の新分野進出が中心である。

顧客が明確化された生産財分野への参入、新規間接販売ルートの開拓が、市場戦略の核 となっている。個別顧客の注文に応じて一品納入、小ロット納入、カスタム納入を行うと いった汗をかくタイプの企業が半数近くを占めている。

新分野進出の優良事例は、従来生産性が低かった職人仕事の領域に高い生産性を持ち込 んだ企業であった。

必ずしもハイテクが求められているのではなく、参入余地のある領域において確実に需 要を捉えることの重要性が浮き彫りとなった。太田市内の新分野進出企業の層は薄い。

4) 中小創造法認定企業の調査 ( 1998年度 ) から明らかとなった企業家の諸課 題等

群馬県の中小創造法認定企業には、家族経営の第二創業系製造企業も多く含まれており、

急成長を直接金融で賄うタイプの企業ばかりではない。群馬県の中小創造法認定企業の事 業内容は、ソフトウェア系2社、バイオ系1社、建設系2社、施工系1社を除いた24社 が製造系である。

企業規模、社歴を見てみると、全般的に小規模で社歴は長い。実態としては売上高3億

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円以下の企業が多い。「売上高10億円前後の壁」を突破出来ないが、ニッチ市場に進出し 大手との棲み分けに成功している企業も多い。

一方、

一旦そうしたニッチ戦略が成功する と、市場が成長しない限り高成長は困難となる。しかし、市場が成長すると大手等との競 合リスクが高まるというジレンマがある。「ニッチな高収益事業を複数保有しリスクを分散 すると同時に、それらの事業間で相乗効果を生み出していく」という理想像を目指す経営 者もいる。

一部優良企業を除いては、間接金融に大きく依存している。調査対象企業には、融資が 受けられず事業資金が不足している状況の企業も含まれている。

製造業分野では新規創業型よりも第二創業型の方が有利な場合が多く、必然的に第二創 業型の社歴の長い企業が多くなるのである。

経営者に占める後継者率は30%と低く、業歴の長いベテラン創業経営者による新規事 業進出が多い。中小創造法認定企業は開発投資を積極的に実施しているため、成長力は一 般企業に比し大きい。調査対象企業のうち67%が自社製品を保有している。

地域ベンチャー企業の課題は、損益計算書より、むしろ貸借対照表にある。特に資本の 安定性、財務管理に課題がある企業が多い。

販売する商品については、消費財は少なく圧倒的に生産財であり、特定顧客に材料や設 備、ソフトウェア等を販売する場合が多い。ファブレスについては、社歴が短い企業を中 心に調査対象企業中の17%を占めていた。

中小創造法認定企業は株式公開志向の企業が約33%と通常の中小企業に比べて多い。

ヒアリング調査後に倒産した企業が3社あったが、全て目標と現状のギャップが極めて 大きい企業であった。

5) フロントランナー企業 ( 2001年度 ) の調査から明らかとなった企業家の諸 課題等

各フロントランナー企業は、14の自治体に、広域点在している。「とんがった企業」で あり、特に各地域で新規創業して日の浅い企業は、コミュニティ内の旧来型の論理とは相 容れないと考えている企業が多い。首都圏北部地域のフロントランナー企業が生み出す財 は、部材等が12社、資本財が13社、消費財が1社であり、大多数が生産財を産出して いた。

各経営者達のうち、創業者+実質的創業者は全体の約60%強であり、残りが後継者で あった。後継者の内訳を見ると、実質的創業者、QCD等を向上させた改革者、事業基盤 に磨きをかけている改善者に分類される。

経営者は50代の熟年者が中心であり、創業10年以内でフロントランナーと見なされ ている企業は1社に過ぎず、技術系・製造系のフロントランナー輩出には、最低創業後1 0年かかるのが現状である。創業者12名の創業時年齢を見てみると、6人が30歳台、

20歳代と40歳代が3人ずつとなっている。創業後の経過年は、平均は16.8年とな

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っている。23歳から45歳にわたる平均34.8歳の創業者達が、10年以上かけて周 囲から認められるようになるのは50歳代ということになる。

20代で創業している三名の経営者は、IT系、マーケティング系、修理サポート系で 事業をスタートしている。製造そのものではなく、製造周辺分野では、若手企業家にもチ ャンスがある。

売上高については、5億円以下の企業が最も多く、高度なスキルは保有しているものの、

過半の企業が10億円の壁を越えていないのが実情である。

フロントランナー企業各社は、地域の雇用状況改善に貢献しており、高成長企業の比率 が極めて高い母集団である。

調査対象企業で多かったのが、二桁(10社以上100社以下)に顧客が分散している企業、

上得意3社向けの売上高を合計すると年商の50%を越えるという企業である。

国際的水準の独自性と回答する企業が最も多い。この様に自信を持つ企業が地域に多数 密集することが、相互作用を通じて国際競争力ある地域産業を創出する上で重要となる。 

株式公開志向の企業は6/26社あり、検討中の企業は5/26社あった。

各社の将来像として、圧倒的に多かった回答は、製品開発型企業として伸びていきたい というものであった。それに、生産技術型が続き、研究開発型を目指す企業が一部ある。

生産技術型として成功している企業は、広域的な競争力、独自性を磨いている。顧客と の関係については、「新規事業を通じて新規顧客を開拓する」という考え方が最も多かった。

今後の供給業者との関係については、成長意欲が強い企業ほど、研究開発投資を重視す るなら他の分野は外部に任せようということになる。今後の資金調達については、「金融機 関等の融資」を重視すると回答した間接金融志向が最も多く、「自己資金の範囲内で投資す る」と回答した自己資金志向がそれに次いでいた。不確実性を含んだ研究開発投資を重視 する企業群が、間接金融に依存せざるを得ないことは問題である。

産学連携については、20%強の企業が一定の成果があったと回答しており、不満を持 つ企業も含めると約70%の企業が産学連携の経験がある。

6) 各調査結果に基づく事例地域企業家の特徴と諸課題

事例地域企業家の特徴と諸課題は、下記A、Bの通りに整理される。

A.事例地域企業家の特徴

  a1.地域の製造系小企業の多くは下請的色彩が強い生産技術型企業である。生産技 術型として成功している企業は、広域的な競争力、独自性を磨いている。

a2.小企業は平均としては不調であるが、ニッチ市場において独自の地位を占めて 高成長している企業もある。

  a3.広域的な勝ち組企業間のネットワーク構築への動きがはじまっている。広域的 な競争力を持つ企業が顧客に新しい価値を提案する形で商圏を広げつつある。

(6)

  a4.直接金融志向の強さは、母集団により大きく異なり、地域における主流は間接 金融志向と自己資金志向である。

  a5.自社製品保有企業には、高成長企業が多い。生産財分野で資金をかけずに汗を かく方式で成功している企業は多い。

  a6.従来生産性が低かった職人仕事の領域に高い生産性を持ち込むことで新分野進 出に成功した事例もある。

  a7.意欲的企業の経営者は業歴の長いベテラン創業経営者の比率が高く、50台を 中心に40−60代が大半を占めている。

a8.フロントランナー企業には、採用意欲が高い高成長企業が多く、製品開発型企 業として伸びていくとする企業が大多数である。地域の平均的製造企業は、生 産技術型企業と今後もやっていきたいと考えている。

B.事例地域企業家の課題

  b1.地域の意欲的企業の多くは、年間売上高「10億円前後の壁」を新たに突き抜 けることが少ない。成長の上限が見えるビジネスモデルの中で強みを発揮して いるのでIPO企業とはならない。

  b2.地域の新規法人設立は増加しているが、これは流通サービス系法人設立増加に よるもので、製造企業の設立は横這いである。廃業や倒産があるため事業所数 は減少が続いている。

  b3.20代の若手経営者は極めて少ない。大学院卒等の技術系高学歴者の創業は全 く見られない。

  b4.スピンオフ創業は、出身母体のほとんどが中小企業であり、大手企業出身者は 極めて限られている。 

  b5.単独の市長村内では新分野進出企業の層は薄い。

  b6.一旦ニッチ戦略が成功すると、市場が成長しなければ成長の限界に到達し、市 場が成長すれば大手等との競合リスクが高まるというジレンマに陥る。

  b7.技術系・製造系のフロントランナー輩出には、創業後10年以上かかるのが現 状である。平均34.8歳の創業者達が、周囲から認められるようになるのは 50歳代ということになる。

b8.各フロントランナー企業は、広域点在しており、地域内に革新性の高い企業家 仲間が見当たらない場合も多い。国際的水準の独自性を持つ企業が狭い地域に 多数密集し、相互作用を通じて国際競争力ある地域産業を創出するという状況 にはない。 

b9.不確実性を含んだ研究開発投資を重視する地域ベンチャー企業群が、間接金融 に依存せざるを得ない。

  b10.ファブレス型による成功は高いビジネススキルを要求されるため、資金節約型

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の創業は、IT系、製造サービス系に限られている。

( 2 ) 技術者・技能者等

企業家以外に地域の経営資源として重要な存在に技術者・技能者が挙げられる。

ここでは事例地域の技術者・技能者を中心にマネジメント人材等も含めた各種人材につ いての諸課題をまとめる。

1) 第一次調査より明らかになった事例地域の技術者・技能者等の諸課題

規模の大きい中核企業・大手企業には、研究開発が必要となる多角化戦略や新製品開発 戦略を採用する傾向が見られる。中堅企業には、リスクの高い研究開発投資を回避し、新 市場開発戦略を採用する傾向が見られる。

結果的に、研究開発投資も技術者も一部の企業に偏在する。

年間売上高200億円を超える一次下請け企業クラスでも、近隣の国立大学工学部から 優秀な大学院生を確保するという状況にない。

小企業の場合は、資金不足、熟練技能工不足が切実な問題となっている。技術者が不足 するという見通しを持つ企業が多いが、企業規模により必要な人材が異なる。小規模な企 業は、機械技術や生産技術といった現場に近い技術の必要性を感じており、規模の大きい 企業は、情報技術や電気電子技術といった周辺技術の補強の必要性を感じている。

経営資源面の課題としては、資金、技術者、販売・マーケティングに強い人材が挙げら れている。

その他、販売パートナーに関する情報が不足していると考える企業が圧倒的に多い。

2) 第二次調査より明らかになった事例地域の技術者・技能者等の諸課題

地域の意欲的企業においても、特許保有0件が70%を上回っており、継続的に特許を 申請していると思われる企業(11以上保有)は6%に止まっている。小さな企業でも特許を 保有しているが、保有件数が多いのは規模的に大きな企業である。創業10年未満の企業 も特許を保有しているが、多数保有しているのは社歴の長い企業となる。

小さい企業の場合、社長自ら特許を取得している場合が多い。

生産技術等の現場の技術を強みとする企業が多く、課題はギャップを見る限り販売、研 究開発、事業企画、財務・労務管理に見られる。

ISOシリーズ等の国際的な品質・環境規格の認証については、1/5の企業が受けて いるに過ぎず、管理面の体制が弱い。

強化すべき技術としては、生産技術と情報工学を挙げる企業が多い。

ITの急速な進展にキャッチアップする必要性を意欲的企業は感じているが、ITに強 い人材が不足しているというのが実状である。

技術系大学との産学連携については、50%強の企業は興味がないとしており、交流を

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通じて成果が得られたとしている企業は18%であった。まだ、本格的な共同研究を通じ て事業化までこぎつけた事例は見られない。

地域の意欲的な企業による地元の国立大学からの卒業生採用実績は今のところ少なく、

教授達と企業のコミュニケーションが個別にはじまった段階である。

3) 新分野進出企業調査より明らかになった事例地域の技術者・技能者等の諸課題

  既存技術の応用、ハイテクとは言えない新技術によるチャレンジが、各企業の技術戦略 の核となっている。つまり、中小企業の新分野進出に際しては、新しい技術の応用をいか に知恵で一捻りするかがカギとなるのである。

新分野進出企業の生産現場においては、技能者が特別の技能を必要とされる工程はあま り見られない。一年以内に習熟する作業がほとんどである。ただ、多品種少量生産に柔軟 に対応しなければならない点で経験が役に立つ。

NC機械を使いこなす技能、設備保全の技能を持つ者は不足気味である。

切削加工の仕上げ、特殊な成形加工の精度出し等に職人の後継者が必要な状況である。

新分野進出企業のうち、技術的挑戦を行った企業は、事前評価が良かったにもかかわら ず結果を出せなかった。こうした企業を支援していくための手法が地域に不足している。

一方、新分野進出の優良事例のうち1社は、販売部門のマネージャーをスカウトし、生 産性向上と販売促進に力を入れた。技術的に易しい領域に進出し、販売人材に投資する方 法を採用したのである。

また、新分野進出企業への支援制度を立ち上げる際には、太田市の経済部に有能でやる 気のある中堅職員がいた。筆者は事例地域にて10余年活動してきたが、地域の主な企業 経営者達から信頼されていた市役所職員は彼一人であった。

地域産業ネットワーク学会立ち上げ時も、この中堅職員と協力したお陰で スムーズな船 出が可能となった。地域の商工会議所の会頭にやる気があったため、前向きな企画には協 力的であったことにも助けられた。

4) 中小創造法認定企業調査より明らかになった事例地域の技術者・技能者等の諸 課題

調査対象企業のうちでは「独自性の高い技術」を自社開発している企業は17%を占め ているに過ぎなかった。

多くの企業が「既存技術の改良」、「既存技術の導入」による事業計画である。

中小企業で専門性の高い技術系人材を揃えている場合は少ない。

結局、経営者がある程度技術的理解力があり、役に立ちそうな技術があると摂取して使 いこなせるかどうかの見極めをするという方法で事業化を試みる場合が多い。文化系大学 卒業の経営者が、技術を理解し、独学で使いこなそうとしている姿も見られた。

文化系だから技術は分からないというスタンスには立たないし、例えば、機械工学科卒

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業だから化学は分からないとすることもない。

技術企画、技術開発、製造技術のいずれかをコアスキルとして事業を進めている企業が 多く、各企業にとり不足しているスキルは、事業企画と財務管理である場合が多い。

良好な経営状況にある企業は、技術に特長がある上に事業企画と財務管理が弱みとなっ ていないという共通点があった。

5) フロントランナー企業調査より明らかになった事例地域の技術者・技能者等の 諸課題

各企業は個性的なテクノロジーを保有し、規模が小さいながら、従業員に占める技術者 の比率が高く、それが最も高い企業は79.8%であった。

自社のコアスキルを「開発技術」とする企業が圧倒的に多い。

不足しているスキルとしては、マーケティングを挙げる企業が抜きんでて多い。

ファブレス志向の企業等は生産管理を課題としている。

調査対象企業の中には、特許保有企業が多いものの、積極的な知財戦略を立案している 企業は見られなかった。研究開発型で成功するには、研究開発プロジェクトの適切なマネ ジメント人材が不可欠である。

各企業が、今後さらに充実させたい部門は、技術部門、それに次いで販売部門を充実さ せたいとする企業が多い。各社の中核スキルである技術をさらに強化し、不足スキルであ るマーケティングを補強したいということになる。

販売サービスのパートナーについての情報、技術及び技術の専門家についての情報不足 を感ずる企業が多い。

各社の不足している技術については、電気電子技術を挙げる企業が最も多い。

製品開発型企業は、この分野の技術を必要としているのである。地域の各理工系大学に は電気電子系学科、情報工学科があり、大学の技術を活用する余地が残されている。

6) 各調査結果に基づく事例地域技術者・技能者等の特徴と諸課題

事例地域技術者・技能者等の特徴と諸課題は、下記A、Bの通りに整理される。

A.事例地域技術者・技能者等の特徴

a1.規模の大きい中核企業・大手企業は、研究開発が必要となる多角化戦略や新製品 開発戦略を採用する傾向が見られる。

a2.技術者を必要とする企業が多いが、小企業は、機械技術や生産技術といった現場 に近い技術、規模の大きい企業は、情報技術や電気電子技術といった周辺技術の 補強の必要性を感じている。

a3.販売・マーケティングに強い人材、販売パートナーに関する情報が不足している と考える企業が多い。

(10)

a4.特許保有件数が多いのは規模的に大きく社歴の長い技術者の多数在籍する企業で ある。

a5.生産技術等の現場の技術を強みとし、生産技術と情報工学を強化したいとする企 業が多い。

  a6.既存技術の応用、ハイテクとは言えない新技術によるチャレンジが、地域企業の 技術戦略の核となっている。技術的に易しい新分野に進出し、販売人材に投資す る方法を採用した成功事例も出ている。

  a7.新分野進出企業への支援制度を立ち上げる際には、太田市の経済部に有能でやる 気のある支援人材がいた。

  a8.良好な経営状況にある企業は、技術に特長がある上に事業企画と財務管理が弱み となっていないという共通点があった。

  a9.フロントランナー企業は個性的なテクノロジーを保有し、規模が小さいながら、

従業員に占める技術者の比率が高い。

B.事例地域技術者・技能者等の諸課題

b1.研究開発投資も技術者も一部の企業に偏在している。地域の中核企業クラスでも、

近隣の国立大学工学部から優秀な大学院生を確保するという状況にない。共同研 究を通じて事業化までこぎつけた事例は見られない。

b2.小企業の場合は、資金不足、熟練技能工不足が切実な問題となっている。

b3.地域の意欲的企業においても、70%以上の企業が特許保有0件である。知財管 理体制、知財戦略がしっかりしている企業はほとんど見当たらない。

b4.販売、研究開発、事業企画、財務・労務管理の機能が弱い企業が多い。ISOシ リーズ等の国際的な品質・環境規格の認証取得企業も少なく、管理体制が弱 い。

b5.NC機械を使いこなす技能、設備保全の技能、切削加工の仕上げ、特殊な成形加 工の精度出し等に技能者の後継者が必要な状況である。

b6.技術的挑戦を行う企業を支援していくための手法が地域に不足している。研究開 発プロジェクトのマネジメント人材も不足している。

b7.公的機関の人事異動により支援人材の質に時期的ばらつきが生じる。

b8.専門性の高い技術系人材を揃えている企業は少なく、経営者が、技術を導入して 使いこなせるかどうかの目利きをする能力に事業の成否は依存している。

b9.ファブレス志向の企業等は生産管理を課題としている。

( 3 ) 経営資源のまとめ

  第13章における調査結果をベースとして、表14−1の要領にて、事例地域産業の活 力の源泉である企業家セクターに関する体系的な分析がなされる。

(11)

表14−1 太田地域の製造系・技術系企業家の分析表 極 め て

多い

多数 集積

一定数 集積

集積が 少ない

極 め て 少ない 1)新事業創出のタイプ

新規創業   ○

創業者の第二創業   ○

後継者の第二創業   ○

2)スピンオフ創業者の出身

大学・研究所   ○

大企業   ○

中小企業   ○

その他   ○  

3)イノベーションのタイプ

研究開発型     ○

製品開発型   ○

応用技術型   ○

生産技術型   ○ 4)資金調達のタイプ

IPO達成     ○

直接金融志向   ○

自己資金志向   ○   間接金融志向   ○ 5)革新意欲

ビッグビジネス志向   ○

ニッチビジネス志向   ○ 下請け志向   ○

6)企業家の属性

若手男性   ○

若手女性   ○

中堅男性     ○  

中堅女性   ○

シニア男性     ○  

シニア女性   ○

(12)

  どの程度の数が多いのかは人によりスケール感覚が異なるが、ここでは便宜的に500 以上が「極めて多い」、499−100が「多数集積」、99−50が「一定数集積」、49

−10が「集積が少ない」、10以下が「極めて少ない」とした。

  表14―1は、太田地域の企業家集積の状況を評価したものである。群馬県、首都圏北 部地域に広域化すると数が増えるが傾向は変わらない。 

新事業創造のタイプとして「新規創業」、「創業者の第二創業」、「後継者の第二創業」に 分類した。第二創業はここでは新分野進出企業のこととし、新事業比率が低くともかまわ ないこととした。太田地域においては、第二創業は一定数見られるが、製造系・技術系の 新規創業企業は少ない。

  スピンオフ企業家については、社歴が古い企業もカウントするなら「中小企業出身」は、

一定数いる。「大手企業出身」は早期退職に応じたシニアが一部見られるが、「大学・研究 所出身」は聞いたことがない。

  イノベーションのタイプについては、「研究開発型」は一部に限られる。「製品開発型」

は網羅的な第二次調査で32社発見されている。広域的な競争力や技術的独自性を有する

「応用技術型」は製品開発型より多い。その他、地域のほとんどの製造系・技術系企業が

「生産技術型」に属する。

  資金調達のタイプについては、「IPO達成企業」は大手企業の子会社1社に限られてい る。IPO可能な企業が数社あるが様々な事情で公開に踏み切っていない。IPOはまだ していない「直接金融志向」の企業については、第二次調査の結果から見ても、少ないが 第一次調査の時期に比べて増えているように感じられる。残りの多くの企業は、無理はし ない「自己資金志向」、銀行等に融資を受ける「間接金融志向」である。

  太田地域には工業集積の原動力となる大手企業のマザー工場が立地している。

  しかし、これらが地域からイノベーションを創出する核企業(Anchor Company)として機 能してきたかというと必ずしもそうではない。プロセスイノベーションにおける漸進的革 新を生み出すのに寄与してきたというのが実状であろう。

  この地域には、新たなAnchor Companyの登場が必要なのである。

  その意味では、革新意欲の面で、Anchor Companyとなり得る「ビッグビジネス志向」

の企業があまり見当たらず、「下請け志向」の企業が圧倒的に多い実状が問題と言える。

  一方、「ニッチビジネス志向」の優良企業は地域に一定数存在している。

  このタイプは、売上高10億円の壁を越えないが、小さい市場で存在感を発揮する。

  金融事情が悪いこともあり、製造系の事業分野では、こうしたエクセレントニッチ路線 は賢明な選択肢であることは確かである。しかし、5億円の優良企業が20社で100億 円であり、地域の産業構造を変革する存在とは成り得ない。

  企業家の性別年齢によるタイプについては、「中堅男性」と「シニア男性」の世界である。

  特に技術系・製造系の分野では、事業確立出来た「女性企業家」は年齢を問わず群馬県 全体でも1―2社程度に過ぎない。

(13)

  女性企業家は、小規模な流通サービス系の領域で活躍している事例は多数出ているが、

技術やモノづくりの世界には参入が難しいようだ。

「若手男性」も、親が早期に事業継承した後継者を除くと、IT系、工業サービス系で創 業者が多少見られる程度にとどまる。

Anchor Companyが突然立ち上がるという幸運があればよいが、こうしたイノベーショ

ンには不確実性があり計画的に生み出すと言うことが難しい。

現実的に時間をかけて取り組むべきは、新規創業、第二創業、ニッチビジネス志向、応 用技術型、製品開発型の増加を通じて、地域産業がある臨界点を越えて次のフェーズに突 入するまでの努力である。

地域内の集積、密集と地域内外との地域産業ネットワークの構築を通じて相互作用を生 み出すことが求められているのである。 

表14−2 太田地域の技術集積の分析表 国際的

水準

国内 有数

広域圏 有数

やや 弱い

極めて 弱い

1)水平的技術集積   ◎

生産技術の多様性   ○   生産技術の独自性   ○    

生産技術の汎用性   ○  

2)垂直的技術集積   ◎

基礎研究機能   ○ 

応用研究機能   ○

製品企画機能   ○

製品開発機能   ○

生産技術機能   ○    

  太田地域の技術集積を分析すると、水平的技術集積、すなわち生産技術の多様性、独自 性、汎用性は国内有数の地域である。造船や鉄鋼の城下町に比べると自動車と電機の技術 は遙かに汎用性に富んでいる。特に自動車産業は、航空産業の弱い我が国における生産技 術の集大成的な産業である。

  水平的技術集積には、いかに設備、材料・部品を使いこなして加工するか、精度確保の ための測定器を使いこなすか、それらを保全するか、といった要素が含まれる。

  海外進出を果たした太田地域の有力企業は、現地で高い評価を受け、受注を増やしてい るのが実状であり、その独自性は国際水準にある。

  水平的技術集積全体で評価しても国内有数の地域であると評価できる。

(14)

有数であるものの国内有数とはならない。

  基礎研究機能は地域に蓄積されていない。隣接する桐生地域の群馬大学工学部、足利地 域の足利工業大学のシーズを含めるとさらに高い評価となるが、現段階ではそれらを十分 活用するには至っていない。大手自動車メーカーの応用研究、製品企画、基本的な製品開 発は東京あるいは都下で実施されており、太田地域にはそうした機能に付随する試作機能 等も京浜地域に比し十分ではない。

本研究においては、技術集積を「(水平的技術水準)×(垂直的技術集積)=(技術集積)」と して定義する。この定義に基づくなら、太田地域の水平的技術集積は国内有数で、垂直的 技術集積は広域圏(北関東等)有数という水準である。トータルして国内でも上位に位置づけ される地域である。群馬県、首都圏北部地域として分析してもほぼ同様の結果になるが、

技術者の生活圏という観点から、太田地域を地域単位として分析を示した。

  事例地域の技術集積は、第11章で例示した北上花巻地域、甲府地域より優位にあるが、

広域多摩地域に比べると垂直的技術集積で劣位にあるため分が悪いということになろう。

  地域の技術水準に影響を及ぼすのは、技術者・技能者個人の資質というより、その地域 にどの様な技術を使う仕事が毎日あるかで決まる。

  毎日下請け仕事をしていると品質向上やコスト低減に関する技能は集積するが、売れる 製品を企画・開発するスキルは身に付かない。

  太田地域においては、生産管理、設備管理、資材管理といった生産職能は幅広く蓄積さ れている。生産技術も強い。課題は、プロダクトイノベーションを引き起こすような需要 リンケージ機能を有する企業の集積である。

地域には力のある製品開発型企業が立地しており、地域企業による新しい仕事を通じた 能力開発を助けるコーディネート活動が求められるのである。

14.1.2 インフラの諸課題

  地域産業のインフラは、第10章において体系的に論じたように、一次インフラ、二次 インフラ、三次インフラに分類される。 

  一次インフラとは、内部経営資源(4M1I)が不足する地域企業に外部経営資源を提供す る組織、あるいは専門家である。

二次インフラとは、交通網、通信網、エネルギー、水道、工業団地といった産業基盤イ ンフラである。三次インフラとは、教育機関、病院、文化施設、生活関連施設、レクリエ ーション関連施設等のQOL(Quality of Life)関連インフラである。

本項では、各インフラの諸課題について、(1)一次インフラ、(2)二次インフラ、三次イ ンフラ、(3)インフラのまとめ、の順に論じていくこととする。

( 1 ) 一次インフラ

  第10章において示されたように、一次インフラとは、公的支援機関、VC、金融機関、

(15)

民間支援機関、エンジェル、各種専門家、大学等の教育研究機関、公設試験場、研究機能 を持つ企業、基盤技術を持つ企業、各種供給業者・サービス業者、需要家等である。 

公的支援機関としては、国や自治体の支援部門、それらの傘下の支援機関、及び第三セ クター機関等が挙げられる。 

地域のVCとしては、独立系VC、地方金融機関系VC、大手VCの支店、地方自治体 系ファンド、公的VC等が挙げられる。 

地域の金融機関としては、地銀、信金、信組、大手都銀の支店、公的金融機関の支店、

リース会社、公的信用保証機関、融資機能を持つ公的機関等が挙げられる。 

民間支援機関としては、コンサルティング機関、調査機関等が挙げられる。 

エンジェルとしては、資産を有する成功した企業家、企業家育成に熱意を持つ個人投資 家、高利回りを期待する個人投資家等、多彩な存在が挙げられる。 

各種専門家としては、弁護士、弁理士、会計士等、高度な専門知識を有する人材が挙げ られる。 

大学等の研究教育機関としては、大学・高専・短大、あるいは国の傘下にある研究所、

公的能力開発機関等が挙げられる。 

公設試験場としては、地方自治体の傘下の工業試験場、窯業・繊維等の地場産業系試験 場、農林漁業系試験場、衛生環境系試験場等が挙げられる。 

研究機能を持つ企業としては、研究開発型企業、開発部門を持つマザー工場、大手企業・

多国籍企業の研究開発拠点、民間研究企業等が挙げられる。 

基盤技術を持つ企業としては、各種生産技術・技能、場合によっては設計機能を駆使す る製造企業群が挙げられる。 

各種供給業者・サービス業者としては、設計、加工、材料供給、物流、情報通信、その 他事業所向け各種サービスの供給業者等が挙げられる。

需要家としては、地域企業の産出する財(product)を購入する企業であり、地域産業の能 力向上に貢献する事例として、市場リンケージ機能を有し、顧客の欲する品質等の水準を 厳しく要求するリーディング企業等が挙げられる。 

  これら12要素が地域内で活躍することは、地域企業の経済性、競争優位にかかわる。 

これらの要素が地域内に無い場合、あるいはあっても量的・質的に不十分な場合、各企 業は、その機能を、地域外に求めるか、活用をあきらめるか、内部に保有するか、を選択 することとなる。 

一次インフラの質と量は、地域企業群の戦略や地域産業政策の選択肢を左右する。 

  地域にこれら一次インフラが揃っていた場合、地元密着したネットワーキング活動を日 常的に行うことが可能となる。逆にこれらが地域に不足している場合は、新しい政策を打 ち出そうとする際の制約条件となり得る。

ここで、筆者が2000年度に実施した、群馬県の地域プラットフォームに関する調査 結果を示すこととする。

(16)

この調査は、地域プラットフォームを活用するであろう意欲的地域企業の調査(第13章 で示した第二次調査)と対で行われた。筆者のヒアリング調査にJANBO事務局が置かれ ている日本立地センターから若手スタッフが派遣されて同行した。

調査期間(2000/9/1−2001/3/31)内に地域プラットフォームに所属する主たる支援機関を 全て訪問し、ヒアリング調査を行った。

  第二次調査から明らかとなったように、地域におけるほとんどの意欲的企業は公的支援 機関と何らかの関わりを持っており、特に金銭的支援、目的を明確化した非金銭的支援に ついては満足している傾向がある。

  一方、地域プラットフォームの各機関の悩みは、ワンストップサービスといっても、組 織対組織の連携というのは、スムーズに必ずしも運ばないことである。例えば、総合相談 窓口から公的金融機関や信用保証協会に企業家を紹介されても、優遇するわけにはいかな いと言うことである。あくまでもビジネスベースでの判断が優先される。

  ヒアリング調査結果の概要は、表14−3に示される通りである。

表14−3 地域プラットフォーム所属支援機関の強みと課題(組織名は調査時) 支 援 機 関

            強  み       課  題  太田との距離  中小企業振興公社

(総合型) 

民間出身の人材を確 保 

金銭的支援機能が弱い 活動資金に制約 

遠い 

工 業 試 験 場          (中間型) 

分析評価に強い  公務員による運営  遠い 

繊 維 試 験 場          (中間型) 

織物技術に特徴  元気な企業が少ない  やや近い 

発明協会群馬支部 (特化型) 

目的が明確  地域外との連携  遠い 

ぐんま産業高度化 センター(中間型) 

 加工技術に強い  プロパー職員がいない 財政基盤が弱い 

近い 

群 馬 大 学          (研究型) 

研究者が高水準 大手企業に人脈 

シーズ事業化の経験が不足 一部の研究者の熱意に依存 

やや近い 

群 馬 高 専          (研究型) 

リーダーが有能 県と巧みに連携 

予算規模、教員数に制約  遠い 

(その他、中央会、商工中金、商工会議所連合会、商工会連合会、群馬銀行、弁理士にヒアリング)

総合調整型支援機能、金銭的支援機能、目的特化型非金銭的支援の3機能を全て備えた 機関はない。そもそも県庁所在地ではない太田地域には、支援機関が不足している。

  太田の企業が県庁所在地の前橋まで相談に行くと、片道一時間強かかり、往復だけで午 前午後のうちの一方がつぶれてしまう。東武線の特急で北千住まで1時間20分で到着す

(17)

るので、例えば弁護士に相談するなら前橋より東京にいくという企業家もいる。

中核的支援機関である中小企業振興公社(現、産業支援機構)には、プラットフォームとベ ンチャー支援センターの相談窓口が統合的に設置されている。

金銭的支援機能が弱いため、県庁との一体的運営が必要となる機関である。

工業試験場は、既存の試験測定サービスについては目的が明確であり満足度が高いが、

産業技術センター設立後に、目的意識の明確な機能強化が求められる。

群馬県の各大学は総合力が弱い。単科大学の集まりである。

一方、群馬大学は北関東産官学研究会、群馬高専は群嶺テクノ懇話会といった企業と交 流ネットワークを熱意ある一部の教員を中心に構築しており、筆者のコーディネートする 地域産業ネットワーク学会も含めて、これらが首都圏北部地域の産業クラスター組織創設 の母体となっている。

  その他の一次インフラとして、VC、金融機関、民間支援機関、エンジェル、各種専門 家、研究機能を持つ企業、基盤技術を持つ企業、各種供給業者・サービス業者、需要家等 についてもふれておくことにする。

  VCについては、地方銀行子会社があるものの、実状は審査機能が無く、都内の大手V Cによる群馬県内投資先に相乗り投資する方式をとっている。

  地域ファンドについては他地域の後追いで設立する動きがあるが、運用のプロが地域に いない中で、自己責任原則と公共性が両立するのかといった課題がある。

  その他の金融機関としては、都市銀行の支店は撤退が相次いでいる状況であり、地方銀 行は群馬銀行の財務内容が抜きんでて良く、財務的に優良な信用金庫も一部に見られる。

  しかし、財務内容がよいということはベンチャー企業には融資出来ない慎重な姿勢であ るということにつながりかねない。エンジェルについては、収益に無頓着な出資を行って いる中小企業経営者、外注として仕事を与えながら養う場合等は多い。

これらは主に血縁や地縁がある企業への支援である。ただ、一般には、投資しても人に は言わない場合が多いため、統計的には把握されていない。

  各種専門家については、弁護士、弁理士、会計士が重要な存在である。

  こうした専門家達は、県庁所在地、裁判所支部のある規模の市部に事務所を開設してい る場合が多い。

  個人開業している会計士については、地方都市においては会計監査対象となる企業が少 ないため税理士的な業務を中心にこなすことになる。組織的な監査法人としては、県庁所 在地や新幹線の駅の周辺に東京の監査法人の支所がある。ベンチャー企業の公開準備に際 しては、これら支所の会計士やVCが紹介する会計士が活躍する。

弁理士については一部の大手企業内に社員として在籍していることもある。

  しかし、第13章の第二次調査において明らかとなったように、地域で弁理士に継続的 に仕事を依頼する企業は一部に限られている。社内弁理士がいるような企業は群馬県でも 限られているが、外部の弁理士への仕事依頼もそうした企業からのものが多い

(18)

  一部の大口顧客をその企業出身の弁理士が一旦押さえてしまえば、残りの市場は非常に 小さいと言うことになる。また、限られた大口顧客が東京の専門家を使えば、地方にはそ の仕事はこない。地方に行くと弁理士不在県もあるのはこうした事情によるのである。

  また、ITベンチャー企業の相談は、ビジネスモデル特許紛争といった先端的な内容で ある場合もあるが、普段は離婚裁判をこなしている地方の弁護士には対処が難しい。

  結果的に、そうした案件の処理を日常的にこなしている東京都内の専門家が活躍するこ とになりがちである。事例地域は日帰りで東京との往復が可能である。

首都圏北部地域のフロントランナー企業家達は、地域外のニーズに応える立場であり、

同時に地域外の専門家達とのネットワークを活用する存在でもある。

  地域を越えて、高水準なプロ同士のネットワークが構築されるのである。

  研究機能を持つ企業は、本社、開発部門、マザー工場を置く大手企業、規模的に小さい が製品開発型、研究開発型の地域企業に分かれる。

  研究開発機能を地域に置く大手企業は限られている。

上場企業であっても、開発中心で研究機能が弱い場合もある。製品開発型、研究開発型 の地域企業は経営者個人ベースの開発行為である場合が多い。

  基盤技術を持つ企業、各種供給業者・サービス業者については、14.1.1項にて論 じたように集積は大いにある。需要家、つまり需要搬入企業については系列組織の頂点の 企業、誘致企業工場のウェートが圧倒的に高い。

  次に、筆者が2001年度に実施した首都圏北部地域の9支援機関に対するヒアリング 調査(2001/7/1−2001/10/31)結果を示すこととする。産学連携に熱心な研究者計10名を含 む計9支援機関に対するヒアリング調査である。

  今回訪問した研究者達は、全て産学官連携に熱心な存在であり、首都圏北部地域の「フ ロントランナー大学人」と言うことが出来る。

  群馬県央部の2大学(研究者3名)、1支援機関、両毛地域の1大学(研究者4名)、2支援 機関、栃木県央部の1大学(研究者3名)、2支援機関、計9機関を訪問した。

  ここでは各大学の研究者が推進している取り組みと連携事例、支援機関の取り組みと連 携事例、諸課題等についてまとめる。

1)群馬高等工業専門学校 a.機関の概要

  1962年設立され、教官数約90名、学生定員200名/年、5学科(機械、電

気、土木、物質工学、電子情報)の構成となっている。

b.連携組織

  全国の高専で初の地域共同研究センターが設立され、群嶺テクノ会(会員数130

社、年会費2万円)が、1996年に発足する。学生の研究発表、ハイテクパンフ、

産学連携フェスティバル等を実施している。

(19)

c.連携の特長

  前橋市に立地するため県庁、振興公社、工業技術センター、前橋の元気な企業との

連携が緊密であり、異業種交流組織とのネットワークも構築している。 前橋市立の前 橋工科大にはものづくり系の学科がないので棲み分けが出来ている。

d.組織の方向性

  地域との連携(産学官+住民)と進学校化が2本柱であり、予算規模が減少傾向の 中で産学連携に人や予算をいかに割くかが課題となっている。

e.支援実績   共同研究  約3000万円/年、受託研究 約10件を受け入れている。

f.産学連携による事業創出事例   メッキスラッジリサイクル等環境系テーマに取り組んでいる。

商品化された例としては「鉄骨君」とよばれる穴空け機械があり、これは1200 万円×20個販売された。

2)前橋工科大学 a.機関の概要

1952年に市立工業短大として設立、1997年に4年制化した。

  教官数約50名、学生定員240名/年、3学科(建築、建設、情報)の構成とな っている。

b.連携組織

企業との交流組織の設立を検討中であり、地域共同研究センターはあるが専従教員 0の状況である。

c.連携の特長

  新しい大学で過去のしがらみが少なく、情報工学科に独自性がある。

建築学科は短大時代からの卒業生が地域に多く、地元工務店とは密接な関係がある。

教員同士で出資して有限会社を設立した。

d.組織の方向性

  公立大学であるため地域社会への貢献が重要であり、国立大学に比べて、予算が絡

むこと以外は活動の自由度が高い点が違う。共同研究の際に、市との契約になるので 企業に納税証明を要求するといった手続きが面倒となる。

e.支援実績

  市から地域共同センターに500万円、奨学寄付金は5−6人の教員が15−20

件程度確保しているが、県内の建設会社との共同研究はこのところ減っている。

f.産学連携による事業創出事例

水辺の環境等のテーマに中小企業と共に取り組んでいる。具体的な事業は未定だが、

IT系の有限会社を活用して学生に実践的な仕事をする場を提供したい。

(20)

3)群馬大学工学部 a.機関の概要

  起源は、1915年の桐生高等染色学校設立である。

教官数は教授から助手まで約220名、学生定員620名/年、7学科(応用化学、

材料工学、生物化学工学、機械システム工学、建設工学、電気電子工学、情報工学)の 構成である。

b.連携組織

  地域共同研究センターが1988年設立され、セミナー、高度技術研修、技術相談、

研究成果公開、共同研究の受入窓口等を行っている。SBVL、機器分析センターに 豊富な設備があり2001年度中には総合研究棟が完成しコラボレーションスペース が用意される。

北関東産官学研究会が2001年に設立された。三つの懇話会(北関東地区化学技術 懇話会:1979年設立/正会員100名/賛助会員約110社、複合材料懇話会:

1974年設立/会員約60人規模、群馬地区技術交流研究会:1987年設立、賛

助会員128社、個人会員約70名)と一つの懇話会を包含した組織となっている。

北関東産官学研究会は、専門部会運営(情報交換事業)/登録顧問団運営(相談事 業)/共同研究助成事業/研究シーズ公開事業、を実施している。

  財団法人群馬大学科学技術振興会は、1983年に設立され、基本財産の利息運用

で、基礎研究支援と研究旅費支援、研究会と公開講座への助成、外国人研究者の招聘 などを実施している。

c.連携の特長

地域内の他機関と比較すると、研究者としての人材が豊富で、広い学問分野を網羅 している。研究設備も豊富で製造業の大多数の業種に対応可能である。

   地域内中小企業、地域外の大・中堅企業との共同研究が半々の比率となっている。

d.組織の方向性

大学としては、研究成果の紹介、情報交換・交流の場の提供、技術相談、セミナー の開放、公開講座、聴講生制度、科目等履修生制度、学部及び大学院への社会人受入、

等に力を入れている。技術的な蓄積はあるが、経営的知識の不足、強力なリーダーや

コーディネータの不足、研究者の意識改革、等が課題となっている。

e.支援実績

地域共同研究センターの実績は、2000年度の共同研究受入件数は35件(200 1年度は60件を目標)、技術相談は2000年度に約50件であった。

  北関東産官学研究会では、2001年度の研究助成として、基礎研究(1件60万

円)5件、実用的共同研究(1件最高300万円)10件、萌芽的調査共同研究(1   件最高50万円)9件、国際会議旅費(1件最高10万円)10件を支援、(財)群馬

(21)

大学科学技術振興会に委託して計9回のセミナー及びフォーラムの開催及び計40 0万円の基礎研究費助成と調査研究旅費の補助を実施している。

f.産学連携による事業創出事例

フロンの分解装置を開発し、特許化及び製品化に成功した。納入実績はまだ少ない が、群馬県環境技術賞を受賞した。

土圧測定装置を開発し、特許化及び製品化に成功し、納入実績も増加しつつある。

微少流量計を開発し、今後事業化を検討する。

大谷名誉教授は炭素繊維等で56件の特許を取得し、様々な企業の新素材事業に協 力した実績を持つ。

4)宇都宮大学工学部 a.機関の概要

  1964年に設立され、教官数139名、学生定員413名/年、5学科(機械シ

ステム工学、電気電子工学、応用化学、建設、情報工学)の構成となっている。

b.連携組織

マロニエ産学官連携事業意見交換会を創設したところだが、大学の技術シーズと地 域企業ニーズのマッチングを目指そうとしている。

地域共同研究センターが1989年設立され、リフレッシュアカデミー、イブニン グセミナー、高度技術研修、起業家育成セミナー等を地域に開放している。

SVBLでは、新産業創出のための独創的な研究開発プロジェクトを実施している。

c.連携の特長

  群馬にはない農学部、エネルギー環境科学専攻の大学院を持っている。

  地域共同研究センター、SVBL、MTL(ものづくり創成センター)による体制、単

位となる院生VB講座を持ち一部を地元市民に開放している。

d.組織の方向性

  地域企業に直接貢献し、世界的に認められる科学技術を研究し、ベンチャースピリ

ットのある企業、研究開発にきちんと研究予算を計上している企業、やる気のある技 術者を有する企業を支援したい。

現実には相談に来る企業は、地域内外が半々、中小企業と大企業も半々だが、宇都 宮大学は国立大なので、栃木県に連携相手を限定する必要もない。連携相手は化学、

機械、加工、情報といった分野の企業が多いが、環境、医療福祉、住宅にも力を入れ ていきたい。

地域共同研究センターの人材不足が課題である。特にリエゾンオフィサー、コーデ ィネータ(産官学民連携・特許)が足りない。栃木TLO、宇都宮大学MBA、さらに はキャピタル機能等が必要だが今はない。理想としては、大学協力会社「Versity−Aid」

が欲しい。教員特許による事業化はあるが創業はない。

(22)

ベンチャー講座を受けた学生でベンチャービジネスを起こした人はいないし、卒 業生で創業して成功した人がいない。工学部だけで、4〜5名は質の良い特許を出し ている先生がいる。基礎だけを研究している人ではなく、応用から出発して基礎研究 をする人は、企業ニーズと理論をバランスよく理解することができる。

e.支援実績

  地域共同研究センターのみの相談件数は50件/年、教職員通じての相談が100

件/年程度である。民間機関等との共同研究は、今年7月期32件、年間60件以上 、 受託研究は今期年間25件程度である。

定期的に産学交流会を開催し、学内研究者の研究内容の公開を行っている。

各研究室見学の勧誘と開発技術の説明と指導、栃木県研究開発事業支援に基づく技 術指導を実施している。

磁気援用加工技術は、地場企業と組み、中小企業事業団の創造基盤研究事業を活用 し、カットワイヤによるハードディスクのアクセスアームのバリ取りといった中小企 業向きのテーマを掘り下げている。

f.産学連携による事業創出事例

ITS 研究、介護システム、温冷車、超臨界CO2、バイオメカニクス、ガスフロース パッタ、情報、機能性カーボン、制御、多孔質土利用、掃除ロボットといったテーマ による研究が行われている。

5)その他、特徴のある支援機関の概要

a.(財)群馬県中小企業振興公社 

群馬県のプラットフォーム25機関の中核的支援機関、ベンチャー支援センターも 併設し、相談業務以外に事業化シーズのアイデアコンペ、商品化・事業化可能性調査 も手掛けている。商社、メーカー、地銀等のOBや県出向者がいて人材は豊富だが金 銭的な支援措置を持たない。

b.㈱ぐんま産業高度化センター

  インキュベートルームも持つ頭脳立地法に基づく第三セクター企業であり、年60 0人前後の人材育成事業、ものづくり相談年200件前後、各種専門家の派遣年50 件前後等の実績がある。

地域のものづくり産業支援に貢献した事例として、医療機器加工関係の会社を支援 し「紙コップの製造における深絞り技術の開発、プレス機の改造で特許取得」、電機下

請け企業を支援し「マグネシウム加工における成形機の開発」を実施した。

  超高速金型加工機、5軸マシニング・センター等の高度な設備を保有し、企業にアド バイスイスする能力のある職員を保有している。

  支援企業は県内企業8割県外企業2割(足利・栃木・熊谷方面)であるが、株式会社 としての収益性より公共性が重視され経営が厳しい。

(23)

c.ゼロポイント

  ユニックスマシンの修理企業である㈱エヌケイテクノを外資系EMS企業セレステ ィカに売却した小林英一氏が主催する群馬県太田市の企業家育成塾である。

構想としては大学教授や弁護士を巻き込み、高校生、大学生、社会人を対象に企業 家教育を実施したいというものだが、現在では小林氏を慕う若者3−4名を定期的に 指導しているという先駆的段階である。企業家候補生の面倒を見ている他、出資もし ている他、今私費で自宅裏に宿泊可能なセンターを建設準備中である。エンジェルと

インキュベートマネージャーを合わせたような存在を目指している。

   これまでの卒業生は息子を入れて4名、ベンチャー向けレンタルルーム業、ITコ ンサルタント、ソフト開発、パソコンサポート等を手掛けはじめている。

d.(財)栃木県産業振興センター

栃木県のプラットフォームの中核的支援機関であり、とちぎベンチャーサポートプ ラネット21には産学官32の支援機関がネットワーク、プラネット21事業として

「1.企業家支援人材育成、2.産学官連携の推進、3.ベンチャー企業等販路開拓 支援」を推進している。

   栃木県ではその他、地域の技術シーズと企業ニーズのマッチングのための場「とち ぎテクノモール」、インキュベート機能を持つ「とちぎ産業交流センター」を整備中で ある。

e.鹿沼商工会議所

   鹿沼には伝統的に木工産業、農業が栄えてきたが、最近はどちらもこのところ元気 がない。そこで力のある機械金属系製造業に着目し、鹿沼ものづくり技術研究会(1 4社)を組織して、微細加工技術の研究、ネットワーク型共同受注等を狙っている。

地域に大学はないが産学官の連携の場も設けていく。研究会参加企業は両毛地域や 群馬エリアにも顧客がある。

( 2 ) 二次・三次インフラ

二次インフラとは、交通網、通信網、エネルギー、水道、工業団地といった産業基盤イ ンフラである。事例地域においては、機械金属系の製造企業群が多数立地しているが、地 域経済・税収に占めるウェートは、都内等の県外に本社を置く企業の方が大きい。こうし た実状は、一部の例外を除き、我が国の地方都市に共通するものと言える。

産業基盤インフラは、雇用や税収をもたらしてくれる需要搬入企業を誘致するに当たり 不可欠の要素であった。しかし、基盤整備型の工業団地造成政策は曲がり角にきており、

地域においてどの様な企業家活動が営まれることを望むかを再考すべき時期に来ている。

三次インフラとは、教育機関、病院、文化施設、生活関連施設、レクリエーション関連 施設等のQOL(Quality of Life)関連インフラである。ハイテク企業や研究機関誘致の際の 条件として三次インフラの重要性が指摘される。

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